コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 最強次元師!!【※新スレ作成におけるお知らせ有り】
- 日時: 2015/03/15 09:40
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: u/FYQltH)
- 参照: http://ncode.syosetu.com/n5050ci/
運命に抗う、義兄妹の戦記。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
基本毎週日曜日に更新!
※追記
実は、本作を一から書き直そうと思いまして別サイト様にて“完全版”を再連載し始めました。
やりたい話が多くて一度断念してましたが、やっぱり優先しようと思ってもう一度記載致します。
ご興味のある方はどうぞ! 上記のURLで飛べます*
とってものんびりと、更新する予定です。
Twitterの垢をつくってみました→@shiroito04
イラストとか宣伝とかを呟いてます!
※注意事項
・荒らし・中傷はお控え下さい。
・チェンメなんかもお断りしてます。
●目次
prologue >>001
第001次元 >>002第011次元 >>012第021次元 >>048
第002次元 >>003第012次元 >>013第022次元 >>050
第003次元 >>004第013次元 >>019第023次元 >>052
第004次元 >>005第014次元 >>020第024次元 >>055
第005次元 >>006第015次元 >>021第025次元 >>059
第006次元 >>007第016次元 >>025第026次元 >>060
第007次元 >>008第017次元 >>027第027次元 >>063
第008次元 >>009第018次元 >>030第028次元 >>065
第009次元 >>010第019次元 >>044第029次元 >>070
第010次元 >>011第020次元 >>046第030次元 >>071
第031次元 >>072第041次元 >>146第051次元 >>224
第032次元 >>077第042次元 >>169第052次元 >>230
第033次元 >>081第043次元 >>176第053次元 >>234
第034次元 >>082第044次元 >>179第054次元 >>241
第035次元 >>090第045次元 >>180第055次元 >>245
第036次元 >>097第046次元 >>189第056次元 >>260
第037次元 >>104第047次元 >>191第057次元 >>262
第038次元 >>108第048次元 >>203第058次元 >>264
第039次元 >>109第049次元 >>209第059次元 >>268
第040次元 >>138第050次元 >>216第060次元 >>274
第061次元 >>298第071次元 >>359第081次元 >>385
第062次元 >>300第072次元 >>361第082次元 >>388
第063次元 >>308第073次元 >>365第083次元 >>391
第064次元 >>337第074次元 >>369第084次元 >>393
第065次元 >>338第075次元 >>370第085次元 >>399
第066次元 >>339第076次元 >>371第086次元 >>402
第067次元 >>345第077次元 >>377第087次元 >>403
第068次元 >>346第078次元 >>378第088次元 >>413
第069次元 >>352第079次元 >>380第089次元 >>414
第070次元 >>353第080次元 >>383第090次元 >>417
第091次元 >>420第101次元 >>448第111次元 >>480
第092次元 >>421第102次元 >>450第112次元 >>484
第093次元 >>422第103次元 >>458第113次元 >>489
第094次元 >>427第104次元 >>459第114次元 >>495
第095次元 >>431第105次元 >>467第115次元 >>499
第096次元 >>432第106次元 >>472第116次元 >>501
第097次元 >>433第107次元 >>475第117次元 >>502
第098次元 >>436第108次元 >>477第118次元 >>504
第099次元 >>444第109次元 >>478第119次元 >>507
第100次元 >>445第110次元 >>479第120次元 >>508
第121次元 >>509第131次元 >>544第141次元 >>558
第122次元 >>510第132次元 >>546第142次元 >>560
第123次元 >>511第133次元 >>547第143次元 >>563
第124次元 >>512第134次元 >>551第144次元 >>564
第125次元 >>520第135次元 >>552第145次元 >>565
第126次元 >>521第136次元 >>553第146次元 >>576
第127次元 >>528第137次元 >>554第147次元 >>590
第128次元 >>533第138次元 >>555第148次元 >>595
第129次元 >>534第139次元 >>556第149次元 >>608
第130次元 >>536第140次元 >>557第150次元 >>623
第151次元 >>631第161次元 >>683第171次元 >>759
第152次元 >>632第162次元 >>711第172次元 >>760
第153次元 >>633第163次元 >>719第173次元 >>762
第154次元 >>637第164次元 >>726第174次元 >>764
第155次元 >>643第165次元 >>739第175次元 >>766
第156次元 >>655第166次元 >>749第176次元 >>768
第157次元 >>659第167次元 >>753第177次元 >>769
第158次元 >>664第168次元 >>754第178次元 >>770
第159次元 >>665第169次元 >>755第179次元 >>771
第160次元 >>680第170次元 >>758第180次元 >>772
第181次元 >>773第191次元 >>788第201次元 >>813
第182次元 >>775第192次元 >>789第202次元 >>814
第183次元 >>776第193次元 >>792第203次元 >>826
第184次元 >>777第194次元 >>793第204次元 >>832
第185次元 >>778第195次元 >>794第205次元 >>835
第186次元 >>781第196次元 >>795第206次元 >>841
第187次元 >>782第197次元 >>798第207次元 >>853
第188次元 >>783第198次元 >>802第208次元 >>854
第189次元 >>784第199次元 >>803第209次元 >>855
第190次元 >>785第200次元 >>804第210次元 >>858
第211次元 >>862第221次元 >>883第231次元 >>897
第212次元 >>868第222次元 >>884第232次元 >>898
第213次元 >>873第223次元 >>888第233次元 >>901
第214次元 >>874第224次元 >>889第234次元 >>902
第215次元 >>875第225次元 >>890第235次元 >>903
第216次元 >>876第226次元 >>892第236次元 >>904
第217次元 >>877第227次元 >>893第237次元 >>905
第218次元 >>878第228次元 >>894第238次元 >>906
第219次元 >>879第229次元 >>895第239次元 >>907
第220次元 >>882第230次元 >>896第240次元 >>908
第241次元 >>909第251次元 >>929第261次元 >>955
第242次元 >>913第252次元 >>930第262次元 >>956
第243次元 >>914第253次元 >>933第263次元 >>957
第244次元 >>915第254次元 >>947第264次元 >>958
第245次元 >>916第255次元 >>948第265次元 >>959
第246次元 >>917第256次元 >>949第266次元 >>960
第247次元 >>918第257次元 >>951第267次元 >>961
第248次元 >>919第258次元 >>952第268次元 >>962
第249次元 >>921第259次元 >>953第269次元 >>963
第250次元 >>926第260次元 >>954第270次元 >>964
第271次元 >>965第281次元 >>977第291次元 >>988
第272次元 >>966第282次元 >>978第292次元 >>989
第273次元 >>967第283次元 >>979第293次元 >>990
第274次元 >>968第284次元 >>981第294次元 >>991
第275次元 >>969第285次元 >>982第295次元 >>992
第276次元 >>970第286次元 >>983第296次元 >>993
第277次元 >>973第287次元 >>984第297次元 >>994
第278次元 >>974第288次元 >>985第298次元 >>995
第279次元 >>975第289次元 >>986第299次元 >>996
第280次元 >>976第290次元 >>987第300次元 >>997
※第301次元〜は新スレにて連載予定
●おまけもの●
●資料集など
皆のプロフィール1 >>218
皆のプロフィール2 >>278
皆のプロフィール3 >>287
皆のプロフィール4 >>288
皆のプロフィール5 >>289
皆のプロフィール6 >>503
主な登場人物 >>852
さいじげテスト。 >>843
最強次元師!! について >>58
●番外編
キールアの想い >>41
メイド喫茶祭り① >>327
メイド喫茶祭り② >>331
メイド喫茶祭り③ >>341
友達の証① >>492
友達の証② >>493
友達の証③ >>494
疎外少年と次元少女① >>810
疎外少年と次元少女② >>811
疎外少年と次元少女③ >>812
蛇梅隊DE☆大集合!! >>829
E FIEDLA >>941
英雄と妖精 >>945
●外伝
第001時限 >>942
第002時限 >>943
第003時限 >>944
●キャラ絵(1人)
奏様が描いて下さったルイル >>116
奏様が描いて下さったティリ >>105
奏様が描いて下さったロク >>119
奏様が描いて下さったロク(舌出しVer.) >>185
奏様が描いて下さったロク(ポニテVer.) >>523
奏様が描いて下さったキールア >>127
奏様が描いて下さったアリル >>141
奏様が描いて下さったリリアン >>148
奏様が描いて下さったミル >>154
奏様が描いて下さったフィラ副班 >>162
奏様が描いて下さったレト >>168
奏様が描いて下さったレト(メイド服Ver.) >>329
奏様が描いて下さったガネスト >>304
奏様が描いて下さったガネスト(メイド服Ver.) >>318
奏様が描いて下さったアルア >>460
●キャラ絵(複数)
奏様が描いて下さったレト、ロク、キールア >>693
奏様が描いて下さったエン、ミル、リルダ >>737
☆奏様には毎度ご感謝しております!!
すごく似ていて、イメージ通りです
キャラの絵が分からない場合には奏様の絵を見て下されば納得します!!
これからも描き続けてほしいですね、是非とm((黙
●お知らせなど
* 2009 11/13 執筆開始
* 2013 09/01 執筆中断
* 2014 01/17 執筆再開
* 2014 10/19 別サイトにて再連載開始 >>980
* 2015 03/15 新スレ作成におけるお知らせ >>998
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200
- Re: 最強次元師!! ( No.875 )
- 日時: 2012/01/09 20:14
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: aaUcB1fE)
- 参照: http://loda.jp/kakiko/?id
第215次元 “本当”の次元技
(寒…っ、ていうか……苦しい……ッ)
薄暗い箱の中。
キールアはきょろきょろと辺りを見回していた。
時間が経つだけ酸素が薄くなり、次元技も使えない今では如何しようもなかった。
壁を叩いても意味はない。次元技は普通の人間に壊す事のできない絶対な力を持っている。
「さて…彼女が死ぬのはあと何分後でしょうか?」
「くそ……ッ、やっぱり棄権させとく冪だった…!!!」
キールアは突然に口を塞ぐ。
どうやら酸素が徐々に薄れ始めたらしい。
寒く、苦しく、暗いこの空間は、キールアにとっては最悪な状態だった。
現状なまだ薄いながら酸素は残っている。
このペースで酸素がなくなっていくと、キールアが耐えられるのはあと30分程度だろうか。
(どうする…?このまま時が経っても空気が薄くなるだけ…。でも次元技が使えないと……どうしようもならない…っ)
キールアは立ち尽くしたまま考えた。
今の自分は次元師ではあるが、次元技は使えない。
元力を使い果たした以上元には戻れない。
薄れ行く空間の中色々と考えを巡らしていた——————、が。
「さて…————————、これからが本番ですよ?」
ルルネは再び微笑んだ。
嫌な笑みで、楽しそうに。
その表情に気付いたレトは箱を見つめる。
キールアは未だ箱の中でふらふらと動いていた。
そろそろ10分が経過する。
酸素と比例して、意識までもが薄れていった。
キールアは苦しみのあまりその場で倒れ、這い蹲って息をしていた。
(本当に…苦しい……あたしこのまま…どうなるんだろう…?)
今の自分は唯の人間。
次元師に勝とうだなんて夢のまた夢。
それでも、例え足手纏いでも役に立ちたかった。
キールアはそう思いながらぎゅっと拳を握る。
(ロクを…ロクを救うんだって……決めてたのに…ッ!!)
こんなところで挫けたくない。負けたくない。
キールアはゆっくりと立ち上がったが、喉に何かが詰まり、再度膝をつく。
まるで何年も賭けて築いてきたモノを、崩すかのように。
「ご…、め……レト……っ」
キールアの瞳には、自然に涙が溜まっていた。
ロクは何度も自分の事を救ってくれた。
初めての友達になってくれた。
家族を亡くして絶望の淵にいたキールアに、手を差し伸べてくれたのに。
(…————————私には、何もできないね…っ)
次元師としても人間としても。
ロクを救う事はできない。
この状況で…キールア自身に勝ち目はない。
如何すれば良かったのだろう。
レトの言う通り、素直に棄権をすれば良かっただろうか。
いつも自分の選択は…自らの首を締めていた。
ロクやレトはそういう事をしないのに。
きちんと考えて、行動するのに。
自分は…2人とは違った。
強くない。2人のように、誰にでも、何にでも打ち勝てるような2人には追いつけない。
そんな2人の後姿を…一体何度見てきたのだろう。
自分が、ロクに手を差し伸べる事はない。
ロクは自分に、優しく手を差し伸べてくれたのに。
『友達に…—————なろうっ?』
凄い雨の日だった。川も荒れてて寒い日だった。
それでもロクは、自分の大切な本を探してきてくれた。
とても素直に——————、自分に笑ってくれた。
今まで自分は何をした?
ロクに対して何かしてあげた事があっただろうか?
レトの夢を崩したくない。
ロクの姿を失いたくない。
いつだって自分は——————————————、そう望んでいたのに。
「強くなりたい、って……思って、た…の…、に……ッ!!」
キールアは思う。
この苦しい中、息も出来ないこの状況で。
たった2人の大事な人の為に何ができるか。
あの2人の笑う姿を見たいと望むのは——————————、不可能なのだろうか。
「キールア!!!、棄権しろ!!!、もう良いから棄権してくれ!!!」
レトは叫ぶ。
幼馴染の苦しむ姿をもう見たくなくて、必死に叫んだ。
手すりに捕まって、必死になって叫んだ。
届け、届けと…強くそう思いながら。
(ごめんね…レト。あたし、今…やっとレトの気持ちが分かったよ……)
自分は今までずっとレトのような状態だった。
傷ついてほしくないから、ずっと不安で仕方ないから、戦わないでって。
心の奥底からそう叫んでた。
でもレトはきっと…こう思ってた。
譲れないんだって。
きっとその思い以上の決意があったんだって。
だからレトは…逃げたり、戦いを放棄した事はなかったんだ。
キールアはふっと笑った。
レトの気持ちが分かるようで…とても優しげな笑みを浮かべた。
そう笑ったその瞬間——————————、
『————————————————————強く、なりたい?』
頭の中で、もしくは心の中で。
幼くも凛とした声が響く。
(だ……だ、れ……?)
息も絶えるその寸前。
キールアは心の中で問いかけた。
『強くなりたいかと聞いているの…答えて』
強きで、それでいてしっかりとした声。
声の主の質問に、キールアは迷わず答えた。
(なり、たい……、強く、強く……なりたい……ッ)
追いつけなくていい。
何度傷ついても構わない。
唯キールアは…願った。
例え弱くても役に立ちたい。
些細な事でも力になりたい。
『そう、じゃあ——————————————覚悟を決めて』
(……————ッ!!?)
『貴方は二度と防御型には戻れない——————————それでも構わないというのなら誓いなさい』
もう二度と援護側には戻れない。
それはそう、自分が戦いに混ざるという事。
戦闘に…命の賭けた戦いに挑むという事。
今よりずっと前のキールアだったなら…きっとそれを拒んだ。
然しあの頃のキールアはもういない。
あの頃の弱くて、臆病なキールアは何処にもいない。
いるのはそう————————、強い覚悟を持った“今”のキールアだけ。
(あた、しは…助けたい……っ)
『……』
(世界でたった1人のあたしの大親友を——————————救いたいッ!!!!)
あの時から、あの瞬間から。
キールアとロクは最高の大親友だった。
それはそう、まるで出会う事が運命だったかのように。
『良い答えね——————————、さぁ叫びなさい』
(え、ぁ……な、にを……っ?)
『貴方の“本当”の次元技は【慰楽】じゃない————————本来の次元技の名を叫びなさい!!!』
キールアの心臓は高鳴った。
それと同時に意識まで抜けていく。
それでも、きっとそれでも。
キールアは全力で立ち上がる。
眩暈がして、吐き気がして。
頭痛がして、意識が失せて。
それでも必ず立ち上がる——————————————、あの2人の真横を歩きたくて。
「次元、の扉……——————————発動!!!!!」
叫べ、叫べ。
本当の次元技を。本当の気持ちを。
世界で1番大切な大親友の為に——————————今、力を呼び覚ます!!
「————————————————、百槍!!!!!」
まるでそう、ロクに届けるように。
伝えるように——————————キールアは叫んだ。
- Re: 最強次元師!! ( No.876 )
- 日時: 2012/03/29 22:29
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: 5E9vSmKZ)
- 参照: http://loda.jp/kakiko/?id
第216次元 透箱
途端の事だった。
ドーム状の箱の隙間から、眩い光が強く漏れる。
それに何だ何だ、とざわめく観客達。
然しこの場で一番驚いていたのはルルネ・ファーストだった。
「な…何です!?」
その光は次第に強さを増して、この場全体を包み込む。
時間に隙もなく、多大な爆発音と煙が立ちこめる。
ルルネは腕で顔を覆い、僅かな視界の中煙の中にいる少女に目をやった。
そこにいたのは、重そうな銀の槍を持った金髪の少女。
金色の瞳はルルネを捉え、その細い腕で槍の柄をしかと握っている。
銀の槍の柄の先には紫色のリボン状の物が2つ、ひらひらと舞っている。
彼女は不安定な体を引き摺るように、一歩一歩ゆっくりと近づいてくる。
少女の名は、キールア・シーホリーだ。
(こんな土壇場で…————在り得ないですよッ!!)
ルルネは厳しい顔つきでぎゅっと拳を握り締める。
予想もしていなかった展開。
まさか唯の人間が、次元師として覚醒するなんて。
然し、それが人間の怖い所であるのも知っている。
実際殆どの次元師が、“土壇場で次元の力に目覚める”のだ。
人間は窮地に追いやられた時、その能力をフルに発揮するという。
それがどんな状況下であったとしても。
精神的なものに関わってくる“次元の力”は、人間の精神力に大きく関わってくる。
だからルルネは逆にキールアが次元の力に目覚めるチャンスを与えてしまった事になる。
面倒な事になった、とルルネ本人も心の内で後悔した。
「まさかこの土壇場で次元の力に目覚めるとは……流石予選を勝ち抜いてきただけはありますね」
キールアは無言のまま立っていた。
唯じっとルルネを見据え、丁寧に丁寧に呼吸を繰り返しているだけ。
先程まで無酸素空間の中にいて、今やっと呼吸が戻ってきたと言ってもいい。
キールアはそれだけ意識が失せていた。
今も少し体が震えていて、不規則な呼吸な乱れも未だ整ってはいない。
覚醒したと言えど、次元を手にしたばかりではとても戦えない状況だった。
「これが…あたしの本当の次元技……」
キールアは今一度槍を見つめた。
慰楽とは違う、本来自分が持つべき次元技。
冷たくも強く凛々しい形——————そんな風に思えた。
「は、はは…、今持ったばかりの次元技で勝てるだなんて思わない事ですよ?」
「…思ってないよ」
「…っ!余裕をこいていられるのも——————今の内ですッ!!」
ルルネ・ファーストは両手を華麗に天へ向ける。
キールアも負けじと一歩手前へ下がった。
「————————、隠妨!!」
その両手を前へ突き出した途端、瞬く間にキールアの周りを箱が囲む。
自分の背丈より大きめのその箱で、完全に景色が遮られた。
そのせいで相手の姿も確認できなくなる。
「どこを…—————見てるんですか!!!」
後方から声がしたと思い振り向けば、遅かった。
キールアは足の脛を勢い良く蹴られ、そのまま後ろへ滑り転がってしまう。
どうやらルルネは肉体戦も出来るらしい。
キールアは槍を使って立ち上がった。
「…どこから来るかも分からない恐怖を、味わえば良いのです!!」
まるで箱から声がするようにも聞こえる。
さっきの空間の中で大分体力も精神力も削ったキールアにとって、今の状況は不利に等しい。
それに加え相手は次元唱無しで次元技の使える、代表者候補だ。
決して易しい相手ではない。
「——————、こっちです!!!」
さっき同様、キールアは即座に振り向く。
然しそこに、声の主はいなかった。
「え…——————」
確かに声がした、筈だった。
「現出——————!!!!」
次元技を唱える声が、別の方向から鳴り響く。
さっきの声は“フェイク”、キールアの耳を騙す為の作戦に過ぎなかった。
体力の戻らないキールアを逆に利用した事になる。
「う…あぁぁぁぁ————ッ!!!」
咄嗟に腕を構えたキールアは、爆撃に巻き込まれふっ飛ばさせる。
確実に体を打ちつけているのに、煙の中では影が動いていた。
キールアは、もう一度立ち上がった。ふらふらの体で、もう一度。
「…まだ立ち上がりますですか」
「まだ…終わって、ない……ッ」
ふーん、とルルネはすかした態度のまま立っていた。
まるでキールアの事を相手だと思っていない態度で。
「まぁ…足掻くのは良いですけど、どれだけもちますでしょうか?」
「………」
「所詮はまだ次元技を使いこなせていない素人……どうせなら、私の“遊び相手”ぐらいにはなってもらいますよ?」
その言葉にキールアは下唇を強く噛む。
然しキールアはまだ、一度も反撃をしていない。
いや、“反撃ができない”と言った方が正しい。
キールアにはそれだけ体力が残されていなかった。
必死に考えて、悩んで、それでも届かない。
どうすればレトに繋げられるかと、キールアは必死の想いで考える。
「第七次元発動————————、透箱!!!」
キールアの周りを、白く透明な箱が包み込む。
ガンガンッ、と拳を握り締めて叩いても、まるで傷一つつかなかった。
そう、キールアはその空間に閉じ込められたのだ。
「やめた方が良いですよ?それ、内側からでは攻撃できないので」
「…ッ!?」
「さぁ……楽しい時間の始まりですよ?」
す…っと片手を空に向かって伸ばす。
ルルネは少しだけ微笑んで、その片手をキールアに向けた。
「——————————現出!!!」
先程とは威力もスピードも違う現出が、キールアの目の前に現れる。
然しこれだけ硬い壁があって、何故次元技をこちらに向けた?
それでは壁に当たって攻撃は当たらないと、キールアは常識的に判断する。
彼女がそのトリックに惑わさていると、ルルネはふっと口元を歪ませた。
「—————————え?」
ルルネの次元技は、透明な箱を“すり抜けた”。
「キャァァァァァァ——————!!!」
見事に捕えられているキールアには直撃するも同然。
がくりと、キールアは狭い箱の中で膝をついた。
くすくす…とルルネは変わらぬ表情で笑う。哂う。
「その次元技は内側から攻撃が“できない”。それに加え外からの攻撃は全て“すり抜ける”ようになってますです」
「…く…ぁ…ッ」
「貴方が幾ら抵抗しようと…透箱はそれを全て跳ね返し、外側からの攻撃を許す」
最早キールアに、立ち上がるだけの力は残っていない。
それどころか、絶体絶命の状況に追い込まれてしまった。
「楽しませて下さいよキールア・シーホリー——————————、でないと貴方は死んでしまいますですよ?」
- Re: 最強次元師!! ( No.877 )
- 日時: 2012/05/03 18:02
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: 5E9vSmKZ)
- 参照: http://loda.jp/kakiko/?id
第217次元 繋げる想い
立ち込める煙の中で、1人の少女は膝をつく。
然し彼女は透明な箱に閉じ込められたまま。
ガラスにぺたっと手をついて、膝に手を乗せ俯いていた。
「まぁ…所詮はこんなもんですよねー……ったく、梃子摺らされましたです」
次元技を連続して使う事により、その力の消費量は半端ではない。
然しルルネ・ファーストもここまで勝ちあがってきた選ばれた次元師。
流石にその程度の疲労で疲れる相手ではなかった。
(ダメだ…どうすれば……ッ)
キールアは、銀の槍をぎゅっと握り締める。
先程手にしたばかりの自分の本当の力。
然し使い方がいまいち分からない。
今もまだ、手に持っているだけで一度も使ってはいない。
「…? どうしたです? その次元技で私に対抗すれば良いのでは?」
「……そうし、たいのも…やまやま、なんだけどね……っ」
ふーん、と適当な返事をしたルルネは、キールアから少し離れた位置にいた。
だがルルネはそこから一歩、一歩ずつ、進んでいく。
楽しそうな彼女の笑顔、然しキールアにとってはその笑顔が恐怖を与えるものにしか見えない。
ルルネは、足を止めた。
「もう少し楽しめるかと思っていましたのに…残念です」
「……」
「そろそろ終わりで、良いですか?」
ルルネが頭を揺らしてキールアに向かってそう言い放つ。
キールアの呼吸が、その時丁度整った。
きゅっと、もう一度槍を握り締めて立ち上がった。
(折角手に入れたこの力——————、使わない訳には、いかない)
キールアは、ふと辺りを見渡す。
そういえば、さっきの声の主は何処へ?
そんな事を考えているうちに、キールアは誰かの溜息によってびくっと肩を震わせる。
『こんな時に生かさないで何の為の力? 無駄ね』
「「——————————ッ!!?」」
突如、そんな声が聞こえた。
これはキールアが大きな箱の中で聞いた声。
心に直接届いた、あの声の主。
ルルネも同時に驚きを見せ、少し眉を歪ませる。
「だ…だれっ!?」
『今はそんな説明してる場合じゃないでしょう。さっさと槍を振るいなさい』
「で、でも…ッ!!」
『でもじゃない、その程度の覚悟だったなんて…呆れるわね』
「な、何だか良く分からないですけど…——————これで終いです!!!」
バッ!!、とルルネはキールアへ向かって腕を伸ばす。
慌てふためくキールアは、もう一度深呼吸をする。
できる。自分ならこの状況を奪回する事ができる、と。
「第六次元発動——————————!!!」
ルルネの声が会場に響き渡る。
キールアはもう覚悟を決めた表情で、
(そうだ…————————、こんなとこで負けてられないんだった!!!)
キールアは、唱える。
「第五次元発動————————————、一閃!!!!」
ガラスに矛先を向けたその銀の槍に、ルルネの腕はぴくりと動いて停止する。
ガガガッ、とガラスの表面を削り、その力は箱を突き抜けようとまでしていた。
「そ、そんな…在る訳ない、ですよ……ッ」
キールアの槍が、勢いを増して突き進んでいく。
(だって、ついさっき手に入れた次元技————————)
銀の槍の矛先は、絶対の強度を誇る箱を——————ぶち破る。
その槍が更に向けられた先は——————ルルネ・ファースト。
「うあぁぁぁああぁぁ——————!!!!!」
百夜の槍術師は、唸る。
見事にルルネの腹部へ命中した槍は、その先端を赤に染めてキールアの許へ帰った。
七次元の技を打ち破った、己の力。
本人さえも非常に驚いていた。
「で、きた……」
『恐怖を捨てれば問題はないわ。…ったく世話焼かせるわね』
キールアはもう一度、もう一度相手を見る。
ルルネはボロボロになりながら、尚立ち上がる。
(攻撃力は然程ない…、でも)
絶対的な、“スピード”。
百槍の特徴でもあるスピードは、英雄大六師の中でも上位。
それに加えて七次元の技に五次元で打ち勝つ事のできる技の威力。
それは今までキールアが重ねてきた努力もあるが、次元技自体も相当鍛え込まれていた。
ルルネは口元を腕で拭う。
「はは…、また土壇場、ですか……」
「……」
「……もう、良いです」
冷たくも、まるで感情のないようにも聞こえた小さな言葉。
ルルネはふらっと、体を不安定に動かす。
「もう絶対許しません…——————、一撃で決めてみせます!!!」
ルルネの瞳が闘志を帯びる。
その瞳は、全てを捨ててでも勝利を手に入れようとする強欲の瞳。
「————————現出!!!!」
突如、キールアの下から現出が出現。
その勢いに乗って、キールアは思い切って何もない上空に弾き飛ばされた。
(まずい…この状況で攻撃されたら…!!)
自分が持っているのは重たい銀の槍。
そして自分の居場所は空中。
もしもこのまま下から攻撃をされたら避ける術がない。
「第八次元発動————————————、喰い箱!!!」
彼女がそう叫んだのと同時。
地面から突如現れたのは、“大きな口を開けた箱”だった。
ガチン、ガチン、と歯を上下に動かしキールアが降りてくるのを今か今かと待っていた。
あんなものに噛まれたが最後。
確実に生きて帰れそうにもない。
「さぁ叫びなさい————————可憐なその声で啼くのです!!!」
キールアにあるのは、ついさっき得たばかりの力。
それは千年前、英雄として戦った少女の形。
キールアは、その気高き槍を下へと向けた。
「キー…ルア…!!?」
レトはガシャンッ、と手すりを勢いよく掴む。
高鳴る鼓動。込み上げる不安。
彼女は一体何をしようとしているのだろう、と。
レトの脳裏に疑問が過ぎった————、その時。
「ごめんね…————レト」
そう、小さく呟く金髪の少女。
彼女の瞳に弱さや怯えはどこにもない。
「例えこの体が砕けようと、動けなくなろうと————————あたしは貴方に繋げたい!!!」
「…——————ッ!!?」
落ちる速度は上がっていく。
金髪の少女はもう一度強く、槍を握り締めた。
「第七次元発動————————ッ!!」
ルルネ・ファーストはこの時初めて恐怖を目の当たりにする。
こんな状況下で、決して諦めない心。
その決意と眼差しに——————、初めて敗北を感じた。
「————————————————、堕陣必撃ッ!!!!」
物凄い速度で、大きな口を開けた箱の中へ入っていった。
その後間も無く爆音が鳴り響き、会場中を煙が包み込んだ。
喰い箱は勿論跡形もなく消える。そして、傍にいた少女さえも。
最後に立っていたのは、銀の槍を持つ少女。
金髪の髪を無造作に揺らした——————シーホリーの娘。
- Re: 最強次元師!! ( No.878 )
- 日時: 2012/07/02 19:19
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: TDcrpe6v)
- 参照: http://loda.jp/kakiko/?id
第218次元 1回戦、最終試合開始。
この展開を、誰が予想しただろうか。
途端に驚きの声が上がり、誰もがこの展開に胸を躍らせた。
中盤まで次元技を持っていなかったキールア・シーホリーの怒涛の逆転。
会場に立っていたキールアは、ひょろひょろと体を不安定に揺らしながらレト達の許へと戻る。
「……おま…キールア…、大丈夫か?」
色々な事があって、レトはとりあえずキールアに話しかける。
然し彼女は、手すりに捕まるなり急に倒れた。
「キールア!?」
「お、おい…大丈夫なのかよ」
「——、心配には及ばないわ」
突然にも、どこからが声が聞こえた。
その声の主は心配するな、とレトとサボコロに言い放つ。
「ったく…無茶にも程があるわねこの子」
突然具現化したのは、双斬や炎皇くらいの身長の女の子だった。
「「あぁーッ!!?」
彼女が姿を現した途端に、続けて双斬と炎皇が現れながら大声を張り上げる。
どうやら彼女を知っているらしい。
「びゃ、びゃ……ッ」
「…百、槍……」
腰辺りまでの、灰色を更に薄めたような髪色。
とてもキツそうな釣り上がった瞳。
そして幼くも凛とした声。
その全てを兼ねた存在こそ、“百槍”である。
「…びゃくそう?」
「英雄大六師の1人で……勿論僕等の戦友なんだけど…」
「…なん、つうか……お、恐ろし」
「あんた達喧嘩売ってんの?」
「「滅相もない!!!」」
炎皇は発言を中断し、双斬は両手を上げてぶんぶんと横に振っていた。
この会話からしてなんとなく百槍の存在が分かる。
「うぬ、久しいの百槍殿」
「あら光節。このバカ共の教育は一体どうなってるの?」
「教育……ああ、いや。決して悪気はないのでは…?」
「ふーん……まぁいいけど」
百槍は溜息を吐くと、ちらっと周りを見渡した。
「あら…雷皇と風皇にはまだ出会っていないの?」
その一言が放たれた瞬間、その場にいた百槍以外の全員が口を閉じた。
無理もない。百槍は何も知らなかったのだから。
「……まずい事でも言ったかしら」
レトはこの場の雰囲気を変えようと、少し話題を変える為にキールアの方に目をやった。
「と、ところでさ…、キールアは大丈夫なのか?」
「大丈夫、とは言い切れないでしょうね。何せ無茶のしすぎよ。当分は目を開けないわ」
「そうか…」
「ところであんた大丈夫? キールアの努力、全部あんたに懸かってんのよ」
「え…あ、あぁ」
キールアが気絶してまでレトに繋いだ想い。
その想いは決して無駄にはしないと、レトはとうに決めていた。
「あら、貴方が此処へ来るなんて…珍しくありませんこと?」
くすくすと、笑うように丁寧な口調の女性はもう一人の女性に言った。
然しその女性は笑わず、唯一つに縛り上げた綺麗な黒髪を翻して帰ろうとする。
「貴方も見た通り……キールア・シーホリーの活躍で今はリーダー対決になってますのよ?」
「…知らんな」
「あら冷たいですこと。彼女は今後伸びる逸材ですわよ?」
「それは彼女自身の問題。部外者が口を挟む問題ではないだろうに」
「あらあら……全く人を褒めるのが嫌いなお方ですわね」
輝くような長いウェーブの金髪を髪留めで留め、口元に扇子を当てて微笑む女性。
彼女は黒髪の女性をちらりと見やり、そうしてもう一度微笑んだ。
「まぁ私的には…貴方程の実力の持ち主が何故、この戦いに参加しなかったのか、という点が不思議でたまりませんけど」
「…つまらん事を聞くのだな、お前は」
馬鹿馬鹿しい、とでもいうように彼女は笑った。
「…私は“仲間”というのが嫌いなだけだ。独りの怖さを知らぬ者は、独りには決してなれない負け組みよ」
「まぁ…貴方程“孤高”という言葉が似合う女戦士は他にはいなさそうですわね?」
黒髪の女は、その言葉に少し眉を動かす。
そして何もなかったかのようにその場から消えた。
扇子を持った彼女はその様子を見てくすくすと笑う。
『さぁ面白くなって参りました!! 大将を残した両チームの最後の戦いです!!』
派手なアナウンスが流れ、レトヴェールは歩き出す。
彼は胸元に光るペンダントをぎゅっと握った。
義妹が落とした鍵のペンダント。それはいつも変わらずただレトの胸元で煌くだけ。
ロクアンズという“妖精”との、唯一の繋がり。
「……負けたりしねぇよ」
それだけいうと、レトはもう一度踏み出した。
戦場へ、ただ義妹との間にある長い距離を埋める一歩として。
『最終試合————————、レトヴェール・エポール対リフォル・アーミスト!!!!』
吠えるような周りの歓声の中、2人の少年はゆっくり歩きながら現れた。
相手はベージュ色の短髪の、まだ12にも満たないような少年だった。
彼はその体型に似合わない厳しい顔つきで現れ、紺のコートから手を取り出した。
そうして両者は、表に出さない闘争心を醸し出す。
「ここまで来るとは……意外だった」
「まぁ、第2試合がお前達にとっちゃ致命傷だったかな」
表の顔で笑っていても、両者は裏に隠した闘志を隠さずにいた。
そうして、向き合ったままで、
「「————————、次元の扉、発動!!!」」
2人ともその闘志を燃やすように、叫んだ。
レトの手元に双斬が現れる。
然しリフォルの周りには何もなかった。
(……魔法型、か?)
レトは少し考えた後、双斬を強く握り締め。
考えてたって、しょうがないと。
そう呟いた。
「————十字斬りィィ!!!」
双斬を絵の前で交差させ、勢いよく剣を左右に引く。
十字を象った真空波みたいなものが、リフォルの目前に迫る。
ギリ、とレトは足に力を入れて相手の出方を伺う。
リフォルはその小さな手を突き出して、
「——————、岩撃」
会場の土を掘り上げ十字の真空波を相殺した。
「え……」
「……加減をしたか。良い判断だな」
小さな子供に似合わない固い口調。
彼は手を下ろし、それに合わせて土がボロボロと落ちていく。
(十大魔次元かよ……ッ)
そう、十大魔次元の一つ、『岩皇』。
土や岩、土地を利用する魔法型で、ロクやサボコロなどが使用しているのと同じ。
十大魔次元の技の種類は全て一緒だが、技のタイプが違う為戦いにくいと言う次元師もいる。
そんな自然物を操る彼を相手に、レトは少しだけ微笑む。
面白いじゃん、とまるで楽しむように。
- Re: 最強次元師!! ( No.879 )
- 日時: 2012/08/11 15:17
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: TDcrpe6v)
- 参照: http://loda.jp/kakiko/?id
第219次元 大将決戦
「……キールア?」
金髪の少女、キールア・シーホリーはむくりと起き上がった。
長椅子に寝そべっていたらしい。キールアは、はっとした顔で手すりに捕まった。
「れ、レトは!?」
「今、戦ってる」
彼女は、反動で動けなくなった体を必死に起こし、手すりにしがみ付く。
そしてそう、下に見える幼馴染の姿を瞳に映した。
(レト……)
自分に出来るのは、ここまで。
キールアはぎゅっと指を絡ませ、祈るばかりだった。
相手の次元技は十大魔次元の一つ、岩皇。
水や風なんかと違って固体な為、双斬でも対抗しやすい。
だが一発目でなんなく十字斬りを相殺したとなると、リフォル・アーミストはかなりの手練れと見て良いだろう。
「残念だけど、俺はここで負ける訳にはいかねぇ」
「……それはこちらとて、同じ事よ」
そろそろ煙が晴れる。
レトヴェールはしかと前を見据える、そして。
「————————ッ!!」
地面を踏み締め、加速する。
そして彼は——————煙が晴れたと同時にレトの懐に飛び込んだ。
「岩柱————!!」
そう、リフォルは地面に手をつけレトを上空へ吹っ飛ばす。
反撃する間も与えられないレトは、喉元を軽く抑えた。
「ぐ、ぁ……!?」
更にリフォルは、レトの目の前にいた。
「岩——————ッ」
リフォルが拳をひっこめ、構えた瞬間、
レトは腕で双斬を自分の頭より高く上げ、
「堕陣必撃——————!!!」
それを、思い斬り振り下ろした。
遥か上空から一瞬の時を経て地面に突き落とされる2人。
リフォルは自分の拳を取り巻いていた土や岩がぱらぱらと崩れていくのを感じる。
煙の向こうにいるのは、左腰を抑え苦しくも笑う少年。
彼はそれでも、両手剣を強く握り締めた。
「あれで……終わると、思うなよ……ッ!!」
レトは両手に握られた双斬を自分の体より後ろに構えた。
その行動にびくつくリフォルは何もない腕を体の前に出す。
「第七次元発動————————八斬切り!!!!」
刹那の間。
リフォルの表情が変わる事なく、煙が裂け、赤い液体が飛び散った。
堕陣必撃の時の煙が残る中、更にレトは八斬切りを繰り出す。
何というスピードだろうか。試合開始から5分も経っていない。
「す、すげぇ……」
思わず言葉を漏らすサボコロ。
その横で無言ながら会場を見つめるエンも、じっと煙の先を見据えていた。
2人が、レトの攻撃が当たったのだと錯覚する。
————然し立っていたのは、レトヴェールではなかった。
「「!!?」」
エンもサボコロも、同時に驚く。
レトヴェールは赤い液体に滴っていた。
苦しみながら、レトは必死に手を動かす。
「嘘だろ……!?」
「一体何が……」
レトヴェールは確かに、リフォルの陣へと斬り込んでいった。
然し煙で観客は見えなかったが、中ではレトは攻撃を塞がれていたのだ。
リフォルの、岩撃で。
攻撃を塞がれ、その場で体勢を崩したレトに向かい、岩弾を放つ。
体中を痛めつけられたレトはそのまま地面の上を転がり、自分の血に塗れていた。
つまりたった一瞬で、展開が一変してしまったという事。
「ふむ……決して悪くない斬り味だな」
リフォルは傷一つ負わず、そこに佇む。
レトはやっとの思いで、それでもふらつく足つきで立ち上がった。
「へへ……そうだろ?」
今もそう、自信に満ち溢れた表情で。
軽く口元を拭うレトは、もう一度、しかと地面を踏み締めた。
それに何やら、リフォルは自分の頬をすっと撫でた。
「……この私に傷をつけるとは、意外だったな」
その撫でた箇所から、血が僅かに流れる。
どうやら、絶対敵わない相手ではなさそうだ。
「やっぱか……よっと」
レトは何といきなり上着を脱ぎ出した。
その重く黒いコートは、ばさっという音をたてて場外に転がる。
レトは黄色いTシャツ一枚になると、ぐっと腕を伸ばす。
「れ、レト!?」
「あいつ……何をしているんだ?」
「……な、なんつうか…」
「そうだな……あれを見てると……」
サボコロもエンも、少し顔を見合わせて、
「「——————————、ロクに似てる」」
そう、戦う時はいつもコートを脱いでいたあの少女。
ロクアンズ・エポールにそっくりだと、そう思った。
あの姿は、ロクの戦闘スタイルに良く似ている。
「……気合の入れ直し、というやつか」
「ま、そんなとこかな?」
恥ずかしいからと言って、レトはそんな事をした事がなかった。
でも今はまるで、あの義妹と共に戦っているのではないかと。
そういう錯覚さえ覚える。
「どうでも良い事を聞いたな————————、岩砲!!!」
リフォルは勢い良く掌を前に突き出した。
そして放たれる岩砲は、レトの目の前に迫り、そして。
「第七次元発動————————十字斬りィィィッ!!!!」
その砲撃を、真正面から受け止めた。
「う……ぐっ……——————うぁぁああああッ!!!!」
全ての風を斬り抜け、十字の真空波は————、岩砲を見事に打ち砕く。
「————!!?」
十字の真空波は岩の塊を砕き渡り、僅かリフォルの掌に触れた。
そしてリフォルは、奥歯を噛み締め、
「ふ、……ざ、けるなァァ———!!!」
その怒号と共に放った岩撃で、真空波を打ち破った。
然しレトヴェールの気配は、ない。
「——————なぁ、どっち見てんの?」
挑戦的な、その声。
金髪の彼は、双斬を頭上高く振り上げ、
「真斬————————ッ!!!!」
振り向いたリフォルの背中に、思い切り振り下ろした。
衝撃と共に前方へ飛ばされるリフォル。
そのリフォルを攻撃したのは、“真斬”。
剣の刃に持てる全ての力を集中させる、絶対的強化系の技。
然しその反動で動けなくなる場合もあるのだとか。
レトは地面に膝をつけながらも、また、もう一度立ち上がってみせた。
「お、おいおい……レトってこんなに強かったか?」
「……あいつは戦場にいてこそその実力が伸びる……そういう特性を持っているという事か……」
「まぁ……流石“あいつ”の義兄なだけあるって事か……」
エンもサボコロも気付いていない。
いつのまにか互いに言葉を交わし合っている事に。
その事に微かに気付いていたキールアは、少しだけ微笑んだ。
「流石に……易く勝たせてはくれないらしい、な……」
「当たり前だろ。……勝たなきゃいけねぇからな、絶対に」
レトの瞳に、闘志が宿る。
譲れない戦いが、決して負けられない戦いが、両者の間で繰り広げられる。
そして彼等は、お互いの武器である次元技を構え————、
「「第八次元発動————————!!!!」」
——————、天に届けるかのように、そう吠えた。
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200
この掲示板は過去ログ化されています。