コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
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最強次元師!!【※新スレ作成におけるお知らせ有り】
日時: 2015/03/15 09:40
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: u/FYQltH)
参照: http://ncode.syosetu.com/n5050ci/

 運命に抗う、義兄妹の戦記。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 基本毎週日曜日に更新!


 ※追記

 実は、本作を一から書き直そうと思いまして別サイト様にて“完全版”を再連載し始めました。
 やりたい話が多くて一度断念してましたが、やっぱり優先しようと思ってもう一度記載致します。
 ご興味のある方はどうぞ! 上記のURLで飛べます*
 とってものんびりと、更新する予定です。


 Twitterの垢をつくってみました→@shiroito04
 イラストとか宣伝とかを呟いてます!



 ※注意事項

 ・荒らし・中傷はお控え下さい。
 ・チェンメなんかもお断りしてます。



●目次

prologue >>001
第001次元 >>002第011次元 >>012第021次元 >>048
第002次元 >>003第012次元 >>013第022次元 >>050
第003次元 >>004第013次元 >>019第023次元 >>052 
第004次元 >>005第014次元 >>020第024次元 >>055
第005次元 >>006第015次元 >>021第025次元 >>059
第006次元 >>007第016次元 >>025第026次元 >>060
第007次元 >>008第017次元 >>027第027次元 >>063
第008次元 >>009第018次元 >>030第028次元 >>065
第009次元 >>010第019次元 >>044第029次元 >>070
第010次元 >>011第020次元 >>046第030次元 >>071

第031次元 >>072第041次元 >>146第051次元 >>224 
第032次元 >>077第042次元 >>169第052次元 >>230
第033次元 >>081第043次元 >>176第053次元 >>234
第034次元 >>082第044次元 >>179第054次元 >>241
第035次元 >>090第045次元 >>180第055次元 >>245
第036次元 >>097第046次元 >>189第056次元 >>260
第037次元 >>104第047次元 >>191第057次元 >>262
第038次元 >>108第048次元 >>203第058次元 >>264
第039次元 >>109第049次元 >>209第059次元 >>268
第040次元 >>138第050次元 >>216第060次元 >>274

第061次元 >>298第071次元 >>359第081次元 >>385
第062次元 >>300第072次元 >>361第082次元 >>388
第063次元 >>308第073次元 >>365第083次元 >>391
第064次元 >>337第074次元 >>369第084次元 >>393
第065次元 >>338第075次元 >>370第085次元 >>399
第066次元 >>339第076次元 >>371第086次元 >>402
第067次元 >>345第077次元 >>377第087次元 >>403
第068次元 >>346第078次元 >>378第088次元 >>413
第069次元 >>352第079次元 >>380第089次元 >>414
第070次元 >>353第080次元 >>383第090次元 >>417

第091次元 >>420第101次元 >>448第111次元 >>480
第092次元 >>421第102次元 >>450第112次元 >>484
第093次元 >>422第103次元 >>458第113次元 >>489
第094次元 >>427第104次元 >>459第114次元 >>495
第095次元 >>431第105次元 >>467第115次元 >>499
第096次元 >>432第106次元 >>472第116次元 >>501
第097次元 >>433第107次元 >>475第117次元 >>502
第098次元 >>436第108次元 >>477第118次元 >>504
第099次元 >>444第109次元 >>478第119次元 >>507
第100次元 >>445第110次元 >>479第120次元 >>508

第121次元 >>509第131次元 >>544第141次元 >>558
第122次元 >>510第132次元 >>546第142次元 >>560
第123次元 >>511第133次元 >>547第143次元 >>563
第124次元 >>512第134次元 >>551第144次元 >>564
第125次元 >>520第135次元 >>552第145次元 >>565
第126次元 >>521第136次元 >>553第146次元 >>576
第127次元 >>528第137次元 >>554第147次元 >>590
第128次元 >>533第138次元 >>555第148次元 >>595
第129次元 >>534第139次元 >>556第149次元 >>608
第130次元 >>536第140次元 >>557第150次元 >>623

第151次元 >>631第161次元 >>683第171次元 >>759
第152次元 >>632第162次元 >>711第172次元 >>760
第153次元 >>633第163次元 >>719第173次元 >>762
第154次元 >>637第164次元 >>726第174次元 >>764
第155次元 >>643第165次元 >>739第175次元 >>766
第156次元 >>655第166次元 >>749第176次元 >>768
第157次元 >>659第167次元 >>753第177次元 >>769
第158次元 >>664第168次元 >>754第178次元 >>770
第159次元 >>665第169次元 >>755第179次元 >>771
第160次元 >>680第170次元 >>758第180次元 >>772

第181次元 >>773第191次元 >>788第201次元 >>813
第182次元 >>775第192次元 >>789第202次元 >>814
第183次元 >>776第193次元 >>792第203次元 >>826
第184次元 >>777第194次元 >>793第204次元 >>832
第185次元 >>778第195次元 >>794第205次元 >>835
第186次元 >>781第196次元 >>795第206次元 >>841
第187次元 >>782第197次元 >>798第207次元 >>853
第188次元 >>783第198次元 >>802第208次元 >>854
第189次元 >>784第199次元 >>803第209次元 >>855
第190次元 >>785第200次元 >>804第210次元 >>858

第211次元 >>862第221次元 >>883第231次元 >>897
第212次元 >>868第222次元 >>884第232次元 >>898
第213次元 >>873第223次元 >>888第233次元 >>901
第214次元 >>874第224次元 >>889第234次元 >>902
第215次元 >>875第225次元 >>890第235次元 >>903
第216次元 >>876第226次元 >>892第236次元 >>904
第217次元 >>877第227次元 >>893第237次元 >>905
第218次元 >>878第228次元 >>894第238次元 >>906
第219次元 >>879第229次元 >>895第239次元 >>907
第220次元 >>882第230次元 >>896第240次元 >>908

第241次元 >>909第251次元 >>929第261次元 >>955
第242次元 >>913第252次元 >>930第262次元 >>956
第243次元 >>914第253次元 >>933第263次元 >>957
第244次元 >>915第254次元 >>947第264次元 >>958
第245次元 >>916第255次元 >>948第265次元 >>959
第246次元 >>917第256次元 >>949第266次元 >>960
第247次元 >>918第257次元 >>951第267次元 >>961
第248次元 >>919第258次元 >>952第268次元 >>962
第249次元 >>921第259次元 >>953第269次元 >>963
第250次元 >>926第260次元 >>954第270次元 >>964

第271次元 >>965第281次元 >>977第291次元 >>988
第272次元 >>966第282次元 >>978第292次元 >>989
第273次元 >>967第283次元 >>979第293次元 >>990
第274次元 >>968第284次元 >>981第294次元 >>991
第275次元 >>969第285次元 >>982第295次元 >>992
第276次元 >>970第286次元 >>983第296次元 >>993
第277次元 >>973第287次元 >>984第297次元 >>994
第278次元 >>974第288次元 >>985第298次元 >>995
第279次元 >>975第289次元 >>986第299次元 >>996
第280次元 >>976第290次元 >>987第300次元 >>997

※第301次元〜は新スレにて連載予定


       ●おまけもの●

●資料集など
皆のプロフィール1 >>218
皆のプロフィール2 >>278
皆のプロフィール3 >>287
皆のプロフィール4 >>288
皆のプロフィール5 >>289
皆のプロフィール6 >>503
主な登場人物 >>852
さいじげテスト。 >>843
最強次元師!! について >>58

●番外編 
キールアの想い >>41
メイド喫茶祭り① >>327
メイド喫茶祭り② >>331
メイド喫茶祭り③ >>341
友達の証① >>492
友達の証② >>493
友達の証③ >>494
疎外少年と次元少女① >>810
疎外少年と次元少女② >>811
疎外少年と次元少女③ >>812
蛇梅隊DE☆大集合!! >>829
E FIEDLA >>941
英雄と妖精 >>945

 
●外伝
第001時限 >>942
第002時限 >>943
第003時限 >>944


●キャラ絵(1人)
奏様が描いて下さったルイル >>116
奏様が描いて下さったティリ >>105
奏様が描いて下さったロク >>119
奏様が描いて下さったロク(舌出しVer.) >>185
奏様が描いて下さったロク(ポニテVer.) >>523
奏様が描いて下さったキールア >>127
奏様が描いて下さったアリル >>141
奏様が描いて下さったリリアン >>148
奏様が描いて下さったミル >>154
奏様が描いて下さったフィラ副班 >>162
奏様が描いて下さったレト >>168
奏様が描いて下さったレト(メイド服Ver.) >>329
奏様が描いて下さったガネスト >>304 
奏様が描いて下さったガネスト(メイド服Ver.) >>318
奏様が描いて下さったアルア >>460

●キャラ絵(複数) 
奏様が描いて下さったレト、ロク、キールア >>693
奏様が描いて下さったエン、ミル、リルダ >>737

☆奏様には毎度ご感謝しております!!
 すごく似ていて、イメージ通りです
 キャラの絵が分からない場合には奏様の絵を見て下されば納得します!!
 これからも描き続けてほしいですね、是非とm((黙


●お知らせなど

* 2009 11/13 執筆開始
* 2013 09/01 執筆中断
* 2014 01/17 執筆再開
* 2014 10/19 別サイトにて再連載開始 >>980
* 2015 03/15 新スレ作成におけるお知らせ >>998

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Re: 最強次元師!! ( No.970 )
日時: 2014/04/27 09:13
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: jEYyPTNY)

 第276次元 “第二覚醒”

 「他に聞きたい事が特になければ本題に入るけど、どう?」
 「いや……ありません」
 「そう。じゃあ私からもレト君に聞いていいかしら?」
 「? どうぞ」
 「単刀直入に言うわね——————“あれ”を、どうやって手に入れたの?」

 英雄大四天の4人が、びくっと反応する。
 レトを除く3人は、レトの方へ向いた。レトは、視線を逸らす。
 そんな彼の仕草を見ていたフェアリーは、話を続けた。

 「私も決勝戦は見てたの……君も、びっくりしたでしょう?」 
 「俺にも、何が何だか……」
 「? あ、そういやお前双斬の形変わってなかったか!?」
 「なんか、紅くて鋭さ増してたような……」
 「“双天斬”————それが、名前でしょう?」

 正に絶体絶命の時だった。
 シェルが自分に矛先を向けて。会場中が息を呑んだあの時。
 確かに自分の胸は高鳴って、鼓動が速くなって、気が付いたら叫んでいた。
 レト自身にも、あの時どうやって双斬の形を変えたのかは分からなかった。

 「フェアリーさんは、知ってるんですか? あれが何なのか……」
 「そう、ね……——名称だけなら、知っているわ」
 「名称? 名前があるのか?」
 「マザーから話は聞いていたの……あ、ところで君達」
 「?」
 「“次元の扉発動”って、次元を開く時言うでしょう?」
 「そうですけど……」
 「それが何か関係していると言うのか?」
 「正解! ……実はその掛け声ってね、“間違い”なのよ」

 え、と驚く一同。
 次元の扉発動、と叫ぶ事で次元師達は己の心の次元を開いてきた。
 誰が解き始めたかも分からない呪文だが、古来からそれはあったのだ。
 然しフェアリーは否定する。“間違い”であると。

 「間違い……?」
 「正確には——————“第一覚醒”」
 「!?」
 「人間が己の力を解放する時に言う言葉……きっとこれでも次元の扉は開くわよ?」
 「へ?」
 「やってみて、レト君」

 レトは、ガタンと椅子から立ち上がった。
 椅子をしまう事もなく、すっと瞼を閉じた。
 内側に溢れる力。ドクン、ドクンと。心臓に呼応するように心が跳ねる。
 口を、開いた。

 「————“第一覚醒”!!」

 次元は、開いた。

 「双斬————!!」

 空気を纏って、姿を現したのはお馴染みの双剣だった。
 レトの手に、それはしっかりと握られたまま。
 驚きの表情は、隠せなかった。

 「嘘だろ……」
 「で、きちゃった……」
 「でしょ? それが本来の掛け声なのよ。豆知識ね」
 「誰が掛け声変えたんだ?」
 「さあ? それは一番初めに次元の扉を発動した千年前の人に聞かないとねっ」
 「はは……そりゃ、分かんねーや」
 「レト君、そのまま続けて“双天斬”を出せる?」
 「え!?」
 「出来たんでしょう?」

 意地悪な笑みだった。
 フェアリーはくすっと笑う。レトはしっかりと、双斬を握ったままだった。
 じっと双剣を見る。あの時感じた、体全体の水分が一気に沸騰するような感覚。
 思い出せ、思い出せと、唱える言葉。

 「——————双天斬!!」

 瞬間、双斬は全身に赤みを帯びた。
 おおっ、とサボコロが声を上げた時。
 その赤みは、帯びた光と共に消え失せた。

 「あ、ありゃ……?」
 「あらら?」
 「可笑しいな……」
 「あの時は、どんな気分だったの?」
 「ん……なんか、こう、諦めたくないっていうか、負けたくないっていうか……」
 「闘争心に滾っていた訳ね……うん、じゃあ」
 「?」
 「そろそろ、修行を始めましょうか?」

 にこっと笑う、妖精。
 人間くさいその笑い方に、レトの気は緩む。
 双斬は空間の中へと消えた。

 「修行って……」
 「使いこなせるようにしなくちゃね、あ、勿論他の3人もよ?」
 「は!? お、俺達も!?」
 「出来るかなあ……」
 「出来るに越した事はないが……」
 「大丈夫! だって————“英雄”になったんでしょう?」

 これくらい出来なきゃね。
 妖精の笑顔は、至って嬉々としていた。
 玄関の扉を開けて、いざ4人は外へ。
 新しい、扉を開けに。

 (ゴッドが創った元魔……まだ残っていたかしら。そろそろ狩り時だってこの間……)

 「フェアリーさん?」
 「! あ、ご、ごめんなさい……修行だったわね」
 「具体的に何すりゃ良いんだ?」
 「簡単よ。今までやってきた事を、ここでもやれば良いの」
 「それってどういう……」
 「元魔の————退治よ」
 「はあ!?」
 「有次元から元魔を送っているのを知っているでしょう? ここにはたくさんいるのよ」
 「で、でも……っ」
 「ここから少し離れた場所に湖があってね、その近くに沢山潜んでいるの。別荘もあるし丁度良いわ」
 「ちょ、ちょっ!」
 「時間はないの————さっさと強くなって、神をぶっ倒してくれなきゃ」

 半年を切った。戦争までの期間は残り5ヵ月弱。
 遊んでいる暇はないとでも言うように、フェアリーの足取りは忙しいものだった。
 彼女も内面は焦っている。早く、早く、彼らに追いつく程強くならないと。

 自分が護れなかったものを、今若い彼らに任せるしかないのが悔しかった。
 悔しさも苦しさも、あの時流した涙も全部呑み込んで今、進んでいる。
 歩みは止めない。きっと雪辱は晴らしてみせると、その背中は堂々としていた。



 水面に宝石をばら撒いたかのような煌めき。
 穢れのない澄み切った水を、レト達は覗き込んだ。
 鏡のように自分の顔がくっきりと映る。

 「綺麗だねーっ」
 「人間界じゃありえねえな……」
 「湖ってもっと淀んでるもんじゃねーの?」
 「フェンウェルの泉はこれと大差ないぞ」
 「ふふ……綺麗でしょう? それじゃあ早速始めちゃいましょうか」
 「元魔の退治って……意味あるんですか?」
 「あら。レト君は不満かしら? 大丈夫よ、“条件”つきだから」
 「条件?」
 「元魔を————次元技を“使わないで”退治するのよ」
 「「はあっ!?」」

 レトとサボコロの声は重なった。
 キールアとエンもお互いに顔を見合わせ、訳が分からないと言った表情。
 一人楽しそうに笑うフェアリーは、湖を覗き込んだ。

 「だって使ったら楽に倒せちゃうでしょう?」
 「そうかもしれないけど……」
 「双天斬のような“第二覚醒”を起こすには、極限状態にまで自分を追い込まないと」
 「だ、第二覚醒……?」
 「正式名称は“第二覚醒”……つまり、元あった次元技の、その先の力」
 「まだ、強くなる余地はあるって事か?」
 「ええ、そうね」

 まだ強くなれる。自分だけじゃない、次元技もまた。
 偶然といえどレトにはそれが出来た。彼は、拳をぐっと作る。
 やってやる、そう瞳は訴える。

 「よし、やってやろうじゃん」
 「良い心意気よ。レト君とエン君とキールアちゃんは次元技を発動するだけで、ね?」
 「俺は?」
 「サボコロ君は次元技を使っても良いけど、炎撃だけ……それも一次元のね」
 「……なんか、一次元級って言葉に最近縁があるな」
 「ふふ、そうね。……時間が勿体ないわ! 早速行ってきてっ」
 「あ、ちょっと……有次元って夜はあるんだよな?」
 「ええ、だから日が落ちたらここに戻ってきて、また朝から修行開始ね」
 「使えるようになるまでずっと元魔と追いかけっこかよ……」
 「気落ちしないの、サボコロ君。さあ行った行った!」
 「へーい」

 少年達は、森に向かって歩き出した。
 目印は湖。今はまだ昼頃なので、日が落ちるまで時間は十分にある。
 まず経験のある、自分が糸を掴んでこないと。
 レトは深い、深い森の中へ進んでいく。

 「お互いに一緒だと助け合っちまうよな……やっぱ単独に限る」
 「何か言った? レト」
 「うわ双斬! 急に出てくんなってばっ」
 「ごめんごめん……毎度毎度、反応良いね〜」
 「そりゃどうも」
 「トゲのある言い方だね……んで、どうする?」
 「ん〜……お前は何か分かんねーの?」
 「分かんないよ、だって僕にだって初めての事だし」
 「そうだよなあ」

 森はだんだんと深みを増して、暗く、暗くなっていく。
 虫が、一斉に音を出す。
 バサバサと空へ飛んでいく鳥を、見た時。

 口から這い出た舌が、涎を纏って垂れる。
 剥き出しの牙を、少年の背中に向ける————“気配”



Re: 最強次元師!! ( No.971 )
日時: 2014/04/27 09:06
名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: KZXdVVzS)


こんにちは^^
お久しぶりです、友桃です。

【参照10000】おめでとうございます!!!

今カキコを開いたらちょうど10000でテンションあがってコメントしてしまいました(笑
これからもお互い更新頑張りましょー^^

Re: 最強次元師!! ( No.972 )
日時: 2014/04/27 09:12
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: jEYyPTNY)

 い、今クリックしたら友桃さんの名前があって
 「え、何で、何で、マジ何で、何d(以下略)」っていうのを無意識でやってました。

>>友桃さん

 あ、ありがとうございます!!
 私も今丁度開いて嬉しさに飛び上がってました。内心が、ね。

 友桃さんの“Enjoy Club 第1章”の参照も14000越えのようで……!
 おめでとうございますっ!

 コメントありがとうございました!!
 頑張りますねっ!
 
 

Re: 最強次元師!! ( No.973 )
日時: 2014/05/04 08:09
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: jEYyPTNY)

 第277次元 対元魔

 「——————次元の扉、発動」

 魔法の呪文のようだった。
 唱えれば、願いが叶うような。
 彼は振り向きもしないで。

 「双斬————!!」

 叫んで、足を引いて、瞳は揺れる。
 右の剣が、ぐるっと回った拍子に、元魔の体を横に引き裂いた。
 元魔の体は、横へ跳ぶ。

 「気配がダダ漏れだっつの」

 (キャリアだね〜)

 「でも流石に……——致命傷にはならないらしいな」

 起き上がる巨体。
 見慣れたその体を、レトは睨んだ。

 「最近対人ばっかだったからな————楽しませてもらうぜ!!」

 地下深くまで衝撃を与えるかのように、足に渾身の力を入れる。
 疾風の如く彼は、反動して跳んだ。

 「とりゃあ——!!」

 双剣が弧を描く。元魔の首元に深く斬りつけた。
 血は飛ぶ。元魔の頭と体は大きく反り上がった。
 レトは華麗に着地した。

 「!?」

 元魔は、ゆっくりと体を起こす。
 鋭い爪がぐんと伸びる。レトは、頭を引いた。
 態勢を崩し、千鳥足になって後ずさる。
 元魔の牙が見える。口を大きく開けて、勢いを増し食らいつこうとする元魔。
 ガチン!! その音は、元魔が双斬を噛み砕かんとする音だった。
 元魔の歯が刃に立つ。空いた左手を、レトは下から振り上げた。
 元魔の左目に、大きな太刀筋が入る。

 「ぐ、ぁぁ……あああっ!!」
 「くっそ……次元技なしとか……骨が折れるな!!」

 十字に重ねた双剣で、レトは元魔の顔を斬りつける。
 鼻を中心にして血飛沫は舞った。
 腕が伸びる。長くて鋭い爪が、レトの左手にある剣と対峙する。
 ぐぐぐ、と堪えるレト。
 一瞬だけ力を入れて、彼は元魔の腕を突き放した。
 迫っていた右の腕。彼は跳んで、腕に乗った。
 迷いもなく腕を、斬り落とした。

 「これでどうだ————!!」
 「ぐあああ!!」

 太い腕は、完全に切り離された。
 ぼとんと落ちる腕。それは地面で跳ねたのち、動かなくなった。
 赤い切り口から液体は溢れ出した。元魔は叫ぶ。
 左の腕が、レトの体を弾き飛ばす。

 「うわぁっ!!」

 太い木に背中を打ち付けたレトは、ずるりと背中から落ちた。
 左半身に痛みが広がる。痺れたように、左手は動かなかった。

 「く、っそ……超いてえ……っ」
 「ぐるるる……」
 「第二覚醒なんて、こんな状況で出来るかっての……」

 左腕を抑えたまま、レトは再び立ち上がった。
 元魔が体ごと突っ込んでくる。迷わず彼は、左へ跳ぶ。
 双斬を握って、態勢を整えた。

 「は、あ……は……ぁっ……」

 (落ち着いて、集中して……あの時みたいに、全身に力を込めて)

 「もう、覚えてねえよ……」

 (じゃあ何を感じた? 何を、思ってた?)

 「それは……」

 ロクの言葉を思い出していた。幻だったかもしれない言葉を。
 声には出していなかった。口だけで、彼女は言った。
 “負けんな”、と。
 自分でも驚く程やる気が湧いてきて、自然と力が溢れ出していて。
 強く強く、何かに引っ張られるようにただ、目覚めただけの話。
 しかもあれ一度きりで、それ以降はまるで“双天斬”を出せなかった。 

 レトは、迫る元魔と距離を取った。
 剥き出しの牙、揺らめく巨体。
 不安定な足取りは、大きく足跡を残して加速する。

 「ぐ、ぅ……!!」

 (次元は、心に強く反応する……思い出して、レト)

 「分かんねえよ!! あの時はただ必死で……!!」

 (……れ、レト……)

 「必死で……勝とう、って……っ」

 レトは、突き放した元魔からまた距離を取った。
 息は荒い。己の実力だけで斬るには、硬い体だと感じた。
 やろうと思った時もあった。出来るんじゃないかって。
 でも、出来なかった。
 心も、心臓も、反応してはくれなくて。
 あの日みたいに、全てが重なり合う感覚は沸き上がらなかった。

 「“第二覚醒”————!!」

 (!? ———レト、無茶は!!)

 「————“双天斬”!!!」

 台風を巻き込んだ。風は荒れ狂う。
 柄が、紅く紅く染まっていく——————然し。

 「……!」

 色は、薄れていった。
 元の銀に戻る柄。双斬は、変わらなかった。
 レトは、悔しそうに強く、双斬を握った。

 「くそ……何で……!」

 (————レト前!!)

 「————!?」

 遅かった。顔を上げたら、元魔の爪先が、目前まで迫っていて。
 引き裂かれる体。鮮血はただ、地面に転がった。
 腹部を抑えるレト。汗は止まらず、息も上手く吸えない。
 元魔の姿が、どんどん大きくなって。
 霞んだ視界は、狭い。

 「う……っ、何で……」
 「がるるる……!!」

 レトは双斬を拾った。
 よろめいて、立ち上がる。
 汗を置いて、駆けた。

 「うわああっ!!」

 飛び上がって、元魔の顔に跳んだ。
 剣を、振り下ろす。

 「ぐああああ——!!」

 たった一太刀が、元魔の体を十字に斬りつける。
 完全に切り分けられた肢体は、その場に崩れ落ちる。
 レトも、着地した途端に膝を折った。

 「はあ……はあ……っ」
 「レト……大丈夫?」
 「……ああ」

 たった一匹の元魔を倒すのに、これ程時間がかかるなんて。
 レトは、木に凭れかかる。
 ぐったりと背を任せて、虚空を見つめていた。

 「双斬……ごめん」
 「どうして謝るの? 倒したじゃんっ」
 「強くなりたい、でも……っ」
 「“諦めたらダメだよ”、レト」
 「……!」
 「誰かが言ってた言葉でしょ?」

 暗い洞窟にいた。
 何も聞こえない、何も見えない。何も、感じられない。
 あの地獄の中で、強くなる事を諦めたレトは、出会った。
 確かに声は届いた。確かに彼女は、レトの涙を拭った。
 双斬が零したのは、その時彼女が言った言葉だった。

 「そう……だったな」
 「強くなろうよ。堂々と胸張って————ロクに会うんでしょ?」
 「ああ……そうだったよ」

 傷ついた体を起こす。腕を抑えて、歩き出した。
 見つけ出すんだ。それが無理な事でも、難しい事でも。
 彼女なら絶対に、それを諦めないから。



 夜になった。
 結局第二覚醒のヒントを見つける事が出来なかった一同は、別荘へ。
 疲弊しきった体を横たわらせ、すぐに眠りについた。
 息づく声だけを聴いて、彼は起き上がった。
 隊服を脱ぎ捨てて、暑い夜の下へ出る。
 湖面に月は浮かぶ。輪郭のはっきりしない、ぶれた月だった。
 月光だけが景色を挿す中、彼は湖の前で座り込んだ。

 「どうしたの? ……眠れないの?」

 少年、レトが起きた事に気付く双斬は、具現化して声をかける。
 驚くのも慣れた彼は、湖を覗き込んだ。

 「なんか、な……寝るに寝れなくて」
 「そっか……ねえ、レト」
 「ん?」
 「レトって、好きな子いる?」 
 「ぶっ!」

 口から何かを吐き出す。レトは途端に噎せ返った。
 静寂の中で、咳を繰り返す声は響いた。

 「な、なんだよ突然……」
 「いやあ、ちょっと気になっちゃって」
 「別にそういうのは……」
 「いないの?」
 「……」
 「ははっ。レトって意外に正直者だよね」
 「うるせえ」
 「……あのね、レト」
 「ああ?」
 「僕ね、僕は……好きな子、いるんだ」

 聞いた事もない台詞だった。
 そもそも双斬から自分の話を聞く事は滅多にない。
 そんな双斬は、言う。
 寂しそうに、好きな人がいるんだと、レトに語る。

 「へえ……珍しいじゃん」
 「そうかな? ……もう随分、会ってないけど」
 「つう事は、千年前の?」
 「うん……——“死別”……って、やつかな」

 双斬は、月だけを見上げて言った。

 「死別、って……」
 「はーいここでレト君に問題です!」
 「突然だな」
 「へへ……レトは、世界で一番最初に十次元を発動した人、誰だと思う?」
 「へ? 何だよそれ」
 「適当で良いからさっ」
 「う〜ん……俺が知る限り、ロクが最初だと思ってたけど……」
 「そうだね……僕も、ロクちゃんを見て……久々に、恐怖を感じたよ」
 「久々って事は……」

 双斬が湖面をなぞった。月を割るように、すっと指は踊った。

 「僕の、最初で最後の好きな人——————彼女は、自分を犠牲にして死んだんだ」

 双斬が顔を上げた。
 レトを見つめて、彼は息を吸う。

 「話してもいいかな? 僕が、いや……僕ら“英雄大六師”が生きた————戦乱の時代を」

Re: 最強次元師!! ( No.974 )
日時: 2014/05/11 23:05
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: Rts1yFTc)

 第278次元 英雄達が生きた時代 前編

 戦が戦を呼ぶ戦乱の時代。
 人は生まれ、生きて、戦って、死ぬ。
 多くの人間、そして多くの次元師が戦場に駆り出され、皆戦火に呑まれ倒れていった。
 枯れた体が転がる道を、歩いて、超えて、涙は飲みほした。
 そんな時代が訪れたのも、双斬達が生まれる十数年前の話だった。

 双子の王女が生まれた事から、地域により権力争いは起こった。
 どちらの子を跡継ぎにするかで、国民達は涙と血を、流し始めた。
 王女は共に、同じ日に幼いまま亡くなった。
 国民は真っ二つに割れる。北がドルギース。南はメルギースと。
 国を失った両国は、その広大な土地の中に沢山の国を築き始めた。

 その中で最も大きな一国家だったのが、“レイチェル王国”。
 後のレイチェル村にあたる、豊かで広い国だった。
 何でもレイチェル王国を築いたレイチェル・ギースが、メルドルギース国の王族だったらしく。
 分断した国を立て直す為に、女手一つで、国を立ち上げた。
 その後裕福な家柄を持つ男ウィストン・エポールと婚約、後に結婚。
 レイチェル王国の国王も生まれ、国は安定していた。

 双斬は語る。自分はレイチェル王国の生まれだと。
 ただ戦争に巻き込まれ両親は死去。
 英雄大六師は全員、そんな孤児だった。
 双斬はとある孤児院で、英雄大六師の全員と出会う。
 皆その時既に、次元師だった事を知って驚いたと言う。

 「孤児院にいたのか、お前」
 「うん、皆同い年くらいで……楽しかったなあ」
 「その、初恋の子も一緒に?」 
 「そうだよ……最も一番驚くのは、その孤児院の人がね」
 「?」
 「今も別荘で寝てる……フェアリーなんだ」

 レトは驚く。
 双斬は続けて、話し続けた。

 その時初めてフェアリーと出会う、英雄大六師。
 当時は、例え子供であれど他人を信用したりしなかった。
 双斬は特にそうで、フェアリーを突っ撥ねていた日々を送る。

 そう、あの子に、出会うまでは。

 双斬は孤児院を抜け出しては、森を歩いていた。
 息が詰まる場所にいたって、つまんないだけだって。
 また日が落ちそうになると、帰って怒られて。
 フェアリーも自分を心配してくれてた。
 でも怖くて、裏切られるんじゃないかって、年上を信用しなかった。

 風が吹いて、幼い葉は舞った。
 目を瞑って、そっと開いた時。
 双斬は、彼女に出会った。

 『こんにちは』

 にこっと、それはそれは、可愛らしい笑顔だった。
 銀の髪が小さく揺れる。
 人形のような微笑み。外見は幼いながら綺麗すぎる笑顔だった。

 「それが……」
 「そう、僕の好きな人——————今で言う、“風皇”だよ」
 「え!?」
 「僕らがずっと風皇を探してたのは……風皇だけ、先に逝ってしまったから」
 「!?」
 「ちょっとだけ、駆け足で説明するとね……」

 双斬と風皇は出会う。
 葉が舞う中で。
 毎日毎日、会って話して遊んで笑って。
 双斬にとって、風皇は自分を癒してくれる、大事な存在だった。

 例えその笑顔が全部、“偽物”だったとしても。

 やがて英雄大六師がフェアリーのおかげでまとまって。
 仲良くなって、毎日楽しく過ごして数年後。
 双斬は、自身が抱く風皇への気持ちに気付いていた。
 戦争はいつ始まってしまうか分からない。
 離れ離れになる前に、全て伝えてしまおうと、思っていた。

 『あ、あのさ……“リール”』

 “リール”。
 双斬は、言った。

 『? なーに? ————“レイレス”』

 レイレス————それが、双斬の名前だった。

 「そうか、お前……」
 「うん、今まで黙っててごめんね……僕、本名は“レイレス”って言うんだ」
 「そうだよな……お前にだって、生前の名前くらいあるよな」
 「うん。それでね……」

 双斬はいざ決心して、風皇、リールと向き合った。
 口を開こうとした、正にその時。
 国中に、鐘の音は響いた。

 『ドルギース軍が攻めてきたぞー!!』

 何の前触れもなく、城門付近に突如出現したドルギース兵。
 当然のように門は突破されて、メルギースは攻め入られてしまった。
 次元師だった英雄大六師は皆、門へ向かう。
 勿論双斬は、風皇に何も言えなかった。
 それが、風皇と話す、最後になるなんて思いもしなかったから。

 やがてそれは何か月にも亘る長期戦争にまで至ってしまった。
 風皇、雷皇はメルギースに残って各王宮を護り、双斬達男子勢はドルギースへ出兵した。
 炎皇や光節と何気ない会話を交わし、夜を過ごす毎日が過ぎる。
 太陽が昇ればすぐに戦火に巻き込まれ、何人もの兵を斬って落とす。
 風皇にも長い間会っていない。彼女は無事だろうかと心配にもなる。

 そんな時だった。
 双斬は、思いもよらない情報を耳にした。

 レイチェル王国に————火が放たれた、と。

 火薬や油を貯蔵していた油庫の居場所が見つかった。
 それも、メルギースに伏兵していた誰かがドルギース兵に密告をしたと。
 誰の仕業だと思い、炎皇と双斬は急遽メルギースへ帰還。
 そこで聞いたのは。

 「びっくりしたんだ……僕も」
 「え?」
 「まさか、油庫の居場所を吐いたのが————“百槍”だったなんて」

 百槍も共に、ドルギースへ出兵していたはずだった。
 いつの間にかメルギースに戻り、伏兵に告発していたのだろう。
 双斬は何度も考えた。
 仲間であった彼女が何故、自分の国を陥れようとする、と。
 百槍が、実はドルギースの人間であった事を知ったのは、この後の事だった。

 双斬が着いた時には、もうレイチェルは文字通り火の海だった。
 ここまで真っ赤な景色は、見た事がないという程。
 赤色に染まっていく国は、とても儚くて。
 国民の泣き叫ぶ声と怒号が、溢れて止まない。
 彼は、急いで風皇と雷皇を探した。

 『“イール”!! リールは!? リールは一緒じゃないの!!?』
 『レイレス……それが————っ』 

 雷皇こと当時リールの双子の姉だった“イール”の顔は曇った。
 どこにもいないんだと、彼女は言う。
 自分の妹もいなくて焦って、雷皇は慌てていた。
 その時。

 『おい聞いたか、まだレイチェルに次元師が残ってるって……』
 『何だと!? 次元師ならばすぐ逃げられるはずだろう!?』
 『それが————』

 双斬の心臓は、そこで一瞬、止まった。

 『————“風を操る次元師”だって』

 雷皇も双斬も驚きを隠せずにいた。
 何故彼女は、未だに国内に残っている?
 風を操り、すぐにでも逃げ出せる彼女が、何故。

 『どういう事ですか!?』
 『何でリールが!!』
 『そ、それは……』

 知らないと言った顔で男が首を振った時、
 別の男が、体を震わせて歩み寄ってきて言い放った。

 『か、彼女が自分で言ったんだ……“私が、助けてみせる”と……』

 この時風皇は、間違いなくレイチェル国内で息を潜めていた。
 まだ国内に残り、息絶えようとしている国民は大勢いた。
 避難命令が出ていたとしても、病人は動けずに。
 投げ捨てて、冷酷にも人々は己の身だけを案じて逃げ出した。
 子供が泣く声も聞こえた。

 『だ、って……どう、やって……?』
 『そうだよ!! 風はただ炎を煽るだけだよ!?』
 『俺もそう言ったさ!! だけど……!!』

 彼女は、とある場所にいた。
 そこは教会だった。
 真っ白い教会が今、炎に包まれて燃えている。
 風皇は中に入る。階段を上がって、屋上まで一気に駆け上がる。
 そこから————レイチェル国全体を見回した。

 双斬は何も知らないまま、城門の前で暴れていた。
 リールを助けなきゃ、僕がいかなきゃ、まだ————何も伝えてないんだって。

 泣いた時だった。

 『ごめんね——————』

 双斬はこの時、誰かが自分を呼ぶ声ではっとした。
 教会の鐘が、もう一度高く高く、天まで音を響かせた、その時。


 『————————好きだよ、レイレス』


 風は————、一気にレイチェル国全体を呑み込んだ。


 『第十次元発動——————————風嶺逆鱗!!!!』


 最初で最後の、“偽り”のない笑顔だったという。
 今までレイレスに嫌われまいと向けていた、作られた笑顔はどこにもなくて。

 双斬は、この事を何も知らなかった。
 ましてや自分が“好きだ”と言われてるなんて、思いもしなかったろう。

 白銀の天使は————ただ無邪気に、笑った。




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