コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 最強次元師!!【※新スレ作成におけるお知らせ有り】
- 日時: 2015/03/15 09:40
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: u/FYQltH)
- 参照: http://ncode.syosetu.com/n5050ci/
運命に抗う、義兄妹の戦記。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
基本毎週日曜日に更新!
※追記
実は、本作を一から書き直そうと思いまして別サイト様にて“完全版”を再連載し始めました。
やりたい話が多くて一度断念してましたが、やっぱり優先しようと思ってもう一度記載致します。
ご興味のある方はどうぞ! 上記のURLで飛べます*
とってものんびりと、更新する予定です。
Twitterの垢をつくってみました→@shiroito04
イラストとか宣伝とかを呟いてます!
※注意事項
・荒らし・中傷はお控え下さい。
・チェンメなんかもお断りしてます。
●目次
prologue >>001
第001次元 >>002第011次元 >>012第021次元 >>048
第002次元 >>003第012次元 >>013第022次元 >>050
第003次元 >>004第013次元 >>019第023次元 >>052
第004次元 >>005第014次元 >>020第024次元 >>055
第005次元 >>006第015次元 >>021第025次元 >>059
第006次元 >>007第016次元 >>025第026次元 >>060
第007次元 >>008第017次元 >>027第027次元 >>063
第008次元 >>009第018次元 >>030第028次元 >>065
第009次元 >>010第019次元 >>044第029次元 >>070
第010次元 >>011第020次元 >>046第030次元 >>071
第031次元 >>072第041次元 >>146第051次元 >>224
第032次元 >>077第042次元 >>169第052次元 >>230
第033次元 >>081第043次元 >>176第053次元 >>234
第034次元 >>082第044次元 >>179第054次元 >>241
第035次元 >>090第045次元 >>180第055次元 >>245
第036次元 >>097第046次元 >>189第056次元 >>260
第037次元 >>104第047次元 >>191第057次元 >>262
第038次元 >>108第048次元 >>203第058次元 >>264
第039次元 >>109第049次元 >>209第059次元 >>268
第040次元 >>138第050次元 >>216第060次元 >>274
第061次元 >>298第071次元 >>359第081次元 >>385
第062次元 >>300第072次元 >>361第082次元 >>388
第063次元 >>308第073次元 >>365第083次元 >>391
第064次元 >>337第074次元 >>369第084次元 >>393
第065次元 >>338第075次元 >>370第085次元 >>399
第066次元 >>339第076次元 >>371第086次元 >>402
第067次元 >>345第077次元 >>377第087次元 >>403
第068次元 >>346第078次元 >>378第088次元 >>413
第069次元 >>352第079次元 >>380第089次元 >>414
第070次元 >>353第080次元 >>383第090次元 >>417
第091次元 >>420第101次元 >>448第111次元 >>480
第092次元 >>421第102次元 >>450第112次元 >>484
第093次元 >>422第103次元 >>458第113次元 >>489
第094次元 >>427第104次元 >>459第114次元 >>495
第095次元 >>431第105次元 >>467第115次元 >>499
第096次元 >>432第106次元 >>472第116次元 >>501
第097次元 >>433第107次元 >>475第117次元 >>502
第098次元 >>436第108次元 >>477第118次元 >>504
第099次元 >>444第109次元 >>478第119次元 >>507
第100次元 >>445第110次元 >>479第120次元 >>508
第121次元 >>509第131次元 >>544第141次元 >>558
第122次元 >>510第132次元 >>546第142次元 >>560
第123次元 >>511第133次元 >>547第143次元 >>563
第124次元 >>512第134次元 >>551第144次元 >>564
第125次元 >>520第135次元 >>552第145次元 >>565
第126次元 >>521第136次元 >>553第146次元 >>576
第127次元 >>528第137次元 >>554第147次元 >>590
第128次元 >>533第138次元 >>555第148次元 >>595
第129次元 >>534第139次元 >>556第149次元 >>608
第130次元 >>536第140次元 >>557第150次元 >>623
第151次元 >>631第161次元 >>683第171次元 >>759
第152次元 >>632第162次元 >>711第172次元 >>760
第153次元 >>633第163次元 >>719第173次元 >>762
第154次元 >>637第164次元 >>726第174次元 >>764
第155次元 >>643第165次元 >>739第175次元 >>766
第156次元 >>655第166次元 >>749第176次元 >>768
第157次元 >>659第167次元 >>753第177次元 >>769
第158次元 >>664第168次元 >>754第178次元 >>770
第159次元 >>665第169次元 >>755第179次元 >>771
第160次元 >>680第170次元 >>758第180次元 >>772
第181次元 >>773第191次元 >>788第201次元 >>813
第182次元 >>775第192次元 >>789第202次元 >>814
第183次元 >>776第193次元 >>792第203次元 >>826
第184次元 >>777第194次元 >>793第204次元 >>832
第185次元 >>778第195次元 >>794第205次元 >>835
第186次元 >>781第196次元 >>795第206次元 >>841
第187次元 >>782第197次元 >>798第207次元 >>853
第188次元 >>783第198次元 >>802第208次元 >>854
第189次元 >>784第199次元 >>803第209次元 >>855
第190次元 >>785第200次元 >>804第210次元 >>858
第211次元 >>862第221次元 >>883第231次元 >>897
第212次元 >>868第222次元 >>884第232次元 >>898
第213次元 >>873第223次元 >>888第233次元 >>901
第214次元 >>874第224次元 >>889第234次元 >>902
第215次元 >>875第225次元 >>890第235次元 >>903
第216次元 >>876第226次元 >>892第236次元 >>904
第217次元 >>877第227次元 >>893第237次元 >>905
第218次元 >>878第228次元 >>894第238次元 >>906
第219次元 >>879第229次元 >>895第239次元 >>907
第220次元 >>882第230次元 >>896第240次元 >>908
第241次元 >>909第251次元 >>929第261次元 >>955
第242次元 >>913第252次元 >>930第262次元 >>956
第243次元 >>914第253次元 >>933第263次元 >>957
第244次元 >>915第254次元 >>947第264次元 >>958
第245次元 >>916第255次元 >>948第265次元 >>959
第246次元 >>917第256次元 >>949第266次元 >>960
第247次元 >>918第257次元 >>951第267次元 >>961
第248次元 >>919第258次元 >>952第268次元 >>962
第249次元 >>921第259次元 >>953第269次元 >>963
第250次元 >>926第260次元 >>954第270次元 >>964
第271次元 >>965第281次元 >>977第291次元 >>988
第272次元 >>966第282次元 >>978第292次元 >>989
第273次元 >>967第283次元 >>979第293次元 >>990
第274次元 >>968第284次元 >>981第294次元 >>991
第275次元 >>969第285次元 >>982第295次元 >>992
第276次元 >>970第286次元 >>983第296次元 >>993
第277次元 >>973第287次元 >>984第297次元 >>994
第278次元 >>974第288次元 >>985第298次元 >>995
第279次元 >>975第289次元 >>986第299次元 >>996
第280次元 >>976第290次元 >>987第300次元 >>997
※第301次元〜は新スレにて連載予定
●おまけもの●
●資料集など
皆のプロフィール1 >>218
皆のプロフィール2 >>278
皆のプロフィール3 >>287
皆のプロフィール4 >>288
皆のプロフィール5 >>289
皆のプロフィール6 >>503
主な登場人物 >>852
さいじげテスト。 >>843
最強次元師!! について >>58
●番外編
キールアの想い >>41
メイド喫茶祭り① >>327
メイド喫茶祭り② >>331
メイド喫茶祭り③ >>341
友達の証① >>492
友達の証② >>493
友達の証③ >>494
疎外少年と次元少女① >>810
疎外少年と次元少女② >>811
疎外少年と次元少女③ >>812
蛇梅隊DE☆大集合!! >>829
E FIEDLA >>941
英雄と妖精 >>945
●外伝
第001時限 >>942
第002時限 >>943
第003時限 >>944
●キャラ絵(1人)
奏様が描いて下さったルイル >>116
奏様が描いて下さったティリ >>105
奏様が描いて下さったロク >>119
奏様が描いて下さったロク(舌出しVer.) >>185
奏様が描いて下さったロク(ポニテVer.) >>523
奏様が描いて下さったキールア >>127
奏様が描いて下さったアリル >>141
奏様が描いて下さったリリアン >>148
奏様が描いて下さったミル >>154
奏様が描いて下さったフィラ副班 >>162
奏様が描いて下さったレト >>168
奏様が描いて下さったレト(メイド服Ver.) >>329
奏様が描いて下さったガネスト >>304
奏様が描いて下さったガネスト(メイド服Ver.) >>318
奏様が描いて下さったアルア >>460
●キャラ絵(複数)
奏様が描いて下さったレト、ロク、キールア >>693
奏様が描いて下さったエン、ミル、リルダ >>737
☆奏様には毎度ご感謝しております!!
すごく似ていて、イメージ通りです
キャラの絵が分からない場合には奏様の絵を見て下されば納得します!!
これからも描き続けてほしいですね、是非とm((黙
●お知らせなど
* 2009 11/13 執筆開始
* 2013 09/01 執筆中断
* 2014 01/17 執筆再開
* 2014 10/19 別サイトにて再連載開始 >>980
* 2015 03/15 新スレ作成におけるお知らせ >>998
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- Re: 最強次元師!!【親スレに追記しました】 ( No.940 )
- 日時: 2013/10/20 21:19
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: kcbGQI7b)
>>シオンさん
こちらこそ初めまして!
わわ! そう言ってくださるとは恐縮です。
今は更新を中断していますが、またすぐに戻ってくる予定なので……お待ち頂ければと思います。
応援有難う御座います!
- Re: 最強次元師!!【親スレに追記しました】 ( No.941 )
- 日時: 2013/10/23 13:39
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: kcbGQI7b)
- 参照: 本編の更新ができないのでちょこっとサイドエピソード書きます。
えー。私も毎日小説が書けなくて薬切れみたいになっているので
ちょっとしたサイドエピソードを載せようかと思います。はい。
後々本編に関わってくるかなっていう程度のものです。
現段階ではふーんこんなお話あるんだくらいの気持ちで読んでいてくれればなと思います。
では。
『E FIEDLA』
いつからか彼は人間を嫌っていた。
もしかしたら、この世に産み落とされたその時から、そうだったのかもしれないが。
汚れきった、人を信用していないようなあの瞳で、人間を観察してきた。
「……だから嫌なんだよ」
街中が、戦火に呑まれていく。
紅い景色の中で、少年の泣き叫ぶような声も聞こえてくる。
焦げた人間が自分の足元に転がっているのに気がついた。
彼はそれを睨んだ。動かなくなった黒い塊は、ただぐったりと地面の上にあった。
この死んだ人の山が、一体何を生み出すというのだろう。
この業火の中で零れた涙は、その炎を掻き消す訳でもないのに。
「あ……あんた! 助けてくれ! み、味方なんだろう!?」
声が聞こえて振り返ると、そこには中年の男が何かを必死に叫んでいた。
彼に言っているのだろうか。彼は長い髪をふわりと翻して、彼と目を合わせた。
死んだような、淀みきった瞳で。
「味方……?」
「こっちにはもう水もねえ! どうか、ど、どうか……!」
「知らねーよ。俺には関係ねえ」
彼は男を相手にもせずに、ただ目的もなく歩き始めた。
好き好んで、こんな体に生まれてきた訳でもない。
好き好んで、こんなものを任されている訳でもない。
自分に感情がある事を疎ましく思う。それももう何度目であろうか。
枯れきった街を、小高い丘から眺めていた。
残ったのは、邪魔なほど積まれた人の塊ぐらいだろう。
焦げた匂いを風が運んできた。彼は目を細めた。
街の中心で、未だに人々は泣いていた。
酷く愚かだと、彼は思った。
自分にとって困る事があれば、阻止はする。
然し自分にとって問題のない事ならば、全て放ってきた。
彼は人間が嫌いだ。
弱いし、五月蝿いし、何より邪魔だ。
戦争を起こすのも、その戦争を非難するのも人間なのだ。
悪循環の中を、まるで泥沼の中を這うように生きる生き物なのだ。
その泥沼の中に、光る宝石があると信じて今日も泥を呑む。
彼はそういうのが嫌いだった。
何百年も経った。
彼は未だに人間が嫌いだった。
そんな彼は、自身も想像していなかった事態に陥る。
彼は恋をした。
綺麗な金の髪は、風に溶ける程滑らかであった。
真っ白い肌の上には傷も出来物もない。とても綺麗な肌だった。
ただ、彼が彼女に心を奪われた理由としては、それだけではなかった。
今まで外面が綺麗な女性には何人も会ってきた。
妖精とも謳われていた女性にも目が眩まず。
凍りきった、永遠に溶けることのない彼の心を掴める女性はいなかった。
はずだったのだ。
ただ千年経ったこの世界で。
彼はただ一人、彼女に恋をした。
そうして彼女と恋に落ちて、彼女と家族になった。
子供にも恵まれて、幸せだった。
人間が嫌いだった。でも今は違う。
大嫌いだったものを、今まで目を背けてきたものを、
今更になって、彼は愛し始めたのだ。
生まれた子供に、昔出逢ったとある男の名前をつけた。
正義を背に、英雄を名としていた、とある男の。
その男が誰だったのか、千年も経った後で漸く気づいた訳だが。
彼は幸せだった。
自分が愛した女性がたとえ、自ら死を選ぼうとも。
彼女は死んだ。
この世に、彼と愛し合った証を、もう一つ『××××』して。
彼は思い出した。
彼女と出逢うずっと前に、人間を酷く嫌っていた自分を。
彼は思い出した。
彼女と愛し合っていた頃の、幸せな日々を。
彼は、思い出した。
「‘‘負けんな‘‘……か。誰の言葉か知らんが、信じてみるよ————‘‘レトヴェール‘‘」
そうしてここから、漸く始まる。
運命に抗う、義兄妹の戦記。
***************************************
彼らの物語はここから始まります。
ネタバレなるすれすれです。怖いですねー。
もしかしたら察してしまった人もいるのでは、とヒヤヒヤしています。
それはそれで嬉しい気もしますね。
本編のデータが吹っ飛んだのでこういうものしか書けませんが、
少しずつ、皆さんに最強次元師の秘密を理解して頂ければと思います。
題名である『E FIEDLA』。これは今よりずっと後に意味が分かります。
頭の隅の方にね、置いておいて頂ければ嬉しいです。
今後も本編の更新まではまだまだ時間が長そうなので
色んな登場人物の、色々なところを皆様に知って頂きたい気持ちも兼ねて
こういう形で小説を執筆していこうと思います。
ではでは。
- Re: 最強次元師!!【外伝(!?)不定期更新中!!】 ( No.942 )
- 日時: 2013/10/30 21:42
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: kcbGQI7b)
- 参照: 本編の更新ができない代わりにちょこっとサイドエピソード書きます。
「最強次元師!! 外伝」
【蛇梅学園!!】
第001時限
「ち……こくだぁっ!!」
夏の暑さを引きずった風が、とある少女の長い髪の毛を揺らした。
彼女はパンを口に咥え片手にぺたんこなバッグを携えて懸命に道を駆けていた。
灰色のアスファルトが熱を発して、彼女の足の裏を焼くように太陽に照り出されている。
右目に謎の傷を負っている彼女は、ふと街角を横切ろうとして、
「うわぁッ!?」
ずでーん! と何かに衝突してしまい、そのままひっくり返ってしまった。
いてて、と頭を抑えながら彼女はむくっと立ち上がった。
ちらっと視界を開くと、そこには。
「……あ?」
よく見知った、義兄の顔があった。
*
「「遅れましたァーっ!!」」
響くチャイムを遮るように、勢いよくドアの開く音が鳴る。
その瞬間にクラス中がどっと笑いに満ちあふれた。
今朝の少女、ロクアンズ・エポールとその義兄レトヴェール・エポールは荒く呼吸を乱す。
そんな2人の姿を見たクラスメイトの下衆顔といったら、もう。
「おーレトヴェール、お前が遅刻とか珍しいな。寝坊か?」
「いえ原因はこのクズです」
「そうか」
「ちょっと待って!? まずコールド先生は何故あたしに触れない!?」
「とりあえず遅刻の理由を聞きたいんだが……どうだ? レト」
「俺が普通に起きて普通に登校してたらこのクズにぶつかりました」
「よし十分だ」
「不十分だよ!! ていうかこの不穏な会話何!!? ていうかレトあたしの事クズって言った!!?」
ロクアンズ、略してロクは獰猛な獣の如く2人に威嚇の姿勢を向けていた。
そんなことを気にもせずにレトヴェール、略してレトは冷淡に会話を進める。
コールド先生においてはロクの言葉に応じもしないご様子で。
「大体何でレトの遅刻は珍しいとか……」
「黙れ遅刻常習犯」
「いえ、あれはわざとじゃないんです分かって下さい先生」
「分かった。あとでロクには特別課題を与えてやろう」
「なにゆえ!?」
ロクは解せぬ、といった表情で驚いた。
「……んで、たかがぶつかった程度で何故遅刻する?」
「ロクがパンを一斤咥えてたからです」
「一斤!?」
「普通一枚じゃね!?」
「そこから既にアウトということか……」
「ちょ……! レトの不注意であたしのパンが潰れたんじゃんか!!」
「お前がパン如きに世紀末かのような絶望の叫び声を上げるからだろうが!!」
「如き!? パン一斤はあたしにとって心臓の一部ですよ!!?」
「知るかよ!! せめて人生の一部って言え!!」
朝からハードで意味の分からない兄妹喧嘩だなとクラスメイトは思った。
くすくすと、金髪の少女は堪えきれないという表情で笑っていた。
「分かった分かった……とにかく座れ。2学期早々暴れられちゃ困る」
「分かりました。では速やかに殺ります」
「殺るな。生かせ」
「先生!! 一時間目の授業はレトヴェールの抹殺研修にしましょう」
「は? 殺られる前に殺るし」
「じゃあその前に殺る」
「分かったじゃあその刹那に殺る」
「裏の裏を読んで先回りして更に殺る」
「うるせーよ!! 兄妹で殺り合うな!!! 外伝にまでグロっぽいの持ってくんな!!」
「「はーい」」
席の近い2人はいつも以上の剣幕で睨み合っていた。
夏休みが終わって初日からこのペースだと体力が保たない、と思う観衆であった。
「まあ夏休み終わって初日なわけだが……見た感じ皆大丈夫だな。
夏休みを引きずらんよーに、3週間後のテストも張り切って取り組むように! 以上!」
ガタガタガター、と椅子をしまって皆は気だるそうに挨拶をした。
ロクが色々と不満そうに席に座ると、ぽんと誰かに肩を叩かれた。
ぱっと、振り返る。
「おはようロク。朝から散々みたいだね?」
にこっと天使のように清く柔らかく微笑んだ彼女の名はキールア・シーホリー。
二つに結った金色の髪の毛は輝くようにすべすべとしていた。
大きな金色の瞳は、ロクの顔を覗き込む。
「キールアーっ! 聞いてよレトがねーっ!!」
「はいはい。でもロクも寝坊とかしちゃダメだよ?」
「はあーい……」
よしよし、とキールアは机に突っ伏したロクの頭を撫でた。
そんな彼女の優しい手に包まれていたロクは、ガツンときた背中の衝撃に驚いた。
「いだッ!?」
「ちょ、ロク大丈夫!?」
「……くっそお前のせいでこっちは新学期早々遅刻だよこんにゃろー」
「レト……まだ根に持って……ぐっ……」
「つうかお前のパン弁論に付き合ってたせいで遅れたんですよ? ええ?」
「まあまあ……そんくらいにしてあげなよレトー」
「キールアはロクに甘いんだよ。幼馴染だからって……」
「そんなことないよーっ! レトがロクに優しくないだけなんじゃないのー?」
「けっ! 言ってろ言ってろ」
「もうー……」
そう、この3人ロク、レト、キールアは幼い頃からの幼馴染。
何をするにも、何処へ行くにもいつも3人は一緒だった。
「ちっくしょレトのやろー……」
「ロクも抑えて抑えて。これじゃキリないって」
「そーだね……なんたって、今日から普通に寮生活に戻るし!」
「そうそう! 2学期は面白い行事もたくさんあるみたいだしね」
ロクとキールアが和気藹々とそんな話をしている時、レトも別の人物を会話を交わしていた。
紅い髪にバンダナを巻いた少年サボコロ・ミクシーと、
猫によく似た紺色の髪型をした小柄な少年エン・ターケルド。
彼らはいつもレトとつるんでいるメンバーだった。
「お前も遅刻とかすんだな! なあ優等生君?」
「茶化すな、つか全部ロクのせいだからねマジで」
「うむ……貴様も兄ならば回避できたのでは?」
「できるかよ……あんな妹と会話を交わしたが最後だ」
「ロクはひっでー言われようだなおい」
「ああいう奴なんだよ……まともじゃねえ」
そう言ったあと、レトはちらっと教室を見回した。
「がネストがネストーっ! 次はこの服ーっ!♪」
「うわぁぁぁっ!! い、いやそれはメイド服ですよルイルーッ!?」
「っ! ……ちょっと、勝手にぶつからないでくれる?」
「ああ? わりいな、小さすぎて分かんなかったわ」
「……何ですって」
「あわわ……み、皆さん……! 教室に戻りましょうよう……っ!」
「げっ!? なんでそんなスカート長いのセルナ!? もう2学期だよ!!?」
「み、ミルさんが短すぎるんですよーっ」
「えー……普通じゃん?」
レトは、まあ、と付け加えて、
「この学園にまともな奴はいないと思うけどな……」
そう、一人で呟いた。
第一、とまた一言加えた。
「お前らクラス違うだろ!? 何でいんだよ!!」
「へ? だってロクちゃんとレトちゃんが喧嘩してるって聞いたからーっ♪」
「ぼ……僕はルイルの付き添いです……」
「そういや何でだっけ?」
「……アホ」
「ぼ、僕は皆さんが1組に走っていくのを見て、その……止めに……」
「あたしはもちろんレトがいるからだよーっ!!」
「私は、その……ミルさんに、拉致されました……」
平気で他クラスに乗り込んできて惨事を巻き起こし兼ねない連中だ。
レトは一瞬で察した。
(うん……分かってた。何も変わらないんだってことくらい)
本編と何が違うのだろうか。
強いて言うなら舞台が戦地から学園になっただけなのだ。
最近の本編では見られない蛇梅隊+αの滅茶苦茶なコメディストーリー。
こんな感じで始まります。
- Re: 最強次元師!!【外伝(!?)不定期更新中!!】 ( No.943 )
- 日時: 2013/11/01 23:57
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: kcbGQI7b)
- 参照: 本編の更新ができない代わりにちょこっとサイドエピソード書きます。
第002時限 「いざ男子寮へ」
3週間後に控えた定期テスト。
何で新学期早々そんなものをやるかというと、理由は単純である。
さっさとテストを終わらせて、文化祭、つまり‘‘蛇梅祭‘‘を大いに盛り上げる為。
この学園は成績よりも、より楽しく学園生活を送ることを目的としている。
正直テストとかいうものはこの学園にとってお飾りに過ぎない。
お祭り事を普通以上に盛大に盛り上げる為にできるだけ時間をかけるのだ。
それで早速3週間後にテストが控えているわけである。
「テストやだなー」
「いいじゃん、ロク頭良いしっ!」
「ま、まあ否定とかはしないけど……」
「浮かれていると赤点を取るぞ、ロクアンズ」
「そうそう赤点とかね……ってゴッド!? うっわびっくりしたァ!」
「クラスメイトにその対応はないだろう……」
長い黒髪を一つに縛りロクの背後に現れた彼は、ゴッド。
もちろんあの神族のゴッド様である。
「まあそんなこと言ったら、ゴッドも危ないけどね☆」
「黙れデスニー。そして僕の視界から消えてくれ」
「え〜? 背後にいるんであって、別に視界には入ってないよ?」
「分かったそのまま消えろ」
「それはムリかな☆」
ゴスッ!! という鈍い音がデスニー耳に届いた時にはもう遅かった。
彼は脇腹を抑えて悶え苦しむ。
飄々とした性格で、面白がってゴッドについてまわっている彼の名はデスニー。
運命の神と謳われてはいるが、彼の性格上そんな物騒なものでもない。
肩で跳ねた髪型と一部交差した前髪が特徴的。
この2人もまた1組に属しているクラスメイトだ。
「あの2人って何だかんだで仲良いよねっ」
「そ、そうかな……結構、バイオレンスな……」
「ま、まあそこは無視して……ね?」
教室を見渡すロク。
夏休みが終わったというのにこのナチュラルハイな雰囲気は変わらない。
序でに通常ではあり得ない神族と人族の交流の様子が見て取れる。
実に微笑ましいなあ、と勝手に一人で納得した。
*
「てなわけで勉強を教えて下さい」
「ふざけんな死ね」
「何で!?」
ここは男子寮の一室、レトヴェールと双斬の部屋。
もう一度言うが、ここは男子寮である。
もちろん女子禁制であることは前提条件な訳だが。
何故だがその部屋にロクは当然の如く居座っていた。
「だって前回のテストお前学年2位だったじゃん」
「まあね」
「キメ顔すんな帰れ」
「何で」
「ここ男子寮な」
「おう」
「分かってんなら帰れっての……!」
ピリピリと両者の間で火花は散る一方。
その隅で双斬はベッドの上で転がっていた。
バレたら停学どころではない。と、思う。
「良いんじゃないのー? バレないと思うし?」
「アホ。そういう問題じゃねえ」
「まあまあ兄妹なんだから見逃して?」
「帰れ。嫌なら自室に戻れ」
「同じだよそれ」
大体なあ、とレトがいいかけたその時。
ガチャと、何だか部屋のドアが開くような音が鳴った。
「こ、こんばんわー……」
見回りの先生かとドキッとした3人が咄嗟に振り向くと、
そこにいたのは、先生どころか男子ですらなかった。
「ロクが拉致されたって聞いたんだけど……ってあれ? 3人ともどうしたの?」
「お前らは何でそうナチュラルに男子寮に入ってくるの……?」
「ここまでくると結構勇者だよね……」
「キールア! 勉強教えて!」
「お前ら相部屋だろ!! 自室に帰れ今すぐに!!!」
キールアは口元に指を立てて唇に押し当てた。
静かに、という合図という事が一瞬にして分かる。
「つうか拉致じゃねえよ。それは問題だろ」
「え、そうなの? まあそれは良いとして」
「いいいや良くねえよ!!?」
「ほらロク、早く帰るよ? レトも双斬もエンもサボコロも迷惑してるよ?」
「ちょっと待て」
「そうだぜ、お前だけぬけがけは許さんぞロク!」
「貴様は確か前回学年2位だろう。何を教わることがある」
「そうそうレトも暇じゃないしって……って、レト?」
一人だけこの場で状況についていけない男がいた。
彼はぷるぷると腕を震わせた。
「だから何でお前らはここに集まってくんだよ————ッ!!!!」
彼は思いのままに力強くそう叫んだ。
その怒号が、悲劇を呼ぶとも知らずに。
『……ん? 何だレトヴェール、何かあったのか?』
この声は、と皆して息を呑む。
1組の担任、コールド先生の声に間違いはないだろう。
一瞬にして全身から汗が吹き出していくのがわかった。
「ど、どどどどどうする!?」
「ちょ、ロクもうちょっと小声でしゃべれ!」
「俺たちはどうにかできるけどロクとキールアはまずいぞ!?」
「とにかく2人ともどこかへ隠れろ!」
あわわわ、と慌てていると、ドアノブに手をかける音が5人の心を氷づけにした。
連帯責任でここにいる(寝ている双斬を除く)全員に処分が下る。
何としてもそれだけは避けたい一同は何故か全員で次元の扉を開くような感覚に目覚めた。
そう、ただ一人を除いては。
「もう遅いから騒ぐのはやめ……」
「どりゃぁぁぁぁぁッ!!!」
「————うぐぁぁぁッ!?」
「って何やってんのロクーッ!!!?」
刹那。ただ一人を除く4人は絶望の淵に追いやられる未来を見た。
ロクは部屋に足を踏み入れたコールド先生を見事なままにノックアウト。
繰り出された飛び蹴りが華麗に決まった、とふっとロクは口元を歪ませた。
もちろんの如く頭に拳骨が下る。
「驚きの痛さッ!!」
「うるせえ!! お前のせいで退学になるかもしんねーんだぞおい!!」
「うっわ派手にやったなー……俺もやりゃ良かったな」
「バカは一人で十分だこのバカ」
「ああん?」
「やっちゃったねー……」
いたた……とロクは頭を抑えてうずくまっていた。
非常にまずい事態に陥ってしまった5人。
まず男子寮に女子が忍び込んできていること。
それを隠蔽しようと見回りに来たコールド先生の腹に見事な飛び蹴りをお見舞い。
挙句ロクに反省の色は見えない。
「ちぇー……殺られる前に殺るっていうことわざまであるのに……」
「ねえよ。勝手に常用的なものにすんな」
「それよかどーすんだよ? 先生泡吹いてんぞ」
「ふむ……やはりこの隙に逃げるべきでは?」
「まあそれが無難だね……じゃあ飛び蹴りはサボコロのせいにして」
「今キールアがさらっと俺を犠牲にしなかったか?」
「と、とりあえずぅ……」
「「退散っ!!」」
ロクとキールアが、ばっと窓に向かって駆け出した。
窓の鍵に手をかけて、いざ外へ出ようと夜風を浴びたとき。
突然背後から、びゅんと風を切る音が2人を捕らえた。
「……ん?」
それは紛れもない、‘‘鎖‘‘な訳だが。
「とりあえず……————覚悟は出来てるんだよな」
「「「「「はい」」」」」
それは般若のような顔が、5人を素直な人間(神含む)へと変えた瞬間だった。
- Re: 最強次元師!!【外伝(!?)不定期更新中!!】 ( No.944 )
- 日時: 2013/11/15 23:57
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: Q3zV8Sch)
- 参照: 本編の更新ができない代わりにちょこっとサイドエピソード書きます。
第003時限 「免罪かけて、本気で闘り合え」
「……よーし、これで全員揃ったな」
ざわめく会場もとい蛇梅学園体育館の中。
その中央で、先日問題を起こした5人が一列に並ばされていた。
目の前にいるコールド先生の剣幕は実に厳しいもので、5人は睨まれているような気さえした。
「先生!」
「何だロクアンズ」
「お腹空いたんで食堂行ってきていいですか!」
「ダメだ」
「ど、どうして!?」
「食堂はもう閉まって……ってお前何の為にここにいると思ってるんだ」
「あれ、何だっけ」
「今すぐ縛るぞおい」
どっと笑う観衆。
何を隠そうここにいるのはあの5人と先生だけでなく、殆ど全校生徒。
体育館はほぼ満員で、5人の公開処刑を見ようとわざわざ放課後に集まってきたのである。
その中には当然のように教職員も混ざっている。
「とりあえず、お前ら5人には今から昨日の反省としてある課題をやってもらう!」
「ある課題ぃー?」
「レポートの提出とか?」
「んな回りくどいことするか。ただの‘‘抜き打ちテスト‘‘だよ」
「「「「「抜き打ちテスト?」」」」」
ごほん、と一つ咳を入れた。
彼は続ける。
「若干1名を除いてお前らは成績優秀者ばかりだ。お前らにとっては、
ペーパーテストとか、レポート提出とかに大した意味はないのだろう」
「待て、若干1名ってまさか俺のこと……!?」
「そこで、お前たちにチャンスをやろうと思ったわけだが……」
「え……チャンス、ですか?」
「5人の中で、たった1人だけ処分を免除してやる」
5人はざわついた。
それどころか観衆も。
「う、うそ……!」
「ただし、俺が今からいう課題に合格したら、だ」
「それはどんな内容なんだ?」
「それは——————‘‘何でもありのサバイバルゲーム‘‘だ」
5人は一斉にどよめいたが、それと同時に理解した。
この学園で、この物語で、サバイバルゲームといったらあれしかない、と。
「俺が求めるのは別にお前らの成績や態度じゃない。お前らの次元師としての素質だ。
学園内では基本元力行使は禁止されている。それ故に今からは思う存分暴れろ。
————————最後に生き残ったたった1人だけが、処分免除を手にする」
この場には成績優秀者ばかりが集っていた。
それは学力的な面でもありながら、且つ技術的な面でもある。
本校では次元の行使は大変危険な為原則禁止になっている。
然しこの5人は学園内技術力テストでも上位10位に入る程の実力を持っていた。
「今からルール説明するからよく聞いておけよ。おいこらロク寝るな。
この後お前らには科学部が開発した異空間に入ってもらう。
そこでは元力の性質と、その攻撃力だけが変わる。
相手に次元技をしかけダメージを与えるのが普通だが、今回そこに痛みは伴わない。が、
代わりに自分の元力が削られる。つまり与えた元力分相手の元力を削ることができる。
数値に表し、元力が500以下になった者から強制退場。失格だ。
最後まで持ち前の元力をキープした者が勝利する。……これで説明は以上だ。
何か不明な点はあるか?」
「ふむふむ……よくわかんないけど、とりまオーケー!」
「つまり自分の元力と相手の元力を計算しながら戦うのか……」
「自分が与えた分ってことは、それと同時に自分の元力もなくなるから……」
「個人で戦い抜くには厳しいのか……? いや、それは相手の元力量によるか……」
「難しく考えてたらキリがねーよ! さっさと始めよーぜ!!」
(各々思うところがある、か……ま、じっくりと悩めよ……?)
2名ほど戦闘準備満タンの様子ではあるが、他3名は理解に苦しんでいた。
さあこの試合、どういった展開を迎えるか。
よく考えた者が勝ち残るか。
元力に自信のある者が勝ち残るか。
5人は、いざ異空間システムの中へ。
「ねえ……ロク」
ちょんちょん、とキールアは小声でロクの肩を叩いて彼女を呼び止めた。
くるんと回ったロクはキールアに耳を傾ける。
「ん……何?」
「あたしが思うに、多分皆、ロクに勝たせてくれると思うよ?」
「へ? な、何で?」
「この中で一番処分が重たいのロクだし、皆そこまで鬼じゃないしっ」
ちらっと、ロクは男子勢の方へ顔を向けた。
ひそひそと何かを話している様子で、度々レトがこちらに目線を配っている。
これは、とロクもぱっと顔を元に戻した。
「ほ、ホントかな〜?」
「大丈夫だって! 皆を信じよ?」
ね? とキールアに半ば無理やり納得させられたロク。
彼女もうん、と首を小さく縦に振った。
いよいよ始まる。
「お前ら、準備良いかー?」
「おい、ロク」
コールド先生が声を張り上げた直後、レトは小声でロクを呼び止めた。
さりげなくロクはレトに目配りをした。
「な、何?」
「さっきあいつらと話あったんだけど、お前のこと————」
「うん」
「————————全力でぶっ潰すことに決めたから」
「うん————んぇっ!?」
「よし————試合開始だ!!!」
「「「次元の扉————————発動!!!!」」」
「ち、ちょちょちょーッ!!?」
突然のことすぎてロクの思考回路は現状についていけなくなった。
真顔且つ冷徹な口調で義兄の口から放たれた死刑執行宣言。
「八斬切りィィ——!!」
「うわァっ!! ま、ちょ、待ってってば!!!」
「隙なんか与えてたまるかこの問題児代表!!!」
「それは酷い!!」
「ほぼお前のせいで俺たちまで被害被ったんだぞ!?」
「……俺たちは別としても、レトはとばっちりもいいところだ」
「ああ、ホントにな。ということでさっさと投降しろオラ」
変な男の友情が陣を成す。
まあ、無理もないと言い切れるのだろう。
昨夜の一件は9割方ロクのせいであるが故。
義兄のレトに至っては巻き添えも同然。
この怒りを如何で発散しようかと今正にロクに殺意を向けている訳だが。
こればかりは本当にどうしようもないと観衆も思っていた。
(いや、確かに元力の問題的にもそうするのが良いんだと思うん、だけど……)
「どうしたロク? 今更逃げようとかバカみたいなこと考えてないよな?」
「いくらロクでもそれはねーよ!」
「すまんが今はレトの見方をさせてもらおう……流石に報われん」
(な、何だろう……この、理不尽な感じ……)
そんなことをうだうだと考えている隙もなかった。
バッ、とロクも咄嗟に振り返る。
「十字斬りィ——!!」
「ぅ、く……雷撃ーッ!!!」
「もらったァァ————!!」
頭上には、掌を地に向けたサボコロがいた。
左手にはエンがいる。弓を構えた彼も交わしてサボコロの炎を掻き消すか。
そんなことを、刹那の間で必死に考察することなど無理も同じ。
まずい、と直感的にロクはそう感じた。
その時。
「————戲旋風!!!」
放たれた弓が、頭上から舞い降りる炎が、一瞬にして無に還った。
くるくると器用に槍を振るう彼女は、焦った表情でそこに立っていた。
ふう、とため息を吐く。
「何だかもう凄い展開だけど——————私も忘れないでよね!」
火花は散る。
繰り返される次元技の応酬が、今正に5人の本気を導き出す時。
本編以外でこんな展開を築いていいものか。
試合に夢中の5人以外の観衆は、心の中でそっと呟いた。
仲間同士の醜い罪の擦りつけ合いは、まだ始まったばかりであった。
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