コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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最強次元師!!【※新スレ作成におけるお知らせ有り】
日時: 2015/03/15 09:40
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: u/FYQltH)
参照: http://ncode.syosetu.com/n5050ci/

 運命に抗う、義兄妹の戦記。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 基本毎週日曜日に更新!


 ※追記

 実は、本作を一から書き直そうと思いまして別サイト様にて“完全版”を再連載し始めました。
 やりたい話が多くて一度断念してましたが、やっぱり優先しようと思ってもう一度記載致します。
 ご興味のある方はどうぞ! 上記のURLで飛べます*
 とってものんびりと、更新する予定です。


 Twitterの垢をつくってみました→@shiroito04
 イラストとか宣伝とかを呟いてます!



 ※注意事項

 ・荒らし・中傷はお控え下さい。
 ・チェンメなんかもお断りしてます。



●目次

prologue >>001
第001次元 >>002第011次元 >>012第021次元 >>048
第002次元 >>003第012次元 >>013第022次元 >>050
第003次元 >>004第013次元 >>019第023次元 >>052 
第004次元 >>005第014次元 >>020第024次元 >>055
第005次元 >>006第015次元 >>021第025次元 >>059
第006次元 >>007第016次元 >>025第026次元 >>060
第007次元 >>008第017次元 >>027第027次元 >>063
第008次元 >>009第018次元 >>030第028次元 >>065
第009次元 >>010第019次元 >>044第029次元 >>070
第010次元 >>011第020次元 >>046第030次元 >>071

第031次元 >>072第041次元 >>146第051次元 >>224 
第032次元 >>077第042次元 >>169第052次元 >>230
第033次元 >>081第043次元 >>176第053次元 >>234
第034次元 >>082第044次元 >>179第054次元 >>241
第035次元 >>090第045次元 >>180第055次元 >>245
第036次元 >>097第046次元 >>189第056次元 >>260
第037次元 >>104第047次元 >>191第057次元 >>262
第038次元 >>108第048次元 >>203第058次元 >>264
第039次元 >>109第049次元 >>209第059次元 >>268
第040次元 >>138第050次元 >>216第060次元 >>274

第061次元 >>298第071次元 >>359第081次元 >>385
第062次元 >>300第072次元 >>361第082次元 >>388
第063次元 >>308第073次元 >>365第083次元 >>391
第064次元 >>337第074次元 >>369第084次元 >>393
第065次元 >>338第075次元 >>370第085次元 >>399
第066次元 >>339第076次元 >>371第086次元 >>402
第067次元 >>345第077次元 >>377第087次元 >>403
第068次元 >>346第078次元 >>378第088次元 >>413
第069次元 >>352第079次元 >>380第089次元 >>414
第070次元 >>353第080次元 >>383第090次元 >>417

第091次元 >>420第101次元 >>448第111次元 >>480
第092次元 >>421第102次元 >>450第112次元 >>484
第093次元 >>422第103次元 >>458第113次元 >>489
第094次元 >>427第104次元 >>459第114次元 >>495
第095次元 >>431第105次元 >>467第115次元 >>499
第096次元 >>432第106次元 >>472第116次元 >>501
第097次元 >>433第107次元 >>475第117次元 >>502
第098次元 >>436第108次元 >>477第118次元 >>504
第099次元 >>444第109次元 >>478第119次元 >>507
第100次元 >>445第110次元 >>479第120次元 >>508

第121次元 >>509第131次元 >>544第141次元 >>558
第122次元 >>510第132次元 >>546第142次元 >>560
第123次元 >>511第133次元 >>547第143次元 >>563
第124次元 >>512第134次元 >>551第144次元 >>564
第125次元 >>520第135次元 >>552第145次元 >>565
第126次元 >>521第136次元 >>553第146次元 >>576
第127次元 >>528第137次元 >>554第147次元 >>590
第128次元 >>533第138次元 >>555第148次元 >>595
第129次元 >>534第139次元 >>556第149次元 >>608
第130次元 >>536第140次元 >>557第150次元 >>623

第151次元 >>631第161次元 >>683第171次元 >>759
第152次元 >>632第162次元 >>711第172次元 >>760
第153次元 >>633第163次元 >>719第173次元 >>762
第154次元 >>637第164次元 >>726第174次元 >>764
第155次元 >>643第165次元 >>739第175次元 >>766
第156次元 >>655第166次元 >>749第176次元 >>768
第157次元 >>659第167次元 >>753第177次元 >>769
第158次元 >>664第168次元 >>754第178次元 >>770
第159次元 >>665第169次元 >>755第179次元 >>771
第160次元 >>680第170次元 >>758第180次元 >>772

第181次元 >>773第191次元 >>788第201次元 >>813
第182次元 >>775第192次元 >>789第202次元 >>814
第183次元 >>776第193次元 >>792第203次元 >>826
第184次元 >>777第194次元 >>793第204次元 >>832
第185次元 >>778第195次元 >>794第205次元 >>835
第186次元 >>781第196次元 >>795第206次元 >>841
第187次元 >>782第197次元 >>798第207次元 >>853
第188次元 >>783第198次元 >>802第208次元 >>854
第189次元 >>784第199次元 >>803第209次元 >>855
第190次元 >>785第200次元 >>804第210次元 >>858

第211次元 >>862第221次元 >>883第231次元 >>897
第212次元 >>868第222次元 >>884第232次元 >>898
第213次元 >>873第223次元 >>888第233次元 >>901
第214次元 >>874第224次元 >>889第234次元 >>902
第215次元 >>875第225次元 >>890第235次元 >>903
第216次元 >>876第226次元 >>892第236次元 >>904
第217次元 >>877第227次元 >>893第237次元 >>905
第218次元 >>878第228次元 >>894第238次元 >>906
第219次元 >>879第229次元 >>895第239次元 >>907
第220次元 >>882第230次元 >>896第240次元 >>908

第241次元 >>909第251次元 >>929第261次元 >>955
第242次元 >>913第252次元 >>930第262次元 >>956
第243次元 >>914第253次元 >>933第263次元 >>957
第244次元 >>915第254次元 >>947第264次元 >>958
第245次元 >>916第255次元 >>948第265次元 >>959
第246次元 >>917第256次元 >>949第266次元 >>960
第247次元 >>918第257次元 >>951第267次元 >>961
第248次元 >>919第258次元 >>952第268次元 >>962
第249次元 >>921第259次元 >>953第269次元 >>963
第250次元 >>926第260次元 >>954第270次元 >>964

第271次元 >>965第281次元 >>977第291次元 >>988
第272次元 >>966第282次元 >>978第292次元 >>989
第273次元 >>967第283次元 >>979第293次元 >>990
第274次元 >>968第284次元 >>981第294次元 >>991
第275次元 >>969第285次元 >>982第295次元 >>992
第276次元 >>970第286次元 >>983第296次元 >>993
第277次元 >>973第287次元 >>984第297次元 >>994
第278次元 >>974第288次元 >>985第298次元 >>995
第279次元 >>975第289次元 >>986第299次元 >>996
第280次元 >>976第290次元 >>987第300次元 >>997

※第301次元〜は新スレにて連載予定


       ●おまけもの●

●資料集など
皆のプロフィール1 >>218
皆のプロフィール2 >>278
皆のプロフィール3 >>287
皆のプロフィール4 >>288
皆のプロフィール5 >>289
皆のプロフィール6 >>503
主な登場人物 >>852
さいじげテスト。 >>843
最強次元師!! について >>58

●番外編 
キールアの想い >>41
メイド喫茶祭り① >>327
メイド喫茶祭り② >>331
メイド喫茶祭り③ >>341
友達の証① >>492
友達の証② >>493
友達の証③ >>494
疎外少年と次元少女① >>810
疎外少年と次元少女② >>811
疎外少年と次元少女③ >>812
蛇梅隊DE☆大集合!! >>829
E FIEDLA >>941
英雄と妖精 >>945

 
●外伝
第001時限 >>942
第002時限 >>943
第003時限 >>944


●キャラ絵(1人)
奏様が描いて下さったルイル >>116
奏様が描いて下さったティリ >>105
奏様が描いて下さったロク >>119
奏様が描いて下さったロク(舌出しVer.) >>185
奏様が描いて下さったロク(ポニテVer.) >>523
奏様が描いて下さったキールア >>127
奏様が描いて下さったアリル >>141
奏様が描いて下さったリリアン >>148
奏様が描いて下さったミル >>154
奏様が描いて下さったフィラ副班 >>162
奏様が描いて下さったレト >>168
奏様が描いて下さったレト(メイド服Ver.) >>329
奏様が描いて下さったガネスト >>304 
奏様が描いて下さったガネスト(メイド服Ver.) >>318
奏様が描いて下さったアルア >>460

●キャラ絵(複数) 
奏様が描いて下さったレト、ロク、キールア >>693
奏様が描いて下さったエン、ミル、リルダ >>737

☆奏様には毎度ご感謝しております!!
 すごく似ていて、イメージ通りです
 キャラの絵が分からない場合には奏様の絵を見て下されば納得します!!
 これからも描き続けてほしいですね、是非とm((黙


●お知らせなど

* 2009 11/13 執筆開始
* 2013 09/01 執筆中断
* 2014 01/17 執筆再開
* 2014 10/19 別サイトにて再連載開始 >>980
* 2015 03/15 新スレ作成におけるお知らせ >>998

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Re: 最強次元師!! ( No.885 )
日時: 2012/08/30 18:38
名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: KZXdVVzS)


こんばんは、友桃です^^

金賞おめでとうございます!!!

こつこつ書いていらっしゃるのをこっそり見ていたのとずっと応援していたのとで、今すごいうれしいです、テンションあがってます……!!v

てか実はよくこの小説読みに来ているのでコメしたことがあるような気になっているのですが、どうだったかな……? 記憶が危ういです;

これからも更新がんばってください♪
応援しております^^

Re: 最強次元師!! ( No.886 )
日時: 2012/08/30 19:14
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: er9VAvvW)

ぐぁ、一番乗りをとられてしもうた……!

瑚雲さん!やりやしたよ!まるで自分のことのように嬉しいとかww
金賞おめでとうございます!

すげぇ色々語り合いたい気分ですが、用事等で抜けさせていただきます……!
とにかくおめでとうございますーっ!

Re: 最強次元師!! ( No.887 )
日時: 2012/08/30 19:45
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: dYnSNeny)

わわわわわ!!!!

ちょ、指が動かな……!!



>>友桃さん

 今テンパっててまともに字が……。
 とりあえず、有難う御座います!!
 今でもちょっと信じられなくて……正直すっごい嬉しいです。
 まさかあの友桃さんにコメント貰えるとは……。
 本当に感激しました、有難う御座いますーっ!!

>>遮犬さん

 わぁーっ!! 遮犬さんだーッ!!!(((どゆこと
 本当に自分が金賞なのか……ッ!? ってさっきまで騒いでました←
 コメント残して頂けただけでも十分嬉しいです、有難う御座います!! 

Re: 最強次元師!! ( No.888 )
日時: 2013/04/07 10:26
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: 2DX70hz7)

第223次元 消えた23人 

 「レト!! 起きてよレト!!!」

 金髪の少年、レトヴェールの眠りを覚ましたのはキールアだった。
 鈴のような綺麗な声がレトの耳を過ぎる。
 レトはむくりと、少し眠たそうに起き上がった。

 「んだよ……」
 「ミル達の試合始まってるよ!? 早く起きてよーっ!!」
 「うぁ……ミル? あぁ、そうだった」
 
 けろっと、レトは起き上がる。 
 然しその瞬間。
 
 「うぐッ!?」

 グキリ、と。
 鈍い音が耳まで届く程に鳴り響く。

 「え……ど、どうしたの!?」

 腕を伸ばしたレトは、その状態で固まったまま。
 どうやら背中が動かないらしい。

 「う、動かん……」
 「そういえば結構酷い一撃受けてたね」
 「このままじゃ行けねぇ……」

 必死に体を動かそうとするレト。
 それを見てキールアは、ぱっと顔を明るくした。

 「おんぶする?」
 「アホかお前!!?」

 えー、と。キールアは不満そうな声をあげる。
 然し彼女はベッドに腰かけたままのレトの前でしゃがんだ。

 「な……なんすか」
 「ほら、早くしないと終わっちゃうよ?」
 「く、屈辱以外の何ものでもねぇ……」

 キールアは、ひょいとレトを持ち上げた。
 重くないじゃん、とか言いながら廊下を突き進んだ時。
 前方には、サボコロとエンがいた。

 「おーキールア……ってぎゃはははッ!! れ、レトおま……!!」
 「ふむ……普通は逆ではないのか? レト」
 「お、お前らなぁ……ッ」
 「あとで蛇梅隊の皆に言いふらしてやろうっとーっ!!」
 「ッ!? キールア下ろせ!! 今すぐあいつを仕留める!!」
 「まぁまぁ……」
 
 サボコロは爆笑したままで、レトはキールアの背中で暴れたまま。
 そしてエンは口元を手で抑え、僅かに笑っていた。
 こうして4人は、外から漏れる光と歓声に導かれ、4人はもう一度会場に向けて歩くのだった。


 湧き上がる歓声の中、立っているのはミル・アシュランだった。
 彼女は今、膝に手をついて荒く息を零している。
 頬を伝う汗が、妙に冷たく感じる。
 ミルはそんな事を思いながら、ちらと前を向く。

 「ぁ……はぁ、っぁ……っ——————うぁぁッ!!」

 突然、彼女の体はくの字に折れ曲がった。
 血は噴出さないものの、本人の表情からして苦しんでいるのが分かる。
 彼女、ミルは、ふらっと倒れそうになる。
 然しまた、彼女は苦しそうに息をして膝を強く手で握る。

 「み、ミル……?」
 「おいおい……こりゃあどうなってんだ?」
 「あのミルが……何があったんだろう」
 
 レト、キールア、サボコロ、エンの4人がその場で固まる。
 そんな姿を見て、近くにいたガネストが声をかけた。

 「あ……いらしたんですね、4人とも」
 「あ、ガネスト! ねぇ、今どうなってるの?」
 「……じ、実は……」

 ガネストは、自分の無傷な体を見やり、そしてラミアとティリの方を向いて、再度顔を戻した。 
 その動作も、表情も、とても悲しそうで。

 「第1試合でティリとラミアさんが、物凄い傷を負って負けてしまい……第2試合、僕は不戦勝でした」
 「不戦勝?」
 「ええ……相手の人に、自分の出る幕じゃないな、と言われ…不戦勝に」
 「出る幕じゃ……ないだと」
 「……そして今ミルさんが……戦っている……相手が……!!」
  
 そう言って、ガネストは体を震わせた。
 涙を我慢して懸命に自分の心と闘う彼には、もう、何も言えない。
 4人は同時に見やる。彼女が戦っている相手を。

 「もう終わりかよ? ……ミル、お前、強くねぇな」
 「————!!?」
 「お前の『心』も『体』も——————ズッタズタにしてやるよッ!!!!」

 367人分の元力の己の体に宿し、
 罪と福の、闇と光のバランスをとり続けてきた彼女。
 幸罰という次元技を与えられたその少女は——————散った。

 心も体も、彼女が犯した“罪”でさえ。

 「お前の犯した罪は重すぎたな……ミル・アシュラン」

 ミルより高めの、そのすらりとした体型で会場を去る。
 口調な男らしいその人物の声は高く、女性と思わせる容姿。
 然し彼女はミルが崩れ去る姿も見ずに、その場から消えた。
 謎の篭った言葉を残して。


 「勝者——————————“アシュラン”チーム!!!!」


 この時、試合の序盤を見ていなかったレト達4人は絶句する。
 今、実況を務める彼は何と言ったのだろう。

 「ア、シュラン……ッ!?」
 「おいおい待てよ待てよ……アシュランってお前らの事じゃ……」 
 「僕らではありません——————だって彼女の姓も、“アシュラン”なんですから」

 ガネストは、呟くように、そう小さな声で言った。
 レトは、キールアの背中で腕を組み、はっと思いついたような表情を見せる。

 「ハル・アシュラン……の、姉妹か……?」
 「ハル・アシュランって……ミルがいた研究所で、一番親しかったっていう……」
 「生き別れの姉妹……という奴か」

 5人の間に、暫しの沈黙が訪れる。
 ガネストは会場に取り残されたままのミルの許へ走った。
 誰も口を開くものはいない。
 唯そこに時間が流れ、観客の声すら耳には届かない。
 会場から戻ってきたミルの瞳も、開かないままだった。

 


 
 
 「……おかしいったら」

 水色の髪にぴしっときめた黒いスーツ。そして特徴的なその声が洞窟内で響き渡る。
 第二次選考試験管のスイタラは、2,3週間前に使用された洞窟の奥をじっと見ていた。
 
 「あら……どうか致しまして? スイタラさん」
 「……っ? あれれ、どうしてここに?」
 「いえいえ、通りすがっただけですのよ。ところで何がおかしいんですの?」

 金髪の長いウェーブを、折りたたんで髪留めで留め、
 赤い和服を着て、その細い瞳でスイタラを覗き込んだ。
 いつしかレトの試合を見ていた、あの丁寧口調の女性だった。

 「実は……ちょっと不思議な事がありましてったら」
 「不思議な事、といいますと?」
 「洞窟に入って抜け出せなかったのは12チーム中7チームで」
 「……そうなんですの?」
 「ええ。そして7チームで、えーと28人中5人は脱出したから……」
 「23人ですわね」
 「そうったら! その23人が……ちょっと……」

 金髪の女性は、首を捻って疑問符を浮かべた。
 口元が篭って言葉のはっきりしないスイタラを、キッ、と睨む。
 それにひぃぃ、と声を上げた彼は一度肩を竦めて、

 
 「洞窟の中に閉じ込められた筈が、いないんったらよ————————“誰一人”」


 そう、言い切った。
 女性は更に目を細める。そしてくるりと、入ってきた道を進む。

 「どうしましたったら?」
 「……くすっ」
 「?」

 女性は、一度笑った。
 そして、スイタラの方に振り向く。

 「さぁ——————“誰かさん”が連れてってくれたのかもしれませんわよ?」

 はぁ? とスイタラなは間抜な声を上げた。
 そして彼女はくすくすと笑ったまま、光のある方へ消えていく。
 スイタラはもう一度、あの長く暗い、洞窟の先を見つめた。
 そんなバカな、ともう一度苦笑して。
 

Re: 最強次元師!! ( No.889 )
日時: 2012/10/26 13:56
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: 9QYDPo7T)

第224次元 『命』、『心』、『』。

 時間は少し遡る。
 レトヴェール達エポールチームが控え室で寝ていた頃の事。
 その時、ミル達のアシュランチームは第1回戦を迎えていた。
 強すぎる太陽の光と、妙に喧しく聞こえる歓声を受け、
 ラミアとティリは、傷だらけで立っていた。

 「あ、いつら……どうなってんだ」
 「……どんな技も、効かない……っ」
 
 2人の前に立っていたのは、白髪の少年少女。
 黒いベレー帽を被った少女と、やけに冷たい目をする少年。
 白髪の2人は、ラミア達とは対象的に涼しい顔をしていた。

 「さて、いきますか? テシル」
 「問答無用。敵に情けをかける事はありません」

 妙な敬語口調を持つ2人は、そんな会話を交わす。
 そして、少女の方が等身大はあるであろう大きな筆を取りだした。
 彼女は、少しだけ笑う。

 「第七次元発動——————、描空!!」

 大きな筆をぐるんとまわし、黒い輪郭を空に描いた。
 ナイフのような、剣のような形をしたそれを見て、少年も動く。

 「第七次元発動——————、加色!!」

 腕をぶん、と輪郭に向かってなげつけた。
 そこから飛び出た鮮やかな色が輪郭の中へ溶けていき、やがて色が着く。
 ラミアもティリも、半歩退いた。
 それを見ていた2人は笑いもせず、唯少女はすっと腕を上げた。

 (もう元力も残ってねぇのに——————)

 (——————、なんて非道な奴等なの!!)

 今度はそれを、ラミア達2人に向かって投げた。
 着色された数え切れないナイフの雨。
 鮮やかなその絵と色は、途端に普段の色を失った。
 
 真っ赤にそまったそれは、倒れた2人の上で溶けていく。

 「そ、そんな……ッ!!」
 「ラミア!! ティリ!!!! 返事して————ッ!!」

 ミルは思わず立ち上がる。ガネストさえも、体を震わせた。
 最後のとどめを刺す前に、2人はもうボロボロだった。
 にも拘らず相手2人は、七次元級の技で、2人の体を引き裂いたのだ。
 赤く染まった会場で、それでも尚純白の白さを放つ2人の髪はとても無情なものに見えた。
 
 「第1試合——————————セシル・マーレット、テシル・マーレットペアの勝利だァァ!!」

 彼女達の名前が叫ばれ、観客も大声を張り上げる。
 会場に残された2人は、急遽医務室に運ばれていった。
 ガネストも、ミルも、声を出さなかった。
 いや、出せなかった。
 あれ程非情な人間がいるだろうか。もしかしたら、自分が戦う相手も、そんな人達なのかもしれない。
 そう思うと、心が押し潰されそうになった。
 自然と、足が竦む。

 「僕らは……勝てるのでしょうか」
 「……」
 「本当に……、レト達と戦う事が、できるでしょうか」
 「……、やらなきゃ」
 「……っ!」
 「進まなきゃ、始まりすらしないから」

 ミルの表情は、真剣であった。
 ガネストのまた、唇を噛む。
 悔しいのは互いに同じ。なら、自分の最善を尽くさねばならない、と。
 そう、思った時。

 「続いて第2試合——————、ガネスト・ピック対リラン・ジェミニーッ!!」

 自分の名前が呼ばれ、ガネストは呼吸をし、会場に向かった。
 向こうからやってきたのは、自分より少し小さめの女の子。
 白い兎のパーカーを着てフードを被り、少しぶすっとした表情で歩いて来る。
 そして、肩には小さなウサギを乗せて。

 「ふーん……貧相な奴だね」
 「ひ、貧相って君……」
 「不戦勝で良いよ」

 突然、彼女はそう言い出した。その表情は変わらず、くるりと後ろを向く。
 
 「え……」
 「あたしの出る幕じゃないから。じゃーね貧相なお兄さん」
 「ちょっとそんなの認め——————」
 「——————あんた、見るからに人を撃つような人じゃないしね」

 つまんないんだよ、と言い残して彼女はポケットに手を突っ込んだまま戻っていた。
 観客も戸惑っていたが、やがて実況の咳が入る。

 「え、えーでは——————、勝者、ガネスト・ピック!!」

 ガネストも、やりきれない気持ちのまま席へ戻る。
 あのウサギの少女は、欠伸をしながら席で寝ていた。

 ガネストは、少し気になっていた。
 あの言葉を。彼女が残したあの台詞を。

 『——————あんた、見るからに人を撃つような人じゃないしね』

 何故彼女は知っていたのだろう。こちら側の次元技を。
 もしかしたら予選の時からアシュラン・チームの事を見ていたのかもしれない。
 相手の次元技を事前に知っての、言葉だったのかもしれない。

 「それでは最終試合————————!!

 ミルは、ぎゅっと相手を見る。
 そして、会場へと足を踏み出した。

 
 「ミル・アシュラン対ロティ・アシュラン——————!!!!」


 始まる。
 いつかはぶつからなければいけない、越えなければいけない敵との、運命の一戦。
 ミルにはそれでも負けない自信があった。
 どうしても、譲れないものが、今この時はあったのだ。


 「ようミル・アシュラン——————会えるの、楽しみにしてたぜ?」
 
 
 すらりとした長身の女性。男口調で、袖に余裕のある服装の彼女は、くすくすと笑って現れた。
 それでもミルは笑わなかった。それが別に暖かな笑みじゃないと、知っていたから。
 ミルは、知っていた。彼女がこの戦いに参加する事を。



 
 『ハルの……お姉さん?』
 『ああ……、実は今回の決定戦に参加してるんだ——————お前と戦り合う為に、な』

 班長室での出来事だった。
 ミルは一人、班長に呼ばれていた。
 そしてミルにそんな事を伝えていたのだ。

 『それでも行くか? ミル・アシュラン』

 班長の声はいつになく真剣で、鋭い目もまたミルを見据えていた。
 ミルは一度開いた口を閉じて、そしてうっすらと笑みを浮かべる。

 『もしそれが運命なら——————私は喜んでそれを受け入れます』

 例え負けてしまっても、例え死んでしまっても。
 元々亡くしていたこの命。ハルに救われたこの心。
 
 それがもしハルの為に、そしてその人の為に消えてしまうのなら——————それは決して苦ではない。

 ミルはそれも胸に抱いて今日この場所にいる。
 この命が燃え尽き、擦り切れるまで戦うと——————誓ったのだから。



 ミル・アシュランは戦った。 
 自分の出せる元力ギリギリまで。
 自分の出せる全力ギリギリまで。
 
 然し彼女の思いは、届かなかった。

 ハル・アシュランへの思いで、負けてしまった。
 彼女は綺麗なまでに残酷な姿で、朽ち果てた。
 
 そして彼女自身も、それを見ていたガネスト、そしてレト達も——————その姿を忘れないだろう。

 


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