複雑・ファジー小説

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イエスタデイ・ワンスモア【不定期更新予定】
日時: 2017/08/25 20:17
名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)

「イエスタデイ・ワンスモアにお越し頂きありがとうございます」

大きくそれでいて全く何も存在しない舞台に蝶ネクタイを付けた少年が一人立っていた。

「それでは色んな世界への旅をどうぞお楽しみにしてください」

そして彼は何処かへ消える。その後、どこからかのスポットライトが当てられた舞台の隣に飾られた手書きの看板。その看板にはこれから行われる舞台の内容が書かれていた。

今回の舞台

題名:イエスタデイ・ワンスモア6

ジャンル:長編

キャッチコピー:近日公開

内容:近日公開

今までの舞台は>>25です。

今までの出演者は>>26です。

オリキャラを募集しています。

直、今回はスターシステムを採用しております。

ゆえに、ある舞台でキャラクターが死んでも、違う設定で他の舞台に出る事が出来ると言う事です。

オリキャラ応募宜しくお願いします。

エントリーシート(募集用紙)




名前(漢字表記の場合は振り仮名を)

性別(男か女かもしくはその他か)

年齢(舞台により年齢設定が変わるので、年齢の表記は曖昧でお願いします。例:20〜30代前半まで。年齢を特定したいのであれば、20歳のみ、で構いません)

性格(詳しくなくても構いません)

容姿(詳しくなくても構いません)

能力(超能力でも何でも良いです。直、世界観により設定に反映されないかもしれませんがご了承ください)

特技・趣味(何でもいいです)


サンプルボイス(三つ以上で性格に反映して下さい)


それ以外にもこういうキャラで設定して欲しい等の要望がある場合書きくわえても構いません。


直、と言うか必ずオリキャラは死んでしまいます。スターシステムを採用していますので死んでから一度も出ないと言う事はありませんがご了承ください。

オリキャラが来ない場合は勝手に舞台の幕を上げさせて貰います。

ちなみに、何度もオリキャラ投稿可能です!

追記

今まで失踪しまして本当に申し訳ありませんでした。不定期ながら、少しずつ更新を取り戻せたら良いなと感じております。とりあえずイエスタデイ・ワンスモアシリーズのみ執筆予定です。ただし申し訳ありませんが執筆予定だった小説は中止とさせていただきます。

Re: イエスタデイ・ワンスモア【オリキャラ募集中】 ( No.307 )
日時: 2016/10/25 17:03
名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)

黒姫は語る。

「私は遂に考えても結論は出なかった。人間、未確認生命体の意味を。ただ、私の存在は少し分かった気がする」

「……」

「私はもっと平和に生きていたかった」

「……」

「そうすればゆっくり考えられたね」

「何がしたい……」

サーメルティやオベルムントが黒姫の方へ行く。黒姫は目を閉じる。

「二つの時計塔は交わる事は無い。交わろうとしても。交わる気が無くても。それぞれの世界が繋がっても」

二つの時計塔はそれぞれで時間を刻む。

「私の時が止まっても何も起こらないし、交わらない。心残りなのは、私が家族の意味を知る事が」

黒姫は消える。

「……何だったんだ」

「法堂を救出しました〜!私達偉いね〜!」

「良い子だね〜」

しかし、第九地区は現在人間が侵略していた。

「共存を!」

「裏切り者は死ね!」

共存を目指していた人間も強力な武器により殺されていく。

無名は呟く。

「……人間こそが食物連鎖の頂点だ」

一方、天使達は運命の輪を止めようとしていた。バルトマンは見物している。

「もう時は熟したのですか?」

「そうです。今こそ……」

法堂は人間のマムルークを抱えながら、帰る。

「第九地区が襲撃を受けているんだろ?早く行かないと……」

すると、フルーが現れ、法堂を捕まえる。

「お前は!?」

「……俺は全ての時計塔を破壊する」

フルーは法堂を未確認生命体側の時計塔に投げ飛ばす。

「反対の時計塔は天使と人間が交戦している際に崩壊したからな」

「な、何なんだよ!」

風柚竜達は時計塔に向かおうとするが、天使達がやってくる。

「悪魔を倒した貴方達に」

「どけ!天使!」

「人間に慈悲は不必要です。汚れた生命体に審判を」

「人間は追い詰められたからあんなことしてるんでしょ!人間だって話し合えば共存出来るのよ!法堂だって元は人間よ」

「貴方達はまだ分からないのですか?人間がこの世界を望んだのです」


キルエルとエリクンは戦っていた。

「人間がこんな世界を望んだ?」

「そう、人間って言っても貴方達じゃなくて第四地区の人間ね。元々この世界は地球と呼ばれる世界だったんだよ〜!でも、死神達の審判で世界は滅びたの。その遺跡が第二十地区。その後、生き残った人間達は、身分を二つに分けたの♪

王族と蟻(奴隷以下)って」

「未確認生命体は何だ?」

「四つの神から生まれた式神達よ」

「……」

「つまり、貴方の刀と同じ存在♪」

「ど、どう言う事だ?」

「強力な武器を持った人間は多種多様に進化するのよん♪」

そして運命の輪は止まる。

「遂に、現れるのですね。最後の神が」

第二十一地区。全てを完成した者が舞い降りる。

「この世界は成熟したね。なら、エンディングへと向かうシナリオを創ろう」

名前はフラン・エンディング。物理法則を変える能力を持つ、神に相応しい者。

Re: イエスタデイ・ワンスモア【オリキャラ募集中】 ( No.308 )
日時: 2016/10/25 18:17
名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)

法堂はフルーと時計塔で戦う。

「俺は細胞を増殖出来るんだ。つまり不死身同然だ」

「……ぐはっ」

フルーは法堂を殴る。

「不運等、俺に振りかかっても全て受けてやる、受けた上でお前を潰してやるよ」

「うあああああああああああああああ!!!!」

フルーに大量の天使、妖精が現れる。

「分子レベルで消される、精神操作は流石にまずい」

フルーは回転し、自分の身体の一部を飛ばし、矢の如く天使、妖精に向かう。

「俺は全てを終わらせる者。シンサリティ・べアートゥルーツ。あるべき結末を迎えさせる。トゥルーエンド!」

トゥルーが叫んだ途端、時計塔は狂い始める。

「時計塔は交り合い、一つになった時真実の世界が生まれるのだ!どうだ!お前の様な疫病神なんかにこんな事は出来まい!」

「思いあがるのも良い加減にしろよ。お前に人間、未確認生命体の気持ちが分かるかよ。そんな簡単に結末を出すんじゃねーよ!!」

「お前の望んだ事だろ?」

「和解してないのにそんな事をするのは、ただの自己満足って言うんだぜ」

「まあお前の意見等どうでもいい。俺は目的を果たすのみだ。真実が無いお前は死に、真実しか無い世界を生まれるのだ」

法堂はトゥルーにボコボコにされる。

「真実が無い……?」

「さて、第二十一地区に向かって新しい時計塔を建てよう。トゥルークロックタワー」

しかし、トゥルーの目の前にフランが現れる。

「魔神に創られた生命体が随分と大ホラを吹いてるね」

トゥルーの身体はどんどん小さくなって行く。

「ぐあああああああああああああああ!!!な、何だこれ!?」

「君の身体の構造の法則は逆に変えただけだよ。細胞を増やそうとすればどんどん減らすようにね」

トゥルーは消える。

「他にも細胞に直接毒を注入する。この世から消させる。精神操作して、閉じ込める等。対して強くない化け物だ。これがラスボスなんて……」

「あ、貴方は?」

「この世界のシナリオ原案者。そして完成された世界をエンディングへ導く者」

「……」

「蟻と人間の違いは無い。この世は非情。人間よりも頭や身体がでかい生命体が生まれた場合は人間が食卓に出される事は普通になるだろう。ましてや言語が通じ合わない場合は」

キルエルとエリクンは話し合う。

「....そんな」

「刀が貴方をとっくに支配してたみたいだね♪だから貴方はもう人間じゃない」

「お、俺は人間だ!」

フランは笑う。

「これから君みたいな者が多く増えるだろう。時計塔はいずれ交わる。壊れても」

「……」

「これこそがあるべき結末」

法堂はマムルークを抱える。

「俺達の結末はどうなるんだ?」

「時の流れに反抗するか、任せるか。その二択になると考える。だがそれはこの世界に生きる全ての生命体と同じ。考え方を変えればお前達はもう時を交わっているのかもしれないな」

「教えてくれよ……。こんな状況……」

フランは消える。天使達と妖精達が法堂に向かう。

「未確認生命体って何だ?人間って何だ?俺は答えを出したはずなのに……」

マムルークは目覚める。

「法堂……」

法堂は黒姫を思い出す。

「平和か……。蟻も願うんだろうか……」

その後、世界はあるべき結末を迎える。交わった時計塔は時を刻む。ただ、その時計塔の下には多くの死と血と涙が埋まっている。

「うわっ!蟻だ!家に出てくんなよ!おい、光の矢持って来て分解しろ!」

「え〜めんどっ。蟻くらい食べれば良い話じゃん」

そう言って人間は少し背の低い人間を包丁で刺す。

「手に血みたいの付いちゃった。ッキモ」



交わらない時計塔 完

Re: イエスタデイ・ワンスモア【オリキャラ募集中】 ( No.309 )
日時: 2016/10/25 20:28
名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)

第二十幕 宿り木

小さな花屋、宿り木と言う店がある。客は一人も入らずに見る限り売っている花さえも無い。だが偶然、この店に入った者は心を魅了され心を癒されている。

全ては偶然から生まれたエピソード。その偶然を奇跡に変える為、小さな花屋、宿り木を経営している虫朱 聖(むしあけ さとし)は一つの花のみを客に提供する。

「ようこそ、残念ながら此処は普通の花屋ではございません。お時間があればの話ですが、貴方の話を聞きますよ?」

近くの花屋の女性は花屋の真ん中に立ち愚痴を話す。

「私はハッキリ言ってそう言う自分に酔った隠れ家的な店は大嫌いです……。何と言うか敷居が高くて。それに花屋で敷居が高いなんて何様なんですかね?心が癒されるかなどうかは知りませんけど、花を自分の評価を上げる為に使っているなら止めて頂きたいです」

女性の名前はマシロ。彼女は母親から代を受け継いできた立派な花屋。近所に出て来た宿り木にご不満がある様子。

「あんなお店に私は入りたくもありません……」

場面は変わり、マシロは花の市場にいた。

「花屋は花を仕入れる為に市場に向かって花を購入します。私は白い花が大好きなので白い花を中心に」

さらに場面は変わり、花畑にマシロはいた。

「私は正直、宿り木の店長が気になってしょうがなかったんです。私が単に嫉妬してるだけかもしれませんが。でも実際にこの目で見たくなりました。

虫朱(むしあけ)さんの言う奇跡とやらを」

マシロは宿り木へ向かう。

「明らかに自分に酔っていますね。それに隠れ家の通り敷居が高いです。……まず暗い店の地点で花屋失格です。花が可哀想ですよ」

マシロは少し重い扉を開く。

「全くBARのつもりですかね。くだらな過ぎます」

店の中は、外の重々しさとは違い、一転して明るかった。そして一人の男性がマシロに声をかける。

「当店へようこそ」

「花が一切ありませんが?」

「当店は花屋ですが相談所でもあります。普通にご購入したい場合は裏手にお周り下さい」

「裏手?」

「あ、此処からでもいけますよ」

虫朱は扉を開くと、普通の花屋の光景が見れた。

「普通の花屋は私の彼女が経営しています」

「……私は虫朱の奇跡を見たいんです。なので普通の花屋では無く相談所の方にして下さい」

「はい、では相談内容をお聞かせ下さい」

「……」

マシロは話す。

「私はこの時、何も相談を思いついていませんでした。なので適当に話す事にしました」

虫朱はマシロと一つの空間にいた。其処には花が一杯あった。

「実は私、あの花を育てたいんですが何も分からなくて」

「あの花?」

「あの白い花です。相談はあったのですがどうしてもあの花が気になって」

虫朱はマシロが言っていた花とは別の花を用意する。

「真っ白ですけど、私が育てたい花じゃないですよ?」

「原産地は熱帯地域のアメリカ。耐暑性が強く初心者でも育てやすい花です」

「だから私の言ってる花と……」

「この花はクレオメ。花言葉の意味は貴方の容姿に酔う、です」

「……!」

「……」

「花はナンパの道具じゃないんですよ?」

「そうですね」

「分かってるなら……」

「貴方は自分の経営している花屋に酔っているんです」

「失礼ですね」

「いいえ、それで良いんです。自信が無いと経営なんて無理ですから。私だって自分に酔ってますよ。酔っていないとお客様の相談に聞く事が出来ませんから」

「花屋に相談も奇跡もいりません」

「でも必要としてる人がいるんです。何か、言って貰いたい人がいるんです」

「……」

「自分にずっと酔うと、相手の事が嫌いになります。嫉妬してしまいます。そんな苛立ちを少しでも癒せればとこの相談所を設立しました」

「……ならハッキリ言うわ。こんな手で人気出たって邪道です。話題性だけでごちゃごちゃ自分の意見を言って何様ですか?中身空っぽで、何処にでもある様な良いアイデアを適当にやってるだけですよね」

「そうかもしれませんね」

「ほら、そうですよね」

「ただ、私は絶対に生半可な気持ちで此処にいる訳ではありません。邪道だろうが話題性だけと言われようが私はお客様の為に相談を聞き、その結果に相応しい花をプレゼントします」

「なら、この相談の結果を花で表現して下さい」

虫朱は何もしない。

「やっぱり何も出来ない、素人ね」

「私はもう花を提供しております」

「……まさか、クレオメ?」

「クレオメのもう一つの花言葉は、秘密のひととき。貴方のその相談は私にだけしか言えません。私だけが聞ける相談。まさに、秘密のひととき」

「最初から狙ったわね」

「はい……」

「……でも相手のことを考え、思い、感じ取ることができるのは称賛します。また、愚痴を話に来るわよ。で?お会計は?」

「クレオメを付けて無料となっております」

「……気前が良いんですね」

「相談を聞かせて貰うだけで私は十分です」

「……宿り木、良い名前です。貴方の才能に相応しいわよ。私は貴方が嫌いだけど」

「ありがとうございました」



此処は宿り木。来た人間を例外なく安らぎを与える相談所兼花屋。

Re: イエスタデイ・ワンスモア【オリキャラ募集中】 ( No.310 )
日時: 2016/10/26 16:14
名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)

鈴の音が鳴る。それは綺麗な音色。そして鈴は想いを紡ぐ。



宿り木と言う店に花は飾らない。来客者が望んでいる花を確実に提供出来るからである。それはまるで、メニューの無い料理店のように。





「わ、私は昔……父に花を貰う事になりました」

一人の女性はフランスの民家に立っていた。女性の名前はエデル。

「エデル!」

「でも私は……当時引きこもりでした。原因は外にいるより家にいた方が良いから。まあ親はそんな事、許す訳もありません」

「エデル!」

「だ、黙ってよ!わ、わた、私はもう嫌なのよ!!ど、どうして私を苦しめるの!」

エデルは飼っていた猫を抱える。

「そして私が引きこもっている内に、父親は事故で死にました。母親は私にこう言ったんです」

葬式でエデルの母がエデルに駆け寄る。

「父さんは貴方との約束を果たしたかったのよ。一緒に花を見る約束を」

「……」

エデルには過去の記憶は無かった。理由は思い出そうと言う意思が無かったから。エデルの頭の中は空っぽだった。

そして舞台は宿り木へ。

「それで、相談とは?」

「父との約束は遅いかもしれないけど果たしたいんです。だけど私は、父が好きな花を知りません。私は……それほど親と一緒にいる事は無かったんです」

「では果たせなかった過去の約束の為に……」

エデルと虫朱はフランスの民家に立っていた。

「エデルは今日もいるのか」

「いってらっしゃい」

「……」

「貴方……今年はやらないんですか?」

「……私はその花が嫌いだ」

エデルは話す。

「嫌いな花?」

「そうなんです。嫌いな花があるらしくて。まあ関係無いと思いますけど」

「今年は?と言う事は毎年何か花に関連したイベントを?」

「覚えてません。でも私の家だけじゃなくて他の家でもやってますね」

「地域限定……。この日はいつですか?」

「五月一日です」

「フランスでは祝日ですね」

「……」

「好きな花では無いですが、お父さんが嫌いな花なら分かりましたよ」

「そ、そうなんですか?」

「嫌いな花は、鈴蘭(すずらん)です」

「どうして分かるんですか?」

「フランスでは五月一日に鈴蘭を送る素敵な文化があります。送る理由は他者の幸福を願う為」

「……父はどうして嫌いなんでしょうか?」

「私の考えすぎかもしれませんが……」

虫朱は鈴蘭を用意する。

「時期とは異なりますので提供は出来ませんが、無料で見れるので」

「……」

「フランスの文化には、鈴蘭についてもう一つあります」

「……あ」

「ご存じですか?鈴蘭は花嫁に送る花でもあります。つまり親からの巣立ちです。まあ大人になれば親からは巣立つんでしょうけど、今までの家族から巣立ち、新しい巣を造る。

お父さんは貴方に対して考え、とても寂しかったのでは無いでしょうか」

「……」

「そして鈴蘭の花言葉は、戻ってきた幸福。再び幸せが訪れる。貴方との約束で見たかった花も、鈴蘭だと思いますよ」

「……そうなんですか」

「あくまでも私の綺麗事ですが。少なからず、お父さんは貴方と親子でいたかったのでしょう」

「……はい」

鈴の音が鳴る。

「今度、母を来て良いですか?勿論、父も。この鈴蘭を見せてあげたいんです」

「はい。いつでもお待ちしております」

Re: イエスタデイ・ワンスモア【オリキャラ募集中】 ( No.311 )
日時: 2016/10/26 20:29
名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)

「馬庭(ばにわ)……」

「どうした」

「今度、俺の走りを見てくれ。そうしてから俺をただの夢追い人かどうか見極めろ。牛瀬(うしらい)」

「黙れ。俺はお前に失望した。これから漫画家になって、お前の素晴らしい原作を作画出来ると楽しみにしていたのに。才能と言うのは怖いな。自分がいかに凄いかなんて分からずに、叶わない夢である陸上選手になってオリンピックを目指すんだろ?」

「牛瀬……」

「お前が考えた、『まどろみ』と言う作品は俺のデビュー作にさせてもらう」

「……」

牛瀬は急に老けこんで、花屋にいた。隣には男性がいた。

「こいつは牛瀬。20歳の時漫画家になると言って未だにデビューすら出来ない34歳。こいつの漫画はハッキリ言って面白くない。単調の話、ありがちな展開、ご都合主義による強引打ち切りハッピーエンド。パンチラと胸の谷間でしかエロ展開を書けない。全く俺の方が面白く書けるぜ」

「アシスタントのパーヴェル・幅重はばかさね。良いから、適当に感動的な花言葉に合う花探して、パパっと感動させろ!」

「分かってる」

「ゆとりが、ちんたらしやがって……」

「牛瀬は売れない漫画家。これまで五つの作品を考案するがいずれもボツ。

多くの矛盾をしている(勿論、漫画の矛盾も面白さの一部ではあるが牛瀬は自分の矛盾を認めていない)超能力を書いてバトルにする漫画や取ってつけたような知識で書き込むスポーツ漫画等。

いずれにしても、何処かで見た事がある物語だ。

漫画家や小説家は誰も見た事が無い、誰も予想していない事を書く為に書いているんじゃないのか?」

「金だ!金の為だ!漫画家はボロ儲け出来るんだ!一つでも適当に売れれば、金が何もしなくても入って来るんだよ!」

「反吐と涙が出る。ちなみに俺はアシスタントと言う職業をしている。漫画家になろうとは思っていない。こうしてアイデア探しをしている時に花屋、宿り木を見つけていた」

「此処が花屋?花屋のくせして敷居が高いじゃねえか」

「まあ相談所だから現実と隔離させたいんだろう」

「何言ってんだ?漫画じゃあるまいし」

幅重と牛瀬は虫朱の元へ行く。

「相談は何でしょうか?」

「漫画が売れたい。俺は才能はある。だが周りが馬鹿でついていってないんだよ。簡単に言うと、生まれる時代を間違えた天才だ」

「そう言う事を言うのは才能が無い奴ってお約束だよな」

「漫画家になる経緯を教えて下さい」

「金の為だ」

「そうなんですか?」

「本当の所を言うとだな、かなり前に見た漫画を見て衝撃を受けたんだ。俺もこんなの書きたいってな」

「良い人ぶってるのか?」

「……相談って言うからにはきっちり聞かせてくれよ」

幅重は気付く。

「そうか、この宿り木の設定を今度の漫画のアイデアにするつもりか。だから……」

「俺の相談をどんな風に解決してくれるのか。楽しみだよ〜」

「しかし、牛瀬さん。何処かで会った事ありませんか?」

「無いね。虫朱君。俺の娘の彼氏って言う設定並に無いね」

「……まあ、置いといて。貴方の悩みはまず、漫画家になりたいと言う経緯を正直に話す事から始まります」

「俺の物語は単純だ。そう、それはある友人との出会いっ!」

「何か語り始めたぞ。34歳の良い歳こいた人間が」

牛瀬は小学校の漫画クラブで初めて漫画を描く。小学四年生にして漫画デビューを果たすのだ。しかし小学四年生。持っているのは鉛筆かシャープペン。まだ何のペンで漫画を描く事すら知らない彼に漫画を描かせるのは正直酷な事と捕えるべきだったはず。

「ポ○モン、サ○シがいく、さいきょうの冒険」

廊下で幅重と牛瀬、虫朱がいた。

「其処から入るのか。もっと中学生とかにしたらどうだ」

「俺の牛瀬ストーリーは此処から入るんだよ、馬鹿」

「だから漫画売れねえんだよ。自重しろよ」

牛瀬は中学の時、同級生である馬庭と出会う。馬庭は美術部に入っており、腕前は当時としてはプロレベルだった。

「牛瀬君?」

「俺と一緒に漫画家目指そうぜ。ペンネームは決まってんだよ。生卵って言うんだよ。良いだろ?」

「ペンネームがパクっててアウトだと思うし、僕はまだ君に返事を出していない」

「何でだよ!」

「初対面だからだよ。初対面で一緒に漫画家になろうとか馬鹿だろ」

幅重は牛瀬を見る。

「同時から馬鹿なのか?」

「黙れ、うるさい!」


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