二次創作小説(紙ほか)
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 薄桜鬼×緋色の欠片
- 日時: 2012/09/26 13:48
- 名前: さくら (ID: cPNADBfY)
はい。
初めましてな方もそいうでない方もこんにちは。
またさくらが何か始めたで。と思っている方もいると思いますが
薄桜鬼、緋色の欠片好きの方には読んで頂きたいです
二つの有名な乙女ゲームですね
遊び感覚で書いていくので「なんやねん、これ」な心構えで読んでもらえると嬉しいです←ここ重要
二つの時代がコラボする感じです
あたたかい目で見守ってやって下さい
それではのんびり屋のさくらがお送りします^^
- Re: 薄桜鬼×緋色の欠片 ( No.245 )
- 日時: 2014/12/04 22:36
- 名前: Carry Blossm (ID: UVjUraNP)
今晩は!!
小説読ましていただきました。今回もとってもよっかた♪
質問答えてくれて有難う!私にとってはさくらさんは先生だぜ☆
私もさくらさんを見習って小説書くの頑張る(・ω・)
珠紀達どうなるのっ!!?
すっごいきになるよう(・´з`・)
次の話楽しみにしてるね★
私終わって無いのに二つ目書いちゃったんだ。
二つ目の方は薄桜鬼だよ。
って、( ゜д゜)ハッ!また宣伝しちゃった!!ゴメンね…
次からは気を付けるよ…。
ちなみに、見てコメントくれると凄い嬉しいな♪
それじゃあここらへんで、まったね〜〜〜
- Re: 薄桜鬼×緋色の欠片 ( No.246 )
- 日時: 2014/12/05 23:36
- 名前: さくら (ID: 1CPnMR4A)
Carry Blossmさん
こんばんは^^
コメントありがとう
いやいや、そんなに言ってもらうと逆に恐縮するwww
珠紀はまだ出てこないかなー
ちょいちょい更新していくね^^
私もまだ完結してないのにこの作品書いてるから一緒だよー^^
全然宣伝に使ってくれて大丈夫ー
ごめんね
見に行くとか言いつつまだ行けてないんだ…
今度読ませてもらうね!!
Carr Blossmさんも更新頑張ってねー!!
- Re: 薄桜鬼×緋色の欠片 ( No.247 )
- 日時: 2014/12/05 23:43
- 名前: さくら (ID: 1CPnMR4A)
「支度ができた、璞玉」
大雨が降ったあとの朝は世界が濡れ輝いている。朝日が水面を屈折し、光で溢れていた。
璞玉の部屋に静かに入室した拓魅は、八畳ほどの小さな部屋の中央に座る主に声をかける。
「…ありがとう、拓魅」
顔を上げて微笑む璞玉だったが、どこかその笑顔は切なげだった。
璞玉の傍まで膝行して拓魅は彼女の顔を覗き込む。
「璞玉…どうした…?」
優しい声音で問うと璞玉はまた困ったような笑みを浮かべる。
「…私は彼らを未来から呼びました…それは私の勝手な都合のせいです…時代も違う…場所も見知らぬ土地…それも長期間…彼らをここにとどめている私を一体彼らはどう思っているでしょうか…」
膝の上で握られた小さな手が小刻みに揺れる。
この時代に彼らを召還したのは自分自身。それは自分勝手な理由だ。鬼斬丸の封印を守り続けるのも、封印を再度やり直すにも力が足りない。だから願った。どの時代の珠依姫でもいい。力を貸してほしかった。
だが、それは召還される身になれば身勝手極まりない行動に見えるだろう。
戸惑い、苦労を強いてしまっている。そんな彼らにどんな顔を合わせればいいのだろうか。
「…これが正しい選択肢だったのか…未だに不安なんです…」
「璞玉」
まだ年端もいかない少女がたくさんのことに頭を悩ませている。本来、同年代の女子であれば無邪気に遊び回り、もっと自由な時間を過ごしているはずだった。だが、玉依姫という宿命を背負った彼女は普通の人生を歩むことすら許されない。運命に翻弄され、常に鬼斬丸について考えなくてはいけない主に、拓魅は短く名を呼んだ。
「優しい主を持って俺は誇らしい。だがな、璞玉。お前は玉依姫だ。鬼斬丸を護る最後の砦だ。もっと心を強く持て。人の世を護っているのはお前だ。お前が悩むなら道を照らすのが俺の仕事だ。お前はお間違っていない。お前が信じたならそれは確かな光になる」
「けれどもし、それが光にならなかったら…」
「そうならないように俺がいるんだ…安心しろ、傍に必ず俺がいる」
璞玉の頭をそっと撫で、拓魅は優しく微笑んだ。
「…そうね。私は独りじゃないわ…貴方がいる…ありがとう、拓魅」
「さぁ行こう。京へ。姫を待たせているんだ」
背筋を伸ばしいつもの笑顔を取り戻した主を見て拓魅は目を細めた。
璞玉の手を取り立たせる。そのときだった。
部屋の前は庭が隣接している。その庭に雷が落ちたように光で溢れた。
「冴鬼か」
拓魅は障子を開けると庭に立つ配下を見止めた。
「拓魅様ッ。一大事でございます!!」
拓魅に頭を垂れると急いたように冴鬼が早口に報告を始める。
「典薬寮が動きました…!!」
「何…!?」
「珠紀様が典薬寮に連れ去られ…!!捜索しているのですが、どこにも…ッ」
「何ということを…」
拓魅の隣に立つ璞玉は言葉を失った。
切り札ともいえる珠紀をさらわれたとなると計画は全て崩れてしまう。
なぜ典薬寮が今この時期に動いたのかは定かではないが、目的は予想ができた。
「…やはり、鬼斬丸を手に入れんとしているか…!!」
拓魅は唇を噛んだ。
「鬼斬丸は未だあの鬼の手元に…典薬寮に奪われた様子はまだありません」
「冴鬼」
「は」
「お前はこの時代の守護者と合流し、珠紀様の捜索を続けろ。鬼斬丸が動き次第、こちらに報告。こちらも珠紀様を探そう。急げ」
「は!!」
冴鬼は再度頭を下げると立ち上がった。すると突然突風が巻き起こり、三人は身を硬くした。
「どこへ行こうとしてるのかしら?」
突風が止むとともに声が響く。
三人は庭の池の傍に立つ人物を睨んだ。
「あらそんな顔しないで下さいな。昔は私たちよく遊んでた仲じゃない」
「冴鬼。行け」
冴鬼は頷くとそのまま光と化し、西の空へと飛んで行った。
「追いかけないのか」
庭に降り立ち、現れた人物、清次郎を見据える。
「ふふ。分家の者一人ぐらい見逃したところで、こちらには何の損害もないわ」
「この時代には今俺以外にも守護者がいるんだぞ…」
「あぁ、あなたはまだ知らないのね…その頼りにしている守護者が今どうなっているか…」
清次郎小さな声で呟くと冴鬼が消えた空を見上げて微笑んだ。
その余裕ともとれる態度の理由を知っている。
「あら、旅支度をしてどこへ行くつもりだったのかしら?」
「聞かずともわかっているのだろう…」
拓魅の鋭い眼光に清次郎は怯むどころか、微笑んでいた。
「怖い怖い。そんなに睨まないで。別に戦おうとかそんなつもりはないもの」
清次郎はふっと手を上げると池の水面が不自然に揺れた。
水面のさざ波が鎮まったとき、その池に映し出されているものに、二人は言葉を失った。
「これがどういうことか、おわかりよね?」
清次郎は二人の反応を満悦した様子で見つめた。
池の水面に映し出されているのはぐったりと横たわる珠紀が映し出されていた。
- Re: 薄桜鬼×緋色の欠片 ( No.248 )
- 日時: 2014/12/05 23:50
- 名前: さくら (ID: 1CPnMR4A)
「貴様ッ…!!姫に何をした…!!!」
「安心なさいな。ちょっと眠ってもらっているだけよ。私たちもバカじゃないわ。そう易々と姫を傷つけることはしないわよ…易々とはね…」
清次郎の含みを持った言葉に璞玉は眉根を寄せた。
「…何が目的なのですか…」
「あら、随分と物わかりがよくなったのね璞玉ちゃん。話が早くて助かるわ」
清次郎は璞玉に微笑むと拓魅に向き直った。
「京には行かないで欲しいのよ。あたた達に動かれると困るのよね」
「…なるほどな…」
拓魅は清次郎の条件を聞いて悔しげに呟いた。
「俺たちがここを動けば姫がどうなるか…俺達の手にかかっているということか…」
「そういうことね。悪いんだけど、あなた達にはここにいて貰いたいの。あぁ、これから私もここで監視させて貰うわ。それと…」
清次郎は腕を振ると水面の映像が変わった。
その映像に映る人物が誰かわかると、璞玉は表情を強張らせる。
『…久しぶりじゃな…璞玉よ…』
「お久しぶりです…正親様…」
水面に映る人物に拓魅も苦い表情をした。
『息災であったか…』
「…はい…正親様もお元気そうで…何よりです…」
『話は清次郎から聞いたのか』
「…はい…」
璞玉は目を伏せて首を縦に振る。その顔色が悪いこと拓魅は気がついた。
血の気が失せていく璞玉は、しかしすっと背筋を伸ばし映像に映る老人を見つめる。
「私達はここから動きません…だから約束して欲しいのです…姫には決して手を出さないで下さい…お願いします…」
頭を下げる璞玉にその場は静まり返る。
池の水面が風に波打つ。
『…約束しよう…お前達が決してそこを動かねば…』
低い言葉が静かな空気を揺らす。璞玉は顔を上げると切なそうに目を細めた。
『そちらに監視を置いておく…妙な動きはせんことだな…』
「はい…」
『拓魅』
拓魅は池に近づき、頭を下げる。
『ふん…少しは面構えもよくなったと言っておこうか…妙なことは考えるなよ…分家の者を遣いにやったようだが…分家の者など役に立たんだろう…無駄なことだ…』
「うちの分家は俺よりも利口ですよ、愚視してその足下を掬われないように願っています」
「拓魅。口を慎みなさい」
璞玉に諌められ、拓魅は咳払いをして正親に向き直る。
『生意気な口をきけるようになったようだな…ついこの間までは何も出来ん小僧だったお前が…』
「子供の成長は早いんですよ」
「拓魅」
『姫は確かにこちらに預かっている。妙なことは考えずお前たちはそこでじっとしていることだ』
「預かっている?さらったの間違いだろうが」
「拓魅」
『考えが甘かったのはそちらの方。未来から姫と守護者を呼ぶなど先に行動したのはそちらの方。我々は常に鬼斬丸と世の均衡を保つ役割を果たすためにいる…その均衡を崩そうとしている者が例え守護者や姫であろうと…牙を剥いて阻止するのは当然じゃろう…』
老人の言葉には怒気が孕んでいた。
『無駄なこと考えるな…これは忠告だ…来るべくときまで…お前達がじっとしていれば姫は返そう…』
老人は脅迫するような気迫で言葉を残すと池の水面が揺れ、老人の姿はどこにもなかった。
「くそったれ…!!ただの脅しだろうが…ッ」
拓魅はぐっと拳を握ると近くの木を殴る。振動を受けて木の葉がぱらぱらと散った。
状況は珠紀の誘拐により一変した。典薬寮に人質となった姫を救うにも監視をつけられては下手に動けない。動けば姫が危険にさらされる。
わざわざ正親が出て来て釘を刺すほどだ。嘘ではない。
「正親のじじぃまでお出ましたんだ…どうする…璞玉」
「…答えは変わらないわ…ここからは動きません…」
「それが賢明ね。姫を危険にさらせないものね」
清次郎の台詞に苛立ちを感じる。こちらが下手に手を出せないことをわかっているから、悠然としていられるのだ。それが鼻持ちならない。
苛立ちを清次郎にぶつけようとしたとき、璞玉はへたりとその場に座り込む。
「璞玉!!」
「…だい、じょうぶ…少し…緊張しただけ…」
駆け寄って彼女の肩を抱くと小刻みに震えていた。
「…大丈夫か…」
「えぇ…まさか…正親様が出てくるとは…思っていなくて…」
璞玉は何度か深呼吸をして自分を落ち着かせる。そんな彼女の背を優しく撫でて落ち着くのをじっと待った。
「…ごめんなさい…正親様の言う通り…考えが甘かったのは私…姫がさらわれたのも…私たちがもっと早く迎えに行けば…こんな…」
「違う。お前のせいじゃない。俺がもっと警戒していれば…」
「…冴鬼と守護者の方を信じるしか…今は…それしか…」
二人のやりとりを見ていた清次郎はふっと息を吐いた。
「…嫌だわ…正親おじ様はこんな仕事を私に託すなんて…」
二人から視線を逸らし、苦しげに呟いた。
「私たちはいつから…こんな関係になっちゃったのかしらね…」
- Re: 薄桜鬼×緋色の欠片 ( No.249 )
- 日時: 2014/12/12 23:27
- 名前: さくら (ID: 1CPnMR4A)
珠紀がさらわれてから五日が経った。
春の陽気が続く昼間、拓磨は出来るだけ外に出て捜索に出ていた。
巡察や仕事が無い限り珠紀の捜索をする。幹部達も巡察中に聞き込みを続けていたが、有力な情報は何一つ得られないでいた。
「にー…」
京中を連日探し回っているおかげで、足をはじめ体中が疲労困憊だった。
自分の部屋に戻り、ぐったりと畳に倒れ込む拓磨にオサキ狐がそっと寄り添う。
「にー…」
「ん…オサキ狐か…ただいま…」
「にー」
オサキ狐は拓磨の頬に体をすり寄せ彼の顔を覗き込む。
「…ごめんな…お前の主…まだ見つけられなくて…」
疲労からか酷い眠気がやってくる。
日が暮れても捜索の手は休めず、門限ぎりぎりまで粘っていると土方に叱責を受け、次の日からは日が暮れると帰館するようになった。
だが、やはりずっと捜索していたい気持ちが逸って仕方が無い。
土方が自分の体を心配して叱責してくれたことはちゃんと理解しているのだが、歯痒さが気持ちを荒らし、夜眠ろうとしても眠れない日々が続いていた。
そのせいで、今日の巡察中ふらふらとしていると、沖田にも叱られこうして日が暮れる前に部屋に強制送還されてしまったのだ。
「今日ちゃんと休んで…明日また探しに行くから…」
「にーにー」
布団も敷かずに眠ろうとしている拓磨にオサキ狐は裾を口で噛み、起こそうとする。だが酷い眠気に一度襲われてしまえば、あとは眠りの淵へと落ちて行くだけだ。その微睡みに勝てるはずもなく、拓磨は全く動かない。
オサキ狐は部屋を見渡すと近くに脱ぎ捨ててあった羽織を見つけて急いでそれを拓磨にかけてやる。
すると遠くから足音が近づいてきた。それはどんどんと近づき、拓磨の部屋の前で止まる。
「拓磨?いるか?入るぞ」
すっと障子を開けて入って来たのは原田だった。
そして部屋の中央で倒れるように眠りこけている拓磨を見てふっと溜め息をこぼす。
「んなところで寝てると風邪ひくぞ、おい」
「…ん……」
微睡みの淵にいた拓磨は声が聞こえて閉じていた目をうっすらと開ける。
「悪い、寝てるなら後にしてもらうか。お前に客なんだが…」
「…ぁ…原田さん…?」
もぞもぞと動きゆっくりと上体を起こす。重い瞼をこすりながら原田を見上げた。
「お前も疲れてるしな。来客なんだが、出直してもらうか」
「俺に…?客…?」
「あぁ。男なんだが…」
「名前は…?」
寝ぼけた頭を必死に動かしながら拓磨は問うた。この時代にわざわざ自分を訪ねてくる人物などいるはずがない。
「えっと、りょう…狗谷遼だったっけか…?知り合いか?」
バタバタと廊下を走る。途中すれ違う隊士とぶつかりそうになりながら、広間の障子を勢い良く開け放った。
「…うるさいぞ、もう少し静かに入ってこれないのか、赤頭」
「おまッ!!何で、何でここにいるんだ!!狗谷!!」
広間に悠然と座っている遼の姿を目にして、拓磨は眠気が吹っ飛んだ。
拓磨の慌てように驚いて後を追いかけて来た原田は広間に着くと二人にそれぞれ見比べる。
「何かお前等似てるよな、こう、雰囲気というか…目つきの悪さが?」
「「似てねぇッ」」
原田の言葉にぴったり息を合わせて返した二人はお互いに火花を散らす。
「何でお前がっ!ここにいるんだっ!」
「その質問に答えて欲しかったらそこに黙って座れ、赤頭」
「何だ知り合いだったのか。茶、千鶴に頼んで淹れてもらってくるぜ」
原田は水を差すべきではないと考え、千鶴が夕餉の準備をしている廚に向かった。
二人きりになった広間で、拓磨は渋々遼の前に腰を下ろす。
「それで?何でお前がここにいるんだよ」
「お前達守護者全員がこちらに来ているんだから、俺がここに来ていることは至極当然だろう」
「じゃぁお前も蔵の本を見て…」
「そういうことだ。お前達も同じようにここに来たようだな」
夕暮れ時が近づいていた。広間に差し込む斜陽の影が二人に落ちる。
「いつからこっちに…」
「お前達がここに来る一ヶ月前…蔵で本を見つけたのはお前達より二日前だ」
「そんなに誤差が…ってか!!こっちに来てたなら俺たちに早く言えよ!!お前今までどこにいたんだよ!?」
拓磨の問いに遼はふっと息を吐くと脇に置いていた“もの”を取り出した。
分厚い布に包まれたそれは長細い。それを見た拓磨はその中身が何なのかをすぐに察した。知っている。この気配は。
「これを守護してたんだよ」
するりと布が取り払われ、中身が姿を現す。
それを見た瞬間戦慄した。“それ”はここにあってはいけないもの。神社の厳粛な空気と鞏固な封印のなかで収めなければならないもの。
「鬼斬丸…ッ!!」
「俺がここに来たとき…ある男に拾われた…その男がこれを持っていたんだ」
「持っていた…!?」
拓磨の記憶の欠片が音を立てる。脳裏に浮かぶ記憶が叫ぶ。
『これ以上はお話はできません。璞玉様の命により、姫や守護者にはまだお話できないことでございます…』
『お気をつけ下さい————あの鬼は危険でございます—————…』
『急に頭痛がしたから何か呼んでる気がして————』
「…その男っていうのは…風間か…!!」
「何だ、知ってたのか。そう、そいつがこれを持ってたんだ…ってどこに行くんだ」
急に立ち上がって広間を出ようとする拓磨を引き止める。
「決まってる!!その風間って男に会いに行く!!会って一発ぶん殴る!!」
「はぁ?急に何言い出すんだよ?」
突然怒りを露にする拓磨に遼は首を傾げた。鬼斬丸を床に置いて、出て行こうとする彼の腕を掴む。
「そいつが今どこにいるのかもわからないのに、殴りに行くつもりか」
「あいつは!!…っ…あいつは……!!」
怒りのあまり言葉がでない変わりに、拳が広間の柱に炸裂した。
拓磨の怪力のせいで歪なヒビが入った柱に視線を送って、遼はやれやれと肩をすくめる。
「その暴力癖はまだ直ってないようだな。落ち着けよ、俺が一体ここに何のために来たのか…そういえば…珠紀はどうした」
遼の問いに、拓磨は怒りから急に顔色を変えた。水を浴びせられたように我に返り、そしてすぐに苦悶の表情を浮かべる。
「…さらわれた…」
「さらわれた!?誰に!?お前がいながらどうして…!!」
「…典薬寮が襲って来たんだ…完全に俺の不覚だった…」
拓磨の消沈する様子に何も言えなくなった遼はふっと息を吐く。
「珠紀がいないんじゃ意味が無い…」
「意味…?」
「そうだ。ここを鬼斬丸の封印域にする」
「は…?封印域…?ここを…?」
「そうだ。そのために俺はこの時代の玉依姫に会いに行って、鬼斬丸を奪取してきたってのに…どうすんだ」
「ちょ、ちょっと待て!!今何て言った!?この時代の玉依姫に会った!?鬼斬丸を奪取した!?」
お互いの話に疑問符しか浮かばない。ここに来て半年。それぞれが動いていたようで、お互いの動向に驚かされる。
「落ち着いて話をしようぜ。どうやら俺たちはかなりまずい状況みたいだしな」
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54