コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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最強次元師!!【※新スレ作成におけるお知らせ有り】
日時: 2015/03/15 09:40
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: u/FYQltH)
参照: http://ncode.syosetu.com/n5050ci/

 運命に抗う、義兄妹の戦記。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 基本毎週日曜日に更新!


 ※追記

 実は、本作を一から書き直そうと思いまして別サイト様にて“完全版”を再連載し始めました。
 やりたい話が多くて一度断念してましたが、やっぱり優先しようと思ってもう一度記載致します。
 ご興味のある方はどうぞ! 上記のURLで飛べます*
 とってものんびりと、更新する予定です。


 Twitterの垢をつくってみました→@shiroito04
 イラストとか宣伝とかを呟いてます!



 ※注意事項

 ・荒らし・中傷はお控え下さい。
 ・チェンメなんかもお断りしてます。



●目次

prologue >>001
第001次元 >>002第011次元 >>012第021次元 >>048
第002次元 >>003第012次元 >>013第022次元 >>050
第003次元 >>004第013次元 >>019第023次元 >>052 
第004次元 >>005第014次元 >>020第024次元 >>055
第005次元 >>006第015次元 >>021第025次元 >>059
第006次元 >>007第016次元 >>025第026次元 >>060
第007次元 >>008第017次元 >>027第027次元 >>063
第008次元 >>009第018次元 >>030第028次元 >>065
第009次元 >>010第019次元 >>044第029次元 >>070
第010次元 >>011第020次元 >>046第030次元 >>071

第031次元 >>072第041次元 >>146第051次元 >>224 
第032次元 >>077第042次元 >>169第052次元 >>230
第033次元 >>081第043次元 >>176第053次元 >>234
第034次元 >>082第044次元 >>179第054次元 >>241
第035次元 >>090第045次元 >>180第055次元 >>245
第036次元 >>097第046次元 >>189第056次元 >>260
第037次元 >>104第047次元 >>191第057次元 >>262
第038次元 >>108第048次元 >>203第058次元 >>264
第039次元 >>109第049次元 >>209第059次元 >>268
第040次元 >>138第050次元 >>216第060次元 >>274

第061次元 >>298第071次元 >>359第081次元 >>385
第062次元 >>300第072次元 >>361第082次元 >>388
第063次元 >>308第073次元 >>365第083次元 >>391
第064次元 >>337第074次元 >>369第084次元 >>393
第065次元 >>338第075次元 >>370第085次元 >>399
第066次元 >>339第076次元 >>371第086次元 >>402
第067次元 >>345第077次元 >>377第087次元 >>403
第068次元 >>346第078次元 >>378第088次元 >>413
第069次元 >>352第079次元 >>380第089次元 >>414
第070次元 >>353第080次元 >>383第090次元 >>417

第091次元 >>420第101次元 >>448第111次元 >>480
第092次元 >>421第102次元 >>450第112次元 >>484
第093次元 >>422第103次元 >>458第113次元 >>489
第094次元 >>427第104次元 >>459第114次元 >>495
第095次元 >>431第105次元 >>467第115次元 >>499
第096次元 >>432第106次元 >>472第116次元 >>501
第097次元 >>433第107次元 >>475第117次元 >>502
第098次元 >>436第108次元 >>477第118次元 >>504
第099次元 >>444第109次元 >>478第119次元 >>507
第100次元 >>445第110次元 >>479第120次元 >>508

第121次元 >>509第131次元 >>544第141次元 >>558
第122次元 >>510第132次元 >>546第142次元 >>560
第123次元 >>511第133次元 >>547第143次元 >>563
第124次元 >>512第134次元 >>551第144次元 >>564
第125次元 >>520第135次元 >>552第145次元 >>565
第126次元 >>521第136次元 >>553第146次元 >>576
第127次元 >>528第137次元 >>554第147次元 >>590
第128次元 >>533第138次元 >>555第148次元 >>595
第129次元 >>534第139次元 >>556第149次元 >>608
第130次元 >>536第140次元 >>557第150次元 >>623

第151次元 >>631第161次元 >>683第171次元 >>759
第152次元 >>632第162次元 >>711第172次元 >>760
第153次元 >>633第163次元 >>719第173次元 >>762
第154次元 >>637第164次元 >>726第174次元 >>764
第155次元 >>643第165次元 >>739第175次元 >>766
第156次元 >>655第166次元 >>749第176次元 >>768
第157次元 >>659第167次元 >>753第177次元 >>769
第158次元 >>664第168次元 >>754第178次元 >>770
第159次元 >>665第169次元 >>755第179次元 >>771
第160次元 >>680第170次元 >>758第180次元 >>772

第181次元 >>773第191次元 >>788第201次元 >>813
第182次元 >>775第192次元 >>789第202次元 >>814
第183次元 >>776第193次元 >>792第203次元 >>826
第184次元 >>777第194次元 >>793第204次元 >>832
第185次元 >>778第195次元 >>794第205次元 >>835
第186次元 >>781第196次元 >>795第206次元 >>841
第187次元 >>782第197次元 >>798第207次元 >>853
第188次元 >>783第198次元 >>802第208次元 >>854
第189次元 >>784第199次元 >>803第209次元 >>855
第190次元 >>785第200次元 >>804第210次元 >>858

第211次元 >>862第221次元 >>883第231次元 >>897
第212次元 >>868第222次元 >>884第232次元 >>898
第213次元 >>873第223次元 >>888第233次元 >>901
第214次元 >>874第224次元 >>889第234次元 >>902
第215次元 >>875第225次元 >>890第235次元 >>903
第216次元 >>876第226次元 >>892第236次元 >>904
第217次元 >>877第227次元 >>893第237次元 >>905
第218次元 >>878第228次元 >>894第238次元 >>906
第219次元 >>879第229次元 >>895第239次元 >>907
第220次元 >>882第230次元 >>896第240次元 >>908

第241次元 >>909第251次元 >>929第261次元 >>955
第242次元 >>913第252次元 >>930第262次元 >>956
第243次元 >>914第253次元 >>933第263次元 >>957
第244次元 >>915第254次元 >>947第264次元 >>958
第245次元 >>916第255次元 >>948第265次元 >>959
第246次元 >>917第256次元 >>949第266次元 >>960
第247次元 >>918第257次元 >>951第267次元 >>961
第248次元 >>919第258次元 >>952第268次元 >>962
第249次元 >>921第259次元 >>953第269次元 >>963
第250次元 >>926第260次元 >>954第270次元 >>964

第271次元 >>965第281次元 >>977第291次元 >>988
第272次元 >>966第282次元 >>978第292次元 >>989
第273次元 >>967第283次元 >>979第293次元 >>990
第274次元 >>968第284次元 >>981第294次元 >>991
第275次元 >>969第285次元 >>982第295次元 >>992
第276次元 >>970第286次元 >>983第296次元 >>993
第277次元 >>973第287次元 >>984第297次元 >>994
第278次元 >>974第288次元 >>985第298次元 >>995
第279次元 >>975第289次元 >>986第299次元 >>996
第280次元 >>976第290次元 >>987第300次元 >>997

※第301次元〜は新スレにて連載予定


       ●おまけもの●

●資料集など
皆のプロフィール1 >>218
皆のプロフィール2 >>278
皆のプロフィール3 >>287
皆のプロフィール4 >>288
皆のプロフィール5 >>289
皆のプロフィール6 >>503
主な登場人物 >>852
さいじげテスト。 >>843
最強次元師!! について >>58

●番外編 
キールアの想い >>41
メイド喫茶祭り① >>327
メイド喫茶祭り② >>331
メイド喫茶祭り③ >>341
友達の証① >>492
友達の証② >>493
友達の証③ >>494
疎外少年と次元少女① >>810
疎外少年と次元少女② >>811
疎外少年と次元少女③ >>812
蛇梅隊DE☆大集合!! >>829
E FIEDLA >>941
英雄と妖精 >>945

 
●外伝
第001時限 >>942
第002時限 >>943
第003時限 >>944


●キャラ絵(1人)
奏様が描いて下さったルイル >>116
奏様が描いて下さったティリ >>105
奏様が描いて下さったロク >>119
奏様が描いて下さったロク(舌出しVer.) >>185
奏様が描いて下さったロク(ポニテVer.) >>523
奏様が描いて下さったキールア >>127
奏様が描いて下さったアリル >>141
奏様が描いて下さったリリアン >>148
奏様が描いて下さったミル >>154
奏様が描いて下さったフィラ副班 >>162
奏様が描いて下さったレト >>168
奏様が描いて下さったレト(メイド服Ver.) >>329
奏様が描いて下さったガネスト >>304 
奏様が描いて下さったガネスト(メイド服Ver.) >>318
奏様が描いて下さったアルア >>460

●キャラ絵(複数) 
奏様が描いて下さったレト、ロク、キールア >>693
奏様が描いて下さったエン、ミル、リルダ >>737

☆奏様には毎度ご感謝しております!!
 すごく似ていて、イメージ通りです
 キャラの絵が分からない場合には奏様の絵を見て下されば納得します!!
 これからも描き続けてほしいですね、是非とm((黙


●お知らせなど

* 2009 11/13 執筆開始
* 2013 09/01 執筆中断
* 2014 01/17 執筆再開
* 2014 10/19 別サイトにて再連載開始 >>980
* 2015 03/15 新スレ作成におけるお知らせ >>998

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Re: 最強次元師!! ( No.785 )
日時: 2011/11/02 07:52
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: DxRBq1FF)

第190次元 【GOD】の駆け引き

 「…んで、その神族さんはあたしに何の用?」
 「おお、強気だね、流石フェリーだ」
 「答えて」
 「…始めに言っとくけど——————、僕は【GOD】」 
 「…!!?」
 「その能力は、君も知っているかな?」

 少年…いや、【GOD】はまるでロクの反応を楽しむかのようにそう言った。
 【GOD】と言えば、神の頂点に立つ神。
 5人全員の神に指示を与える、中心の存在である。
 そんな者が何故ロクに会いにきたというのだろうか。

 「能力…?」
 「あぁ、世界、自然、生物、鏡、心…そして僕の能力。知ってる?」
 「知らない…そんなの、興味ない」
 「へぇ、知らないんだ。じゃあ教えてあげるよ」
 「…」
 「——————————僕の能力は“破壊”と“創造”だ」

 少年がそう簡潔に述べると、ロクの表情は一瞬で切り替わる。
 “破壊”と、“創造”。あらゆる物を壊し、あらゆる物を創造する事の出来る、絶対の能力。
 神の中心である【GOD】には相応しい能力だが…何故今それを?

 「それで、僕と駆け引きしよう?フェリー」
 「駆け引き?」
 「まぁ…君の選択肢は1つだろうけどね」
 「…!!」
 「まず1つ言おう。…僕達の仲間になってほしい」
 「な…かま…?」

 思ってもいなかったゴッドの発言に、ロクは表情を変える。
 それほど凄い能力を持ちながら、何故ロクを仲間に誘う必要があったのか。
 だがゴッドは笑ったまま、その表情を崩さぬままにロクにそう言ったのだ。

 「戦力が足りないんだ。こっちは新元魔と神2人…どう考えても戦争に勝機はない」
 「…何でそんな事をあたしに言うの?」
 「…?何でって…———」
 「——————意味のない願いを、わざわざ言いに来たの?」
 
 ロクはふっと馬鹿にしたように鼻で笑い、そう言い放った。
 ゴッドの表情も崩れたが…また笑い出す。
 
 「意味のない…か、君らしいよ、ホント」
 「…」
 「でも、君は仲間になざるを得なくなるよ?」

 ゴッドはあくまで笑っていた。
 何か策があるのか…とロクの表情も再度固くなる。
 自信満々のゴッドは声の音程を高くする事なく、平常心でロクと向き合った。

 「…仲間にならないと、この蛇梅隊を破壊しなくちゃならないからさ」
 「————ッ!!?」
 「言っただろう?僕の能力は“破壊”と“創造”だ、と。簡単なんだよ、そんな事くらいは」
 「そんな…それだけはやめて!!!」 
 「…もし嫌なら神側につく事を選べ」 
 「…!?」
 「君のいる冪場所はそこじゃない。…本来君は神族として活動するべきなのだから」
 「……」
 「…12月25日の早朝に僕はもう1度此処に来る————その時に答えを聞こうか?ロクアンズ・エポール」
 「…!?…あ…!!」

 小さなロクの声を掻き消して、ゴッドは颯爽と消える。
 突然現れて、突然姿を消した神族。
 人間が最も恐れる冪その相手は勝ち誇った笑みを浮かべていた。 
 風の如く、砂の如く、霧の如く、闇の如く。
 神の中心に立つ神は、消えた。

 「あた、しが…仲間…?」

 その夜、ロクは顔を曇らせたまま、布団を被って眠ろうとしたが、
 そんな事…出来る筈もなかった。
 ただ夜空の雲に隠れて浮かぶ、あの金色の月だけが、
 窓の外からじっとロクを見つめていただけだった。


 
 
 あれから3週間という時が経つ。
 今から丁度1週間後は、ロクの誕生日であり、ゴッドが迎えに来る日でもある。 
 憂鬱な暗い景色が続く、目の前にあるのは決して明るい光ではない。
 分かっていたとしても、理解が出来なかった。
 何となく調子の出ないロクの溜息の頻度は、日に日に増すばかりだった。

 「おいロクー、朝飯行くぞー」

 扉の向こうで声がする。良く聴き慣れた声だ。 
 義兄の声に反応して窓から視線を外したロクは、真っ直ぐに扉へ向かう。

 「おはよ、ロク。…って、どうした?」
 「え?あぁー…いや、何でもないよ」
 「?、そうか?」

 レトヴェールには一目で分かってしまう。
 だがロクはそれも苦笑いで誤魔化した。
 
 「先行ってて?あたしまだお腹空いてないし」
 「うぇ…マジ?」
 「うん」 
 「…今日は嵐だな」

 何て冗談をかますレトは、片手を上げてひらひらさせ、先に食堂へ行ってしまった。
 そんなレトを見えなくなるまで見送り、いなくなった途端、ロクの顔は曇り始める。
 扉をゆっくりと閉め、暗い部屋の中に入るロク。
 またも襲いかかる、あのゴッドの言葉。
 ロクは再度溜息をつくと、机の上にあったペンダントに目を向けた。
 千年前、日記の鍵としてフェアリーが使用していたペンダント。

 ロクはそのペンダントを手に取った。
 が、少しの違和感を感じる。

 (あれ…?)

 ペンダントを横にして見ると、なにやら切り込みが入っている。
 ハートの形になっているその膨らみの部分に何か入っているのだろうか。
 ロクは気になって切り込みにそって開けようと思ったが、びくともしない。
 まさか何かの力で固くされているのかもしれない。
 
 「…———元力、か」

 一目見ただけでそう判断したロクは、師匠の修行を思い出し、元力を注いで力を込める。
 すると…その元力は解け、ぱかり、とペンダントが開く。
 中に入っていたのは、とても小さな紙だった。

 「何これ…」

 ロクは高鳴る鼓動を抑えて、その古くて小さな紙を開いた。
 この文字は、何処が見た事がある。
 ロクは懸命に記憶を辿って、あ、と声を上げた。

 嘗てルイシェルへ囚人ルポスを倒しに行った時に見つけた、あの看板の文字。




 「…——————————、え?」



 
 途端、ロクの表情は一変する。
 文字を読み進めて行くに連れて、冷や汗も止まらなかった。
 信じられないその文章に、現実に戻る事が出来たのは数分後。
 ロクはごくりと喉元を鳴らして、緊張感に浸る。

 「今日…何日だっけ…」
 
 部屋にあるカレンダーに視線を移して、今日の日にちを辿る。
 今日は、12月18日だった。 
 再度唾を飲み込むと、急いでロクは部屋を飛び出した。
 小さな紙を握り閉めて、向かう冪目的地へと走って行った。

 暗い雲の下で、ロクはただ1人走る。
 会いに行かなくてはならない、あの人に。
 そんな想いを胸に、足を止まらせる事なく、ロクは走り続けた。

Re: 最強次元師!! ( No.786 )
日時: 2011/04/02 21:39
名前: 野祓 (ID: luklZ16E)
参照: そろそろ執筆活動を再開する時…。

瑚雲さん。

おー、来てない間に新展開が…。
“神族”の首魁が遂に現れましたか。
“創造”と“破壊”、正に絶対の能力と言えますね。
さて、ロクは如何なる選択を取るのか、気になる所です。
現在は最後の方くらいしか読めてないので、ちょっとずつ読んで行こうと思います。

Re: 最強次元師!! ( No.787 )
日時: 2011/04/03 00:23
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: jBQGJiPh)

>>野祓さん
 
 お…おぉ?

 久しぶりですね、名前が変わっていたのでびっくりしましたw 
 新展開ですね、貴方が来ていない間に20話くらい進みましたので。
 ぐだぐだと引きずっているので、読みにくいとは思いますが…。

Re: 最強次元師!! ( No.788 )
日時: 2011/04/04 12:06
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: jBQGJiPh)

第191次元 緑髪の女性

 「やっと着いた…」

 ロクは隣に佇む木に左手をつき、息を荒くしながらそう呟いた。
 目の前に広がるのは、自然に囲まれ、豊かな雰囲気漂うロクの故郷。
 そう、レトとロクが出会った場所である、『レイチェル』の町。
 丘の上から歩いて町の方へと向かうロク。
 目指す先は…自分の家だった。

 「…」

 もう1度、呼吸を整え、ロクはドアに手をかける。
 するとドアは普通に開く。鍵がかかっていないようだ。
 確認出来ると、ロクはギィ…と少しずつドアを開いていった。
 完全に開ききった時、目の前にいたのは、1人の女性だった。

 「…やっぱり来てくれたのね…ロクちゃん?」

 丹念に手入れの込んでいる滑らかで美しい緑色の髪。
 その髪は長く、女性の腰くらいにまで伸びている。
 服装は現代では見られないような…だが凄く温もりを感じさせる薄い黄緑のワンピース。
 瞳の色は深緑。全ての汚れを弾いてしまいそうな澄み切った瞳。
 身長は勿論高い。だが女性とだけあってとてもすらっとした体系のようだ。
 
 「ロクちゃんって事は…やっぱりあたしを知ってるの?」
 「勿論よ、だって私の—————————————」

 女性は1度目を閉じると、再度ロクの方へと汚れなき瞳を向ける。

 「—————————————、子孫だものね?」

 女性の一言で、ロクの表情は少しだけ崩れた。
 女性はロクの目の前で堂々と紅茶を飲み、ロクに座るよう薦めた。
 ロクはぎこちない気持ちのまま、それでも椅子に腰をかける。

 「やっぱり…」
 「ふふ、分かっちゃった?」
 「だって貴方———————、【フェアリー・ロック】さんですよね?」
 「ええ、そうよ?」

 フェアリー・ロック。
 その名は千年前、【FERRY】として、心の神として人の為に尽くしてきた女性の名である。
 その麗しい声は誰の心をも魅了し、嘗て歌姫と謳われていた女性…それこそがこの、フェアリー・ロックだ。

 「でも…貴方は死んだはずじゃなかったんですか?」
 「そうね、私は死んだわね」
 「じゃあ…!!」
 「でも、何故かマザーに呼ばれた」
 「…マザー?」
 「【Mother of god】…その名を知らないかしら?」

 フェアリーは問いかける口調でロクに尋ねる。
 ロクは1度考えてから、あ、と声を上げた。
 随分前そんな話があったような…そんな気がしたからだろう。

 「マザーは神の創始者。私達の母親ってところかしら」
 「それは多分知ってます、でも何故マザーに…?」
 「さぁ?私だって現世には留まれないけ、ど」
 「…?」
 「だから貴方に聞きたい事があって此処に来たの。千年前に貴方へ書いた手紙を読んでもらっていると踏んで」
 「千年前…」
 
 ロクはもう1度紙を開く。
 そこに書かれた文字とは…。


 『from ferry 0031.12.18

  私は【FEARY ROCK】、現時点での【FERRY】です
  今から千年経ったその日に、貴方に会いに行きます
  貴方に伝えなければいけない事があるのです
  千年後、貴方の家で待ってます

                dear Rokanzz epoarl』 


 ロクは紙を畳むとふいっと顔を上げる。
 フェアリーはロクに対して微笑み、くすっと笑った。

 「まさか本当に気付いてくれるなんて…凄いわ、貴方」
 「ギリギリでしたけど…」
 「ふふ、やっぱり?」
 「…それで、あたしに伝えたい事って?」

 惚気た会話をすっぱりと切り落とすように、ロクはフェアリーに言い放つ。
 態々ロクを千年も前から呼び、自分から出向くような事をするという事は、ロクに大事な用があるという事。
 ロクはそれを教えてもらう為に此処に来たのだから、それを問うのは当たり前の事実。
 フェアリーは緩んだ表情を一変させ、ロクの事を見透かすように見つめた。
 そして、フェアリーは口を開く。
 
 「……ロクちゃん、貴方は迷ってないかしら?」
 「…———!!?」
 「ゴッドに仲間になるよう脅迫をかけられ、仲間を裏切る位置にいる貴方は…迷ってないかしら」
 「どうして、それを…」 
 「全部聞いてたわ、近くにいたんだもの」
 「え…」
 「でもね、ロクちゃん、迷っちゃダメよ」
 「……」
 「私は1度迷ってしまって…誤りも真実も掴めなかった。…だから、迷ってはいけないの」

 フェアリーは窓の外に浮か薄暗い雲を睨み付けて、そう言う。
 ロクには、フェアリーの手が少しだけ震えているのが分かった。
 辛かった事を思い返して、今にも泣きそうな表情を浮かべるフェアリーは、凄く頼もしく見えた。

 「貴方には同じ過ちは繰り返してほしくない。だから、迷わないで」
 「で、でも…」 
 「自分の信じる方を選びなさい。自分が正しいと思う方を選びなさい」
 「…フェアリー、さん……」
 「答えは自分の中にしかないの。自分がどうしたいか、そういう気持ちに嘘なんか1つもないでしょう?」
 「…」
 「…貴方はとても強い。私より、遥かに強い心を持っているから」
 「強い…、心…」
 「迷うのは、自分の心に嘘があるからよ。素直になって、もっともっと、強い心を手に入れるの」
 「もっともっと…強い心を…」
 
 フェアリーは自分の掌を見つめるロクを見て、ロクの頭にぽん、と手を乗せた。
 そしてゆっくりと撫でていると、ロクも顔を上げる。
 顔を上げたロクに、フェアリーは綺麗な微笑みを浮かべた。

 「これは私からのお願い…、絶対に、諦めないで」
 「…?」
 「何があっても、どんなに苦しい現実が待ち受けていたとしても、例えどん底の中に幸せがあっても…それでも、絶対」
 「…諦めないで、ですね」
 「そう、流石心の神族ねっ!!」
 「…あたしも、1つ聞きたい事があります」
 「何?」
 「セルガドウラを…覚えていますか?」 
 「…!!」
 「今でも待っているのです、あの場所で、貴方を」
 「そう…、セルガドウラが…私を……」
 「会いに行ってあげて下さい」
 「…いいえ、それは貴方がすべき事よ」 
 「え?」
 「今の心の神は貴方…、そしてセルガドウラの話を知っているのなら…尚更ね」
 「…?」
 「じゃあね、もう会う事はないけれど、絶対に繋がっていると信じてる」
 「あ…!!」

 フェアリーは、この部屋から颯爽と出て行った。
 暗くて厚い、あの雲の下へと戻っていったのだ。
 自分の部屋に取り残されて、ロクはまた闇の中であの声を聞く。


 でも。


 「…迷っちゃ、いけない」

 ロクはもう1度その言葉を口に出して、自分の気持ちを確かめた。
 小さく呟いたその言葉は、強く、大きく心に響き渡った。

 
 
 
 
 「何してたんだい?フェアリー」
 「…別に、貴方には関係ないでしょう?」
 「フェリーに会って、何をした」

 憂鬱な空の下。
 妖精と神はすれ違う。
 妖精はキッっと神を睨んで、こう告げる。

 「私は————————、ロクアンズ・エポールに会いに行ったのよ」 
 「……あぁ、そうかい」
 「甘く見ない事ね、ゴッド」
 「…何だと?」
 「あの子は強いわよ、貴方にあの子の心を“破壊”できるかしら?」
 「…やってみせるさ、絶対に」

 神はふっと笑うと、そのまま風の如く、姿を消した。
 妖精も瞳を閉じて、姿を消す。


 ———————————、この2人の会話は、後に始まりの鐘の音を示す事になる。 

Re: 最強次元師!! ( No.789 )
日時: 2011/05/05 23:33
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: jBQGJiPh)

第192次元 決死の想い

 「…誕生日会?」
 「ええ、ロクの誕生日を、皆で祝うんですっ!!」
 「んで、いつ?」
 「いつって…当日の12月25日、明日に決まってるじゃないですかぁッ!!」
 「そ、そうか」
 「朝から昼にかけて用意して、その後にサプライズで1日中パーティやるんですっ!!」
 「まぁロクはいつも12時くらいに起きるからな…」
 「日頃の感謝を込めて、今年こそやるんですっ!!」
 
 軽くガネストに攻められ、そして半分強制です、とでも言うかのようにレトに頼み込んでいた。
 蛇梅隊の隊員達は皆快く賛成をし、今買い出しに行っているところだろう。
 何ていったって、明日が当日なのだから。
 
 「サプライズ…ねぇ」 
 「レトも手伝って下さい、一応義兄じゃないですか」
 「おい待て、一応ってなんだよ一応って」
 「だっていつもレトはこういうのパスっていうし…」
 「あのなぁ…」
 
 レトは深い溜息をつきながらも、協力する事をガネストに誓った。
 可愛らしい顔で喜ぶガネストに引っ張られて、レトは電光石火の如くパーティ会場へと向かう。
 そこでは明日の為に色々と準備をしている人達がいる。

 そう、この中には誰1人ロクを嫌う者など、いないのだ。

 「ロク…喜びますよね」
 「ああ、そうだな」

 大きな看板を用意して、そこに大きく【HAPPY BIRTH DAY】と書いてあった。
 蛇梅隊の隊員達が1つになって、一生懸命に準備をしている。
 テーブルの用意、造花の位置、飾りつけにも凝っていて、これは本気で凄い、とレトも感嘆の声を上げる。
 皆が皆、ロクへの気持ち1つで一生懸命になっている。
 レトは、明日のロクの表情を期待するだけで口元が緩んでいた。
 
 「すっげぇーよ…ホント」

 神族としての力が目覚め、2人の神族を倒してから1年が経とうとする。
 皆の表情はとても綺麗で、輝いていて、それが神の為とはとても思えない。
 レトは笑みを零して自分も手伝う為に会場の中へと入っていった。


 この時まだ、誰も知らなかった。

 ロクの本当の気持ちも、胸に秘めた想いさえ。



 

 「明日は雨かな…」

 部屋の中で、ロクはベッドで膝を抱えて座っていた。
 今日は部屋から出たくない、とロクの表情が自然にそう物語る。
 雲行きの怪しい空を見つめて、また顔を落とす。
 迷っちゃダメだ、悩んだって変わらないのだから。

 ロクの気持ちはもう既に、心に決まっていた。

 


 

 12月25日。天気、雨。
 朝から酷く降り注ぐ雨を見て、ロクの気持ちは更に憂鬱だった。
 だが、そんな事はどうでもいい。
 例え雨に打たれても、それでも気持ちは何1つ変わらない。

 「…決めたようだね、フェリー」
 「……」

 ロクはもう1度自分の部屋を見回す。
 ただ一言、ありがとう、と小さく呟いた。誰にも聞こえない、囁くような小さな声で。
 そして、神と共に窓から飛び降りた。

 
 
 「あれ…?」

 早朝から準備を進めていたレトは、会場の窓の外を眺めていた。
 曇っていて良く見えなかったが、きちんと分かるものが映る。

 「ロ、ク……?」
 
 レトの小さな声に、誰もが振り返る。
 そしてレトの見つめていた窓の外へと、一斉に視線を向けた。
 
 「おいおい、どういう事だよ…」
 「朝から出かけるなん……」

 レトの声は、そこで途切れる。
 隣にいた、奇妙な少年を見つけたから。
 ロクの隣で、何かを話している。

 「俺…行ってくる————————!!!」
 「お、おい、ちょ…!?…あぁーッ!!ったくもう——————ッ!!」

 レトに続いて、サボコロも駆け出した。
 2人に驚いた蛇梅隊の隊員達は、準備を放って後に続いた。

 大きな門の前まで来ると、レトは豪快にその扉を開ける。
 鋭い雨が瞬間にレトを襲う…が、レトは動じる事なくロクの後姿を見つける。
 あの黄緑色の髪を高く結い上げて、——————、右目が開いている。
 あれは紛れも無く、“神族としてのロク”だった。

 「お、い…—————————ロク!!!!」

 レトの声に反応したロクは、動じる事なく振り返る。
 開いた右目の視線が不気味にレトに突き刺さり、自然に恐ろしいという感情が込み上げてくる。
 レトに続いてやってきた皆が、ぞろぞろとレトの後ろに立っていた。
 そして、ロクに近づくように1歩1歩、ゆっくりと激しい雨の中を歩く。

 「何してんだよロク、今日は雨だから部屋にいた方が—————」
 「…関係ないでしょ」
 「…!!?」
 
 ロクにしてはあり得ない程酷く低く、冷たく鋭い言葉がレトの言葉を遮った。
 この現状が理解できなかったサボコロは、思わずロクの目の前へ体を進めた。
 
 「おいロクてめ…!!」
 「よせ、サボコロ」
 「だけどよ、エン!!」
 「…—————————やぁ、哀れな蛇梅隊の皆さん?」

 エンがサボコロの体を抑えると、隣にいた少年…いや、ゴッドがそう言い放った。
 如何にも楽しそうな笑みを浮かべて、愉快にそう語りかける。

 「あぁ?」
 「貴様…何者だ」
 「何者って…神族のゴッドだ」
 「…!!?」
 「し、んぞ…く…」
 「僕達に休息はないんだ—————————、行こうかフェリー」
 
 ゴッドがロクの肩に手を回した瞬間、
 サボコロはまたもその背中に向かって叫んだ。

 「おい待てよ!!!ロクを何処に連れていくつもりだてめぇッ!!!」 
 「フェリーは神族だ。僕が如何しようか、僕の勝手だ」
 「って、めぇ———————ッ!!!」

 サボコロの怒りの限度は既に最高位に達し、遂には周りに炎を纏う。
 待てッ!!と言ったエンの声も聞かないで、サボコロはゴッドに襲いかかる。

 「炎げ————————ッ!!!」
 「……—————————————、雷砲」
 
 刹那。
 金色の一閃がサボコロの横を通り過ぎ、後ろの方で莫大な爆音が鳴り響く。
 サボコロが次元技を唱えるのと、同時の筈だったのに。
 サボコロの真横を過ぎた雷砲は、地面に大きな傷を刻みつけ、そこから煙までたっていた。
 秒速13,7㎞の速さを誇る雷砲を———————、仲間に対して、放ったのだ。

 「…う、そだ…ろ……」
 「分かっただろう?フェリーはもう君達を仲間だとは思っていない。…じゃあーね」
 「おい…ロク、ロク!!」

 薄い黄土色のそのマントをふわりと翻し、ロクはゴッドと共に歩み出した。
 表情は何1つ変わらない。雨に打たれていても、仲間を裏切ったとしても。
 仲間を護る為に、仲間の為、だけに。

 「ロク——————、なぁロクアンズ————————ッ!!!」
 
 後ろから駆け出したレトはロクの細い腕を掴んだ。
 確かに震えている、ロクの左手。
 だがロクはバッ!!っとレトの手を振り払い、

 「…わらない、で……!!」
 
 「…!!」

 「もう、あたしに…—————関わらないで…——————ッ!!!!」

 ただ、懸命に心を押し殺して、そう言った。
 ロクの虚ろな瞳から流れていたのが雨なのか、涙だったのか、
 その時は…お互いに気がつかなかった。

 ただ流れる雨の音だけが、レト達の耳を過ぎる。

 最後のあのロクの顔。
 あれは正真正銘の…ロクの素顔だった、のに。

 義兄のレトは、何も言えなかった。
 義妹のロクに、何も言えなかった。

 ロクの気持ちも、自分の想いも。

 何一つとして理解ができなかった…——————————。


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