包帯戦争。               作者/朝倉疾風

第七章  暗闇=絶望 光=欲望  ~05~



あれから何年経つんだろーな。
つか、久しぶりに再会したけど、うん。イケメン。
キレイだよなー。漫画とかによくいそうな美形キャラ。
相変わらず、死んだ目の所は全然変わってねーけど。
「久しぶりだな、糞ガキ。あと、奇声のご精悍、おめでとう」
嫌味らしくそう言ってやった。
相手は無表情で、「メジロさん、僕は間違っていましたか?」と聞いてきた。
うーぬ。
「何がよ」
とぼけてみた。
「わかってるクセに」
無駄だった。

「ヤシロに自分の正体を明かした事か?」
「え……、違います」
違うんかいっ!
やっべー、俺ちょー恥ずかしいじゃねーか!
「じゃあ何よ」
「ヒナトに、僕の正体を明かしてない事です」
そっち、ね。
そりゃそうか。コイツはアレ以外に興味ねぇから。



   *



んー。正解、っつーか賛否両論だな。
「もし、自分が祝詞だったら?って聞いてみれば?」
「殺すって宣言されました」
「やめろ。明かすな。その方がアイツにもお前にも良い事になる」
やめとけと手を振る。
冗談じゃねーよ、あの女。
何糞ガキを殺そうとしてんだよ。ぶっ殺すぞ。
あの女はかなり苦手だ。
何を考えてるのか、何がしたいのか、今何を思っているのかさっぱり理解不能だ。精神科医なのに。
まぁ、糞ガキの心理もわからんと言えば、まぁ、わからん。
大体、幼少期にあんな残酷なモン見せられて正常っつー事が一番おかしいから。
んでもって。

「お前はこれからアイツをどーするわけ。結婚すんの?」「しないですよ。何言ってんですか」「あの女は、お前を恋愛対象として見てんの?」
「付き合ってますよ」
………………っっ!!
今、真顔でサラリと驚愕な事を言われて反応が遅くなった。
付き合ってるのか。むっちゃくちゃ衝撃的だ。
へ~。あの二人がねぇ。俺、負けたじゃん。
「変、ですか?」
「何が」
「犯罪者と、被害者が付き合うのは」
「おい。言っとくがアイツも一応は被害者だからな」
「分かってますよ」
ま、自分の兄貴を殺したから、殺人犯っちゃあそうなんだけど。
つか、俺本当にそう思っていいのか?
「殺したの、ヒナトなんだろ?」
「気づいてるクセに、何で警察に言わなかったんですか」
ごもっとも。
「警察とか、病院とか。そういうのから関係を断ち切ってやりたかったから」
嘘。
本当は確信があったけど、度胸がなかったから。
これ以上触れてはいけないアイツの完全に破壊された心が、今度は無くなってしまうかも知れなかったから。

「どーして、ヒナトに会ったわけ」
「ヒナトが腕から血を流して、しかもバッドを持ってたんですよ。声かけて改めて顔見たら、あれ。ヒナトだ。ってなって」
どんだけだよ。
運命的な再会かー。ロマンチックだねぇ。
「小春は元気?」
話題を変えてみた。
「はい。元気すぎてこの前も寝てました」
「だろーな」
さっすが俺の後輩。いい度胸してる。
でも禁酒してから、まさか駄菓子屋をやるとは思わんかったわー。
元ヤンだし。余計か、これは。
「あ」
「っ」
病室の扉が開いて、起きたばかりのヒナトが入ってきやがった。来んなー。
俺を見て、数秒して同行が縮小する。
「おはよう、ヒナ「何で?」
糞ガキの挨拶を遮って、ヒナトが、ソイツが疑問を出した。
「何で、アンタがここに居るの?」
ほー、俺の顔を覚えてるみたいだ。
祝詞の顔は覚えてねーのに。
「アンタの愛しい愛しい少年を助けたのは、俺だぜ?感謝しろよ、ゴスロリ女」

ソイツの顔が歪む。
やっぱ苛めるの好きだー。我ながら変わった性癖だ。この女はキレイだけど、冗談が通じないから全力で行く。
「少年、行こう」「行くってどこに」「駄菓子屋。帰る」
「ちょい待ち」
マジで連れて帰りそうだから慌てる。
「コイツ、まだ怪我治ってねーから」
「死ね」
「治ってからね~、ゴス女♪」
「消えちゃえ」
「聞いてる?耳、大丈夫?あと頭も」
「あたしの前から飛び降り自殺してください。あと、あたしに関わらないで。気持ち悪いから」
随分な言われよう。お兄さん泣くよー?
ヒナトは少しだけ抵抗してる糞ガキをほんの少し、無邪気さが残った目で見つめる。
ほんの少し、だけど。
「ヒナト、もう少しここにいようか。メジロさんは帰って仕事してください」
「おっまえー。しばき倒すぞ」
「その時は撲殺します。主にヒナトが」
笑えない冗談を言ってきやがった。
本気にするだろーが、お前の彼女!