コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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最強次元師!!【※新スレ作成におけるお知らせ有り】
日時: 2015/03/15 09:40
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: u/FYQltH)
参照: http://ncode.syosetu.com/n5050ci/

 運命に抗う、義兄妹の戦記。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 基本毎週日曜日に更新!


 ※追記

 実は、本作を一から書き直そうと思いまして別サイト様にて“完全版”を再連載し始めました。
 やりたい話が多くて一度断念してましたが、やっぱり優先しようと思ってもう一度記載致します。
 ご興味のある方はどうぞ! 上記のURLで飛べます*
 とってものんびりと、更新する予定です。


 Twitterの垢をつくってみました→@shiroito04
 イラストとか宣伝とかを呟いてます!



 ※注意事項

 ・荒らし・中傷はお控え下さい。
 ・チェンメなんかもお断りしてます。



●目次

prologue >>001
第001次元 >>002第011次元 >>012第021次元 >>048
第002次元 >>003第012次元 >>013第022次元 >>050
第003次元 >>004第013次元 >>019第023次元 >>052 
第004次元 >>005第014次元 >>020第024次元 >>055
第005次元 >>006第015次元 >>021第025次元 >>059
第006次元 >>007第016次元 >>025第026次元 >>060
第007次元 >>008第017次元 >>027第027次元 >>063
第008次元 >>009第018次元 >>030第028次元 >>065
第009次元 >>010第019次元 >>044第029次元 >>070
第010次元 >>011第020次元 >>046第030次元 >>071

第031次元 >>072第041次元 >>146第051次元 >>224 
第032次元 >>077第042次元 >>169第052次元 >>230
第033次元 >>081第043次元 >>176第053次元 >>234
第034次元 >>082第044次元 >>179第054次元 >>241
第035次元 >>090第045次元 >>180第055次元 >>245
第036次元 >>097第046次元 >>189第056次元 >>260
第037次元 >>104第047次元 >>191第057次元 >>262
第038次元 >>108第048次元 >>203第058次元 >>264
第039次元 >>109第049次元 >>209第059次元 >>268
第040次元 >>138第050次元 >>216第060次元 >>274

第061次元 >>298第071次元 >>359第081次元 >>385
第062次元 >>300第072次元 >>361第082次元 >>388
第063次元 >>308第073次元 >>365第083次元 >>391
第064次元 >>337第074次元 >>369第084次元 >>393
第065次元 >>338第075次元 >>370第085次元 >>399
第066次元 >>339第076次元 >>371第086次元 >>402
第067次元 >>345第077次元 >>377第087次元 >>403
第068次元 >>346第078次元 >>378第088次元 >>413
第069次元 >>352第079次元 >>380第089次元 >>414
第070次元 >>353第080次元 >>383第090次元 >>417

第091次元 >>420第101次元 >>448第111次元 >>480
第092次元 >>421第102次元 >>450第112次元 >>484
第093次元 >>422第103次元 >>458第113次元 >>489
第094次元 >>427第104次元 >>459第114次元 >>495
第095次元 >>431第105次元 >>467第115次元 >>499
第096次元 >>432第106次元 >>472第116次元 >>501
第097次元 >>433第107次元 >>475第117次元 >>502
第098次元 >>436第108次元 >>477第118次元 >>504
第099次元 >>444第109次元 >>478第119次元 >>507
第100次元 >>445第110次元 >>479第120次元 >>508

第121次元 >>509第131次元 >>544第141次元 >>558
第122次元 >>510第132次元 >>546第142次元 >>560
第123次元 >>511第133次元 >>547第143次元 >>563
第124次元 >>512第134次元 >>551第144次元 >>564
第125次元 >>520第135次元 >>552第145次元 >>565
第126次元 >>521第136次元 >>553第146次元 >>576
第127次元 >>528第137次元 >>554第147次元 >>590
第128次元 >>533第138次元 >>555第148次元 >>595
第129次元 >>534第139次元 >>556第149次元 >>608
第130次元 >>536第140次元 >>557第150次元 >>623

第151次元 >>631第161次元 >>683第171次元 >>759
第152次元 >>632第162次元 >>711第172次元 >>760
第153次元 >>633第163次元 >>719第173次元 >>762
第154次元 >>637第164次元 >>726第174次元 >>764
第155次元 >>643第165次元 >>739第175次元 >>766
第156次元 >>655第166次元 >>749第176次元 >>768
第157次元 >>659第167次元 >>753第177次元 >>769
第158次元 >>664第168次元 >>754第178次元 >>770
第159次元 >>665第169次元 >>755第179次元 >>771
第160次元 >>680第170次元 >>758第180次元 >>772

第181次元 >>773第191次元 >>788第201次元 >>813
第182次元 >>775第192次元 >>789第202次元 >>814
第183次元 >>776第193次元 >>792第203次元 >>826
第184次元 >>777第194次元 >>793第204次元 >>832
第185次元 >>778第195次元 >>794第205次元 >>835
第186次元 >>781第196次元 >>795第206次元 >>841
第187次元 >>782第197次元 >>798第207次元 >>853
第188次元 >>783第198次元 >>802第208次元 >>854
第189次元 >>784第199次元 >>803第209次元 >>855
第190次元 >>785第200次元 >>804第210次元 >>858

第211次元 >>862第221次元 >>883第231次元 >>897
第212次元 >>868第222次元 >>884第232次元 >>898
第213次元 >>873第223次元 >>888第233次元 >>901
第214次元 >>874第224次元 >>889第234次元 >>902
第215次元 >>875第225次元 >>890第235次元 >>903
第216次元 >>876第226次元 >>892第236次元 >>904
第217次元 >>877第227次元 >>893第237次元 >>905
第218次元 >>878第228次元 >>894第238次元 >>906
第219次元 >>879第229次元 >>895第239次元 >>907
第220次元 >>882第230次元 >>896第240次元 >>908

第241次元 >>909第251次元 >>929第261次元 >>955
第242次元 >>913第252次元 >>930第262次元 >>956
第243次元 >>914第253次元 >>933第263次元 >>957
第244次元 >>915第254次元 >>947第264次元 >>958
第245次元 >>916第255次元 >>948第265次元 >>959
第246次元 >>917第256次元 >>949第266次元 >>960
第247次元 >>918第257次元 >>951第267次元 >>961
第248次元 >>919第258次元 >>952第268次元 >>962
第249次元 >>921第259次元 >>953第269次元 >>963
第250次元 >>926第260次元 >>954第270次元 >>964

第271次元 >>965第281次元 >>977第291次元 >>988
第272次元 >>966第282次元 >>978第292次元 >>989
第273次元 >>967第283次元 >>979第293次元 >>990
第274次元 >>968第284次元 >>981第294次元 >>991
第275次元 >>969第285次元 >>982第295次元 >>992
第276次元 >>970第286次元 >>983第296次元 >>993
第277次元 >>973第287次元 >>984第297次元 >>994
第278次元 >>974第288次元 >>985第298次元 >>995
第279次元 >>975第289次元 >>986第299次元 >>996
第280次元 >>976第290次元 >>987第300次元 >>997

※第301次元〜は新スレにて連載予定


       ●おまけもの●

●資料集など
皆のプロフィール1 >>218
皆のプロフィール2 >>278
皆のプロフィール3 >>287
皆のプロフィール4 >>288
皆のプロフィール5 >>289
皆のプロフィール6 >>503
主な登場人物 >>852
さいじげテスト。 >>843
最強次元師!! について >>58

●番外編 
キールアの想い >>41
メイド喫茶祭り① >>327
メイド喫茶祭り② >>331
メイド喫茶祭り③ >>341
友達の証① >>492
友達の証② >>493
友達の証③ >>494
疎外少年と次元少女① >>810
疎外少年と次元少女② >>811
疎外少年と次元少女③ >>812
蛇梅隊DE☆大集合!! >>829
E FIEDLA >>941
英雄と妖精 >>945

 
●外伝
第001時限 >>942
第002時限 >>943
第003時限 >>944


●キャラ絵(1人)
奏様が描いて下さったルイル >>116
奏様が描いて下さったティリ >>105
奏様が描いて下さったロク >>119
奏様が描いて下さったロク(舌出しVer.) >>185
奏様が描いて下さったロク(ポニテVer.) >>523
奏様が描いて下さったキールア >>127
奏様が描いて下さったアリル >>141
奏様が描いて下さったリリアン >>148
奏様が描いて下さったミル >>154
奏様が描いて下さったフィラ副班 >>162
奏様が描いて下さったレト >>168
奏様が描いて下さったレト(メイド服Ver.) >>329
奏様が描いて下さったガネスト >>304 
奏様が描いて下さったガネスト(メイド服Ver.) >>318
奏様が描いて下さったアルア >>460

●キャラ絵(複数) 
奏様が描いて下さったレト、ロク、キールア >>693
奏様が描いて下さったエン、ミル、リルダ >>737

☆奏様には毎度ご感謝しております!!
 すごく似ていて、イメージ通りです
 キャラの絵が分からない場合には奏様の絵を見て下されば納得します!!
 これからも描き続けてほしいですね、是非とm((黙


●お知らせなど

* 2009 11/13 執筆開始
* 2013 09/01 執筆中断
* 2014 01/17 執筆再開
* 2014 10/19 別サイトにて再連載開始 >>980
* 2015 03/15 新スレ作成におけるお知らせ >>998

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Re: 最強次元師!! ( No.4 )
日時: 2011/02/04 22:44
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: jQHjVWGa)
参照: 紅兎です(>ω<。)

第003次元 わがまま皇女様Ⅰ

 「皆ぁぁーッ!!またあの怪物だぁー!!」
 
 1人の男の声で、町中の人々が咄嗟に隠れる。
 小さな子供の声までするが、その親は唇に指をあてて静かにするよう言い聞かせていた。

 「レト!!元魔だよッ!!」
 「分かってる。一気に決めるぞ!!」
 
 2人は本部から離れ、全速力で元魔の元へと向かった。
 ここから約20分。
 漸く辿り付いた2人の息は上がっていたが、そんなのはものともしない。
 
 「出がったな、元魔の野郎。俺が相手だッ!!」
 「いや・・・俺達、が正しいね」
 
 目の前にいたのは怪物や機械兵器を連想させる巨体たる“元魔”。
 まるで今にでも喰らいつくかのように2人を睨みつけ、その牙が口から覗いていた。
 そこでふと、女性のような声が聞こえた。

 「きゃぁーーッ!!誰か助けてーーッ!!!」
 
 元魔の右腕にしっかりと掴まれた女性。
 彼女はじたばたとなんとか元魔から逃げられるように暴れるが、びくともしない。
 どうやら囮にされたらしい。

 「ち・・・っ。人間を囮にするとはな」
 「ガルルルルル・・・・」
 
 元魔は、レトやロクが目の前にいるのにも関わらずくるりと振り返った。
 驚いた2人はすぐに後についていく。
 その先は深い緑色や淡い黄緑の色をした森林の中。
 大きな木がまるで2人を見下ろすかのように聳え、太陽の光を妨げていた。
 
 「・・・?どこ行きやがった・・・」
 「・・・あ・・・・!!レト後ろ!!!」
 
 ロクが叫んだ時には、既に遅かった。
 レトの背後には一瞬の内に伸びてきた大きな爪が突如現れ、レトの背中に直撃した。

 「ぐぁぁ!!?」
 「レト!!」
 
 ロクが驚いてすぐに駆け寄ったが、レトの出血は尋常ではない。
 深く刻まれた爪の痕が残っていて、応急処置も間に合わない。
 
 「元魔の奴・・・ッ!!・・・レト、怪我大丈夫?」
 「まぁな・・・これでもだてに次元師やってねぇよ」
 「そか・・・良かった」
 「それよりお前は元魔を追え」
 「え・・・、そんなの・・・!!」
 「それが仕事だろ・・・、それに、一般人は巻き込んじゃいけねぇ」
 「・・・分かった、あたし行ってくる!!」
 「無茶したら・・・ぶっ殺すぞ」
 「了解———ッ!!」
 
 元魔を探して森林の中を駆け回るロク。
 そこで、ロクは誰かが木に凭れかかっているのを見つけた。
 良く見ると、先程元魔に捕えられていたあの女性だ。
 
 「だ、大丈夫!?け、怪我は・・・?」
 「まぁ・・・平気よ。だって私、死ぬわけにはいかないんだもの」
 「・・・?」
 「・・・こっちの話よ。・・・ったくあの怪物は何なの・・・」
 「あれは元魔。・・・まぁ、怪物って言ったら怪物だけど」
 「・・・ふーん・・・・」
 「あたし、今からそいつを倒しに行くから、動いちゃだめだよ?」
 「え・・・倒しに、行くの?」
 「うんっ、次元師ですから!!」
 
 と、笑顔で微笑んだロクを見て、彼女は少し驚いた。
 だがロクは彼女を置いてさっさと元魔を探しに行ってしまった。
 走り続けて、森林の中央まで来たロク。
 その少しの空間に・・・元魔は佇んでいた。
  
 「あ・・・!!やっと見つけた!!」
 
 ロクの声と同時に、元魔が振り返る。
 その巨体をぐるりと回して、ロクを見下ろす元魔。
 少しだけにやりと笑う元魔。
 ロクと戦うつもりだ。

 「ほほぉ・・・・んじゃあ行きますか——ッ!!」

 ロクは右手を大きく空に向かって伸ばした。
 左手で右手の手首を掴んで、思い切り。
 
 「第五次元発動—————」
 
 そして、元魔の方に振り翳す。
 狙いを定めて、雷が掌に集まるのを感じたロクは、
 そのまま一気に雷を打ち放つ。
 
 「雷撃ィィーーーッ!!!」
 
 その雷で見事元魔を捉えたロクは、たった少しだけ勝利の確信を得ていた。
 苦しそうに足掻いていた元魔も、地面の砂煙を上げて倒れた。
 
 だが。


 「・・・え・・・・・?」


 グググググ・・・とでも言うかのように、
 元魔は再び立ち上がってきた。
 その大きな体を持ち上げて、雷を受けた筈の腹部を抑えもせずに、
 またロクの目の前で立ち塞がった。

 「まだ立てる程体力あったなんて・・・!!」
  
 ロクが一瞬頬に汗を流し、後ろに1歩下がった瞬間、
 
 元魔の太い腕の先の手の爪が、ロクの目の前にまで迫っていた。
 
 「しま———————ッ!!?」
 
 見事右肩に大きく鋭い爪を食い込まされたロクは、肩を抑えて倒れこんだ。
 出血が止まらない。それでも、
 またロクは立ち上がる。

 「あたしだって・・・死ぬ訳にはいかない・・・・」
 「・・・・・」
 「あんた達みたいな元魔を全員ぶっ倒して—————」
 
 ロクは出血の痛さにも耐え、必死に走りながら、次元昌を唱える。
 その勇敢で恐怖をも味わわせる表情に、元魔の真っ白な目も見開いた。
 
 「そして・・・神族を倒してみせる——————ッ!!!!」
  
 ロクが地面に手をついた。
 砂埃が宙を舞い、ロクの姿がはっきりと見えた瞬間、

 「第六次元発動————————」

 ロクの右手の中からまたも金色の光が零れ、その凄まじい光に、元魔は目を晦ませた。

 「雷柱———————ッ!!!」
 
 突如、元魔の下の地面から大きく、太い柱のような雷が現れる。
 その雷の柱に包まれて、元魔は輪郭までもぶらされて焼かれるようになっていた。
 その姿はまるで、火に焼かれた蛙のよう。
 
 ・・・そして、今度こそやったと思った。
 だが元魔は再度、また立ち上がってきた。
 なんてしぶとい元魔だ、とロクは呟いた。 
  
 なんと、元魔は近くの大きな木に凭れかかっていた、

 あの女性の体を掴みとったのだ。
 
 「———————!!?」
 「な・・・った、助けて・・・!!お願い・・・ッ!!!」
   
 ロクはその現状を見て、静かに手を下ろす。
 まるで、勝手にすればいいとでも言うように。
 
 「逃げて!!私は誰一人として傷つけちゃいけないのッ!!!」
 「・・・・」
 「逃げて—————!!!」
 
 彼女の注意にも耳を傾けず、ロクはただ佇んでいた。
 元魔の目の前に立っていたロクを容赦なく痛めつける。
 次第にロクは口から血まで吐いていた。

 それでも立ち続ける、それでも一切逃げない。
 その勇士に、彼女は一筋だけ滴を流した————。

Re: 最強次元師!! ( No.5 )
日時: 2011/08/16 21:47
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: DxRBq1FF)

第004次元 わがまま皇女様Ⅱ

 「やめてよッ!!貴方次元師でしょ!!どうして攻撃しないのよ…!!なん、で……っ」
 
 女性は崩れるように泣き始めた。
 勇ましくも健気で、1人の少女の姿を目の当たりにして。
 ロクは掠れながらにも、ゆっくりと口を開いて言葉を発した。
 
 「あたし…は……、人間を…誰も傷つけたく、ないの…。貴方と…同じなんだよ…」
 「でも……ッ!!!」
 「だから…攻撃なんてできな——————」
 
 と、ロクがそう言葉を言った瞬間。
 ロクの台詞を遮るように、元魔の腹部は寛大な血飛沫を散らした。
 その元魔の腹部に突き刺さったのは、紅蓮に装飾された“双剣”だった。 

 「…——————俺の義妹を傷つけるとは良い度胸だな?元魔さんよ?」

 そう、レトヴェールことレトの次元技————、“双斬”だった。
 元魔は大きな口からも多量の血液を吐き出し、恨みに満ちた目でレトを睨んだ。
 
 「ん、な……!?貴様…倒れたのではない、のか……!!」
 「バーカ、あれくらいで倒れるわけねぇだろ」
 
 元魔は少し後ずさりをし、レトから距離をとる。
 然しレトはそれを責めるように元魔に近づき、追い詰めた。
 
 「俺、今調子良いからなぁ…、遊んでやるよ」
 
 レトはふっと笑ってそういうと、双剣を太陽に捧げるかのように振り上げて、
 
 「第六次元発動——————」
 
 そう唱えて、元魔に剣を向ける。
 
 「八斬切りィィ——————ッ!!!」
 
 深く足を土にめり込ませ、低姿勢で勢いをつけたところ、元魔に向かい走り出した。
 元魔はその速さに追いつく事のできない自分の巨体を、初めて恨んだだろう。
 レトは遠慮もなく、目にも止まらぬ速さで元魔の体に8回、斬り込んだ。
 
 「ぐ…、あぁぁぁああ!!!!おの…れェェ…次元師ィィィ——————ッ!!!!」

 元魔は大きい声を上げ、激しい爆発音と共に、煙に紛れて消えていった。
 取り敢えず安堵の溜息をついたロクはぺたりとその場に座り込む。
 それを見て、レトは咄嗟に駆けつけた。
  
 「ロク!?お前平気よ…!?て、てかこの出血…」
 「平気平気っ。慣れてるよ」
 
 ロクの安心に満ちた声を聞いて、レトも少し安心した。
 そしてレトは双斬を消し、そっとロクに手を伸ばした。
 
 「義理の妹でも、なんか助けたくなっちまうな」
 
 ロクはその言葉を聞いたと同時に、レトの手を借りて立ち上がった。
 そしてレトとロクの会話を近くで聞いていた女性は、静かに2人に近寄る。
 
 「……貴方達って凄いのね、有難う」
 「そんな事ないさっ、でも褒めてくれて有難うーっ」
 「…あ、あとであたしのお屋敷に来なさいよ!!絶対だからっ!!」
 
 頬を赤らめてそう言った女性は止まる事なくせっせと歩く。
 が然し、ふいに足を止めて、くるりと振り返った。
 
 「…あたしの名前はレイス・トールザっていうわ。お、覚えておきなさいよっ」
 
 今度こそ本当に最後の言葉らしく、もうレイスの背中は消えていた。
 レトとロクはきょとんとしたままだったが、数秒後に互いに顔を見合わせて、
 
 「とりあえず行くか」
 「そだね」
 
 と一言言葉を交わして笑い合った。
 レトは怪我したロクを背中におぶり、街へと歩き出した。

 騒がしい程の賑やかさを誇るの街中。
 その騒がしくも見蕩れる光景を過ぎて、奥へと突き進む2人。
 レイスの家、というのは物凄く大きな建物だった為、直ぐに見つかった。
 
 「す、すげぇ…」
 「でかさが半端じゃないね……この家」
 
 その城の大きさは蛇梅隊本部が4つ入るくらいだった。
 計算した2人は、後に計算しなければ良かったと挫折する。
 差が違い過ぎたのだ。
  
 「異常じゃねぇか」
 「だねー…」
 「…!?貴様等屋敷の前で何やってるんだぁーッ!!?」
 
 2人で途方に暮れている時、ふと後方から大きな声がした。
 ちらっと後ろを振り向くと、そこには息を切らした兵士が1人。

 「え、とー…レイスって女に招待されたん…だけど?」
 「そうそうっ」
 
 兵士はじろりとレトとロクを見続け、
 
 「その手で城に入ろうとしているのか?全く無理な要望だな」
 「だーかーらぁー…俺達は本当に——————」
 「成敗致す——————ッ!!!」
 「…——————って人の話聞けよ!!!」
 
 腰に剣を構えた兵士はその剣をレト達に向かって振り上げる。
 流石に無罪な人を次元技では攻撃できない2人はその場であたふたしていると、 

 
 「待ちなさいッ!!その人達は客人よっ!!」


 何処かで聞いた事のある、鋭くも凛とした声が3人の耳を過ぎった。
 声の主の方を振り返る3人は同時に声を上げた。
 
 「お、お嬢様!?ほ…本当なのですか…?」
 「嘘つく訳ないでしょ…ったく」
 「し、失礼しましたァーッ!!」
 
 兵士は深々と頭を下げる。
 その行動にレトもロクも申し訳なさそうにその場で佇む。
 
 「ごめんなさいね、兵士が迷惑かけたみたいで」
 「い、いやぁ…」
 「流石この街のお金持ちだなぁ。兵士ってどのくらい雇ってんの?」
 「ん?ざっと2万人?」
 「「2…2万!?」」
 
 声を重ねた事に寧ろ驚いたレイスは呆れ顔で溜息を吐く。
 未だ驚いているレトとロクは指で必死に2万という数字を数えようとしていた。
 
 「やば…。に、2万人ってちょっと……」
 「蛇梅隊の援助部隊より遥かより多いじゃねぇか」
 「まぁ、トールザ家だからね」
 
 トールザ家。
 それはラブーン財閥の次にお金持ちの家であり、大きな企業である。
 この世界の営業関連の殆どはトールザ家が関わっていると言っても可笑しくはないだろう。
 

 兎にも角にも、ロク達は城の中に入る事となった。
 細かく繊細な絵画。
 神々しい光を放つシャンデリア。
 燃えるように真っ赤なカーぺット。
 目につく物はどれも高級品ばかりだ。
 
 「ほうほう…君達が我娘を助けた恩人じゃな」
 「い、いえっ、それ程の事は…っ」
 「お礼を言わせてくれ。ありがとう…」
 
 広間に入った途端、レイスの父と顔合わせする事となった。
 顎鬚の多いその顔は何故かサンタを思わせる。
 
 「そこで、君達にもう一つ頼みがある」
 「へ?何ですか?」

 唐突の質問に、思わず素っ頓狂な声を出すロク。
 
 「それは、先程のような退治だ」
 「胎児?」
 「違う」
 「…ねぇ、そんなに速く突っ込まないでよ」
 「いや、何となく」
 
 2人の兄妹コントが終わったと同時に、彼は話始める。
 
 「先程のような奴が山の麓に沢山いるらしい。だから早いとこ退治して欲しいのだ」
 「これが依頼…か」
 「分かりましたっすぐに行ってきますよ」
 「然し、お気を付け下さい。そ奴等はユウゴウされてるとか言っていたのでな」
 「ゆ、融合…!?」
 「厄介だなぁー…融合物体は久しぶりだ」
 
 融合物体とは、あらゆる元魔が力を望んで仲間と融合した姿の事。
 あまり見かける事のない、珍しい元魔の一種だ。
 
 「でも行くっきゃないでしょっ!!あたし達の仕事だしねっ」
 「そうだな」
 「言ってきます、レイスのお父様っ」
 「健闘を祈る」
 「言ってらっしゃい。まぁ精々頑張ってくるのね」
 「レイス!!そんな言い方…!!」
 「うん、精々頑張ってくるよ」
  
 ロクとレトは2人で一緒にこの城を出て行った。
 残されたレイスと父の親子は、ゆっくりと口を開き、
 
 「死なないといいがね…」 
 「そう、ね……」
 
 そう、案じるように呟いた。

Re: 最強次元師!! ( No.6 )
日時: 2010/02/16 18:27
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: hap96gvm)
参照: 紅兎です(>ω<。)

第005次元 わがまま皇女様Ⅲ

 ロクとレトが向かった先は森の奥にある洞窟だ。
 
 「なんか気持ち悪くねぇか・・・?」
 「確かに、よだれみたい・・・」
 「変な想像させるなバカ」
 「もっと奥に行ってみようか」
 
 その洞窟の奥に行くと、なにやら甘い匂いが・・・。
 
 「あ、蜂蜜!!」
 「は?何でこんな所に・・・」
 「頂こうよ!ね、ね?」
 「分かったよ・・・。ってもう食ってるし!!」
 
 言い忘れていた。
 ロクはかなりの大食いだ。
 『お腹いっぱい』という言葉を聞いたことがない。
 あの小さい体になんで入るんだ・・・。
 そう思ったレトだった。
 
 「!?」
 
 レトが何かを感じたらしい。
 
 「どうふぃたの?ふぇお」(どうしたの?レト)
 「来るぞ」
 「ふぇ!?」
 
 ロクが蜂蜜を口にいっぱい含んだまま驚いた。
 
 「まんまとかかったなぁ、小僧ども・・・」
 「ふぇんま!?」(元魔!?)
 「しかもかなりでかいぞ・・・」
 「この蜂蜜は人を喰らうための道具さ。家をなくした家族がこの匂いを辿ってここへ来るのさ・・・」
 「なんて事を・・・!!」
 「人間なんて所詮そんな生き物だ・・・。弱いくせにあがいてあがいて、バカらし・・・」
 「ふざけるなぁぁぁぁ!!!」
 
 その一言でロクの掌から現れた雷撃が元魔に直撃した。
 
 「貴様・・・。次元唱なしで・・・・!?」
 「黙れ」
 「ロク・・・」
 「人間が弱いだと?そんな腐った言葉もう一度吐いてみろ、ぶっ殺すぞ!!」
 「貴様・・・、まさか・・・!!」
 「雷撃ーーーーー!!」

 ロクの心のこもった大きな声と共に雷が元魔に直撃する。
 
 「ぐああああああぁぁぁぁ!!」
 「ロク、落ち着け」 
 
 レトがロクの傍に近寄った。
 
 「落ち着いてるよ」
  
 ロクのその言葉からは、落ち着きの様子は全く感じられない。
 
 「次もどんどん来るぞ」
 
 そして、二人はもう数えられない程の元魔を倒した。
 遂に、最後の一体になった。
 もう二人の息はあがったいた。
 
 「最後、か・・・」
 「なんだ、もう俺の出番か・・・」
 「!?」
 「融合物体・・・」
 「楽しませてくれよ?」
 「五月蝿い!!」
 
 ロクが手を思いっきりに横に振った。
 
 「おぉっと、危ないねぇ」

 そう言ってロクの足を掴み、ロクを吊るした。
 
 「キャッ」
 「ロク!!」
 
 そして、ロクを思いっきり地面に叩きつける。
 
 「ぐぁッ!!」
 
 ロクが、血を吐きながら起き上がる。
 
 「やっぱり、融合物体は強すぎる・・・」
 「おりゃぁあああぁあ!!」
 
 レトが二つの剣を振り回した。
 
 「八斬切り____!!」
 
 レトがすばやく剣で元魔を八回切りつけた。
 
 「うぉ!!ふいをつかれたか・・・」
 
 そして、ロクを抱き起こした。
 
 「平気か?ロク」
 「うん、ありがとう」
 「そんな暇があるならこっちを・・・」
  
 元魔が言いかけた瞬間には、ロクはもういなかった。
 
 「あら?何処を狙ってるの?」
 
 そう、ロクは元魔の真後ろにいたのだ。
 
 「な・・・!?さっきはこっちに・・・」
 
 ロクが少し口を微笑ませて、手を元魔にかざした。
 
 「雷柱ーーーー!!」

 その呪文では、元魔の下から柱が上に向かって伸びていた。
 
 「ぐぁあぁあぁ!!覚えてろよ、糞人間どもめ____!!」
 
 元魔はまたしても爆発音で消えていった。
 ロクは疲れ果てたのか、地面に倒れた。
 
 「お疲れ」
 
 レトが小さくロクに向かって呟いた。
 すぅすぅと眠るロクをおぶって、またしても街へ戻ったレトだった。 

Re: 最強次元師!! ( No.7 )
日時: 2010/05/01 10:50
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: 7hsLkTT7)

第006次元 わがまま皇女様Ⅳ
 
 「おぉ〜倒してくださいましたか・・・。なんと礼を詫びたらいいのか・・・」
 「当然の事ですから」
 「それじゃあ俺らはもう行きますんで」
 「報酬の方はそちらに振り込んどきます。では、ご武運を・・・」
 「まぁ、あんた達にしては良くやった方じゃない?」
 「こら、レイス・・・・」
 
 レイスはそれだけ言い残して自室へと戻っていった。
 
 「すみませんね・・・。あいつ、幼い頃に母を亡くしてからひねくれてしまって・・・」
 「お母さんを?」
 「ええ・・・。昔はもっと心を開いてくれる子だったのに」
 「そう、ですか・・・」
 「あの、レイスの部屋を案内して下さい!」
 「な、お前何言ってるんだよ」
 
 ロクは、黄緑色の綺麗な瞳を真っ直ぐ皇帝へと向けた。
 
 「・・・・分かりました」
 「有難うございます」
 「はぁ・・・・まぁいいか」
 
 レトは深い溜め息をついた。
 まさかロクがこんな事を言い出すなんて。
 
 「ここです。では・・・」
 「はい、有難うございました」
 「おい、ロク何か考えて・・・」
 
 ロクは思いっきり息を吸った。
 
 「出てきなさい!このひねくれ娘!」
 なんて無茶苦茶な。
 皇女にそんな事を大声で言える奴はいないだろう。
 少なくとも女では無理なのでは・・・。
 
 「な、何の用!?」
 「貴方、母を亡くしたのね」
 「・・・!?」
 「そんな事じゃ、強くなれないよ」
 「貴方に関係ないでしょ!?」
 「貴方はこう言った。『私は誰一人として傷つけちゃいけないの』と」
 「・・・そうだけど?」
 「あれは、もう二度と死人を出したくない。って言いたかったんでしょ?」
 「な、何で・・・・!」
 「あたし達も、母を亡くしたの。しかも貴方と同じ、幼い頃に」
 
 ロクは、自分の辛かった過去について、語り始めた。
 いや、自然に声が出てしまったのかも知れない。
 
 「あたし達は死ぬ程義母さんに会いたかった。もう、どうなってもいいから、会いたかった」
 
 レトが、後ろの方に顔を向けた。

 「そして、あたし達は人としての道を踏み外したの___」
 「え・・・?」
 「あたし達には、幼馴染がいるの。その子は一瞬にして両親を失った」
 「・・・・・」
 「あたし達は、慰める事さえ、出来なかった」

 

 だけど、あたし達は自分達は大丈夫って思ってたの。
 毎日、義母さんの笑顔を見る度、自分達も笑顔になった。
 義母さんが大好きだった。
 誰よりも、一番大好きだった。
 あたし達は、いつも通り、家の手伝いをしてた。
 お母さんが後でそっちにも手伝いに行くっていってくれてたの。
 でも、何十分待っても来ないからおかしいなと思った。
 そしたら、義母さんは倒れてたの。うつぶせの状態で。
 急いで医者を呼んだけど、義母さんの命は助からなかった。
 葬式の日には、夜遅くまで、いや、次の日になるまでお墓の前で泣いてた。

 どうする事もできなかったあたし達兄妹の前に、1人の少年が現れたの。
 あたし達と同じくらいの年の子が。

 その子は言った。

 「母親に、会いたくない?」
 
 と。
 その言葉であたし達に希望が出てきた。

 「あ、会えるの・・・?」
 「あぁ、もちろん。君達が願うなら」
 「ど、どこなんだ!?母さんは?」
 「今からちょうど半年後、夜に君達は自分の部屋に行くんだ、いいね?」
 「うん、それだけでいいの?」
 「ああ」
 「母さんに・・・、会え・・、る・・」

 あたしもレトも、半年後が待ち遠しくてたまらなかった。
 やっと会える、やっとお義母さんに会える。
 あたし達はそう思っていた。
 
 ううん、そう、信じていたんだ。

Re: 最強次元師!! ( No.8 )
日時: 2010/07/28 10:38
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: mwHMOji8)
参照: 紅兎です(>ω<。)

第007次元 願いから始まる悲劇
 
 何ヶ月かが経ったある日。
 あたし達は師匠を見つけた。
 とある隣町で。
 その師匠の元で、次元技についても詳しく教えてもらった。

 ・・・・・、そして半年の年月が経った。
 お義父さんの古い部屋に行ったら、
 なんとあの少年がいた。

 「やぁ、やっぱり来たね」
 「うん、ねぇ、義母さんは・・・」
 「焦んない焦んない。大丈夫、ちゃあんと会えるよ」
 
 あたし達は喜んだ。
 会える、会える、義母さんに会える。
 そう、心で何度も呟いた。

 「んじゃあ言うとおりにしてね?まずは床に両手をついて」
 「う、うん」
 「こうか?」
 「うんうん、次にこう唱える。「無次元の扉、発動」とね」
 「無次元?」
 「何だそれ」
 「そこは君達のお母さんが待ってる楽園さ。さぁ、唱えて?」
 「せーの」

 あたし達が大きく息を吸い込んだ時、
 正に、あの少年は口元を歪ませ微笑んだ。

 「「無次元の扉、発動!!」」

 その時、一瞬にしてまわりの風景が変わったかと思うと、あの少年がいなかった。 
 そしてたどり着いたのは真っ暗な闇の世界。
 
 「何処・・・、ここ・・・」
 「母さん!何処?!」
 『くすくす・・・、母さんなんていないよ?』
 「!?」
 「さっきの・・・・」
 『君達分かりやすいし、騙されやすい性格をしてるんだね』
 「な、何のこと・・・?」
 「おい、母さんは!?」
 『いないよ。だって此処は・・・・、死者の魂が彷徨う場所、無次元だから』
 「死者の・・・、魂?」
 『そう、君らの母さんは魂さ。姿じゃない。さぁ、もう後戻りはできないよ?』 
 「だ、出せ!此処から出せ!」 
 『い・や・だー♪だって君達はもう・・・』
 「・・・?」

 
 『僕の手の中にいる——————』
 
 
 そう少年が呟いた。
 だけど、少年の姿は見当たらなかった。
 そして、少年らしき声が頭の中に響いてきたの。

 『聞こえる?』
 「!?」
 「ど、どこから?」
 『君達の脳に直接話しかけてるんだ。一応教えておこうと思ってね』
 「・・・?」
 『僕の名前は『デスニー』。正真正銘の神族さ』
 「しん、ぞく・・・?」
 「何だ、それ・・・」
 『あぁ、知らないのか。めでたい子達だね。で・も、君達は殺させてもらうよ』
 「「!?」」
 『運命に、逆らえる者なんていないのさ』

 少年、いや、デスニーの声が聞こえなくなった時、
 あたしの隣で大きな鋭い音が聞こえた。

 「うああああぁぁああぁあッ!!」
 「レト!!」

 レトは大きな声を上げ、咳をしながら倒れこんだ。
 だけど、口からは息よりも、血しか出ない。
 あたしの体も一瞬揺れて、そっと左目に触れた瞬間、

 あたしの左目が、なかった。

 「な・・・、に・・・?あ・・・あぁ!!」
 「・・・・ロ・・・・ク・・・」
 「見えない・・・、レト、レト!!」
 
 元々右目が閉ざされているあたしは、
 左目を失って何も見えなくなった。
 
 『きゃはははは!面白いね、どんどん苦しみなよ人・・・げ・・・』

 デスニーの声が途絶えた。
 何かに気付いたような声が聞こえたの。
 それで、デスニーは言葉を失った。

 『もしかして・・・・、こいつら・・・・』
 「な・・・・、なん・・・」
 『・・・あぁ、そういう事』
 「・・・?」
 『ちょっと気が変わっちゃったよ』
 「は・・・・?』
 『ねぇ君達。今度僕と勝負しよう。殺すのはやめた。僕は、君達と戦いたい』
 「・・・げほッえ・・・ッほ・・・・」
 『んじゃレトヴェールは心臓、いや、魂だけなら返してあげる。コアにでも入れるんだね』

 そう言ってデスニーはレトの魂を出すって言ったけど、
 何も見えないあたしにはその場の状況が分からなかった。

 その暗闇の感じが消えて、部屋に戻ったのか、親密な、しっとりとした湿気のある場所にいた。
 あたしは、手探りでお義父さんの昔の失敗品、コアを探した。
 そしてコアに元力を注ぎ込んで起動させ、レトの魂をレトに入れてもらった。
 コアをレトの口から無理やり入れて、ようやく、レトは一命を取りとめ息をした。
 その後はよく覚えてないけど、幼馴染のお爺ちゃんが助けてくれたと聞いた。
 
 

 「だから、あたし達も、同じなの」
 「じゃあ、ロクのその目はどうやって?」
 「これは、人工の目を使ってる」
 「そう、なの・・・・」
 「だから、俺の体内は空っぽなんだよ」
 「・・・・それじゃあ、あたしはくよくよするわけにはいかないわね」
 「え・・・?」
 「別にあたしは左目を奪われたわけでも、心臓以外を取っていかれたわけでもないのに、弱気にはなれないわ。有難う、ロク。貴方のおかげで頑張れそう。そう、よね・・・。あたしは、強くならなきゃね」
 「うん!それでこそレイスだよ!!」
 「だな」
 「な、何よ!わ、悪い?///」
 「悪いなんて言ってませ〜ん!」
 「そのままで良いと思うぞ」
 「ええ、それじゃあね」
 「うん。強くなるんだよ!レイス」
 
 レイスは軽くうなずいた。
 
 「またこの町に来てね。そしたら屋敷にも寄って頂戴。いつでも大歓迎だわ」
 「ありがとう!絶対来るよ!」
 「じゃあな。元気にしてろよ」
 
 ロクとレトはそれだけ言い残し、屋敷を後にした。
 この二人は、いつまで笑顔でいられるのだろうか。
 少なくとも、戦争までは笑顔でいられるであろう。
 いや、そう願いたいものだ。
 もう二度と、悲劇を生まないためにも。


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