包帯戦争。 作者/朝倉疾風

第七章 暗闇=絶望 光=欲望 ~01~
<ノリトセラピー>
Qあなたにとって、ノリト君はどんな存在ですか?
A僕の全て、だね♪
Qノリト君をどれくらい好きですか?
A殺したいくらい♪中身かき混ぜたーい!
Qノリト君が誰かに殺されたらどうしますか?
Aんーっと、……想像つっきませーん♪
Qノリト君が死んだらどうしますか?
A死なせないし。生き返らすし。
Qノリト君を殺すとしたら、どうしますか?
Aえーっと内臓抉って~(以下省略)
Qノリト君に殺されるとしたら
?
A本望なのだー♪
Q恋愛的にノリト君は?
A恋愛とかそんな薄っぺらいのじゃないし。もうそれ以上だし~♪
Qどうして殺したいの?
Aえ?好きな人の全てを知りたいのが普通でしょ?
Q茅野ヒナトさんの事をどう思いますか?
Aノリトといる子?どーも思ってないし。いつか殺すし。
Qノリト君とヒナトさんの関係はカップルだけど?
Aありえない。否定するねぇ。
Qでは、最後に。ノリト君は本当にノリト君ですか?
Aどーゆー意味かなぁ?なーんてね。
壊れたフランス人形のように、ヒナトが眠っている。時刻は丑三つ時。病院っていうだけあって、結構ホラー感がある。なんてね。
なんかカーテン開けたら窓の外にばぁっ!みたいな。
ヒナトはいつものように、隣のベッドで静かに寝息をたてている。
愛用の我が子(金属バッド)を抱き枕にして、体を丸めて(毛布はかけてない)、眠り姫みたいに。
いや、本当に。
ヒナトの、ストレスで色素が抜けた明るい長髪がベッドから少々落ちている。
長いなー、睫毛。
てかやっぱ美人だよな。そりゃクラスの男子から噂されるだけの事あるわ。
「ヤンデレ」とかゆーので萌えてる奴もいるしな。うちの妻を何だと思ってるんだ、汚らわしい!と一喝したくなるというのは冗談で。
ヒナトが反撃するだろうし。
「で、お前は何しに来たんだ。面会終了だろ」
「細かい事は気にしない♪」
同じく色素の抜けた長い髪を垂らして、僕の向かい側にはヤシロがいる。
ニコニコと何か考えていそうな笑顔で。寒気がしてきた。
「もーすぐで夏休みだわさ~」「んだな」
「ノリ悪いぞ♪祝詞、もう少し喜びたまえ~」
そっちのノリには着いていけません。
「いつ退院したわけ?精神科」
「いつって、退院してないし~」
「…………何こっちの病棟来てるわけ?」
「祝詞がいるって看護婦さんに言ったら、特別に外泊許可出してくれたのだ★」
やほーっとヤシロがピースしてくる。
こっちはピースどころかブーイングを出したい。
「そろそろ寝れば?」「…………祝詞、最近冷たい」
低い声でヤシロが言った。
こいつも精神科に入院してるくらいだから、どこかしら心が削れているんだろうケド。
唾を飲み込む。
味はしなかった。
「その子と、会ったから?」「……ヤシロが僕に依存してるだけだろ」「その子と会ってから、祝詞変」
女装してるお前に言われたかねーよ。
参ったな。そういった趣味はないんだけど。
「ヤシロ、さぁ」「ん?」「男だろ?僕が好きなわけ?」
あー、どうして僕の頭は歯止めが利かないんだ。
これでヤシロが殴りかかってきたら完璧に不利だ。こっちは上半身に穴開いてるわけだし。
「だーいすき♪殺したいくらいに♪」
「あー、そっすか」
聞かなきゃよかった。ちょい後悔。
でもこれで僕のホモ疑惑と、僕が撲殺されたらヤシロが第一容疑者候補となる事が発覚したな。収穫ありだ。冗談です。
「祝詞と一緒に遊んだの、楽しかったぁ」
「あれ、遊びって言うわけ?」
「言うよ♪一緒にお風呂入ったし」
あー、思い出した。
あの時初めてヤシロが男だってわかった。
回想、スタート。
『キミ、こっち男用だけど』『? 僕、男だし』
『……………………』『ほら』
驚いた、というか呆気に取られた。
男でこんなに可愛いのか!みたいな。
「祝詞って、どーしてそんなに面白いのぉ?」
ヤシロ君ほど面白くないよ。いろんな意味でね。
にゃはははは。
「祝詞」「はい」「そいつがいなくなったら、僕と一緒にいてくれる?」
細く白い指でヒナトを指差す。こら。
僕は多少の警戒心を持ちながら、「ヒナトが死んだら、僕も死ぬ」いつかと同じ台詞を言った。
ヤシロはご不満のようで、ハリセンボンのように頬を脹らませる。
「こいつ、どうして祝詞を独り占めできるの?祝詞は僕のなのにっ!」
「ヒナトが僕を独り占めしてるんじゃない。僕がそれを望んだんだ」
虚像を作るために、どうしてもヒナトが必要だった。
犯罪者の妹だけど、あの暗闇でヒナトは何度も僕を求めていた。そして、憎んでいた。
だから、姿を隠したままヒナトの傍に居ると決めた。僕の、勝手な理由でヒナトを邪推した。
「じゃあ、僕も望む。祝詞、僕にあんたを殺させてよ。じゃないと、離れていきそうで怖い」
元々、引っ付いていた訳でもないけど。
「僕は自殺願望はないから、ヤシロに殺されたくないなぁ」
これ、本心ね。
なんで僕がヤシロに殺されないと行けないんだ。どーせ殺されるのならヒナトだろ。
このままじゃいけない。だって、そうだろ?
ヤシロはどんどん絶望に向かっている。むしろ通り過ぎてリターンして、欲望にまで達してる。
だから、種明かしをしよう。
キミが、壊れるかどうかは定かではないけど。

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