コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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最強次元師!!【※新スレ作成におけるお知らせ有り】
日時: 2015/03/15 09:40
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: u/FYQltH)
参照: http://ncode.syosetu.com/n5050ci/

 運命に抗う、義兄妹の戦記。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 基本毎週日曜日に更新!


 ※追記

 実は、本作を一から書き直そうと思いまして別サイト様にて“完全版”を再連載し始めました。
 やりたい話が多くて一度断念してましたが、やっぱり優先しようと思ってもう一度記載致します。
 ご興味のある方はどうぞ! 上記のURLで飛べます*
 とってものんびりと、更新する予定です。


 Twitterの垢をつくってみました→@shiroito04
 イラストとか宣伝とかを呟いてます!



 ※注意事項

 ・荒らし・中傷はお控え下さい。
 ・チェンメなんかもお断りしてます。



●目次

prologue >>001
第001次元 >>002第011次元 >>012第021次元 >>048
第002次元 >>003第012次元 >>013第022次元 >>050
第003次元 >>004第013次元 >>019第023次元 >>052 
第004次元 >>005第014次元 >>020第024次元 >>055
第005次元 >>006第015次元 >>021第025次元 >>059
第006次元 >>007第016次元 >>025第026次元 >>060
第007次元 >>008第017次元 >>027第027次元 >>063
第008次元 >>009第018次元 >>030第028次元 >>065
第009次元 >>010第019次元 >>044第029次元 >>070
第010次元 >>011第020次元 >>046第030次元 >>071

第031次元 >>072第041次元 >>146第051次元 >>224 
第032次元 >>077第042次元 >>169第052次元 >>230
第033次元 >>081第043次元 >>176第053次元 >>234
第034次元 >>082第044次元 >>179第054次元 >>241
第035次元 >>090第045次元 >>180第055次元 >>245
第036次元 >>097第046次元 >>189第056次元 >>260
第037次元 >>104第047次元 >>191第057次元 >>262
第038次元 >>108第048次元 >>203第058次元 >>264
第039次元 >>109第049次元 >>209第059次元 >>268
第040次元 >>138第050次元 >>216第060次元 >>274

第061次元 >>298第071次元 >>359第081次元 >>385
第062次元 >>300第072次元 >>361第082次元 >>388
第063次元 >>308第073次元 >>365第083次元 >>391
第064次元 >>337第074次元 >>369第084次元 >>393
第065次元 >>338第075次元 >>370第085次元 >>399
第066次元 >>339第076次元 >>371第086次元 >>402
第067次元 >>345第077次元 >>377第087次元 >>403
第068次元 >>346第078次元 >>378第088次元 >>413
第069次元 >>352第079次元 >>380第089次元 >>414
第070次元 >>353第080次元 >>383第090次元 >>417

第091次元 >>420第101次元 >>448第111次元 >>480
第092次元 >>421第102次元 >>450第112次元 >>484
第093次元 >>422第103次元 >>458第113次元 >>489
第094次元 >>427第104次元 >>459第114次元 >>495
第095次元 >>431第105次元 >>467第115次元 >>499
第096次元 >>432第106次元 >>472第116次元 >>501
第097次元 >>433第107次元 >>475第117次元 >>502
第098次元 >>436第108次元 >>477第118次元 >>504
第099次元 >>444第109次元 >>478第119次元 >>507
第100次元 >>445第110次元 >>479第120次元 >>508

第121次元 >>509第131次元 >>544第141次元 >>558
第122次元 >>510第132次元 >>546第142次元 >>560
第123次元 >>511第133次元 >>547第143次元 >>563
第124次元 >>512第134次元 >>551第144次元 >>564
第125次元 >>520第135次元 >>552第145次元 >>565
第126次元 >>521第136次元 >>553第146次元 >>576
第127次元 >>528第137次元 >>554第147次元 >>590
第128次元 >>533第138次元 >>555第148次元 >>595
第129次元 >>534第139次元 >>556第149次元 >>608
第130次元 >>536第140次元 >>557第150次元 >>623

第151次元 >>631第161次元 >>683第171次元 >>759
第152次元 >>632第162次元 >>711第172次元 >>760
第153次元 >>633第163次元 >>719第173次元 >>762
第154次元 >>637第164次元 >>726第174次元 >>764
第155次元 >>643第165次元 >>739第175次元 >>766
第156次元 >>655第166次元 >>749第176次元 >>768
第157次元 >>659第167次元 >>753第177次元 >>769
第158次元 >>664第168次元 >>754第178次元 >>770
第159次元 >>665第169次元 >>755第179次元 >>771
第160次元 >>680第170次元 >>758第180次元 >>772

第181次元 >>773第191次元 >>788第201次元 >>813
第182次元 >>775第192次元 >>789第202次元 >>814
第183次元 >>776第193次元 >>792第203次元 >>826
第184次元 >>777第194次元 >>793第204次元 >>832
第185次元 >>778第195次元 >>794第205次元 >>835
第186次元 >>781第196次元 >>795第206次元 >>841
第187次元 >>782第197次元 >>798第207次元 >>853
第188次元 >>783第198次元 >>802第208次元 >>854
第189次元 >>784第199次元 >>803第209次元 >>855
第190次元 >>785第200次元 >>804第210次元 >>858

第211次元 >>862第221次元 >>883第231次元 >>897
第212次元 >>868第222次元 >>884第232次元 >>898
第213次元 >>873第223次元 >>888第233次元 >>901
第214次元 >>874第224次元 >>889第234次元 >>902
第215次元 >>875第225次元 >>890第235次元 >>903
第216次元 >>876第226次元 >>892第236次元 >>904
第217次元 >>877第227次元 >>893第237次元 >>905
第218次元 >>878第228次元 >>894第238次元 >>906
第219次元 >>879第229次元 >>895第239次元 >>907
第220次元 >>882第230次元 >>896第240次元 >>908

第241次元 >>909第251次元 >>929第261次元 >>955
第242次元 >>913第252次元 >>930第262次元 >>956
第243次元 >>914第253次元 >>933第263次元 >>957
第244次元 >>915第254次元 >>947第264次元 >>958
第245次元 >>916第255次元 >>948第265次元 >>959
第246次元 >>917第256次元 >>949第266次元 >>960
第247次元 >>918第257次元 >>951第267次元 >>961
第248次元 >>919第258次元 >>952第268次元 >>962
第249次元 >>921第259次元 >>953第269次元 >>963
第250次元 >>926第260次元 >>954第270次元 >>964

第271次元 >>965第281次元 >>977第291次元 >>988
第272次元 >>966第282次元 >>978第292次元 >>989
第273次元 >>967第283次元 >>979第293次元 >>990
第274次元 >>968第284次元 >>981第294次元 >>991
第275次元 >>969第285次元 >>982第295次元 >>992
第276次元 >>970第286次元 >>983第296次元 >>993
第277次元 >>973第287次元 >>984第297次元 >>994
第278次元 >>974第288次元 >>985第298次元 >>995
第279次元 >>975第289次元 >>986第299次元 >>996
第280次元 >>976第290次元 >>987第300次元 >>997

※第301次元〜は新スレにて連載予定


       ●おまけもの●

●資料集など
皆のプロフィール1 >>218
皆のプロフィール2 >>278
皆のプロフィール3 >>287
皆のプロフィール4 >>288
皆のプロフィール5 >>289
皆のプロフィール6 >>503
主な登場人物 >>852
さいじげテスト。 >>843
最強次元師!! について >>58

●番外編 
キールアの想い >>41
メイド喫茶祭り① >>327
メイド喫茶祭り② >>331
メイド喫茶祭り③ >>341
友達の証① >>492
友達の証② >>493
友達の証③ >>494
疎外少年と次元少女① >>810
疎外少年と次元少女② >>811
疎外少年と次元少女③ >>812
蛇梅隊DE☆大集合!! >>829
E FIEDLA >>941
英雄と妖精 >>945

 
●外伝
第001時限 >>942
第002時限 >>943
第003時限 >>944


●キャラ絵(1人)
奏様が描いて下さったルイル >>116
奏様が描いて下さったティリ >>105
奏様が描いて下さったロク >>119
奏様が描いて下さったロク(舌出しVer.) >>185
奏様が描いて下さったロク(ポニテVer.) >>523
奏様が描いて下さったキールア >>127
奏様が描いて下さったアリル >>141
奏様が描いて下さったリリアン >>148
奏様が描いて下さったミル >>154
奏様が描いて下さったフィラ副班 >>162
奏様が描いて下さったレト >>168
奏様が描いて下さったレト(メイド服Ver.) >>329
奏様が描いて下さったガネスト >>304 
奏様が描いて下さったガネスト(メイド服Ver.) >>318
奏様が描いて下さったアルア >>460

●キャラ絵(複数) 
奏様が描いて下さったレト、ロク、キールア >>693
奏様が描いて下さったエン、ミル、リルダ >>737

☆奏様には毎度ご感謝しております!!
 すごく似ていて、イメージ通りです
 キャラの絵が分からない場合には奏様の絵を見て下されば納得します!!
 これからも描き続けてほしいですね、是非とm((黙


●お知らせなど

* 2009 11/13 執筆開始
* 2013 09/01 執筆中断
* 2014 01/17 執筆再開
* 2014 10/19 別サイトにて再連載開始 >>980
* 2015 03/15 新スレ作成におけるお知らせ >>998

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Re: 最強次元師!! ( No.895 )
日時: 2013/03/02 10:22
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: 2DX70hz7)

 第229次元 色を重ねて

 次元技の効果には、2つある。
 1つ目は、瞬間効果。
 一般的な次元技はこれに準じ、一瞬の内に効果を終える。
 例えば雷撃や八斬切りなどがこれに当たる。
 相手に攻撃を与えるのが瞬間効果である。

 そして2つ目が、継続効果。 
 この効果を持つ次元技は800以上ある中でほんの一握りである。
 それは相手事態に効果を与える。そう、自分の強化ではなく、相手への罠。
 武器型次元技はあまりこれを持たず、魔法型には時々見かける程度の代物。
 つまりそれはとても希少価値で、持つ者はそういないとか。
 
 自分への効果と、相手への効果。
 それが一瞬と継続の違いである。
 
 そして今レトヴェールの目の前に映っているのがそれだった。
 然し継続効果の次元技と、瞬間効果の次元技。
 両方の種類を、そして重複して使うという事をテシルはやっていた。
 彼は尚、清清しい表情で立っているというのに。

 (化けもんかよ……あの男……)

 いや、多分彼だけではない。
 この後待ち受けている残りの2人と、片割れのセシルもまた、重複次元の発動が可能な筈。
 次元師もここまで来ると、化け物に見えてくるのだろう。
 レトヴェールは、少しだけ笑う。
 
 然しレトがそうこう考えている間に、エンの体には次元技たるものが突き刺さっていた。

 「ぐ……ッ!!!」

 弓を握っている腕に、力が入った。
 セシルがぶんと投げた石のようなものが、エンの体を引き裂く。
 その石は地面に突き刺さり、またどろりと溶けていく。
 そう、エンの体に色を残して。

 「……ッ!!?」

 エンの腕、足、顔に。
 青い斑点が、こびりつく。

 「人間が持つ不の感情……」
 「……!?」
 「知って、いますか?」

 セシルは、器用に筆をくるくると回しながら、そう問う。
 エンは首を動かす事もなく、また弓を構えなおした。
 が、その途端。

 「——————ッい!!!?」

 握っていた弓が、手から滑り落ちた。

 「“苦”、“疲”、“哀”——————そして、“無”」

 「……ぁ、う……、ぐ……ぅ……ッ!!」
 
 「これは絵を描く上で大事なのですが……貴方の腕、今何色ですか?」

 エンは、霞んだ視界の中で、はっきりと認識する。
 青色。そう、それは空を連想させる綺麗な青だった。

 「“青色”は寒色。冷たい、寒い、悲しいなどといった“不”の色です」
 「……ッ!!」
 「つまり貴方は今——————そういった不の感情の中にいるのです」
 「……か、ら……ど、し……た……ァっ」
 「分かりませんか? さっきの次元技は、色によって感情を与える次元技」
 「……」
 「青の色は、さっきあげた4つの中の一つ—————“苦”を意味するのです」

 “情色”。
 先程テシルが繰り出した、感情の次元技。
 これは色によって相手に精神的なダメージを負わせる技である。
 人間の感情の数だけ、色がある。
 そのうち、あの綺麗で美しい青は“苦しみ”の色。
 それも“疲”、“疲れる”は青緑、
 “哀”、“哀しみ”は水色、そして“無”の“無気力”は紫色で表す事ができる。
 色によって沢山の感情を、心の痛みを、相手に負わせる。
 それが“継続効果”の次元技、“情色”である。
 
 (苦、しい……どこも痛くはないのに……く、苦……ッ!!!!)
 
 膝が、がくんと音を鳴らして地面に這い着く。
 エンは胸を抑えたまま、呼吸を乱したまま。
 唯苦しみに、耐えているまま。

 「ふふ……さぁーて、次元師の根本的な強さを、崩すとしましょうか?」
 
 セシルの腕が、器用に動く。
 描かれた黒い輪郭に、青、青緑、水色、紫といった、寒色の色が加色されていく。
 その色は酷く美しく、エンの周りを取り囲む。
 セシルは、そっと目を細めた。

 「さぁ——————死になさいッ!!!!」

 彼女が、筆を大きく振り下ろす。
 それに応えるように、浮かんだ色つきの欠片達はエンの体目掛けて放たれた。

 「————————!!!?」

 沢山の色が、感情が、エンの体と心に突き刺さる。
 然し彼女は一発では終わらせない。
 第二軍、第三軍と、無数の石を彼の体に向けて放っていく。
 エンは声を出す事もなく、のた打ち回った。

 「ふふふ……ふふ……今すぐお友達の許へ送ってあげますからね?」

 エンの体中には、無数の色が浮かび上がる。
 それは青くどす黒く、醜く非道な色である。
 美しくもない色の調和に塗れた彼は、立ち上がらない。

 ————それでも。


 「————————ッ!!!!」

 
 彼の口から声は漏れない。
 あれだけ真っ赤な血が流れ出ているのに。

 彼の体はもう動かない。
 それでもあの真っ青な腕だけは、動いた。


 彼の瞳から————————闘志の色は消えない。
 


 「————————真閃ッ!!!!!!」


 
 漸く、声が響いた瞬間だった。


 
 「「————————ッ!!!?」」


 絵の具に塗れても。
 どれだけ苦しく疲れ果て哀しく気力が生まれなくても。
 
 彼の魂に染み付いた——————紅き少年の声は消えない。
 
 鮮血が散る。その白い髪に、赤い色が付着する。
 彼の指の力は、抜けない。
 
 不の感情を表さない。
 そんな彼の蒼い眼光が——————瞬く。

 「なん、で……—————っ!!!?」

 セシルの脇腹が、血に、痛みに塗れる。 
 口から零れた言葉が、液体が、全て嘘のように吐き出される。
 それでも彼女は尚、筆を振り回す。

 「み、……認めない————————ッ!!!!」

 黒い輪郭、青い色。
 彼女が筆に力を入れる、重心が、ほんの少し前に傾く。
 色のついた欠片が、動き出す。


 その時。



 「——————え」


 
 自分の頭上遥か高くまで伸びていた絵の具の滝が、
 一瞬にして、真っ赤な色に照らし出される。
 エンの頭上にあった欠片が、溶けたように、優しく降り注いだ。
 轟と鳴った。妙な熱さが、自分の横を過ぎる。

 「……ったくよぉ」


 紅い少年は、ゆっくりと歩く。


 「——————————“2人で勝つ”、そうだろエン!!!!」


 元気の良い、炎を連想させる紅い髪が揺れる。
 今この瞬間、届くはずのない声が轟く。
 エンは、炎の中で笑う彼を見て、自分も同じように、優しく笑った。

 「やれるよな、エン」
 「……俺を、誰だと思っているんだ」
 
 エンの体にこびり付いた色が、消えていく。
 紅い彼、サボコロは、にっと笑った。

 (そ、んな……そんな……ありえない……ッ!!!!)

 セシルの頬を伝う汗が、ぴちゃりと落ちる。
 その時、2人の少年が、ゆっくりとこちらに振り向く。
 その迷いのない眼差しが、決意が、セシルに突き刺さる。
  
 「心配かけて悪かったな、エン」
 「……端から心配などしていない。タフだけが取り得だからな、貴様は」
 「んだとゴラァ!!! もういっぺん言えやァ!!!」 
 「何だ? 死者も同然だろう?」
 「……けっ! あーあ、助けてやるんじゃなかったぜ」

 またしても2人の間に口喧嘩が生まれる。
 でもそこに、憎しみの色は存在しない。
 サボコロは、自分の頬を掻いてぶつぶつ何かを呟いていて。
 エンはそんな彼を見て、もう一度笑う。 
  

 「ふっ……今度こそ、2人でだな」

 「……ああ——————今までの借り全部返すぜ!!!!」


 ドクン——————と。
 
 2人の“心”が、“色”が——————————確かに重なり合う音がした。

Re: 最強次元師!! ( No.896 )
日時: 2014/08/31 22:57
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: Va4IJVQE)

 第230次元 その矢に全ての力を

 地面には、どろどろに溶けた絵の具水溜りのようになっていた。
 沢山の色が、元あった本来の色を塗り潰す。
 そんな中で、紅く蒼い少年達が、力強く立っていた。
 片方は殆ど瀕死状態に近いにも関わらず、笑ってそこにいた。 
 いつも彼がしていたバンダナも、遠くで転がっている。
 
 「……う、して……」
 「……?」
 「貴方はもう……立ち上がる、事も……できないはず……」 
 「……あぁ?」
 「それでも尚立ち上がるのは……何故ですか?」

 セシルの表情から、余裕の色が消えた。
 笑いもしない彼女は、震える腕を抑えた。

 「約束だからに、決まってんだろ?」
 「……っ?」
 「“2人”で勝つ、ってなッ!!」

 セシルの後ろでは、テシルが腕を抑えて膝をついていた。
 セシルに合わせて次元技を発動し続けていた彼。
 その体力の消費量は、半端ではない筈。 
 彼は揺れる体を必死に起こして、立ってみせた。
 セシルは、彼女は、ふらりと体を動かす。

 「ここまで追い込まれたのは……初めてです」
 「……そーかい」
 「だから————————だからこそ!!!」

 セシルの瞳に、もう一度色が戻る。
 その色は、感情でいうと怒りの色に近かった。

 「絶対に——————勝ってみせますッ!!!!」

 冷静な彼女の口から怒号が解き放たれた瞬間。
 彼女は筆を回し、輪郭を描き、テシルが色を加えた瞬間に2人に投げつけた。 
 初めの方にやっていた、描かれたナイフの雨。
 然し先程と全然違う速さと威力を誇るそれは——————サボコロ達の許へ向かった。

 「炎撃——————ッ!!!」

 サボコロも負けじと、次元技を繰り出す。
 出現した炎はナイフの雨を包み込むように燃え上がる。
 壁をつくるようにして放たれた炎の中で、サボコロは急に口を開いた。

 「……なぁエン」
 「どうしたサボコロ、まだ次が来るかもしれないぞッ」
 「さっきから俺、何か可笑しいんだけど」

 はぁ? とエンが言い終わる前に、今度は天空から細長い槍が降り注ぐ。
 腕で顔を防いだまま、サボコロは何度も炎撃を解き放つ。
 エンは、避けながらも考えた。

 可笑しいのは、サボコロだけではない。

 エンもまた、可笑しな感じにぐるぐるしていたところだった。
 心が妙に疼く。次元技が、何故か近く感じる。
 すぐ傍に、サボコロの次元の存在を感じる。
 それはいつもとは違うような気がした。

 「炎弾——————!!!!」

 サボコロが、浮いたままの双子に向かって炎の塊を向ける。
 それに気付いた2人は咄嗟に避けたが、バランスを崩した。
 地面に急降下したのに加え、炎の煙で当たり一面が黒に染まる。

 「サボコロ……これはもしかしたら……」
 「へ?」
 「さっき貴様、自分が可笑しいと言っただろう? それは次元的なものか?」
 「……っ! あ、あぁ……」
 「なら俺もそうだ——————これは、もしかしたら」

 エンは、言葉を紡ぐ。
 サボコロは一瞬驚き、少し震える。
 エンの言葉に、自分の心に。
 まるで、突き動かされるように。

 「試してみるか? サボコロ」
 「……もう後には引けねえ」
 「……」
 「やるっきゃ——————ねえだろ!!!」

 サボコロが叫ぶ。黒い煙が、だんだんと晴れていく。
 流石に敵の姿が見えない事には動けない双子は、じっとそこで周りを見渡していた。
 薄暗い景色の向こうに敵がいる。
 戦えるとはいえ、2人とも重症を負っている。
 勝てないわけがない。そういって、何度も何度も、同じ暗示をかける。
 
 そして————煙が消える。


 「「————————ッ!!!?」」

 
 白き双子は
 前方にいた少年達を見て
 一瞬、心臓が止まったような、そんな錯覚を覚えた。


 少年達2人は————————互いに違う腕を、前へ突き出す。


 「できなかったら、お前のせいな」
 「ふん、お互い様だ阿呆」



 2人は、言葉を紡いだ。



 「「両次元の扉——————————発動!!!!」」



 周りの景色が歪む。
 目に見えない気が、波のように周囲に伝わっていく。
 自然に、怖いくらいふわりと。
 同じ言葉が2人の脳裏を過ぎた。


 今の2人に、迷いはなかった。


 「「————————————炎節ッ!!!!」」


 炎の中で尚美しく。
 その業火なる景色に溶け込むように、
 真っ赤に燃え滾る紅き弓矢が——————その存在を、ここに示す。


 「り……りょ、う……次元、なんて……ッ!!!?」


 千年前の英雄2人が、
 現代に生きる義兄妹が、

 乗り越えてきた————————次元師同士の境界線。

 心と心を重ね、本当の意味で信頼し合っている者達にしかできない。
 新しい次元への、扉。
 今正にそれを——————少年達が開いた。

 「矢張り俺か……サボコロはそこで見物していてくれ」
 「へいへい————任せたぜ!!」

 2人で、2つで。
 絶対に勝ってやるという、闘志の具現化。
 それは強く凛々しく、同じ思いを抱く2人の形。
 エンは、ゆっくりと弓を引いた。

 「ま、って……」

 小さな声が聞こえる。その声の主は、半歩、後ろに退いた。
 まるで死んだものを見るかのような目で、震える。

 「両、じげ……ん、だなんて……」

 彼女は咄嗟に後ろへ振り向く。
 テシルは、息も絶え絶えで倒れていた。
 セシルには分かる。彼の元力はもう、残っていない。
 彼を護るには、勝つには、

 あの化け物みたいな次元技に、打ち勝つ必要があった。

 「どうした、今更怖気づいたか?」

 ————彼の言葉が、挑発的なその瞳が、とても恐ろしく映る。

 「さっきまでの威勢はどこへ消えた?」

 ————エンの引いた弓が、酷くおぞましく見えた。


 「今——————全て終わらせてやろうッ!!!!」


 セシルの心臓が、大きく跳ねた。


 「第九次元発動————————————」


 エンの瞳に、体に、指に、足に。
 彼の全ての力が、注がれる。


 「————————————螺炎閃ッ!!!!!」


 矢が炎を纏う。
 エンの周りの景色が、真っ赤に染まる。
 然し矢自体は、放たれない。

 「う……ぐ……ッ」

 指が引き千切れるまでめいいっぱいに指を引く。
 莫大な元力が、思いが、全てこの一撃に込められているというのに。
 鉛のように重たいその矢が、2人の思いをまるで妨げるように動かなかった。

 が、然し。

 「……————ッ!?」

 エンの手首を、後ろからサボコロが掴んだ。
 彼は、優しく笑う。


 「2人で————————」


 矢が、思い切り引き絞られる。


 「————————勝つんだろうがッ!!!!!!」


 エンの指が、全身が。 
 ふっと、軽くなった。
 紅き刃は、放たれた。

 業火なる唸りを上げたその矢は、
 螺旋状を描く炎の中で燃え滾り、
 そうして————————、全ての景色を焼き尽くす。

 大きな大砲が地面と衝突するかのような打撃音。
 勢いに乗った炎が、四方に飛び散る。
 一瞬、本当に全ての景色が真っ赤に染まる。
 攻撃の反動で、エンとサボコロは後ろに吹き飛ばされた。
 燃える会場。煙の中には、白い2人が動かなくなっていた。

 エンとサボコロは、互いに顔を見合わせる。
 そしてこの時誰もが、奇跡を目の当たりにした。

 決して諦めない少年達が描く——————図太く勇敢な次元師の奇跡を。

Re: 最強次元師!! ( No.897 )
日時: 2013/03/07 16:45
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: 2DX70hz7)

 第231次元 生物型次元技、“兎破”
 
 「第1試合——————サボコロ・ミクシー、エン・ターケルドペアの勝利だァァ!!!!」

 レトもキールアも、歓喜に満ち溢れた。
 土壇場の復活、怒涛の追い上げ、奇跡の両次元発動。
 その全てが、会場の人間の胸を熱くした。
 ただボロボロな2人は、互いの怪我を見合わせて笑う。
 そこにはもう、ほんの少し前の2人はいなかった。

 互いを本気で信頼し合う、強き英雄によく似た姿がここにある。

 「すげえ……すげえよエン、サボコロッ!!!」
 「やったね!! 本当に凄いよ!!!!」

 傷だらけの2人は、会場からゆっくりと歩き出す。
 サボコロは腹部、胸部を貫かれ、エンもまた足、全身の筋肉が悲鳴をあげている状態にある。
 2人とも本当の本当に、奇跡を見せてくれた。

 「ちょ……マジでもう、死にそう、なんですけど……」
 「ああ……2人ともゆっくり休んでくれよな」
 「それなら、あたしが連れていくよ」 
 
 レト達の後ろで、桃色ミディアムヘアの女の子が声をあげる。
 そこにいたのは、ミル・アシュランだった。
 
 「み、ミル……っ!?」
 「大丈夫。連れていくだけですぐに戻ってくるよ。ちゃんと応援するって!」
 「それより大丈夫なの? ミル。昨日は傷だらけで……」
 「平気平気。なんかもうばっちりでさー。ささ、2人とも行っくよーっ?」

 エンとサボコロを連れて、ミルは医務室へ向かうべく階段を下りていった。
 昨日の戦闘で酷い傷を負っていた彼女だが、表面上は元気に見えた。  
 無理をしていなければ良いがと、レトとキールアも思う。

 「ミル……本当に大丈夫かなぁ?」
 「……ま、あいつが大丈夫っていうなら、大丈夫だと思うけど……」

 2人が心配している間もなく、元気で張りのある声がまた轟く。

 「第2試合————————キールア・シーホリー対リラン・ジェミニーッ!!!!」
 
 キールアは喧しく上がる歓声に一瞬びくつき、胸を撫で下ろす。
 そうだ。次は自分なんだと。
 エン達の試合の余韻を引き摺りながらも、歩いて会場まで下りる。
 向こうに見えたのは、昨日ガネストに試合を譲った兎の女の子。
 今日もまたうさみみパーカーを羽織り、肩に小さな兎を乗せ、ポケットに手を突っ込んでいる。
 つまらなそうな顔つきで、ぶすっとしたまんま歩く彼女。
 昨日は自身の次元を開いていなかった為実力は計り知れない。
 然しキールアは臆する事もなく、唯歩く。
 彼女を目の前にしても、決して恐れる事もなく。

 「やぁキールア・シーホリーさん。よろしくねっ」
 「え、あぁ……よ、宜しくお願いします……」 
 「まぁすぐにさよならなんだけどね?」

 え、と。
 キールアから小さな声が漏れた時。
 
 「次元の扉発動————————」

 彼女の真っ赤な瞳が、——————光る。

 「————————兎破!!!」

 肩に乗っていた小さな兎が、姿を変える。
 主人であるリランよりも遥かに大きく、大きくなっていく兎。
 逆にリランがその肩に乗れる程大きくなった時、白き兎は大声を張り上げた。 

 「キャァァァ——————ッ!!!」

 高い雄叫びが、響く。
 キールアはその怒号を聞いて尚、ゆっくりと目を閉じた。

 「次元の扉————————発動」

 そうしてまた、迷いなき瞳を開く。

 「————————百槍ッ!!!!」

 彼女の腕に、細く長き銀の槍が現れる。
 彼女の本当の力を具現化したそれを、まだ彼女は使いきれていない。
 それでも目の前の現実から、逃げるなんてしたくない。

 「じゃあいこうか、————————強加ッ!!!!」

 リランがそう叫んだ瞬間、兎破の口元から牙が生えた。
 そして間も無く————キールアの懐に飛び込む。
 
 「う……ぐッ!!!!」

 ガキン!!と、槍と牙がぶつかり合う音が鳴った。
 鋭く硬い牙を防ぐのに手一杯なのか、キールアは槍を牙に突きつけて後ろに押された。
 この状態で次元技の発動は難しい。
 キールアは、その細い腕に力を入れた。

 「ぐ、ああぁぁッ!!!」
 「——————ッ!!?」

 銀の槍が、牙を弾く。
 兎破が上を向いた瞬間、キールアの腕は休む事もなく、

 「第六次元発動——————一閃ッ!!!」

 その顎に向かって、槍を突き刺した。 
 兎破の喉から顎にかけて鮮血が舞う。
 ゆっくりと、天に伸びる兎破が後ろへ仰け反りかえる。
 大きな巨体が、ズドンと会場を叩く。

 「あちゃー……思ってたより強いなぁ、あの子」

 然しリランは、倒れた兎破を見ても慌てる素振りを見せなかった。
 それどころか彼女はキールアに関心したように声を上げる。

 「凄いねーっ!! 君ーっ!!!」
 「……えっ?」
 「でもねー——————っ!」

 リランが口に手をあててキールアに声をかけた時、
 確かにキールアに注がれていた太陽の光が、消えた。

 「——————気をつけた方が良いよーっ!!!」

 何か大きなものを振り回すような音が、
 何か恐怖に似た心地悪い感触が、
 キールアを、襲う。
 
 「キールア——————ッ!!!」

 レトヴェールが叫ぶ。
 咄嗟に振り返ったキールアの目の前には、白くて太いものが映った。
 その刹那、キールアは前方遥か遠くへ思い切り吹き飛ばされる。
 地面に叩き付けられた彼女の背中は、立ち上がる間もなく強い衝撃を受ける。
 キールアの口から血が吐き出された。
 
 「ぐ、ぁ……あ……ッ!!!!」
 「はははっ! やっちゃえ兎破ーっ!」

 彼女は手をポケットに突っ込んでまま、高らかに笑ってみせた。
 キールアの背中が、巨体の兎の足によって潰されていく。
 妙に気持ちの悪い音が、グギリと鈍い音が鳴る。

 「どうしたの? 顔色悪いねー?」
 「う……あ、ぁ……ぐッ!!!」
 「あたしの兎破、可愛いでしょーっ?」

 リランはキールアの目の前でしゃがんで彼女に笑いかける。
 くすくすと、苦しむキールアに向かって、笑いかける。
 その笑いは暖かいものではない事くらい。
 リラン自身、キールアにだって、分かっていたのに。

 「キールア……っ」

 レトが、泣き出しそうな顔で会場を見つめた。
 うるさい野次馬が、喧しい歓声とアナウンスと、濁った空気が。
 全て全て、キールアを批判しているようで。
 苦しむ彼女を見て、嘲笑うようで。

 「さぁーって、もっと遊んでね? ツインテちゃんっ!」
 「ぐ……はァッ!!!」

 更に地面にめり込み、キールアの全身が悲鳴をあげる。
 そのまま心臓を押し潰されてしまうのではないかと思う程重たい衝撃が彼女を襲う。
 
 然しこの時、彼女以外誰も気付かなかったであろう。
 キールアが、銀の槍を使う少女の瞳が、
 絶対に負けないと、そう力強く叫んでいた事に。

Re: 最強次元師!! ( No.898 )
日時: 2013/03/12 22:48
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: 2DX70hz7)

 第232次元 対峙する兎と槍

 ズドンと、更にキールア・シーホリーの背中が地面に食い込んだ。
 彼女の口から、血が吐き出される。
 然し彼女の手は、血が煮え滾る程強く握り締められていた。

 「なぁーに? その目」
 「……ッ」
 「……ふーん」

 キールアの敵、リラン・ジェミニー。
 余裕な表情で、ポケットに手を突っ込んだまま軽い言葉を流す。
 彼女は実につまらなさそうな顔をして、

 「——————もしかして、死にたいの?」

 そう、言った。

 「兎破、やっちゃおっかぁ?」

 彼女はよいしょと立ち上がって、ゆっくりと歩く。
 大きく姿を変えた兎、兎破の真っ白な背中によじ登る。 
 そうして、びっと人差し指をキールアに向けた。

 「いっくよぉ——————ッ!!!!」

 キールアの瞳が、光る。
 兎破が、たった一瞬だけ足を浮かせる。
 その時は短く、そして浮かせた足と、自分の背中の間の長さも僅か。
 キールアは、その一瞬を決して見逃さなかった。

 右手にあった銀の槍を、強く握り締める。

 「やっちゃ——————」

 そう、突然に。
 ザシュッ!!!! という勢いのある音がリランの耳に届く。
 その音により彼女の言葉が遮られた時、
 目の前には、赤い景色が広がっていた。
 兎破が大きく仰け反ったのと同時、傾いた兎破の向こうに、キールアがいた。
 銀の槍を高く上げ、全てを薙ぎ払ったような姿でそこにいる。

 「——————ッ!!?」

 「第六次元発動————————」

 キールアはそこから、一歩も動かず。

 「——————乱れ突きィィッ!!!!」

 目のも止まらぬ速さで、銀の槍が狂ったように唸りを上げた。
 最後の一撃を受けた兎破は、その背中に主人を乗せたまま前方遥か遠くへ吹き飛ぶ。
 腹部に全ての衝撃を与え、尚次元師そのものを突き飛ばしたキールア。
 彼女はボロボロの体で、ゆっくりと立ち上がる。
 肋骨は何本かいっている。見えなくともキールアには分かった。
 それ程までに彼女の体は悲鳴を上げていた。

 「う、ぐ……———————、ッ!!!?」

 リランが頭を摩っていた時、
 既に目の前にはキールアがいた。
 大きく槍を振り上げて、リランをしかと見据えていた。  

 「第五次元発動————————衝砕ッ!!!!」

 地面が、揺れる。
 大地に突き刺した槍が、まるで叫び声を出すように衝撃音を奏でた。
 音が、衝撃が、空気を伝わって大地に轟いた時、
 リランと兎破は魚の如く大きく跳ね上がった。
  
 「————————第六次元、発動」

 キールアは、小さくそう呟く。
 彼女の攻撃は、止まらない。

 「——————戯旋風ッ!!!!」

 頭上から降ってきたリランと兎破。
 それを弾くかのように、百槍を扇風機のように振り回す。
 その風と威力にまたも弾かれた1人と1匹は、キールアから少し離れた所に飛ばされる。
 リランは、腕で顔を伏せたまま荒く息を吸っていた。
 彼女もレトヴェールも、驚きの表情を隠せずにいた。

 (キー……ルア……?)

 レトは息を呑んだ。
 キールアは昔から、戦闘とはかけ離れた所にいる人間だった。
 戦いを嫌い、奉仕や福祉に手を尽くしていた彼女が、自ら人を傷つける行為を行っている。
 第1回戦でもその目で見てきたが、それがどうしても信じられなくて。

 昔のキールアと、今のキールア。
 どちらも同じ彼女だが、今のキールアからは昔の姿が想像もつかない。
 泣き虫で血や争いを嫌う人間の瞳をしていない。
 銀の槍を片手に持ち、昨日次元技を手に入れたにしては抜群の戦闘センスに溢れている。
 昔の彼女を知っているレトにとってその事実は、違和感に満ちていた。

 「……ぁ、は……ぁ……っ」

 リランは口元を拭う。
 霞む視界の向こうに、キールアが立っていた。
 次元技に目覚め1日も経っていない彼女を、完全に見縊っていた。
 リランはすっと腕の力を抜く。

 「はは……強いんだね? 君」
 「……」
 「ちょーっと、見縊ってたよ……?」

 リランの腕に、力が入る。
 ゆったりとした動きで、まるで天に引っ張られるように腕を上げた。

 「第七次元発動——————」
 「……ッ!!」
 「——————強加ァッ!!!!」

 兎の兎破の傷が癒え、轟という胸に響く音が鳴った。
 兎破の赤い瞳が煌く。真っ白な毛の全てが逆立っているようにも見える。
 白くて鋭い牙が、もう一度現れる。
 どうやら多少の傷が癒えているところを見ると、次元技に攻撃し続けても無駄のようだ。
 次元師の方をやらなければ、こっちが先にやられる。

 「キャァァァ——————ッ!!!!」
 「——————ッ!!?」

 兎破はそのままキールアに突進する。
 その白く太い腕を、キールアは槍で防ぐ。
 力強さが、その重さに比例してキールアの腕に乗る。
 弾こうにも完全に槍を抑えられている。
 このままでは動けないと、キールアは奥歯を噛み締めた。
 キールアの体が押され、彼女の足が後ろへと下がった。

 その時。

 (——————ッ!!?)

 突然、全ての力が抜けた。
 勢いあまって前へと傾く彼女の体。
 白い兎が、腕を振り上げていた。

 「うわァ————!!?」

 まるで全身をビンタするように、勢い良く横へと突き飛ばされた。
 何度も地面の上を波打った後、汚れた雑巾のように転がるキールア。
 彼女の左半身が、悲鳴をあげる。
 左腕に力が入らない。

 (どう、して……なのかな……)

 キールアの右手が、転がった槍を求めた。

 (もっと、もっと……!!!)
 
 キールアの中指が、目の前の槍に触れる。 

 (——————————次元技と、繋がりたいのに……っ!!)

 彼女は、体を引き摺って槍をその手にする。
 舞う砂埃の中で、ただ一つの願いを抱いて。

 「やっぱり立っちゃうんだ」

 リランは歩く。
 兎破の許へ、歩く。
 恐ろしく戦闘意欲の強いキールアに、少しだけ恐怖感を覚えながら。
 
 「ま……だ、まだァッ!!!」
 
 キールアは加速した。
 ぐるんと槍を振りまわし、兎破と対峙する。
 ガキン!! と響く音の中で、キールアは強く思う。
 勝たなくてはいけないのは分かっている。
 強くならなくてはいけないのは、分かっているのに。
 
 それらとは全く別の思いが、キールアを駆り立てる。
 彼女の脳裏に、義兄妹の影が過ぎった。
 ずっと憧れ続けていた逞しい後ろ姿が、

 今更になって、酷く綺麗に思い出されていた。

Re: 最強次元師!! ( No.899 )
日時: 2013/03/23 07:25
名前: そらモ ◆EAM9lqlcNY (ID: /DGSB/Uw)


 久しぶり!
 受験が無事に終わって、今自由人だから帰ってきましたよ!
 そらモも春から高校生((ェ

 見たよ!最強次元師!!入賞!
 おめでとうーッ
 ついに瑚雲の凄さが世へ

 更新した分を読むまで冬眠するね←

 小説続きかけるか分かんないな…;


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