二次創作小説(紙ほか)
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- バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 お知らせあり>>270
- 日時: 2016/03/25 21:41
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
初めましてな方は初めまして。そうでない方はお久です。こちらはバカとテストと召喚獣の二次創作であり以下のスレッド
【バカな自分は召喚獣?〜一学期編〜】及び【バカな自分は召喚獣?〜夏休み編〜】
の続章となっています。読まれていない方はそちらもよろしくお願いします。
暑い夏も乗り切ってやってきました二学期編!夏休みを満喫したいつものメンバーとFクラスの前に立ちふさがったのは……無敵の鉄人による持ち物検査!?
『お願いします、西村先生!僕らにその本を返してください!』
『僕らには———僕らにはその本がどうしても必要なんです!』
『お願いです!僕たちに、保健体育の勉強をさせてください!』
『西村先生、お願いします!』
『『『『お願いします!』』』』
「黙れ。一瞬スポ根ドラマと見紛うほど爽やかにエロ本の返却を懇願するな」
『『『『鬼っ!悪魔っ!!鉄人っ!!!』』』』
毎日バカやる明久たちがそんな教師たちの横暴を黙っているはずもなく。正々堂々鉄人に挑むFクラスだったけど……(正々堂々の意味、今すぐ調べてください皆さん by造)
「ええい!こうなりゃ実力行使だ!僕らの大事な参考書(エロ本)を守るため、命をかけて戦うんだ!」
「ほう?良い度胸だ、かかってこい……シメるついでに夏休みで緩んだ頭のネジをキッチリ締めなおしてやる」
明久たちの必死の抵抗虚しく、鉄人に阻まれ大事なもの(エロ本)を取り上げられるFクラスメンバー。このまま為すすべがないのか?否、まだ手はある……!召喚野球で教師を蹴散らし、取り戻せ僕らの聖典(エロ本)!
体育祭に召喚野球。そしていよいよ試召戦争が解禁となり恋に嫉妬に勉強に、ますます楽しくそして忙しくなる造や明久たち。そんないつものメンバーの非日常的な日常をどうかよろしくお願いします。
———目次———
序章 1〜4章及び各種設定【バカな自分は召喚獣?〜一学期編〜】>>6参照
5〜5.5章及び各種設定 【バカな自分は召喚獣?〜夏休み編〜】>>7参照
6章 体育祭&召喚野球編>>1-117
102時間目>>1-5 103時間目>>8-11 104時間目>>12-16 105時間目>>20-23
106時間目>>24-28 107時間目>>29-32 108時間目>>33-36 109時間目>>37-40
110時間目>>41-44 111時間目>>45-48 112時間目>>49-52 113時間目>>53-56
114時間目>>59-62 115時間目>>63-66 116時間目>>67-70 117時間目>>73-76
118時間目>>80-83 119時間目>>84-87 120時間目>>91-94 121時間目>>98-101
122時間目>>104-107 123時間目>>110-113 124時間目>>114-117
覚えよう野球のルール〜スクイズしてください!〜>>77-79
6.5章 文化の秋・食欲の秋・文月学園の秋編>>120-221
酔いと造と幼児返り!?〜お酒は大人になってから〜
前編>>120-122 中編>>125-127 後編>>130-132
週刊☆文月学園ラジオ放送 特別企画・文化の秋!
前編>>135-136 後編>>137-138
ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜
その①>>141-143 その②>>146-148 その③>>149-151 その④>>154-156 その⑤>>157-159
その⑥>>164-166 その⑦>>167-169 その⑧>>170-172 その⑨>>173-175 その⑩>>176-178
召喚実験シリーズ〜自分と本音と暴露大会〜
その①>>179-181 その②>>182-184 その③>>185-187
その④>>188-190 その⑤>>191-193 その⑥>>194-196
寒い日は鍋が一番!〜闇鍋?病み鍋?暗黒鍋デス〜
その①>>197-199 その②>>202-204 その③>>209-211 その④>>214-216 その⑤>>219-221
7章 二学期試召戦争開幕&Fクラスの変編>>224-330
125時間目>>224-226 126時間目>>229-231 127時間目>>234-236 127.5時間目>>241-242
128時間目>>243-245 129時間目>>246-248 130時間目>>251-253 131時間目>>256-258
132時間目>>261-263 133時間目>>264-266 134時間目>>267-269 135時間目>>271-272
136時間目>>273-274 137時間目>>275-277 138時間目>>280-282 139時間目>>283-285
140時間目>>286-288 141時間目>>289-291 142時間目>>292-294 143時間目>>295-297
144時間目>>298-299 145時間目>>300-302 146時間目>>303-305 147時間目>>306-307
148時間目>>308-309 149時間目>>310-311 150時間目>>312-313 151時間目>>314-316
152時間目>>317-318 153時間目>>319-321 154時間目>>322-323 155時間目>>324-326
156時間目>>327-330
7.5章 とあるお休みの一日:同棲生活は命がけ編
召喚実験シリーズ:〜みんなの子どもシミュレーション〜
その①>>334-336 その②>>337-338 その③>>339-341
その④>>342-344 その⑤>>345-347 その⑥>>348-350
文月学園新聞&特別補習:鉄拳先生の情報講座>>353-355
彼と彼女のとある日の出来事
〜明久と瑞希編〜
前編>>356-358 中編>>359-361 後編>>362-365
〜雄二と翔子編〜
前編>>366-368 中編>>369-372 後編>>373-377
〜造と秀吉と優子編〜
前編>>378-380 中編 後編
〜明久と美波編〜
前編 中編 後編
〜造と葵編〜
前編 中編 後編
〜康太と愛子編〜
前編 中編 後編
おいでませ文月学園!久保弟の学校見学
前編 中編 後編
8章 最終決戦!Aクラス対Fクラス試召戦争編
———バカテスト集———
その⑦>>18-19 その⑧>>240 その⑨>>278
———各種設定———
文月学園レポート:腕輪編その①>>17 その②>>279
お知らせ>>270
- 146時間目 ( No.304 )
- 日時: 2016/03/11 21:36
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
閃光弾にばかり気を取られ、目を瞑ったまま突進してきたFクラスの皆さんの足にまきびしが容赦なく突き刺さります。足元注意とはこのことですね。これでかなり時間が稼げるはず。痛い思いさせたくはなかったですが、今は心の中で謝りつつ目的の場所に向かいます。
「よし……明久、誰がどこで見ているかわからん。念のためだ、けむり玉用意!」
「合点承知。いくよ!」
Fクラス、Cクラスの皆さんを撒いて、そのまま裏庭に入る自分。念のためけむり玉を一つ使って視界を遮り、ごみ収集場の一番奥に隠してある隠し扉に辿り着くと皆さんが復活してこの場所に来る前に急いでロックを解除。そして———
『ま、また消えた……!?』
『こ、この辺りに逃げ込んだハズだ!死ぬ気で探せっ!』
『見つけ出したらブチコロだからな!』
『……やっぱりおかしい。何で一瞬で姿を隠せるの……?何か特殊な方法を使っているとしか……』
『とにかくこのことを代表に報告しよう。それと、何人かはこの周囲をしばらく調べておいてくれ!』
『わかったわ!』
———かなり際どい所でしたが、何とか第二ラウンドを辛くも耐えきった自分たち。
「「《しんど、かった……》」」
「お、おお!待っておったぞお主ら!無事じゃったか!」
「…………おつ、かれ……」
倒れ込むように隠し部屋に入ると、先に戻っていたヒデさんが自分たちを介抱してくれます。奥にはかなり苦しそうなこーさんも自分たちにそう言ってくれます。
《ヒデさんも、こーさんも……無事で、何よりです……ハァ……ハァ……》
「し、しんどかった……流石に疲れたよちくしょう……」
「こ、これ終わったら……アイツらマジでぶちのめす」
「ホレ、水じゃ。これを飲んで落ち着くと良い。それとちょっとしたのバランス栄養食もあるぞい」
「ありがと……秀吉……」
《か、感謝です……おっと、元に戻りませんとね……解除(キャンセル)……》
「早速で、悪いが……状況整理いくぞ……」
寝そべりつつヒデさんから三度飲料水や軽めのバランス栄養食を受け取って、すぐさま状況整理を始めるゆーさん。インターバルは先ほどと同じように10分間。休む暇がありませんね……
「……はぁ……さ、さっきも言いましたが、C・F両クラスとも動きがかなり良くなってますね……さっきの時間で戦死できたのはわずか5名。それでいて現代社会・生物・地学・古典の4科目がほぼ使用不可になっちゃいましたし……」
「Fクラスのバカ共はともかく、小山の奴随分と俺らを……特に造を分析していやがったな」
「あの着物先輩の後輩だったよね小山さん……そりゃこれくらいはやるよね」
「そういや造の天敵だったなあの先輩は。それは一旦置いておくとして———造、今残っているまともに戦闘できそうな科目は何だ」
「えっと……先ほど4つ使えなくなった科目が出来た上、本来なら自分も姫路さんや島田さんと一緒に前回のD・Eクラス戦で消費した分補充試験を受けるハズでしたので……100点切っていない何とか戦えそうな科目は———」
現代国語:461点 物理:278点 日本史:345点 世界史:351点
「———この4科目ですかね。ああ、一応総合科目も含めると5科目になりますが……総合科目って使っちゃうと使った点数を全教科数で割った点数で万遍なく減るので、今は使えないって言っていいでしょう。結局まともに戦えるのはこの4科目だけでしょうね」
「……なるほどな。造、わかっているとは思うが現国だけはギリギリまで戦闘で使うな」
「は?なんでさ雄二。一番点数が取れている科目でしょ?使わなきゃ勿体ないじゃないか」
「バカかお前。……あっ、すまん。言うまでもなくお前はバカだったな明久。いやすまんすまん」
「ぶっ飛ばずぞ雄二」
こんな状況にも拘わらずまだまだ余裕そうに仲良く喧嘩するアキさんとゆーさん。そんなお二人を見て、ちょっと笑ってしまう自分とヒデさんです。
「お主らは相変わらずじゃな。まあ、そこがお主ららしいがの」
「ふふっ、まあまあアキさん落ち着いて。ゆーさん、わかっています。【飛翔】が使えなくなったら詰み、ですものね」
「その通り。移動・かく乱・緊急避難・その他諸々において造の金の腕輪の能力【飛翔】は命がけの鬼ごっこをやっている俺たちの生命線であり最後の切り札だ。これが使える現代国語を落とされたら実質俺たちの敗北と言っても差支えないだろう」
ゆーさんの言う通りC・Fクラスとの鬼ごっこ状態の試召戦争において、この能力は非常に有効です。さっきもこの【飛翔】のお陰でピンチを脱したわけですし……つまりむやみやたらに戦闘で使って点数を消費して400点切ってしまえば使用不可になってしまうため、戦闘で使わないほうが良いってことですね。
「いつもならいくつか他の科目も400点オーバーしている科目もありましたが、残念ながらこの前のD・Eクラス戦で結構点が削られてるので現代国語しか【飛翔】が使えないんですよね……ですからもし戦闘で現代国語を使う時は……残り教科を使い切ってしまった時になるでしょうね」
「うげっ……ってことは造、まともに戦えるのは後3科目なの!?ね、ねえ造。やっぱり僕も戦った方が良くないかな……?」
「ダメです。最初に説明した通り、万が一アキさんが戦死したらアキさんとその手錠で繋がれているゆーさんまで補習室前まで連れていかれることになります。そして補習室前で動けなくなったゆーさんは逃げることが出来ずにCクラスの皆さんから勝負を挑まれ、Fクラスの皆さんからは袋叩きにされちゃいますよ」
「そうなりゃ俺らの敗北になっちまうからな。悔しいが、戦闘に関しては造に任せるしかねぇんだ。それくらいお前もわかってるだろうが」
「そ、そりゃわかっているけど……このままじゃ造が……」
アキさんのお気持ちは貰っておくとして、とにかく残った3科目をどのように活かすか、どのように戦うべきか。これが勝負の分かれ目になってくるでしょうね。
「……?何じゃ、その話振りじゃとどうにもお主ら苦戦しておるようじゃが何かあったのかの?」
「はい……小山さんの策だと思うのですが、かなり戦術を変えてきてですね。只今絶賛苦戦中です」
「どうも代表の雄二は後に回して、Cクラスの人たちは造を倒すことに専念してるっぽいんだよ」
「Fクラスの連中もかなり統制されているからな。俺や明久には“武闘派”なFクラスの連中を当てさせ、造には“なるべく点の取れていない”盾となるFクラスの連中を当ててCクラスに有利なように攻めてきやがった。勿論黒金の腕輪による点数回復をさせないように造と俺・明久を分断させることが狙いだろうな」
「武闘派……おお、そうじゃ。それで思い出したのじゃが……例の作戦を行いながらワシもムッツリーニ程ではないが情報収集をしておっての」
「「「情報収集を?」」」
と、ヒデさんがそう言って手書きのルーズリーフを自分たちに見せてくれます。そこには自分たちを除いたクラスメイト達の名前が書かれてあり、それぞれ3つのグループにわかれています。
- 146時間目 ( No.305 )
- 日時: 2016/03/11 21:36
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
「うむ。どうやらFクラスは現在主に3つのグループになって動いておるようじゃ。一つは須川たち率いる“C・F連合軍”と呼ばれるグループ。お主らの話を聞くに、Cクラスと共に召喚獣を召喚し、造を妨害しあわよくば戦死させようとしておる連中がこやつらじゃろうな」
召喚獣を召喚しCクラスの盾となったり、自分を取り囲んだりと自分が満足に戦えない理由の一つとして動いているグループですね。さっきはこのグループの働きによりほとんどCクラスとまともに戦うことができませんでした。
「次に横溝や福村率いる、雄二の言葉を借りるなら“武闘派軍団”と呼ばれるグループ。こやつらはあらゆる手段で雄二や明久、それにムッツリーニを抹殺すべく動いておるそうじゃ。ちなみに補充試験室でバリケードを作って姫路と島田を監視しておるのもこのグループの一部だそうじゃ」
なるほど、その逞しくも恐ろしい肉体を使ってアキさん・ゆーさんへの攻撃と同時に、自分とアキさんゆーさんを分断させて黒金の腕輪で点数回復をさせないようにしているのも恐らく彼らなのでしょうね。
「そして最後に……こやつらが最も厄介なのじゃが。明久や雄二たちへの憎しみで完全に理性を失っておる狂戦士達(バーサーカーズ)と呼ばれるグループ。まあ正確に言うと、こやつらはグループとは言えぬか。味方の声すら聞こえておらず制御不能のようで本能のみで動いておるが、その分完全にリミッターが外れておっての。とてつもない動きと力で明久たちを抹殺しようとしておる」
言うなれば暴走した清水や清水父じゃ、とのヒデさんの例えにこの場にいる全員が納得してしまいます。実際に目の当たりにしている分その恐ろしさはわかっていましたが……“作戦的な意味でも”本当に厄介ですよねその集団。
「造がワシに託してくれた“本当の策”もこの連中には聞かぬからのう……まだ武器を持った武闘派連中の方が話は出来る分マシじゃな」
「ただでさえいつも話聞かないのに、今日は嫉妬で狂ってそれ以上に聞かないってことか。どうするの雄二?」
「仕方ないから今はそいつらは無視で良いぞ秀吉。お前はそいつらと主犯格以外を予定通りに頼んだ。さて……状況は大体わかったな。当面の厄介な問題は二つか……」
「一つは自分がこれからどうやって戦うか、ですね」
自分の武器の箒の弱点は、点数を消費しなければ攻撃力がゼロなこと・鍔迫り合いすら碌にできない一撃でもまともに喰らったら即大破してしまうほど脆いこと・更に自分自身を巻き込む恐れがあるため近距離不向きであること———つまりは接近戦が弱点です。それを利用してFクラスの皆さんを盾にして自分に接近して戦うCクラスの皆さん。ホント、小山さん良く自分との戦い方を研究してますね。
「それともう一つの問題は……そろそろこの場所の存在に気付かれる可能性があるってところですかね」
「だな、向こうは俺たちが何らかの特殊な方法を使ってどこかに潜んでいるって勘づき始めている頃だろう。俺たちが消えた場所をCクラスの2,3人が調べてやがったのがその証拠だ」
本来はサクヤさんや優姉さんたちを撒くために作ったこの隠し部屋と外の隠し扉。彼女たちにさえ見つからないように偽装しているのでそう簡単には見つけられないハズです。とは言え5か所ある出入り口のうち、今通った出入り口を含め3つはすでに抑えられていると考えておくべきでしょう。ゆーさんの言った通りどうやって自分たちが消えたのか疑問に思い、自分たちが消えた付近に何人かC・Fクラスの生徒さんが待機しているハズ。仮にその場所から出てしまったら、この隠し部屋の存在に気付かれてしまいます。
「つまり……せいぜい後一回しかこの隠し部屋に逃げ込めないってことですね……ここからが正念場ですか」
「ああ、そうなる。さて造……この場所を使えるのが実質ラスト一回となった以上、次の一時間でCクラスの小山にお前が“コレ”を渡すほかないわけだが……いけるか?」
そう言ってゆーさんが懐から手紙を取り出します。……そうですよね、状況的にもこれを次で渡せなければ……
「大丈夫なの造?さっきと同じことされて回復が間に合わなくなって、残りの科目も使い切ったら造は……そうでなくても武器の特性上、その箒が折られちゃったら点数が残っていても丸腰で戦わないといけないんでしょ」
「作戦上、次で小山と交渉に入る必要があるのじゃろう?その時までにCクラスをある程度追い詰めなければならぬとお主が言っておったが……このままではかなり厳しいと思うのじゃが」
心配そうに自分にそのように尋ねる皆さん。確かにハッキリ言ってかなり厳しいこの状況。たった一つだけ、この状況を利用しつつ戦う方法が無くは無いのですが……
「……一つ、やってみたいことがあります。正直今の今まで危険すぎたことと、本当にこれが可能なのかわからなかったので試したことがありませんでしたが……」
「ふむ、何か策があるのじゃな?造よ」
ヒデさんの言葉に、はいと答えるも……正直全く自信がありません。もし上手くいかなければ自分は戦死し、ここまで頑張ってきた作戦も水の泡。こんなぶっつけ本番一か八かの賭けを果たして皆さんが認めてくれるのか……
自分の考えているその策を恐る恐る皆さんに尋ねようとすると———
「おっし、なら任せた造。んじゃこの手紙は託しておくな」
「なーんだ、造にちゃんと策があるのなら問題ないね」
「うむ。ならばワシらも造に応えねばな」
「えっ……?」
———と、何もまだ言っていないにも関わらず、どういうわけか何か納得したようにゆーさんは自分にその手紙を渡してそのまま次に出る予定の出入り口に向かいます。そのゆーさんの後をアキさん達も続いて向かいますが……え、ちょっと……?ど、どうして……?
「あ、あの皆さん!?自分はまだ何も———」
「言うな造。その顔見ればわかるさ。どんなことやる気か知らんが成功するかわからん賭けなんだろ?」
「自信持ちなよ。大丈夫だって、絶対上手くいくって信じてるよ。僕らは負けないさ」
「ここまで来たら前だけを見て進むだけじゃ。お主もワシらも出来ることを全力でやるだけじゃからの」
「っ!」
……信頼、ですかね。三人ともそう笑い合いながら自分に託してくれます。……なんですか、なんなんですか皆さん……全く、そんなことを笑顔で言っちゃうなんて反則ですよ?……ちょっぴり泣いちゃうかと思ったじゃないですか……あ、ヤバい。ホントに涙出てきそう……何故だか昔を、“一年前”を思い出しちゃいそうです……本当にいつも恵まれていますよね自分……温かい友人に。
「そもそも今回のFクラスの連中の騒動の原因は、バカなことにハーレム空間築いてFFF団挑発したバカ久にあるんだぜ造。気にすんな、失敗しても明久のせいにすりゃ良いんだからな」
「まあ例えダメでも霧島さんとイチャイチャしすぎてクラス一つまとめられない代表失格のアホ雄二の首を手土産に、FFF団と交渉すればいいんだよ造。安心すると良いよ!」
ゴスゴスゴスッ!×2
「こやつらもこう言っておるのじゃ。造は造に出来る全力を尽くすだけで良いと思うぞい。そもそもワシは造を信じておるからこそ、造の策に乗ったわけじゃしな」
「…………そろ、そろ時間……造なりに、頑張るといい……そこのバカふたりも……バカやってないで……さっさといってこい」
「……はい、です!」
「お?もう時間か早いな畜生」
「うへぇ……まだ回復しきっていないのにね。まあ仕方ない。それじゃあ造。準備は良い?」
息も絶え絶えであるにも拘らず時間を見ていてくれたこーさんも自分を信じて送り出してくれます。こんな自分を、無条件で信じてくれた皆さんに精一杯の感謝を。信じてくれたからには死ぬ気で結果を出すだけです。
「———はいっ!月野造、準備万端っ!いつでも行けますっ!皆さん、勝ちに行きますよ!」
「「「「応っ!」」」」
ほんとうに、ありがとう皆さん……そう心の中でもう一度呟いて、隠し部屋から飛び出す自分とアキさんゆーさん。さあ、ここからが正念場。このラウンドで上手く戦えるか戦えないかで、勝負は決まると言っていいでしょう。覚悟は決まりました。第三ラウンド開始ですっ!
- 147時間目 ( No.306 )
- 日時: 2016/03/11 21:39
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
———Cクラス———
『———で、どうかしら調子は』
『いい感じです代表。代表の推察通り月野はFクラスの連中を攻撃できないようです。あの連中を盾として召喚させてから明らかに月野から戦死させられた人数が激減しました』
『最初の一時間は11名戦死させられ17名がかなり点数を削られましたが、さっきの一時間は戦死者5名に負傷者4名です。Fクラスの連中を使って坂本たちと月野を分断させて腕輪を使わせないことも非常に効果的だったようですね』
『そう。良かったわ、作戦は間違ってなかったってわけね。盾にされても先輩に構わず倒しに来られたらマズいからさっきの一時間は4〜5名程度のグループに分かれて試してみたけど———そうと分かれば遠慮は無用。説明した通りここで月野先輩を倒しましょう。20名先輩討伐に当てて残りの人たちは補充試験を行うのと念のための近衛兵としてここCクラスで私と一緒に待機しておいて。勿論戦術はさっきまでの一時間通りにね』
『わかりました。ところで……さっきの一時間は月野のフィールドをかき消して逃走されることが多々ありましたが、その対策をいかがいたしましょう代表』
『それについては任せてちょうだい、策は考えてあるから。すでに手も打ってあるし』
『『『おお、流石です代表!』』』
『あ、月野や坂本たちがどうやって出たり入ったり姿を隠しているのかについてまだわかっていませんがそっちはいかがいたしましょう?』
『……確かにそっちはまだ判明していないけど、こうも見つからないとなるとこれは予め逃走経路として何か作っていた可能性が高いわ。流石にそうなると今日一日かけて探したところで見つかりっこないと思うの。だからそれよりも———ここで月野先輩、及び坂本君たちを倒しに行きましょう。そうすればそんな謎なんてどうでもよくなるからね』
『そう……ですよね。確かに、いつまでたっても見つからない・わからない逃走方法を見つけるよりもシンプルでわかりやすいです。わかりました代表』
『さて……そろそろ10分経つわね。代表の位置非公開可能時間も終わるわ。全員持ち場について!先輩たちが現れたら、勝負を決めにいきましょう!』
『『『了解!勝ちに行きますっ!』』』
造Side
『今度は職員室裏付近から……!?ああもう!ごみ収集場で姿が消えてどうしてそんな場所から出てこれるのよ!?』
『代表の言った通りそれを考えるのは後にしよう!数で押して月野をここで叩くぞ!』
『吉井……キサマまたナメた真似してくれやがったなオラァ……!』
『坂本……今度こそ貴様の息の根を止めてやる、覚悟しやがれェ!』
隠し部屋から出てすぐに、C・Fクラスに見つかる自分たち。遠目で見ると自分を仕留めに来ているのか、さっき以上に人数を連れてやってきているようですね。
「当たり前だが奴ら俺たちを休ませないつもりだな。CクラスもFクラスの連中も早速来やがった。で、どうするんだ造?」
「……ゆーさん、アキさん。動きやすいように一旦別れましょう。唯の推測ですがCクラスの皆さんはここで一気に自分を仕留めに来るはずです。戦力の大部分を自分を戦死させるために当ててくると思います。漁夫の利でゆーさんまで倒されては終わりですし、Cクラスの皆さんは自分に任せてください」
「つまり俺らはFFF団を何とかすればいいってことか。まあ、大体はさっきと同じだな。それで、黒金の腕輪の設定・再設定はいいのか?」
「はい。点数回復にこだわってしまった事が先ほどの間違いでしたから。とりあえず試してみたかったことを試してみようと思います。ゆーさんたちは自分を気にせず存分に戦ってください」
「わかったよ。でももしもの時は呼んでね。僕らもその時は腹をくくってCクラスと戦うから」
「念のため見える範囲でFFF団と対峙しておく。明久の言う様にヤバいと思ったらすぐに呼んでくれ。じゃあ造、後は頼んだ」
「お互い頑張りましょうアキさん、ゆーさん。健闘を祈ります」
「「造もな(ね)!」」
向かって来る大勢のCクラスと数名のFクラスの生徒さんは自分が、武器を手にしながら呪詛を唱えて襲って来るFクラスの大勢はアキさんとゆーさんが相手をすることに。それぞれ二手に分かれてアキさん達は少し離れた広い中庭に、自分は向かって来る皆さんの方へと覚悟を決めて立ちはだかります。
「どうやら観念したみたいね、キミには随分手間取らされたわ」
「一人で私たち相手に随分頑張ったみたいだけど、悪いね月野君。ここで倒させてもらうわ」
「確か月野には吉井のようにフィードバックがあるんだったな。戦うならせめて痛みが長引かないように楽に倒してやる。もし戦死するのが嫌だったらここは黙って引いてくれ。その場合は———」
『———ああ。俺たちが坂本たちを抹殺するまで造ちゃんを保護してあげよう。もし大人しく俺たちに捕まるのならお菓子もあげるよ』
『もし我々の言うことを聞かないのであれば、心苦しいがここで戦死して貰わねばならない』
予想通り小山さんは自分を戦死させるために、ここで戦力の大部分を集中させてきましたね。見た感じざっと20人くらいですか……そしてやはりと言うべきか、自分対策にCクラスの生徒さん二人に一人は盾となるべきFクラスのクラスメイトがくっついていますね。第二ラウンドで苦戦した時と同じ戦術で来ましたか……周囲を皆さんに囲まれてそんなことを言われる自分。ですが———
「———起動(アウェイクン)科目、物理!」
キィイイイイイイイン ボンッ!
《Fクラス 月野造 物理 278点》
「「「……引かない、か」」」
《……ごめんなさい、そうもいかないんです。友人たちがピンチなのに自分だけ助かるなんてお断りですよ。それにここまで来たからには……負けられませんのでっ!Fクラス月野造!この場にいるCクラス全員に勝負を挑みますっ!》
白金の腕輪で物理のフィールドを展開。そのままこの場にいるCクラスの皆さんに勝負を挑みます。ここで引くですって?冗談じゃありません。ここは———戦って勝ちに行くに決まっているでしょう!
「見かけによらず強情ね、いいわ。勝負しましょうか!」
「さあ、Fクラス。召喚して俺たちの盾になれ」
「Fクラスが召喚したらあたしたちも召喚しましょう」
『『『了解っス!試獣召喚(サモン)っ!』』』
「「「Fクラスが召喚し終わったら……こっちも試獣召喚(サモン)っ!」」」
先にFクラスの皆さんが召喚して、その身を挺してCクラスの召喚を守ります。盾にされては攻撃できませんので速攻は出来ませんね。そのまま両クラスの召喚獣に四方を囲まれる自分。
《では、参りますっ!》
「「「こっちも、勝負っ!」」」
……さて、とりあえずはギリギリまで戦ってみて、頃合いを見てやってみたいことをやるとしましょうか。“あの戦法”は奥の手・最後の切り札ですし。それまではさっきのように何とか隙を作って一人でも多く倒さねばね。気合いを入れつつ襲い掛かってきた召喚獣を迎え撃つべく箒を構えます。
秀吉Side
「———ふぅ。これであと20人くらいじゃろうか」
リストにチェックを入れつつ嘆息するワシ。わかっておるつもりじゃったが、やはりこれは中々に骨の折れる役割じゃのう。精神的にも技術的にもかなりしんどいものじゃ。失敗すればこの試召戦争に負けかねんから普段の稽古や本番以上に気を張りつつやり遂げねばならぬしの。
「次は……この三人は最後にするとして、後は例の手におえん連中と今表に出ておる連中も後回し。ならば残りの人数やメンツを考えると……そろそろ一階のあやつらを何とかせねばならぬか」
まあ、泣き言を言っておる暇はないがの。造や明久、雄二にムッツリーニ。それに姫路や島田たちも恐らく頑張っておるじゃろうし。そう自身に言い聞かせ、再び作戦の為に動き出そうとした矢先———
『———この辺か?木下を見たと言う報告があったのは』
『見つけたら……い、イロイロ好きにしていいんだよな!?』
『ぐふふ……秀吉ィ、今行くからねぇ……待っててねぇ……』
「……っ!」
———すぐ近くの曲がり角から、そんなワシを探しておるようなFクラスの連中の声が聞こえてきおった……
- 147時間目 ( No.307 )
- 日時: 2016/03/11 21:39
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
造Side
「でりゃぁ!」
《あっぶな……ですが、チャンス———》
『させないよ造ちゃん!』
《———は、やっぱり早々こないですよね……》
迫る白刃をすんでの所でかわしつつ、その攻撃をしてきた召喚獣の狙いを定めて箒を構える自分。ですがすぐにFクラスの皆さんがその射線上に飛び出して来てインターセプトしてきます。……悔しいですがやはり、このままの戦い方では遅かれ早かれやられちゃいますね。
《Fクラス 月野造 物理 167点》
悔しいことにこのフィールドを張ってから10分も立っておらず、おまけに自分からは全く攻撃出来ていないのにすでに100点近くC・Fクラスの皆さんのヒット&アウェイで削られてしまっています。さっきまでの一時間以上に動きが洗練されてますね……
「いい加減、楽になったらどうかな?フィードバックって結構痛いんでしょ?かなり苦しんでるように見えるよ」
「正直何だか小さい子虐めているみたいで心苦しいんだ。もう一度言うが降参して大人しくしておいてくれないか?」
「もしここにいる何人かのFクラスの変な人たち『『えっ!?変な人たち!?』』に捕まるのが生理的に嫌なら、Cクラスで身柄拘束しても良いよ。大丈夫、代表もキミのこと気に入ってるみたいだしお菓子とか用意してもてなしてくれると思うし。それにここまでやったなら誰も君を責めたりしないって」
周りをたくさんの召喚獣に囲まれながら、そんな提案をしてくれるCクラスの皆さん。正直言うと、確かにフィードバックは辛いですし何のしがらみも無いならとても魅力的な提案ではあるのですが……
《……みなさん、随分余裕ですね。窮鼠猫を噛むって諺、知りませんか?》
「あらら、強情な先輩さんだこと」
ここまでやってアキさんゆーさんを裏切れるわけありません。無茶で無謀で無理難題なこの策に付き合ってくれた皆さんですからね……!
「まあ余裕というか、もう勝利を確信してるからだけどね。月野君が降参してくれるように、一つ君たちにとって悪いニュースを教えてあげるね」
《悪いニュース、ですって?》
「うん。さっきFクラスから伝令があったの。その伝令によるとね———君たちのメンバーの一人、“木下君を捕えた”そうだよ」
《っ!ヒデさんを、捕えた……!?》
「そうだ。何やら“Aクラスの教室付近でこそこそ何かやっているところを”捕えたそうだ」
ヒデさんを……Aクラス付近で捕えた……?そう、ですか……
「何を企んでいたのか知らないけど……その様子だと君たちにとって木下君は秘密兵器だったのかな?もしかしてこっそりと代表を討ち取ってもらう予定だったとか?」
「まあ、代表はそう言うことも見越して近衛兵置いているから何も問題ないがな。何にせよ木下を捕えられたのは残念だったな」
《……何のことかわかりませんね。それに、それを聞いたからって別に戦意喪失するわけないじゃないですか。ヒデさんの事は残念ですが、それとこれとは別問題です。負けませんよ自分は》
「そっか、降参してくれないなら仕方ないね———いくわよ皆!」
そして再び始まる休むことなき攻撃の嵐。なるべく鍔迫り合いにならないように、そして致命傷だけは避けながらも隙を伺います。伺いますが……これだけ統制された動きに加え何度もシミュレーションされたであろう計算されたCクラスの皆さんの動きに隙などありません。
耳元でブンッとCクラスの召喚獣の武器が空を切る音が聞こえ、装備であるローブが少し切れ味ある武器に掠り、どうしても躱せずに思わず武器の耐久力皆無の箒でいなすなど———徐々に危うい場面が増えてきました。それもそうですよね、こちらは動きっぱなしの上フィードバックがあるので点数はまだ幾分かあっても体力的にかなりいっぱいいっぱいですし……ああ、マズい……おまけに、何だかちょっと眠気が……これ、少しフィールドに長くい過ぎましたか……?
「よし、隙ありっ!」
《っ!?ま、ずいっ!?》
と、そんな自分の一瞬の隙を見逃すCクラスではなく。真正面から上段で振り下ろされた武器に対応が遅れ、回避できずに思わず箒で受け止める自分。何度も言いますがこの武器である箒、前のアキさんの武器であった木刀以上に耐久性は無く。したがって———
バキィ……
———そしてとうとう訪れる最悪の展開。頼みの綱の自分の武器である箒が、その一撃をまともに受けて、鈍い嫌な音を立てて破壊されてしまいました……
《箒が……!》
「やった!やったぞ!あの厄介な武器を壊せた!」
「ナイスよ!これであの子はもう手も足も出ないわ!」
「こらこら、まだ油断しちゃダメよ。最後まで代表の言った通りに動かなきゃね。準備は出来てる?」
「勿論。ちゃんと先生2人呼んでおいたわ」
やはり普通に戦うのは無理がありましたか……結局一度も攻撃できずに武器を失い、取り囲まれてジリジリと壁際に追い詰められる自分。
《くっ……こうなったら、》
「おっと、無駄よ。先に言っておくけど月野君、武器を元に戻すのは勿論さっきみたいにフィールドを解除して逃げようったってそうはいかないわよ」
「竹中先生、もしも月野がフィールドを解除したらすぐに古典フィールドを展開してください」
「そのフィールドを干渉させようとするならその時はすかさず布施先生、化学フィールドをお願いします」
どうやらCクラスの生徒さんの後ろには古典の竹中先生と化学の布施先生が待機しているようです。なるほど……自分がさっきまでの一時間で使った、フィールドを解除して離脱する緊急避難の対策ってわけですか。敵ながらこれは上手い。ここでこのままフィールドを解除しようとしても、解除した瞬間あちらに有利なフィールドを張り直され干渉を起こして逃げようとしても次のフィールドを展開と言うことですね。
「……わかりました。正直一教師としては傍から見ればいじめのようですし、月野君一人にここまでやるのはどうかとは思いますが……」
「ルール的には一応問題はありませんので……すみませんが納得してください月野君」
《やはり緊急回避の対策はちゃんとされていましたね。はは……先生方は、お気になさらず》
待機されている古典と化学は点数が削られてまともに戦闘できない科目です。壊された自分の武器である箒を今すぐにでも直したいところですが、これを直すにはフィールドを一度解除して再び召喚されなければなりません。今のフィールドを解除した途端古典か化学のフィールドを展開されるでしょうね。逃げることも敵わず最後の足掻きさえさせて貰えないってことですか。これはまた随分徹底していますね。多分小山さんの策でしょうが、どうやらとことん自分を倒す気のようですね。
『さあ造ちゃん、大人しく投降するんだ』
『我々は造ちゃんに危害を加えるつもりは一切ない……やましい気持ちも多分ない』
『少し愛でたりするかもしれんが、誤差の範囲だしな』
まあ、フィールド解除して緊急避難する以前に、こうもCクラスの皆さんやここで手をワキワキとさせて近づいてくるFクラスの皆さんに囲まれたら逃げ出す前にすぐに拘束されちゃうでしょうけど。
「やめんかFクラス。気持ち悪い」
「月野君怯えてるでしょうが」
「やっぱこいつ等に任すのはこの子がかわいそうだ。無難に戦死させて補習室で待機してもらっておこう」
……さぁて、絶体絶命とはこのことですね。ここまで徹底的に対策をされれば逆に清々しいものですね、お陰でかえって気が楽になりました。いいでしょう……分が悪い賭けも悪くないです!どうせ倒されるのなら、何もしないよりもマシですからね……“アレ”試してみますか!
「さあ、これで終わりだ。せめて楽に戦死できるように一撃で決めてやるからな」
そう言って長刀を携えた召喚獣を使役して、Cクラスの生徒さんが一人自分の前に一歩前進します。もうすでに攻撃手段がないとわかっている為かFクラスの召喚獣を盾にはしていません。……やれやれ、随分と余裕ですね。
「それじゃあ……これで、ゲームオーバーだっ!」
《……勝負っ!》
そう言って彼の召喚獣が、武器も戦友も退路もない自分に止めをさしにかかります。その研ぎ澄まされた刃は無防備な自分に迫り———彼の宣言通り……
ザンッ!
———そう宣言通り一撃で。その刃は召喚獣の身体を切り裂いて、情け容赦なく戦死させます……
- 148時間目 ( No.308 )
- 日時: 2016/03/11 21:40
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
明久Side
『———あんな可愛い造ちゃんを洗脳して意のままに操りこき使ったばかりか、自分たちの身が危ないとわかった途端見捨てるとはな吉井に坂本、それからこそこそ隠れていやがるムッツリーニ』
『許さん……許さんぞ……姫路や島田、霧島や工藤にも造ちゃんと同じように洗脳したんだろうなぁ……その洗脳術を俺にこっそり教えてから往生せいや』
『貴様らのようなリア充と言う名の異教徒を生かしておいては、この世が腐る。おまけにあんなに造ちゃんを痛めつけるとは神が許しても俺たちが許さん。正義の名のもとここで潔く死ぬんだな貴様ら』
一体全体どの口が正義とか言うんだろうか。そもそも造があれだけ大変な思いをしなきゃならないのは君たちのせいだろうに。そんなことを考えつつ、雄二と二人で造の張ったフィールドの外で武器を手にしたFFF団の連中に取り囲まれる。
「ハッ!冗談じゃない。テメェらに殺されるくらいなら自害する方がマシだな。まあ、テメェら程度にやられるほどやわではないがな」
「君たちこそ覚悟しておきなよ。この試召戦争が終わったらこっちだって容赦しないからね」
『随分と強気だな。そんな貴様らにバッドニュースを教えてやろうか』
「「バッドニュース?」」
そうやけに自信満々にこのFクラスの造反、“Fクラスの変”の首謀者の一人である須川君が僕らにこんなことを言いだす。
『今の今まで所在不明だった秀吉だが……さっき連絡があってな、俺たちFクラスが捕えさせてもらった』
『Aクラス付近をウロウロしていたそうだから、追い詰められてAクラスに助けを求める気だったか?ハッ!詰めが甘いんだよ坂本ォ!』
「「な……!?」」
秀吉が……Aクラス付近で捕まった……!?なら、それは多分———
『秀吉は捕えた。後はどこかで卑劣に隠れているムッツリーニを見つけて始末する。それとお前たちに洗脳されている様子の造ちゃんや姫路たちは、後日俺たちが立派に更生させてやるから、お前たちは後腐れなく死ぬんだな』
『その造ちゃんもどうやら限界のようだな。あそこを見てみろ吉井に坂本』
『今まさにCクラスに倒されかかっているようだな。痛い思いしてしまうことになるし、出来れば投降してくれると良いが』
『心苦しいが抵抗するようであれば、洗脳されている以上一旦戦死させるしかないからな』
『かわいそうに。キサマらに何をされたかしらんが、か弱く可愛い造ちゃんもキサマらなんぞ裏切れば楽になれると言うのに……』
色んな意味で更生が必要なのは君らだろうとまた心の中で考えつつ、奴らが指差す先を見てみると……武器である箒を破壊され、四方八方C・F連合軍に取り囲まれている造の姿が見えてきた。そしてFFF団の言う通り今まさにCクラスの人にやられそうになっているようだ……ああ、確かにこれは造のピンチだ。ピンチだけど———
『あそこまで追い詰められたんだ。そのうち造ちゃんもお前たちを見放して降参するかもな。Fクラスの敗北にはなるが痛い思いするよりマシだ。そうなったら滑稽だな、お前たちは可憐で儚い造ちゃんにさえ見捨てられたと言うことに———』
「———やれやれ、半年近く造と一緒のクラスにいるのに君たちなーんにもわかってないんだね」
『……何だと?』
———あの真剣な、そして迷いなき目つきを見れば大丈夫。きっと大丈夫のハズだ。
「ねえ雄二、須川君たち曰く造ってか弱いだってさ。どう思う?笑っちゃうよね」
「ほー?あの造がか弱いねぇ?そういや可憐で儚いとも聞こえたな。全くこりゃお笑い草だな。どうも俺らが知っている造と須川たちが言う造とは何か違っているようだ。造は……あれで俺らに次いで強いと言うのに」
「だよねー!FFF団程度じゃ束になっても敵わないよねー」
『そりゃそうだ。寧ろ貴様ら以上に強いこともわかっているが?何せ貴様ら何かよりずっと点数も高い上に試召戦争でもかなりの戦闘力を———』
「「そういうことじゃないだな。これが」」
『あ?……ハッ!何を意味不明な事を言っているんだ異端者共が。さてはわけのわからないことを言ってこの場から逃げる気だな。させんぞ吉井に坂本』
いやいやいや。清涼祭の時のあの出来事を知らないようだし、やっぱり須川君たちは造の事を良くわかっていないみたいだね。造ってああ見えて……結構凄いというのに。あの時の出来事を見せてやりたくなるよ。あの造をか弱いとか言っている須川君たちの反応が見てみたいや。
「おまけに裏切る?見放す?それに……降参してFクラスの敗北だと?明久の言う通りお前らは一体今まで造の何を見てきたんだ?」
「優しいしいい子だし、可愛いのは勿論だろうさ。それとツッコんでくれたり空気和ませてくれたりと色々やってくれる。それは君たちもわかっているようだけど———造ってそれだけじゃないでしょ」
『吉井、坂本。お前たちは何が言いたい』
「頭の回転も中々良いし、仲間がピンチになればいつでも助けてくれる。あと翔子のストッパーになってくれることもあるな。だが……それだけじゃない。造の本質はきっと俺や明久と何も変わらないだろうさ」
そう言いながらふと、この無茶な作戦を提案した時の造の言葉を思い出す僕と雄二。
『……皆さんがそんな根性無しだとは思いませんでしたよ……っ!』
『勝たなきゃいけないんでしょう!?勝ちたいんでしょう!?……負けられないんでしょう!?……勝つ気が無いのならさっさと帰ってくださいよっ!自分は一人でも戦いますからね!?』
『今日まで頑張ってきたことを無駄にするんですか!?諦められるんですか!?そうじゃないでしょう……っ!勝ちましょうよ、絶対。ここで立ち止まる自分たちじゃないでしょう?試召戦争、諦めるんですか?諦められるんですか?』
———そう、造の根底にあるものは、その可愛い笑顔の奥にある本質は……きっと僕らと同じものだろう。
『『『貴様ら異端者と造ちゃんの本質が変わらんだと……?一体何のことだ!?』』』
やれやれ、この事すら本当にわかっていないのかな須川君たちは。ああ見えて造は———
「「僕(俺)らと同じく……頑固で負けず嫌いなんだよ、造は」」
造は決して諦めない。最後まで勝つために動くはずだ。策があると言っていたしSOSは無い以上助けはいらないって僕も雄二もわかっている。ならばその造を信じて僕らに出来ることをやるだけだっ!そう言って僕と雄二も造に後れを取らないように、須川君たちに向かって拳を突き出した。
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