包帯戦争。 作者/朝倉疾風

第七章 暗闇=絶望 光=欲望 ~04~
<メジロプレデビュー>
どーでもいいけど、俺はガキは嫌いだ。
なるべくガキには近づかないようにしている。いや、そーゆー意味じゃなくて、精神的にガキな奴が嫌い。いい年こいて未だに仕事してねー奴とか。
マザコンとか。
んで、どーして俺が糞ガキを気に入ったかと言えば、その理由はただ一つ。
目だ。
死んだような、どす黒い目が気に入った。
ま、顔もキレイだしな。男なのが惜しいくらいだ。
可愛いでも格好いいでもなく、キレイ。
びゅうてぃほう。
女にモテる感じの糞ガキが、まず俺に尋ねた事は、
「お風呂に入っていいですか?」
だった。
なーんだコイツ。
普通狂気まっさかさまで異常行動するだろ。
なのに冷静で、死んだ目でこっちを見るからちょい焦る。こえーって。
洗ってやろうか?って聞いたら、「汚いですよ」てか。ほへー、やるじゃん。
んだから、そいつの体を洗ってやった。
至る所にまぁ、その、何ていうんだ。
痣とか火傷とか骨が見えてる部分まであったわけで。風呂よりかは先に消毒しよーぜって思ったわけよ。
糞ガキは、やっぱガキだった。
目が死んでいても。
んで、対して女の方はもうダメだ。あれは。
狂ったように、てか狂ってんだけど、急にとんでもない音を吐き出すわ、嘔吐するわ、髪の毛を千切ろうとするわで両手をタオルで結んで病室に連れて行った。
ぎゃーぎゃー、っていうかぐあぁぁぁぁっていうのかわからんが、悲鳴+絶叫+騒音を交えたような声とボリュームで俺の耳を刺激した。
男だからか、と思って女の医者にバトンタッチ。
俺は体を拭いている糞ガキの所に行った。
「ありがとうございました」
「おうよ。でさ、お前実感してる?助かったんだぜ」
もっと喜べよー。無理かな。
そう思いながら話しかけてみた。
「助かりませんよ」
「………………………???」
「だって、僕が死ぬまで時間は経つわけでしょう?」
……………。
不覚だった。
そうか、そうだよな。
糞ガキはあの牢獄から脱出できただけで、狂った歯止めはもう直る事もなく、そのままズルズルと動き続ける。
あの少女も。同じ様に。
「トラウマは消えない、か」
阿呆か、俺は。
こいつらが見てきたのは、そんなカタカナ四文字で終わらせるような代物じゃねーっつのに。
「…………そんな、格好いいのじゃない、です」
糞ガキは、俺を見た。
死んだ目で。
「人は、かなり怖いなって、思っただけ、です」
人間のどす黒い醜悪な部分だけを見て、糞ガキはその一つを覚えた。
「ヒナちゃんは、大丈夫ですか?」
「あいつぁ、大丈夫じゃないけど、もう終わったんだ。何もかもなぁ。だから、お前も気にするな」
幼い子供だけど、忘れるわけない。
くしゃくしゃと頭を撫でてやった。糞ガキは少しだけ照れくさそうに、
「ヒナちゃんは、大事な子だから」

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