包帯戦争。               作者/朝倉疾風

第六章  殺人+日常=非日常?  ~06~



こんな無邪気でどす黒い腹の持ち主が他にいるだろうか。全く持って理解不能だ。
宮古さんはキラキラと輝いている目で僕を見て、
「好奇心は、時々危険でもありますがね」と付け足した。僕は興味なかったので、スルー。
「ヒナトちゃんが元気そうでよかった~。ま、用はそれだけです」「本当ですか?」「もち」
嘘だろうなぁ。
ていうか、そろそろヒナトが気になってきた。
お目覚めで僕を探しながら徘徊中なのかも知れないし。ないか。
「そろそろ、いいですか」
「んー。いいですよ。面白い話もいっぱいしましたし」
人の苦労話を面白い話、か。他人事なんだよね、結局は。
「で、結局誰が双子のお兄さんを殺したんですか?」
「ご想像にお任せします」
「ヒナトちゃん、でしょうね」
「どこでそう確信したのか謎ですが」
「うそ臭いですが……目ですね」
目?ほほう。そりゃうそ臭い。目、ねぇ。
「ヒナトちゃんの目は人を殺した目です」
「…………多分、違いますよ」
「んん?」

誤魔化しておいた。僕だって、最良の妻が警察の手で連れて行かれるのは好ましくない、なんて。
確かにヒナトは人を殺したけど、それ以上に動物の殺戮数がハンパなく多い。
「人、じゃないんで」
「…………さようですか」
僕の曖昧な答えにも納得したように、宮古さんが頷く。
「ま、それが人にならないように見張っててくださいねっ♪のり……」
そこまで言って、ハッと気づいたらしく慌てて口を閉じる。
「……少年くんっ」「わかりました。わかってます」


今度こそ宮古さんは本当に帰った。赤い車に乗って、ひゅ~っと。
僕は病室に帰らなきゃいけない。てかヒナトが本気で心配になってきた。誰か殺してなきゃいいけど。
「ヒナトー」
「……ぬ?少年かぁ」
ヒナトは起きていた。
起きて赤く染まった腕を気持ち悪そうに舐めている。
「……ヒナト。それ、どしたの」
「スパッて切られた。ムカつく。死んじゃえばいいのに」
「誰にされた?」
今更、ヒナトが刺されても驚かない。そっちゅうだ。
でも人から、っていうのは久しぶりだ。
「変な子。だから、夜に殺しに行く」
「やめなさい」
阻止した。
ヒナトは満足できないように流血している傷口を舐める。
「ダメ。あいつ嫌い。殺す」
「それじゃあ、僕と一緒にいられないでしょ」
「……………っ!」
ヒナトランプが点滅中。
気づいたように首を真横にふり、
「ダメっ。少年と離れるのは、いやだ」
でしょー、とは言わないけど、かなり嬉しいかも。なんて。

「嫌だよね。じゃあ殺しはダメです」
「わかった」
「痛くないわけ?それ」
どー見てもパックリなんだけど。
「痛くない」
「病院だし、消毒してもらう?」
「やだ。舐めてればなおるだろ」
この男みたいな喋り方をどうにかしたい。
容姿に合わないから。