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六花は雪とともに
作者/ 火矢 八重

第十章 明かされた生い立ち その壱 page1
大きな部屋に、少年は一人居た。
年は雪乃と同じぐらいに見える。般若の仮面を被っており、上等な唐の服を身にまとう。服は紫色で、ますます雰囲気が豪華に感じた。
カタン、と戸の音がした。仮面を被った少年は振り向き、部下にはいる許可をする。
「……帝様、白龍を連れてきて参りました」
熊のような妖で、甲冑を身にまとった部下が跪きながら報告した。
「白龍……? 義理の妹は?」
疑問に思った少年――位は帝である――帝は、部下に訊ねる。すると、部下は下品な笑みを浮かべながら答えた。
「未だ消息をつかめておりません。ですが、脅迫をかけたのですぐにあらわれるでしょう。あの女は愚かですから」
部下の様子にため息をつく帝。部下は帝につくしてこの上ない幸せだと思っているようだが――帝は、その行為にうんざりしていた。
「……そうか。白龍をこちらへ。連れてきたらそなたたちは下がれ」
そういうと部下は慌てて止める。
「!? しかし、危険です!! 反逆者と二人いるなんて……」
「黙れ。私の命に逆らうのか」
そう言って帝は睨む。すると部下はとうとう折れ、下がった。
部下が下がり、帝はまた一人になった。
その途端、帝はただの少年になった。
仮面を被っている筈なのに、疲れきっている表情に見えた。
部下を一睨みで有無を言わせない、あの帝の姿は何処にもない。気力もない、そんな少年だった。
数分経ち、また戸の音が響く。
少年はその途端、『帝』に戻った。――まるで、素の自分を隠したかのように。
「入れ」
短く答えると、少しあざの出来ている白龍が出てきた――。
◆
「……まず、現在時点で何が起こっているかまとめよう」
一方雪乃の家では、杏羅たちが来ていた。
「白龍さんはその帝の勢力の元に居るんだな?」
杏羅の言葉に、雪乃は頷き説明する。
「はい。それは間違えありません。
まず、反逆者や違法者は強制収容所におくられます。そこで、社会で悪い影響を滅ぼさないようだったら釈放し、もし悪い影響をほろぼすのであったら、死刑やそれなりに思い罰が下されます。多分、お兄ちゃんはそこに入れられているはずです」
「でも、そいつらは雪乃に帝の元へ向かえって言っているでしょう? 強制収容所って、帝にとって危ない人たちばかり……そんな危ない所が帝のおうちの近くにあるの?」
ナデシコが尋ねると、雪乃は無表情のまま答えた。
「確かに帝にとっては危ない人なんだけど……帝は、逆にその人たちの死刑になる姿を喜んで見ているって噂があるの」
「元々そういう文化らしいからな。噂では、裏で弱い妖をいじめて拷問にかけて喜んでいるとか」
芙蓉の言葉に、顔を真っ青にするナデシコ。

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