白い聖職者と銀色の侍 作者/竜吉 ◆l6j3DHrYv.

第三十九話「料理の際は必ず味見を」
そして夜
夕飯時になり、教団の食堂に主要メンバーズやその他諸々の人が集まる
(リナリーはコムイを引き摺って科学班の所へ行ってしまいました)
ちなみに料理は
「カレーライスよv」
お妙以外のその場にいる全員は固まった
カレーライスは確かに見た目カレーライスなのだが、その上に何か別の黒い異物が乗っている
それに見覚えのある万事屋トリオは真っ青になっていた
アレンがあくまで穏やかに訊く
「あの、妙さん・・・・?この上に乗っているのは何ですか?」
「玉子焼きよ」
「いやコレ玉子焼きじゃなくて焼けた玉子だろ」
神田がツッコむも軽く流すお妙
(オイ神楽!お前アレ止められなかったのかよ!!)
(無理ネ。あんなに楽しそうな姉御達を止めるなんて私には出来なかったヨ)
(その楽しそうな雰囲気の裏に隠されたどす黒い未来がお前には見える筈だろうが!!)
「私玉子焼きしか作れなくて~
リナリーちゃんにそう言ったら、玉子焼きカレーライスという名案を思いついてくれたのよ」
「つまりカレーはジェリーさんが作ったんですね」
結果的にお妙が料理を作ったとは言いにくいが
カレーライスが食べれるものであるということに安心すべきか
顔を引きつらせながらも空腹には勝てないのか、いただきまーすと食べ始めるアレン
その様子に他の人々も食べ始める
が、恐怖はこれから
*
(・・・・・・・・・・・・ヤバイさ)
ラビは思った
カレーを早く食べ終わってしまい、今一番にピンチを迎えている
皿の上に残ってる黒い物体
ニッコリと菩薩のように微笑みを絶やさずこちらを見ている妙
多分ラビが食べるのを待っているのだが、ピクリとも変わらない笑顔が余計に怖い
「お、俺はあんま腹減ってないんで」
「何言ってるの?男の子はたくさん食べなきゃ成長しないのよ~」
「い、いやでも」
「いいから食え」
次の瞬間お妙は身を乗り出し、皿を持ち勢いよくラビに食べさせた
食べさせられたっつーか、顔面に叩きつけられたが正しい
ガフッ
ラビはその場に倒れ込む
その一連の動きを見た人々は再び固まった
しかしそんな中、強者が現れる
「オイ、ちょっとこれ味濃すぎじゃねェか?」
「何言ってるんです、濃いのはそのマヨネーズでしょう?」
文句を言いつつお妙の作った玉子焼きまで食べるのは土方だ
もちろんその上にはマヨネーズが大量に乗っている
「ま、まさかマヨネーズに中和する作用が!?」
「お、俺も・・・!!」
土方の真似をして数人がマヨネーズをかけ食べ始める
しかしラビの後を追うように次々と倒れていった
「な、何でアイツだけ平気アルか!?」
「おそらく、トシにとってマヨネーズがあるだけで美味しいものに変わるのだろう」
それはまた物凄い味覚で
そして教団サイドにも強者が一人
「・・・・チッ」
蕎麦が食べられなかったからか、眉間に皺を寄せながらも玉子焼きを何食わぬ顔で食す神田
「・・・・何で神田も平気なんですか」
「多分、ユウにとって蕎麦意外の食べ物は全部大して変わらないんだと思うさ・・・・・・・」
これもまた物凄い味覚で
(し、しまった・・・・!!)
その瞬間近藤はそう思った
大好きなお妙の料理だが、以前食べたことで味がもうヤバいなんてものじゃないのは知ってるし
何より実は玉子焼き恐怖症になっていたのだった
彼女は色んな意味で、人の心に残りやすい
(お妙さんの料理・・・・・是非とも食べたい!!しかし体が拒否反応を起こしている・・・・)
葛藤する近藤
普通に考えて食べるという選択肢は有り得ない
だがここで、食べないという選択肢も用意されていなかった
ふと横を見ると、暗示をかけながらその黒い物体を食べる神楽の姿がある
目の焦点が定まってない
ゴクリと息をのむ近藤
(チャイナ娘が食べてるんだ、俺だって・・・!!)
「お妙さん!!いただきます!!」
近藤が言うとお妙はニッコリ笑った
(嗚呼・・・その笑顔が見れるだけで・・・・・俺は幸せだ・・・・)
2秒後には、ゴリラが無惨にも床に転がっていた
「近藤さん!?」
土方が慌てて近寄る
けれど白目をむいたままで、返事はなかった
*
結局
お妙の料理に耐えられたのは、土方、神田の二名のみ
神楽とアレンは倒れてはいないものの、顔を真っ青にしテーブルにぐったりとなっている
銀時や新八、沖田、山崎などは耐性でも出来たのか、副作用こそ出ていないが撃沈している
他にも数名倒れずにすんでる者もいるが苦しそうだ
教団の夜は長かった
そしてこの事件があってからは、リナリーは妙に料理をさせなくなったとかならなかったとか

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