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六花は雪とともに
作者/ 火矢 八重

番外編 その参 流るるままに page1
「白龍義兄様、それはこっちに置いて下さい」
「了解」
「月乃は餅を、花乃はそこを整理して――」
「「了解――」」
雪乃たちは家の掃除と準備をしていた。自然と手を動かし、あっという間に整理していく。
もうすぐ、新しい年が始まるのだ。
来年は結構賑やかな年を迎えそうだなあ、と雪乃はひそかに想う。今年の正月は、皆それぞれ忙しくて中々集まれなかったのだ。
けれど、来年は違う。身内が義理の兄だけとは言え、ナデシコや杏羅、芙蓉が居る。今から考えると、胸が躍るようだった。
「気合い入れてんな――」
「まあね。あ、今からちょっと市へ買って来るよ」
「ん? 何か足りないものがあったか?」
「来年はこの村全員で迎えたいからね。お金持ちである私が沢山買ってこないと!」
そう白龍に伝え雪乃は出ようとすると、白龍が「俺も行く」と答えた。
「そんなに沢山買うなら男手も必要だろ?」
こうして、白龍も市へ出かけることになった。
◆
市はもうすぐ正月なのかとても賑わっている。雪乃と白龍は一通り色んなものを揃えた。
「後は、何だろ……」
「餅は俺が作るぞ?」
「いや、それはもう十五回ぐらい聞いてるから」
隣で餅のことしか話さない白龍に、雪乃はため息をついた。
(……義兄様って、こんな性格だったっけ?)
だんだんと山で暮らしていた白龍の印象が変わっていく。
昔は意地悪で、からかって、人間の事を軽蔑していた義理の兄。でも、今は――。
(……そうか、時が経てば変わっていくんだな)
ふと、そう悟った。白龍の方へ視線を向ける。
良いか悪いかは関係なく、人でも妖でも時が流れれば変わっていくんだ――。
「……ん? 何だ、雪乃?」
白龍が聞いたが、雪乃は笑って何でもない、とはぐらかした。
「それよりも義兄様、最後にもち米買うから持ってよ」
「お、良し判った」
ふわふわと、六花が落ちる。ほんわかとした空気が、兄妹の間で流れていた。
「義兄様、大丈夫?」
「そんなに重くはない」
白龍は張り切って三俵抱えていた。あまりの大きさに雪乃は心配したが、本人はいたってケロッとしている。妖なのだから、それぐらい普通に抱えられるだろう。
だが、雪乃が心配しているのはそこではなかった。白龍の傍に、女の子が居たからだ。
女の子はそのまま俵に頭をぶつけ、思いっきり倒れた。
「ッ~~!!」
声にならない叫び声をあげる。その時、白龍は驚いて俵を落としてしまった。
重たい俵は、もう一度女の子の頭に直撃する。
「痛ったああああああああああああああああああああああ!!」
「うわああああ、スマン!!」
「……何やっているの、二人とも」
傍観者である雪乃はポツリと言った。

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