コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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最強次元師!!【※新スレ作成におけるお知らせ有り】
日時: 2015/03/15 09:40
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: u/FYQltH)
参照: http://ncode.syosetu.com/n5050ci/

 運命に抗う、義兄妹の戦記。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 基本毎週日曜日に更新!


 ※追記

 実は、本作を一から書き直そうと思いまして別サイト様にて“完全版”を再連載し始めました。
 やりたい話が多くて一度断念してましたが、やっぱり優先しようと思ってもう一度記載致します。
 ご興味のある方はどうぞ! 上記のURLで飛べます*
 とってものんびりと、更新する予定です。


 Twitterの垢をつくってみました→@shiroito04
 イラストとか宣伝とかを呟いてます!



 ※注意事項

 ・荒らし・中傷はお控え下さい。
 ・チェンメなんかもお断りしてます。



●目次

prologue >>001
第001次元 >>002第011次元 >>012第021次元 >>048
第002次元 >>003第012次元 >>013第022次元 >>050
第003次元 >>004第013次元 >>019第023次元 >>052 
第004次元 >>005第014次元 >>020第024次元 >>055
第005次元 >>006第015次元 >>021第025次元 >>059
第006次元 >>007第016次元 >>025第026次元 >>060
第007次元 >>008第017次元 >>027第027次元 >>063
第008次元 >>009第018次元 >>030第028次元 >>065
第009次元 >>010第019次元 >>044第029次元 >>070
第010次元 >>011第020次元 >>046第030次元 >>071

第031次元 >>072第041次元 >>146第051次元 >>224 
第032次元 >>077第042次元 >>169第052次元 >>230
第033次元 >>081第043次元 >>176第053次元 >>234
第034次元 >>082第044次元 >>179第054次元 >>241
第035次元 >>090第045次元 >>180第055次元 >>245
第036次元 >>097第046次元 >>189第056次元 >>260
第037次元 >>104第047次元 >>191第057次元 >>262
第038次元 >>108第048次元 >>203第058次元 >>264
第039次元 >>109第049次元 >>209第059次元 >>268
第040次元 >>138第050次元 >>216第060次元 >>274

第061次元 >>298第071次元 >>359第081次元 >>385
第062次元 >>300第072次元 >>361第082次元 >>388
第063次元 >>308第073次元 >>365第083次元 >>391
第064次元 >>337第074次元 >>369第084次元 >>393
第065次元 >>338第075次元 >>370第085次元 >>399
第066次元 >>339第076次元 >>371第086次元 >>402
第067次元 >>345第077次元 >>377第087次元 >>403
第068次元 >>346第078次元 >>378第088次元 >>413
第069次元 >>352第079次元 >>380第089次元 >>414
第070次元 >>353第080次元 >>383第090次元 >>417

第091次元 >>420第101次元 >>448第111次元 >>480
第092次元 >>421第102次元 >>450第112次元 >>484
第093次元 >>422第103次元 >>458第113次元 >>489
第094次元 >>427第104次元 >>459第114次元 >>495
第095次元 >>431第105次元 >>467第115次元 >>499
第096次元 >>432第106次元 >>472第116次元 >>501
第097次元 >>433第107次元 >>475第117次元 >>502
第098次元 >>436第108次元 >>477第118次元 >>504
第099次元 >>444第109次元 >>478第119次元 >>507
第100次元 >>445第110次元 >>479第120次元 >>508

第121次元 >>509第131次元 >>544第141次元 >>558
第122次元 >>510第132次元 >>546第142次元 >>560
第123次元 >>511第133次元 >>547第143次元 >>563
第124次元 >>512第134次元 >>551第144次元 >>564
第125次元 >>520第135次元 >>552第145次元 >>565
第126次元 >>521第136次元 >>553第146次元 >>576
第127次元 >>528第137次元 >>554第147次元 >>590
第128次元 >>533第138次元 >>555第148次元 >>595
第129次元 >>534第139次元 >>556第149次元 >>608
第130次元 >>536第140次元 >>557第150次元 >>623

第151次元 >>631第161次元 >>683第171次元 >>759
第152次元 >>632第162次元 >>711第172次元 >>760
第153次元 >>633第163次元 >>719第173次元 >>762
第154次元 >>637第164次元 >>726第174次元 >>764
第155次元 >>643第165次元 >>739第175次元 >>766
第156次元 >>655第166次元 >>749第176次元 >>768
第157次元 >>659第167次元 >>753第177次元 >>769
第158次元 >>664第168次元 >>754第178次元 >>770
第159次元 >>665第169次元 >>755第179次元 >>771
第160次元 >>680第170次元 >>758第180次元 >>772

第181次元 >>773第191次元 >>788第201次元 >>813
第182次元 >>775第192次元 >>789第202次元 >>814
第183次元 >>776第193次元 >>792第203次元 >>826
第184次元 >>777第194次元 >>793第204次元 >>832
第185次元 >>778第195次元 >>794第205次元 >>835
第186次元 >>781第196次元 >>795第206次元 >>841
第187次元 >>782第197次元 >>798第207次元 >>853
第188次元 >>783第198次元 >>802第208次元 >>854
第189次元 >>784第199次元 >>803第209次元 >>855
第190次元 >>785第200次元 >>804第210次元 >>858

第211次元 >>862第221次元 >>883第231次元 >>897
第212次元 >>868第222次元 >>884第232次元 >>898
第213次元 >>873第223次元 >>888第233次元 >>901
第214次元 >>874第224次元 >>889第234次元 >>902
第215次元 >>875第225次元 >>890第235次元 >>903
第216次元 >>876第226次元 >>892第236次元 >>904
第217次元 >>877第227次元 >>893第237次元 >>905
第218次元 >>878第228次元 >>894第238次元 >>906
第219次元 >>879第229次元 >>895第239次元 >>907
第220次元 >>882第230次元 >>896第240次元 >>908

第241次元 >>909第251次元 >>929第261次元 >>955
第242次元 >>913第252次元 >>930第262次元 >>956
第243次元 >>914第253次元 >>933第263次元 >>957
第244次元 >>915第254次元 >>947第264次元 >>958
第245次元 >>916第255次元 >>948第265次元 >>959
第246次元 >>917第256次元 >>949第266次元 >>960
第247次元 >>918第257次元 >>951第267次元 >>961
第248次元 >>919第258次元 >>952第268次元 >>962
第249次元 >>921第259次元 >>953第269次元 >>963
第250次元 >>926第260次元 >>954第270次元 >>964

第271次元 >>965第281次元 >>977第291次元 >>988
第272次元 >>966第282次元 >>978第292次元 >>989
第273次元 >>967第283次元 >>979第293次元 >>990
第274次元 >>968第284次元 >>981第294次元 >>991
第275次元 >>969第285次元 >>982第295次元 >>992
第276次元 >>970第286次元 >>983第296次元 >>993
第277次元 >>973第287次元 >>984第297次元 >>994
第278次元 >>974第288次元 >>985第298次元 >>995
第279次元 >>975第289次元 >>986第299次元 >>996
第280次元 >>976第290次元 >>987第300次元 >>997

※第301次元〜は新スレにて連載予定


       ●おまけもの●

●資料集など
皆のプロフィール1 >>218
皆のプロフィール2 >>278
皆のプロフィール3 >>287
皆のプロフィール4 >>288
皆のプロフィール5 >>289
皆のプロフィール6 >>503
主な登場人物 >>852
さいじげテスト。 >>843
最強次元師!! について >>58

●番外編 
キールアの想い >>41
メイド喫茶祭り① >>327
メイド喫茶祭り② >>331
メイド喫茶祭り③ >>341
友達の証① >>492
友達の証② >>493
友達の証③ >>494
疎外少年と次元少女① >>810
疎外少年と次元少女② >>811
疎外少年と次元少女③ >>812
蛇梅隊DE☆大集合!! >>829
E FIEDLA >>941
英雄と妖精 >>945

 
●外伝
第001時限 >>942
第002時限 >>943
第003時限 >>944


●キャラ絵(1人)
奏様が描いて下さったルイル >>116
奏様が描いて下さったティリ >>105
奏様が描いて下さったロク >>119
奏様が描いて下さったロク(舌出しVer.) >>185
奏様が描いて下さったロク(ポニテVer.) >>523
奏様が描いて下さったキールア >>127
奏様が描いて下さったアリル >>141
奏様が描いて下さったリリアン >>148
奏様が描いて下さったミル >>154
奏様が描いて下さったフィラ副班 >>162
奏様が描いて下さったレト >>168
奏様が描いて下さったレト(メイド服Ver.) >>329
奏様が描いて下さったガネスト >>304 
奏様が描いて下さったガネスト(メイド服Ver.) >>318
奏様が描いて下さったアルア >>460

●キャラ絵(複数) 
奏様が描いて下さったレト、ロク、キールア >>693
奏様が描いて下さったエン、ミル、リルダ >>737

☆奏様には毎度ご感謝しております!!
 すごく似ていて、イメージ通りです
 キャラの絵が分からない場合には奏様の絵を見て下されば納得します!!
 これからも描き続けてほしいですね、是非とm((黙


●お知らせなど

* 2009 11/13 執筆開始
* 2013 09/01 執筆中断
* 2014 01/17 執筆再開
* 2014 10/19 別サイトにて再連載開始 >>980
* 2015 03/15 新スレ作成におけるお知らせ >>998

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Re: 最強次元師!! ( No.890 )
日時: 2013/04/07 10:29
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: 2DX70hz7)

第225次元 白髪の双子絵師

 暗い部屋の中。
 エポールチームの皆が寝息をたてているのが聞こえる。
 レトヴェールはごろんと寝返りをうって、うすらと視界を広げた。

 (……アシュランチーム)

 そう、今日行われた第1回戦。
 ミル・アシュラン率いる蛇梅隊Bのチームは、相手側のアシュランチームに敗北した。
 ティリとラミアというペアをなんなく打ち砕き、ガネストに勝ちを譲り、そしてミルが負けた。
 あのミルが負けた相手が、次にレト達が当たるチームのリーダー。
 強制的に、レトヴェールが当たる事となる。
 でもそれは、いつかは通らねばならない過酷な道だという事も、分かっていた。

 その為に今、ここにいる。
 目の前にある全ての壁を薙ぎ払い、果たすべき目的を胸に抱いて。




 「……おし、皆準備できたか?」
 「おうよ!! いつでも良いぜ!!」
 「万全だ。いつでも行ける」
 「うん、あたしもおっけーっ!」

 エポールチームの4人は、頷き合う。
 そして、部屋をあとにした。

 「あ……」
 
 今日も相変わらず観客席はいっぱいで、立っている人もいた。
 キールアは、自分達のベンチにガネストとミルがいるのに気付く。
 ティリやラミアの姿が見えない。きっと医務室で休んでいるのだろう。

 「あの2人、来てくれてるみてえだな」
 「うん……あ、あのさ、レト」
 「ん?」
 「大丈夫、なの……? 昨日あんなにボロボロだったのに……」

 キールアは、思わず俯いた。
 立ち上がれない程重症だったレトは、今朝になったらけろっとしていた。
 それは見せかけで、本当は傷だらけで無理してるんじゃないかと、
 そう、キールアは言うのだ。

 「……えいっ」
 「っ!?」

 俯いていたキールアの頭の上に、チョップが下る。
 いったぁ!? と言い頭を抑えるキールアの言葉も無視して、レトはすたすたと席の方へ歩いた。
 
 「いらん心配すんなって」
 「い、いらんって……!!」
 「どんなに酷い状況下だったとしても……あいつなら絶対諦めねぇだろ?」

 レトはそう言って、笑った。
 キールアは暫しの間にぽかんとする。

 「信じてくれよキールア、俺は絶対負けたりしない」

 その一言で、キールアの表情も綻んだ。 
 少し頬を赤く染めながら、そうだねと笑ってみせた。
 万全じゃないから勝てませんでしたなんていうものは通じない。
 ならば己の体が砕けて散るまで、全力を出し切ってやろうと。 
 そう、考えたのだろう。
 
 とその時。
 あ、あー、というアナウンスが聞こえてきた。

 
 「それでは第2回戦————————エポールチーム対アシュランチーム!!!」

 
 上がる歓声は勢いを増し、レト達を包み込む。
 昨日今日で、観客も気分が高揚しているのだろう。
 そんな中、相手側のチームもうっすらと姿を現した。
 白髪の少年少女2人と、小さな兎を肩に乗せた無愛想な少女。
 そしてあの長身の女性も、そこにいた。

 「第1試合——————、サボコロ・ミクシー、エン・ターケルド対セシル・マーレット、テシル・マーレット!!!」

 昨日と同じ、選手。
 見分けがつかない程酷似した2人が、ゆっくりと落ち着いた足取りで会場へ降りてきた。
 サボコロとエンもお互いに頷き合う。
 歩いている最中、急にサボコロが口を開いた。

 「なぁ、エン」
 「……何だ?」

 サボコロは一度、足を止めた。

 「昨日は、その……悪かった」
 「……っ?」
 「俺、お前の事も皆の事も考えねーで一人で突っ走ってたからさ」

 サボコロがそう言って、へへ、と笑った。
 恥ずかしそうに笑った彼を見て、エンの口元も歪む。

 「……お前だけのせいではない。だから次こそ————————“2人”で勝つぞ」

 エンも、サボコロの方こそ見なかったが、強くそう言った。
 サボコロの表情が、いつもの彼に戻る。
 絶対に勝ってやると、決意に満ち溢れたあの表情に。

 「ああ————————ぜってぇ勝つッ!!!!」

 そう叫んだ彼の言葉に反応したのか、双子であろうセシルとテシルは振り返った。
 少女の方は、くすりと笑う。

 「自身がおありなのですね——————、実に微笑ましい」
 「ああ?」
 「まぁ、勝手な妄想は構いませんけどね」

 にこりと、可愛らしく小首を傾げる少女の目は、まるで笑ってはいなかった。
 そして。

 「「次元の扉発動————————」」

 凛とした、それでいて美しい声の調和が耳に響く。

 「——————絵生ッ!!」
 「——————踊色ッ!!」

 相手の2人が、同時に次元の名を叫ぶ。
 サボコロとエンも同じく次元の扉を開く。
 然し時は待ってはくれない。直後、向こうの2人の姿が消えた。

 「な……ッ、き、消えたっ!?」
 「うろたえるなサボコロ!! 奴等がどこから来るか分からないぞ!!」

 瞬間、

 「先手必勝————————、こちらからいきます」

 「——————ッ!!?」

 「第六次元発動——————描空!!」

 一度少年の声がしたかと思うと、今度は幼い少女の声が響いた。
 それはサボコロ、エンの背後からで、2人は咄嗟に声がする方へ振り返る。
 目の前にあったのは、黒い輪郭で描かれた“剣の絵”。

 「第六次元発動——————加色!!」

 そして少年が豪快に腕を振るい、色を飛ばした。
 剣の絵に色が追加すると、少年はそれを空中で留め、その矛先をサボコロ達に向ける。

 「百発百中——————、君達は避けられない」
 「「————————ッ!!?」」

 刹那。テシルの飛ばした多数の剣がまるで雨のように2人に突き刺さる。
 壮絶な爆音、立ち込める煙によって包まれた2人を見据え、白髪の2人はまた並ぶ。

 「残念ですが……貴方達に勝つ術はありません」
 「絶体絶命、僕等のコンビネーションは、誰にも負けない」

 セシルが自身の等身大程ある筆を軽々しく持ち上げ、背中に装着させる。
 テシルは持っているパレットを彼の左腕に装着させていた。
 2人とも、見た目も口調も似ていて、唯一似てない部分と言えばセシルの方がベレー帽を被っている事くらいだった。

 (何だ、よ今の……、まるで避ける暇がねぇ……!!)
 (スピードも威力も並ではない……奴等、相当な手練と見た……)

 立ちこめた煙の中で、ふらっとしながらも2人は立ち上がってみせた。
 荒い息こそしてはいるが、どうやら無事のようだ。

 「なるほど……起き上がりますか」
 「……七転八倒……、という奴ですか」

 ふうーと言いながらサボコロは腕を伸ばす。
 そしてエンもサボコロも、急に上着を脱ぎ捨てた。

 「こっからが本番だぜ双子野郎」
 「“誰にも負けない”……、か。良い心がけだ」

 加えて2人とも、笑っていた。
 それは昨日のレトと同じような姿で、自然とあの少女の面影が見える。
 キールアもレトも、互いに笑い合う。

 「頑張れよ、2人とも……」

 そんなレトの小さな言葉も、喧しく上がる歓声に呑み込まれる。
 先日、ティリナサ・ヴィヴィオとラミア・ミコーテを窮地に追いやり、そして倒した2人組み。
 蛇梅隊の中でも天才コンビとして謳われたあの2人を相手に一歩も退かなかった奴等に、果たして勝つ術はあるのか。
 後には退けない。昨日の屈辱と悔恨を胸に、2人は加速した。

Re: 最強次元師!! ( No.891 )
日時: 2012/12/31 17:15
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: quPWWdqU)

余談。な気がする。


言うのが遅くなりました。
私、今年は受験生なので次の更新は3月辺りになりそうです。
受験勉強を嫌々やってる今日この頃……。
本当に知らせるのが遅くなりました。

そして今、私は一生懸命世界最小の1000ピースジグソーパズルをやってます。

何故だろう。本当にどうした自分。




という訳で……ではではーっ!。



※然しカキコにはちょくちょく来ています。小説を書かないだk(

Re: 最強次元師!! ( No.892 )
日時: 2013/02/24 22:24
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: 2DX70hz7)

第226次元 消える双子

 白い少女が、輪郭を描く。
 白い少年が、色を加える。
 
 それだけで出来上がった武器の数々が、問答無用にサボコロとエンに襲い掛かる。
 2人はその攻撃から逃げながら、且つ攻撃を放つというのを繰り返していた。
 そうして試合開始から、1時間以上が経つ。

 「何て試合だ……」
 「うん……2人とも、走りっぱなしだよ……」

 体力が無くなると、気力が失われていく。
 そして気力が失われると共に、精神的な面で弱みが出てくる。
 次元師にとってそれが悪循環になっていく事は、2人にも分かっていた。

 「は……あいつら、マジで化け物みたいだな……」
 「ここまで来て汗ひとつ掻かないとはな……とんだ相手だ」

 サボコロは、腕に力を入れる。
 武器型と違って魔法型は自分の体に直接負担がかかる。
 その分技の一つ一つの大胆さでは、武器型に劣らず強い。
 サボコロはエンより遥かに体力がある為、動き回って攻撃するのも当然の事。だが。
 流石に疲れを露にしない相手をずっと見ていると、攻撃出来るものも出来なくなってくる。

 「サボコロ、あの2人は一緒にしたら強いが……1人が欠けるとバランスが崩れるタイプだ」
 「……そう、だな」
 「だからそこを突く。隙を見てコンビネーションを崩すぞ」
 「あぁ……————了解っ!!」

 その場からエンの姿が消える。
 サボコロは会場の中央付近にいたセシルに向かって、にっと笑った。
 常に片割れのテシルと背中合わせの彼女は、少しだけしかめっ面をつくる。

 「じゃあいくぜ——————————炎撃ィィッ!!!!」

 腕を上げ、そのまま下ろし、サボコロの掌から業火なる炎が唸りを上げた。
 その炎の塊は、双子の輪郭を見事捉え、喰らいつこうとする。

 「忘れました? 私達は————————無敵です」

 セシルの上げた筆がまたしても輪郭を描き、その刹那にテシルが色を加える。
 黒い骨組みで描かれた、箱を象る四角い壁が双子の周りに出現した。 
 セシルが、ふっと笑う。

 が、然し。


 その瞬間、その箱は————————何かが割れるような音と共に、崩れ去る。


 「え……——————っ」


 セシルの小さな声は、轟と鳴る炎の渦の中へ消えた。
 そしてふっと、炎の中から2人の影が空中に現れる。
 咄嗟に頭上へ逃げたが、そこでさえ。


 「炎柱——————————ッ!!!!」


 真上に、紅い髪の少年がいた。
 地面から湧き上がった炎の柱が、今度こそ見事に双子を捉える。
 
 「う……ぐぁ——————ッ!!」
 
 セシルと思われる声が響く。
 炎柱が唸り治まると、炎は消えるように散り、双子は垂直に落下した。
 サボコロも地面まで落とされ、また地上にはエンが弓を片手に清清しく立っていた。
 体を若干打ったサボコロは、へへっと笑いながらエンの許へ歩く。

 然しその直後、背後からの鋭い視線に咄嗟に振り向いた。

 「ぐ————ッ!!?」

 サボコロの腹部に、太くて鋭い剣が突き刺さっていた。
 剣を象る黒い輪郭と、それに色を付け加えたような物体。
 そんな双子の次元技はそのまま溶けてなくなった。
 じんじんと伝わる痛みと、止まる事を許さない赤い液体。
 それでも彼は倒れる事なくそこで立ち尽くしたまま。

 「おいサボコロ……大丈夫かっ!?」
 「あ、あぁ……にしても油断してたぜ……」

 後ろには、テシルとセシルが立っていた。
 ここに来て、初めて汗を拭っているのが分かる。
 セシルは、口を開いた。

 「やりますね……2人とも。特にエンさんは何を考えているのか検討もつかない」
 「それは有難い言葉だな……最も、感謝などしていないが」
 「……あの壁を突き破ったのも、貴方ですよね?」

 エンは、頷く事なくただ小さく笑った。
 さっき、作られた箱の壁は一瞬にして砕け散った。
 それは双子の背後でエンが一瞬の内に弓を放ち、打ち砕いたから。
 そして元々双子を上空に追い込む為の策略でありカモフラージュ。
 最後にサボコロが腹部を貫かれたのは誤算だったが、そこまでは見事思惑通り。
 少しだけ気を乱したセシルを見て、サボコロも笑う。

 「その様子じゃあ、戦うのは難しそうですね……。では行きましょうか——————テシルッ!!」

 承知、と小さな声が響き、2人はまた突如消えた。
 静かな空気だけが、会場に残る。
 2人の姿が見えないのは、どうやら僅かに残った煙のせいだけではなさそうだ。

 「あいつら……何で姿を消せるんだ……?」
 「……」
 
 小さなサボコロの声に、エンは何も答えなかった。
 目の前の景色に白い双子の姿は見えない。
 エンは、少し景色を見据える。

 (……——————まさかッ!!?)
 

 と、その時。


 「——————ッサボコロ上だっ!!!」
 「——————!!?」

 突如、遥か上空から雨のように何か固い物が物凄い速さで降ってきた。
 それは小さな槍のような形をしていて、容赦なくサボコロ達に降り注ぐ。
 咄嗟に腕で槍を防ぐが、サボコロもエンも腕に傷が刻まれる。

 「く……ッ、上にいたのか……ッ!!」
 「いや……奴らは上にいないぞッ」

 全ての槍が降り注ぎ、2人がふと上を見上げた時。
 サボコロの背中に、何かがめり込んだ。

 「—————ッ!!?」

 めりり……と、太い棒のようなそれは、サボコロの背中に突き刺さる。
 パキリ、と。そう音が鳴る。
 サボコロは小さな声と、赤い液体を口から吐き出した。
 そして彼は、そのまま倒れ伏せた。

 「さ、ぼころ……————ッ!?」
  
 サボコロが倒れた時、その先には白い少女が冷たい瞳を輝かせていた。
 少し細めの棍棒をその手に、彼女はエンを睨みつける。

 「速さも強さも判断力も————————そして注意力さえ」

 「…………ッ」

 「貴方達には——————欠点が多すぎるのでは?」

 彼女は少し突き放すような口調でそう言った。
 馬鹿にしたように息を吐く彼女の手元から、棍棒が溶け消える。

 「て、ぇめ……ッ!!!」
 「あら……まだ起きられるのですね。流石、野蛮なだけはありますね」
 「——————ッ!!!」

 エンは突如弓を構え、矢を引き、荒い手順で体勢をつくる。
 その速さは迅速なるもので、彼は間も無く一気に指を離す。
 近距離の位置にいた彼女に向かって、弓が走る。

 が。

 「「——————!!?」」

 彼女は、くるりとまわった。
 そうして弓は、彼女を通り過ぎて遠くの壁に向かって進み、そうして突き刺さる。

 「————ああ、あとは冷静さにも欠けてそうですね」

 彼女の声も、口調も、焦りを見せず変わらない。
 これが本当の——————代表となるべき次元師なのだろうか。

 サボコロは起き上がろうと必死に体を動かし、
 エンはただ、弓を片手に立ち尽くす。
 試合開始後から、僅か2時間。

 そしてここから————————双方の間で絶対的な差が、生まれ始める。

Re: 最強次元師!! ( No.893 )
日時: 2013/03/02 10:09
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: 2DX70hz7)

 第227次元 矢の先には

 試合会場では、赤い液体が所々に付着している。
 紅髪の少年は未だぴくりとも動かない。
 その代わりもう一人の小さな少年は必死に足を、腕を、動かし続ける。

 「——————一閃!!!」

 エンが弓を引き、矢が放たれる。その矢は金色の光を帯び、一直線に白い少女へと向かう。
 彼女は自分の背丈以上ある大きな筆でその矢を受け止めた。
 そしてそのまま腕に力を込めると共に、矢を弾き返した。
 
 「——————ッ!!」
 「は……ッ、前線で戦っていた彼を失った貴方に勝機はないでしょう。諦めたらどうですか?」
 「生憎だが、俺は諦めるという言葉を知らんのでな」 
 「……そうですか」
 
 少女、セシルはゆっくりと、筆を持ち上げる。
 その背を片割れのテシルに託して。
 エンは、弓を構える。

 「第七次元発動————————描直!!!」

 彼女は腕を使って豪快に筆を回し、現れた黒い塊のようなものをエンに向かって投げつけた。
 今までの描空とは違うのだろうかと、そんな事を考えている暇などエンにはなかった。

 「複閃——————ッ!!!!」

 一本の矢を放ち、それがまた分散し多数の矢が黒い塊と対峙した。
 然し彼の矢を、それはすり抜ける。

 「……な、ぁ……ッ!!?」

 刹那、黒い塊はそのまま空中で広がり、エンに降りかかった。
 エンは自分の体を見る。すると体の所々には黒い文様が浮かび上がっていた。
 然し害はない。彼はじっと自分の体を見つめたまま固まっている。

 「ふふっ……————どうですか?」

 気味の悪い文様。エンは再び弓を構える。
 然しセシルは微笑んだまま。その筆を、持ったまま。

 「その鋭い矢、放ってはいかがですか?」
 「……っ?」
 「まぁ今のあなたには——————無理な話ですが」
 
 エンは、弓を引く。
 彼女目掛けて、目を細めて指を添え、彼女だけを見据えたまま。 
 そうしてエンは——————指を

 
 「……ッ!!?」

 
 ——————離す事は、できなかった。


 「な、……ぜ……————ッ!!?」

 エンの指が、小刻みに震える。
 

 「忘れました? ——————私の描いた輪郭は、私の意のままになる事を」


 少し時間を巻き戻して考える。
 セシルが輪郭を描いて、テシルがそれに色を加えていた。
 然し一度も、テシルがその描いたものを操ってはいなかった。
 ずっと、セシルがエンとサボコロに直接手を下していた。
  
 そう、彼女の描いた輪郭は、彼女の意のままに動くという事。

 そしてテシルの次元技がその輪郭と一体となった場合、テシルの誘導権はその時点で失われる。
 つまり彼女の次元技と一体になった今のエンでは、動く事すらままならない。
 
 「ぐ……ぎ、ぃ…………ッ!!!」
 「無駄ですよ? 私の元力は、貴方の元力に勝るようですから」
 
 彼女はくすくすと笑って、ふいっと筆を躍らせた。
 瞬間エンはくるりと回る。ぎこちない動きで、一歩一歩足を動かす。
 その先にいたのは。

 「————————ッ!?」

 紅髪をバンダナで束ねた、少年だった。

 「さぁ——————仲良く死んでもらいましょーか?」

 エンの左腕が、ゆっくりと持ち上がる。
 震えながらも弓はエンの正面に現れ、エンの右手も添えられる。
 エンの意思はそれに反抗し、動きはとても滑らかとは言えなかった。
 然し、エンは弓を引く。
 それが本人の意思とは関係なしに。
 
 「……え……ン……?」

 その時、小さな声がエンの耳に届く。
 それは紛れもなく、サボコロ・ミクシーの声。

 「な、何で……お、前…………うぐッ……!!」
 「何、をしている……早く逃げろ阿呆!!!!」
 
 エンは必死に自分の指を動かして、矢の位置をずらす。
 セシルは笑ったまま。そしてサボコロの口から、血が垂れ下がる。

 「な……わけにも、……っかねぇ……だろう、が……ッ」
 
 サボコロの頭から、白いバンダナがずれ落ちる。
 そのバンダナは血の海にぽちゃりと浮かぶ。みるみるうちに赤く染まっていく。
 
 「2人で……勝つんじゃ、なかったのか、よ……————?」
 
 ぐんッ、と。
 エンの体が引っ張られる。
 這い蹲っているサボコロに、矢が向けられる。
 エンの顔が更に苦しくなると、また指は震え出す。
 
 サボコロは、ゆっくりと……そう、ゆっくりと、立ち上がった。


 「や、めろ……早く逃げろ、と言ったんだ…………本当に死ぬぞ——————ッ!!!!」
 「……エン……俺は……——————————ッ!!」


 ズブリッ————————と。
 鈍い音が、走る。

 エンの指が一瞬力を失った時、
 細く輝く一本の矢は、少年の心臓に突き刺さった。
 紅い彼が崩れ落ちる一瞬の時が、ゆっくりと、鮮明に、捉えられる。
 目の前で飛び散った赤いものが、エンの頬にこびりついた。


 「さ……ぼ——————」


 言葉は紡がれない。
 エンの体はまだ何かに縛られているというのに、
 彼の体から、全ての力が滑り落ちたような気がした。

 「さ、サボコロ——————ッ!!!」
 「そんな……————ッ」

 選手席にいたレトヴェールが声を張り上げる。
 然しその声は歓声に掻き消される。そしてキールアは顔を伏せる。 
 エンは、動かないまま。

 「ふふ……本当に、面白いですね? テシル」
 「……油断大敵。気を抜いてはなりませんよセシル」

 エンは背を向けたまま、再び倒れたサボコロの背中を見つめる。
 一人ずっと黙っているままのエンの体が動き始める。

 「さて……そろそろ良いですよね」

 セシルは器用に筆を回し、再びエンに弓を掴ませる。
 抵抗心のまるでないエンの動きはスムーズで、あっという間に弓を構えた。
 もう一度、サボコロに矢を向ける。

 「さぁ——————死んじゃって下さいッ!!!!」

 筆を大きく振り下ろしたセシルの動きに応えるように、エンが力強く矢を摘む。
 力いっぱい、指が引きちぎれる程、彼は強く強く矢を引き絞った。

 音が、なくなる。

 「エン——————ッ!!!」

 レトが大きな声を張り上げる。
 その声は、エンの耳には届いていない。 
 然し、エンは、弓を引いた。


 それも——————急に角度を変えて。

 
 「な——————ッ!!?」


 輝く矢が向かった先は——————エンの足元だった。


 矢が刺さる。鮮血が舞う。エンの指の力が再び消え失せた。
 足の甲からか、血が噴出したまま止まらない。
 エンはまたしても機械のようなぎこちない動きで、今度はきちんと振り返った。

 いつの間にか、黒い文様は姿を消していた。
 力なく佇む彼は、弓を片手に顔を上げた。

 彼はやっと、その口を開く。


 「あまり俺をなめるなよ————————」

 
 彼の瞳は——————今までにない程の闘志を帯びる。


 「————————貴様らを、必ずぶっ潰してくれる!!!!!」

Re: 最強次元師!! ( No.894 )
日時: 2013/02/28 22:27
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: 2DX70hz7)

 第228次元 絵の具の秘密

 蒼い彼の足元から、血が流れ出ている。
 然し彼はそんな事気にも留めてはいなかった。
 まるで瞳に火がついたように、彼の全身に力が入る。

 「第七次元発動————————複閃ッ!!!」

 エンが弓を引き、矢が放たれる。
 然しさっきとは比べものにならない程の速度で、白髪の双子を捉えた。

 (は、速い————————ッ!!!!)
 
 一直線に、呼吸する間もなく矢が突き刺さる。
 セシルとテシルは反応に遅れ見事地面に転がり落ちた。

 「ぐ……は、はや……ッ」
 「……ッ!!」
 
 エンは、ゆっくりと歩く。
 本当に足を射抜いた者の動きなのだろうか。
 先程より確実に動きに力が、速さが、正確さが出てきた。

 「どうだ————地面の味は?」

 セシルが、唇を噛む。
 倒れた2人が、同じタイミングで立ち上がる。
 傷一つつかなかった2人の頬に、切り傷が入った。

 「馬鹿にする余裕があったのですね……意外です」
 「千差万別——————まだその差が広い事を忘れたか」

 2人はまた、景色から消えた。 
 目の前に映るのは、積み重なったように見える人の波だけ。
 何処を見渡しても、2人の姿は見えない。
 エンは一度上を見上げたが、そこにいるわけでもなさそうだ。
 そして彼は、表情一つ変えずに、すっと弓を構える。

 「第六次元発動——————」

 エンは、一瞬の迷いもせず。

 「——————真閃ッ!!!!」

 ある一点目掛けて、その矢を放った。
 細く鋭いその矢の先は、一見会場には誰もいない場所へ向かう。
 観客に向けられている訳でもない—————そこで。

 何もない空中から、不自然に赤い液が飛び散った。

 そしてどさり、という何かものが落ちたような音が鳴り、液体も落ちる。 
 その血というものに滴った瞬間————彼女らの姿がうっすらと血に浮かぶ。

 「——————矢張りそこにいたか、白き双子よ」

 そう、白髪の双子が、またしても地面にひれ伏しているのがよく分かった。
 2人の周りから綺麗な水のようなものが剥がれ落ちる。
 そして2人の容姿がそこから現れ、セシルテシル共に苦しい表情で血を吐いていた。
 彼女らは膝をついたままそこから動かない。いや、動けない。

 「……な、んで……っ!? どうやっ、て……あ、あれを……ッ!!!」

 セシルは、苦しそうに脇腹を抑える。
 彼女の口から顎にかけて、赤い液が滴っていた。

 「……初めは気付かなかった。遥か上空か、地面に潜り込んでいるものだと思っていた」
 「……じ、じゃぁ……何で……!!」
 「可笑しいと、思っていたんだ」
 「……っ!」
 「どこから来るか分からない技の数々。一種の能力かとも思ったが違った。
  そして……何故ずっとその状態ではいられないのか、そうも思った」

 エンは淡々と話し続ける。彼女達はまだ這い上がれない。
 エンはゆっくりと、そんな彼女等を見て口を開く。

 「それはテシル——————貴様の次元技そのものだったからだ」

 テシルは表情を変えなかったが、セシルの眉はぴくりと動いた。
 いくら元力があろうとも、次元技の効力はずっと続く訳ではない。
 先程の絵に描いた剣などのように、役目を終えればすぐに溶け消えていく。
 ずっとその状態である事が、元々不可能なのだ。

 「“透明色”——————それを体に塗れば、さも消えたように見せられる」

 どんな色でも産み出せるテシルの次元技にかかれば、透明な色をつくる事も可能である。
 テシルの次元技は白であろうと透明であろうと、決して透ける事はない。
 つまり透明も一種の色。上塗りすればそれは透明な“色”として使われる。

 「さっき……景色が一瞬ブレていたのに気がついてな。それで答えが分かった」
 「……やっぱり……何考えてるんだか読めない人です、ね……」

 景色をじっと見つめていたエンの前で、一瞬だけその景色がブレた事があった。
 森の中で育ったエンの視力は良すぎると言っても良い。
 そんな彼がじっと見ていたものは、一瞬の弱みを見せた。
 その時点から、彼には確信があったのだろう。

 「さぁ始めようか——————立て、双子よ」
 
 エンの声が、鋭い眼光が、白き2人に突き刺さる。
 足から漏れ出す血の勢いは弱まったが、簡単に動ける程弱い一閃ではなかった筈だ。 
 然し彼はそれでも尚、その足で大地の上に立つ。 
 サボコロは後ろで倒れたままぴくりとも動かない。

 「まさかあれを破った程度で——————勝った気でいるのですか?」

 ベレー帽を被ったセシルが、冷たく小さな声で言い放つ。
 ゆらりと、2人は立ち上がった。

 「私は貴方みたいな——————」

 セシルの大きな筆の震えが、止まる。
 
 「——————図太い奴が大嫌いなんですよ!!!!」

 ゴォォッ!!、と。
 一瞬、大きな音が鳴った。
 唇を強く噛むセシルは、勢いよく筆を天へ翳す。

 「第八次元発動————————、絵具空間」

 セシルではなくテシルの凛とした声が響いた時。
 会場を包み込むように、地面から絵の具の滝を想像させるものが天へと伸びた。
 それは虹色の滝で、形を崩す事なく下へ下へと色が垂れていく。
 床屋の前にある渦を巻く置物を連想させるだろう。
 あの循環を真似るように、下へいった色は突如上からまた垂れる。
 そんな虹色の壁に、3人は囲まれた。

 「この次元技を発動させるまでになるとは……誤算ですね」
 「抜山蓋世————、その姿勢だけは認めよう」

 テシルはセシルと並んでいたが、そっと足を引いた。
 セシルはこつ、こつ……と、足音を響かせエンに近づく。

 そしてセシルは、急にぴたりと動きを止めた。 

 「第七次元発動——————」


 彼女の後ろから、声が響く。


 「——————、情色!!!!」


 エンの心臓が、どくりと一度跳ねた。
 彼は咄嗟に胸を抑えたが、苦しかったのはたった一瞬。
 何が起きたのか分からぬまま。
 セシルの口元が、歪む。

 「第七次元発動——————描空!!!」

 ぐるんと勢いに任せて筆を振るう彼女。
 描かれたのは、ガラスの破片のような大小バラバラな固体だった。
 エンは殺気を感じ、咄嗟に弓を構える。
 然しやられる前にやるにしても距離が近い。
 相手は体もしなやかで、この距離では弓という武器は至極不利だ。
 手を出そうにも、出せないという状況にあった。


 「第六次元発動——————加色!!!」

 
 そう声が響いた時だった。
 控え席に座っていたレトヴェールが、はっとした。
 彼の頬を、一つの汗が伝う。
 
 (…………)

 キールアが横でエンの名前を叫んでいる最中、
 レトだけが、その声も聞こえない程の、静かな空間の中にいた。


 (……あ、れ……なんで、あいつ————————)
 

 彼は、気付いた。


 (————————幾つもの次元技を、同時に発動してんだ!!?)


 そうテシルの——————————前代未聞の行動に。



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