二次創作小説(紙ほか)
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- バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 お知らせあり>>270
- 日時: 2016/03/25 21:41
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
初めましてな方は初めまして。そうでない方はお久です。こちらはバカとテストと召喚獣の二次創作であり以下のスレッド
【バカな自分は召喚獣?〜一学期編〜】及び【バカな自分は召喚獣?〜夏休み編〜】
の続章となっています。読まれていない方はそちらもよろしくお願いします。
暑い夏も乗り切ってやってきました二学期編!夏休みを満喫したいつものメンバーとFクラスの前に立ちふさがったのは……無敵の鉄人による持ち物検査!?
『お願いします、西村先生!僕らにその本を返してください!』
『僕らには———僕らにはその本がどうしても必要なんです!』
『お願いです!僕たちに、保健体育の勉強をさせてください!』
『西村先生、お願いします!』
『『『『お願いします!』』』』
「黙れ。一瞬スポ根ドラマと見紛うほど爽やかにエロ本の返却を懇願するな」
『『『『鬼っ!悪魔っ!!鉄人っ!!!』』』』
毎日バカやる明久たちがそんな教師たちの横暴を黙っているはずもなく。正々堂々鉄人に挑むFクラスだったけど……(正々堂々の意味、今すぐ調べてください皆さん by造)
「ええい!こうなりゃ実力行使だ!僕らの大事な参考書(エロ本)を守るため、命をかけて戦うんだ!」
「ほう?良い度胸だ、かかってこい……シメるついでに夏休みで緩んだ頭のネジをキッチリ締めなおしてやる」
明久たちの必死の抵抗虚しく、鉄人に阻まれ大事なもの(エロ本)を取り上げられるFクラスメンバー。このまま為すすべがないのか?否、まだ手はある……!召喚野球で教師を蹴散らし、取り戻せ僕らの聖典(エロ本)!
体育祭に召喚野球。そしていよいよ試召戦争が解禁となり恋に嫉妬に勉強に、ますます楽しくそして忙しくなる造や明久たち。そんないつものメンバーの非日常的な日常をどうかよろしくお願いします。
———目次———
序章 1〜4章及び各種設定【バカな自分は召喚獣?〜一学期編〜】>>6参照
5〜5.5章及び各種設定 【バカな自分は召喚獣?〜夏休み編〜】>>7参照
6章 体育祭&召喚野球編>>1-117
102時間目>>1-5 103時間目>>8-11 104時間目>>12-16 105時間目>>20-23
106時間目>>24-28 107時間目>>29-32 108時間目>>33-36 109時間目>>37-40
110時間目>>41-44 111時間目>>45-48 112時間目>>49-52 113時間目>>53-56
114時間目>>59-62 115時間目>>63-66 116時間目>>67-70 117時間目>>73-76
118時間目>>80-83 119時間目>>84-87 120時間目>>91-94 121時間目>>98-101
122時間目>>104-107 123時間目>>110-113 124時間目>>114-117
覚えよう野球のルール〜スクイズしてください!〜>>77-79
6.5章 文化の秋・食欲の秋・文月学園の秋編>>120-221
酔いと造と幼児返り!?〜お酒は大人になってから〜
前編>>120-122 中編>>125-127 後編>>130-132
週刊☆文月学園ラジオ放送 特別企画・文化の秋!
前編>>135-136 後編>>137-138
ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜
その①>>141-143 その②>>146-148 その③>>149-151 その④>>154-156 その⑤>>157-159
その⑥>>164-166 その⑦>>167-169 その⑧>>170-172 その⑨>>173-175 その⑩>>176-178
召喚実験シリーズ〜自分と本音と暴露大会〜
その①>>179-181 その②>>182-184 その③>>185-187
その④>>188-190 その⑤>>191-193 その⑥>>194-196
寒い日は鍋が一番!〜闇鍋?病み鍋?暗黒鍋デス〜
その①>>197-199 その②>>202-204 その③>>209-211 その④>>214-216 その⑤>>219-221
7章 二学期試召戦争開幕&Fクラスの変編>>224-330
125時間目>>224-226 126時間目>>229-231 127時間目>>234-236 127.5時間目>>241-242
128時間目>>243-245 129時間目>>246-248 130時間目>>251-253 131時間目>>256-258
132時間目>>261-263 133時間目>>264-266 134時間目>>267-269 135時間目>>271-272
136時間目>>273-274 137時間目>>275-277 138時間目>>280-282 139時間目>>283-285
140時間目>>286-288 141時間目>>289-291 142時間目>>292-294 143時間目>>295-297
144時間目>>298-299 145時間目>>300-302 146時間目>>303-305 147時間目>>306-307
148時間目>>308-309 149時間目>>310-311 150時間目>>312-313 151時間目>>314-316
152時間目>>317-318 153時間目>>319-321 154時間目>>322-323 155時間目>>324-326
156時間目>>327-330
7.5章 とあるお休みの一日:同棲生活は命がけ編
召喚実験シリーズ:〜みんなの子どもシミュレーション〜
その①>>334-336 その②>>337-338 その③>>339-341
その④>>342-344 その⑤>>345-347 その⑥>>348-350
文月学園新聞&特別補習:鉄拳先生の情報講座>>353-355
彼と彼女のとある日の出来事
〜明久と瑞希編〜
前編>>356-358 中編>>359-361 後編>>362-365
〜雄二と翔子編〜
前編>>366-368 中編>>369-372 後編>>373-377
〜造と秀吉と優子編〜
前編>>378-380 中編 後編
〜明久と美波編〜
前編 中編 後編
〜造と葵編〜
前編 中編 後編
〜康太と愛子編〜
前編 中編 後編
おいでませ文月学園!久保弟の学校見学
前編 中編 後編
8章 最終決戦!Aクラス対Fクラス試召戦争編
———バカテスト集———
その⑦>>18-19 その⑧>>240 その⑨>>278
———各種設定———
文月学園レポート:腕輪編その①>>17 その②>>279
お知らせ>>270
- 155時間目 ( No.324 )
- 日時: 2016/03/11 22:06
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
明久Side
「よし、お前たちここはもういい。とりあえず鉄人たちにキレられる前に一階のバリケードを取っ払え。それとすぐに監禁していた木下姉も解放するんだ。ちゃんと謝っておくんだぞ」
『おうよ!任せておきな坂本!』
「後は教室で待機しておけ、戻り次第時間が許す限り補充試験を行う予定だ。少しでも点を取れるように復習でもしてろ。いいな?」
『了解だ、じゃあまた後でな。———よし、お前たち急いで戻るぞ!』
『『『応っ!!!』』』
今までと比べると明らかに様子が違うFFF団。彼らを率いていた須川君たちに呪詛を吐きながら、あろうことかさっきまで殺そうと追い立てていた雄二の指示を的確に聞き従う。いやぁ本当に秀吉はよくやってくれたよね。そして扉越しにFFF団が階段を降りてそれぞれ教室に戻ったり一階に行ったり木下さんを解放しに行った音を聞きながら僕らは思う。———本当にFFF団は単純だな、と。
『『『ど、どういうことだこれは……!?』』』
『な、何故だ!?何故坂本なんかの言うことを聞く!?一体どうしたと言うのだFFF団っ!』
頼りにしていたFFF団があっさりと寝返って、自信満々だった須川君たちは一変大混乱に。今日は散々豪い目に遭わされたんだし、ちょっぴりすっきりするね。んじゃ、折角だしアレを聞かせてあげようかな。
「まあまあ須川君たち。多分とある会話を聞いてみればその理由もすぐにわかると思うよ」
「だな、おいムッツリーニ。このバカ3人に聞かせてやりな」
「…………了解、再生」
〜例のボイスレコーダー再生中〜
『『『何だコレ!?』』』
秀吉渾身の力作であるこのボイスレコーダーに入った会話を須川君たちにも聞かせてあげることに。さっき以上に慄いている様子が見て取れる。それにしてもホント秀吉は凄いよね。時間がないから一発録りだったのに一人六役を見事に演じてた上、話聞かないFFF団を懐柔してくれたわけだし。
『いつだ、いつの会話だこれは!?』
『と言うかいつこんなものを……!?と、盗聴かムッツリーニ!?』
『ま、待て落ち着け福村に横溝!?そもそもこんな会話心当たりなんて———』
……今更だけど、色々殺されかけたとは言えこんなねつ造会話を使うのは流石に須川君たちに悪い気がしなくもない。こんなんでも須川君たちも僕らFクラスの貴重な戦力なわけだし、後でちゃんとこの誤解を解いて———
『———心当たりなんて……な、無くもないが……』
『『う、うむ……こういう事もあったような……無かったような……』』
「「「(やっぱ心当たりあるんかい……)」」」
———前言撤回、解く必要なさそうだ。どうやら誤解でも何でも無いらしい。一応疑われる可能性もあったからムッツリーニが予め仕入れていた情報を元に秀吉が作った会話だから、そりゃこれも心当たりあるのだろうけどさ。
『『『だがこれは明らかにおかしい!この会話の中の彼女たち———否、これまで告白してきた女の子から……OKを貰ったことなど一度たりとも無いんだぞ!?』』』
「それ自分で言ってて悲しくならない!?」
彼らの心からのモテたいという想いが伝わる叫びが屋上に木霊する。そしてその叫びに思わずツッコミを入れてしまう僕。血の涙流してまで、学園全体に聞こえそうなくらい大声で言わなくてもいいんじゃ……
「ま、モテねぇからこそこんなバカみたいな反乱起こしやがったわけだしな。さてと、んじゃ俺はそろそろ造と秀吉、それから小山と少し話してからFクラスに戻るな。今すぐにでもあのバカ共に補充試験の指示しなきゃならねぇ」
「ん、了解。それじゃあそっちは任せた。でもってこの場は任せてよ雄二」
「…………俺らも後から行く」
「坂本君、そっちはよろしくお願いしますね」
「おうよ、任された。お前らご苦労さんだったな」
今日の反乱のお陰で予定とか完全に狂わされたわけだし、戦力もかなり削れているからね。Aクラス戦を控えていることだし雄二が早速行動開始しようとしている。どうでもいいけどコイツ普段はクラス代表の仕事は造とかに任せているくらいダラけることの達人の癖に、こういう大事な場面ではキッチリ動くんだよね……雄二は普段からもっとしっかりすべきだと思うんだけど。
『ま、待てや貴様ら!』
『か、勝手に終わらせんなバカ共!』
「ん?」
と、屋上から出ようとした雄二の前に須川君たちが立ちはだかる。わかっちゃいたけどまったくしつこいね。
「なんだ一体。俺は忙しいから構うな、明久たちに遊んでもらえや須川に横溝に福村」
『ちょ、調子に乗るな異端者共!いくらFFF団を卑劣な手段で懐柔しようとも、こちらには奥の手が残っている!』
「……奥の手?へぇ、それって何かな須川君」
奥の手ねぇ?それはまさかとは思うけど……“アレ”じゃないよね?
『聞いて驚くなよバカめ!そんな小細工など効かない、いやと言うより聞く耳持たない連中がいるんだよぉ!』
「ほー?小細工が効かないねぇ?」
『その通り!貴様らを屠ることだけしか考えられなくなったリミッター解除している貴様ら以上の戦闘力を持つ狂戦士達(バーサーカーズ)がまだ俺らには付いているんだ!』
「へー?狂戦士達(バーサーカーズ)ねぇ?」
『よ、呼ぶからな!今ここに呼ぶからな!余裕ぶっこいてるその顔を歪ませてやる!おぉい皆!異端者吉井たちはここにいるぞぉ!』
そう大声で屋上から叫ぶ須川君たち。ああ、やっぱり奥の手ってそれなんだ……先に言っておくね、ご愁傷さま。そして———そろそろキミの出番だね、お待たせ。
「———へぇ?アキたち以上の戦闘力ですって?それはとても怖いわね」
『『『……えっ?』』』
彼らがその連中を呼ぶと同時に、屋上にいた生徒の一人が瑞希やムッツリーニと同じように秀吉にしてもらっていた変装を解き現れる———さあ、今度はキミに任せるよ“美波”!
『『『……なっ!?き、キサマ……島田!?』』』
「ハロハロー須川に福村、横溝も。さっきから黙って話聞いてたんだけどアンタら随分と元気そうでなによりね。これくらい元気なら———ウチが全力で討ちにいっても死なないわよね……?」
『『『ヒィ!?』』』
これで僕ら全員が揃ったことになる。造や秀吉の活躍で、途中本気で危なかったりもしたけれど全員無事だ。“Fクラスの変”は失敗だね須川君たち。そしてもっと言うなら……あろうことかこの美波をここまで怒らせちゃったことは大失敗だね君たち。
「アンタら随分イロイロやってくれたわね。面白いわ……ウチらのことを散々コケにしてくれちゃってホント面白いわ……今日は無事に帰れるなんて思わない事ね……!」
『お、おい狂戦士達(バーサーカーズ)!早く来るんだ狂戦士達(バーサーカーズ)!吉井たちはここにいるぞぉ!』
『今すぐ来てくれぇ!?し、島田が!島田がヤバイ!?何か黒いオーラ漏れてる……全身から殺気が迸ってるぅ!』
『し、島田ァ!おおお、お前でも流石に狂戦士達(バーサーカーズ)には敵わんぞ!今すぐその殺気と闘気を収めてくれるなら……ゆ、許してやらんこともないぞ!?』
遠目だととっても素敵で可愛い笑顔だけど、よく見れば瞳に光が灯っていないご様子の美波。う、うーん……久しぶりに本気で怒った美波を見たけどすごい迫力だ……そんな彼女の殺気に当てられて、完全に及び腰になってビビっている口だけ強気の須川君たち。どうやら狂戦士達(バーサーカーズ)をここに呼んで美波の相手をしてもらう魂胆のようだ。
「ふーん?それってウチでも敵わない程強い奴らってことかしら?」
『そ、その通り!島田ですら敵わん!だ、だから大人しくしておくんだな!』
「そうなんだ。さっきも言ったけどそれは怖いわね。ところで———
———それってまさかとは思うけど、ウチですら敵わない奴らって……コイツらじゃないわよね?」
『『『……え?』』』
そう言って美波は屋上の隅に隠してあったブルーシートをバッ!っと勢いよく捲る。その中から出てきたものは……
『うぐぅ……か、関節がイデェ……』
『お、俺たちは一体何を……?何でここに……?さっきまで何してたんだ……?』
『し、島田様……ホント反省しましたので……そろそろ許していたたたたたた!?』
……須川君たちが頼りにしていたであろう、Fクラスの狂戦士達(バーサーカーズ)と呼ばれた者たちの成れの果て。ご丁寧に全員が関節を外されロープで縛られているとい見るに堪えない姿になっている辺り流石は美波とムッツリーニだと言わざるを得ない。その痛みのお陰で僕らを追っていた時はあれだけ錯乱していたにもかかわらずちゃんと(?)正気に戻っているようだ。
『『『え……えっ!?ええっ!?』』』
- 155時間目 ( No.325 )
- 日時: 2016/03/11 22:07
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
「で?ウチですら敵わない連中はまだかしら?まさかこんな話にならない連中じゃないわよねぇ?」
『そ、その……島田さん、いいえ島田様。まさかこれをやったのは……』
「ウチと土屋よ。まあ……土屋はまだ体力が回復しきっていなかったようだから———“こいつらの大部分”は“ウチがまとめて”やったんだけどね」
〜美波回想中〜
『ですからある程度はヒデさんが何とかしてくださったハズですから、残りの問題は一つだけだと思います』
『残りの問題……それっていわゆる“狂戦士達(バーサーカーズ)”と呼ばれるFクラスの皆さんをどうするのか、ですか?』
『はいです。困りましたよね……恐らく仮にこーさんが回復して、アキさん達が繋がれている手錠を開錠して3人で戦ったとしても……その方々を止めるのは難しいだろうとアキさん達が仰っていまして』
『こ、困りましたね……明久君たちもとても強いですけど、それ以上って……』
『……ならOK。いけるわね』
『『……えっ?』』
『し、島田さん……?あ、あの……』
『月野、今までよく頑張ってくれたわね。後は作戦再開までしばらく休んでいなさい。瑞希、アンタは月野の作戦通りここから出たら指定の場所に行っておいて。残りの問題は———ウチに任せなさい』
———黙って月野の話を聞いてみたけど……うん、それなら大丈夫そうね。そう月野に言って闘気を全身に纏わせながら立ち上がるウチ。
『み、美波ちゃん?美波ちゃんはどうするんですか……?』
『……ふ、ふふふっ……ウチ?ウチはね———バカげた暴走をしているそのバカ達の暴走を止めてやることにするわ』
『『ええっ!?』』
そのウチの発言に目を丸くして慌てふためく瑞希と月野。ん?どうしたのよ二人とも?
『何を慌ててるのよ。アキや土屋たちが敵わないレベルの手におえず暴走している連中を止めなきゃいけないんでしょ?つまりはアレよ、そのアキたち以上に戦える人が止めれば済む話じゃないの。だったらウチの出番ってわけね、そんな奴ら一捻りよ』
『だ、駄目ですよ!?狂戦士達(バーサーカーズ)と呼ばれる方々はホントに危険な方々何ですよ!?自分何度か彼らと接触したのですが、一度危うく殺されかけたんですよ!?』
『み、美波ちゃんが危ない目に遭うのなんて私みたくありません!』
あー……なるほど、そう言う事ね。全く二人とも心配性ねぇ?そんな心配しなくても———
『安心なさい。嘗めてもらっちゃ困るわ……ウチがそんなただただ我を忘れて暴れているだけの連中に後れを取るとでも?冗談じゃない……こんな場所に閉じ込めてくれたこと、大事な試召戦争中に余計な事をしてくれたこと、そしてアキを酷い目に遭わせてくれたこと———その恨み全部まとめておつり付きで仕返ししてやらないとウチが気が済まないもの。そいつらの相手はウチがする、いいわね?』
そう言ってパァンッ!と乾いた音を立たたせ拳と手のひらを打ち合わせるウチ。今回ばかりはちょっと許せないわよね。と言うか最初から許す気も無いわ……!目には目と鼻を、歯には歯と舌をよ……!
『『…………』』
『ん?何よ瑞希に月野?ウチを見てボーっとしちゃってさ』
『……島田さん、すっごくカッコイイです。自分も島田さんのカッコよさ見習いたいくらいです……』
『……わ、私ちょっと美波ちゃんにまで惚れちゃたかもしれません……』
『アンタ達それどういう意味よ!?』
〜美波回想終了〜
「———って感じで、後は補充試験室から出て木下の作ってくれてたリストを使って暴走してる連中を見つけては、全力で叩きのめし関節外してから正気に戻してあげたってこと。理解できたかしら?」
『『『…………』』』
そんな美波の話に絶句する須川君たち。そりゃそうだ、理性を失いあんなに殺気立って僕らを始末しようとしていたおぞましき狂戦士達(バーサーカーズ)が一人の女の子に大部分が潰されたとあれば言葉を失ってしまうのも無理はないと思う。
「それにしても……全く無事にいったとは言え美波も無茶するなぁ。あんまり無茶したら駄目だよ。怪我したら元も子もないでしょ」
「心配してくれてありがとアキ♪でもコイツら随分とあっけなかったわよ。正直幻滅ね……もう少し張り合いがないとウチの気が収まらないわ。ねぇ土屋」
「…………(コクコク)」
「ま、その分の鬱憤は———首謀者のアンタらで晴らすけどね……よくも今まであんな狭い所にウチと瑞希閉じ込めてくれたわね……そしてよくもアキをいじめてくれたわね……!」
『『『…………(ヤバイ、死ぬかもこれ)』』』
再び美波から立ち上る闘気と殺気。ここにきてようやく自分たちの置かれた状況を理解した須川君たちは涙目になってガタガタと震え始める。
「んじゃ、俺はもう行くな。まずは造と秀吉、それから小山と少し話をせんとな」
『さ、坂本クゥン!?は、反省するしもうバカな真似はしないから助けてくれませんかぁ!?』
「HAHAHA!聞こえんなぁ?言っただろ、俺は忙しい。島田たちに遊んでもらえや」
「じゃあ造たちにお疲れって言っておいてね雄二。僕らこの三人の末路見てから戻るから」
「おうよ。後でコイツらがどんな面白い惨劇になったのかちゃんと報告しろよ明久」
そう言って愉悦そうな顔で須川君たちを一瞥してさっさと屋上から去っていった雄二。
『だ、だったら……む、ムッツリーニさん!我々のお宝(エロ本)を贈呈いたしますのでどうかお助けを!』
「…………趣味が合わないだろうしいらん。明久、それから島田に姫路。俺は工藤に礼を言って来る」
「ん、了解。愛子によろしくね」
「はい、愛子ちゃんにありがとうございましたって言っておいてください」
「ムッツリーニ、君も病み上がりなんだしあんまり無理しないようにね」
「…………三人もお疲れ」
ムッツリーニはムッツリーニで彼らの懇願を無視して、どこからか取り出したロープを伝って屋上からするすると降りていく。これで屋上に残ったのは須川君たち三人に僕と瑞希と美波の三人だ。
『く、クソッ……!なんでだよ……!俺たちはただ……ただ異端者共を……!俺らがモテないのは吉井たちバカのせいだって言うのに!何で俺らがこんな恐ろしい目に遭わなきゃならないんだよ!?』
「えー……そ、それは流石に僕に言われても」
『そ、そうだ!全部吉井たちが悪い!なんでお前みたいなバカがモテるんだ!?』
『吉井は勉強も出来ないうえにブサイクで役立たずのバカだろ!?そんなバカがモテるなんておかしい!どんな卑怯なことをしたんだ貴様!』
後がない三人は逆切れ気味にそんな罵倒をしてくる。我が事ながら酷い言われようだ。そこまで言わんでも……と言うかどうしてまた一言ごとに僕の事を必ずバカって呼ぶんだろうか。流石に泣きたくなってちょっぴり文句を言おうと思ったその矢先。
「……一つだけ、言わせてください須川君たち」
「「ん……?瑞希……?」」
『『『姫路さん……?』』』
と、何故だか瑞希が美波と須川君たちに割って入ってそう言って来る。一体何だろうか?
「えっと……その前に明久君。ほんの少しだけ耳を塞いでもらっててもいいですか?」
「へ?僕?耳塞ぐ?……何で?」
「お願いします明久君」
うーん、よくわかんないけど何だか重要そうな話だし、それに瑞希の真剣そうな目を見るとどうにも断れない。ならちょっと彼女の言う通りにしようかな。
「ん、了解。塞いでおくね。あ、でも何かあったらすぐに知らせてね」
「ありがとうございます明久君」
「ねえ瑞希、ウチは?聞いてていいの?」
「あ、大丈夫です。美波ちゃんには一度お話したことありますし」
「……ああ、なるほど。あの話するんだ」
そのまま耳を塞いでしばらく待つことに。一応須川君たちが逃げ出したり錯乱して瑞希や美波に襲い掛かると不味いから目は開けておくけどね。僕が耳を塞ぐと、瑞希は静かに話し始める。
『お待たせしました。言いたかったのはですね———私が好きな人、好きになった人の話です。皆さんは私がどうして……明久君を好きになったのかわからないのですよね』
『あ、ああ……こいつらは一体どんな汚い手を使ったのか———』
『私は……明久君に昔から助けられてきました』
『!?お、幼馴染だっただと……!?そうか坂本然り幼馴染だとポイントが高いのか……!お、おのれ……やはり粛清対象だコイツは!』
……耳塞いでいるから何にも聞こえないけど、なんか変な殺気を感じる。な、何を話しているんだろうか?
『いえ、そこが重要ってわけじゃないのですが……コホン。そう、私はずっと助けられてきました。小学校でも、試召戦争でも、あの肝試しの時でも……いいえ毎日助けられてきたんです』
『そ、そう言う事か……つまりそんなイベントがあったからこいつはモテて……!俺たちにもそんなイベントさえあればモテるのか畜生……!』
さっき以上に殺気を感じる。だから何!?何を皆で話してんの!?今すぐにでも塞いだ耳を解放したいだけど……
- 155時間目 ( No.326 )
- 日時: 2016/03/11 22:08
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
『……確かに須川君たちの言う通り、例えば……翔子ちゃんと坂本君のように長い時間をかけて積み重ねてきたものもあるかもしれませんね』
『だろう!こいつらはそう言う機会に恵まれたってことだ……!お、俺らだって長い時間女子と共に過ごす機会さえあればきっとモテて———』
『ですが違います。大事なのはそこじゃありません』
『『『えっ……?』』』
……ん?あれ、なんか空気が変わった……?
『小学校のころ一緒だったのは事実ですが、クラスが一緒だったのは四年生の時だけです。そこから先は高校二年生になるまで交流なんてありませんでした。そう……時間だけが全てじゃないんです』
『そうよね。そう言う話ならウチなんてアキと出会ったのは去年よ』
『『『そう言われれば……そうだが……』』』
うぅん……気になるなぁ。多分関係ない話のはずなのに何故だかむず痒い気持ちになってくる。でも聞いちゃダメだって言ってたし我慢するしかないか。
『だが時間だけじゃないと言うなら、一体あの世界一のバカのどこが良いと言うんだ!?あのバカには汚点しか見当たらないじゃないか!』
『確かに皆さんの仰る通り明久君にも悪い所あると思います……成績は最近急上昇しているとはいえ特段良いってわけじゃありません。それとまだまだ女心がわからないようですし……すぐ他の子たちに好かれちゃいますし……』
『アンタらの言う通り、アキって時々とんでもないバカをやらかしたりもするわ。今でこそちょっとは気遣い上手になったけど、アキって結構直球で失礼な事も言っちゃうことだってあったしさ』
『その通りだ。だからこそ理解できん!奴のどこに惚れたと言うのだ!?』
『悪い所もあれば良い所もいっぱいあるからですよ』
『そう言う事。アンタら知ってる?アキの良い所をさ』
『『『……よ、吉井の良い所?…………そ、存在するのか?』』』
うぉい!?……あ、あれ?何だろうか。今すぐここで須川君たちをぶん殴りたくなる気分になったんだけど……
『明久君の良い所いっぱいありますよ。例えば……試召戦争中の明久君の姿は皆さんも見てきたはずです。明久君は怪我することを躊躇わずにクラスの為、そして……私たちのために全力を尽くしてくれました。そう、他人の為に一生懸命になれるそんな素敵な人なんです』
『窓ガラスを壊す壁を壊す、そのせいで怪我をする———正直褒められるようなことじゃないかもしれないわ。バカにされても仕方のない事かもね。でも、それは全部ウチらの為に一生懸命アキが考えてやったことなのよ。アンタらは試召戦争中そう言う事ちゃんと出来た?今日なんて酷いものだったじゃない。嫉妬して本来の目標も忘れて暴れるだけ暴れて……そんなんでモテると思ってるの?』
『『『うっ……』』』
何か瑞希と美波が言ったと同時に、気まずそうに顔を伏せる須川君たち。
『だからこそ……他人の為に頑張れる心優しい明久君だからこそ、私たちは好きになったんです』
『アンタらさ、そんなにアキがモテて悔しいなら……自分たちがモテたいのなら……せめて試召戦争で活躍してみなさいよ。一生懸命何かに打ち込めるなら———モテるきっかけが作れるかもしれないわよ』
『『『モテるだとぉ!?』』』
と、二人が何か彼らに言い終わると、トントンと僕の肩を叩いて耳を塞ぐのはここまででいいですよと合図してくれる。あ、終わったっぽい?
「明久君、もういいですよ」
「ん、そう?」
「話は付いたわ。で、須川に福村に横溝。アンタらこれからどうするか言ってくれる?」
さて、何を話していたのはわからず仕舞いだけど、須川君たちは一体何と答えるんだろうか。少し緊張しながら彼らの答えを待つと……
『……わかった。確かにそうだ。俺らにはそういう努力が足りなかった』
『試召戦争という大事な戦いにつまらない事をしてしまったな……』
『その……すまなかった吉井。俺、確かに間違っていたのかもしれないな』
…………たった2.3分程度の会話の間に、君たちに何があったんだ。
「そ、そうなんだ……じゃ、じゃあ今後は———」
『『『———ああ、任せろ!試召戦争中は今後嫉妬心に捕らわれず真面目に挑む!それこそがモテる秘訣だしな!』』』
「ね、ねえ瑞希に美波?何話してたの?何でこうもあっさり須川君たち協力的になってるの?」
わからない……いくら彼らが単純だからって、こんなに物わかりが良いはずないのに。そう困惑しながら二人に聞くと。
「「明久君(アキ)のお陰ですかね(かしらね)♪」」
なんて、よくわからない答えと笑顔を送ってくれた。ま、まあよくわからないけれど———色々とピンチの連続だったけれど、これで僕らの対Cクラス試召戦争は何とか無事に幕を……
「———まあ、それはそれとして。アンタらをオシオキしないってことにはならないけどね」
『『『…………What?』』』
幕を下ろすことになるのは、まだ早い。まだだ、まだ終わっていないぞ須川君たちよ。
『え、ちょ……ちょっと待ってください島田様……オシオキ?』
『この流れはアレじゃないですか?ほら、次からは心を入れ替えて頑張ろう!的な……皆で協力して敵を倒そう的な……』
『お、俺たちはもう改心しましたので……ここはオシオキ無しでお願いできたら嬉しいのですけど……』
「何を勝手に綺麗に終わらせようとしているのかしら……アンタらが改心することと———ウチらに色々やってくれたことに対する制裁はまた別問題でしょう……?」
と、まだ終わっていないわよと美波が殺気を剥き出しにして笑い須川君たち三人は固まる。デスヨネー、正直須川君たちはやり過ぎたと思うし美波の言うことは尤もだ。
『『『ひ、姫路さんッ!俺たちもう変な事はしないと約束しますので、どうか島田様を止めて頂けないでしょうか!?』』』
「え?うーんー……そうですね」
ズンズンと近づいてくる美波を目の前にして、瑞希に助けを斯う須川君たち。そんな須川君たちのSOSを聞いた瑞希はほんの少し考えてから———
「言いたいことはちゃんと言えましたし……私も実を言うとですね、美波ちゃんと一緒で明久君虐めてたことは———ちょっと許せないかなーって思ってたんです☆と言うわけで美波ちゃん、お願いしますね」
「うん、なら任せてね瑞希」
『『『姫路さぁん!?』』』
———そうニコニコ笑顔で答える。普段は温厚な彼女も、今日に限って言えば実は相当怒っていたようだ。情け容赦なく須川君たちのSOSを切り捨てる瑞希。なるほどこれが自業自得、そして人を呪わば穴二つということか。うんうん、勉強になるなぁ。
『『『超ナイスガイな吉井クン!もう我々は心を入れ替えたんだ!これからの試召戦争ではきっと我々の力が必要になる!だからどうか助けてくれませんかね!?』』』
もう後がない彼らは僕に土下座までして助けてとお願いしてくる。むぅ、確かにいくら制裁の為とは言えこのままじゃ多分美波の手によって全身の関節は外され骨と言う骨が砕かれてしまう。そうなれば一人でも多く戦える人が必要になるであろう今後のAクラス戦が不利になるかもしれない。そう言う意味では戦力は残しておくべきだろう。
『(吉井……)』
『(吉井……っ)』
『(吉井……っ!)』
彼らのそんな助けを斯う顔を見て、今一度冷静になって考えてみる僕。考えをまとめてから一言。
「…………見捨てても、良いんじゃないかなぁ」
『『『吉井クゥン!?』』』
冷静になって考えれば、さっきも思った通りこの彼らの窮地は嫉妬に狂い大事な試召戦争をボイコットしたばかりか妨害までしてきた結果、つまりは自業自得だもんね。そうでなくてもいつも酷い目に遭わされているわけだし……
「とは言え一応は戦力の一部なんだしさ、美波。悪いんだけど———死ぬ一歩手前で許してあげてね」
「はーい♪もうアキは優しいわねぇ、アンタ達アキの心遣いに感謝することね」
『『『どう考えても許してもらえる対応じゃねぇ!?』』』
そりゃ許されないことしたのは君たちなんだしこればかりは仕方ないだろう。
「んじゃ、瑞希。この制裁を観戦しながら少し休んでしばらくしたら美波と三人で戻ろうね」
「はい、明久君お疲れ様でした。怪我とかありませんか?」
「へーきへーき、問題ないよ」
と言うわけで屋上の隅の狂戦士達(バーサーカーズ)を隠していたブルーシートをレジャーシート代わりにして座って美波の殺戮ショーを観戦することにした僕と瑞希。見たがっていたわけだし、後で雄二にも彼らの末路を聞かせてあげよう。
「んじゃ、そろそろ……覚悟を決めなさいアンタら。うっかり死なないように気を付けなさいな」
『『『ちょ、や……止めてください島田様……い、嫌だ……そ、そこは曲がらな……許し……———ぎゃあああああああああああああああああああああああっ!?』』』
———と言うわけで、これでようやく長かった対Cクラス試召戦争・防衛戦・そしてFクラスの暴動は須川君たちの悲痛な断末魔が屋上に木霊するなか幕を下ろすこととなった。いやはや、みんなお疲れさま。
- 156時間目 ( No.327 )
- 日時: 2016/03/11 22:16
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
造Side
「———おう、造に秀吉。ちょいと待たせちまったな。そんでもって良くやってくれた、ありがとな」
「いえいえ、ゆーさんもお疲れ様でした」
「無事に屋上から戻ってこられたところを見ると、須川たちの件は片が付いたようじゃな」
「まあな、今頃きっと屋上は面白いことになってるだろうさ。直で見れないのは残念だがな」
Cクラス対Fクラスの試召戦争は何とか自分たちの勝利で終わりました。その試召戦争で自分たちが一体何をやったのかを小山さんに説明し終えたのとほぼ同時に、かっかっか!と笑いつつ旧校舎一階にやってきた我らが代表にして軍師のゆーさん。良かった、屋上の方も無事に済んだようですね。……彼らが無事だと良いのですけど。
「さてと、だ。よう小山。随分と健闘したようだが残念だったな。俺たちの勝ちだ」
「……そのようね。Fクラスを懐柔して戦うなんて卑怯な作戦だったのにね。……言い忘れてたけど、悪かったわねあんな禁じ手みたいな手段で挑んじゃって」
震える声でそう返す小山さん。
「あ?お前は何言ってんだ、Cクラスの作戦自体は何も悪くねーだろ。そもそも懐柔されるようなあいつらが悪い。そう言う意味じゃ良く策が練られてたと思うぞ。逆に俺は明久にも途中言われたが代表失格かもしれんしな」
「いや、今回は代表とかそれ以前の問題じゃし雄二がどうのこうのの問題ではないと思うがの」
「ですね……ヒデさんが上手にフォローしてくれたお陰で今後はこんなことは無いと思いますが」
「つか、次アイツらがまたつまらん理由で反逆しようものなら次こそ本気でブチのめす」
そうなったら島田以上の地獄を見せてやる、なんて言ってるゆーさん。あ、この目はマズい本気だ……
「おっと、話逸れてるな。ワリィ小山。で、ある意味奴らが迷惑かけたことだし、詫びと言っては何だがどうやってお前たちに勝ったのか気になるなら説明してやってもいいぞ。聞くか?」
「……それはもういいわ。どんな手を使って貴方たちが逆転したのかは、さっき聞いたから」
「そうか、ならそろそろ戦後処理を———」
「……待って。ただ、別の事で一つ聞かせて。坂本君の立場から見た意見を聞きたいんだけど、今回私の何がダメだったと思う?」
「ん?……ふむ、そうだな。さっきも言ったがお前の作戦自体は悪くなかった……それでも負けたのはまず秀吉を嘗めすぎたこと。それから……Fクラス代表の俺が言うのもおかしいが、Fクラスと言う危険要素を作戦に組み込んじまったことだろうな」
「……と言うと?」
小山さんの問いにゆーさんが数秒考えて答えます。ふむふむ、ゆーさん曰く一つ目のCクラスの敗因は自分もさっき言った通りヒデさんの存在を軽視した点。そしてもう一つは……Fクラスを利用した点、ですか。
「秀吉を軽視したことはしゃーない、ダークホースだったしな。だから問題があるとしたらFクラスの扱いだ。よりにもよって簡単に造反したりちょっとしたことに影響されやすいバカの集大成共を安易に使うのは少しマズかっただろう。俺ですら手に余ってるんだぞ、他のクラスが一朝一夕でコントロールできるはずがない」
「あー……なるほど確かに。そのせいで今回大変でしたからね……Cクラスの皆さん自身が振り回されることも考慮しておくべきだったってことですか」
「些細な出来事で裏切ったり寝返ったり手のひらを返したりとあやつらは本当に忙しいやつらじゃからのう……」
「そう言うこった。要するにFクラスの連中に逆に裏切られる可能性を考えていなかったのはマズいってことだよ」
つまりCクラスの皆さんがFクラスの皆さんを簡単に懐柔出来たならば、その逆で簡単にFクラスの皆さんを懐柔されてしまうこともきちんと念頭に置いておく必要があったと言うわけですか。
「とは言えあの連中を使ったからこそ、ここまで俺らは追い詰められたんだ。だからこそ利用するなら利用するで常に奴らの手綱を握っておくべきだっただろうな。例えば裏切り防止に何組かに一人Cクラス生徒を付けておく。不穏な動きがあったなら監視の目を強化したり使えないと判断すれば迷わず勝負を挑んで戦死させる、とかな」
「……なるほどね。もう使えない手でしょうけど、参考になったわ」
ゆーさんの答えに納得したのか、小山さんは大きくため息を吐きそう返します。……あれ?何でしょう、小山さん少し震えている……?気のせい……ですかね?
「それはこっちの台詞でもあるさ。今回のお前たちのお陰で俺もあのバカ共に対し今後どう対応すべきか見えた。Aクラス戦前に不満を爆発させれたのはデカいし、何よりこの試召戦争を経て造や秀吉の運用方法に更にバリエーションが増えることになったからな。今後の良い経験を積ませてもらったぜ、感謝してる」
「Fクラスを使って追い詰めるつもりが、かえって貴方たちを強化させちゃったのね……なんというか皮肉なものね」
確かにAクラス戦前の暴動で良かったですよね……流石にAクラスで同じことが起こったら対処できなかったでしょうし。そう言う意味も含めて今回は非常に良い防衛戦となりましたね。自分もあの戦いの中で苦手としていた接近戦を克服できましたし。
「そう落ち込むな。知っての通り俺らの目標はあくまでAクラス。お前らのクラス設備をどうのこうのするつもりはない。その話を含めて戦後処理に入りたいんだが、良いか?」
「……好きにして。もう何でもいいわ。もう……どうでも……いいわ……」
「?お、おう?そうか、なら———ワリィ造。今日はずっと任せきりだがこれで最後だ。この前のEクラスのように小山と戦後処理をしておいてくれ。俺は今すぐにでもFクラスに戻って補充試験の指示をしておきたい」
「あ、はいです。そちらはお願いしますね。交渉内容はEクラス戦の時と同じ感じで良いですか?」
「ああそれでいい、頼んだぞ。じゃあな小山。ご苦労さん」
「……」
と、もう話すことは無いと言わんばかりに忙しくFクラスに戻るゆーさん。今回の試召戦争でかなり皆さん点数が消費されちゃいましたから、Aクラス戦も間近に控えているわけですし一刻も早く戦力回復をしておきたいのでしょうね。
「すまぬ造よ。戦後処理はワシも抜けて良いかの?姉上と制服を交換しっぱなしじゃし、正直今すぐにでもこの女装を解きたいのじゃ。姉上にも礼を言わねばならぬしの」
「ええ勿論ですよ。あ、自分からも優姉さんに助かりましたありがとうですって言っていたと伝えておいてください。それではヒデさん本当にお疲れ様でした」
「うむ任せよ、お主もお疲れ様じゃったな。ではワシも失礼するぞ小山よ」
ゆーさんに続いて今回のMVPであるヒデさんもこの空き教室を後にします。いやはやヒデさん本当にお疲れ様でした。さて、それじゃあ自分もちゃんと最後までお仕事してからFクラスの戻るとしましょうかね。
「さて、お疲れのところ申し訳ありませんが最後にちゃんと戦後処理を行ってから終わらせることにしましょうね小山さん」
「……」
「ああ、安心してください。さっきゆーさんもちらっと言っていましたが、Aクラス戦で少しばかり手を貸してもらいたいだけです」
「…………」
「ですから自分たちはCクラスのクラス設備をどうにか……する、つもりは」
「…………(ぽろぽろ)」
……え?
「こ、小山……さん……?」
「……す、すみませ……せんぱい……み、ないで……」
え、え?こ、これどういうことです……?何故だか戦後処理に入ろうとした途端、堰を切ったかの如くその小山さんの瞳からは涙が流れ出し始めます。そ、そんなに負けたことが悔しかったのですか……?いや当然悔しくないハズないでしょうし、代表としてクラスの皆さんに申し訳ないって思うのも無理はありませんよね……
「え、えっとその……っ!い、今言った通り自分たちはCクラスのクラス設備をどうのこうのするつもりはありませんし、Cクラスの作戦はとても凄かったって思います!で、ですからそう気に病まずともCクラスの皆さんもわかってくれると思いますので落ち着いてくださ———」
「ちが……う……で、す……」
「———え?」
しどろもどろながら彼女を慰めようと言葉をかけるも、首を横に振って違うと言う小山さん。
「まけたら……あ、アイツ……との……やくそく……わた、し……やくそく……まもれな……」
「小山さん?」
「す、すみま……せ……うぅ……」
負けたら……?アイツとの約束……?それってどういう……思い返せば今回の小山さんからは、どんな手を使おうとも何が何でも勝たねばならないと言う強い意志を感じました。この話しぶりも考慮すると……もしかしてこの試召戦争とはまた別の件で何か複雑な事情アリ……?むぅ……このまま泣いている彼女を放っておけませんし……
「……何やらワケありと見ました。とりあえず小山さん、少し落ち着ける場所に移動しましょうか。ここは人が来ます」
「…………(コクコク)」
ここは一階で近くに職員室もありますし、このままじゃ小山さんの泣いている姿を他の方に見られちゃいます。彼女としてもそんな姿を他の人に見せたくないでしょう。そう考え彼女にハンカチを渡しつつ、ゆっくり落ち着いて話の出来る場所に移動することに。……さて。なるべく誰にも邪魔されず、落ち着いて話が出来る場所を提供してくれそうな人……そして小山さんの悩みを打ち明けても大丈夫そうな人と言えば……
「……ここは彼女に頼みますかね」
〜造&小山移動中〜
- 156時間目 ( No.328 )
- 日時: 2016/03/11 22:16
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
———文月学園茶道部:茶室———
「———すみません小暮さん、授業中ですのに突然呼び出してしまって。おまけに部室である茶室まで貸していただくことになって……」
「いえいえ。他ならぬ月野君の頼みで、しかも私の大事な後輩の悩み相談と聞けば黙っていられませんので。そもそもこの時期は自習期間ですから割と暇をしていたんです私」
と、言うわけで。自分が考える最もこういう話に適しているお方……つまりは小暮さんにSOSを出して応援に来てもらうことに。ついでに彼女が所属している茶道部の茶室を貸してもらうことになりました。
「それにしても……ここ結構静かでいいですね。あまり茶室には来る機会がありませんでしたが心休まる落ち着ける良い空気です。周りの音全然聞こえませんし」
「そうでしょう。落ち着いて茶道に集中出来るように防音対策はバッチリです。何をしてもされてもほとんど外には聞こえないですので安心して今度是非茶道部に遊びに来てくださいな月野君」
「小暮さん小暮さん、自分何故か“何をしてもされても防音のお陰で外に助けを呼んでも聞こえないので是非弄られに来てください”と貴女が言っているように聞こえるんですが気のせいでしょうか?」
「気のせいですよ♪」
この目……絶対気のせいじゃない……下手にここに近づけば防音なのを良い事に絶対小暮さんに弄られる……!ま、まあそれは今は置いておくとして。
「そんな漫才めいた話はこの辺にして……少し落ち着きましたか小山さん?」
「……は、はい……見苦しいところ……みせちゃってすみません先輩方」
「見苦しくなんかありません。感情のコントロールとして時には“泣く”という行為は非常に重要だと私は思いますよ。ですからそう気にしないでくださいな」
「……ありがとうございます」
ひとしきりここで泣いてから、ようやく少しだけ話ができるようになった小山さん。
「さて。それで本題ですが……小山さん。もし良かったら……話してみてくれませんか。一体貴方に何があってどうしたのかを」
「一人でため込む方が余計に辛いことになりますからね。勿論私も月野君も他言はしません。全部話す必要はありませんが、少しだけでも話してくださいな」
「もし内容的に自分に話せないのでしたら、小暮さんに話してみてください。その場合はここを出ますのでご安心を」
「…………」
そう自分と小暮さんが小山さんに話すと、静かに少し考えをまとめる小山さん。彼女の邪魔をしないように数分自分と小暮さんも静かに待つと———
「……とてもしょうもない、話です。それでも……大丈夫ですか?聞いて、もらえますか先輩たち……」
「「どうぞどうぞ」」
———意を決したようにポツリポツリと話し始める小山さん。
「……今回は、負けられなかったんです……」
「そうですね。今日の小山さんからは絶対に負けられないという強い意志を感じました」
「……作戦も、情報収集もいっぱいしました……時には小暮先輩にアドバイスも貰って……」
「ええ。Fクラスに勝つためにと、小山さんは沢山私に質問をしてましたね」
「……手段も選ばずに、不満が募ったFクラスを誘導して……反則ギリギリとわかっていながらもあの連中を利用して挑みました……」
「いいえ、あれはお見事でしたよ。ルール違反ってわけでもないですし周りの全てを使って勝ちに行く姿勢、とても素晴らしいと思います」
そこまで話すと一度呼吸を整えて、いよいよ本題に入る小山さん。
「……アイツとの、約束だったんです……」
「アイツ……それってどなたです?」
「約束……どういった約束ですか?」
「…………最初は……もう、俺たち別れようって……言われ、たんです……」
「「……はい?」」
話すたびに彼女の瞳から引っ込んでいた涙が再び流れ出します。わ、別れよう……ですと?それってまさか……
「で、も……急だったし……ぜんぜん納得……できなくて……アイツにくいさがって……!そしたら……チャンス、くれて……わ……わた……わた、しがFクラス戦で……勝てたら……その話、なしにして……くれるって……アイツ、言って……くれたのに……」
「「……」」
「ま……まけ、たから……別れ、られる……わたし……“恭二”に……フラれて……うぅ……」
そこまで言い切るともう我慢できなかったのでしょう。先ほどと同じように、いいえそれ以上に大粒の涙が零れ落ちその場に座り込んで嗚咽を上げる小山さん。小暮さんと二人で、そんな彼女の背中をポンポンと優しく撫でてしばらく落ち着くまで待つことに。……ごめんなさい、小山さん。お辛いことを話させちゃいましたね。
———10分後———
「では小暮さん、何から何まで頼んで申し訳ありませんが……彼女をお願いします」
「ええ月野君、こちらは任せてくださいね。さあ、行きましょうね小山さん」
「…………(こくこく)」
小山さんが落ち着くのをしばし待ってから、まだ少しばかり辛そうな彼女を小暮さんに託して二人と別れた自分。ゆーさんたちを待たせていますし本当ならすぐにFクラスに戻りたいところですが……あんな話を聞かされたんです。まずは小山さんの件を解決しなければね。そう思い“2-Bクラス”に足を運ぼうと階段を上がろうとした矢先———
「よう小学生、相変わらず憎たらしいなお前」
「……誰が小学生ですか誰が」
———2-Bクラスに行く手間が省けましたね。ある意味会いたくない、でも会わねばならない相手が階段の踊り場で立っていました。
「一応今授業中でしょ?いいんですかこんな場所にいて———ねぇ、根本くん」
「サボりだサボり。授業なんかより大事なものがあるからな。ま、それはそうと……Cクラスに勝ったそうじゃないか」
———そう……彼こそは自分たちFクラスと何かと因縁があり、間接的に今回小山さんを泣かせた男。2-Bクラス代表の……根本恭二くんです。
「……そんなことはもうどうでもいいです。それよりも……小山さんから話を聞きました。それで?貴方は結局何がしたいんですか」
「……何がしたいかだと?……さてな、何がしたいんだろうな俺は」
これまでの事を考えると、小山さんから別れ話を申し出るならまだわかります。ですが……わかりませんね、何故逆に根本くんから別れ話を持ちかけるのですか。しかもFクラスに勝てたらその話は無しにするなんて妙な約束をしたのか本当にわかりません。根本くんのいる階段の踊り場に自分も立ちそう問いかけるも変な回答をする根本くん。
「まあ、それは一旦置いておくとして、だ。Cクラスに勝つには勝ったが、友香の策でかなりFクラスは戦力が低下しているようじゃないか」
「……まあ、そうかもしれませんね」
「だったら大変だなぁオイ。一応今日と明日は補充試験は受けられるだろうが———明後日に他のクラスから宣戦布告でもされりゃFクラスは一たまりも無いんじゃないのか?なぁ小学生」
「…………何が言いたいんですか」
……まさか根本くんこの状況を作り出すために、わざと小山さんに発破をかけた……?いや、ですがそれにしてはえらく回りくどい気が……彼の意図を探るべく、慎重に話を促します。
「だから例えばそう、明後日に……俺たちBクラスがFクラスに宣戦布告でもしたら、前回俺らに勝ったFクラスと言えど準備と戦力不足で今日のCクラス戦以上に厳しい戦いを強いられるかもしれねぇなって言ってるんだよ小学生」
「……そうですね。確かに疲労しているFクラスがBクラスに今攻め込まれでもしたら非常に苦しいことになるでしょうね。それで?」
「何簡単な事だ、だからこそこの状況を利用させてもらおうって考えているのさ……アンタと取引をしたいんだ“月野先輩”。頼む、俺のいう事を聞いてほしい」
「えっ?」
…………ど、どういう事……?急に小学生呼びから月野先輩呼びになったかと思うと、頭を下げる根本くん。な、何ごと……?
「もしも俺の頼みをアンタが聞いてくれるなら、俺たちBクラスはアンタ達FクラスがAクラス戦を終えるまではFクラスと戦わないと約束する。だから———その代わりにどうか俺の頼みを聞いてくれ月野先輩。勿論、友香の件の真意も話す。頼むこの通りだ」
「……むぅ……は、話くらいは……聞いてもいいですけど……」
予想外の行動に若干混乱しつつも根本くんに話すよう促します。そして彼の口から出てきた交渉内容とは———
〜根本交渉中〜
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