コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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最強次元師!!【※新スレ作成におけるお知らせ有り】
日時: 2015/03/15 09:40
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: u/FYQltH)
参照: http://ncode.syosetu.com/n5050ci/

 運命に抗う、義兄妹の戦記。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 基本毎週日曜日に更新!


 ※追記

 実は、本作を一から書き直そうと思いまして別サイト様にて“完全版”を再連載し始めました。
 やりたい話が多くて一度断念してましたが、やっぱり優先しようと思ってもう一度記載致します。
 ご興味のある方はどうぞ! 上記のURLで飛べます*
 とってものんびりと、更新する予定です。


 Twitterの垢をつくってみました→@shiroito04
 イラストとか宣伝とかを呟いてます!



 ※注意事項

 ・荒らし・中傷はお控え下さい。
 ・チェンメなんかもお断りしてます。



●目次

prologue >>001
第001次元 >>002第011次元 >>012第021次元 >>048
第002次元 >>003第012次元 >>013第022次元 >>050
第003次元 >>004第013次元 >>019第023次元 >>052 
第004次元 >>005第014次元 >>020第024次元 >>055
第005次元 >>006第015次元 >>021第025次元 >>059
第006次元 >>007第016次元 >>025第026次元 >>060
第007次元 >>008第017次元 >>027第027次元 >>063
第008次元 >>009第018次元 >>030第028次元 >>065
第009次元 >>010第019次元 >>044第029次元 >>070
第010次元 >>011第020次元 >>046第030次元 >>071

第031次元 >>072第041次元 >>146第051次元 >>224 
第032次元 >>077第042次元 >>169第052次元 >>230
第033次元 >>081第043次元 >>176第053次元 >>234
第034次元 >>082第044次元 >>179第054次元 >>241
第035次元 >>090第045次元 >>180第055次元 >>245
第036次元 >>097第046次元 >>189第056次元 >>260
第037次元 >>104第047次元 >>191第057次元 >>262
第038次元 >>108第048次元 >>203第058次元 >>264
第039次元 >>109第049次元 >>209第059次元 >>268
第040次元 >>138第050次元 >>216第060次元 >>274

第061次元 >>298第071次元 >>359第081次元 >>385
第062次元 >>300第072次元 >>361第082次元 >>388
第063次元 >>308第073次元 >>365第083次元 >>391
第064次元 >>337第074次元 >>369第084次元 >>393
第065次元 >>338第075次元 >>370第085次元 >>399
第066次元 >>339第076次元 >>371第086次元 >>402
第067次元 >>345第077次元 >>377第087次元 >>403
第068次元 >>346第078次元 >>378第088次元 >>413
第069次元 >>352第079次元 >>380第089次元 >>414
第070次元 >>353第080次元 >>383第090次元 >>417

第091次元 >>420第101次元 >>448第111次元 >>480
第092次元 >>421第102次元 >>450第112次元 >>484
第093次元 >>422第103次元 >>458第113次元 >>489
第094次元 >>427第104次元 >>459第114次元 >>495
第095次元 >>431第105次元 >>467第115次元 >>499
第096次元 >>432第106次元 >>472第116次元 >>501
第097次元 >>433第107次元 >>475第117次元 >>502
第098次元 >>436第108次元 >>477第118次元 >>504
第099次元 >>444第109次元 >>478第119次元 >>507
第100次元 >>445第110次元 >>479第120次元 >>508

第121次元 >>509第131次元 >>544第141次元 >>558
第122次元 >>510第132次元 >>546第142次元 >>560
第123次元 >>511第133次元 >>547第143次元 >>563
第124次元 >>512第134次元 >>551第144次元 >>564
第125次元 >>520第135次元 >>552第145次元 >>565
第126次元 >>521第136次元 >>553第146次元 >>576
第127次元 >>528第137次元 >>554第147次元 >>590
第128次元 >>533第138次元 >>555第148次元 >>595
第129次元 >>534第139次元 >>556第149次元 >>608
第130次元 >>536第140次元 >>557第150次元 >>623

第151次元 >>631第161次元 >>683第171次元 >>759
第152次元 >>632第162次元 >>711第172次元 >>760
第153次元 >>633第163次元 >>719第173次元 >>762
第154次元 >>637第164次元 >>726第174次元 >>764
第155次元 >>643第165次元 >>739第175次元 >>766
第156次元 >>655第166次元 >>749第176次元 >>768
第157次元 >>659第167次元 >>753第177次元 >>769
第158次元 >>664第168次元 >>754第178次元 >>770
第159次元 >>665第169次元 >>755第179次元 >>771
第160次元 >>680第170次元 >>758第180次元 >>772

第181次元 >>773第191次元 >>788第201次元 >>813
第182次元 >>775第192次元 >>789第202次元 >>814
第183次元 >>776第193次元 >>792第203次元 >>826
第184次元 >>777第194次元 >>793第204次元 >>832
第185次元 >>778第195次元 >>794第205次元 >>835
第186次元 >>781第196次元 >>795第206次元 >>841
第187次元 >>782第197次元 >>798第207次元 >>853
第188次元 >>783第198次元 >>802第208次元 >>854
第189次元 >>784第199次元 >>803第209次元 >>855
第190次元 >>785第200次元 >>804第210次元 >>858

第211次元 >>862第221次元 >>883第231次元 >>897
第212次元 >>868第222次元 >>884第232次元 >>898
第213次元 >>873第223次元 >>888第233次元 >>901
第214次元 >>874第224次元 >>889第234次元 >>902
第215次元 >>875第225次元 >>890第235次元 >>903
第216次元 >>876第226次元 >>892第236次元 >>904
第217次元 >>877第227次元 >>893第237次元 >>905
第218次元 >>878第228次元 >>894第238次元 >>906
第219次元 >>879第229次元 >>895第239次元 >>907
第220次元 >>882第230次元 >>896第240次元 >>908

第241次元 >>909第251次元 >>929第261次元 >>955
第242次元 >>913第252次元 >>930第262次元 >>956
第243次元 >>914第253次元 >>933第263次元 >>957
第244次元 >>915第254次元 >>947第264次元 >>958
第245次元 >>916第255次元 >>948第265次元 >>959
第246次元 >>917第256次元 >>949第266次元 >>960
第247次元 >>918第257次元 >>951第267次元 >>961
第248次元 >>919第258次元 >>952第268次元 >>962
第249次元 >>921第259次元 >>953第269次元 >>963
第250次元 >>926第260次元 >>954第270次元 >>964

第271次元 >>965第281次元 >>977第291次元 >>988
第272次元 >>966第282次元 >>978第292次元 >>989
第273次元 >>967第283次元 >>979第293次元 >>990
第274次元 >>968第284次元 >>981第294次元 >>991
第275次元 >>969第285次元 >>982第295次元 >>992
第276次元 >>970第286次元 >>983第296次元 >>993
第277次元 >>973第287次元 >>984第297次元 >>994
第278次元 >>974第288次元 >>985第298次元 >>995
第279次元 >>975第289次元 >>986第299次元 >>996
第280次元 >>976第290次元 >>987第300次元 >>997

※第301次元〜は新スレにて連載予定


       ●おまけもの●

●資料集など
皆のプロフィール1 >>218
皆のプロフィール2 >>278
皆のプロフィール3 >>287
皆のプロフィール4 >>288
皆のプロフィール5 >>289
皆のプロフィール6 >>503
主な登場人物 >>852
さいじげテスト。 >>843
最強次元師!! について >>58

●番外編 
キールアの想い >>41
メイド喫茶祭り① >>327
メイド喫茶祭り② >>331
メイド喫茶祭り③ >>341
友達の証① >>492
友達の証② >>493
友達の証③ >>494
疎外少年と次元少女① >>810
疎外少年と次元少女② >>811
疎外少年と次元少女③ >>812
蛇梅隊DE☆大集合!! >>829
E FIEDLA >>941
英雄と妖精 >>945

 
●外伝
第001時限 >>942
第002時限 >>943
第003時限 >>944


●キャラ絵(1人)
奏様が描いて下さったルイル >>116
奏様が描いて下さったティリ >>105
奏様が描いて下さったロク >>119
奏様が描いて下さったロク(舌出しVer.) >>185
奏様が描いて下さったロク(ポニテVer.) >>523
奏様が描いて下さったキールア >>127
奏様が描いて下さったアリル >>141
奏様が描いて下さったリリアン >>148
奏様が描いて下さったミル >>154
奏様が描いて下さったフィラ副班 >>162
奏様が描いて下さったレト >>168
奏様が描いて下さったレト(メイド服Ver.) >>329
奏様が描いて下さったガネスト >>304 
奏様が描いて下さったガネスト(メイド服Ver.) >>318
奏様が描いて下さったアルア >>460

●キャラ絵(複数) 
奏様が描いて下さったレト、ロク、キールア >>693
奏様が描いて下さったエン、ミル、リルダ >>737

☆奏様には毎度ご感謝しております!!
 すごく似ていて、イメージ通りです
 キャラの絵が分からない場合には奏様の絵を見て下されば納得します!!
 これからも描き続けてほしいですね、是非とm((黙


●お知らせなど

* 2009 11/13 執筆開始
* 2013 09/01 執筆中断
* 2014 01/17 執筆再開
* 2014 10/19 別サイトにて再連載開始 >>980
* 2015 03/15 新スレ作成におけるお知らせ >>998

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Re: 最強次元師!! ( No.775 )
日時: 2013/02/09 13:17
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: y7oLAcgH)
参照: http://www.kaki-kaki.com/bbs_m/index.html

第182次元 神である資格

 「んぁ……?」

 少年は大きく口を開けて薬品だらけのこの部屋の空気を吸い込んだ。
 口を閉じるのと同時、自分の負った傷跡を生々しく睨む。
 そうか、と一言呟いて。
 
 「レト……?」

 ドアの端からちょこんと覗いていたその少女へと目を向けた。
 少年、いやレトヴェールは軽い布団を退かし、手で招く仕草をとる。
 
 「何こそこそしてんだよ、お前」
 「別に……こそこそなんかしてないけど」
 「……ふーん……」
 「でも……、ごめんね」

 ベッドの横にあった、ベッドの高さに合わせた椅子に腰を下ろしたロクは、そう言った。
 顔が曇っていて良く見えない。どうやら震えているようにも見えた。
 ロクはレトの傷を見て……酷く心を打ち込んでしまったようだ。
 
 「あたしのせいで……、こんな事になっちゃって……」
 「……」
 「傷つけるつもりなんてなかったの……、ただ、ずっとレトに甘え、て……—————」 
 「それ以上言うなよ」
 「……っ!」

 震えて声も掠れていたロクは、途端にレトの声を聞いて顔を上げた。
 その顔はまだ、ロクが責任を感じていると物語っている。

 「傷つけるとか、甘えるとか……そんなんどうでもいいだろ」
 「でも……!」
 「俺は言ったよ、『お前らしく生きればいい』って。……そんなに、俺の事信じられないか?」
 「……」
 「俺がお前を責める理由なんてないだろ。大体兄貴ってのは下の奴を守る為にだな——————」

 その言葉を発する直前、ロクの瞳に確かな滴を感じた。
 流れ出す事のない小さな小さな滴。
 掴む事さえ許さない—————、哀しみの証。

 「ちょ、ロ……っ」
 「あたし……心の神、なんかじゃない……」
 「……」
 「自分の心さえ動かせない情けない神様なんて……、人の心に触れる資格ない……!!」
 「そ……そんな事言っ—————」

 遂に止まらなくなってしまった涙を、ロクは必死に拭った。
 何度何度目を擦っても、想いは止まらない。
 それを横で見ていたレトは、ロクの頭に手をぽんと置いた。
 その優しげな仕草に、ロクの涙は一瞬止まった。

 「……んな事、言うな」
 「……」
 「ガネストとかラミアとか……、皆俺が呼んだんじゃない。自分達で助けに来たんだよ」
 「……だ、誰を……?」
 「お前に決まってんだろ。剣闘族に殺されかけたお前を、な」
 「……」
 「そんな皆の気持ちを、お前は踏み躙るつもりか?折角お前を仲間として認めたあいつらを、裏切るつもりか?」
 「ち、違……!!」
 「違うだろ? 信じてるだろ? ——————誰より人を愛してきたお前なら分かる筈だ、違うか?」

 レトの言葉がじわりとロクの心に溶け込んだ。
 その大きな瞳から溢れ出した涙は……止まらない。
 幾つもの思いを募らせてきたロクは————、義兄の言葉で視界を潤ませた。

 「皆好きなんだよ、心優しいお前の事が。紛れもなくお前は心の神だよ、誰の心も溶かし、救ってきた」
 「あたし……でも……っ」
 「キールアも言ってただろ? 1人で背負うなって、皆で分けようって……皆同じ気持ちだよ、きっと」
 「……」
 「こんな事で挫けんな。俺達を待つ運命って奴は——————思ってるより手厳しい」

 ロクは小さく頷いた。
 それでも承諾したと伝えるように、強く強く頷いた。
 此処で負けちゃダメなんだと、前に進まなくてはならないんだ、と。
 心の中で何度も何度も唱えた。

 「……おっと、そろそろパーティに行かねーとまずいぞ、ロク」
 「うん」
 「ある飯全部食って良いってよ」
 「ホント!? んじゃ全部あたしが……!!」
 「いや、そりゃ流石にやばい」
 「……はは、そうだね! 楽しみだなぁ……」

 少し上の空で顔を浮かべながらも、ロクはそう答えた。
 別に何を見ている訳でもなく、ただ目の前の何かを見たくて。
 
 「……ねぇ……あたし、本当に行っていいのかなぁ?」
 「何言ってんだよ……第一……」
 「……?」
 
 レトは一度頭をくしゃりと掻きまわすと、簡潔にこう言った。

 「———————、ボケがいねぇと突っ込みは働けねぇんだよ」


 冷たい廊下の突き当たり。
 大きな扉を開けると、そこはまるで不思議の国…かもしれない。
 多くの人で賑わい、ワインを片手に話している人や思い切り食事にがっついてる人も見られる。
 ステージで大々的に演説をしているのはどうやら班長らしい。

 「すっごい賑わい……」
 「半年以内に4人の次元師が入ったんだもの。そりゃ賑わうわ」
 「フィラ副班っ」
 「まぁ……凄い事よ、それって」

 フィラ副班も片手にワインを携えていて、キールアと気ままに話していた。
 ロクとラミアは相変わらず火花を散らして大食い対決。 
 レトはエンと2人で静かにその様子を観戦し、他の皆もそれなりに楽しんでいる。
 
 「ねぇフィラ副班? あっちで一緒にワインでも飲まない? 景気づけにぱぁーっとさ」
 「え……い、いえ私は遠……」 
 「んな事言わないでさぁ……もう用意してあるんだ、君の分は」
 「は、はぁ……」
 「メッセル副班もすげぇっすねー……」
 「あらあらヴぇイン、情けないですね。口がぽっかり開いてましてよ?」
 「え……、あ、いや、き、気のせいだろ、ハハハ」
 「あらあら、目に見えてる嘘は逆効果でしてよ? ヴェイン」
 「……やっぱり?」
 
 メッセル副班に手を引っ張られ、フィラ副班は気の進まない顔で違う場所へと行き、
 ぽっかり開いた口を指摘され、マリエッタから風の如く追いかけられ、会場を走り回るヴェイン副班。 
 傍から見れば愉快に見えるこの会場も、裏では顔の引き攣る人々が現れている。
 
 「ルイル、お菓子大好きー!!」
 「ちょ、ルイル……すぐにいなくならないで下さいよ?」
 「ねぇレトっ! あたしと一緒に回ろうよ、あっちにいっぱい珍しいものあるよー?」
 「あ、あぁ……いいけど。……あれ?」
 「ん?」
 「その赤い眼鏡、前まで頭にやってたっけ?」

 レトはミルの頭に乗せられていた赤い眼鏡を指差した。 
 ミルは、あぁ、と言って一度眼鏡を下ろした。

 「これ、あたしの親友のなんだ。……この間の研究所のやつだよ。一緒に過ごした友達の物」
 「……そっか」
 「うん……大分前からつけるようにしたの。忘れないようにねっ」
 「そうか、元気で良かったよ」

 ミルは少し頬を赤く染めて答えると、嬉しそうにまた眼鏡を乗せ直した。
 活気溢れるこの会場内で、沢山の人が笑顔になっていく。
 つい前まであれ程暗い空気が立ち込めていたこの蛇梅隊が。
 新しい仲間を加え、ロクへの信頼を抱き、
 今正に、本来の姿を取り戻した景色が———————、この場所にある。

Re: 最強次元師!! ( No.776 )
日時: 2013/02/09 14:28
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: y7oLAcgH)

第183次元 昔のままの幼馴染

 「ねぇ……キールアちゃん?」
 「ひぇっ!? ……あぁ、み、ミラル副班……?」

 お酒を片手に若干酔ったミラル副班が頬を染め、キールアの肩を叩いて話しかけた。
 驚いたキールアもきょとんとし、目を大きく開いていた。
 ひっく、と一度声を裏返させると、ミラル副班は火照った体をキールアにすりつけ、小声で呟く。

 「……んで、どこまでいってるの?」
 「……え?」
 「惚けないでよ〜レト君よ、レト君」
 「レト? 何の事ですか?」 
 「んもー……もしかしてもう付き合ってるとか?」 
 「いや、ないですって……てか飲みすぎてますよ、ミラル副班っ」
 
 半分怒った表情で、キールアはミラル副班の言動に動揺した。
 少しだけ頬が赤いのは気のせいか…ミラル副班はそう考えていた。
 ふんっとそっぽを向いたキールアは喉を鳴らし、持っていた飲み物を飲み干した。
 
 「あれ? キールアちゃん、もうないの?」
 「え、あ、はい……そうみたいです」
 「あたしが持ってきてあげるぅ〜、親切でしょ〜?」
 「あ、ありがとう……ございます……」

 気が進まないも、持って来る手間が省けたので良しとするキールア。
 少し短い溜息を吐いて、ちらっとレトの方へ顔を向ける。
 エンと2人で何かを楽しげに話しているようだ。 
 2人とも同じ部隊なのですぐにうち溶けたらしい。
 思わずじっと見つめていたキールアの視線に、レトも気がつく。
 キールアは少し驚いたが、すぐに笑って手を振った。
 
 「……キールア・シーホリーと言ったか、あの娘」 
 「へ? あぁ……うん」
 「お前の幼馴染と聞いたんだが、本当にそれだけの関係か?」
 「おい、その質問は何故だか不穏に聞こえるんだが」
 「……ふ……まぁいいか」 
 「……んだよ……ったく」

 ロクとラミアの大食い勝負観戦を楽しみながらも、レトとエンはそのまま話し続けていた。 
 キールアはふっと笑う。レトが楽しそうに話してるのを見るとほっとする。
 そう思っていた時、帰ってきたミラル副班がぬっと飲み物を指し出した。
 
 「はいっ、キールアちゃん」
 「あ……ありがとうございます」

 ミラルから受け取ったコップを手で包んで礼をするキールア。
 彼女は渇いた喉を潤すべくジュースを飲み込んだ。
 喉越しの良い、深い音が鳴る。横で小さく笑ったミラル副班の事など……気にもせず飲み続けるキールア。

 「あ、あれ? これちょ、っと……苦くありませんか?」
 「そう? でもそんなもんよ、パーティの飲み物なんて」
 「へぇー……」

 その時、キールアの喉がひくっと音を出す。
 何か暑いような……そう思ったキールアは着ていた服の胸元をぱたぱたと仰ぐ。
 そしてもう一度、キールアの喉元が踊り出す。

 (あ、あれ……?)

 遂には顔まで火照り出し、その場でふにゃっと潰れ、キールアは近くの椅子に座り込んでしまった。
 不思議がったフィラはメッセル副班の肩に蛇梅を置き、そっとその場を抜け出した。
 ぎゃーッ!!っと騒ぐメッセル副班の気を留める事なく、火照ったキールアの肩に手を置いた。

 「どうしたの? キールアちゃん」
 「……んぁ……ふぃー……」
 「?」

 再度キールアの喉がひくりと音を出したので、フィラ副班はぴんときてしまった。
 酔っている。
 酒を飲んで……正にキールアは酔っていたのだ。

 「……ちょっとミラル?」
 「はい?」
 「未成年に酒を飲ませるとは……いい度胸ね、貴方」
 「な、何の事かしらーっ?」
 「……蛇梅に噛まれるか自首するか、好きな方を選ばせてあげる」
 「……あ、あたしがやりました」

 見事な戦術でミラル副班に自首へと追い込み、フィラ副班はキールアの顔を覗き込んだ。
 明らかに火照り、酔っている。
 喉奥がひくっひくっ、っとまだ鳴り続けていた。
 
 「ったくー……、何でこんな事したのよ」
 「だってキールアちゃん、ガード固いんだもん」
 「誰がベッドまで運ぶの? ……ん?」

 フィラ副班はふいに振り返った。
 目の前に映ったのは、レトが怯えている景色。
 明らかにこちらを向いてびくびくと震え上がっている。

 「……どうしたの?」
 「い、いや……俺……」
 「?」
 「……そ、そのキールア……マジで苦手なんですけど…」 
 「な、何で?」
 「何でって……昔キールアが酒飲んで酔ってレトに————」
 「って、ロク!?、大食い勝負は?」
 「勝ったよ、5杯差だったけど」
 「あぁ……そう」

 向こうに見えるのは大食い勝負で負けて悔しんでいるラミアの姿だった。
 積み上げられた皿の数は数えられない、そんな根性は沸いてこなかった。
 ロクはふふん、っと口元を歪ませながら勝ち誇った笑みを浮かべている。
 
 「まぁ、その時のレトが見たいならキールアの事はレトに任せた方がいいよ?」
 「そう、なの?」
 「ほら、キールア起きちゃった」

 ロクが指差した先にいるのは、酔って火照り込んだキールア。
 キールアはまるで子犬のような仕草で目を擦り、顔を見上げる。

 「あれー……ここどこ?」

 いつもより小さな声。 
 キールアは瞳に小さく涙を浮かべてうにゃりと声を上げる。
 記憶が曖昧なのか、その場でぽーっとして動こうとせず、周りをきょろきょろと見回しているようだ。
 レトは大きく溜息を吐く。

 「あ、れ……れ、と……」
 「……何ですか、キールアさん」
 「ここ……どこぉーっ!!」

 そこで思ってもいない事態発生。
 キールアはびえーんと泣き出した。
 目からはぽろぽろと涙が溢れ、溢れ出る涙を必死に拭って泣き叫んでいた。
 今の強きなキールアの面影が、失われた瞬間だった。 
 
 「え……何これ……この子泣いてるんですけどォッ!?」
 「ちょっとレト君!? これどういう事なの!!?」
 「あーいや……その、キールアって酔うと昔のあいつに戻るっていうか……」 
 「「「「つまり?」」」」
 「うん、泣き虫キールアになる」
 「「「「早く言えよそれをォォォ————ッ!!!!」」」」
 
 会場中が一部除いてパニックに陥った。  
 キールアの泣き声に満たされる会場はもう戦闘部隊の面影を消している。
 皆が慌しく叫び始め、キールアの背中をさする者も出てきた。
 まぁロクはそんな事気にも留めずに己の求めるべき飯へと吸い込まれているのだが。
 レトはこれが嫌だから、キールアにアルコールの入った物は飲食させないようにしていたのに。
  
 「やだぁーっ!! 部屋帰るーっ!!!」
 「レト君……キールアちゃんが泣きやんでくれないんですけど……」 
 「んー……」 
 「こらミラル!! あんたが責任持って運びなさい!!」
 「えーっ!? あたしなのーっ!?」

 どんちゃん騒ぎの中で、レトは一人溜息を零して、キールアの前にしゃがんだ。
 キールアはひっくひっくと泣いている。 
 レトはくるりと振り返る。
 
 「……もう俺連れていきますから。副班達は引き続き楽しんでて下さい」
 「へ? 良いのレト君?」
 「まぁ、幼馴染ですから」

 場数踏んでるんですと言わんばかりの笑顔で、よいしょとキールアを持ち上げる。
 レトは泣いたままのキールアを背中に乗せて、会場の重たい扉を開いた。
 損な役回りだなと、レトはほんの少し笑う。

Re: 最強次元師!! ( No.777 )
日時: 2013/03/26 21:01
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: 2DX70hz7)

第184次元 君と良い夢を 

 「うーん……」
 「もう眠くなったかい? 姫さんよぉ」 
 「んー……うん……」

 泣き疲れた彼女を背負って、レトは歩く。
 酔った勢いで泣き、叫び、そうして今眠りにつこうとする彼女。
 そんな彼女はこくんと眠たそうに頭を打っている。
 少しだけ微笑むレトは、キールアの部屋のドアノブに手をかけた。
 然しそのノブは、回らない。

 「……あれ」

 鍵がかかっている事に気がついたレトは、自分の背中で寝息をたてるキールアを見てさらに溜息。
 これは班長に見つかったら殺されるかもしれない。
 そんな念を抱いて、自分の部屋へ帰る。
 そう、キールアを背負ったまま。

 「ったく……だから止めてほしかったのに……」
 
 レトは自分のベッドにキールアをそのまま寝かせる。
 自分はというと重たい隊服を脱ぎ捨てて伸びをし、そのまま外へ出る。
 中からは、キールアの小さな寝息が聞こえてくる。
 
 「……今夜は寒いな、おい」

 自分の扉の前で、腰を下ろす。  
 他にも休憩室などあるが、キールアがまた泣き出したらいけないので此処で待機。
 というより、ここで夜を明かすつもりだろうか。 
 まぁ幾らなんでも女の子と同じベッドの上では寝れないだろう。
 そう考えたレトの背中に、ドアがとんとあたる。
 
 「……————レト?」

 小さな声と、甘い響き。
 キールアは、ドアノブを掴んだままレトを呼び込んだ。 
 レトは思わずびっくりして目を見開く。

 「お前寝たんじゃ……っ」
 「ごめんね……鍵、お風呂場に残してきちゃって……寒いでしょ……?」
 「あ、いや……まぁ俺寒い方が好きだし丁度良いっつうか……」
 「ばか」 
 「……はい」

 まだ酔いは冷めていないだろう。 
 キールアの瞳はまだとろんとしている。
 彼女は手を招き、立ち上がったレトの手首を掴んだ。 
 そのままゆっくりと微笑んで、レトを部屋の中に入れる。

 「風邪……引いちゃうよ? 別にやましい事するわけじゃないし……一緒に寝ようよ」
 「……お前、それは普通男が女に言う台詞じゃね」
 「ふふ……幼馴染でしょう?」
 「……後で班長に呼び出されても同罪だからな」 
 「……うん」

 レトはふわぁ、と一つ欠伸をしてベッドに潜りこむ。
 彼も相当疲れているのか、瞼がくっつきそうになっている。
 キールアはそんな小さな仕草にさえ笑い、そうして自分も少し離れてベッドに横たわる。
 2人の距離は近くないが、遠くない。
 人が1人入れそうなスペースを空けたまま、2人は眠りにつく。
 幸せそうな夢でも見ているのだろうか。
 キールアは眠りながらも小さく笑う。


 が。
 

 「あれ……ここどこ……」

 ちゅんちゅんと。 
 外からは小鳥の囀りような声さえ聞こえる。
 暖かな日差しが窓を超えてキールアを照らし出し、長閑な風もまた入り込んでくる。
 やわらかいベッドの上で座り込み、部屋を見渡す。
 白を基調とした部屋は、何故か落ち着きがあっていい。  
 違和感は一つもない。
 
 そう、レトが隣にいる事以外は。
 
 「……ちょ、ちょっと……」
 「うー……んぁ……」
 「レト、ヴェール……さん……?」
 「んー……、んだよ、どうしたキールア……ってうわァァァッ!!?」
 
 ずささささ、とレトはベッドの上で後ずさりする。
 何故なら目の前でキールアさんが何故か空鉄砲の銃口を自分に向けているからだ。
 鉄砲と言っても空、そして水鉄砲のようなもので、薬品入れに使う。
 それは人に実験薬をぶちかます時に彼女が使用するものだった。

 「何してんだよお前、ちょッ!?」
 「え? 何? 何であんたとあたしが一緒にベッドの上で寝てた訳?」 
 「あぁそっか……お前覚えてないもんな」
 「だから何で!?」 
 「世の中には知らない方が良い事もあるってな」
 「はーい3秒前ー」 
 「いやだから別にそういうんじゃないから!! 単純にお前の寝床なかっただけだからァッ!!!」

 その後30分に渡ってレトの説明タイムが続いた。
 昨日キールアが酔って泣き虫になってしまった事。
 そのままレトが部屋に連れて行ったが部屋の鍵がなかった事。
 遂にキールアは自分から一緒に寝ようと言い出した事などなど。

 「ていう事ですから」
 「ふーん……」 
 「怒んなよ、全部ミラル副班のせいだからマジで」
 「……別に、怒ってないよ」
  
 へ? と。
 レトは少し抜けた声を出す。
 そして彼女は、だって、と続けて。

 「良い夢を——————見てた気がするから」

 そう、優しく笑って言った。
 レトもそうかいと言って、キールアはレトの部屋を後にする。 
 こうして何気なくお騒がせな2人の時間は終わりを告げた。



 レトはさっさと隊服に着替えて部屋から出る。
 大きな欠伸をしながらも、彼はそそくさと食堂へと向かった。
 大きな扉の奥には広い食堂が目の前に広がる。皆早起きしてわいわい楽しんでいるようだ。
 その中でも始めに入ってくるのは皿が何枚も積み重なった机。
 何枚もという単位ではない。その人物の姿が皿に隠れてしまう程、上へ上へと積み重なっているのだから。

 「……よ、ロク。朝から見事な大喰らいっぷりを見せてくれるな」
 「ふぁい? レトひゃんおはよーっ!」
 「……喋るか食うかどっちかにしろよおい」
 「んで、結局どうしたの? 昨夜」
 「はぁ? 何が?」
 「何かあった? まさか一緒に寝たりしないよねー?」
 「……ノーコメントで」 
 「え」

 正直な事を言うと、本気で皆に殺されそうな気がしたレトはそういう返事をする。
 彼は料理班の人達の所まで言って適当に注文すると、すたすたと席に戻ってきた。
 そこにはコールド副班が口元を緩ませながら待ち構えていた。
 
 「よ、レト! キールアちゃんの泣きっぷりはもう凄かったなぁ!」
 「まぁ、色々な意味で、ですがね」
 「何かあったのかー?」
 「……の、ノーコメントで」

 頭上に疑問符を浮かべるコールドには分からないだろう。
 特に何をしたわけでもないが、言うのは何かと恥ずかしい。
 そうまた溜息を吐く。
 そんなところに、ひょいっとフィラ副班までもが顔を覗かせた。
 
 「あらレト君、昨日はミラルがごめんねーっ! 思いっきり叱っといたからね」
 「フィラ副班……ホントミラル副班には気を付けろって言っといて下さいよ」
 「ふふ、言っとく言っとくー」
 
 透き通るような蒼い髪を揺らし、相変わらず蛇梅を肩に乗せて笑う彼女。
 そして、あっとフィラ副班が素っ頓狂な声を上げる。
 その声にロクも反応し、食事の動きを止めた。

 「これ……ロク出てみる気、ない?」
 「これって……『SING A SONGコンテスト』?」
 「うん、正確には『歌謡大会』ってとこかしら」
 「何それー」
 「毎年この街で行われているのよ。いつもどこかの施設に参加募集が送られて、今年は蛇梅隊が誘われたのっ!!」
 「へぇー……っ」
 「それで、ミラルも出たいって言ってたんだけど……生憎仕事詰めなの、あの子」
 「あ、そっか」
 「それでロクに出てもらおうと思ったんだけど……良いかしら?」

 酷く騒ぎ、広く風の伝う食堂の中、フィラ副班は顔の前で両手を重ねてロクに頼む。
 ロクはその姿に口元を緩ませて微笑み、勿論、と自慢げに笑ってみせた。

Re: 最強次元師!! ( No.778 )
日時: 2011/03/29 23:03
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: jBQGJiPh)

第185次元  心の歌姫Ⅰ
 
 フィラ副班に連れられて、ロクはコンテストの会場へとやってきた。
 いかにも芸能やら特技を披露するような広い会場で、住民は誰でも観覧出来るよう、屋外になっている。
 広いステージも丹念に掃除され、フローリングも手を込んでいる。
 
 「ふーん…」
 「…ロク、優勝するなら気を付けた方がいいわ」
 「へ?何で?」
 「この大会…5年連続優勝の女の子がいるみたいだから」
 「ご…5年!?」
 
 ロクは口を大きく開けて、思わずぱくぱくする。
 老若男女問わず、幅広く住民を取り扱ってきたこの大会で、5年連続優勝を果たす少女がいる。
 ロクは開いた口を戻し、口元でにっと笑うと、自信満々に微笑んだ。

 「じゃあ…あたし全力尽くしてくるっ!!」
 「あら、威勢良いのね」
 「まぁ、それだけが取り得だし?」
 「大会は今から3日後。それまでに上達しないとねっ」
 「いえっさーっ!!」

 右手で敬礼のようなポーズをとると、ロクは再び微笑んだ。
 レトは隣で2人の会話を聞きながら、ちらっと会場に目を向ける。
 そこに現れたのは…同い年くらいの長い黒髪を持った少女だった。

 (…あれ、か……)

 確認しなくとも、レトには理解が出来た。
 立ち方、マイクの握り方、そして何より、あの視線。
 素人ではない、何年も歌いこんできたという証拠を、明らかにしていた。
 
 「にしても…気合入ってんなぁー」
 「へ?」
 「センターの街にも色があったってこった…」
 「まぁそうでしょ、センターだよここ、センター」
 「だよなぁー…」

 3人は一通り会場内を見渡すと、控え室に向かう。
 部屋の札には名前が刻まれていて、ロクはその部屋の中に入る。
 丁度いい程の空間に、奥にはマイクも置かれている。
 此処で練習しろ…という訳だろうか。
 
 「んじゃ俺、ちょっと歩いてくるわ」
 「分かった、じゃあまたあとで〜」

 フィラ副班は仕事の為本部へ帰還し、レトは周辺をぶらぶらと歩いていた。
 休憩所のような所まで来ると、レトは少女を発見する。
 椅子に腰をかけ、アイスティーを飲んでいた…先程の少女を。

 「…」
 
 何も言わず、ただじっと前を見つめていた。
 その凛としたその眼差しに、一瞬レトは驚いた。
 驚いたというか…、見入ってしまったのだ。
 顔立ちは良いほうだ。その長い足を組んで、黒髪も風に靡く。
 長くて細い指。身長はさほど高くない…など、レトはじっくりと観察する。

 「…何?」

 レトの視線に気がついたのか、少女はくるりと振り返る。 
 冷たいような、凍えるような、そんな瞳がレトの視線を射抜く。
 流石歌い手…綺麗な声を持ち合わせているようだ。

 「別に。5年連続の少女って誰かなーっと」
 「…?、どうしてそれを?」
 「さっきステージの上にいただろ。ちょっと見てたら、ああ、こいつかなって」
 「凄いのね、貴方って」
 「別に凄かねぇよ。ただ思っただけ」
 「…ふーん」

 少女はふっとレトから視線を外すと、手に持っていたアイスティーを口に含む。
 飲み方も上品で、欠けているところも見つからない。
 潔癖で完璧で、それでいて冷静な性格と言ったところだろう。

 「貴方も歌うの?」
 「いいや、俺じゃなくて俺の義妹」
 「…義妹?」
 「あぁ、大食いで女っ気なくて活発な奴だけど、歌は負けないと思う」
 「…へぇ、聴いてみたいわね」
 「お前の相手になんないんじゃねぇーの」
 「それは私が決める事じゃないわ。上手いか下手かなんて、分かんないんだもの」
 「……そうか…」
 「貴方の義妹の名前、教えてくれる?」
 「あぁ、ロクアンズ・エポールってんだ」
 「ロクアンズ…エポール…?」
 「お前も知ってるだろ、神族【FERRY】」
 「…あ…」
 「それだよ」

 レトは少女越しにある木の柱を睨みながら、そう言った。
 少女は何も言わずに椅子から立ち上がり、レトへ顔を向けた。

 「…私には人も神も関係ない」
 「……?」
 「ただ…歌うだけよ」

 ロクが神だと知っていた少女は、それだけ言って何処かへ消えてしまった。
 レトは小さな溜息を吐くと、もう1度少女の消えた方向へ目を向ける。
 何て強い目をしてるんだと…言わんばかりに。

 

 「レトー?何処行ってたのー?」

 ロクの控え室の扉を開け、休憩所から帰ってきたレト。
 口に手を当て大きな欠伸をすると、うにゃりと軟らかな瞼を上下に揺らす。
 昨日からあまり睡眠をとっていないらしい。

 「寝とけば?」
 「いや、お前の歌聴きに来た」
 「あぁ、そう」
 「んだよ、嫌そうな顔だな」
 「別に…嫌じゃないけど」

 ロクは再度ヘッドホンを装着すると、マイクを下ろし、あーっと声を出す。
 レトは近くにあった椅子に腰をかけて、うとうとと聴いていた。

 「…あれ?」
 「…な、何?」
 「も…、もう1回歌ってみて」
  
 レトの要望により、そこの部分の歌詞だけを再度歌うロク。

 「いーつーかー、また夢ひら…」
 「そう、そこ!!」
 「だ、だから…何?」
 「その歌詞…どっかで聴いたんだよなぁ…」
 「…どっかも何も、ずっと前から聴いてたじゃん」
 「?、そうだっけ?」
 「ほら、お義母さんが歌ってくれて…」

 あまり納得のいかないレトを放っておいて、ロクは続きから歌い出す。
 聴いている限りだと結構楽しそう曲で、ロクは絶えず笑顔に歌っていた。
 レトはぼーっと何かを考え、聴いている間は殆ど上の空だった。
 
 「なぁロクー」
 「〜〜♪」
 「おい、ロク」
 「……練習中なんだけど」
 「俺、前にお前に言った事あったよな?」
 「何て?」
 「『千年前、フェアリーは歌姫と呼ばれていた』…って」
 「あぁ…そうだったね」
 「歌姫って事は…フェアリーって歌が上手だったのかなぁ」
 「そうじゃない?妖精ってくらいだからね」
 「んー…」

 レトはまだじっと考えていて、ずっと唸っていた。
 いい加減嫌になったロクは、思い切ってレトに話を切り出した。
 
 「何が引っかかってるのさ」
 「…別に今の話と関係ないんだけどさ」
 「うん」
 「お前、去年の12月25日に、神族としての力が覚醒したよな?」
 「あぁ……うん」
 「その後、お前半年寝てたじゃん」
 「うん」
 「その間さ…歌ってなかったか?夢ん中で」

 あまりに直球で不可能な事を言われたロクは、一瞬に顰めてぐにゃりと潰れるように頭を抑えた。
 そして1度、大きな溜息をつく。

 「…な訳ないじゃん」
 「…だよなー」

 空を眺めている上の空のレトを1度キッっと睨みつけ、ロクは練習に入る。
 レトは無限大に広がる空に向かって、ただ一言呟いた。

 「…歌姫、か」

Re: 最強次元師!! ( No.779 )
日時: 2011/03/28 12:03
名前: 零兎 ◆3HYJsIYo1Q (ID: lgK0/KeO)
参照: http://ameblo.jp/lin-diary0120/

来てない間にかなり進んでいたwww

いやね、瑚雲自体とは久しぶりじゃないんだけどもねww

ロクちゃんが歌姫ってなんだかしっくりくる気がするww


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