二次創作小説(紙ほか)

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バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 お知らせあり>>270
日時: 2016/03/25 21:41
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

初めましてな方は初めまして。そうでない方はお久です。こちらはバカとテストと召喚獣の二次創作であり以下のスレッド

【バカな自分は召喚獣?〜一学期編〜】及び【バカな自分は召喚獣?〜夏休み編〜】

の続章となっています。読まれていない方はそちらもよろしくお願いします。


暑い夏も乗り切ってやってきました二学期編!夏休みを満喫したいつものメンバーとFクラスの前に立ちふさがったのは……無敵の鉄人による持ち物検査!?

『お願いします、西村先生!僕らにその本を返してください!』
『僕らには———僕らにはその本がどうしても必要なんです!』
『お願いです!僕たちに、保健体育の勉強をさせてください!』
『西村先生、お願いします!』

『『『『お願いします!』』』』

「黙れ。一瞬スポ根ドラマと見紛うほど爽やかにエロ本の返却を懇願するな」

『『『『鬼っ!悪魔っ!!鉄人っ!!!』』』』

毎日バカやる明久たちがそんな教師たちの横暴を黙っているはずもなく。正々堂々鉄人に挑むFクラスだったけど……(正々堂々の意味、今すぐ調べてください皆さん by造)

「ええい!こうなりゃ実力行使だ!僕らの大事な参考書(エロ本)を守るため、命をかけて戦うんだ!」
「ほう?良い度胸だ、かかってこい……シメるついでに夏休みで緩んだ頭のネジをキッチリ締めなおしてやる」

明久たちの必死の抵抗虚しく、鉄人に阻まれ大事なもの(エロ本)を取り上げられるFクラスメンバー。このまま為すすべがないのか?否、まだ手はある……!召喚野球で教師を蹴散らし、取り戻せ僕らの聖典(エロ本)!


体育祭に召喚野球。そしていよいよ試召戦争が解禁となり恋に嫉妬に勉強に、ますます楽しくそして忙しくなる造や明久たち。そんないつものメンバーの非日常的な日常をどうかよろしくお願いします。


———目次———
序章 1〜4章及び各種設定【バカな自分は召喚獣?〜一学期編〜】>>6参照

5〜5.5章及び各種設定  【バカな自分は召喚獣?〜夏休み編〜】>>7参照

6章 体育祭&召喚野球編>>1-117
102時間目>>1-5   103時間目>>8-11  104時間目>>12-16  105時間目>>20-23
106時間目>>24-28  107時間目>>29-32  108時間目>>33-36  109時間目>>37-40
110時間目>>41-44  111時間目>>45-48  112時間目>>49-52  113時間目>>53-56
114時間目>>59-62  115時間目>>63-66  116時間目>>67-70  117時間目>>73-76
118時間目>>80-83  119時間目>>84-87  120時間目>>91-94  121時間目>>98-101
122時間目>>104-107 123時間目>>110-113 124時間目>>114-117
覚えよう野球のルール〜スクイズしてください!〜>>77-79

6.5章 文化の秋・食欲の秋・文月学園の秋編>>120-221
酔いと造と幼児返り!?〜お酒は大人になってから〜
前編>>120-122 中編>>125-127 後編>>130-132

週刊☆文月学園ラジオ放送 特別企画・文化の秋!
前編>>135-136 後編>>137-138

ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜
その①>>141-143 その②>>146-148 その③>>149-151 その④>>154-156 その⑤>>157-159
その⑥>>164-166 その⑦>>167-169 その⑧>>170-172 その⑨>>173-175 その⑩>>176-178

召喚実験シリーズ〜自分と本音と暴露大会〜
その①>>179-181 その②>>182-184 その③>>185-187
その④>>188-190 その⑤>>191-193 その⑥>>194-196

寒い日は鍋が一番!〜闇鍋?病み鍋?暗黒鍋デス〜
その①>>197-199 その②>>202-204 その③>>209-211 その④>>214-216 その⑤>>219-221

7章 二学期試召戦争開幕&Fクラスの変編>>224-330
125時間目>>224-226 126時間目>>229-231 127時間目>>234-236 127.5時間目>>241-242
128時間目>>243-245 129時間目>>246-248 130時間目>>251-253 131時間目>>256-258
132時間目>>261-263 133時間目>>264-266 134時間目>>267-269 135時間目>>271-272
136時間目>>273-274 137時間目>>275-277 138時間目>>280-282 139時間目>>283-285
140時間目>>286-288 141時間目>>289-291 142時間目>>292-294 143時間目>>295-297
144時間目>>298-299 145時間目>>300-302 146時間目>>303-305 147時間目>>306-307
148時間目>>308-309 149時間目>>310-311 150時間目>>312-313 151時間目>>314-316
152時間目>>317-318 153時間目>>319-321 154時間目>>322-323 155時間目>>324-326
156時間目>>327-330

7.5章 とあるお休みの一日:同棲生活は命がけ編
召喚実験シリーズ:〜みんなの子どもシミュレーション〜
その①>>334-336 その②>>337-338 その③>>339-341
その④>>342-344 その⑤>>345-347 その⑥>>348-350

文月学園新聞&特別補習:鉄拳先生の情報講座>>353-355

彼と彼女のとある日の出来事
〜明久と瑞希編〜
前編>>356-358 中編>>359-361 後編>>362-365
〜雄二と翔子編〜
前編>>366-368 中編>>369-372 後編>>373-377
〜造と秀吉と優子編〜
前編>>378-380 中編 後編
〜明久と美波編〜
前編 中編 後編
〜造と葵編〜
前編 中編 後編
〜康太と愛子編〜
前編 中編 後編

おいでませ文月学園!久保弟の学校見学
前編 中編 後編

8章 最終決戦!Aクラス対Fクラス試召戦争編

———バカテスト集———
その⑦>>18-19 その⑧>>240 その⑨>>278

———各種設定———
文月学園レポート:腕輪編その①>>17 その②>>279

お知らせ>>270

情報の取捨選択 ( No.354 )
日時: 2016/03/25 20:57
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

「———ふむ、ちょうどいい。今日の補習はこれを使ってみるか」


〜特別補習:鉄拳先生の情報講座〜


———2-Fクラス———


「さて、今日の補習は少し志向を変えて変わったことをやってみたいと思う。今回は情報の取捨選択について学んでいこう」
「よろしくお願いしますね、せんせ」
「はーい、鉄拳先生質問です。取捨選択ってどういうことですか?情報って集めれば集めるだけお得なんじゃないんですか?」
「お前にしてはとても良い質問だ吉井。それはな———」

【情報の取捨選択とは?】
昨今はインターネットや携帯・スマートフォンなどの普及により情報社会と呼ばれるほど世の中には多くの情報が氾濫している。この自身では処理しきれないほどの多くの情報の中から不要なものを捨て、自身に必要な情報のみを頭に入れること。

「———これを情報の取捨選択と言う。近い意味でメディアリテラシーとも言うな」
「現代国語を解く際にも使えそうですねせんせ。筆者の言いたいことをピックアップすれば解答速度が上がりそうです」
「その通り。普段からこの能力を鍛えておくと読解力アップにも繋がる。トレーニング方法としては新聞などの記事・コラムをコピーして自身に必要な情報だけをノートに切り貼りすると言うやり方があるな。早速やってみよう。月野、さっき渡した文月新聞を用いて不要な部分を極力削り、自分に必要な情報のみを残してみるんだ」
「はい、頑張りますっ!」




〜月野造が取捨選択した文月新聞〜
〜文月学園新聞〜 【コラム】欄より抜粋

『止まらぬ少子化に新たなアプローチ〜学生時代から子どもに関心を〜』

近年ではすでに聞きなれてしまった少子化問題と言う言葉。これに対し、教育者の立場から一風変わった方法で解決の糸口を探る試みがなされていたことが先日わかった。その方法とは、なんと召喚獣を用いて学生の子どもに対する興味を喚起するというものらしい。

考案したのは文月学園の学園長である藤堂カヲル氏。この試みは、二名の召喚者の性格や外見の特徴を特殊なシステムで処理することにより両名の間に出来るであろう子どもを予測するというもの。この召喚獣に触れて子どもの可愛らしさを知り、家庭を築くことの喜びに気付いてもらうことが狙いと学園長は語る。

実際に体験した生徒たちに話を聞いてみたところ 女子生徒たちには肯定的な意見が見られる一方で 男子生徒たちには否定的な意見も見られた。

尚、この子ども型召喚獣はあくまでも召喚者二人の要素を抜き出してシミュレーションを行うものであり、教育環境や交友関係などの外部的要因については考慮されていない。その辺りは現在のテクノロジーで演算を行うのは難しいようだ。

興味深い試みではあるがまだまだ改良の余地があると言えるだろう。



〜文月学園新聞〜 【情報】欄より抜粋

『あの2-Fクラスに成績向上の兆しが』

2-Fクラス が、最近成績向上との噂がある。試召戦争を数多くこなしてきたことが、彼らの成績アップの一助になったと推測される。

クラス代表の坂本雄二氏を筆頭に、吉井明久氏、土屋康太氏や須川亮氏などもそれぞれ点数を伸ばしていると言う話だ。これは文月学園の運営指針がもたらした一つの成果ともいえるのではなかろうか。



〜文月学園新聞〜 【事件】欄より抜粋

『あわや火事!?調理室で原因不明のボヤ騒ぎ〜幸い怪我人無し〜』

調理室で、原因不明のボヤ騒ぎが発生した。調べによると火元と思われる場所で火が付いた様子は無く、ガスも元栓からしっかり閉めてあったためどこから火が付いたのか未だにわかっていないとのこと。室内で調理を行っていた姫路瑞希さんによると———

「にらを入れようとしましたけど……無かったので匂いが似ている黄リンを入れて……しばらくしたら自然発火しちゃいまして……」

———とのこと。念のため書いておくが黄リンは猛毒であるので注意。



〜文月学園新聞〜 【スポーツ】欄より抜粋

『女子水泳部大会に向け特訓開始』

秋の大会へと向けて女子水泳部が特訓を開始した。全員が満足のいく結果が出せるように頑張ってもらいたい。




「———できましたが……どうでしょうかせんせ?」
「うむ、中々良いな。少しばかり気になる点はあるが、個人的には良く取捨選択出来ていると思う」
「あ、ありがとうございます!」
「ただ気になる点は、ボヤ騒ぎの記事はもう少し削っても良いんじゃないのか?姫路が混乱している発言の部分は消しても問題ないと思うぞ」
「…………(ボソッ)いえ、そこが一番大事だと思いましたので削れませんでした……」
「?まあいい。さあ、月野が良いお手本を見せてくれた。これを参考にして吉井、お前もやってみろ」
「はいっ!じゃあ僕も行きますっ!」

情報の取捨選択 ( No.355 )
日時: 2016/03/25 20:58
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

〜吉井明久が取捨選択した文月新聞〜


〜文月学園新聞〜 【コラム】欄より抜粋

『止まらぬ少子化に新たなアプローチ〜学生時代から子どもに関心を〜』

二名の召喚者の性格や外見の特徴を特殊なシステムで処理することにより両名の間に出来るであろう子どもを予測するというもの。

我々はこの対策方法を一足先に実際に体験した生徒たちに話を聞いてみたところ———

Y井君『酷い目に遭ったよ、あんなのはもうこりごりだ』

S本君『二度とごめんだ。あのババァやることなすこと毎度毎度ろくでもねぇ』

などと、男子生徒たちには否定的な意見も見られた。

生まれてくる子どもの年齢が二歳程度に限定されてしまう、男同士や女同士でも子どもが出来るなどの問題点も残っており、まだまだ改良の余地があると言えるだろう。



〜文月学園新聞〜 【情報】欄より抜粋

『あの2-Fクラスに成績向上の兆しが』

2-Fクラス が、最近成績向上との噂がある。試召戦争を数多くこなしてきたことが、彼らの成績アップの一助になったと推測される。一学期期末試験ではクラス全体の平均点は驚くべきことにCクラス並みだったと言う噂もあるほどである。

クラス代表の坂本雄二氏を筆頭に、 吉井明久氏のみならず、土屋康太氏や須川亮氏などもそれぞれ僅かながらも点数を伸ばしていると言う話だ。これは文月学園の運営指針がもたらした一つの成果ともいえるのではなかろうか。



〜文月学園新聞〜 【事件】欄より抜粋

『あわや火事!?調理室で原因不明のボヤ騒ぎ〜幸い怪我人無し〜』

調理室で、原因不明のボヤ騒ぎが発生した。調べによると火元と思われる場所で火が付いた様子は無く、ガスも元栓からしっかり閉めてあったためどこから火が付いたのか未だにわかっていないとのこと。室内で調理を行っていた姫路瑞希さんによると———

「にらを入れようとしましたけど……無かったので匂いが似ている黄リンを入れて……しばらくしたら自然発火しちゃいまして……」

———とのこと。予期せぬ事態に相当混乱しているようである。念のため書いておくが黄リンは猛毒であるので注意。また当分の間調査の為調理室が閉鎖されることに関しては

「料理が大好きなので残念です」

と述べた。勉強熱心な彼女は花嫁修業にも真摯に取り組んでいるようだ。



〜文月学園新聞〜 【スポーツ】欄より抜粋

『女子水泳部大会に向け特訓開始』

秋の大会へと向けて女子水泳部が特訓を開始した。




「出来ました!」
「ふむ……少し長い部分や、逆に重要そうな部分を削り過ぎているところもある……が、思ったよりも良くできているな」
「っ!?て、鉄じ———鉄拳先生が僕を褒めた……!?」
「どういう意味だ。まあ、それはいい。と言うかだな。一番気になるところは……お前も月野も何故ボヤ騒ぎの記事にあまり手を加えないんだ?」

「「…………」」

「?吉井?それに月野?」
「…………いや、その。色んな意味で削れませんでした」
「アキさん……デスヨネー……」
「お前たちはどうしたと言うんだ一体……まあ、事情があるのかないのか知らんが次行くぞ。次は……そうだな、須川やってみろ」
「オッス!須川亮、行きます!」




〜須川亮が取捨選択した文月新聞〜


学園一 の 成績の 須川亮氏





を姫路瑞希さん




大好きなので

彼女は花嫁修業に 真摯に取り組んでいるようだ。




女子水泳部

部員 が 彼 を取り合う ため 競争と なりそうだ。人気の高い 人 であ る 。




「出来ました!」

「「「…………」」」

「どうですか!完璧でしょう」
「……須川」
「はい、何でしょうか?」
「後で補習室に来い」
「何故に!?」
「ははっ!その前に僕がボコるけどね須川ァ……!」
「あ、アキさん落ち着いて!?は、刃物は駄目です刃物は!?」
「“何故に!?”ではないわバカ者!須川、キサマがやったのは取捨選択ではなく切り貼りによる情報の改ざんだ!情報自体の内容を捻じ曲げず、あくまでも自分にとって必要、あるいは興味のある情報を残すことが大事なのだ!わかるか!?」
「ま、間違っていると言うんですか!?」
「あらゆる意味で間違っとるわ!……はぁ。全く……吉井ですらまともにやったと言うのに、この分だと他のFクラスの連中も似たような改変をしてきそうだな———む?ああ、ちょうどいい。須川、手本として他クラスの生徒に情報の取捨選択をやってもらうからそれを見て書き直せ、良いな」
「へーい……」
「さて、通りすがりで申し訳ないが君たち。参考までに情報の取捨選択をやってみてくれ」

「「わかりました(わ)!!」」




〜清水美春が取捨選択した文月新聞〜

女同士でも子どもが出来る


〜玉野美紀が取捨選択した文月新聞〜

男同士 でも子どもが出来る




「「「…………」」」

「あ、あのせんせ……顔色が」
「て、鉄拳先生?大丈夫ですか?」
「…………すまんが、これにて今日の補習は終わりだ……保健室に行って胃薬を貰って来るな……」

彼と彼女とある日の出来事〜明久と瑞希編〜前編 ( No.356 )
日時: 2016/03/26 00:22
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

毎日が非日常的な生活を送っている造や明久たちも、学園を離れた時の休日や放課後はまた学園とは一味違った日常の中で生きている事でしょう。そして造たちの日常は、これまたやはり普通では味わうことのできない面白おかしいものとなっているはずです。それでは———折角ですから今回は、姫路瑞希と島田美波&葉月の両親及び月野造の母と日高先生(+執事&お手伝いさん)達がストにより海外から帰られなくなった時期の日々を少しだけ覗いてみましょうか。


明久Side


———吉井家———


———チチチチチ


なんて、窓の外から小鳥の囀りが聞こえてきた。どうやらカーテンを閉め忘れていたようで、窓から朝の陽光が差し込み心地よいまどろみの淵にいる僕を照らし、まだ眠いと言うのにその身体を無理やり覚醒させようとしていく。

「……あの、明久君」
「アキ、朝よアキ」
「バカなお兄ちゃん、起きてくださいー!」

鳥の囀りに混じって、可愛らしい三人の女の子の声が聞こえてくる気がする。夢うつつだからだろうか、どう考えてもこの場にはいないハズの声が頭の中に妙にすんなりと入ってくる。だからこれは夢だと理解しつつも、思わずまるでそれが当然の様にその三人の声に反応して応えていた。

「ん……ゴメンね……瑞希に美波に葉月ちゃん……もう少し……だけ」
「え、あ……はい。そうですよね。日曜日ですしもう少し寝ていたいですよね」
「んー……とは言え玲さんに呼ばれたことだし、そろそろ起きてもらわないと困るけど」
「葉月お腹空いちゃったです……」
「ゴメン……先、食べてて……いいから……」

夢見心地に身をゆだね、寝返りを打ちつつそう言う僕。すると———

「さっさと起きなさいアキくん。さもなくば———私とアキくんの一生を左右するチュウをします」
「邪悪なる気配っ!」

———さっきの優し気な声の三人とはまるで違う、どす黒い企みを秘めた脅し文句を言い放つ邪悪なる声が聞こえてくる。その声で一瞬で覚醒し身体を横に転がす僕。顔面、正確には口元を両腕でガードしつつ、下肢に力を込めていつでも逃走できるよう準備する。そう完全防御体勢を取る僕に対して、

「……失礼ですねアキくんは。誰が邪悪だと?」

なんてのたまいながら、さっきのトンデモ発言の主である姉さんがジトッとした目で僕を見ていた。

「ほほぅ?邪悪じゃないならさっき僕に何をしようとしていたのか言ってみてよ姉さん」
「チュウをしたのちアキくんの自由を奪い、あられもない恰好をさせてその恰好を写真に残し、その写真を使い一生脅迫し続けようとしただけですよ」
「そっか、確かに邪悪じゃないね。だって……それもう犯罪行為だよバカ姉さんっ!?」

咄嗟に起きれて本当に良かった。姉さんのこの目は本気だ……

「やれやれ、アキくんにバカと言われるのは心外ですね」
「常識のない姉さんをバカと呼んで何が悪いと言うのさ……あ、それはそうと瑞希も美波も葉月ちゃんもおはよう。ゴメンね朝っぱらから姉さんが非常識で」

そんな禍々しき姉さんの横にいた姉さんとは打ってかわるかのような朗らかな三人の姿を見て挨拶をする僕。

「あ、えっと……はい。明久君おはようございます」

ロングスカートにカーディガンという私服を着ているのは瑞希。ふんわりしている柔らかそうなカーディガンもフリルの付いたロングスカートも、愛らしくも温和な彼女にぴったりの姿だね。

「うん、おはよアキ」

シフォンのブラウスとキュロット姿の活発そうな恰好をしているのは美波。活動的な彼女らしい恰好でこっちもぴったりな格好だ。それでいて胸元のリボンが彼女の女の子らしさを引き立てているのが素晴らしい。

「おはようですバカなお兄ちゃん!」

そしてレースやフリルをふんだんに使ってある黒色のゴシックロリィタ風な年相応の格好をしているのは美波の妹の葉月ちゃん。葉月ちゃんも美波とは色違いのお揃いのリボンをしていてこれまた可愛らしい。

いやぁ、自宅でしかも朝からこんなに癒されるなんて眼福眼福。なんとも得難き幸せな時間———あれ?ちょい待った、何かおかしくない……?

「え、瑞希に美波に葉月ちゃん……?」
「?はいそうですが?」
「ん?何よアキ?」
「どうしましたかバカなお兄ちゃん?」
「その、どう———っ!」

どうしてここにいるの?なんて言葉を慌てて飲み込む。そうだった、昨日から皆のご両親が海外でストに巻き込まれて日本に帰れなくなっちゃって……最近は物騒だからってこともあって三人ともしばらく我が家に泊まってもらうことになったんだった。もしどうしてここにいるの?なんて失言しちゃったら今以上に気を遣わせてしまうね。ホント危なかったぁ……

「「「???」」」

「あー、コホン。どうだったかな?三人とも昨日はよく眠れたかなって思ってさ」
「ああなるほど。うん、ありがとアキ。お陰様でねバッチリ眠れたわ」
「葉月もぐっすり眠れましたっ!」
「私なんか、すっごく幸せな夢まで見れちゃいましたよ明久君っ!」

慌てて言い繕ってみたけど、何とか誤魔化せたようだね。それにしても良かった。慣れない環境で眠れないなら大変だっただろうけど、どうも三人ともそれは無さげだし。

彼と彼女とある日の出来事〜明久と瑞希編〜前編 ( No.357 )
日時: 2016/03/25 21:09
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

「羨ましいわ瑞希……そんな夢見れるなんて」
「綺麗なお姉ちゃん、葉月もそれ見たかったです……」
「ん?そんなにいい夢だったんだ瑞希?」
「はいっ!現実でも見てみたいくらい可愛かったんですよっ!」

ふーん、可愛い夢かぁ。葉月ちゃんたちも見たがっていると言うことは、それはきっと犬や猫とかの小動物系の夢ってことだろう。

「そっか、それなら現実でも見れたらいいよね」

「「「えっ……!?」」」

「……ん?何かな皆?」

そう呟くと何故か三人が目を丸くしている。え、何?別に何も変な事言ってないよね僕……?

「あ、明久君……それはつまり協力してくれるんですか?」
「うん?うーん……まぁ僕に出来ることがあるなら何でも協力するけど」
「い、良いのアキ!?」
「いやだってそんなに可愛いなら僕だって見てみたいしさ」
「バカなお兄ちゃん、葉月楽しみですー!」
「そっかー葉月ちゃんも楽しみなんだね。僕も楽しみにしているよ」
「わかりました明久君!お洋服の準備が出来たらすぐに呼びますからねっ!」

……何故に洋服?まあ、よくわからないけど、皆がそこまで言うくらいならきっと良いものが見られるんだろうね。うんうん、楽しみだ。

「ふむ、なるほど。アキくんはこうやって墓穴を掘っていくのですね」
「んー?何さ姉さん。何か言った?」
「いえ。私にとっても悪い話ではなさそうですし、気にしないでくださいねアキくん」
「???」

……なぜだろうか、少し悪寒がする。

「まあ、どうでもいいか。それじゃとりあえず僕顔でも洗ってくるね」
「そうですね、それがいいでしょう」
「それじゃ皆、また後で」

今日からは姉さんだけじゃなくて瑞希も美波も葉月ちゃんもいるわけだし、あまりだらしのない姿を見せるわけにもいかないからね。シャキッとするためにも顔でも洗おう。そうやってベットの前に立っている皆を残して洗面所へと向かう僕。顔洗ったら簡単なものでご飯でも作るかな。






『———フリフリの可愛いのが良いですよね』
『ウイッグは……長めのやつにしましょうか』
『大きめのリボンと……折角ですから下着も』
『葉月、お兄ちゃんの可愛い所見たいです!』

———それにしても。どんな話をしているのかわからないけれど、背後から微かに聞こえてくる声が不思議ととても怖く感じてしまうのは何故だろう。


〜少年少女たち+大人の女性 朝食中:しばらくお待ちください〜


「———それじゃあ、ウチと葉月はとりあえず必要そうなものを取りに一旦家に戻るわね。あと少し家の掃除とかしてからこっちに戻ることになると思うわ」
「うん了解、こっちも軽くだけど掃除とかしなきゃいけないしゆっくり準備とかすると良いよ。後、重そうなものとかあったら僕も運ぶの手伝うから何かあったら電話してね美波」
「ありがとアキ。その時はお願いね」

朝ご飯を食べ終わってしばらくすると、美波と葉月ちゃんが必要なものを取りに家に帰ると言ってきた。昨日は急にお泊りすることが決まってバタバタしてたし、特に美波は葉月ちゃんを連れてくるだけで碌に準備できないままだったしこれから準備するそうだ。

「美波ちゃん、ちなみに今日のお昼ご飯はどうしますか?」
「うーん……そうね。ウチの家の冷蔵庫の中に賞味期限近いものもあったから、それ早めに使っておきたいのよね……と言うわけで今日のお昼はウチと葉月は家で食べてくることにするわ」

これからしばらく皆が僕の家で同棲生活(と言うかルームシェア?)をするわけだし、傷みそうなものとか中心に冷蔵庫の中のものを整理しときたいとのこと。うんうん、料理上手な美波らしい賢い判断だよね。あ、ちなみに料理で思い出したけど今日の朝ご飯は僕が作ったよ。僕が作った理由?それは聞かなくてもわかると思う。

「そうですか。では準備が終わったらアキくんの携帯にでもかけてくださいね美波さん。どんどんこき使ってくれて構いませんので」
「はい、じゃあそうさせてもらいますね。と言ってもそんなに荷物にならないとは思いますけどね。あと多分準備終るの夕方ぐらいになると思います。それじゃあ行ってきますね。行こ葉月」
「はいです!バカなお兄ちゃんたち、行ってきますです!」

そう言って仲良く手を繋いで一旦自分たちの家に帰っていった美波と葉月ちゃん。あとに残ったのは僕と姉さんと瑞希だけ。あれ?そう言えば瑞希は大丈夫なのかな?

彼と彼女とある日の出来事〜明久と瑞希編〜前編 ( No.358 )
日時: 2016/03/25 21:10
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

「ねぇ瑞希。瑞希は美波たちみたいにお泊りの準備自体はもう良いの?」
「あ、はい。私は昨日のうちに持ってこれましたので」
「あらら……ゴメン、言ってくれたら運んだのに」
「大丈夫ですよ、軽かったですし。着替えと簡易用の旅行セットと学校に必要なものと勉強道具があれば十分ですからね」

と、客間の端っこに置いている少し大きめの旅行用バックを指差してそう言う瑞希。自分のお家で寝ていた葉月ちゃんを連れてくる必要があった美波とは違って、瑞希は時間があったから昨日のうちに十分準備出来たそうだ。そもそも必要最低限の持ち物みたいだからね。そう言うところは流石にしっかりしている性格が出ているよね。仮に僕だったら漫画・ゲームで瑞希の5倍の持ち物となるだろうし。

「そっか、なら良かったよ。……さて、それじゃそろそろ掃除と洗濯でもしよっかな。今日はホントに良い天気で良かったよねー」

来客用のお布団も溜まっていた洗濯物も干せるし助かるよね。さて、まずは三人が寝泊まりする予定の客間をしっかり掃除しよう。埃があったら少しだけ身体の弱い瑞希が体調崩しかねないかもしれないし、女子三人も汚れた部屋で眠るのなんて嫌だろうし。

「お掃除ですか?それなら私も手伝います明久君」
「ああ、いいよいいよ。瑞希はお客さんなんだしテレビでも見てゆっくりしてなよ」
「じゃあせめてお昼ご飯は私が———」
「瑞希は客間の掃除をお願いね。僕は廊下とかキッチンとか自分の部屋を片付けるから。三人が寝泊まりする部屋だから頑張って掃除してね。いやぁ、分担してやった方が効率良いもんねっ!じゃあお願いするよ瑞希」
「え?あ、はい。わかりました!」

あっぶな……油断できないねこりゃ。手伝わせるなんて悪いとは思うけど、こうなると寧ろ瑞希には積極的に掃除でもやってもらった方が良いかもしれない。それこそ———料理に手を出す余裕がなくなるほどに。

「では、姉さんがお昼を作りましょう」
「ええぃ、ちっとも危険回避できてないっ!?」

一難去ってまた一難。大分まともになったとは言え、姉さんの料理の腕前もかなり怪しいんだよね……よし。この際だから二人には言っておこう。

「ねぇ二人とも。ご飯の用意は全部僕に任せて貰えないかな。ほら、瑞希はお掃除しなきゃならない客間って結構広いし料理にまで手が回らないよ。姉さんは姉さんで最近仕事忙しいんでしょ。ご飯よりも仕事に使う資料作りをちゃんとしなきゃね」
「えっ!?で、ですが……」
「お断りです。またそうやって誤魔化そうとしてもダメですからねアキくん。どういうわけか知りませんが、アキくんが姉さんをキッチンに立たせまいとしていることくらいわかっていますから」

そう不服そうに僕を見ながらそんなことを言う姉さん。……僕だって姉さんや瑞希が多少下手でも美味しくなくてもまともに料理できるのであればやらせても良いとは思っているよ?でもね、いくらなんでも命にかかわるレベルの料理されるのは見過ごせないんだよ。

「よしわかった。そこまで言うなら簡単なテストしてあげる。姉さん、お米をどうやって砥ぐのか知ってるかな?」
「…………アキくん。さては貴方は姉さんをバカにしていますね?」
「いいや、僕は大真面目に聞いてるよ」

そう、僕は決して忘れない。前に『野菜洗って』って頼んだら洗剤を持ち出したこの姉さんの事を。そんな僕の小学校レベルのテストに対して、姉さんは大きく溜息を吐いて呆れた顔でこう返してくる。

「まったく……アキくんは何のために台所に砥石があると思っているのやら」
「包丁砥ぐためだよバカっ!?」

あーもうっ!案の定だったよ!?確かに“砥ぐ石”と書いて“砥石”だけど、アレはお米を研ぐための道具なんかじゃないよ!?そんなの小学生でもわかるよね!?

「そうですね。ダメですよ玲さん、お米を砥ぐのでしたらクレン———へくちっ」
「待って!?“クレン”!?もしかしなくても瑞希今“クレンザー”って言おうとしたわけじゃないよね!?」

瑞希、クレンザーは食器の研磨用だよ!?食べ物に使ったらどうなるか普通分かるよね!?と言うかわかってほしいんだけどっ!?……これは思っていた以上にマズい。この二人に台所を任せてしまったらマジで大変なことになってしまう……

「と、とにかくさっさと掃除を始めることにしよう!姉さんはさっさと仕事に必要な資料作りしなよ!お昼はとりあえず僕が作るからっ!」

有無を言わさぬ口調で強引に決める僕。そんな僕の提案に対して二人はと言うと。

「しょうがないですね。アキくんがそこまでメイドさんの恰好で私たちに給仕したいというなら姉さんは我慢するとしましょう」
「明久君のメイド姿ですか……そうですね。それなら仕方ないですね」
「何をどうしたらその発想になるのさ!?ああもう、この二人って頭良いんじゃなかったの!?」

近いうちに教育委員会に連絡しよう。学校のテストには“一般常識”の項目を追加するべきですよって。若干疲弊しながらもそんなことを考えつつ、ようやく掃除に取り掛かることになった。


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