コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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最強次元師!!【※新スレ作成におけるお知らせ有り】
日時: 2015/03/15 09:40
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: u/FYQltH)
参照: http://ncode.syosetu.com/n5050ci/

 運命に抗う、義兄妹の戦記。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 基本毎週日曜日に更新!


 ※追記

 実は、本作を一から書き直そうと思いまして別サイト様にて“完全版”を再連載し始めました。
 やりたい話が多くて一度断念してましたが、やっぱり優先しようと思ってもう一度記載致します。
 ご興味のある方はどうぞ! 上記のURLで飛べます*
 とってものんびりと、更新する予定です。


 Twitterの垢をつくってみました→@shiroito04
 イラストとか宣伝とかを呟いてます!



 ※注意事項

 ・荒らし・中傷はお控え下さい。
 ・チェンメなんかもお断りしてます。



●目次

prologue >>001
第001次元 >>002第011次元 >>012第021次元 >>048
第002次元 >>003第012次元 >>013第022次元 >>050
第003次元 >>004第013次元 >>019第023次元 >>052 
第004次元 >>005第014次元 >>020第024次元 >>055
第005次元 >>006第015次元 >>021第025次元 >>059
第006次元 >>007第016次元 >>025第026次元 >>060
第007次元 >>008第017次元 >>027第027次元 >>063
第008次元 >>009第018次元 >>030第028次元 >>065
第009次元 >>010第019次元 >>044第029次元 >>070
第010次元 >>011第020次元 >>046第030次元 >>071

第031次元 >>072第041次元 >>146第051次元 >>224 
第032次元 >>077第042次元 >>169第052次元 >>230
第033次元 >>081第043次元 >>176第053次元 >>234
第034次元 >>082第044次元 >>179第054次元 >>241
第035次元 >>090第045次元 >>180第055次元 >>245
第036次元 >>097第046次元 >>189第056次元 >>260
第037次元 >>104第047次元 >>191第057次元 >>262
第038次元 >>108第048次元 >>203第058次元 >>264
第039次元 >>109第049次元 >>209第059次元 >>268
第040次元 >>138第050次元 >>216第060次元 >>274

第061次元 >>298第071次元 >>359第081次元 >>385
第062次元 >>300第072次元 >>361第082次元 >>388
第063次元 >>308第073次元 >>365第083次元 >>391
第064次元 >>337第074次元 >>369第084次元 >>393
第065次元 >>338第075次元 >>370第085次元 >>399
第066次元 >>339第076次元 >>371第086次元 >>402
第067次元 >>345第077次元 >>377第087次元 >>403
第068次元 >>346第078次元 >>378第088次元 >>413
第069次元 >>352第079次元 >>380第089次元 >>414
第070次元 >>353第080次元 >>383第090次元 >>417

第091次元 >>420第101次元 >>448第111次元 >>480
第092次元 >>421第102次元 >>450第112次元 >>484
第093次元 >>422第103次元 >>458第113次元 >>489
第094次元 >>427第104次元 >>459第114次元 >>495
第095次元 >>431第105次元 >>467第115次元 >>499
第096次元 >>432第106次元 >>472第116次元 >>501
第097次元 >>433第107次元 >>475第117次元 >>502
第098次元 >>436第108次元 >>477第118次元 >>504
第099次元 >>444第109次元 >>478第119次元 >>507
第100次元 >>445第110次元 >>479第120次元 >>508

第121次元 >>509第131次元 >>544第141次元 >>558
第122次元 >>510第132次元 >>546第142次元 >>560
第123次元 >>511第133次元 >>547第143次元 >>563
第124次元 >>512第134次元 >>551第144次元 >>564
第125次元 >>520第135次元 >>552第145次元 >>565
第126次元 >>521第136次元 >>553第146次元 >>576
第127次元 >>528第137次元 >>554第147次元 >>590
第128次元 >>533第138次元 >>555第148次元 >>595
第129次元 >>534第139次元 >>556第149次元 >>608
第130次元 >>536第140次元 >>557第150次元 >>623

第151次元 >>631第161次元 >>683第171次元 >>759
第152次元 >>632第162次元 >>711第172次元 >>760
第153次元 >>633第163次元 >>719第173次元 >>762
第154次元 >>637第164次元 >>726第174次元 >>764
第155次元 >>643第165次元 >>739第175次元 >>766
第156次元 >>655第166次元 >>749第176次元 >>768
第157次元 >>659第167次元 >>753第177次元 >>769
第158次元 >>664第168次元 >>754第178次元 >>770
第159次元 >>665第169次元 >>755第179次元 >>771
第160次元 >>680第170次元 >>758第180次元 >>772

第181次元 >>773第191次元 >>788第201次元 >>813
第182次元 >>775第192次元 >>789第202次元 >>814
第183次元 >>776第193次元 >>792第203次元 >>826
第184次元 >>777第194次元 >>793第204次元 >>832
第185次元 >>778第195次元 >>794第205次元 >>835
第186次元 >>781第196次元 >>795第206次元 >>841
第187次元 >>782第197次元 >>798第207次元 >>853
第188次元 >>783第198次元 >>802第208次元 >>854
第189次元 >>784第199次元 >>803第209次元 >>855
第190次元 >>785第200次元 >>804第210次元 >>858

第211次元 >>862第221次元 >>883第231次元 >>897
第212次元 >>868第222次元 >>884第232次元 >>898
第213次元 >>873第223次元 >>888第233次元 >>901
第214次元 >>874第224次元 >>889第234次元 >>902
第215次元 >>875第225次元 >>890第235次元 >>903
第216次元 >>876第226次元 >>892第236次元 >>904
第217次元 >>877第227次元 >>893第237次元 >>905
第218次元 >>878第228次元 >>894第238次元 >>906
第219次元 >>879第229次元 >>895第239次元 >>907
第220次元 >>882第230次元 >>896第240次元 >>908

第241次元 >>909第251次元 >>929第261次元 >>955
第242次元 >>913第252次元 >>930第262次元 >>956
第243次元 >>914第253次元 >>933第263次元 >>957
第244次元 >>915第254次元 >>947第264次元 >>958
第245次元 >>916第255次元 >>948第265次元 >>959
第246次元 >>917第256次元 >>949第266次元 >>960
第247次元 >>918第257次元 >>951第267次元 >>961
第248次元 >>919第258次元 >>952第268次元 >>962
第249次元 >>921第259次元 >>953第269次元 >>963
第250次元 >>926第260次元 >>954第270次元 >>964

第271次元 >>965第281次元 >>977第291次元 >>988
第272次元 >>966第282次元 >>978第292次元 >>989
第273次元 >>967第283次元 >>979第293次元 >>990
第274次元 >>968第284次元 >>981第294次元 >>991
第275次元 >>969第285次元 >>982第295次元 >>992
第276次元 >>970第286次元 >>983第296次元 >>993
第277次元 >>973第287次元 >>984第297次元 >>994
第278次元 >>974第288次元 >>985第298次元 >>995
第279次元 >>975第289次元 >>986第299次元 >>996
第280次元 >>976第290次元 >>987第300次元 >>997

※第301次元〜は新スレにて連載予定


       ●おまけもの●

●資料集など
皆のプロフィール1 >>218
皆のプロフィール2 >>278
皆のプロフィール3 >>287
皆のプロフィール4 >>288
皆のプロフィール5 >>289
皆のプロフィール6 >>503
主な登場人物 >>852
さいじげテスト。 >>843
最強次元師!! について >>58

●番外編 
キールアの想い >>41
メイド喫茶祭り① >>327
メイド喫茶祭り② >>331
メイド喫茶祭り③ >>341
友達の証① >>492
友達の証② >>493
友達の証③ >>494
疎外少年と次元少女① >>810
疎外少年と次元少女② >>811
疎外少年と次元少女③ >>812
蛇梅隊DE☆大集合!! >>829
E FIEDLA >>941
英雄と妖精 >>945

 
●外伝
第001時限 >>942
第002時限 >>943
第003時限 >>944


●キャラ絵(1人)
奏様が描いて下さったルイル >>116
奏様が描いて下さったティリ >>105
奏様が描いて下さったロク >>119
奏様が描いて下さったロク(舌出しVer.) >>185
奏様が描いて下さったロク(ポニテVer.) >>523
奏様が描いて下さったキールア >>127
奏様が描いて下さったアリル >>141
奏様が描いて下さったリリアン >>148
奏様が描いて下さったミル >>154
奏様が描いて下さったフィラ副班 >>162
奏様が描いて下さったレト >>168
奏様が描いて下さったレト(メイド服Ver.) >>329
奏様が描いて下さったガネスト >>304 
奏様が描いて下さったガネスト(メイド服Ver.) >>318
奏様が描いて下さったアルア >>460

●キャラ絵(複数) 
奏様が描いて下さったレト、ロク、キールア >>693
奏様が描いて下さったエン、ミル、リルダ >>737

☆奏様には毎度ご感謝しております!!
 すごく似ていて、イメージ通りです
 キャラの絵が分からない場合には奏様の絵を見て下されば納得します!!
 これからも描き続けてほしいですね、是非とm((黙


●お知らせなど

* 2009 11/13 執筆開始
* 2013 09/01 執筆中断
* 2014 01/17 執筆再開
* 2014 10/19 別サイトにて再連載開始 >>980
* 2015 03/15 新スレ作成におけるお知らせ >>998

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Re: 最強次元師!! ( No.910 )
日時: 2013/05/14 21:35
名前: 雪月 桜花 ◆UE77haaVsA (ID: evK4EJEz)

すっごく面白いです。

お願いです、早く更新してください!!

自分勝手ですが、本当に瑚雲さんのこと応援してます。

頑張ってください!!

Re: 最強次元師!! ( No.911 )
日時: 2013/05/18 17:44
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: 2DX70hz7)
参照: 遅れました。



>>雪月 桜花さん

 初めまして! コメント有難う御座います。
 誠に身勝手ながら、更新は日曜日を目処に行ってます。
 明日更新する予定なので、宜しかったらまた読みに来て下さい!
  
 応援有難う御座います!

Re: 最強次元師!! ( No.912 )
日時: 2013/05/19 09:26
名前: 雪月 桜花 ◆qbNb6Ma0MY (ID: evK4EJEz)

私なんぞにわざわざ返信してくれてありがとうございます。

楽しみにしてますね!!

Re: 最強次元師!! ( No.913 )
日時: 2013/05/19 11:00
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: 2DX70hz7)

 第242次元 全てを繋ぐ一撃

 薄暗い景色が広がる。
 その先には、ロティ・アシュランがいるのだろう。
 彼女はレトに吹き飛ばされ、背後に控えていた壊れた会場が飛んだ彼女の勢いを止めていた。
 彼、レトヴェール・エポールは思う。
 既に元力もギリギリであろう。これ以上戦うと本当に拙い、と。
 ロティの怖さはその執念深さにあり、何度も立ち上がりレトに反撃してきた。
 今回こそは、やられてくれていると助かるのだが。
 
 (……? やけに静かだな……)

 普通ならここで、酷い形相でロティが突っ込んでくる筈なのだが。
 彼女が歩いてくるような、近づいてくる気配というものがなかった。
 レトは少し、構えを緩める。
 
 「……————っ!」

 そこに、いた。
 気だるそうにポケットに手を突っ込み、歩く彼女の姿が。
 少しだけ長い髪を揺らして、長身の彼女は歩いてきた。
 レトは剣を構える。

 「……おい、レトヴェール」

 彼女はやっと口を開いて、俯いていた顔を上げた。
 見事に頬には傷が多い。直接的ではなく間接的にレトが繰り出した技の、風の勢いなどの傷だろう。
 頬に垂れた血は固まりつつあり、彼女はそれを拭った。
 薄くなった血が、彼女の頬にこびり付いたまま。

 「何だ?」
 「最後にしようぜ」
 
 は? とレトは思わず変な声をあげてしまった。
 緊張感に溢れていた雰囲気を、少しだけ壊されたように。
 ロティの唐突な提案に、彼は首を傾げてみせた。

 「お互い元力なんて殆どねえ。だから、最後にしようぜ」
 「……つまり、出せる元力全部出し切れ、と?」
 「そういうこった。……お前のせいで、初めてなんか、空っぽに近い状態になっちまってね」
 
 ロティの口調は悪魔で落ち着いていて、とても優しかった。
 然しそれを信じていい訳もない。彼女の演技かもしれない。
 レトは、分かった、と口に出す。
 
 「じゃあレトヴェール、ちょっと賭けをしようじゃねーの」
 「……賭け?」
 「ああ。あたしが勝ったら、ミルを好きにさせてもらうけどな」
 「……なるほどな。じゃあ、俺が勝ったら——————」

 そこで、ロティはレトが言葉を言い終わるその前に
 言葉を、発した。

 「——————お前が勝ったら、ミルに全部謝ってやるよ」

 今までの事、全部な、と。
 ロティはそう言った。
 その言葉に拍子抜けになるレトは、大きく目を見開く。
 思わぬ提案に驚く彼。
 そう、あの彼女が、自らそう言ってくるとは思わなかったから。

 「嫌か?」
 「えっ? ああ……いや……それで構わない」
 「そうか……————————じゃあ」

 レトは、ちょっとした違和感を感じる。
 今までとは違う風の軌道に。
 彼女は本当に、全元力をぶつけてくるつもりだろう。
 彼も覚悟を決めて、血に塗れ赤黒くなってしまった双斬を握り締めた。

 「いくぞレトヴェール————————、心操!!!!!!」

 彼女の怒号に反応した瓦礫が、まるで磁石に引っ張られる金属のように一点に集中した。
 小さな岩から大きな岩、瓦礫、鉄板までありとあらゆる物体が重なって、漸く一つの形を成す。
 それは、人間のような形をした大きなゴーレムであった。
 この大きさ、そして込められた元力を感じるに、九次元級とはとても思えない強さを放っていた。
 然しこれは十次元ではない。本当に彼女は、出せる全てをこのゴーレムに託していた。

 「……こ、これ……っ!」
 「こういう事もできんだよ——————————さぁ全力で来いレトヴェール!!!!!!」

 ドシン、ドシン……大きな音が段々、更に大きさを増す。
 近づくそれが、遂にはレトの上に被さり太陽が消える。
 間近で見れば見る程、その大きさは尋常ではなかった。
 大きな岩や瓦礫で形成された不細工な腕が、少し揺れる。
 そしてゴーレムの酷く太い腕がぐぐっと後ろへ引き下がった。
 大きな腕が、勢いを増し、そして。
 
 「——————————見てろよ、ミル」

 小さく勝ち誇った笑みを浮かべて。
 そう言い放った口調はとても穏やかで。
 言われたミルはまた何も言わずに、何も流さずに。
 ぎゅっと、手摺を掴んだ。
 何かに縋るように、弱い掌が手摺を掴んだ。


 「俺は絶対————————————」


 彼の瞳に力が戻ると同時。
 彼の腕に力が入ると同時。

 
 彼はもう一度だけ、彼女の言葉を思い出した。



 「————————————誰の想いも無駄にはしない!!」



 この時、彼には分かっていたのかもしれない。
 ロティの心の内側に、あったものが。
 彼女が無意識にの内に、心の中にしまいこんでいたものに。

 「第九次元発動————————————!!!!」
 
 そしてミルが感じていた不安も、罪悪感も。
 キールアやエン、サボコロが自分に託した思いも。

 彼の脳裏に、過ぎる。


 「————————————万闘円斬ッ!!!!!!」


 全てを、この一撃に込めて。


 



 『お、お、おおおお……おっ?』

 今まで殆ど出番の無かった実況が、瓦礫を超えてマイクを必死に掴み現れた。
 右手に携えたそれを強く握って、割れたメガネを整えた。


 「しょ、勝者————————————エポールチーム!!!!!」
 

 突如、今までのとは比にならない程の歓声が沸きあがった。
 何と会場の内側に、まだ人が沢山いたのだ。
 妙に静まり返っていて、誰の声も聞こえなかったのに。
 きっと彼らの試合を見て、思わず黙り込んでしまったのだろう。
 真剣に目を凝らし、彼らの試合を見て、見事勝ち鬨をあげたエポールチームに喝采を浴びせた。
 未だ鳴り止まぬ喝采と拍手、そして叫び声にレトは苦笑いを零した。
 こんな場面、前回もあった気がする、と。
 そう思いながら。

 レトの全身から、力が抜けていった。
 もう戦えねーわ、と小さく零す彼の横では、双斬はえへへと笑っていて。
 いつも通りのいつも以上に戻った2人の笑顔は、とても綺麗で。

 これで、全て終わった。
 正式に、人族代表になれる。
 そう。


 
 「いやーお前、やっぱ強いんだな————————レトヴェール」



 思っていた。



 「……え……————っ?」


 
 どこかで聞いた事のある、大人びた声。
 いつかどこかの村の隣町で、偶然に出会った。
 
 知っている顔が、そこにあった。

 「よおレトヴェール……会えるの、楽しみにしてたぜ?」

 淡く爽やかな青色の髪を靡かせて、彼は現れたのだ。
 シェル・デルトール。
 剣術を扱う次元師の彼が、そこにいた。

 「な、んで……」
 「何でって……言わなかったか? 俺は、代表者になる、ってな」
 「で、でも……今、決勝戦は終わって———————っ!!」

 レトの言葉を、声を、思いを遮るように。
 シェルは不敵な笑みを浮かべて、言い放つ。

 
 「“決勝戦は終わった”? 何言ってんだよレトヴェール」
 
 「……————っ!!?」


 笑い飛ばした彼の言葉が、レトの心を抉った時。
 彼は非情にも続けるのだ。
 エポールチームに、絶望の予感を与えるように。



 「——————————————決勝戦は、“俺達”と“お前ら”が戦い合うんだよ」

Re: 最強次元師!! ( No.914 )
日時: 2013/05/26 19:04
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: 2DX70hz7)

 第243次元 超えるべき壁 

 衝撃的な彼の言葉に、レトは言葉を失った。
 レトだけではなく、会場にいたシェル以外の全員が。
 何も言えず、何も考えられず。
 何故、という疑問が何度もレトの頭を過ぎった。

 「そ、れ……どう……いう……」
 「あーえっと因みに、俺のチームはなぁ……聞いて驚くなよ?」
 「そういう事を、聞いてるんじゃ……!!!!」

 『えーえー……ゴホン……実はですねー』

 実況が咳払いをして、静まり返った会場に目をやった。
 彼は続ける。何故そこに試合とは無関係のシェルがいるのか。
 そして、決勝戦の本当の意味を。
 
 『今回のトーナメントには、実は“シード権制度”というものが設けられておりまして、ええ。
  第一次予選、第二次予選共に最速、トップで突破したチームのみに与えられる制度な訳です。
  そしてそのシード権は、決勝まで進んだチームと、そこで初めて当たる事になります。
  今までその事を黙っていたのは、更に大会を盛り上げる為なので……運営委員の指示で御座います』

 つまり、元々シェル率いるデルトールチームには決勝へ進む権利が与えられていた。
 一次予選、二次予選共圧倒的な速さで突破した彼のチームの存在を知る者もそういない。
 二次予選も、通常経緯でのトーナメント進出は4チーム、という意味だったのだろう。

 「……っていう意味だ、分かったか?」
 「そんな制度……知らなかったし……こんな状態じゃ不利すぎんじゃねーかよ!!! ……っ!? ぐ……っ!」
 「んな怪我で大声出すなよレトヴェール。お前重症じゃん……ほら、さっさと医務室行くぞ」
 「ちょ、まだ話……は、終わってねー……っ、ぞっ!!」
 「……安心しろ、試合は3週間後だ」
 「……!?」
 「それまでにきっちりに治しとけよ——————大事なライバルがこんなんじゃ、張り合いがねーからな」
 
 レトは、その言葉を聞いてふっと意識を持っていかれた。
 全身全霊で戦った彼に今必要なのは抗議ではなく休暇である。 
 彼を背負ったシェルは、弟を見守るような感覚に包まれながら会場から出て行った。
 起き上がって反論する力も残されていない彼は、大きな背中に身を託して眠ったのだ。


 

 
 「……っ……ん……、ぁ……?」

 目を開けると、天井があった。
 ぼーっとしたまま、ぼんやりと映った白い天井を見つめるレト。
 時計の針だろうか。カチカチと、同じテンポで小さく音が響いているのが聞こえた。
 彼は頭を動かす事も、体を動かす事もできずにただじっと天井だけを見つめていた。
 まだ霞む視界の中で、彼は少しだけ考える。

 ああ、ここは医務室なのかな、と。

 「あ゛ー……もう動けねーよう……」

 暖かい背中の上で、彼はぐっすり眠っていたらしい。
 この間倒れた時間帯が、夕方の6、7時近くだったのだ。
 そして今、時計の針は2の文字を刺している。
 はて。それだけでは今日が何日なのか分かりもしない。

 「あれっ? レト起きたのっ!?」

 彼の耳に届いたのは、凛とした綺麗な響きだった。
 可憐な声でそう言った彼女は、ひょっこりベッドに顔を出す。
 そこには、キールア・シーホリーがいた。

 「ようキールア……昨日は凄かったな」
 「……はぁ? 昨日? 何言ってるの」
 「え?」

 彼女は溜息を吐いた。
 右手に持っていた板は、どうやら医務関係の物らしいが。
 キールアはそれに目を移し、ちらっと一度だけレトの方を向く。

 「あんた、それ多分5日前の話だけど」

 ぴしゃりと、彼女ははっきりそう言った。
 レトはその場から動く事もできない為、顔だけで驚きを表現した。
 目を、真ん丸にして。

 「え……うぇえッ!!?」
 「そうよ。あんた4日も寝てたんだから」
 「よ、っか……?」
 「因みに私とエンは昨日起きたんだけどね」

 彼女は、ほら、というように診断表を彼に見せた。
 確かに、ここ4日間、彼の体調の記録がしてあった。
 然しどの欄にも彼の状態は【爆睡】と書かれていたが。
 これを書いたのは字面的にも性格的にもキールアであろう。
 そうレトは心の中でひっそりと思った。

 「でも起きて良かった。顔を見た限りだと元気そうだし、1週間あれば完治とまではいかなくとも良くなるわ」
 「1週間ってお前……俺、結構怪我酷いんですけど」
 「知ってるわよ。でも私の次元技も忘れないでね?」
 「ああ……傷口塞ぐ事もできんだっけ?」
 「まぁ……うん。一応ねっ!」

 然し、それだと彼女の負担が大きいのではないだろうか。
 レトはそう思う。
 ただでさえこの間の戦いでかなり元力を消耗しているのに。
 キールアの本来の次元技である百槍とは別に、慰楽という次元技がある。
 それが百槍と少しだけ結びついていて、ある程度以前の技も使えるのだとか。
 それを使って、少しでも早く怪我を治す事ができる。
 キールアにとって、仲間を助ける事は生き甲斐にも繋がる。
 だから良いのよって、彼女は笑った。

 「って、あれ……」
 「ん? どうしたの?」
 「サボコロは? もしかしてまだ起きてねーのか?」
 
 キールアは、少しだけ目を細めた。
 そして、うん、と繋げた。

 「サボコロもあんたも張り合えるくらいタフだけど、同じくらい重症でね……全然起きる気配がないの」
 「そ、そっか……」
 「サボコロの場合、弓矢を思い切り心臓付近に撃たれているし、肋骨も何本かいってるしで……」
 「……っ! そういえば、エンの足はどうなんだ?」

 レトはその時の情景を鮮明に思い出した。
 確か、自分の足に八次元級の次元技をぶっ刺していた筈。
 自我を保つ為とはいえ大胆な事をした彼の足は、どうなっているのかと。
 彼はそれが気になっていたのだ。

 「エンは起きてはいるけど、歩いたりするの、暫く禁止されてるの」
 「禁止……?」
 「ええ……どうも足の骨まで砕いたみたいで、よくもまぁ試合中あれだけ動けたなって医者もびっくり」
 「そうか……。あいつ自身、どう思ってんだ? 怪我については」
 「そりゃあ本人は、今からでもリハビリする!! って騒いでるよ。明日には爆発しそうな勢いでね」

 少し冗談を交えて言ったキールアの言葉に嘘はなく。
 エンは足を動かす事、つまりリハビリの要求を昨日からずっと出している。 
 動きたいですオーラがエンの苛々した表情からも伺えるだろう。
  
 「……なぁキールア」
 「? 何よ突然」
 「お前、聞いたか? ……決勝戦の事」

 ああ、とキールアは声を漏らした。
 アシュランチームとの試合は、実は準決勝で。
 新たに乱入して来たデルトールチームとの試合が、本当に本当の決勝戦。
 勝利を目の前にして打ち砕かれた希望は、絶望へと変わる。
 幾ら3週間という長い時間があれど、その程度の時間で治る傷じゃない。
 それは4人共同じだった。

 「聞いたよ……今朝ね。……でも」
 「……?」
 「いつかは超えなきゃいけない壁なら、怖い事一つもないよ」

 だって、絶対負けたりしないんでしょう?
 そう、キールアは笑った。
 彼が自分を安心させてくれたあの言葉を言って。
 彼女はレトから離れ、今度はサボコロの許へ行く。 
 戦場でも見たあの後ろ姿が、今にもあって。
 そういえば彼女にとっての戦場は、ここでもあったなと。
 そして、彼女の言う通りだと、そうとも思ったのだ。

 いつかは必ず、超えるべき壁だった事を。
 今更彼は、思い出したのだった。


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