コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 最強次元師!!【※新スレ作成におけるお知らせ有り】
- 日時: 2015/03/15 09:40
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: u/FYQltH)
- 参照: http://ncode.syosetu.com/n5050ci/
運命に抗う、義兄妹の戦記。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
基本毎週日曜日に更新!
※追記
実は、本作を一から書き直そうと思いまして別サイト様にて“完全版”を再連載し始めました。
やりたい話が多くて一度断念してましたが、やっぱり優先しようと思ってもう一度記載致します。
ご興味のある方はどうぞ! 上記のURLで飛べます*
とってものんびりと、更新する予定です。
Twitterの垢をつくってみました→@shiroito04
イラストとか宣伝とかを呟いてます!
※注意事項
・荒らし・中傷はお控え下さい。
・チェンメなんかもお断りしてます。
●目次
prologue >>001
第001次元 >>002第011次元 >>012第021次元 >>048
第002次元 >>003第012次元 >>013第022次元 >>050
第003次元 >>004第013次元 >>019第023次元 >>052
第004次元 >>005第014次元 >>020第024次元 >>055
第005次元 >>006第015次元 >>021第025次元 >>059
第006次元 >>007第016次元 >>025第026次元 >>060
第007次元 >>008第017次元 >>027第027次元 >>063
第008次元 >>009第018次元 >>030第028次元 >>065
第009次元 >>010第019次元 >>044第029次元 >>070
第010次元 >>011第020次元 >>046第030次元 >>071
第031次元 >>072第041次元 >>146第051次元 >>224
第032次元 >>077第042次元 >>169第052次元 >>230
第033次元 >>081第043次元 >>176第053次元 >>234
第034次元 >>082第044次元 >>179第054次元 >>241
第035次元 >>090第045次元 >>180第055次元 >>245
第036次元 >>097第046次元 >>189第056次元 >>260
第037次元 >>104第047次元 >>191第057次元 >>262
第038次元 >>108第048次元 >>203第058次元 >>264
第039次元 >>109第049次元 >>209第059次元 >>268
第040次元 >>138第050次元 >>216第060次元 >>274
第061次元 >>298第071次元 >>359第081次元 >>385
第062次元 >>300第072次元 >>361第082次元 >>388
第063次元 >>308第073次元 >>365第083次元 >>391
第064次元 >>337第074次元 >>369第084次元 >>393
第065次元 >>338第075次元 >>370第085次元 >>399
第066次元 >>339第076次元 >>371第086次元 >>402
第067次元 >>345第077次元 >>377第087次元 >>403
第068次元 >>346第078次元 >>378第088次元 >>413
第069次元 >>352第079次元 >>380第089次元 >>414
第070次元 >>353第080次元 >>383第090次元 >>417
第091次元 >>420第101次元 >>448第111次元 >>480
第092次元 >>421第102次元 >>450第112次元 >>484
第093次元 >>422第103次元 >>458第113次元 >>489
第094次元 >>427第104次元 >>459第114次元 >>495
第095次元 >>431第105次元 >>467第115次元 >>499
第096次元 >>432第106次元 >>472第116次元 >>501
第097次元 >>433第107次元 >>475第117次元 >>502
第098次元 >>436第108次元 >>477第118次元 >>504
第099次元 >>444第109次元 >>478第119次元 >>507
第100次元 >>445第110次元 >>479第120次元 >>508
第121次元 >>509第131次元 >>544第141次元 >>558
第122次元 >>510第132次元 >>546第142次元 >>560
第123次元 >>511第133次元 >>547第143次元 >>563
第124次元 >>512第134次元 >>551第144次元 >>564
第125次元 >>520第135次元 >>552第145次元 >>565
第126次元 >>521第136次元 >>553第146次元 >>576
第127次元 >>528第137次元 >>554第147次元 >>590
第128次元 >>533第138次元 >>555第148次元 >>595
第129次元 >>534第139次元 >>556第149次元 >>608
第130次元 >>536第140次元 >>557第150次元 >>623
第151次元 >>631第161次元 >>683第171次元 >>759
第152次元 >>632第162次元 >>711第172次元 >>760
第153次元 >>633第163次元 >>719第173次元 >>762
第154次元 >>637第164次元 >>726第174次元 >>764
第155次元 >>643第165次元 >>739第175次元 >>766
第156次元 >>655第166次元 >>749第176次元 >>768
第157次元 >>659第167次元 >>753第177次元 >>769
第158次元 >>664第168次元 >>754第178次元 >>770
第159次元 >>665第169次元 >>755第179次元 >>771
第160次元 >>680第170次元 >>758第180次元 >>772
第181次元 >>773第191次元 >>788第201次元 >>813
第182次元 >>775第192次元 >>789第202次元 >>814
第183次元 >>776第193次元 >>792第203次元 >>826
第184次元 >>777第194次元 >>793第204次元 >>832
第185次元 >>778第195次元 >>794第205次元 >>835
第186次元 >>781第196次元 >>795第206次元 >>841
第187次元 >>782第197次元 >>798第207次元 >>853
第188次元 >>783第198次元 >>802第208次元 >>854
第189次元 >>784第199次元 >>803第209次元 >>855
第190次元 >>785第200次元 >>804第210次元 >>858
第211次元 >>862第221次元 >>883第231次元 >>897
第212次元 >>868第222次元 >>884第232次元 >>898
第213次元 >>873第223次元 >>888第233次元 >>901
第214次元 >>874第224次元 >>889第234次元 >>902
第215次元 >>875第225次元 >>890第235次元 >>903
第216次元 >>876第226次元 >>892第236次元 >>904
第217次元 >>877第227次元 >>893第237次元 >>905
第218次元 >>878第228次元 >>894第238次元 >>906
第219次元 >>879第229次元 >>895第239次元 >>907
第220次元 >>882第230次元 >>896第240次元 >>908
第241次元 >>909第251次元 >>929第261次元 >>955
第242次元 >>913第252次元 >>930第262次元 >>956
第243次元 >>914第253次元 >>933第263次元 >>957
第244次元 >>915第254次元 >>947第264次元 >>958
第245次元 >>916第255次元 >>948第265次元 >>959
第246次元 >>917第256次元 >>949第266次元 >>960
第247次元 >>918第257次元 >>951第267次元 >>961
第248次元 >>919第258次元 >>952第268次元 >>962
第249次元 >>921第259次元 >>953第269次元 >>963
第250次元 >>926第260次元 >>954第270次元 >>964
第271次元 >>965第281次元 >>977第291次元 >>988
第272次元 >>966第282次元 >>978第292次元 >>989
第273次元 >>967第283次元 >>979第293次元 >>990
第274次元 >>968第284次元 >>981第294次元 >>991
第275次元 >>969第285次元 >>982第295次元 >>992
第276次元 >>970第286次元 >>983第296次元 >>993
第277次元 >>973第287次元 >>984第297次元 >>994
第278次元 >>974第288次元 >>985第298次元 >>995
第279次元 >>975第289次元 >>986第299次元 >>996
第280次元 >>976第290次元 >>987第300次元 >>997
※第301次元〜は新スレにて連載予定
●おまけもの●
●資料集など
皆のプロフィール1 >>218
皆のプロフィール2 >>278
皆のプロフィール3 >>287
皆のプロフィール4 >>288
皆のプロフィール5 >>289
皆のプロフィール6 >>503
主な登場人物 >>852
さいじげテスト。 >>843
最強次元師!! について >>58
●番外編
キールアの想い >>41
メイド喫茶祭り① >>327
メイド喫茶祭り② >>331
メイド喫茶祭り③ >>341
友達の証① >>492
友達の証② >>493
友達の証③ >>494
疎外少年と次元少女① >>810
疎外少年と次元少女② >>811
疎外少年と次元少女③ >>812
蛇梅隊DE☆大集合!! >>829
E FIEDLA >>941
英雄と妖精 >>945
●外伝
第001時限 >>942
第002時限 >>943
第003時限 >>944
●キャラ絵(1人)
奏様が描いて下さったルイル >>116
奏様が描いて下さったティリ >>105
奏様が描いて下さったロク >>119
奏様が描いて下さったロク(舌出しVer.) >>185
奏様が描いて下さったロク(ポニテVer.) >>523
奏様が描いて下さったキールア >>127
奏様が描いて下さったアリル >>141
奏様が描いて下さったリリアン >>148
奏様が描いて下さったミル >>154
奏様が描いて下さったフィラ副班 >>162
奏様が描いて下さったレト >>168
奏様が描いて下さったレト(メイド服Ver.) >>329
奏様が描いて下さったガネスト >>304
奏様が描いて下さったガネスト(メイド服Ver.) >>318
奏様が描いて下さったアルア >>460
●キャラ絵(複数)
奏様が描いて下さったレト、ロク、キールア >>693
奏様が描いて下さったエン、ミル、リルダ >>737
☆奏様には毎度ご感謝しております!!
すごく似ていて、イメージ通りです
キャラの絵が分からない場合には奏様の絵を見て下されば納得します!!
これからも描き続けてほしいですね、是非とm((黙
●お知らせなど
* 2009 11/13 執筆開始
* 2013 09/01 執筆中断
* 2014 01/17 執筆再開
* 2014 10/19 別サイトにて再連載開始 >>980
* 2015 03/15 新スレ作成におけるお知らせ >>998
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- Re: 最強次元師!! ( No.810 )
- 日時: 2011/06/04 23:52
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: jBQGJiPh)
番外編 疎外少年と次元少女Ⅰ
昨晩は、酷く雪が降っていた。
雪ってレベルじゃなくて、吹雪かもしれないって程。
そして今日、せっせと家へと帰る俺は、そんな冬の冷たさを直に感じていた。
首には薄いマフラー。腕には1本の長いパンが入った袋。あまり焼けてそうにないけど。
そして裾がボロボロになったコートを羽織って、俺は裏路地の横を通る所だった。
なのに。
「…?」
俺は思わずパンの入った袋を落としそうになった。
俺が横に顔を向けた時…瞳に映ったのは、同い年くらいの女の子。
手入れされていないであろう所々に跳ねた髪の毛、裾の破けた薄い服。
そして何より、虚ろなその瞳。
「…あらあら、私に何か用がありまして?」
少女は、俺に向かってにっこりと笑ってくれた。
でもその顔は笑ってなくて、その言葉は何処か儚げで、
俺は一瞬、驚いた。
この近くにある学習院で、俺は苛められていた。
授業も聞かずぼーっとしていて、中途半端な生活を送っている。
そして且つ俺の家は若干貧しい家庭なので、更に文句を言われる毎日。
仲間と呼べる人も、友達と呼べる存在も。
俺には一切いなかった。筈。
「あ…いや…」
「そうですか」
寂しそうに笑った彼女の顔を、俺は忘れられなかった。
そして彼女の細い体を見て、俺は無意識の内にパンを千切って、その一欠片をぬっと彼女の目の前に突き出す。
彼女は首を傾げ、俺と目線を合わせる。
「…これを、私に?」
「うん、お腹空いてそうだから」
「優しいお方なのですね、貴方は」
そう言われた瞬間、俺の頬が熱を帯びるの感じた。
でも、同時に。
とても寂しそうも、見えたんだ。
心の底から笑っているように作ってるかもしれないけど、
俺には…感情のない笑顔にしか、見えなかったんだ。
それから幾日と日を重ね…俺は彼女と毎日会うようになっていた。
彼女は俺が行く度ほんのりと笑って、可愛い笑顔を見せてくれた。
俺は毎日のようにパンを千切っていたけど、不思議と母さんにはバレなかった。
俺は、彼女に尋ねた。
「ねぇ、君の名前って何ていうの?」
「…あらあら、そうですね。…忘れてしまいましたわ」
「え?」
「つい最近まで覚えていた筈なのに…何年も前から、覚えてないのです」
「そ、そうか…」
彼女はごめんなさい、とだけ答えた。
でも俺は一生懸命首を振って、こちらこそ、と笑ってみせた。
そんな俺に、彼女は不思議そうな顔をして、
「貴方こそ、名前を教えて下さらない?」
「え?お、俺の名前?」
「はい」
「ヴェイン…ハーミット、だけど…」
「ヴェイン…そう、ヴェイン、ですね?」
「お、おう」
「そう…、ヴェイン」
一瞬だけ彼女の顔が曇ると、俺の名前をもう1度だけ呼んだ。
別に気にしなかったけど…やっぱりこの子は何者なんだろう、と思ってしまう。
無邪気に笑ってくれる、でも。
でも…足りないんだよ。
「…あ、あの」
俺はそのか細い声を聞き漏らさず、彼女の方へと顔を向けた。
彼女は少し口を結ぶと、また小さく開いた。
「どうして…私に優しくして下さるのですか?」
口から出た言葉は、意外だった。
いつもと変わらぬ真顔で、でも少し心配そうに。
彼女はぎゅっと自分の手を握り締めて、そう一生懸命に言ったのだと思った。でも。
「どうしてって…放っとけないからだよ」
「…!!」
「路地でお腹空かせてボロボロになった女の子見捨てる程、俺最低な人間じゃないだろ?」
「で、でも…っ」
「俺だってお前に感謝してるし、お前も俺に感謝してる…これでいいじゃんっ!!」
そう俺がにっと笑った時、彼女は一瞬だけ暗い顔を見せて、後に笑った。
笑っているのに、泣いてるような表情だったけれど。
もう、彼女に出会って1ヶ月が経とうとする。
俺は毎日彼女に会う度、とても嬉しくなった。
同い年くらいの子供と喋った事ないし、帰っても母さんがいるだけだし。
そう考えたら…彼女に会うのが楽しみで仕方がなかった。
そうしたまま浮かれた気分でパンの入った紙袋を抱えて走った俺。
会いたくて、会いたくて…今すぐにでも彼女の笑顔を見たかった俺は、路地に着いた。
繁華街の店の裏にある路地…の向こう。
…でも。
「あ、れ…————?」
いる、筈だった。
いつもなら、この裏路地にいて、ひょっこりと顔を出すのに。
擦り切れた服を纏った彼女は、此処にいなかった。
「お、い…——————、おいッ!!」
心配になって駆け出した俺は貴重なパンまでもを落として足を進めた。
でも、3歩くらい歩いた時に、妙な音が鳴ったのに気付く。
足元で、変な音がなった。
恐る恐る下へと視線を落とした俺が見たのは…————。
「……——————、ち…血?」
真っ赤で、生暖かな、“血”。
ぴちゃ、と嫌な音を立てたそれの本体は…誰かの血だった。
渇いていない、ついさっきまでいた筈だ。
俺は瞬間的に怖くなった。
「ま、さか……ッ!!?」
もしかしたら、彼女が襲われたのかもしれない…そう思って。
俺は再度血を眺める、そして裏路地の向こうにまで続いている事を知る。
心臓が高鳴った。これ以上進むな、と言っていた。
進んだら何かの事件に巻き込まれるかもしれない。
進んだらまた誰かの血を見てしまうかもしれない。
それでも。
「……——————ッ、くそったれ!!!」
俺は、確かめたかったんだ。
あの子じゃない事を。
あの子の血ではないって、事を。
唯…それだけを確かめたかったのに。
俺は足の神経が途切れてしまうのかと思うくらいの必死さで足を動かし、走った。
血管がぶち切れてしまうと思うほど、全力で走った。
そして俺は血の跡を追う。唯只管に、我武者羅に、追う。
その先にあるものを————————、確かめたくて。
- Re: 最強次元師!! ( No.811 )
- 日時: 2011/06/14 20:03
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: jBQGJiPh)
番外編 疎外少年と次元少女Ⅱ
暗い路地の中を、俺は懸命に走っていた。
今は真っ暗でその先には何も見えないけれど、
絶対に辿り着ける、絶対にまた会える、と。
心の奥底から確信を抱いていた。
「はぁ…っ、ぁ…はぁ…ッ」
光溢れた道の向こうへと、やっとの思いで辿り着く。
そこは少し広いくらいの空間で、奥は行き止まり。
そして、その奥にいたものとは…————————。
「誰だァ?俺の縄張りに来たオロカモノっつう奴ぁ?」
その男は明らかな長身で、男の足元にはあの子がぐったりと倒れていた。
後頭部から血を流し、動こうとしているのが此処からでもはっきりと分かった。
俺はそれが分かった瞬間…相手が男で大人である事を知っていながら、
大きな声で叫んだ。
「おいてめぇ!!その子をどうするつもりだァッ!!!」
「…はぁ?お前こいつの知り合いなワケ?…へぇ、知り合いねぇ…こんな“化け物”の?」
…は?
「ば、化け…物?」
「こいつは俺の家の横にいてなァ…いつも俺の縄張りに行く道塞いでやがったんだよ」
「道って…あ、あの路地の…」
「あぁ。そこをどけっつってもどかねぇんだよなぁ。俺の物品盗みやがった犬がいたっつうのに」
物品…盗み…、犬?
何言ってるのか正直分からなくて…俺はその場の状況を理解するのに精一杯だった。
「ちっこい犬が俺に向かって吠えたと思えば…俺の財布盗んでよォ…笑っちまうよなァッ!!!」
「ち…ち、が…」
「!?」
「あれは…あの犬の、持ちぬ…しの財布…の筈……お前の、じゃ…、な…ッ!!」
「うっせぇな、調子抜かすんじゃねぇよこのアマッ!!!!」
そう言った男は容赦なく少女を蹴り飛ばした。
俺はそれを見る事にただ夢中で、我に返ったときには既に少女は呼吸困難に陥っていた。
「ま、待てよ…っ」
喉奥の方で、やっと出てきた小さな言葉。
そんな声が男に届く筈もなく、男は俺に向かって顔を動かした。
「おいてめぇ、早くここから消えろ」
「…ぁ…え?」
「消えろっつってんだよ、聞こえねぇのか?あぁ?」
今までの俺なら、当然格好悪く背を相手に見せて全力で逃げただろう。
今までの俺なら、目にいっぱいの涙を浮かべながら狂い逃げただろう。
今までの俺なら、全て見た事を忘れて他人事のふりして逃げただろう。
そう、“今までの俺”なら。
「…あぁ?おい小僧、耳悪いんじゃ————————」
「————うっせぇな、誰が逃げるなんて言ったんだよ」
あの少女に出会って、俺はどれだけ変われたのだろうか?
荒んだ心が癒え、自然に笑みを浮かべられた。
狂った心が消え、自分に素直になる事もできた。
孤独な心が終え、安らかで心地の良い心を持てた。
“たった1人で生きてきた俺を、どれだけあの少女は救ってくれたのだろう?”
偶然だった。少なくとも必然じゃなかった。
俺はあの時、偶然におつかいをしていた。
俺はあの時、偶然に路地を見つめていた。
俺はあの時、偶然に少女に見蕩れていた。
家でごろごろしていれば良かった。
じっと空を眺めていれば良かった。
しらんぷりをしていれば良かった。
なのに、どうして俺は無視しなかったのだろう?
どうして偶然と偶然と偶然が重なって、俺は少女と出会ったのだろう?
多分…きっと、それは。
「悪いな。そいつ、俺の“友達”だから」
偶然じゃあ、“なかったから”。
偶然は、重なりすぎると“運命”になる事を、
俺は気付いてしまったんだ。
だから今、俺は怖くても言ったんだ。
自信なんてないし、確信もないけれど。
それでも、“友達”だって信じているから。
「…はぁ?ははははは!!!?友達ィッ!!?この化け物がてめぇの友達かよ!?ははははは!!!世の中は面白ぇなぁ!!!」
「……」
「じゃあそのクソ生意気な面から——————————、壊してやるよッ!!!!」
俺には一瞬の余地も与えられぬまま、ガッ!!っと鳩尾に拳を喰らった。
思わず体内から血を大量に吐き出すところで、声は出ないのに唾だけが吐き出された。
俺がよろめきながら後ずさりをすると、男は容赦もなく踵を俺の背中に落とし、俺ごと地面へと叩きつけた。
土の味が妙に口内へ入ってきて、気持ちが悪い気がした。でもそんな事をいう事もできなくて。
俺が息絶える寸前で、誰かに抱えられて見事男の踵落としを逃れた。
「…が…ぁ……?」
歪んだ視界にいたのは、いつも通り裾の擦り切れた服を来た少女だった。
必死に俺の体を揺らしてる。傷ついた俺の体を、何度も何度も揺らしている。
でもその顔はいつもと変わらなくて、人形のように固まった表情でしかなかった。
「ヴェイン、起きて下さいヴェイン!!!」
自分の名前が呼ばれたような、そんな気がした時だった。
少女は俺に怒鳴りつけるように叫んでいた。
ぐらぐらと俺の体を揺すって、俺の名前を呼んでいた。
「もう…此処から逃げて下さい」
「……」
「これは私が蒔いた種でしてよ?貴方が私を庇い、救う理由なんて…何処にも…!!!」
「…なぁ」
「…!?」
「お前…泣いた事、あるか?」
俺は唐突に、そんな質問をしてみた。
あまり答えに期待してはいなかったけど、一度で良いから見てみたかったんだよな。
色んな表情の、この子の顔を。
「何を…バカな…」
「俺、我慢とか…そういう、のはいらないと思うんだ、よ…お前の表情、見てみた…いん、だ」
「…」
「笑った顔も、怒った顔も、泣いた顔も、困った顔も…全部、見てみたいなって…思うんだ…」
ずっと、望んでた。
こいつはいつになったら、俺に本当の素顔って奴を見せてくれるのかな…って。
本当はずっと期待してたのに、見せちゃくれなかった。
そう思って俺がふっと目を閉じようと思った、その時。
「あ…あら、あら…ヴェイン……?」
「……?」
「私は、全ての顔を、出しているつもりでしてよ…?ヴェ、イン……っ」
後にも先にも、少女の泣き顔を見たのはこれで1度きりだった。
少女の顔は、笑ったようにも、怒ったようにも、ないたようにも、困ったようにも見えた。
ただ…あの虚ろな瞳から一筋の涙を流して。
それがどんなに綺麗だったか、もう覚えてはいないだろうな。
ただずっと胸に焼き付いた。一瞬で心に刻まれた。
あぁ、俺はこいつを…泣かせちゃいけないなって。
- Re: 最強次元師!! ( No.812 )
- 日時: 2011/07/05 21:33
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: jBQGJiPh)
番外編 疎外少年と次元少女Ⅲ
「……こ、これは…?」
その途端、いきなり少女の体が光を帯びたように輝き始めた。
男もこの光景に驚き、少女を凝視している。
俺には信じ難い事だったけど、少女はすっと立ち上がった。
「ねぇヴェイン?」
「な…なん、だ?」
「私の名前を、叫んでくれますか?」
「お前の…名前?」
「心にふっと浮かんだその文字がきっと———————私の名前です」
「…!!?」
「今貴方の心も弾んでいる筈です、さぁ…叫んでください!!」
俺がその言葉を聞いた時には、既に心臓は俺の体内で暴れ回っていた。
激しく高鳴る鼓動。何だろう?…この、何とも言えないような。
胸が疼くような————————————この感じは!!
「次元の扉————————、発動」
「……!!?じ、げんの…扉…だと!!?」
俺は、知っている。
自然に心へと浮かんでくる…あの少女の名前を。
あぁ…俺は————————————っ!!。
「————————————————————在現!!!!!」
そうだ、俺は…次元師なんだ。
“マリエッタ”
それが、あの子の名前だったんだな。
「くそ…ッ!!」
「すっげぇー…お前、“じげんぎ”ってやつだったんだなぁっ」
「あらあらヴェイン…まさか貴方が次元師だったなんてね」
くすっと笑ったマリエッタを見て、俺にもふっと笑みが零れた。
この時、俺はやっとマリエッタと友達になれた気がする。
やっと…心を通じ合わせられたような、そんな気がする。
「次元師だと…なめやがって!!」
俺がマリエッタに気をとられている内に、男は拳を振り上げて襲ってくる。
勢いよく殴られかけた俺は咄嗟の判断で右に避け、そのまま十数メートル離れた壁へと向かい、走った。
「お、おいマリエッタ!!!」
「あらあら…何ですか?ヴェイン」
「これからどうすりゃ良いんだよ!!次元技ってどうやって使うんだァ!?」
「私の次元技はたった1つ、ヴェインになら分かる筈でしてよ?」
と言ったマリエッタの方をちらりと見ると、マリエッタは自分の背中に腕をまわしていた。
そしてゆっくりとそれを前に持ってきたと思うと、自分の身長より高く大きな太刀が握られている。
「ちょ…え、え!?」
「?、何を驚いているのです?」
「何ってお前…そ、その太刀……」
マリエッタは浅い溜息を吐くと、ヴェインの肩を勢い良く叩く。
その飛び上がる程の威力と衝撃を肩に喰らったヴェインは思わず飛び上がる。
「いったァッ!!?」
「ぐずぐずしないで下さいまして?もう敵は近づいています」
「…マジ?」
そう言った直後の事、俺の目の前を激しい音と共に土埃が舞う。
目の前にいたのは頭ぶち切れた男の顔。
あぁ、怒らせたみたいだ。
「さ、さ三次元の扉発動—————————」
「……ッ!!?」
“ヴェインになら分かる筈でしてよ?”
そう言ったお前の言葉、
信じて良いんだよな?
「————————————、強加!!!!」
そう叫んだと同時、マリエッタの虚ろな瞳が一瞬の光を帯びた。
「あらあら…次元師がいれば私は無敵でしてよ————————、ねぇ、ヴェイン?」
…あ。
初めて、マリエッタの楽しそうな顔を見たような。
そんな気がした。
「ま、待て!!分かった、俺が悪かっ————————!!!」
在現はそんな小さな言葉を聞く事もなく、
唯太刀を上から振り下ろした。
勢いのある音が響き渡り、咄嗟に避けた男の腕からも多少の血が噴出した。
ひィ!?、と声を上げ、男は凄いスピードで在現からの距離をとる。
その顔はさっきまでの威勢を感じさせる事なく、在現への“恐怖”ばかりが浮き出ている。
「あらあら…避けられてしまったわ」
「マリ、エッタ……」
「ご安心下さいまして?ヴェイン。私も次元技。唯の人間になど負けはしません」
そう言ったマリエッタは目にも止まらぬ速さで男の傍に寄り、鋭い眼光でキッっと男を睨む。
思わず後ろで手をついた男は、迫るマリエッタの恐怖に怯えている。
「…っ、ぃ…ひ……ひィィッ!!!」
恐怖で喉から掠れた声しか出ない男の声は狂いそうで、でも在現は臆する事なくじっと睨みつけた。
そして自分の身長より高く、大きな太刀を横に構え、横一閃に薙ぎ払う。
「…ぅ…ぐぅぅぅうッ!!!?」
ブンッ!!!という勢いで振られた太刀は血もつける事なく薙ぎ払われる。
男は太刀の下でびくびくと震え、またしてもマリエッタと距離をとった。
「あらあら、さっきまでの威勢は何処へ?」
「お、おお俺がわ、悪かった…!!、み、見逃してくれ…!!!!」
「…条件があります、宜しくて?」
「……へ、?」
俺も良く状況を読めないまま、時が過ぎればあの繁華街にいた。
いつもマリエッタがじっと座っていた場所だ。
「犬に謝って、そして持ち主にも謝って下さる?」
「あ…あぁ」
マリエッタは、くぅーん、と小さく吠えた犬の前に屈んだ。
だがその瞬間——————————、背後にいた男はいきなり腕を振り上げて…!!
「マリエッ————————!!?」
ほんの一瞬の出来事だった。
マリエッタは、振り返りもせず激しい金属音を鳴らし、男の首に太刀を突きつけた。
男は腕を上げたまま首をかたかたと震わせ、同時にばたりと地面に膝をついた。
「あらあら、融通の利かない哀れな大人でしてね?」
「……っ、く…ぅ……!!」
「次に変なマネをしようとするのなら、容赦なく私は貴方の首を切り落とす」
マリエッタの鋭い眼光と声に何も言えなくなった男は、頭をがくんと落とし、渋々降参した。
その姿と言ったら奇怪で、小さい女の子が男を支配していると思うと…俺まで震える程だった。
「なぁ、マリエッタ」
「あらあら、何か用がありまして?」
「…いいや、何でもないっ」
夕暮れの帰り道。
俺は何とか母さんを説得して、マリエッタと共に過ごす事の了承を貰った。
不貞腐れてたし、あまり良い顔はしてなかったけど…俺達は離れる訳にはいかないし。
そしてパン屋の袋を抱えて、俺はマリエッタと隣でとぼとぼ歩いているのが現在。
「もしかして、俺等ってずっと一緒な訳?」
「そうだと思います、貴方が死ぬまでは」
「…そっかぁー」
死ぬまで、ずっと一緒。
でも死んだら、もう一緒にはこの道を歩けない。
もし俺と彼女が出会ったのが、運命だったなら。
俺はどんな仕打ちを喰らおうとも構わなかった。
あの時、俺が偶然にも彼女と出会ったから、
今の俺が在るんだと、ココロから思ってる。
「俺、情けないかもしれないけど…それでも、“死ぬまで一緒”か?」
「ええ、情けなくても…“死ぬまで一緒”でしてよ?」
あーあ、また俺負けちゃった。
どうも弱いんだよね、マリエッタの笑顔っての。
限られた時の中で、俺がそんな笑顔を見れるのも指で数える程だろう。
だからそれまで、ずっと“死ぬまで一緒”がいいな、なんて。
また、運命って奴に強請る俺が…この頃の俺だった。
- Re: 最強次元師!! ( No.813 )
- 日時: 2011/07/10 11:43
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: SLKx/CAW)
第201次元 法ノ錠
歩いて、歩いて、歩いて。
ずっと何もない空間の中を、唯只管に歩き続けたレトヴェール。
彼は足が痺れている事に気が付き、ぴたりと足を止めた。
「ど、どうしたの?」
「足がいてぇ」
双斬はレトの背後からひょっこりと顔を出し、様子を伺うように足を見た。
外見的にはあまり痛そうには見えないが、実際とても痛いらしい。
休憩する?、という双斬の一言に賛同し、2人はその場にぺたりと座り込む。
「ちっくしょー…何もねぇじゃねぇーかよー」
「まぁ歩いても仕方ないし…ちょっと考えてみる?」
「はぁ?それって此処を出る方法が論理的に存在するって事か?」
双斬は、うんというように頷いた。
「あ、ところでさ。ドルギースのこの技…次元技じゃあねぇよな?」
「いいや、それは次元技と同じ類さ」
「…はぁ!?」
元々、メルギースとドルギースは次元師と似たような存在だった。
自分の脳内で術の構成、想像を果たし、それを元力として具現化させる。
更にその元力を使って、技を発動する…のだが。
次元師ではない為、勿論次元技は使えない。
だから2人に与えられた力というのは、“法ノ錠”というものだった。
「法の錠は、十五段階の技を元力の数値毎に使い分ける、まぁ次元技に近いものなのさ」
「待てよ、それじゃあ次元技と何も変わらねぇじゃねぇか」
「あぁ、それはね…」
次元技は、十段階の次元という箱の中に技を入れるという、入れ替え製だ。
レトであれば、“三次元の八斬切り”であったり、“四次元の八斬切り”でもある。
逆に言えば、“五次元の十字斬り”、“五次元の八斬切り”…と。
どの箱にどの技を入れるかは、その人次第で、自由な組み立てが可能である。それが“次元技”。
逆に法ノ錠は、“定められた錠に定められた技”が入っている。
十五段階の錠であるのであれば、十五という数の技が存在するという事になる。
そこが次元技と法ノ錠との違いだ。
「成る程なぁー…」
「でも本質は一緒。法ノ錠も次元技も、元力を使用するんだから」
「つまり、この空間も次元技とそう変わらねぇって事か?」
「うん、多分ね」
この空間は次元技で作り出した、といっても可笑しくはない。
レトは顎に手を当てて暫く考えていると、ぱっと手を離した。
「本質は同じ、論理的構成も同等…、よしっ!!」
「…?、ど、どうしたの?」
「ぶち壊す、次元技でなっ」
へ?、という双斬の間抜けな声はレトの耳に届く事はなかった。
「ど、どどどど!?」
「な…なんだよ」
「どうしたらそうなるのーッ!?」
「ぐだぐだ言うな、ほら次元技になれよ」
「……意味分かんないよぉー…」
渋々次元技となり、双斬は本来の姿になる。
握られた双剣を握り締め、レトはそのまま走るように元の場所へ戻っていった。
相変わらず3人とも気を失っていて、動く仕草も見つからない。
レトはふっと天井に浮かぶ星々を見つめた。
「第七次元発動————————————————、堕陣必撃!!」
剣先はみるみる内に紅く染まり、レトは、ダッ!!と上空へと飛んだ。
そして紅く染まり終えた双剣を、そのまま形を崩さず床へと斬り付ける。
剣の先が素早く床につき、床の表面を削る。その衝撃波で周りの床まで音を鳴らし、鈍い音が走る。
「…!?、何だ!?」
『君の技でこの空間が崩れようとしてるんだ…!!』
突如、この空間は急激な地震に襲われた。
頭上からは幾つ物瓦礫が、まるで雨のように降ってくる。
レトは腕でその小さな岩のような破片を抑える。
「…——————————————!!!?」
激しく揺れる中、遂に立てなくなり、レトもその場に伏せてしまった。
頭の中がぐるぐると気味の悪い感覚が回っている。
うっすらと目を開けてもそこには暗い闇しか入ってこない。
揺れ動く意識の中、レトは瞼を閉じてしまった。
一方、その頃の現世界。
(流石に我の術に填れば死も確実だろう…あそこは抜け出す事が難しい空間だからな)
少女は、機械的な瞳をぎょろぎょろと蠢かせ、辺りを見回している。
誰もこの土地にはやってこない。どうやら他の参加者は皆天使の方へ行ったみたいだ。
「……私は如何してしまったのだろう」
唯ぽつりと、そう呟いた。
動かぬその感情の無き瞳に、哀しみの色が挿した。
じっと空を仰ぐ。誰かの言葉を思い出して。
『…貴方なんか、私の姉妹じゃない』
途端にあの言葉を思い出す。
途端に瞳から滴が湧き上がる。
だがその瞬間——————————。
「……!!?——————ど…如何いう事だッ!!?」
現時点を持ってして、この土地だけが揺れ始めた。
気になって頭上を仰ぐドルギースと名乗る少女。
然し目に映ったのは————————、次元空間に亀裂の入る瞬間だった。
「ば…かな…!!、あの空間から如何やって…——————!!!」
次第に高まる心臓の鼓動と地面の揺れ。
遂に亀裂が大きくなり、そこから黒い空間が覗いている。
そして少女が目を瞑り、次に開けた時には。
「…——————————、ん、な……っ」
頭上から——————、4人の少年少女が振ってきた。
「う…ぁぁぁぁぁぁああああ——————————!!!?」
金髪の少年の声を、先頭にして。
雨の如く、4人は少女の頭上から落下してきた。
そしてサボコロ、エン、キールア、レトの順に落下し、1番下で下敷きとなったサボコロは口から血を吐き出した。
「っ…ってー…、あれ?俺達戻ってきたのか?」
「み…みたい、だね……」
双斬は呆れ顔になって下敷きとなったサボコロに目をやる。
最早倒れ伏せ、魂の抜ける直前だった。
「あちゃー…」
「れ…、れと…てめぇ……っ」
「あぁ?」
「「「早く上から降りろぉぉーッ!!!!」」」
遂には3人の声がレトの耳を過ぎった。
ちらっと3人に目をやったレトは、3人共相当怒っているのに気が付いき、さっさと降りた。
「おぉー、わりわり」
「あんたねぇ…」
「つうか俺達は何してたんだ?」
「…何処か別の場所に行っていたのは確かのようだ」
レトは、数メートル離れた所にいる漆黒の堕天使を見つけた。
明らかに驚いている、自分の創り出した空間をまんまと壊されて。
「…今度は俺達の番だぜ漆黒の堕天使さんよぉ」
レトは、空間で見てきた全ての結末と心理を元に、1歩ずつ近づいて行く。
「いや——————————純白の聖天使、メルギース!!!!」
- Re: 最強次元師!! ( No.814 )
- 日時: 2011/07/30 17:25
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: SLKx/CAW)
第202次元 純白の聖天使
「…————————!?」
レトの一言で、辺りがしんと静まり返った。
ドルギースと名乗る少女は、ひやりと頬に汗を垂らし尚、ぐっと拳を握り締めた。
「…ふ、ふはははははは!!!」
「……」
「我があの聖天使か…?笑わせてくれる!!何処にも証拠がないというのに!!!」
漆黒の堕天使は叫んだ。
まるで、その事実そのものを拒むように。
「いや…お前は正真正銘“メルギース”だよ。千年前、人間に対して優しい心を開いていた、な」
「嘘をつけ!!、それ以上戯言を言うのなら斬り殺すぞ!!!」
「…悪いな、お前は俺達を殺す事はできないし、俺達がお前を殺す事もできねぇ」
何故なら、とレトは加えて言って。
「人と接し人を愛してきたお前は…俺の義妹にそっくりだから」
レトは、1歩ずつ堕天使へと歩みより、足を止めた。
「千年前、お前等は戦争後、3ヶ月感行方を晦ましていたんだってな。それは俺も驚いた。
その間に何があったのかも分からねぇし、確証はないけど、お前がドルに対する気持ちで分かったんだ」
「ふざけるな…、そんな事貴様なんかに…!!」
「3ヶ月間の間で、お前はドルにこう言ったんだろ?…“私を入れ替わらないか”、と」
その時、堕天使は漆黒の瞳を大きく開いて後ずさりをした。
煮え滾る汗をぎゅっと包み、隠すように右腕で左腕を掴む。
「で、でもレト!!」
「ん?」
「如何やってそんな事したの!?2人が幾ら双子でも…!!」
「あぁ、そこだよ」
え、と双斬は小さな声を漏らした。
「見た目、声、体重、身長…きっとどれも全く一緒だったんだろ?まるで分身みたいでさ」
「…、ち…ち、が……っ」
「心優しいお前ならきっとやると思ったんだ——————、ドルギースという、たった1人の妹の為に」
堕天使はふっと軽くなったようにぺたんと地面に座り込んだ。
今度は、まるで嗚咽を漏らすような声で涙を啜り始めた。
「こうする、しか…なかったん、だ……」
「……」
「こうするしか……ドルを救う事なんかできなかった……っ。例え私が犠牲になったとしても…それでもっ!!」
「…あぁ、痛いほど分かるよ、その気持ち」
堕天使…いや、聖天使は涙を零し始めた。
汚れが一切のない、純粋な滴を。
「ドルは…人間に閉じ込められ、人間に苛められ、人間に全てを奪われて…決してお前等人間を許してはいなかった」
「…っ」
「だから…、救ってあげたかった……最後くらい、“姉”になりたくて……」
「…だからお前はドルの身代わりをして、何者かに殺されたって事か?」
「……」
メルギースは、うんと頷いた。
もう先程までの悪魔は何処にも存在しない。
レトは座り込んだメルの頭の上にぽんと掌を乗せて、自分もしゃがみ込んだ。
「……っ?」
「やっぱりそうだよな…命かけても、傷ついても、妹の事、護りたいよな」
「……」
「俺も一緒なんだよ、俺も…護ってやりたかった」
レトはよしよしというようにメルの頭を撫で、にっと笑ってみせた。
そして初めて向き合って見たのだ————、メルギースの“天使の笑顔”ってものを。
————————が。
「…何してるんだよ、ドルギース」
レト達の背後から、ひやりと冷たい、凛とした声が響いた。
明らかにメルギースと声が似ている、いや、本人と思っても可笑しくはない。
メルははっと驚き…その名をぽつりと呟いた。
「————————————……ど……ど、る…?」
白銀の短い髪の毛。片方だけに生えた真っ白な翼。
白い布を羽織り、背中には鎌を装備している。
明らかにメルの漆黒の容姿を、そのまま純白にしているかのようだった。
「こいつが…ドルギース……」
「?…あたしがドルギース?……あぁ、そいつが全てを吐いちゃったんだ」
「…おいてめぇ、姉に向かって“そいつ”って何だよ」
レトは冷たい言葉でそう言い放つ。
だがドルは動揺する事もなく、深く溜息を吐いた。
「あたし達の秘密知っちゃったんならしょうがないよ…ねぇメル」
「………っ」
「……、あんたを、あたしがこの世から去らせてあげる——————————!!!」
ドルを物凄い勢いで鎌を振り上げて、そのまま一気に振り下ろした。
その攻撃は口では表せず、レトは咄嗟の思いでメルの手を引いて、その場から逃げた。
鎌の先端が地面を砕き、そのまま大きな穴が広がる。
想像を絶するドルの威力。次に喰らえば、確実に死が待っているだろう。
「ぐ…ッ!!」
「だ、大丈夫かメルギース…!?」
「平気…これくらい……っ」
(如何する…、この場に彼女を置いて、戦闘に行くしか…ねぇよな!!)
レトヴェールは、残された元力のみで戦おうと決意した。
その表れに、双斬が強く強く握り締められる。
「ん…じゃあ、ぁ…」
「…!?」
「俺達、も…」
「…行くしか、ないようだな」
レトに続いて、サボコロ、エンがその場で立ち上がる。
痛みが戻ってきたのか、2人とも傷だらけの体を抑えて。
「お前ら…」
「ばぁーか、お前だけに良い格好させてたまるかってんだよ!!」
「バカサボテンの言う通りだ、レト」
「……おいてめぇ。言っとくけどなぁ、俺はサボテンじゃないぞ」
「つまらん冗談を言う前に頭の上に可愛い花でも咲かせてろ、サボテン」
キシャー!!、っとサボコロはエンに向かって怒りを表していた。
だがいつまで経っても息の合わないあの2人。
思わずレトの顔も呆れ顔へと変わっていった。
「喧嘩するなんてバッカバカしぃー…こんなんが今の次元師なんだ?」
「あぁ?おいてめぇ、それ以上言ったら灰にすんぞ」
「挑発に乗るなサボコロ、それがあいつの罠かもしれんぞ」
「…そっちの小さい方が賢いじゃん、単純な挑発に乗るなんてガキだねー?」
その言葉を耳にして、あのバカが許す筈もなく。
サボコロはありったけの元力で体中に炎を纏い、バッ!!っと手を挙げた。
「行くぜ炎皇——————————、炎弾!!!」
纏った炎が無数の弾に変形し、そのままドルギースの元へ直行する。
轟、と音を鳴らす無数の紅蓮の炎は、一瞬のうちにドルを捉え、爆風を巻き起こした。
やったか!!、とサボコロが叫んだとき、炎弾のせいで巻き起こった爆風は徐々に晴れていった。
だが。
「…っく…っ……少々梃子摺った、けど……」
「……——————!!?」
「これくらいの実力なら…、敵わない敵、じゃない」
啖呵を切ったサボコロの次元技を受けてなお、ドルギースは立っていた。
それも多少の掠れ傷で、少しよろめく程度のもの。
この勝負がどちらに転がるか…未だ影にいたキールアにも分からず終いだった。
ドルギースは偽りを隠す為に漆黒の髪を純白に染め、今まで天使かのように過ごしてきた。
必死にも救おうとしてきた姉の想いを貶し、消し去ろうとし、踏み躙った。
一途で汚れ一つない姉の想いは、果たして偽りの天使に届く事があるのだろうか。
レトヴェールは唯祈り、そして胸元に提げた義妹のペンダントを強く握り締めた。
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