二次創作小説(紙ほか)
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- バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 お知らせあり>>270
- 日時: 2016/03/25 21:41
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
初めましてな方は初めまして。そうでない方はお久です。こちらはバカとテストと召喚獣の二次創作であり以下のスレッド
【バカな自分は召喚獣?〜一学期編〜】及び【バカな自分は召喚獣?〜夏休み編〜】
の続章となっています。読まれていない方はそちらもよろしくお願いします。
暑い夏も乗り切ってやってきました二学期編!夏休みを満喫したいつものメンバーとFクラスの前に立ちふさがったのは……無敵の鉄人による持ち物検査!?
『お願いします、西村先生!僕らにその本を返してください!』
『僕らには———僕らにはその本がどうしても必要なんです!』
『お願いです!僕たちに、保健体育の勉強をさせてください!』
『西村先生、お願いします!』
『『『『お願いします!』』』』
「黙れ。一瞬スポ根ドラマと見紛うほど爽やかにエロ本の返却を懇願するな」
『『『『鬼っ!悪魔っ!!鉄人っ!!!』』』』
毎日バカやる明久たちがそんな教師たちの横暴を黙っているはずもなく。正々堂々鉄人に挑むFクラスだったけど……(正々堂々の意味、今すぐ調べてください皆さん by造)
「ええい!こうなりゃ実力行使だ!僕らの大事な参考書(エロ本)を守るため、命をかけて戦うんだ!」
「ほう?良い度胸だ、かかってこい……シメるついでに夏休みで緩んだ頭のネジをキッチリ締めなおしてやる」
明久たちの必死の抵抗虚しく、鉄人に阻まれ大事なもの(エロ本)を取り上げられるFクラスメンバー。このまま為すすべがないのか?否、まだ手はある……!召喚野球で教師を蹴散らし、取り戻せ僕らの聖典(エロ本)!
体育祭に召喚野球。そしていよいよ試召戦争が解禁となり恋に嫉妬に勉強に、ますます楽しくそして忙しくなる造や明久たち。そんないつものメンバーの非日常的な日常をどうかよろしくお願いします。
———目次———
序章 1〜4章及び各種設定【バカな自分は召喚獣?〜一学期編〜】>>6参照
5〜5.5章及び各種設定 【バカな自分は召喚獣?〜夏休み編〜】>>7参照
6章 体育祭&召喚野球編>>1-117
102時間目>>1-5 103時間目>>8-11 104時間目>>12-16 105時間目>>20-23
106時間目>>24-28 107時間目>>29-32 108時間目>>33-36 109時間目>>37-40
110時間目>>41-44 111時間目>>45-48 112時間目>>49-52 113時間目>>53-56
114時間目>>59-62 115時間目>>63-66 116時間目>>67-70 117時間目>>73-76
118時間目>>80-83 119時間目>>84-87 120時間目>>91-94 121時間目>>98-101
122時間目>>104-107 123時間目>>110-113 124時間目>>114-117
覚えよう野球のルール〜スクイズしてください!〜>>77-79
6.5章 文化の秋・食欲の秋・文月学園の秋編>>120-221
酔いと造と幼児返り!?〜お酒は大人になってから〜
前編>>120-122 中編>>125-127 後編>>130-132
週刊☆文月学園ラジオ放送 特別企画・文化の秋!
前編>>135-136 後編>>137-138
ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜
その①>>141-143 その②>>146-148 その③>>149-151 その④>>154-156 その⑤>>157-159
その⑥>>164-166 その⑦>>167-169 その⑧>>170-172 その⑨>>173-175 その⑩>>176-178
召喚実験シリーズ〜自分と本音と暴露大会〜
その①>>179-181 その②>>182-184 その③>>185-187
その④>>188-190 その⑤>>191-193 その⑥>>194-196
寒い日は鍋が一番!〜闇鍋?病み鍋?暗黒鍋デス〜
その①>>197-199 その②>>202-204 その③>>209-211 その④>>214-216 その⑤>>219-221
7章 二学期試召戦争開幕&Fクラスの変編>>224-330
125時間目>>224-226 126時間目>>229-231 127時間目>>234-236 127.5時間目>>241-242
128時間目>>243-245 129時間目>>246-248 130時間目>>251-253 131時間目>>256-258
132時間目>>261-263 133時間目>>264-266 134時間目>>267-269 135時間目>>271-272
136時間目>>273-274 137時間目>>275-277 138時間目>>280-282 139時間目>>283-285
140時間目>>286-288 141時間目>>289-291 142時間目>>292-294 143時間目>>295-297
144時間目>>298-299 145時間目>>300-302 146時間目>>303-305 147時間目>>306-307
148時間目>>308-309 149時間目>>310-311 150時間目>>312-313 151時間目>>314-316
152時間目>>317-318 153時間目>>319-321 154時間目>>322-323 155時間目>>324-326
156時間目>>327-330
7.5章 とあるお休みの一日:同棲生活は命がけ編
召喚実験シリーズ:〜みんなの子どもシミュレーション〜
その①>>334-336 その②>>337-338 その③>>339-341
その④>>342-344 その⑤>>345-347 その⑥>>348-350
文月学園新聞&特別補習:鉄拳先生の情報講座>>353-355
彼と彼女のとある日の出来事
〜明久と瑞希編〜
前編>>356-358 中編>>359-361 後編>>362-365
〜雄二と翔子編〜
前編>>366-368 中編>>369-372 後編>>373-377
〜造と秀吉と優子編〜
前編>>378-380 中編 後編
〜明久と美波編〜
前編 中編 後編
〜造と葵編〜
前編 中編 後編
〜康太と愛子編〜
前編 中編 後編
おいでませ文月学園!久保弟の学校見学
前編 中編 後編
8章 最終決戦!Aクラス対Fクラス試召戦争編
———バカテスト集———
その⑦>>18-19 その⑧>>240 その⑨>>278
———各種設定———
文月学園レポート:腕輪編その①>>17 その②>>279
お知らせ>>270
- 153時間目 ( No.319 )
- 日時: 2016/03/11 21:59
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
造Side
自分たち7人対Cクラス+Fクラス連合軍の試召戦争。どちらも死力を尽くして戦った結果は……最後の最後で自分たちの奇策が決まり辛くも自分たちの勝利となりました。
「なんでよ……どうしてなのよ……確かに嫌な予感してたわよ……で、でもここまで準備して、常に最悪のケースを想定した対策をして、おまけに反則ギリギリのFクラスをも使ったのに……それなのになんで……なんで……」
自分とヒデさんに召喚獣を倒されて、ガックリと項垂れて震える声でこれ以上ないくらい悔しそうにそう呟く小山さん。
「むぅ……利用されたとはいえ、今回の件はFFF団の暴走が発端じゃし……Cクラスには悪いことをしたのう。造よ、時間もあることじゃし折角じゃ。何が起きたのくらい説明しても良いのではないかの?」
「んー……それもそうですね。では小山さんさえ良ければゆーさんがこちらに来るまでちょっと説明しましょうか」
「……おねがい、します」
怒涛の展開に情報処理が追いついていない様子の小山さん。確かにヒデさんの言う通りです。この騒ぎの協力者ではあっても、小山さんやCクラスの皆さんがFクラスの内輪揉めに巻き込まれたのも事実。内輪揉めで迷惑をかけたことですしFクラスの一生徒として、少なくともクラス代表である彼女には何が起こったのか説明する義務はあるでしょうからね。
「では……順を追って説明しましょうか、今回の“本当の作戦”の内容をね」
〜造回想中〜
———隠し部屋———
『お主、ワシでは力不足と言いたいのかの?確かにお主や明久たちに比べると戦闘技術も無ければ点も取れておらぬが、ワシだって———』
『す、すみませんヒデさん!?違う、違うんです!説明し忘れてたんです!今の作戦はあくまでも“この場を切り抜ける”為の作戦なんです!』
『……む?』
『例えですね、さっきの自分の作戦通りに事が進んでCクラスに勝てたとしても、今回の“根本的な問題”は一切解決できません。そうでしょう?』
『あー、確かにこのままじゃこれから先もこういう事が度々起こりうるだろうな』
『造が言いたいことって……あのバカ共をどうするかが問題ってことだよね』
その通り、本当に大切なのは目先のCクラス戦ではなく暴走している“Fクラス”を立て直すことです。
『だからこそ今から説明する“本当の作戦”は……ヒデさん。貴方に全てがかかっています』
『…………は?』
『断言しましょう、ヒデさん。今回自分やアキさん、ゆーさんやこーさん以上に作戦の要となるのは———ヒデさん、貴方です』
『……詳しく話を聞かせてもらおうかの』
『はい。説明した通り、表向き自分はアキさんとゆーさんを護りながら、ルールに則りCクラスに姿を見せつつ校内を逃げ回り好機とあらばCクラスと対峙します———が自分の本当の役割は“陽動”です。一応やれるだけCクラスの皆さんを討ち取るつもりですが、自分一人でCクラス全員を討ち取るのはいくらなんでも無茶ですからね』
まあ、当然ですがCクラスとの試召戦争にも勝たなきゃならないので出来るだけ倒していきたいとは思いますが……多分倒せて半分ちょいくらいでしょうね。Cクラス50人全員を敵にまわして全員を倒せるなんて思いあがるつもりはありませんので。
『まあ……造がいくら強いからって一人で50人を倒すのは流石にね』
『一応全員倒す気持ちでいく予定ですけど、自分一人では無理がありますからね。とにかく自分、そしてアキさんゆーさんは目立つように派手に暴れてCクラス及びFクラスの注意を引き、ヒデさんが裏で動きやすいようにするのが狙いというわけですね』
『ふむ、俺らが陽動になるのは分かった。で、その間秀吉にどう動いてもらうつもりだ造?』
『はい、ここからが一番重要なんですが……その間ヒデさんにやってもらいたいことは……』
『やってもらいたいことは、何じゃ?』
『決まっています、今回の騒動の“根本的な問題の解決”です。そのためにはまず最初の一時間で、とある二人にの生徒さんに協力して貰えるようにAクラスに行ってもらいたいんです』
とにかく今は猫の手も借りたいですし、今回のこの策にはAクラスのあのお二人の力が必要不可欠ですからね。承諾してくれるかは……正直ヒデさんの交渉にかかっているんですが……
『Aクラスに……?まあ、確かに協力を求めるならワシらの友人も多いAクラスに頼むのはわかるが……誰に頼めばよいのかの?』
『それは———優姉さんと工藤さんです』
〜造回想終了〜
「まず優先的にやっておきたかったのは、“こーさんの治療をしてくれる役”及び“ヒデさんが試召戦争中自由に動き回れるための影武者役”の確保でした」
「そこで造が目を付けたのが、ワシらに友好的で且つその役割に適しておるAクラスにおる姉上と工藤の存在じゃ。虫の息であったムッツリーニさえ回復出来れば、ムッツリーニも戦線復帰でき、更に“明久と雄二の動きを制限している手錠の開錠”が出来るじゃろう。そしてそれは……他ならぬ工藤が適任なのじゃよ」
最近こーさんの(鼻血の)治療を引き受けて手慣れている彼女ならば、何気に難しい輸血作業も確実に行いこーさんを回復してくれますからね。何よりこーさんがピンチと聞けば必ず助けてくれると踏んでいました。と言うわけで恐らく瀕死だったこーさんも昼休み中に———
———昼休み:隠し部屋———
『見つけたっ!こんなところにいたっ!』
『き、キミは……!』
『お前……!』
『…………っ!』
『待たせてゴメンねこーたくん、それに吉井君に坂本君も。Fクラスの人にここの存在がバレないように移動してたら遅くなっちゃった……とにかくすぐにこーたくんの治療を始めるね!血液パックもこーたくんの荷物もちゃんと持ってきたから安心していいよ!』
『『『工藤(さん)!待ってた(よ)!』』』
「———と、まあこんな感じできっとこーさんは工藤さんに回復してもらっているはずです」
「そしてワシは姉上と制服を交換するだけで“木下優子として”自由に校内を行き来することが出来る。これ以降Cクラスがワシを討ち取ろと模索したりFFF団に追われることなく密かに計画を実行できると言うわけじゃ」
「現にヒデさんは今の今まで“木下優子”として校内を堂々と行ったり来たりとしていたのに、誰も入れ替わっているなんて気づいていませんでしたからねー」
「ま、まさか……!じゃ、じゃあまさかFクラスの連中が捕まえたって言ってたのは———」
「うむ、“ワシの振りをした姉上”じゃろうな。姉上は見事にワシの身代わりになってくれたと言うわけじゃ」
双子ならではのシンプル且つ強力な一手。実際に一度クラス交換をしてほとんどの人にバレることが無かったヒデさんと優姉さんならば、制服を交換するだけで入れ替わっていることに誰も気づきません。ちなみに優姉さんも今頃無事に解放されている事でしょう。……後でちゃんとお礼を言っておかないといけませんね。
「で、でも待ってください!それはありえないわ!あの二人は先輩たちと仲が良いのはわかります、ですがいくら仲が良いからってそう簡単に手を貸してくれるなんて思えません!特に木下姉は先輩たちの言った通りなら、木下君の身代わりになるために授業すら抜け出して先輩たちの作戦に手を貸したことになります!仮にも優等生な彼女がそんな事するなんて思えないわ!?」
「うむ、確かにお主の言う通りじゃよ。ワシも最初に交渉に行ったときは随分と渋られてのう。『助けたいのは山々だけど、試召戦争に関して一方のクラスに手を貸すのはフェアじゃない』と言っておっての」
「だったらどうして!?」
「それはですね、優姉さんたちには本当に悪いと思っていますが……もうこれしかないと判断して“切り札”を切らせてもらったんですよ」
〜秀吉回想中〜
———Aクラス———
コンコンコン
『はーい?どちらさま———んん?あ、あれ?キミもしかして……?』
『突然の訪問済まぬ。じゃが緊急事態じゃ。悪いがこの教室のとある二人に話をさせてほしいのじゃが』
『あらら、やっぱり木下君だ。どしたの?変装なんかして。それに今確かCクラスとの試召戦争中じゃなかったっけ?まあいいか、入っていいよ。———代表、それに優子。木下君が来たんだけどー』
『……木下が?』
『ん?秀吉じゃないの。どうしたのアンタ』
〜秀吉説明&交渉中〜
- 153時間目 ( No.320 )
- 日時: 2016/03/11 22:00
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
あまりのんびりもしていられん。現段階のC・Fクラスの試召戦争で何が起こっているのかを掻い摘んで説明し、造の要求通り工藤と姉上に交渉を持ちかけるワシ。
『……雄二が、それに他の皆も大変……!?』
『こーたくんが……(鼻血の出し過ぎで)瀕死の状態!?』
『吉井君が今にも殺されかかっているだって!?』
『造くんたちが追い回されてるって……そう、そんなことが……やけに騒がしいと思ったら……』
ワシの掻い摘んだ説明でもすぐに理解する姉上たち。流石はAクラスじゃな、頭の回転が速くて助かるのう。……それにしても呼んではおらぬのに、何故か久保まで話を聞いておることをツッコむべきなのかは判断に迷うのう。ま、まあそれほど明久が心配なのじゃろう。あまり深くはツッコむまいて。
『それで……どうじゃ姉上に工藤よ。手を貸してはくれぬじゃろうか?』
『勿論!今すぐにでもボクらが———』
『———駄目よ秀吉、それに愛子。これだけは駄目、いくら可愛い弟たちの頼み事でも試召戦争関連で他クラスに手を貸すのは良くない事だもの』
と、普段から造たち関係で暴走しておるとは思えぬほど冷静に拒否する姉上。むぅ、やはり一筋縄ではいかぬか……
『優子!そう言わずに助けてあげようよ!今回は事情が事情だし……それにこーたくんたち本当にピンチなんだよ!?』
『……優子、私からもお願い。雄二たち助けてあげて。先生にはちゃんと説明するから』
『木下さん、僕からもお願いするよ。この試召戦争かなり特殊なケースのようだ。ただの内部抗争ならともかく吉井君たちの命に関わるレベルの暴走なんだろう?僕たちも黙っておくわけにはいかないと思うのだが』
工藤・霧島・久保の三人も手伝う様に頼むが、姉上は断固として断ると言った姿勢を崩さぬように首を横に振る。
『愛子に代表、それに久保君まで……あのね、気持ちはわかるわ。でもやっぱり駄目なものは駄目でしょう。そもそも今は一応自習時間とはいえ授業中なのよ?……アタシだってホントは造くんも秀吉も、それに他の皆も助けてあげたいのよ……悔しいけどわかってよ……』
『『『そんな……』』』
……悔しいが確かに姉上の言う通りじゃ。この作戦上、姉上には授業を抜け出して動いてもらわねばならなくなる。そうでなくともワシの制服を着てFFF団に捕まってもらわねばならぬとなると……うむ、確かに嫌じゃのう。
……仕方ない。出し惜しみは無しじゃ、ここは雄二たちに言われておった“切り札”を使う他無いようじゃな。
『……やはり、そうなるのじゃな。仕方ない……ならば“切り札”を使わせてもらうぞい。(ボソッ)姉上よ、お主ワシと“クラス交換”をした時の約束を覚えておるか?お主こう言っておったぞ———“代わりにもしアンタが今後何かしら困ったことがあれば出来る範囲で手助けしてあげるってば”との』(バカな自分は召喚獣?〜夏休み編〜番外編:アタシと見栄と弟たち〜クラス交換パニック〜前編参照)
『お……なるほどそう来たのね』
『それと工藤は……海でムッツリーニに助けられたことがあったじゃろう?』(バカな自分は召喚獣?〜夏休み編〜番外編:夏と海とお祭りと〜水着に浴衣の夏の想い出〜その④参照)
『んー?ああ、うん。そだねー』
この二人には以前ワシやムッツリーニに借りがあったからの。正直こういうことを使うなんぞ男らしくないのじゃが、今はそんなことも言っておれぬ。明久たちを救うため、造の言う通り必ず勝つため、今回ばかりは卑怯にも卑劣にもなろう。
『……こういうことを言うと卑怯と言われるかもしれぬが、緊急事態でなりふり構っておれぬ。二人ともその時の“借り”を返すと思って協力してほしいのじゃ。この提案を受け入れてくれるならワシらはAクラスと今後試召戦争を行う際、これをネタにAクラスを脅すような真似はせぬ。……どうじゃ?』
『乗った!ボクは断然OKだよ!うんうん、仕方ないよねー!借りは返さなきゃいけないよねー!ねえ優子!』
『…………はぁ、わかった。わかったわよ……直接Cクラスを試召戦争でどうこうするのは無し、あくまでアタシたちは土屋君とアンタのサポートをするだけ。これでいいわね』
その切り札を前に元々乗り気だった工藤は勿論の事、姉上も渋々協力してくれると宣言。ふぅ……助かったのう。これが済んだら改めて礼をするとしようかの。
『うむ、助かるぞい。……すまぬな工藤に姉上よ』
『いやいや、ボクこそこーたくんがピンチだって教えてくれて助かってるよ』
『ま、アタシも本音を言うとホッとしてるわ。これでアンタら造くんたちを助ける口実が出来たわけだからね』
『……木下、なんなら私も』
『僕も何か手伝わせてくれ木下君』
姉上たちに続いて雄二が心配であろう霧島と、明久(と造)が心配であろう久保も協力させてほしいと言って来る。うーむ……それ自体は嬉しい事なのじゃが……
『いや、気持ちはありがたいが霧島と久保は駄目じゃ。学年主席と次席が動いてはCクラスに勘付かれる恐れがあるから二人は駄目だと造や雄二に釘を刺されておってのう』
『……確かに、そうかも』
『そうか……すまない協力できなくて』
そう言うと残念そうに引き下がるこの二人。む、むう……こうもがっかりされるとこちらが申し訳なくなるのう……何かこの二人にも手伝えることがあれば———おお、そうじゃそうじゃ。
『……否、一つあるかの。二人にはCクラスがここに来ても何もなかったと演技してほしいのじゃ。例え色々聞かれても平静を装って何もなかったと言ってほしい。頼めるかの?』
『……わかった、そうする。木下……雄二をお願い』
『木下君、頼んだよ。吉井君たちを守ってくれ』
『うむ任せよ。すまぬの、本来なら関わりないお主らまでワシらのクラスのいざこざに巻き込んでしもうて……さて、姉上に工藤よ。それで作戦の詳しい内容説明に入りたいのじゃが———』
〜秀吉回想終了〜
- 153時間目 ( No.321 )
- 日時: 2016/03/11 22:00
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
「———と、まあそんな具合に最初の一時間は造や明久たちが表でお主らCクラスと戦っている間に、裏ではワシがAクラスで味方を得ることとC・Fクラスの状況分析をやることを造に頼まれたと言うわけじゃな」
「工藤さんは昼休みにこーさんの回復を。そして優姉さんはヒデさんと制服を入れ替えて影武者としてFクラスにワザと捕まってもらい、以後ヒデさんが校内を自由に動き回れる様にしてもらったんです」
「そう言う事が……!で、ですがそれでもたった二人味方に引き入れたくらいではどうにもならないハズでしょう!?そう、例えば……姫路さんをどうやって補充試験室から解放したと言うんですか!?」
確かに優姉さんたち二人を味方に引き入れたところで状況がそう好転するわけではありません。そもそも優姉さんたちを下手にCクラス戦に関わらせた場合ルール違反になってしまう恐れもあるでしょうし。
「もしかしてAクラスに補充試験室を監視していたFクラス連中を戦死させでもした?いいえ、それでは試召戦争のルール上、試召戦争にFクラスに手を出したとして木下姉たちが逆に補習室送りになります!どう考えても姫路さんを解放するなんてことできなかったはずでしょう!?一体先輩たちは何をしたと言うんですか!?」
「小山さんの疑問は尤もです。鍵をかけられ、バリケードまで作られた上にFクラスの監視までされている補充室。その中にいる姫路さん達を助けるにはFクラスの監視をどうにかしなければなりません」
「じゃが例えばお主の言う通り、姉上たちが実力行使に出た場合Cクラスとの試召戦争中なのにFクラスの戦力に手を出したと言うことでルールにより姉上が補習室送りになるじゃろうな」
「だったらどうやって姫路さんを屋上まで!?も、もしや未だにわからないことに一つの最初に先輩が使ったルートでも使ったという……」
「いや、それじゃないのう。なーに、ネタがわかれば単純じゃぞ小山。それはの———」
ですから……その交渉が終わった次の一時間からがヒデさんの“本当の戦い”の幕開けでした。
———新校舎屋上———
明久Side
Cクラスの主戦力を瑞希が足止めしてから数分後、このCクラスとの試召戦争の決着が付いたと先生が教えに来てくれた。緊張しながらもどうなったかを聞いた僕らの耳に届いたのは———
「Cクラス対Fクラスの試召戦争は……Cクラス代表小山さんの召喚獣の戦死により、Fクラスの勝利となりました」
———僕らFクラスの大逆転勝利と言う内容。めちゃくちゃ色々あっただけに、思わずこの場にいるいつものメンバー全員でガッツポーズをする。良かった、ホントに良かった……ナイスだよ造に秀吉!
「いよっしゃ!よくやった造に秀吉っ!無事決めてくれたようで何よりだぜ!」
「…………あの二人は今日のMVP」
「やったね瑞希!僕らの勝利だよ!」
「はいっ!明久君たちもお疲れ様でした!」
いやホント一時はどうなることかと思ったけど、何とか造たちが上手い事やってくれたようだ。ムッツリーニの言う通り、今日のMVPは造と秀吉だろう。後で2人には雄二のポケットマネーで美味しいものを奢ってあげなきゃね。
「……そんな、私たちの……まけ……?」
「……こんなことになるなら、戦死覚悟で姫路さんに突っ込むべきだった……補習室送りにビビって何やってんだよ俺は……」
「……代表すみません、守れなくて……折角あんなに頑張ってくれてたのに……」
勝ったクラスがあるなら、当然負けたクラスもある。その先生の決着の内容を聞きガックリと肩を落としその場に座り込んで呆けるCクラスの人たち。造や雄二たち曰くCクラスは今日の今日まで僕らと戦うために念入りに計画を練っていただろうとのこと。各々の動き方・僕らへの対応方法は勿論、色々最低な理由で暴走するFFF団と手を組むと言う屈辱を甘んじて受けた彼ら。それでもなお勝てなかったんだ……余計なお世話だとは思うけど、少しだけ同情してしまう。
「Cクラスは残念だったろうが……悪いが俺らも負けられないんでね。さて———これでCクラスとの同盟も意味をなさなくなっちまったようだが……どうするんだ?須川とそこの二人」
とは言え今はCクラスに気を取られている暇は無いか。雄二のその言葉と共に、僕もムッツリーニも瑞希も“彼女”もとある3人をじぃっと睨みつける。試召戦争は僕らの勝ちだけど、まだ僕らにはやるべきことが残っているからね。そうだよね……須川君横溝君福村君?さっきも言ったけど……覚悟はできているんだよね、君たちは。
『ぐっ……な、嘗めるな邪教徒共が!貴様らは未だこの逃げ場のない屋上にいることを忘れるんじゃねーぞ!』
『その通り、例えCクラスが倒されようと関係ない!俺たちは自由に動けるんだからな異端者共!』
『さあ行くぞFFF団!こんなふざけた坂本や吉井、ムッツリーニをブチのめし“Fクラスの変”を果たそう!』
形勢が段々と僕らに有利になってきたことに、流石に危機感を覚え始めたのだろう。大慌てで屋上の外で待機しているであろうFクラスの皆を呼ぶ須川君たち。まあそれもそうか。何せ同盟していたCクラスは造と秀吉の手によって倒され、ムッツリーニは須川君たちが知らない間に工藤さんのお陰で回復している。更にそのムッツリーニに僕と雄二に取り付けられた動きを制限していた手錠も開錠されているのだから。つい先ほどまでの余裕そうな表情から一変して少し怯えのも無理はない。ならさっきまでの仕返しって言うのも何だけど……更に怯えてもらうとしようかな。
『……ああ、そうだな。その通りだ』
『マジでふざけた奴らだよお前らは』
『全く死ぬほど頭にくる野郎共だぜ』
須川君たちのそんな言葉に同意しつつ、怒気の籠った声でFクラスの皆が扉の向こうでこう続ける。
『『『———異端者名……須川に横溝に福村ァ……!』』』
『『『…………え?』』』
須川君たちの期待とは裏腹に、屋上の扉の向こうで須川君たちに恨み節のFクラスの皆。Fクラスの思わぬ発言に、完全に固まってしまう須川君たち。よしよし、流石秀吉。“こっちも”どうやら上手くやってくれたようだね。
『な、何を言っているんだ同士諸君……?わ、我々の敵は坂本や吉井———』
『ザッケンナゴラァ!なーにが敵は坂本や吉井だよ須川ァ!』
『お、おいおいおい?急にどうしたんだお前たち……?』
『どうしただぁ?それはこっちの台詞だ横溝!テメェ最初から俺たちを騙しやがって……この裏切り者共!』
『落ち着きたまえ!何があったのか知らんがこの異端者共を抹殺するチャンスなんだぞ!』
『異端者はお前らだろが福村!散々造ちゃん追い回して虐めやがったことや姫路さんや島田を監禁したこと、あと一応坂本たちをどつき回したこと……この行いは神が許しても俺らが許さんっ!』
おいちょい待ち。造を追い回したのも瑞希たちを監禁したのも、僕らをどつき回したのも君ら大半がやったんだけど———というツッコミはここでは敢えてしないことにする。気が立っている彼らを下手に刺激しない方が良さげだし、こういうことは割と今更感があるからね。
「よし、お前たちここはもういい。とりあえず鉄人たちにキレられる前に一階のバリケードを取っ払え。それとすぐに監禁していた木下姉も解放するんだ。ちゃんと謝っておくんだぞ」
『おうよ!任せておきな坂本!』
「後は教室で待機しておけ、戻り次第時間が許す限り補充試験を行う予定だ。少しでも点を取れるように復習でもしておけ。いいな?」
『了解だ、じゃあまた後でな。———よし、お前たち急いで戻るぞ!』
『『『応っ!!!』』』
今までと比べると明らかに様子が違うFFF団。彼らを率いていた須川君たちに呪詛を吐きながら、あろうことかさっきまで殺そうと追い立てていた雄二の指示を的確に聞き従う。いやぁ本当に秀吉はよくやってくれたよね。そして扉越しにFFF団が階段を降りてそれぞれ教室に戻ったり一階に行ったり木下さんを解放しに行った音を聞きながら僕らは思う。———本当にFFF団は単純だな、と。
『『『ど、どういうことだこれは……!?』』』
- 154時間目 ( No.322 )
- 日時: 2016/03/11 22:02
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
———旧校舎一階空き教室———
造Side
「だったらどうやって姫路さんを屋上まで!?も、もしや未だにわからないことに一つの最初に先輩が使ったルートでも使ったという……」
「いや、それじゃないのう。なーに、ネタがわかれば単純じゃぞ小山。それはの———」
姫路さんが補充試験室からどうやって脱出したのかわからない小山さん。自分とヒデさんに涙交じりに説明を求めてきました。うーむ、これはそう難しく考えなくてもいいのですがね。小山さんの問いにヒデさんがさらりと答えてくれます。
「———それは、主犯格である須川・横溝・福村の三人。及び言葉の通じなくなった狂戦士達(バーサーカーズ)以外のFクラス生徒を……“交渉”して“ワシらの仲間に引き入れた”ただそれだけのことじゃ」
「……なん、ですって……!?」
そう、何も難しい事ではなく考えてみればとても簡単。密室な上唯一の扉の前にはバリケード付きで監視している人がいる時どうやって外に出るべきか。別に推理物のようなトリックなんて必要ありません。“監視役を味方に引き入れれば、顔パスで通してくれる”のですから。
「ですからCクラス、及び須川君たちが自分とアキさんゆーさんに気を取られている間に……ヒデさんがFクラスの大半を説得して味方にしてくれた、ただそれだけの事です」
「は、はぁ!?そ、そんな説明では納得できるわけないでしょう!?どう考えてもあれほどまでに暴走していたFクラスを木下君一人で御することなんか出来っこないわ!一体どんなカラクリが……!?」
「うむ、ここからが造がワシに授けた真の策の本領発揮なのじゃ。ワシとボイスレコーダー一つさえあれば、それだけであやつらを制御できるのじゃ」
「木下君と……ボイスレコーダー……?」
「まずはこれを聞いてみるとよい、小山よ」
そう言ってヒデさんは持っていたボイスレコーダーを再生させます。その中から聞こえてきたのは———
ピッ!
〜以下ボイスレコーダーの会話〜
『須川クン今日もかっこいいわー♪こんなにカッコイイ人と付き合えるなんてあたしって幸せものねっ!』←女子Aの声
『HAHAHA!いやぁ……モテる男は辛いなぁ!俺も君みたいな綺麗な子と付き合えるなんて超幸せだよ』←須川の声
『それにしても良いのですか?私たちと付き合っているって見つかったら……怖いクラスメイトさんがいるって言ってませんでしたか?横溝さん』←女子Bの声
『いいのいいの!バレやしないって!俺らのクラスにさぁ、ちょうどいい隠れ蓑的な奴らがいてねぇ』←横溝の声
『そうそう!そいつらにクラスの怒りの矛先向けてりゃ、俺らが君たちみたいなカワイイ女の子と付き合ってるなんてだーれも気づかないんだよ。連中バカばっかりだからねー』←福村の声
『やーん、悪い人だー♪福村くん素敵ー♪』←女子Cの声
ピッ!
———聞こえてきたのは須川くん・横溝くん・福村くんの三人の声と知らない女子三人の声がするそんな会話。
「……何ですかこれ」
「聞いての通り、須川たちのような声がする会話じゃな」
「……まさかこれを?」
「はいです。この会話をFクラスの皆さんに聞いてもらいました。そしたら皆さんあっという間に自分たちに協力してくれましたよ」
まあ、そもそもの発端がクラスメイトたちの嫉妬が原因でしたからね。こんな会話を聞かされて、おまけに交渉したのはヒデさんです。Fクラスの皆さんを味方に取り入れる交渉が上手くいかないハズがありません。と、そんな中このボイスレコーダーの会話を聞いた小山さんはワナワナと肩を震わせて、まるで怒鳴るように声を荒げてしまいます。
「なんっ……何なんですかこれはっ!?」
「いや、じゃから聞いての通り———」
「そっちじゃなくて、こんなっ!こんな先輩たちに都合の良いこんな会話を……短時間で用意できるわけ、無いじゃないですか!?どうやって……どうなっていると言うのですか!?」
まあ、確かにそうでしょうね。こんな会話、予め用意でもしていなければ手に入れることは出来ないでしょう。いいえ、それ以前にこんなピンポイントに今回の首謀者たち三人のこのような際どい会話を手に入れることなど実質不可能でしょうから。
「そりゃそうじゃな。お主の言う通り、こんな都合の良い会話をすぐに用意できるわけなかろうて」
「ですね。実際こんな会話……“この世に存在するわけない”ものですからねー」
「ワシが“作った”ものじゃしな」
「この世に存在するわけがない会話……?作った……?…………んなっ!?ま、まさか!?」
そのキーワードにハッとする小山さん。彼女も気が付いたようですね。
「そのまさかじゃよ小山。“一人六役”のワシの“声帯模写”じゃ。なーに、このくらい朝飯前じゃぞ。ボイスレコーダー越しじゃと若干声色が違っても違和感はないしの。ああ、ちなみにこのボイスレコーダーは工藤から借りたものじゃよ」
「あとはこの会話をFクラスの皆さんに聞かせて、ヒデさんが“木下優子”として交渉するだけでした」
〜秀吉回想中〜
『———ふぅ。これであと20人くらいじゃろうか』
リストにチェックを入れつつ嘆息するワシ。わかっておるつもりじゃったが、やはりこれは中々に骨の折れる役割じゃのう。精神的にも技術的にもかなりしんどいものじゃ。失敗すればこの試召戦争に負けかねんから普段の稽古や本番以上に気を張りつつやり遂げねばならぬしの。
『次は……この三人は最後にするとして、後は例の手におえん連中と今表に出ておる連中も後回し。ならば残りの人数やメンツを考えると……そろそろ一階のあやつらを何とかせねばならぬか』
まあ、泣き言を言っておる暇はないがの。造や明久、雄二にムッツリーニ。それに姫路や島田たちも恐らく頑張っておるじゃろうし。そう自身に言い聞かせ、再び作戦の為に動き出そうとした矢先———
『———この辺か?木下を見たと言う報告があったのは』
『見つけたら……い、イロイロ好きにしていいんだよな!?』
『ぐふふ……秀吉ィ、今行くからねぇ……待っててねぇ……』
『……っ!』
———すぐ近くの曲がり角から、そんなワシを探しておるようなFクラスの連中の声が聞こえてきおった……もう来よったのか、全く油断も隙も無いのう。さて気合いを入れて“姉上”を演じなければの。
『『『さぁ!大人しく捕まるんだ秀……よ……し……?』』』
『……何よアンタら。アタシに何か用かしら?』
『あ、あれ……?女子の制服に……この言葉遣い……そして“アタシ”……?』
『も、もしかして……秀吉のお姉さんの方の木下優子さん……?』
『す、すんません……間違えました。も、戻るぞお前ら』
曲がり角から飛び出してくるFクラスのこやつらをそのように騙すワシ。よし、双子なだけあって制服を交換しただけでこやつらもワシを姉上と認識してくれたようじゃな。
『ちょっと待ちなさい。アンタら確かFクラスよね?』
『『『へ?あ、はい』』』
“ワシを姉上だと勘違いをしてしまったと思い込んだ”気まずそうにワシの前からそそくさと退散しようとするこやつらを止めるワシ。ちょうどいい、こやつらも交渉しておくとしようかの。
『秀吉から話は聞いたわ、何でもアンタら試召戦争中なのに暴動を起こして造くんたちを追い回しているそうじゃないの』
『うっ……そ、それに関しては仕方のない事なんですよ!』
『す、須川会長の偉大なる革命“Fクラスの変”の為、造ちゃんや秀吉には捕まってもらわねばならないのです』
『悪いとは思っていますが……ちゃんと坂本や吉井たちを始末したら解放するのでここはどうか見逃して頂きたく……!』
『知らないわよそんなこと。それよりアンタたちに会ったらこれを聞かせてほしいってうちの秀吉から言伝されているんだけどいいかしら』
『『『秀吉から……?』』』
『これよ。何でもこの試召戦争を左右しかねない重大な事実が録音されているとか言ってたわ。とりあえず再生するわね』
〜例のボイスレコーダー再生中〜
- 154時間目 ( No.323 )
- 日時: 2016/03/11 22:03
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
『———だそうよ』
『お、おのれ須川ァ……』
『横溝……俺らを裏切ってやがったのか……!?』
『福村のヤロウ……こうなりゃ吉井たちと一緒に奴らも血祭に———』
『ハァ……何というか……アンタら情けないわね』
『『『は!?』』』
これでいい感じで怒りは須川たちの方向にも向いてきたのう。さて、ならばもうひと押ししてやるとするかの。
『さっきも言ったけど、アンタら試召戦争そっちのけで造くんや秀吉、それに代表である坂本君たちを追い回しているのよね?』
『そうですが……それが何故我々が情けないという話に……?』
『情けないにも程あるわよ。アンタらは一学期あと一歩のところまでアタシ達Aクラスを追い詰めたのよ?そんなアンタらだからアタシたちは高く評価していたのに……』
『『『……』』』
『勝てる見込みのあるアタシ達Aクラス戦を目前に、些細な嫉妬で暴走してそのチャンスを棒に振るの?正直……かっこ悪いわよアンタたち。ああそうか———だからアンタたちは“モテない”のね』
『『『…………ぐふっ』』』
モテないと言う単語がこやつらの胸を刺す。この騒動、色々と理由はあろうが突き詰めればこやつらがモテず明久や雄二やムッツリーニたちがモテると言う事実に原因があるからの。だからこそそこさえ取っ払いさえすればきっと何とかなるはずじゃ。現に———
『あーあ、Fクラスならアタシ達といい勝負できると期待してたのにガッカリよ。まあこんな“モテない”クラスメイトたち抱えているなら坂本君たちも勝てるわけないか。とは言えそんな“モテない”アンタ達でも、そう例えばアンタたち最低クラスのFクラスがアタシ達最高クラスのAクラスに勝つなんてことがあれば———“モテまくる”でしょうにね』
『『『…………っ!?』』』
———うむ、やはりこやつらこういう話題に喰らい付いてきたの。
『そ、その……木下さん。それはつまり……お、俺たちでも……Aクラスに勝てれば……モテる、と?』
『さあね。でも考えてみなさい。アンタたちが今必死で追い回している吉井君に坂本君、土屋君の事を』
『吉井に坂本に土屋を……?』
『吉井君は造くんと一緒に一学期清涼祭の召喚大会で優勝しているでしょ。それに坂本君も同じように夏課外の時のオカルト召喚獣の肝試しで優勝したわね。土屋君だって一学期のアタシ達との試召戦争でFクラスなのにAクラスの愛子に勝っているわ。その三人はその栄誉がモテるきっかけになったんじゃないの?』
『『『…………た、確かに!?あんなバカ共でも勝てれば……モテている……!』』』
……まあ、姫路と島田、霧島や工藤は勝てたからあやつらを好きになったと言うわけではないのじゃがの。そこは言わぬようにしておくか。
『アンタらだって、本来戦うはずだったAクラス戦で活躍出来れば目立ってモテることになったでしょうにね。ああ情けない情けない』
『『『…………』』』
さあここまでやったのじゃ。少しばかり言い過ぎたやもしれぬが……これで、どうじゃ?
『———坂本達に手を貸そう!』
『このCクラス、そしてAクラスを倒してモテモテになるのだ!』
『さぁ、今すぐ須川たちを血祭りにあげて俺らも目立とうぜ!』
……作戦成功じゃな。こやつらが単純で何よりじゃ。
『そう、好きにすることね。ああ、もしアンタ達が協力してくれるならワシの言う通りに動いてほしいと秀吉から頼まれているけど、一応聞いておく?』
『『『是非ともお願いしますっ!』』』
〜秀吉回想終了〜
「———と、こんな感じでFクラスを交渉……いや懐柔をしたと言うわけじゃよ。良くも悪くも単純で影響されやすいあやつららしいじゃろ。ちなみにここでも姉上と入れ替わっている利点が出てきておるのじゃ。騒動の真っただ中におるFクラスのワシがこのように懐柔するよりも、他所のクラスであるAクラスの女子“木下優子”がこのように懐柔した方があやつらも懐柔しやすいと思わぬか?」
「女の子に“こうすればモテるんじゃないの”と言われれば、即実践するのが自分たちFクラスのクラスメイトさん達ですからね。ああ、あと一応このボイスレコーダーの会話は皆さんを落ち着かせるための嘘だったと報告はしておきますので、今度は須川君たちが追いかけられるってことは無いようにしておく予定です」
「…………」
ヒデさんのその話に、口をパクパクと開きまるで“Fクラスはこんな手に引っ掛かったの……?”とでも言いたげな小山さん。ま、まあ元々女の子にモテたいが為に暴走しちゃうクラスですからねー……
「ちなみに小山よ、一体何のために面倒で割に合わぬとも造がFクラスに戦死者が出ぬように必死で戦っておったと思う?」
「そ、それはAクラス戦を前に戦力を余計に減らすわけにはいかないからでしょ……?」
「それも勿論ある。じゃがな、それだけではないのじゃ。戦死すれば補習室送りとなり、鉄人による地獄の補習を受けねばならぬことになるのはわかるかの?」
「……え、ええ」
「もし仮に暴走していた状態で補習室行きになれば、更にアキさんとゆーさんとこーさんへの不満が募ってしまいますでしょう?“よくも俺たちをこんな補習室に詰め込みやがって”ってな感じでね。次の戦争に尾を引かないようにするためにも、少なくともヒデさんがFクラスの皆さんを説得するまでは絶対に戦死者を出すわけにはいかなかったんです」
「……だから、先輩は裏切ったはずのFクラスの連中を倒さなかった……」
「その通り。今回の作戦の最重要事項はFクラスの持ち直しですからね」
だからCクラスの皆さんとギリギリの接戦の中でFクラスの皆さんを盾にされても戦死者を出さずに戦ったわけですからね。
「そ、それにしたって姫路さんは一体いつの間に補充試験室から脱出したんですか!?我々Cクラスの監視の目もある中で、彼女が出る暇なんてどこにも無かったはずです!」
「そのための休戦協定ですよ小山さん。……用心深く念入りに、そして先を見越して作戦を立てていた貴女のことです。きっと次に繋がるようにと、休戦終了までの一時間を補充試験に当ててくると思っていました」
「じゃがの、それこそが雄二の罠だったのじゃよ。Cクラスの全員で補充試験をするために、お主は姫路と島田のおる補充試験室の監視をFクラスの任せてしまったじゃろ」
「……その時には……補充試験室の監視役であるFクラスの生徒の説得を、すでに終えていた……!?」
「はいです。Cクラスの皆さんが補充に入った瞬間、こっそりとバリケードを解き鍵を開け姫路さん達を解放していました」
「その後バレぬようバリケードを戻し、姫路たちをワシが他の生徒として“変装”させてお主らCクラスの油断を誘ったと言うわけじゃ」
あとは現状の通りです。ヒデさんの手で“変装”した姫路さん達はゆーさんとアキさん達を守りつつCクラスの皆さんの動きを封じるために一足先に屋上で待機。そしてヒデさんは“優姉さん”として現れて小山さんたちの意表を突き自分と一緒に彼女を追い詰めます。
「これで説明はすべて終えましたね。そうそう小山さん……確か須川くんたち曰く今回のこの暴動って本能寺の変に見立てて“Fクラスの変”と呼ばれていましたよね。それになぞると大方織田信長がゆーさん、明智光秀が須川くんたちってことになるのでしょうね」
「そ、それが……何か……?」
「だったら面白いと思いませんか?だってその“本能寺の変に見立てた明智光秀役の須川くんたちの企てたFクラスの変”を“織田信長役であるゆーさんの臣下である秀吉と言う名の生徒”が打ち破ったんですもの」
「……」
「本能寺の変———もといFクラスの変ここに破れたり、じゃな」
この自分の作戦はヒデさんを捕えたと勘違いしてしまったC・Fクラスの皆さんの死角を突く一手。そう、何度も言いますが今回の作戦、自分やアキさんゆーさんはただの“陽動”。作戦の要は間違いなくヒデさんでした。持ち前の演技力は勿論の事、一人六役の声帯模写に自身だけではなく他人をも化けさせるメイクによる変装技術。更には巧みにFクラスの皆さんを味方に取り入れたその話術———ヒデさんの持つ一見すると試召戦争では意味をなさないと思われたヒデさんの長所が逆転の一手となったのです。
「ねぇ小山さん。貴女ひょっとして……自分やゆーさんたちにばかり気を取られてヒデさん対策を怠ったんじゃないですか?」
「……っ!?」
『———ところで代表。木下と、同じく未だに姿を確認できていない土屋はどうしますか?』
『……そうね。土屋君の方は行動不能になっているってFクラスの連中が言ってたし、木下君自体はそう戦力にはならないわ。一応見かけたら余裕があれば余計な事させないためにも戦死させるつもりでいてね。と言っても基本的にはFクラスの連中に任せて大丈夫でしょう』
どうやら図星のようですね。何か思い当たることがあるようで、あからさまにしまったと言う表情の小山さん。やれやれ駄目ですよ、試召戦争では誰もが脅威に成り得ると言うのに慢心しちゃいましたか?
「———ヒデさんは自分たちの立派な主戦力です。ヒデさんがこの学園で必死に磨いてきたものを……嘗めないでくださいね」
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