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六花は雪とともに
作者/ 火矢 八重

第十二章 春の女神と雪女 page1
紫苑が自決して、七つの夜が過ぎた朝。
「雪乃、このままだと貴方は立春とともに溶けるわ」
いきなり、佐保姫から伝えられたのは、『余命宣言』。
それは、あまりにも唐突だった。
◆
「私が……溶けて消える?」
外に出た途端、いきなり伝えられた雪乃は、思わず思考停止した。
「……まさか、この話をする羽目になるとはね。ずっと、貴方のおじい様から止められていたのに……」
「……どうゆうことですか? というか、佐保姫様とおじい様知り合いだったのですか?」
「ええ。……実はと言うと、恋仲だったわ」
あまりの唐突な証言に、雪乃は声を失った。
「でも、貴方のおじい様と私はいろいろ事情があって結ばれることはなかった。けれど私と彼は良く話したわ。
……雪乃。貴方のおじい様はね、二代前の帝の双子の弟だったのよ」
(おじい様が、紫苑の二代前の帝の弟……?)
疑問だらけだった。けれど、一つだけ腑に落ちるところがある。
――ということは、私の……。
「つまり、貴方とはれっきとした血のつながりがあったワケ。貴方が遠くの山に捨てられた時も、自分の生い立ちと重ねての行動だったようね。
初めから話すわ。せっかくだから、私の社で話しましょう」
佐保姫は何処か嬉しそうな顔で言った。
◆
佐保姫の社はとても広かった。――恐らく、異界なのだろう。桃の花や梅の花が咲き誇り、それでいて雪乃は熱くはなかった。
佐保姫と雪乃は座ると、佐保姫はポツリポツリと話しだした。
「……あの人もね、貴方と同じく精霊を見ることが出来た。どうやら、双子として生まれた王家のモノは、帝にはならない方が精霊を見る力を授かるようね。貴方が『精霊』を見る力があることも、彼から聞いたわ」
その言葉を聞いて、雪乃は一つずつ疑問か解けて来た。
佐保姫は祖父から聞いていたのだ。だから、雪乃に精霊を見る力があることも知っていた。雪乃は誰にも話していないのに、佐保姫が知っていたのは、そういうことだったのだ。
だが、もう一つ謎が生まれた。
「では……何故、帝にはなれない片方は忌子として間引きされたのでしょう? 『精霊』を見る者は、心清らかなものではないと見えないと、貴族の伝説で知りました。――そして、双子の片方が『災い』を持って生まれることも伝説で知りました。
神は清らかなものとして崇められています。ですが、帝となる者は何故視えないのでしょう? そして、何故『災い』を持つ子として生まれるものが、清らかなものにしか視えない精霊を視ることが出来るのでしょう?」
双子の片方は『災い』を持つ子として生まれる、と大人たちに教わった。しかし、『災い』を持つ子が清らかな心を持つ者しか見られない『精霊』を視ることが出来ると言う。
一方帝は清らかな『神』であるのに、『精霊』を視ることが出来ない。これだと矛盾してしまうではないか。

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