包帯戦争。               作者/朝倉疾風

第六章  殺人+日常=非日常?  ~02~



「むー。おなか空いた」
長い髪をススキのように垂らしながら、ヒナト起床。僕は何の面白みもないバラエティが映し出される画面から、ヒナトに目を移す。
寝起きなのがよくわかる。あくびをしながら、
「ひは、なんひ?」
「えっと、10時」
「ぬ……。ご飯は?」
「7時に終わっちゃったんだ」
ヒナトが無表情で僕を睨む。何で無表情なのに睨んでるってわかったかと言うと、目が数ミリ細くなったから。
「待っててくれなかったのか?」
無茶言わないで。
「彼女、なのに……」
お。おお?
これはまた珍しいものを見ているな。
ヒナトがだんだん感情を表に出しやすくなっている。
今は、照れてるな。
シーツを両手でがっちり掴んで、僕を見ている。
美人だから、結構可愛い。
「今から売店行く?」
「あたし、パン食べたい」
「決まり。んじゃ行くか」
誰の自腹だ~?僕のか。

小春ちゃんが念のためにって、千円財布に入れてくれた。
片手に財布、もう片手に点滴を持ち、スリッパの歩きづらさに、ヒナトが多少の苛立ちを覚える。
エレベーターで、二階に降りようとしたその時、
「茅野さん、ですよね」
中に入る前に後ろから意外にもヒナトが声をかけられた。
ムッとした表情のヒナトが、振り向かずに露骨に嫌そうな顔をしている。
僕は声の主が気になり、振り返った。
「私、警察の宮古です」
け、け、け、ケーサツ??
唖然としている僕の横で、ヒナトがため息をつく。慌ててその手を見て、バッドを持っていない事を確認し、ようやく安堵の息をつけた。
「少々お時間宜しいかな?」
「死んじゃえ」
短いヒナトの返事。
それでも宮古さんは気にせず微笑んでる。

「あなた、祝詞くんでしょ?」
「……はい」
警戒しながらも、頷く。
「先日の双子連続殺人事件の犯人を撃退した、茅野ヒナトと、少~し状況説明させてもらいたいの」
……撃退ねぇ。
まぁ、僕なんだけどね。撃退はヒナトだけど。
で、肝心のヒナトさんは僕の左腕をがっちり掴んで、エレベーターの中に引きずり込もうとしています。微妙に違うけど。
「ヒナトが嫌がっているので、お引取りください」
「無理です」
「……………………………」
ヒナトが穴があくまで宮古さんを睨んでる。
修羅場だ~。
「帰ってください。邪魔。消えて」
「手厳しいですね、ヒナトさん」
「馴れ馴れしく名前、呼ばないで。気持ち悪い」
「私だって仕事の休暇削ってまでガキに会いに来てるんですから、もう少し愛想良くしてくれてもいいじゃないですか♪」
仕事削ってまで来なくてもいいじゃないですか。
突っ込んでみた。
ヒナトが「ガキ」という言葉にキレたのか、
「死んで。あんたに言う事なんて何もない。消えて、消えて、死んで、死んで!」
廊下を歩く患者さんがヒナトを不思議そうな目で見ている。それでも構わず、ヒナトは宮古さんに食って掛かる。
「死んじゃえば?気持ち悪い。反吐が出るッ!あたしと少年に近寄るな!」
「少年……ですか」
宮古さんが僕を見る。
肌が粟立った。
ヒナトが僕を呼ぶ名前に違和感を感じたんだろう。
「わかりました。今日の所は引き上げますね。じゃあ」
宮古さんが深々と礼をして、去っていく。
ヒナトは敵視していたが、僕と目が合うとまた無表情に笑い、



「あたしは、少年が居ればそれでOK」