コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 最強次元師!!【※新スレ作成におけるお知らせ有り】
- 日時: 2015/03/15 09:40
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: u/FYQltH)
- 参照: http://ncode.syosetu.com/n5050ci/
運命に抗う、義兄妹の戦記。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
基本毎週日曜日に更新!
※追記
実は、本作を一から書き直そうと思いまして別サイト様にて“完全版”を再連載し始めました。
やりたい話が多くて一度断念してましたが、やっぱり優先しようと思ってもう一度記載致します。
ご興味のある方はどうぞ! 上記のURLで飛べます*
とってものんびりと、更新する予定です。
Twitterの垢をつくってみました→@shiroito04
イラストとか宣伝とかを呟いてます!
※注意事項
・荒らし・中傷はお控え下さい。
・チェンメなんかもお断りしてます。
●目次
prologue >>001
第001次元 >>002第011次元 >>012第021次元 >>048
第002次元 >>003第012次元 >>013第022次元 >>050
第003次元 >>004第013次元 >>019第023次元 >>052
第004次元 >>005第014次元 >>020第024次元 >>055
第005次元 >>006第015次元 >>021第025次元 >>059
第006次元 >>007第016次元 >>025第026次元 >>060
第007次元 >>008第017次元 >>027第027次元 >>063
第008次元 >>009第018次元 >>030第028次元 >>065
第009次元 >>010第019次元 >>044第029次元 >>070
第010次元 >>011第020次元 >>046第030次元 >>071
第031次元 >>072第041次元 >>146第051次元 >>224
第032次元 >>077第042次元 >>169第052次元 >>230
第033次元 >>081第043次元 >>176第053次元 >>234
第034次元 >>082第044次元 >>179第054次元 >>241
第035次元 >>090第045次元 >>180第055次元 >>245
第036次元 >>097第046次元 >>189第056次元 >>260
第037次元 >>104第047次元 >>191第057次元 >>262
第038次元 >>108第048次元 >>203第058次元 >>264
第039次元 >>109第049次元 >>209第059次元 >>268
第040次元 >>138第050次元 >>216第060次元 >>274
第061次元 >>298第071次元 >>359第081次元 >>385
第062次元 >>300第072次元 >>361第082次元 >>388
第063次元 >>308第073次元 >>365第083次元 >>391
第064次元 >>337第074次元 >>369第084次元 >>393
第065次元 >>338第075次元 >>370第085次元 >>399
第066次元 >>339第076次元 >>371第086次元 >>402
第067次元 >>345第077次元 >>377第087次元 >>403
第068次元 >>346第078次元 >>378第088次元 >>413
第069次元 >>352第079次元 >>380第089次元 >>414
第070次元 >>353第080次元 >>383第090次元 >>417
第091次元 >>420第101次元 >>448第111次元 >>480
第092次元 >>421第102次元 >>450第112次元 >>484
第093次元 >>422第103次元 >>458第113次元 >>489
第094次元 >>427第104次元 >>459第114次元 >>495
第095次元 >>431第105次元 >>467第115次元 >>499
第096次元 >>432第106次元 >>472第116次元 >>501
第097次元 >>433第107次元 >>475第117次元 >>502
第098次元 >>436第108次元 >>477第118次元 >>504
第099次元 >>444第109次元 >>478第119次元 >>507
第100次元 >>445第110次元 >>479第120次元 >>508
第121次元 >>509第131次元 >>544第141次元 >>558
第122次元 >>510第132次元 >>546第142次元 >>560
第123次元 >>511第133次元 >>547第143次元 >>563
第124次元 >>512第134次元 >>551第144次元 >>564
第125次元 >>520第135次元 >>552第145次元 >>565
第126次元 >>521第136次元 >>553第146次元 >>576
第127次元 >>528第137次元 >>554第147次元 >>590
第128次元 >>533第138次元 >>555第148次元 >>595
第129次元 >>534第139次元 >>556第149次元 >>608
第130次元 >>536第140次元 >>557第150次元 >>623
第151次元 >>631第161次元 >>683第171次元 >>759
第152次元 >>632第162次元 >>711第172次元 >>760
第153次元 >>633第163次元 >>719第173次元 >>762
第154次元 >>637第164次元 >>726第174次元 >>764
第155次元 >>643第165次元 >>739第175次元 >>766
第156次元 >>655第166次元 >>749第176次元 >>768
第157次元 >>659第167次元 >>753第177次元 >>769
第158次元 >>664第168次元 >>754第178次元 >>770
第159次元 >>665第169次元 >>755第179次元 >>771
第160次元 >>680第170次元 >>758第180次元 >>772
第181次元 >>773第191次元 >>788第201次元 >>813
第182次元 >>775第192次元 >>789第202次元 >>814
第183次元 >>776第193次元 >>792第203次元 >>826
第184次元 >>777第194次元 >>793第204次元 >>832
第185次元 >>778第195次元 >>794第205次元 >>835
第186次元 >>781第196次元 >>795第206次元 >>841
第187次元 >>782第197次元 >>798第207次元 >>853
第188次元 >>783第198次元 >>802第208次元 >>854
第189次元 >>784第199次元 >>803第209次元 >>855
第190次元 >>785第200次元 >>804第210次元 >>858
第211次元 >>862第221次元 >>883第231次元 >>897
第212次元 >>868第222次元 >>884第232次元 >>898
第213次元 >>873第223次元 >>888第233次元 >>901
第214次元 >>874第224次元 >>889第234次元 >>902
第215次元 >>875第225次元 >>890第235次元 >>903
第216次元 >>876第226次元 >>892第236次元 >>904
第217次元 >>877第227次元 >>893第237次元 >>905
第218次元 >>878第228次元 >>894第238次元 >>906
第219次元 >>879第229次元 >>895第239次元 >>907
第220次元 >>882第230次元 >>896第240次元 >>908
第241次元 >>909第251次元 >>929第261次元 >>955
第242次元 >>913第252次元 >>930第262次元 >>956
第243次元 >>914第253次元 >>933第263次元 >>957
第244次元 >>915第254次元 >>947第264次元 >>958
第245次元 >>916第255次元 >>948第265次元 >>959
第246次元 >>917第256次元 >>949第266次元 >>960
第247次元 >>918第257次元 >>951第267次元 >>961
第248次元 >>919第258次元 >>952第268次元 >>962
第249次元 >>921第259次元 >>953第269次元 >>963
第250次元 >>926第260次元 >>954第270次元 >>964
第271次元 >>965第281次元 >>977第291次元 >>988
第272次元 >>966第282次元 >>978第292次元 >>989
第273次元 >>967第283次元 >>979第293次元 >>990
第274次元 >>968第284次元 >>981第294次元 >>991
第275次元 >>969第285次元 >>982第295次元 >>992
第276次元 >>970第286次元 >>983第296次元 >>993
第277次元 >>973第287次元 >>984第297次元 >>994
第278次元 >>974第288次元 >>985第298次元 >>995
第279次元 >>975第289次元 >>986第299次元 >>996
第280次元 >>976第290次元 >>987第300次元 >>997
※第301次元〜は新スレにて連載予定
●おまけもの●
●資料集など
皆のプロフィール1 >>218
皆のプロフィール2 >>278
皆のプロフィール3 >>287
皆のプロフィール4 >>288
皆のプロフィール5 >>289
皆のプロフィール6 >>503
主な登場人物 >>852
さいじげテスト。 >>843
最強次元師!! について >>58
●番外編
キールアの想い >>41
メイド喫茶祭り① >>327
メイド喫茶祭り② >>331
メイド喫茶祭り③ >>341
友達の証① >>492
友達の証② >>493
友達の証③ >>494
疎外少年と次元少女① >>810
疎外少年と次元少女② >>811
疎外少年と次元少女③ >>812
蛇梅隊DE☆大集合!! >>829
E FIEDLA >>941
英雄と妖精 >>945
●外伝
第001時限 >>942
第002時限 >>943
第003時限 >>944
●キャラ絵(1人)
奏様が描いて下さったルイル >>116
奏様が描いて下さったティリ >>105
奏様が描いて下さったロク >>119
奏様が描いて下さったロク(舌出しVer.) >>185
奏様が描いて下さったロク(ポニテVer.) >>523
奏様が描いて下さったキールア >>127
奏様が描いて下さったアリル >>141
奏様が描いて下さったリリアン >>148
奏様が描いて下さったミル >>154
奏様が描いて下さったフィラ副班 >>162
奏様が描いて下さったレト >>168
奏様が描いて下さったレト(メイド服Ver.) >>329
奏様が描いて下さったガネスト >>304
奏様が描いて下さったガネスト(メイド服Ver.) >>318
奏様が描いて下さったアルア >>460
●キャラ絵(複数)
奏様が描いて下さったレト、ロク、キールア >>693
奏様が描いて下さったエン、ミル、リルダ >>737
☆奏様には毎度ご感謝しております!!
すごく似ていて、イメージ通りです
キャラの絵が分からない場合には奏様の絵を見て下されば納得します!!
これからも描き続けてほしいですね、是非とm((黙
●お知らせなど
* 2009 11/13 執筆開始
* 2013 09/01 執筆中断
* 2014 01/17 執筆再開
* 2014 10/19 別サイトにて再連載開始 >>980
* 2015 03/15 新スレ作成におけるお知らせ >>998
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- Re: 最強次元師!! ( No.930 )
- 日時: 2013/08/05 00:06
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: kcbGQI7b)
- 参照: 【遅れました】アメブロ、Twitter、skypeなど多様な面で活動中。
第252次元 戦闘開始
「第七次元の扉——————発動!!!」
レトは足を滑らせて、シェルから離れた。
二本の短剣をばっと構えて、風を切る。
「十字斬りィィ————!!」
ぶん!! という音が響く。
同時に放たれた真空波は、シェルの目の前で見事に散った。
「……——!?」
彼は、次元技も使わずに、ただ腕の力だけで真空波を粉砕する。
七次元級の技に一切の恐怖も感じずに。
「俺とお前じゃ——————鍛え方が違うんだよ!!!」
ダッ!! と地面を蹴り上げて、シェルはレトの懐に飛び込んだ。
咄嗟の事で判断がつかなくなったレトは、地面に手をついて一回転。
スパッ、と斬られた金色の細い髪が、舞う。
「く……!!」
「隙は与えねえぜレトヴェール!!!」
鈍い音が走る程、素早く空を斬る。
彼は未だに、次元技を使っていない。
ただの剣で、レトの攻撃を避け、受け流し、そうして反撃をする。
それを何度も繰り返し、まるで遊んでいるようにも取れるその行動に、レトは不信感を抱いていた。
彼は、本気で戦っているのだろうかと。
「次元技を使わないとはな……一体どういう風の吹き回しだ?」
「ん……もしかして不満なのか?」
にやっと。
シェルの口元は、卑しく歪む。
レトは、その表情にかっときた。
「全力で来いよ、シェル!!」
片方の剣を、シェルに向けて突き出す。
その矛先を見て、彼はふっとまた笑った。
「全力? ————いいぜ、お前が望むんならな」
鞘に納まっていた、銀の刃が少しだけ見えた。
レトも、腕を構える。
「第四次元発動——————真空刃!!!!」
銀の矛が、牙を向く。
四次元級の次元技に、レトの構えた双斬は思い切り弾き飛ばされた。
遠くまで飛んだレトは、地面に体を滑らせる。瞬く間に土埃が彼を包んだ。
「げほっ! げほ…っ……っつう……」
「おいおい大丈夫か? 今のは四次元級の技だぞ?」
すっと長い剣を払って、シェルは悠々と歩く。
楽しそうに、歩み寄って来る。
「次元技を使うまでもねーよ————、今のお前が相手じゃな」
ぐっと、レトが双斬を握る。
そして、間もなくシェルの腹部を薙ぐように空を切り裂いた。
咄嗟に退いたシェルは、下を見下ろす。
服に、切れ目が入っていた。
「へえ……お前、ぬかりねーな」
もう片方の剣を地面に突き刺して、レトは立ち上がる。
ふうと、一息ついて。
彼もまた、楽しげに笑った。
「お前が使わないなら、俺も使わねえ」
「……っ!?」
「正々堂々————勝負といこうじゃねーか!!!」
レトが剣で風を払い、くるんと回って剣を上へと切り上げる。
シェルはまた後ろへと下がり、レトが上から振りかぶるのと同時に、同じように下から剣を起こす。
ガキン!! と、双方の剣が対峙する。
レトは、左手の剣で突くようにしてぐんと前へ伸ばした。
シェルはそれを難なく交わし、ぐらついたレトの剣を、弾き飛ばす。
姿勢を崩したレトが、シェルが薙いだ剣を交わすようにしゃがみ込んで、足を伸ばしシェルを転ばす。
彼が思い切って上から振りかぶり、シェルは長い剣でそれを防ぐ。
響く金属音に、響かない次元発動の声。
2人は、純粋なまでに剣術で勝負していた。
「あの2人、何やってんだぁ……!?」
「余所見をするなサボコロ!! 来るぞ!!!」
リンと鈴の音が響き、それと同時に長い縄が地面を忙しく這う。
叩き付けられた縄は一度跳ねると、サボコロの足に巻きつき盛大に転ばせた。
どでんという音が鳴ると、甲高い声が2人の耳に届いた。
「あはははは!! かっこわっるーいっ!!!」
「わ、笑うなよリリアン……! あ、あんなに上手くいくとは俺も思って……!」
「てめえらなあ!!!」
そう言ったのと、同時だった。
リリエンが持っていた縄が、一瞬にして切れた。
空には、弓が飛んでいて。
鋭い刃は、見事に双子の間を通り抜けた。
「へえ……やるじゃんおチビくん」
「それ以上言ったら殺すぞ」
「はは! 冗談だよ!」
感情を示さないエンの冷たい表情が殺意を放つ。
いつまでも飄々としているこのチームは、一体何なのだろうと。
その緩い姿勢に恐怖さえ覚える彼は、すっと弓を構えた。
油断は、できない。
「じゃあこっちもいっくよー? ——————鈴鳴!!!」
リリアンがばっと腕を広げ、浮いた鈴が幾つも宙で泳ぎぴたっと止まる。
そして、その鈴から直接脳へと、酷く激しい“音”がサボコロとエンに襲いかかった。
「う……ぐ、あぁぁ——!!」
「頭……が、割れそうだ……!!!」
いつかの、天使の姿が2人の脳裏を過ぎる。
それは非道で残虐で、それでいて優しく。
悪魔の面を被った、真の天使。
「へ……この攻撃、いつかもくらった、よなあ……!!!」
「ああ……、全くだ————!!!」
パキンという、乾いた音は。
少年達の意思が、心の力を貫いた証だった。
「う、そ……!」
「今度はこっちだぜ——————炎柱!!!!」
次元唱を唱える事もなく、サボコロは地面に手をついた。
藍の双子の下から、太い炎の柱が唸りを上げて天へ伸びる。
轟という音は、底深い音色を奏でて景色一帯を包み込んだ。
と、その瞬間。
太い炎の柱は、一瞬にして風を取り巻き勢いよく掻き消された。
「あたしの次元技は鈴というより“音”——————、音であらゆるものを支配する次元技なんだからね!!」
さっき、炎の柱が砕けたのは、不思議な音が鳴ったのと同時だった。
音の波が、小さな余波を連れ次元技を掻き消す。
「つうか、余所見する暇なんて————ないじゃねーの?」
後ろから聞こえる、余裕ぶったような声。
「——————絡縛!!!」
リリエンの腕から伸びる、縄。
その縄は一直線場に、エンの腕目掛けて伸びた。
がしっとエンの腕に巻きつくと、腕輪のように小さくなった縄が、右の手首に巻かれる。
若干の痛みもなく、エンは不思議そうに手首を見た。
「お、おいエン大丈夫か!?」
「あ、ああ……」
外傷はなく、ただ手に巻きついただけの縄をエンはじっと睨むようにして見る。
その様子を見たリリエンは、ただくすっと、嘲るように微笑む。
「はは……っ! じゃあ、そろそろ本気で始めるか? リリアン!!」
「おっけー!! さくっといっちゃおうリリエン!!」
腕を構えるサボコロ。それに続いて弓をぐっと掴むエン。
2人は、同時に駆け出した。
「炎撃ィィ——————!!!」
唸る炎に続いて、エンが弓矢を引き絞った。
「——————、ッ!!?」
然し彼の口から、言葉は紡がれない。
彼は、ぐっと矢を引いたまま、固まっていた。
(な、何だ……!!?)
何度も必死に、心の中で次元を唱える。
然し彼の次元技は、放たれず。
くすっと、リリエンは笑った。
「こりゃあ傑作だなあ!! ——————なあエン・ターケルド!!!」
ぐんと伸びきる縄で、エンは空へと弾かれた。
地面と、思い切り体がぶつかる。
エンは、細い視界の中光節を手繰り寄せた。
「残念だよ、エン・ターケルド」
リリエンは、エンを見下ろすように、そこに立った。
にやっと、口元が歪む。
「——————————お前はもう、次元技を使うことが“できない”んだよ」
- Re: 最強次元師!! ( No.931 )
- 日時: 2013/08/13 12:50
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: kcbGQI7b)
- 参照: 【番外編:前編】アメブロ、Twitter、skypeなど多様な面で活動中。
『わたしとこねこ。』
ロクアンズが神族としての自覚を持ってから半年。
街の人達や蛇梅隊の中での反発も落ち着きを見せている頃のお話。
レトヴェールは、部屋の中で目を覚ました。
(ん……やっべ、すっげえねみい……)
ごろごろとベッドの上で転がりながら、レトは昨晩のことを思い出した。
科学部班での実習をしていた彼は、夜遅くまで研究に付き合わされていたのだ。
自分から実習をしてみたいと言ったのが仇となったか、とレトは少し納得してしまった。
まあ今日も元気に任務へ出向かなければいけないので、彼はよいしょと起き上がった。
「……ん?」
目の前にある鏡を、じっと見る。
「に゛ゃ゛——————!!!?」
そこにいたのは、毛並みの黄色い子猫だった。
「きゃー! 何この子可愛いーっ!」
「ちょっとフィラ副班!! あたし達にも貸してよーっ!」
「可愛いー! 捨て猫かな? 捨て猫かなあ?」
「黄色い猫なんて……ここら辺じゃ見かけないけど」
「か、可愛いですね……何処から来たんでしょう?」
きゃっきゃうふふと、まるでハーレム状態の子猫。
然し誰も、それをレトだと気付かない。
見た目はただの猫なので、気付くはずもないのだが。
「これ見つけたのロクちゃんなんでしょ? 何処にいたの?」
「んー……何故かレトの部屋に迷い込んでてさあ」
「レトの部屋? ……ってか、レト本人は?」
「それが朝からいないんだよねー……」
珍しく早起きしたので、一緒に朝食をと思ってレトの部屋に入ったロクだが、
そこにいたのはレトではなく猫で、勿論本人もびっくり。
いや、自分が猫になっていたレトの方が、驚いたが。
「それにしても可愛いねーっ! ルイルこの猫欲しい!」
「えー!? この子は蛇梅隊で飼うんじゃないの!?」
「まあエサ代くらい簡単に出るし……」
「に゛ゃ゛!! に゛ゃ゛ーっ!!!」
「……な、なんか怒ってない?」
フィラ副班の腕に抱かれているとはいえ、変な心地しかしないレト。
皆がとても大きく見える上に、撫でられると気色が悪い。
思わず背筋がぞっとする辺りは、人間的な部分も残っているという事に。
(くっそ……何でんな事に……!!)
遡ってみれば、まあ簡単な話ではあるが。
言うまでもなく、昨日の実習のせいだろう。
レトは科学部班主催の実習に夜遅くまで付き合い、薬品も幾つか被っている。
最終的に、呑まされた薬品もあったような気がするレトは、溜息を吐いた。
もう二度と行くまいと、そう思った時。
「……皆、どうしたの?」
隊服ではなく、白衣に身を包んだキールアが現れた。
ぱあっと明るくなる女子一同は、猫を抱えてずずずいっとキールアに近寄る。
「キールアちゃんキールアちゃん!! この子めちゃめちゃ可愛くない!!?」
「へ? この子って……」
「猫ちゃんだよーっ? キールアちゃんも抱いてみなよー!」
え、とレトは出る筈もない声を出すところだった。
嫌だ嫌だと首を振るレト……もとい猫を見て、キールアは半歩後ろに下がる。
「……え?」
「ご、ごめん……私……」
後ろにいたロクが、女子を掻き分けてででんと一歩大きく踏み出す。
レトの頭を撫でると、ロクは少し苦笑いをしてみせた。
「ごめんごめん、確かキールアって猫だけは苦手なんだよね?」
「「「……え————ッ!!?」」」
皆のどよめきの中で、キールアもはははと笑った。
「そ、そそそれってどういう事!!?」
「こんなに可愛いのに?」
「ごめんなさい……私、猫だけはどうしてもダメで……」
「へー……」
「キールア昔猫に噛まれた事あるからねー」
「そうなの?」
「それから猫だけは大の苦手になったんですよ! キールアはっ」
苦笑を浮かべるキールアに、レトは少ししゅんとなった。
そういえば、そんな事もあったなと。
人間の姿だと傍に寄れるけれど、猫の姿だとそうもいかない。
キールアは、少しレトを避けながら歩き出した。
「あれ? 何処か行くの?」
「うん、薬品揃えに街に出てくる。あとロクに頼まれてた食材とね!」
「やったーっ! 行ってらっさーい!」
「行ってきますっ」
たたたっと走り出すキールアの背中を皆で見ながら、またレトを撫で始める。
わしゃわしゃと、まるで髪の毛を撫でくり回されているようだった。
「こんなに可愛いのに……キールアちゃん勿体ないね」
「まあ……あれは相当痛かっただろうしなあ」
「あ、その猫に噛まれたって話?」
「うん。右腕だったと思うよ。いつも白衣着てるから気付かないけど、うっすら残ってるかと」
「えー!? 女の子なのに可愛そう……」
「あの時相当キールア泣いててさ……血もいっぱい出たし、トラウマなんだろうなあ」
「……へえ……」
レトも、やっと思い出した。
動物が大好きなキールアが、唯一猫だけ嫌うのだ。
その話を、懸命に思い出す。
ただでさえ泣き虫だったキールアが、右腕を思い切り噛まれて泣き喚いていたあの日は。
彼女にとっても、忘れ難い日になってしまったのだろう。
「あ……そういえば、今日って雨降るんじゃなかった?」
「! そうだよ! 大雨注意報出てたじゃん!」
「流石にキールアだし、折りたたみ傘くらいは持っていったと思うけど……」
「心配だね……」
フィラ副班の腕に抱かれて、レトを含めた一同は任務室へと向かった。
雨雲は、ゆっくりと広がっていく。
※後編に続く
- Re: 最強次元師!! ( No.932 )
- 日時: 2013/08/18 11:38
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: kcbGQI7b)
- 参照: 【番外編:後編】アメブロ、Twitter、skypeなど多様な面で活動中。
『わたしとこねこ。』
「……遅いね、キールアちゃん」
「うん……やっぱり傘持っていってないんじゃないかな?」
「今日は皆任務にも行かないようにって、言われてたのに……」
キールアが出て行って、およそ3時間以上は経ったと思われる。
既に外は景色も歪む程雨で溢れ返っていた。
スコールのような激しい雨が、蛇梅隊の中にまで響く。
「雷の恐れもあるしさ、キールアに連絡しない?」
「そうね……ロクお願いできる?」
「あいさっ!」
通信機で、キールアを呼び出すロク。
ぷちっという音が、鳴った。
「あ! キールア?」
『……あら? これ、キールアちゃんの?』
聞こえたのは、キールアの声ではなかった。
「え……あ、あれ……?」
『その声はロクアンズちゃんかな? これ、キールアちゃんのだよね?』
「……! もしかして、医療部班のソーフィ・アレーク班長!?」
『あ、良く分かったわねっ。多分、朝の研修でここに置きっぱに……』
「ま、マジですか……」
『? ええ、多分……ここに置いておくから、後で取りに来るよう言っておいて貰える?』
「……合点承知の助で御座います……」
『な、何を言ってるの……? じゃあ、またね!』
ぷつんと切れた通信機は、理不尽で且つ無機質な音を奏でていた。
手段が、断たされた。
「ど、どどどどどうしよう!!!?」
「キールアちゃん傘持ってるかなあ!? 大雨で凍えてないかなあ!?」
「……シーホリー、傘持っててないわよ」
ぼそっと、ティリの声が響いた。
酷く落ち着いた声に一瞬背筋が凍った皆は、そっと振り向く。
「え……?」
「玄関に傘が置かれたままだし、さっき見たけど、食堂に折りたたみ置き忘れていたし」
「……と、いうことは?」
「雨が降ってからでは厄介だから、慌てて出かけたのね。ホントにドジ」
「……ってそれまずいじゃん!!!」
外ではもう激しい雨で降り続いていて、出かけたキールアは傘を持っていない。
それを聞いたレトは、慌ててミルの腕から飛び降りた。
「あ!? ちょちょっと子猫ちゃん!!?」
彼は、迷う事なく駆け出す。
丁度門を出ようとしていた隊員の足元をすり抜け、豪雨の中に飛び出した。
「うわぉ!!? ……な、何だ……?」
黄色い背中は、ただ雨に打たれるばかり。
「……雨、早く止まないかな……」
誰もいない街の中で、キールアは買い物袋片手に路地裏で立ち尽くしていた。
買い物が済んだのは良かったが、直後まるでバケツをひっくり返したかのような雨に出くわした彼女。
約1時間程、そこでじっとしていたのだ。
大事な薬を護る為、全身を雨で濡らして。
「……? あれ……」
誰もいない筈の、街の中を。
たった一つ、何かが駆け巡っていた。
こんな激しい雨の中で、誰かが走っているかのようにも見えるその姿は、
次第に、キールアの目には明らかになっていった。
「え…………」
同じく、全身をびしょびしょに塗らした子猫が、よたよたと自分に近寄ってきたのだ。
「この子……さっきの……っ」
美しい黄色い毛並みが、濡れたタオルのようにぐちゃぐちゃになる。
その子猫は、若干震えながら、その口に折りたたみ傘を咥えていた。
ぼとん、と水溜りの中に、それを落とす。
ぜえはあと、呼吸を荒く繰り返す。
「持ってきてくれたの……? 私の為に……?」
ぶるぶると身震いをして、体中に染み付く雨を振るい落とす子猫、レト。
彼は疲れきった体で、キールアの目の前に歩み寄った。
「ごめんね……ありがとう」
そっと、触れることもできない。
自分のトラウマがあるから、猫にだけは触れなくて、近寄れなくて。
それでも、優しく笑みを浮かべて、そう言った。
猫が嫌いと言ったのに、それでも自分の為に走ってきてくれた、その子猫に向かって。
「こんなに濡れちゃって、傘がないから帰る事もできないし……本当に、うまくいかないね」
水溜りの中に落とされた傘を、キールアは拾った。
でも、やっぱり使うことはできなくて。
薬を持って、猫を抱えて、小さな折りたたみでこの豪雨と強風の中を歩いたら。
猫も薬も傘も、飛ばされてしまう。
キールアは、少しでも雨を凌げるように、できるだけ雨の当たらない路地の奥に進んだ。
レトも、小さく足を進めて、キールアについていった。
その時。
「……!」
ぐぎゅるるる……と、鈍い音がキールアの耳に届いた。
咄嗟に振り向くと、レトがぱたんと腹をすかせて倒れていた。
「だ、大丈夫!!?」
ばたんきゅーと寝そべるレトは、立ち上がる事もできなかった。
(そういや俺……朝から何も食べてねえ……)
自分に限って、と思っていた時。
キールアは、少しレトと距離をとって、自分の買い物袋を漁り始めた。
カコン、と差し出されたのは、魚の缶詰だった。
「ご、ごめんね……こんなものしか、なくって……」
缶詰をあけて、レトにそっと差し出した。
その距離は、本当に遠く。
嫌っているのが、苦手なのが、分かるくらいに。
それでも懸命に、震える手でレトに差し出した。
(猫……嫌いだって、言ってたくせに……)
頑張って、自分なりに精一杯頑張って、缶詰をレトに近づけたキールア。
レトは、迷うこともなく缶詰にがっついた。
びくっとしたキールアが、また離れる。
「……た、食べた……」
中身は人間だし、加えて幼馴染なので。
レトは辺に警戒もせずにただ淡々とツナ缶を平らげていく。
普段何気なく食べているものが、こんなに美味しく感じるとは。
レトは少し感動しながらも、その美味しさを舌で感じとっていく。
そんな、時だった。
「……!」
ツナ缶に夢中になるレトの頭に、暖かみが、じんと広がっていった。
優しく頭の上に乗せられたその手は、ほんの少しまた、震えていて。
自然に、まるで引力で引っ張られたかのように、キールアはすっと腕を伸ばしていたのだ。
レトの、猫の頭に、そっと掌を乗せていたのだ。
「……!? わぁッ!!? わ、わわ私……な、何を……!」
ぱっと手を離すキールア。
レトは、その様子をちゃんと見ていた。
きちんと、苦手なものと向き合う彼女の姿を。
真っ赤になる彼女を見たレトは、ぺろっと最後のツナを食べ終える。
「ん……にゃー……」
可愛らしい声で、そう鳴いた。
キールアはまだびくびくしたままだったが、それでも、何度も。
「にゃ……にゃー……」
雨で濡れた体が、冷えたはずだったのに。
まるで、その鳴き声の一つ一つが、小さな灯火のように。
心が、温まっていく。
「……」
『大丈夫』って、そう言われているような。
大好きな人に、『大丈夫だよ』って、『安心して良いんだよ』って、言われているような。
キールアの中で、そんな感覚が芽生えた。
「あ……ありがとう……」
今度こそ、本当に。
キールアは、しっかりと腕を伸ばした。
震えもせずに、愛しくてたまらないように、優しく、大事そうに猫を触る。
頭の下を擦ったり、頭の上を、何度も何度も撫でたり。
もう彼女にとって、猫は怖いものではなくなった。
レトはそれが嬉しいのか、自分もまたキールアの手を舐めた。
それには流石にびっくりしたのか、キールアはまた跳ねる。
「ひゃ!? く、くすぐったいよぅ……っ」
それでも、嬉しそうに微笑むキールア。
レトは面白くなったのか、その攻撃を止めず。
「ひ……や、やめ……! くすぐったい、ってばぁ……! ……ひゃ……っ」
チロチロと、キールアの指や首筋を、舐めまわしていく。
これは猫だから許されることなんだな、と新しい発見をしてレトは楽しくてしょうがないご様子で。
案外猫も悪くないなと、そんな事を適当に考えながらキールアと戯れるレト。
いつの間にか、雨は上がっていた。
「あれ……? 雨……!」
綺麗な虹がかかっている事に、気が付いたキールア。
レトと、猫と遊んでいる間に雨は上がったんだと気付いた。
表情も、ぱっと明るくなる。
「じゃあ、帰ろっか」
すっとレトを抱きかかえて、買い物袋片手に立ち上がる。
正に、そんな時。
「……——え!?」
(————ッ!!?)
猫の体が、一瞬痙攣した直後。
突然何処からか噴出した暗い煙に、キールアは包まれた。
レトは直感的に、あ、まずいと思った。
「——————え」
キールアは、気付く。
右手には、買い物袋があって。
左手には、しっかりと掴んだ——————、
「ええええ——————!!!?」
——————レトヴェール本人(装備:パンツ一枚)が、いた。
「えと……何? つまり、キールアの着てた白衣をほぼ全裸のレトに着せて、幸い豪雨で誰もいなかった街の中を歩いて帰ってきた、と?」
「全裸っていうな」
「まあまあ……間違っちゃいないでしょ……」
任務室で集合した戦闘部班一同に、レトとキールアは囲まれていた。
キールアは、一度もレトと目を合わさず蛇梅隊に帰還し、それからも目を合わせようとはしない。
真っ赤になったままの顔は、俯いていた。
「あの猫、レトだったんだね……」
「道理でレトが朝からいないわけだよ……」
納得されるのが、妙に気に食わないレト。
フィラ副班は、ずずいっと2人の前に顔を突き出す。
「キールアちゃん変なことされなかった!?」
「しねえよ……」
その一言で更に顔から火を噴いたキールアは、何も言わず任務室から逃げるように去っていった。
じっと、皆の視線がレトに集まる。
「やっぱり……」
「何か、したんだ……」
「だからしてねえって」
「嘘つけ!! あの顔見た!? めっちゃ真っ赤だったしっ!」
「レト、自首した方が宜しいのでは?」
「ガネストてめ……」
「てかお前等、そういう関係じゃなかったのか?」
ラミアの、何気ない一言が。
レトの怒りのパラメータを一撃でぶち破った。
「ちげえよッ!! 断じてちがう!!」
「幼馴染にも礼儀ありだよ……」
「お前……俺を信じる気ねえだろ?」
ロクの襟首を掴んで、ぐわんぐわんと揺らすレト。
廊下にまで響く騒がしい音を、
キールアは扉を背にして、未だ真っ赤な顔で聞いていた。
「もう……レトのばか……」
絶対許してやらない、と一言残すと、キールアは歩き出した。
真っ白な廊下の中心で、キールアは一度立ち止まって、振り返る。
「————————ありがと、レト」
忙しく騒がしい、そんな部屋の扉向かって言い放った言葉。
届く筈もないのに、小さく漏らした想いは広い廊下の壁に伝って、消えていった。
- Re: 最強次元師!! ( No.933 )
- 日時: 2013/08/25 18:31
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: kcbGQI7b)
- 参照: 【本編】アメブロ、Twitter、skypeなど多様な面で活動中。
第253次元 サボコロの修行事情Ⅰ
「……!?」
くくく、と楽しげにリリエンは笑った。
続いて、挑戦的な瞳を、戸惑うエンに向けた。
「攻撃してみろよ! どうせできねーけどな!!」
「遊んでないでさっさと片付けるわよりリエン!! ——————音振!!!」
ばっと鈴がついた紐を広げるリリアン。
じゃらっという響きが、合図となるように。
途端に、地面ががたがたと震えだした。
「な、何だ……!!?」
「く……っ、これじゃあ身動きが……!!」
震動の止まない地面で、2人がうろたえている時。
太い縄がびゅるんという音を奏で風を泳いできた。
エンとサボコロは、そこから身動きもできず、その縄にすら気付かず。
(————捉えた!!)
リリエンが、そう心の中で確信した。
正にその時。
「く……ッ——————炎撃ィィッ!!」
体勢を崩したサボコロが、強く腕を伸ばす。
彼の腕を取り巻く炎が、伸びてきた縄に引火。
その縄の元を掴んでいたリリエンは、咄嗟に腕を引く。
燃える縄の火を消すように、バチン!! と地面に縄を叩きつけた。
「へえ……上手いじゃん。でも君にしては、少し威力が弱かったんじゃない?」
「……」
「ねえ、怖気づいてんの?」
頬に汗を滑らせたリリエンは、その場から少し離れる。
地面の揺れが、収まった。
(あっぶねえー……成功して良かったぜ)
サボコロは、すっと腕を下ろす。
確かに、彼の次元技にしてはいつもより迫力が足りない。
次元級が低い訳でもなさそうだ、とエンは思う。
実は、彼はここ1週間、ずっとこの修行をしていたのだ。
「……“元力の圧縮”ぅ?」
「あ、ああっ! お前なら分かると思ってな!」
今から1週間程前のこと。
サボコロは、ずっと自身の元力の扱い方に悩んでいた。
元より元力の扱い方が下手な彼は、通常の300倍以上もの元力を有しその扱いに長けたミルに頼みこむ事に。
勿論彼女は彼の頼みを快く引き受けた。が然し。
「……多分、あの子の方があたしより上手いと思うんだよね」
「へ? あの子って?」
「すぐ呼んであげるから、今日は休んで。明日からみっちり修行しなよ!」
ミルはそう言って微笑み、さっさと部屋に戻ってしまった。
サボコロは仕方がないので、その日は一日中体を休ませる事にした。
次の日。
ミルに言われて滝つぼの方で座ってぼーっと待っていたサボコロ。
暢気に空に浮かぶ蝶なんかを見つめながら待っていると。
「あ、あのー……」
申し訳なさそうな、小さな声がサボコロの集中を断った。
びくんとした彼は咄嗟に振り向き。
「……へ?」
そこに立っていた、彼女に驚く。
もじもじと俯き立っていたのは、紛れもないセルナ・マリーヌだった。
「せ……セルナ!? な、なんでお前ここに……!」
「え、えと……ミルさん、に頼まれて……その……」
まさか、セルナを連れてこられるとは。
サボコロは半分がっかりし、半分は驚きに満ちていた。
「もしかして、お前が俺の修行に?」
「は、はい……い、一応……」
「お、おう……」
「……あの、時間も、勿体ないので……始め、ますか?」
そう言ったセルナに応えるべく、サボコロはよいしょと腰を浮かせ立ち上がった。
どう考えても、元力を扱うのに慣れていなさそうな人を連れてこられてしまった。
(こ、困った……)
彼女はお世辞にも、強いとは言えない次元師であった。
元力量も一般より少し多いくらいで、蛇梅隊から見たら少なく、加えて実戦向きではない。
これは性格上の問題にもなるが、決勝戦の修行には不釣合いな人材ともとれる。
「えっと、まず俺どうすりゃいい?」
「あ、はい。サボコロさんは、元力の扱い方、制御法に悩んでいらっしゃるんですよね?」
「あ、ああ……」
「サボコロさんは元力が常人より多いので、制御するのも難しいと思うのですが……」
然しそれは、大きな力を制御できた時、更に多大な力を得る事ができるようになる。
そう、彼女は言い切った。
戦争に置いて、大きな先手となる、元力が多いという特徴。
続いてセルナは淡々と語る。
「私、準決勝の第2試合、見させて貰いました……最後の大技は、本当に凄かったと思います」
「い、いやあ……」
「でも……」
「……?」
「あれは、エンさんに負担がかかりすぎる、と……そう、思いませんでしたか?」
サボコロは、びくりと反応した。
セルナの目は、じっとサボコロを見つめる事もなく、すぐにぱっと俯いた。
「両次元は、武器型の次元師に負担がかかる。元力の圧縮の仕方一つで、本当に変わるんです」
「……」
「魔法型は元力の扱い方が武器型より難しい……だから、サボコロさんも……」
「え、あー……えっと……つまり、俺は……どう、すれば?」
「あ、そうですよね。すみません。……えっと、ですね」
セルナは、すっと地面を指差した。
「座って下さい」
「……へ?」
「ただ座るんじゃ、なくて……次元技を発動したまま、何もせずに座っていて下さい」
言われた通りに、サボコロはぼすんと地面に座った。
胡座をかいて、そっと目を閉じ、次元技を発動する。
空気が変わったのをセルナは確認し、サボコロはまた、瞳を開いた。
「え、と……これで良いのか?」
「あ、はい……それでは、これから言う指示に従って下さい」
セルナも同じように、サボコロの目の前に座る。
正座をした彼女は少しだけスカートの裾を正し前を向く。
「元力というのは、体に流れる小さな粒子です。その一つ一つに集中する事はできません。
ですから我々次元師は、その粒子の流れを意識の中で辿り、体の中で流れを掴みます。
流れを掴む事ができるようになるには、自身の元力を上手く扱えるようにならないといけません。
目を閉じて感じてみて下さい。心に溢れ体を駆け巡る“それ”は、きっと貴方の中で暴れている」
目を閉じた彼は、集中する。
自身の心に問いかけるように。心臓の音だけが、聞こえるように。
ざわざわと、溢れ暴れ回っている元力を、感じるように。
「そして元力を上手く制御する為に、一つだけ良い方法があります。これには個人差がありますが……。
イメージして下さい。体に溢れ流れる元力を、全て心に詰め込むように、心で塞き止めるように」
まるで氾濫した川の水を、防波堤で抑えるかのようなイメージ。
制御されていない元力というのは、出会いたての動物と同じ。
自分を恐れ、震えながら反抗し、威嚇する。
各々の心に、牙を向くそれを止める。
たったそれだけが、元力を扱うということ。
「……ん……っ」
「……っ?」
「……っぅおおお————!!?」
サボコロは、そんな声を張り上げて思わず飛び退いた。
だっと溢れる汗が、彼の体に張り付いていた。
荒い息を繰り返す。
「い、今……胸が、急に熱くなって……!!?」
「!!? そ、それですサボコロさん!!」
「へ!?」
「今の感じ……忘れないで下さい。大変かもしれませんが、貴方にならきっとできます!」
セルナが、今日一番の笑顔でぱっと明るくなった。
こんな風に笑う彼女も、これだけ彼女の言葉を聞くのも。
サボコロにとっては初めてで。
そして何より。
これほど元力を、心に染みる程感じたのも、初めてだった。
- Re: 最強次元師!!【※重要なお知らせがあります】 ( No.934 )
- 日時: 2013/09/01 10:06
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: kcbGQI7b)
- 参照: 重要なお知らせ\( ^q^ )/
皆さんこんにちわ、作者の瑚雲です。
えー、突然で申し訳ありませんが、この度本作及び他作品につきましても無期休載を取りたいと思っています。
取りたいと言っても、止むを得ない事態に陥ってしまった、というのが本音です。
ですので暫くは更新停止になりますが、決して小説を投げ捨てたりはしません。
必ずまた更新を再開しますので、その時はここにお知らせを追記しておきます。
では、またの機会に。
P.S
更新は出来ませんがこのサイトにはいます。
もし見かけたら声をかけて下さると嬉しいです。
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