二次創作小説(紙ほか)
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- 薄桜鬼×緋色の欠片
- 日時: 2012/09/26 13:48
- 名前: さくら (ID: cPNADBfY)
はい。
初めましてな方もそいうでない方もこんにちは。
またさくらが何か始めたで。と思っている方もいると思いますが
薄桜鬼、緋色の欠片好きの方には読んで頂きたいです
二つの有名な乙女ゲームですね
遊び感覚で書いていくので「なんやねん、これ」な心構えで読んでもらえると嬉しいです←ここ重要
二つの時代がコラボする感じです
あたたかい目で見守ってやって下さい
それではのんびり屋のさくらがお送りします^^
- Re: 薄桜鬼×緋色の欠片 ( No.170 )
- 日時: 2013/09/16 23:25
- 名前: さくら (ID: X1kgwzZ6)
「ふふっ…本当に新撰組は甘いよね。いや、それは守護者も同じかな?」
京都の町中を颯爽と歩く青年はひとつに束ねた長髪を揺らしながら笑う。その呟きは誰に聞かれることもなく、青年はある場所へと向かっていた。
その足取りは軽く、そして愉しそうに。
「やっと君に会えるね。玉依姫…屯所内では守護者がぴったりだけど…外じゃそうもいかないからね」
青年の言葉はどこまでも冷たく響いた。
日が傾き、影が伸び始める。空は青から緋色へと色を変えようとしていた。
「ちょっと拓磨。早くしないと置いていくよ?」
「あ、今行く!」
沖田の呼び声に返事をした拓磨は聞き込みをしていた刀売りの男に一礼して隊列に戻る。
「どう?その鬼斬丸とかは見つかりそうなの?」
「…これだけ聞き込みをしても情報が全然…」
「本当にこの京にあるの?」
沖田の問いに答えることができない拓磨はその可能性も考え始めた。
町を見渡せば物陰や薄暗いところに妖がたむろしている。視界に入ってくるほどのかなりの数だ。だが、それだけのことだ。京という土地は少し妖の数が多いだけで、それは鬼斬丸のせいではないかもしれない。鬼斬丸が必ずこの地にあるとは断言できないのだ。
「はぁ…ここにはないのか…いや、でも封印を破ろうとしている奴がいるんだから誰かが鬼斬丸を持っているはずで…」
ぶつぶつと呟きながら思案していると、突然店の前にいた少女が近づいてきた。
「拓磨君!良かった!報告が遅くなってごめんね。あなたに朗報よ!」
その少女に拓磨は一瞬記憶を手繰ってそしてすぐに思い出した。この凛とした顔立ちは忘れない。拓磨は手を打って声を上げた。
「あ、あんた!」
「ようやく会えたわ!ごめんね、調べるのに少し時間がかかっちゃって」
「誰?この子」
拓磨の後ろにいた沖田は少女を怪訝そうに見つめる。沖田のその反応に拓磨は慌てて紹介しようとした。だが拓磨より早くその少女は頭を垂れる。
「初めまして。お千といいます。拓磨君とは買い物のときに知り合って…千鶴ちゃんともお友達なんです」
にこやかに微笑むお千に沖田は黙った。千鶴の名前が出てくると思わなかったのだろう。真偽は定かではないが、千鶴の友達というなら無粋な真似はできない。
沖田は黙って拓磨と彼女の会話を聞くことにした。
「それで。わかったのか」
「えぇ。でもそれはおいおい話しましょう。これから私新撰組の屯所に行くところだったの。ね、沖田さん。もう巡察は終わりましたか?」
まだ名乗ってすらいないのに名前を呼ばれて沖田は目を瞬いた。
「有名人ですもの。新撰組一番隊沖田総司さん。これから屯所にお邪魔してもいいですか?巡察が終わったなら私も一緒について行って、拓磨君に道すがら教えたいことがあるんです」
「別にいいけど…屯所に用って?」
「ある筋から情報が流れてきたんです。これは新撰組全体の問題になるんじゃないかしら」
お千の言葉に沖田は一瞬顔を曇らせたが、すぐに余裕をたたえた笑みを浮かべた。
「いいよ。どんな話が聞けるか愉しみだね」
そう言うと沖田は隊士を集合させ、帰路につく旨を知らせる。
隊列の後ろを歩く拓磨は隣を歩くお千に重ねて問うた。
「それで、鬼斬丸は…」
「順を追って話すわ。まず、あなたたちがいた…未来で住んでいる季封村。その村を調べるのに時間がかかっちゃって…地図にすらその村は載っていないし、人に尋ねてもわかららないし。相当その鬼斬丸を世に出したくないって執念が伝わってきたわ」
お千は一度周りを見渡してから声を潜めた。
「それであなた達が探している鬼斬丸の行方なんだけど…」
「季封村にあったのか?」
拓磨の問いにお千は首を横に振った。その反応を見て拓磨はやはりと顔を顰める。
「なかったわ…鬼斬丸はあなた達の読みどおり…この京にあったの」
「やっぱり…!」
拓磨が巡察に出る度にその情報を集めていたが、なかなか見つからなかった。だが、これで確信が持てる。やはりこの妖の数は鬼斬丸の影響だったのだ。
「それで、誰がその鬼斬丸を持っているんだ」
拓磨が一番気になっていたことをお千に問う。だが更にお千の顔に影が差した。
「…ごめんなさい。まだそこまで調べられていないの…というか、邪魔されて…」
「邪魔?誰がそんなこと…」
「あなた、典薬寮って知ってる?」
お千の言葉に拓磨は眉を顰めた。その反応にお千は確信を持ったらしい。苦虫を噛み潰したような笑みを浮かべる。
「そもそも季封村について調べるのもその典薬寮のせいで上手くいかなくて…鬼斬丸が誰の手に渡ったのかもその組織に邪魔されたのよね…もう少し粘ってみるけど」
「悪い。そこまでしてもらって…」
「いいのよ。私がやりたくてやってるんだから。でもその典薬寮って何者?」
お千の言葉に拓磨は頭を掻いた。関係を説明するのは簡単だが、それだけではない。
奴らには別の企みがあり、それを善しとできないから表上は同盟を結んでいても、対立してしまうのだ。
「鬼斬丸の監視役…とか言ってるが、実際は俺達玉依姫と守護者の目を盗んで鬼斬丸を利用しようと考えてる奴らだ…この時代はどうかわからねぇが…」
「そう…つまりあなた達とは敵対してるってこと?」
「多分な。やっぱり…典薬寮が絡んでくるのか…」
「やっぱり?」
疲れたように溜息をつく拓磨にお千は小首を傾げた。
拓磨はお千にあの夜のことを話した。推測の域を出ないがおそらく新撰組から珠紀達を孤立させるために羅刹を利用した。そのせいで新撰組と珠紀達の間には未だ微妙な距離ができている。
「典薬寮にも多分鬼斬丸を狙っている奴らがいるんだろう。だから俺達の邪魔ばかりするのかもな」
「でも変だわ。あなた達を狙う理由は?あなた達が狙いなら直接手を下せばいいのに…まるで観察しているようね」
「俺にもまだそこまでは…奴らも鬼斬丸が盗まれたことは知っているはずだし…もしかして鬼斬丸を盗んだのは奴らか?いや、それだったら邪魔になる俺たちをとっくに始末するだし…俺たちを泳がせているその理由は何だ…」
拓磨は隊列からはぐれない歩調で歩く。お千も同じようにその問いを考えた。
「私がその典薬寮の人間だったら…まず先に玉依姫を狙うかしら」
「どういうことだ?」
お千の言葉の意味を理解できずに拓磨は視線を向けた。
「私がもし、もし鬼斬丸を欲しているなら、まず玉依姫を狙うわ。だって玉依姫しか封印はできないんでしょう?守護者は玉依姫の力がないとその真価を発揮できないって聞いたし…なら一番脅威である玉依姫を狙うんじゃないかしら?」
お千はちょっと頭に浮かんだことを口にした。敵の立場であればそう考えるのではないだろうか。だが、お千は目を瞬いた。横を歩く拓磨の顔が固まっていたからだ。
「どうしたの?拓磨君」
「…そうだ。俺達は見落としていた…」
もしも典薬寮の立場であれば真っ先に玉依姫を狙うはずだ。現世のときも芦屋は珠紀に利用価値を見出し、何度も利用しようと近づいて来た。
もしこの時代の典薬寮が鬼斬丸を欲しているのであればこの時代との玉依姫と珠紀が一番邪魔な存在だろう。
あの夜のせいでその可能性まで考えられなかった。何せ守護者である自分たちまで巻き込まれたのだ。典薬寮の狙いは守護者か玉依姫か検討ができなかった。
だが、冷静になればその可能性も十分にありえる。奴らが新撰組に潜入しているのは珠紀を狙うため。奴らは自分達の行動を把握している。
「っ…!!」
そう思うと拓磨は踵を返した。まずい。もしかすると———
「ど、どうしたの!?どこに行くのよっ」
進行方向を変えて走り出そうとする拓磨の腕をお千が掴む。拓磨は焦燥に駆られながら、早口に言った。
「奴らは新撰組内に隠れている…だったら今日、俺と珠紀が巡察に出ていることは知ってるはずだ。守護者が近くにいないことを奴らは知っているんだ!」
「っ…!それって…」
「ちょっと、何騒いでるのさ」
二人の騒ぎに気付いた沖田は先頭から下がってくると拓磨に注意を促す。
「いつも単独行動はするなって言ってるよね?一体何だっていうのさ」
「珠紀が危ないんだ!」
「はぁ?珠紀ちゃんが?何言ってるの。珠紀ちゃんには左之さんがついてるんだから———」
「総司———っ!!」
通りの向こうからその原田の声に三人は振り返った。他の隊士の姿はなく、原田一人だけ駆け寄ってくることに違和感を覚える。
原田は肩で息をしながら、三人の元まで走ってくると早口に尋ねた。
「珠紀っ…珠紀、知らねぇか」
「珠紀ちゃんがどうしかしたの?」
「巡察中にあいつの姿が見えなくなって…はっはっ…近くを探しても見当たらなくて…もしかしてお前等の隊にいるかと思ったんだが…」
「ちょっと、拓磨君!?」
原田の言葉を最後まで聞かず、拓磨は今度こそ踵を返して走り出した。
組長二人とお千の制止の言葉を振り切って、拓磨は全速力で走る。
「珠紀…っ!!」
- Re: 薄桜鬼×緋色の欠片 ( No.171 )
- 日時: 2013/09/18 21:04
- 名前: さくら (ID: X1kgwzZ6)
冴鬼のあとをついて歩いていると見覚えのある場所にでた。いつも巡察で通る大通りだ。
珠紀は前を歩く冴鬼に声をかける。
「ねぇ。あなた鬼崎家の分家なんでしょう?っていうことはあなたも鬼なの?」
「はい…正確には我々分家の者は覚醒はありません。ただ人より力があるくらいで、とても拓魅様のようにはなれません」
「その拓魅様って…この時代の鬼の…?」
「はい。自分は拓魅様の補助として働いています」
淡々とした物言いだが丁寧に答えてくれるところを見ると、優しい心の根の持ち主であることがわかる。珠紀は鬼崎家の分家であると知るとすっかり冴鬼に心を許してしまった。
大通りを歩く者からすれば珠紀が一人で喋っているように見えるだろう。何せ冴鬼は自分の身を御形している。だが喧騒と雑踏で珠紀の不思議な行動は目立たなかった。
ある辻を曲がると大通りの喧騒が静かになる。しばらく歩くと川原に出た。日が傾き、すっかり空は赤く染まっている。
川を沿うように歩いていた冴鬼は突然足を止めた。
「どうしたの?」
珠紀に歩調を合わせてゆっくりと歩いていた冴鬼は回りを見渡した。そして何かに気が付いたのか、振り返らずに珠紀に言った。
「姫、そのまま後ろへ逃げて下さい」
「え?」
何故か庇うように前を見据える冴鬼に、珠紀は小首を傾げた。一体何だというのか。
珠紀はその冴鬼の行動の意味をすぐに理解した。
周囲に人の気配がない。そして、驚くほど静かだ。川のほとりを歩いているのだからせせらぎが聞こえて当然のはずが、その音さえ聞こえない。
不安になって冴鬼に尋ねようとすると、夕日を背に前方から一人誰かが近づいてきた。
「やぁ。冴鬼」
ゆったりとした足取りで肩にかけた羽織をはためかせながら、その人物は近づいてくる。声は若い。おそらく珠紀と同年代。そして男であることがわかった。
前に立つ冴鬼でその姿は見えないが、珠紀は戦慄した。
「君に用はない。用があるのはその後ろにおわす…玉依姫だ」
「っ…!?」
珠紀はこのとき何故か理解した。近づいてくる男は、典薬寮の者だと。
この異様な空気は彼が作り出したのだ。彼の結界に入ってしまったに違いない。
珠紀は逸る鼓動を抑えて冴鬼の背中を見つめた。
「やっと会えましたね、玉依姫。いや…僕等はずっと前にもう会っていた。新撰組の屯所でね?」
「やっぱり…!」
予想していたとおり、典薬寮は新撰組に潜入していた。それを聞いた珠紀はぎゅっと拳を握って声を上げた。
「じゃぁ、あの夜…!羅刹を倉から出したのは、貴方なんですね?」
珠紀は冴鬼の影から身を出し、前方にいる男に問いただした。やはり夕日の逆光で男の顔は見えない。だが、わかる。男は口端を上げて嗤ったのだと。
それを是と受け取った珠紀は怒りが腹の底から這い上がってきた。
「許せないっ…!どうして、どうしてそんな…!!」
「姫、おさがり下さい」
冴鬼の腕に庇われ、身を乗り出す珠紀を制する。だが、珠紀は構わずに声を荒げた。
「貴方のせいで、拓磨は大怪我を負って…!皆、皆傷ついたんだから!一体、何が目的なの!?」
「ふふっ…怒ったお顔も璞玉ちゃんにそっくりですね。お美しい…」
「こっちは真剣に話しているの!!」
珠紀がどれだけ声を上げようと男は悠然と立っていた。加えて嗤っているような気がしてそれが余計に珠紀の神経を逆撫でする。
「僕は何もやっていませんよ?ただ少し手を加えただけで、勝手に綻んでいったのは貴方達だ。不和は貴方達が生み出した。それは俺のせいじゃありません」
「何、言って…!!」
男の言葉の意味が理解できなかった。何を言っているんだ。あの夜の張本人にしては責任感など微塵も感じられない。それどころか珠紀が激昂するたびに悦んでいるようにすら見える。
「いけないのは貴方です、姫。璞玉ちゃんとこそこそ何をしているのかは知りませんが、こちらの時代に来るなど反則です。僕等はそれを許していない。典薬寮はお怒りなんですよ」
「姫、耳を貸してはいけません」
あっけらかんとした物言いに珠紀は怒りを感じていた。あの夜を境に珠紀たちの環境は変わってしまった。その原因である男が目の前にいる。珠紀はすっと息を吸った。
「おーちゃん!!」
珠紀の足元の影から青い閃光が走る。その光は男目掛けて一直線に閃いた。
だが、男に触れる直前に見えない結界に弾き返された。ばりばりと火花を散らせてオサキ狐は地面に倒れた。
「おーちゃん!!!」
「気の早いお姫様ですね。そこは璞玉ちゃんとは少し違う。オサキ狐など、このような小物をお傍においているんですか」
男はぴくりとも動かないオサキ狐を足で踏もうとした。
「やめて!!!」
「戯れはそこまでにしろ」
冴鬼が一度地を蹴ったと思うと、男との距離を詰めた。そして同時に背負っていた長刀を抜き放つ。二人の視線が交差する。
「おーちゃん!!」
珠紀が声をかけるとよたよたと立ち上がり、オサキ狐は珠紀の影に戻った。
この男の底知れない力に珠紀は歯噛みした。この巨大な結界も、オサキ狐を弾き返した結界も。どれも見たことがない。芦屋が遣っていたものと似て非なるものだ。否、芦屋よりももっと専門的な知識を持っているようだった。
「お前も哀れだな、冴鬼」
男は長刀を向けられながらも余裕があるのか語りだした。
「本家と違って分家は半端者呼ばわりされて…お前はそれでもいいのか?血に縛られるなんて馬鹿馬鹿しい。この役目から解放されたいとは思わないか?」
「黙れ。俺は一生拓魅様に仕えると誓った。それは覆ることはない」
「相変わらず頭が固いな。よく考えろよ。お前には力がある。その力を自分のために使ってみろ。人生楽しいだろうさ」
「黙れと言っている」
冴鬼の長刀が男の首に添えられる。珠紀は少し離れたところでそれを見守っていた。自分に手出しができる相手ではない。
「俺とお前は一緒だ。半端者、除け者にされて育ってきた。一族に不満はないか?拓魅に不満はないのか?こんな面倒な役目、今すぐ放って自分のために生きてみろよ。誰かのためだなんて考えなくていい」
珠紀は思った。この男は人の暗い心の部分を土足で上がり、踏み荒らしてその弱い部分を突いて来る。きっとあの夜も知っていたのだ。珠紀達が素性を新撰組に話さない理由を。
そしてそれを上手く利用された。
策士にして頭がきれる。この男はあの芦屋よりも面倒かもしれない。
「自分のために生きるっていうのはどれだけ楽なんだろうな。な、お前が拓魅を裏切るんだったらこれからは俺がお前の面倒を見よう。苦労はさないよ。血がどうとかそんな柵も何もないところへ連れて行ってあげる」
「御免被る」
冴鬼ははっきりとした口調で言い放つと、長刀を横に薙ぎ払った。
だがその行動を呼んでいたのか、男はふわりと跳躍してそれをかわす。
「残念だなぁ。じゃぁその話はまた今度。言っただろ。今日は玉依姫に用があるんだ」
男はそう言うと指を鳴らした。すると夕焼けで濃くなっていた物影から妖が這い出てきた。その数は十を超え、珠紀達を取り囲む。
「姫、逢魔ヶ時って知ってますか?この時間、最も妖やカミが騒ぐ時間なんですよ。俺の結界は特殊でね?この結界内は時間を止めてある。つまりここは妖やカミが永遠に暴れ回る」
「姫!!!」
男の説明に耳を傾けることなく、冴鬼は珠紀の元まで駆け寄ろうとした。だが、影を纏った禍々しい妖が珠紀に襲い掛かった。
- Re: 薄桜鬼×緋色の欠片 ( No.172 )
- 日時: 2013/09/18 21:05
- 名前: さくら (ID: X1kgwzZ6)
「姫っ!!」
冴鬼が珠紀に群がる妖を一閃する。すぐに妖は消えたが、また新たな妖が背後から近づいていた。
「くそっ、姫!姫!」
妖に阻まれて前に進めない。珠紀は目の前にいるはずなのに。冴鬼は腕を伸ばす。
「どきなさい」
鋭い声がした。その後間を置いて妖達が四方に吹っ飛んだ。珠紀は全身を青い光に包み込み、男を睨み据えた。
「これはこれは…やはり玉依姫ですね。そう一筋縄ではいきませんか」
男が何をしようとしたのかすぐに理解した冴鬼は再び珠紀に手を伸ばした。
男はふっと姿を消した。珠紀が一度瞬きした後に男は珠紀の後ろにいた。
「っ!!」
「大丈夫。何も怖いことはしません。ただ貴方に会いたいと言っている方がいてね」
男は珠紀の首の根に手刀を見舞った。気を失った珠紀を抱きかかえると男はうっそりと嗤った。
「参りましょうか」
「待て!!姫を返せ!!」
「君はここで遊んでいればいいよ。ほら、また来たよ」
物影から次々と妖が現れ、冴鬼に襲い掛かる。雑魚とはいえ数が多い。行く手を阻まれ、冴鬼は歯噛みした。
その間にも男はゆったりとした足取りでその場を離れる。
冴鬼はぎりっと唇を噛むと目にも止まらぬ速さで周囲の妖を一蹴した。そして地を蹴ると跳躍して背を向けて歩く男に刀を振り下ろす。
だが、それもオサキ狐と同じように男に触れる寸前で火花を散らして弾き返された。
「相変わらずキレると凄いねぇ。でも、やっぱり拓魅には劣るかな」
「っ!!?」
振り返って微笑む男の背後から熊よりも大きな獣の妖が飛び掛ってきた。鋭く尖った歯を剥いて、妖は冴鬼目掛けて襲いかかる。だが冴鬼は長い腕を素早く動かし、長刀を振った。
妖の四肢が飛び、脳天を突かれた妖は呻き声を上げて霧散した。
「姫を返せっ!!!」
「しぶといね、君も。でもね、俺も暇じゃないんだ。悪いけどお前とはここでお別れだよ」
「その前に姫を返せっ!!」
冴鬼が長刀を振りかざし男に見舞う。だが、男の前にはまたも見えない壁に阻まれその剣撃も弾かれてしまった。冴鬼はさらに横薙ぎ、逆袈裟を繰り出すがすべて弾かれてしまう。
「ふふっ。いいのかな?俺ばっかりに気を回していて…」
「っ!?」
闇より出でた妖が冴鬼の背後からその牙を剥いた。巨大な牙で背中を大きく裂かれ、冴鬼の攻撃が止まった。その隙に男は珠紀を抱えたままひらりと跳躍して軒先の屋根に飛び移った。
「くそっ、待てっ!!!」
冴鬼は振り向きざまに背後の妖を倒し、逃げ行く男を見上げた。しかしそこに男の姿はなく、追撃しようとした冴鬼にまたも複数の妖が立ち塞がる。
「くっ…!!」
冴鬼は刀を一閃し、妖を蹴散らす。だが視界が晴れたときには男の気配などどこにもなく、結界も解けていた。辺りには音を取り戻し、日はとっくに山の向こうに消えていた。
闇の帳に佇む冴鬼は歯噛みした。
「っ姫…!!!」
背中の傷を庇いながら、冴鬼は男の後を追った。
- Re: 薄桜鬼×緋色の欠片 ( No.173 )
- 日時: 2013/09/21 20:57
- 名前: さくら (ID: X1kgwzZ6)
屋根から屋根へと飛び移る影がひとつ。闇を縫うように静かに、その影は人知れず駆ける。
闇の帳が降りた世界は漆黒に包まれ、人の往来も少なくなっていた。
影はある場所を目指して疾駆する。だが、前方に広がる屋根の上に一つの影を見止めて、足を止めた。
「…あれ。これは予想外だね」
「はっはっはっ…!」
疾駆していた男の手には珠紀がいる。男は前方に立つ影を見つめて、うっそりと笑った。
「まさか、君がここに来るとは思っていなかったよ」
「…っそいつ、を…返せっ!!!」
その影、拓磨は肩で息をしながら息も絶え絶えに言った。
「その様子だと気が付いたんだね。全く、だから鬼は嫌いだよ。勘がいいというか、玉依姫がかかわると顔色を変えるんだからさ」
男は珠紀をそっと屋根の上に下ろすと嘆息した。鋭い視線を送る拓磨に向きかえると男は歩を進める。
「さて、と。名乗らなくても俺が誰かはわかるのかな?」
「典薬寮だろ…!」
「ご名答。やっぱりそれはわかってるんだね。だったら話は早いよね。そこ、どいてほしいんだ」
男がおねだりをするような口調で拓磨の近くまで足を進める。拓磨は腰に差していた刀を屋根の上に置くと男を見据えた。
暗闇のなかでは男の顔もわからない。夜目は利く方だが、今宵は新月らしい。真っ暗闇のなかでは男の存在を見止めることしかできない。
「それはできないな…俺は守護者だ」
「そう。じゃぁ交渉決裂かな」
男は嗤うと空に手を掲げた。すると辺りの空気の流れが変わる。異変を感じた拓磨は身構えた。
「安心しなよ。君だって一般人を巻き込みたくないでしょ?だからこれはささやかな俺の配慮」
「ふっ…存分に暴れ回れるように、だろ?」
結界が周囲に張り巡らされたのがわかる。現世とは切り離された空間を作り出したのだ。
拓磨の言葉に嗤った男は懐から札を取り出す。
「俺は守護者が大嫌いだ。特に鬼は吐き気がするんだよね」
「奇遇だな。俺もお前には嫌気がさしてた」
拓磨は大きく体を沈めると屋根を強く蹴った。男はそれと同時に手にしていた札を拓磨目掛けて放つ。
その札は赤い閃光を散らし拓磨を狙うが、拓磨は片腕でそれを振り払った。
その腕は筋肉の手甲を纏い、爪は黒く尖りまるで獣のようだった。
「やるね。でも俺は強いよ?」
「弱い犬ほど良く吠えるけどな」
「弱いかどうか試してみたら?」
拓磨は再び跳躍すると男と間合いを詰める。男は拓磨の一撃をかわすとすばやく札を二枚取り出すとそれを拓磨に向けて放った。
二枚の札は拓磨の足に張り付く。すると拓磨の動きが止まった。
「君の時代の典薬寮はどうだったか知らないけど、俺は君達が思っている以上に手強いよ」
「よく喋る男だな」
拓磨は力を込めるとその束縛を解いた。そして男目掛けて拳を握る。それを見切っていた男は結界で拓磨の拳を弾くと、懐から札を数枚取り出した。そして距離をおいて空に投げ放つと黄金に輝く雷を落とす。
それを避けながら拓磨は男と距離を詰めるが、男の周りには結界が張られ、攻撃は全て弾かれてしまった。
「ちっ…!鬱陶しい技ばかりだな!!」
「戦いは体力ではなく頭脳でするものだよ」
拓磨はぐっと歯噛みするが、すぐに回路を見つけ地を蹴った。拓磨の姿を見失った男は一瞬動きを止める。
「それはどうだろうな」
拓磨は男の背後に回り、その腕で男の首目掛けて手を伸ばした。だがやはり結界に阻まれ、ばりばりと閃光が散る。拓磨は負けずにその手をぐっと伸ばすと結界が砕けた。
その隙を見逃さず、拓磨は男の首を掴みそのまま地面にねじ伏せる。
「体力も馬鹿にはならないぜ」
「ふんっ…拓魅そっくりで嫌になるね、その顔…!!」
男はうつ伏せの状態で拓磨に圧し掛かられ、呻いた。男は小さく呪術を唱えると男の影が蠢いた。その影は拓磨の首に纏わりつく。
「ぐっ…!!」
「言っただろ。俺は鬼が嫌いだって」
その影は拓磨の首を強く締め上げる。拓磨は仰け反ってそれをどうにかしようとあがく。男はその隙に拓磨から逃れると、屋根に横たわる拓磨を見つめた。
「玉依姫がいなければ何もできないただの手足が」
「ふっ…」
「何がおかしい」
首を締め上げられ、酸素が薄くなっているはずなのに、拓磨は笑っていた。
「お前の、その…物言い…どこか、不服そう、だな…」
「っ…」
拓磨の言葉に男は目を丸くした。その反応に拓磨は確信を得たらしい。言葉を続けた。
「俺を貶しているわりに、どこか、お前がつらそう、だったから…な」
ぎりぎりと首を絞めあげられ、拓磨の意識が徐々に遠のいていく。だが拓磨の言葉に威力があったのか男は歯噛みしていた。
「黙れ。お前に何がわかる。お前なんかに…お前が…!」
みるみる男が怒気を孕んでいくことがわかった。男は語調を荒げて続けた。
「俺とお前は違う…!わかってるんだよ、そんなこと!どうせ俺はお前にはなれない!!わかってる、わかってるよ!!そんな、こと…」
男の言葉が力をなくしていく。すると拓磨の首に纏わりつく影の力が和らいだ。
「誰、のことを…言ってる…」
「っ!?」
男は言葉を飲み込んだ。静寂があたりを包んだかと思うと、男が低い声で嗤っていた。その声は次第に大きくなり、まるで泣いているようだった。
「はははははははっ!!あーぁ…お前を見てるとイライラするよ。嫌なものまで思い出す。だから…」
男はが言葉を切ると拓磨の首に巻きついていた影が力を増した。
「ここでさようなら、だ」
拓磨の首が悲鳴を上げる。男は嗤ったまま息絶えゆく拓磨の姿を眼下に見た。どうにかその影を解こうともがいていた拓磨だったが次第に意識が遠のき、手足が動かなくなっていく。
「楽しかったよ、鬼の末裔」
男は踵を返して珠紀の元へ戻ろうとした。だが男は目を見張った。ここに珠紀を下ろしたはずだ。その珠紀がどこにもいない。
男があたりに視線を散らしていると背中に衝撃が走った。
「っん…!!?」
「…守護者を舐めすぎだぜ、典薬寮さん?」
男はそのまま宙を舞い、屋根にもんどりうって瓦を崩しながら止まった。ゆっくりと首をもたげると拓磨の首に巻きついていたはずの影がどこにもなかった。
拓磨の満足げなその顔の後ろに、青く光るものを見た。
「ぁ…」
「守護者は確かに玉依姫の手足です。でも、私の守護者は大切な仲間でもあるんですよ」
珠紀は体中を青い光に包み込み、男を睨み据える。男は拓磨に殴られた背中を庇いながら立ち上がった。肋骨が折れたらしい。その折れた骨が肺に刺さっているのか、胸と背中が激しく痛む。
男は恨めしそうに拓磨を見た。
「これだから…嫌いなんだ…守護者も…姫も…」
男は切なそうに言葉を吐いた。暗くて見えないが男の視線が羨望の眼差しであると珠紀はどこか感じた。
「…これだから…嫌なんだ…何度も絶望する自分に…」
男は呟くと札を取り出した。身構える拓磨だったが男はその札を足元に投げると煙が立ちあがり、男の姿はどこにもなくなっていた。同時に結界も解け、辺りには静かな夜の街が戻ってきた。
「拓磨、大丈夫!?」
「俺は何ともない…お前こそ」
「私も大丈夫。何もされてないし…」
拓磨は安堵の息をこぼすと、ふっと視線を男が消えたあとに移した。
「珠紀、あの男の顔。見えたか?」
「ううん…暗くてよく見えなかった」
「だよな。俺もだ…くそ。あの結界のせか」
夜目が利く拓磨でも男の顔まで見えなかった。それは今晩が新月だからではない。男が作り出した結界のせいだろう。
どこまでも計算高く、どこまでも姑息だ。
「とにかく戻ろう?皆心配してるだろうし」
「あぁ、そうだな…」
拓磨は珠紀を立ち上がらせると、じっと彼女を見つめた。
「何?」
「いや。お前が助けてくれなかったら俺は今頃死んでたかもしれない…ありがとな」
「そんなこと…私も拓磨が来てくれなかったらどうなってたか。お互いさまだよ」
拓磨は微笑すると珠紀の頭に手を置いてぽんぽんと軽く叩いた。
「急いで戻るか。珠紀、俺の———………誰だ」
拓磨の語調が低くなり、珠紀は小首を傾げた。拓磨の鋭い視線の先を追う。
暗闇の先を見つめているのか、珠紀にはよくわからない。だが、拓磨はじっとそこから視線を逸らさない。
暗闇が広がるなか、その人は近づいて来た。
- Re: 薄桜鬼×緋色の欠片 ( No.174 )
- 日時: 2013/09/21 21:48
- 名前: さくら (ID: X1kgwzZ6)
「…姫、ご無事でしたか」
「あ、冴鬼さん!」
珠紀は拓磨から離れて冴鬼に駆け寄った。冴鬼はさきほどここに到着したらしい息を整えながら珠紀の無事を確認した。
「怪我してるんですか!?大丈夫ですか!?」
「大した傷ではありません。ご心配は無用です。姫がご無事で何よりです」
「おい、珠紀。そいつから離れろ。そいつは…」
「大丈夫だよ、拓磨。この人はこの時代の鬼崎家の分家の人なんだって」
「は…?分家?」
拓磨からすれば現れた男は以前珠紀を攫おうとした不審者にすぎない。拓磨が警戒心を露にするのは当然だ。冴鬼は拓磨の前で頭を垂れた。
「先日はご無礼を。璞玉様より姫を連れて来いと命じられたもので…今は珠紀様の護衛と鬼斬丸の監視をしています」
「は…?護衛?監視?」
「璞玉様の命でございます。姫が外出される際は僭越ながら自分が護衛しております。今回も姫が一人巡察の道から外れたので、自分が動いたのです」
「そうか…それは感謝する。だがその監視って…」
頭を垂れていた冴鬼は顔を上げた。仮面を乗せたその顔が一体どんな顔をしているのかは定かではない。だが男の声は真剣そのものだった。
「これ以上はお話できません。璞玉様の命により、姫や守護者にはまだお話できないことでございます」
「言っている意味がわからなぇな」
「ただ一つ。ご忠告させて頂くなら、この京に滞在する鬼にお気をつけ下さいませ。奴は危険でございます。守護者にも…姫にも」
「鬼…?俺らと同族か」
「いえ、少し流れている血は違いますが…奴は姫を狙っております。どうかお気をつけ下さい」
拓磨は一瞬珠紀を見た。珠紀はどこか不服そうな、不満そうな顔をしている。
「それで、その鬼の名前は?それも話すなって言われているのか」
「いえ、名前は知っているはずです。拓磨様であれば…」
冴鬼の言葉に拓磨は眉を顰めた。鬼がいるとは知っているが、一体誰のことを言っているのか。だが、逡巡した拓磨の脳裏にある名前が浮かんだ。
「風間、確かそんな名前だったよな」
「左様でございます。奴は危険でございます。どうか、気を許されぬよう…」
「冴鬼さん?」
冴鬼の語調が徐々に弱々しくなっていく。珠紀は心配して冴鬼の腕に触れた。さっきから冴鬼から血の臭いがして気になる。暗くてよく見えないが冴鬼が大怪我を負っていることには変わりないはずだ。
冴鬼は心配する珠紀に優しく語りかけた。
「ご心配には及びません。自分も分家の身。治癒能力も常人よりは高い。大丈夫です。ですが、自分はここで失礼します」
「おい、まだ聞きたいことが———」
拓磨の引き止める声を聞かずに、冴鬼の体が発光した。そして目を閉じなければならないほどの強い光が冴鬼を包んだかと思うと一瞬でその光がなくなった。見れば冴鬼の姿が忽然となくなっている。
「何だ、あいつ」
「私を助けてくれたんだよ。悪い人じゃないと思う」
隣に立つ珠紀を見つめて、拓磨は何かを思い出したのか声を上げた。そしてさきほど撫でていた頭に軽く拳骨を見舞う。
「痛っ!!何で殴るのよ!」
「元はと言えば、お前が巡察中にいなくなったからだろ!その冴鬼に助けてもらったって言ったな。じゃぁまた何かあったんだろ…もしかしてその風間って男に会ったのか」
「じゅ、巡察中に抜け出したのは悪いと思ってるよ!で、でも急に頭痛がしたから何か呼んでる気がして…それで気になって隊から離れちゃって…その…」
「会ったんだな、その鬼に」
拓磨の念を押すような強い言葉に、珠紀は黙って頷いた。その反応を見た拓磨は大きく溜息をついた。
「ご、ごめん…でも何か手がかりがあるのかなって思って…あの風間さんは前に私が屯所を飛び出したときにも助けてくれて…」
「ちょっと待て。今何て言った?前にもその鬼に会ったのか!?」
珠紀はしまったと口元を押さえた。拓磨はまた溜息をつくと頭を掻く。
「珠紀。頼むから一人で行動するな。お前が一人になると必ず何か起こる。今回も冴鬼がいたから良かったけど…」
「ごめん…」
うな垂れる珠紀を見て、拓磨は更に頭を掻き毟った。
「…まぁお前にそんなこと言っても、聞き入れないっていうのは知ってるからな。ただ今回みたいなことはなしだ。巡察に出たら原田さんから離れるな。これが守れないならお前を外に出せない」
「うん。ごめんね、拓磨…」
申し訳なさそうに珠紀が謝る。拓磨は掻き毟っていた手を珠紀の頭に乗せ、今度は彼女の頭を強引に撫でた。
「説教はここまでだ。帰るぞ」
先を歩く拓磨に珠紀は遅れてついていく。その背中だ妙に切なそうに見えて、珠紀は声を上げた。
「怒ってる?」
「何を」
「風間さんに会ったこと」
珠紀の一言に拓磨は一瞬固まったが、珠紀を振り返った。真っ直ぐすぎるその視線に、珠紀は声が出なかった。
「怒ってる」
「え、きゃっ」
拓磨が突然珠紀の肩と足を抱き上げたかたと思うと屋根の上から降りた。着地した拓磨は珠紀を抱いたまま動かない。
「…なんてな。俺はお前を信用してる。前にも言っただろ」
「うん…やっぱり違うね」
「違う?何が」
珠紀は何を思い出したのか口元に笑みを浮かべて言った。
「風間さんより拓磨の腕の中の方が安心する」
「何だそれ」
ぶっきらぼうに言葉を返した拓磨だったが珠紀は知っている。その頬が少し赤いことに。
だがあえてそれは言わない。なぜなら自分もきっと同じように頬を染めているに違いないからだ。
「このまま走った方が早いから、このままで帰るぞ」
「うん」
珠紀は拓磨の首に腕を回した。走り出した拓磨は珠紀に負担がないように注意していることがわかる。そういう些細な気遣いが時々嬉しく思う。ぶっきら棒でも時々の行動がひどく優しくて、珠紀は拓磨に身を委ねた。
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