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六花は雪とともに
作者/ 火矢 八重

第十一章 明かされた生い立ち その弐 page2
「わ……たし?」
ただ、その言葉しか呟けない。
前髪、瞳の色、白い肌、顔立ち……――全て、雪乃の顔を写したかのようだった。
「……ど、どうして帝の顔と私の顔が一緒なんですか!?」
混乱した雪乃が聞くと、帝は堪え切れずに笑った。
振り向くと、白龍も盛大に笑っている。
「ちょ、お兄ちゃん!? どーゆーことか説明してよ!!」
顔を真っ赤にして雪乃が聞くと、白龍は「本当にお前は鈍いなあ」と言っている。
ワケが判らず更に雪乃が顔をしかめると、帝は穏やかに笑って言った。
「――雪乃、私とお前は正真正銘の双子なんだよ」
「……は?」
ますます混乱する雪乃。そこに、帝が部屋に入りなさい、といった。
「――あの日、何故身寄りのないお前を拾ったか聞きたいんだろう? 全て教えるから、はいりなさい。私はこの日を待っていたのだから」
そう言われ、恐る恐る窓際から王室へ入る雪乃。三人は輪になるように座り、下に紫の座布団をひいた。
「……じゃあ、語ろうか。お前と、私の関係を――」
そう言って、帝は語りだした。
◆
「――今言った通り、私とお前は双子だ。同じ日に、同じ血を引いて生まれて来た。
だが、双子だった為、物心がつく前に私とお前は引き離された。――姉弟で、権力争いを起こさない為だ。
本来、双子の片方は忌子として産湯に浸かる前に絞殺される習慣だった。双子の弟である私が殺されるハズだったが――雪乃、お前は『女』だったから捨てられた。……『女』は、災いを持ってくるモノとして伝えられてきたから……。
しかし、生まれてすぐに殺されなかったのは、とある人物が必死に止めたからだ。――それが、白龍、そして雪乃の義理の祖父」
「おじい様が……」
雪乃は思わず呟く。――それとほぼ同時に、通りでずっと優しくしてくれたのだ、と雪乃は思った。
「しかし、風習を何よりも重んじる強硬派がお前を拉致し、物心つく前に遠い山へ捨てた。
やがて両親が不慮の事故で黄泉の国へ行き、幼い私がすぐ即位した。その時、お前たちの祖父に必死に頼まれたのだ。――雪乃を、探して欲しいと。
私も、ほとんど覚えていないとはいえ、たった一人血のつながりのある姉を見つけたかった。……同じ姉弟なのに、こんなの不公平だとずっと思っていたから。
けれど、その為には強硬派を説得しなければならなかった。最初渋っていた強硬派もやがて折れ、雪乃を探すことを認めた。その代わり、とある条件を結んだのだ。――生涯、姉弟として過ごしてはならぬ。そして、姉弟の繋がりであると言うことも話してはだめだと。
――私はこの条件を飲み込んで、お前を探し当て、そして貴族へ入れたのだ。そして、条件とはいえ……お前にそのことを話さないで過ごしていた日々は、とても辛かった」
その言葉は、嘘偽りのないと雪乃は直感した。
そして、やっと腑に落ちたのだ。――どうして、王室の隠し路を知っていたのか。
王家の者は、自由になる時間など全くと言っていいほどない。その為、こっそり抜け出すために、昔防空壕として使っていた洞窟の道を使ったのだろう。――帝と一緒に。
「――私が帝に即位して何百年か経った後、人間たちは巨大な大仏を作った。そのせいで、沢山の命や自然が破壊されたよ。……それは、妖も。
私は確かに怒り狂った。けれど、思いとどまったのだ。――今、人間に危害を与えれば、私はただの鬼になってしまう。尖っていると、逆に折れてしまうと。
けれど……強硬派は、それを良しとはしなかった」
帝は人間を恨むことを必死に思いとどまった。けれど、風習を重んじる強硬派は断じて人間を許さなかった。
帝の必死の説得に耳を貸すこともなく、勝手に帝の命に置き換え、大雪を降らせた。
「――私はその時初めて知ったよ。私――いや、もしかしたら親の代からかもしれないが――単なる、飾りだったんだってね。本当は、権力も何も無かった。強硬派を止める方法も知らなかった。
情けない話だよ。……周りの妖がしたとはいえ、私は許さない罪を犯してしまってる。『力が足りなかった』なんていう言い訳で、赦されるハズがない」
そこまで伝えた帝は、とても疲れきっている表情だった。

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