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- ハイキューBL!
- 日時: 2015/06/13 22:43
- 名前: くるる (ID: rd7NbV2E)
初めまして。くるると申します。このスレを見て頂きありがとうございます。
最近、ハイキューにはまってしまい、
「月菅やっほい!」と思ったのがキッカケです。
どうでもいいですね。書けるのが、これです。
・月菅
・影月
・月影
・月山
・木赤
・黒大
・菅大
・及影
・及岩
・黒月
・及月
うん...誰も見ないな。お付き合い頂けたら幸いです。それでは宜しくお願い致します。
- Re: ハイキューBL!リク受け付けてます ( No.370 )
- 日時: 2015/04/19 19:08
- 名前: くるる (ID: LIwDSqUz)
つまらないから。変わらないから。
だから、捨てた。全部、いらないものだと割り切って、捨てた。自分だってもう、捨てられているんだから。それなら、別に捨てたって変わらない。
俺はいらない子だから。
俺は見捨てられているから。
だからこうして、誰の目にも触れられない様に生きる。部屋の隅っこで踞って生きる。
それが一番なんだ。それが誰も不幸にならない方法だから。
「それ、ただの自己満足ですよね?」
「お前、またかよ...いつもいつも。どっから湧いてくんの?」
彼女は笑って、猫のような目で、俺を見る。
「さあ?どこでしょう?」
「...どこだろうな。もういいわ。お前と話すと疲れる」
「それなら運動すればいいのに」
「めんどいし。つか、お前には関係ねぇだろ。なんで俺にわざわざ突っ掛かってくんだ」
今度は猫のような大きな目を細めて、ニヤリ、笑った。
「貴方のような方、初めてですもん。興味深いのです♪」
「はあ...、そりゃどーも」
そんな可愛い子が不敵に笑ったらちょっと心臓がうるさくなるのでやめて頂きたい。
「それで?いつまでそこでそうするのですか?」
「...、さあ、な」
「目的も何も無いのに居るのはどうかと思いますけど」
正直、うざったい。
何でお前が俺の人生決めてくるのか不思議でならない。溜め息をつく。彼女とのやり取りで溜まりに溜まった吐息。
「で、お前いつになったら帰るの」
「え〜。早く帰ってほしいんですかー?」
「まあ、うん。だな。帰って」
あうっ!と、まるで狙ったような声。だが正直ショックは受けているのか、肩をすぼめている。
「うー...。分かりましたよ!分かりました!明日も来ますからね!?」
「え、来んの?」
「はい!また明日〜!」
また明日、か。
俺にとっては一番信じられない言葉が、今日はやけに確信させる。また明日、彼女とこうして話せるという確信が。
「つか、あいつどったから帰ったんだ...」
よく知りもしない彼女が部屋に入ってきて喋って帰って。また来て。よくわからない。これが日常になるのなら、それはそれでいいかも知れないけれど。
彼女との関係は、まだ始まったばかりだった。
end
- Re: ハイキューBL!リク受け付けてます ( No.371 )
- 日時: 2015/04/21 00:25
- 名前: くるる (ID: Ib5HX0ru)
めんどくさいんだよ。
クラスメイトの視線を感じながら生きていかなきゃいけないのが。ヒソヒソと、まるでこちらを意識するような視線と話。そんな誰でも分かるようなことしたって、無意味なのに。
人には向き不向きがあって、向いている方には全力でやるけれど向いていない方には適当に済ませる。誰だってそうだ。私だってそんな事をする。どれだけしても、報われないから。どれだけ頑張っても、合わせてみても、結局は外れてしまうから。だったら、時期が来るまで大人しくしていよう。自分が嫌われ、気味悪がられ、離れられるまで、大人しくする。調子には乗らない。自分をこうして戒めていないと、裏切られた時、泣いてしまいそうだから。
性格が暗かったらダメなのか?どうせ、皆顔だろ。足が遅かったらダメなのか?お前らみたいに速くなんて出来ないからな。容姿が他と違ったらダメか?顔が不細工だったらなんだよ。皆顔で決めやがって。中身なんて知りもしないのに付き合って。楽しいのかよ。今が、本当に、楽しいのかよ。あんな騒ぐだけのものが。クラスとして、部として成り立っていないものが楽しいのかよ。そいつら全員頭の中お花畑かよ。めでたいな。
糞野郎共が。
えんど
あれです、病んでるんです。もうほんと疲れた。
ご免なさい。
- Re: ハイキューBL!リク受け付けてます ( No.372 )
- 日時: 2015/04/30 08:48
- 名前: くるる (ID: uumkjDES)
雨は上がり、チラホラと人が行き交う。
賑やかな喧騒に月島は顔をしかめながらも、今後どうするか、彼らに問う。
「...とりあえずさ、着替えない?そこら辺で」
「あ、はい。分かりました。それじゃあ三十分後、ここで」
「うん。岩ちゃーん!一緒行こー」
決まってしまうと、彼の行動は速かった。すぐに岩泉を見つけ、声をかける。段々と遠くなっていく姿と声。
「月島?」
「ん?ああ、ごめん。行こうか」
手を絡めると、少し驚き、声を荒げようとする彼に、人差し指で唇に触れたら、途端に顔が赤くなって、顔を背けた。
彼の唇の感触が残る指に、口づけをすると、物欲しそうな顔で見てくるから、我慢が効かなくなって、キスをした。触れるだけの。何秒もたっていないキス。
「あ、な、えっ」
自分でも分かるくらいの笑顔で彼に笑いかけると、更に顔を赤くさせて、ふざけんな!と、罵声を浴びた。
「ごめんごめん。だけどさ、嬉しかったでしょ?」
「っ、んな訳ねーよ....!」
そう言いながらも不自然な笑顔は戻っていないようだ。
「可愛いねえ...。ほんと」
「あ?聞こえなかった」
「何でもないよ。ほら、行こう」
「岩ちゃーん、どれがいいと思う?」
「知らねぇよ...。さっさと決めろ」
「そう言ってもさ...岩ちゃんはやっ!もう!?」
「ん。これ安かったんだよなー」
たまに岩泉が物事に対して適当になることがある。それはほとんど自分の時で、安かったから、まだ使えるから、と言って。そしてそれは壊れるまで使う。けれど、人のことに関しては悩んで悩んで。誕生日プレゼントは何千円もするものを貰ったな、と。今思えば彼が可愛くてしょうがない。
「何笑ってんだ?」
「え?いやー、岩ちゃんってほんと可愛いなあって」
「おう。そうか」
意外にも冷静すぎる対応に驚く。どうしたの?と聞けば、何でもない、と頭を振る彼。
その大人しい態度が余計不安になって、再度問うと、彼は首を傾げ、何とも不思議そうな顔をした。
「俺、なんか驚かれるようなことしたか?」
「え、だって。俺が岩ちゃん可愛いって言っても何も.....」
「は?お前そんなこと言ったの?」
「岩ちゃん、何か見てたりしたの?」
そう言うと彼は気まずそうに目を逸らした。その視線の先にあるものを及川が目で追う。
そこにあったのは、彼としては珍しく、何とも及川のツボを突いてくるものだった。
「あぁ、そういうこと。買おっか」
「は!?お、おいっ!俺は別に」
言いかける彼の口に指を当てる。いらない、なんて、そんな顔してるのに。言わせないからね。
「あ、あ、あり、ありが、と...」
不器用に伝えて、はにかんだ笑みを浮かべながら嬉しそうな顔をする彼がとても愛しい。時折、こちらを見つめ俺と目が合うと逸らし、また目が合うと今度は微笑む彼がとてもとても愛しい。
「よーっし!俺の買い物も済んだし。行こ、岩ちゃん」
手を差し延べればきゅっ、とまるで大事なものを失わない様に、握り返してきた。雨だからか、どちらとも手は冷たい。けれど、その手の中にある微かな暖かみが心地好い。
その大事な手を離さぬように、もう一度、強く握った。
つづく
いつ終わるんだろう(´・ω・)
全然更新できずにすみません。
- Re: ハイキューBL!リク受け付けてます ( No.373 )
- 日時: 2015/04/30 23:08
- 名前: くるる (ID: lSjkm3fN)
及岩←←←←←←花
「それでねー、岩ちゃんったらそこで照れちゃってさー!」
「はいはい。そーですか」
全く、酷い雨だ。先程から幾度となく降り続けるその雨にうんざりしながらも、目の前にいる彼にもっとうんざりしていた。何でこいつのノロケに付き合わなきゃ行けないんだ。俺は。いや、自分のせいだとは分かっている。松川のジャンケンに負けて、松川は岩泉と俺は及川と。小一時間ばかりの昼飯と休み時間が憂鬱だ。まあ、負けたんだからしょうがない。彼に適当な言葉でもかけてやろう。
「良かったなー。可愛い彼女?がいて」
「んふふふ〜♪てか、マッキーも好きな子作りなよ!」
誰のせいだと、思っているんだろうな。
「おーい、花〜」
「あっれ。松?と、岩泉?どした?」
「いや、な。我らがエース様があまりにも寂しそうだったんで。連れて来た」
からかうようなその言動だが、表情は先刻と変わっていないのが松川だ。そして松川の後ろに隠れるようにいるのが、珍しく大人しい様子の岩泉。
少し目尻の下がった表情が愛らしく、何よりも眩しかった。
「お、俺は別に...」
「素直になりなさいよ。岩ちゃん?」
「ちょ、松つんー!俺のマネしないでよ!」
騒ぎ出す二人を尻目に、岩泉を見る。
...にしても、何であんなに大人しいのだろうか。
「いーわーいーずーみっ」
「っ、お、あ、ど、どした」
「何でそんなキョドってんだよ。何かした?俺」
笑いながら問うと、彼は首を激しく振った。
あの様子だと、本当に何も無いのだろう。彼奴は嘘がつけないのだし。
ぼーっと、することも無いので松川と及川を見る。こうして見ると人は癖ばかりで面白い。例えば松川は少しイラついているとポケットに手を入れるし。及川は...彼奴は良く分からない。
完璧、というか隙を一切見せない。けれど唯一、彼の弱点と言えば岩泉という存在だろう。実際、岩泉も及川のこと好いているみたいだから、岩泉の弱点もそれかもしれない。
「ね、岩泉。ちょっと俺と抜け出さない?」
「へ?あ、ちょ、おい!」
岩泉の手を引き、教室から抜け出す。あんなに騒いでいた二人も、此方に気付いた。特に及川とか慌てていた。
「みっともねー顔...」
「はな、まきっ?おぉうわ!?ここの屋上っ、立ち入り禁止じゃねえの!?」
「んー?ああ、だな。うん。俺の穴場。授業サボるのに丁度いい」
へえ...と何故か妙に感心された。行ったことのない場所だからか、目が輝いている気がする。
「及川たち、今頃慌ててんのかな」
「何で抜け出したんだ?」
「....っあー、んー。別に?遊び」
そう言うと、彼は訝しげな目線をこちらに向けたが、やがてそうか、とだけ呟いてそれきり何も言わなかった。
「...花巻」
重々しい口調だ。何を言われるのだろうか。
「あ、あのな。及川はあんな奴で...何考えてんのかよくわかんねーけど。けど、悪い奴じゃ無いから。だから、嫌わないで、やって欲しい」
目線を伏せて、薄く微笑みながら、俺の大事な奴だから、と。
ああ、もう。そんなんだから。
「嘘だよ。遊びで抜け出したとか、嘘。俺は、岩泉のことが、好き、だから」
「.........へ」
たっぷり理解するのに何秒かかったのか。理解してから彼は顔を真っ赤にさせて、なんで、とかそんなことを口にしていた。俺は彼の近くまで寄り、少しうるんでいる瞳を真っ直ぐに見た。
「岩泉...好きだよ。お前は、どう?」
「へ、あ、やっ、な...で...っ?俺、そんな、ちがっ..。え...?」
しどろもどろになって何かを伝えようとしているがそれができずに、彼はもどかしいのか、頭を抱えた。
しゃがみこむ彼に合わせるように、同じ目線に座る。驚いたのか、リアクションが大きすぎた。
「なん、でっ、俺?.....うわぁ!?び、びびった」
「驚きすぎ。んで、返事は?」
彼はどこか迷った様子で制服の裾を掴む。
そして、口を開いた。
「俺は....」
「岩ちゃぁぁぁぁぁあん!!いた!」
「うっわあ....及川...」
マジで空気を読んで欲しかった。
「......岩泉、松と下降りといて?」
「...喧嘩、するなよ」
こういう時、松川という男は頼りになる。何かを察したのか頷き、上手く歩けない岩泉を支える。
「...さ、て。及川さあ、岩泉の彼氏でしょ?他の男に取られるかもよ?俺とか」
「その根拠の無い自信、キライじゃないよ?」
クスクスと二人はさも楽しそうに笑う。その心の内にあるものはドス黒い感情。ぐちゃぐちゃとした二人の心の闇。
「俺がもし、岩泉のこと力ずくで奪ったら、どうする?」
「面白い冗談だね?そんなん奪い返すに決まってんじゃん」
「へえ。それじゃ、今さっき俺が告白したって言ったら?」
及川は黙った。代わりに、憎悪とも言える目が花巻を捉える。くくっ、と喉が鳴る。不気味とも言われるその笑顔が及川を睨み返す。
「なんて、言ったの?岩ちゃんは...」
平静を装っているつもりだろうが、声には怒気が含まれている。
「返事はお前が来たせいで貰えてない。だけどまあ、可愛かったなあ。あの顔は」
「......黙れ」
「これじゃあ、俺が岩泉を奪うのも時間のもんだッ...」
声は続かなかった。代わりに小さな呻き声が漏れる。
「岩ちゃんに....手ぇ出してみろ...俺がお前のこと殺してやる」
「...フッ、こわ。まあ、安心しろよ。まだ奪ったりはしないから」
きっと、こんな伝え方じゃなくても、うまく出来た。だけどそうしなかったのは、及川に岩泉守って欲しいから。
俺じゃきっとできないけど、コイツなら。
馬鹿だ、俺。もう負けを認めている。
「そろそろ帰ろーぜ。殴り合いはしたくないし岩泉に止められてる」
「......」
口聞いてくれないか。当たり前だ。あんな事したんだから。
じゃあ、という意味を込めて軽く手を上げる。
あの憎悪でいっぱいの目はもう無く、ただ、良く分からない感情の目が俺の背中を見送っていた。
ただ、想う気持ちは一つなのに。
どうしてここまで憎しみ合うのだろうか。
岩泉一という存在が、二人を魅了する。
彼等は、もう動けない。岩泉に痺れて彼だけを愛する。
(無自覚な蜜は、時に毒となる)
end
こんなんいいなー
- Re: ハイキューBL!リク受け付けてます ( No.374 )
- 日時: 2015/05/06 15:39
- 名前: くるる (ID: 0WV2matm)
松花
花が入院した。
原因は分からないけど、コーチや監督に病院を教えてもらって、何度か皆で見舞いに行った。その度に、皆に笑顔で、時には冗談も言ったりして。そんな花は、いつも通りだった。
「はーな」
「お、松。皆は?」
「見舞いの花、買いに行ってる。俺は先に来た」
そっか、と笑って病室の窓の向こうにある空を見上げる花。どこか物悲しそうな雰囲気で、今にも消えてしまいそうだった。
何か、言わないと。花がいなくなってしまう。そんな思考でいっぱいになって出てきた言葉が、花にとっても俺たちにとっても始まりで、終わりだった。
「あー、そういやさ。復帰、いつになんの?」
「......その事、なんだけどさ。俺、もうバレー出来ないわ」
「........は?な、んで」
彼は笑って、また空を見た。何だよ、それ。冷や汗が背中にベッタリと張り付く。ゴクリと鳴った喉は、どちらのものだっただろう。
「なんか、昔痛めたとこ治ってなくて。足、切らなきゃいけないって」
ははっ、と花は笑った。ちっとも、笑ってなんかいなかったのに。苦しそうな顔で、力一杯拳を握り締めていた。どうして、花が。なんで。
「なん、で、だよ。はな...は、」
「松、俺は大丈夫」
「お前のそれはっ!大丈夫じゃねぇよ....!!」
久しぶりに、声を張り上げて怒鳴った。だって彼が、何もかも諦めてしまったような、そんな声で、顔で、いるから。無理なものは無理だと、弱気でいるから。だから、彼のために。
......違う。彼のためじゃない。俺のためだ。全部、俺のため。花と離れたくないから。ずっと一緒にいたいから。少しでも離れたくなくて、離れてしまったら俺と彼の繋がるものは無くなるから。こんなに好きなのに、愛しているのに、未だに伝えることのできない俺が、悪いのだけれど。
「松、来て」
優しい声で、笑顔で、俺を手招きする。今彼の傍にいないと今度こそ消えてしまいそうだから、一歩、一歩と彼との距離を詰める。
ベット横にある椅子に腰掛ける。やっと、彼と目線が同じになった。彼の顔も、離れていた時より良く見えた。その顔は、笑顔では無かったけど。
「あのな、松。確かに俺は大丈夫じゃないかもな。誰よりも俺を知っているのは松だし。俺の知らない俺を知っているから」
一音一音、確かめるように俺に語りかける花。その声には熱が籠っていて、俺は泣き出してしまいそうだった。そのまま狂って、彼には出来ない我侭を言ってしまいそうだった。
「だーけーど!心配は無用!別死ぬわけでもねぇし。それ、に、」
「花...?」
「それ、に。ほら、ちょくちょく、れんしゅ、見に来るし」
「花、もう止めろ。分かったから、花」
気づけば泣き出している彼を、力一杯抱き締めた。彼は叫んで、叫んで、泣いて、俺よりも力一杯抱き締めた。
「松っ、ねえ、松。なん、で、俺?なんか悪いことした?それなら謝るから。悪いことしたんなら、皆にちゃんと謝るから。だから、だから、まだ、バレー、したい...っ」
彼は最後の希望で、俺に縋った。だけど、俺は、無力で。そんな術は知らなくて。たすけて、と嗚咽を漏らしながら訴える彼に、俺はただごめん、と呟いて抱き締めることしか出来なかった。
ああ、どうか、神様ってのがいるなら。彼を助けて。
どうして彼が。なんで俺じゃなかった。お願いだから、助けてくれ。こんなんじゃ、彼の傍にいる資格がない。小さな希望に縋った彼をもう泣かせたくない。泣き叫ぶ彼に抱き締めることしか出来ないなんて嫌だ。だからどうか、助けて。
どれだけ祈っても考えても、彼のためになることは無くて、結局行き着く先は突拍子もない、平凡な答え。
未完成で、完璧なんか無い人間に、救いを差し出す手は無いよ。と、誰かに笑われた気がした。
彼は手術を成功させて、本当に度々こちらに来た。変わらない笑顔。態度。それはどこか儚さも感じられた。
「ねえ、松?」
「何?」
「もしさ、松に抱かれるなら、いいかなー、て思う」
「冗談やめろよ。ほんとに抱くかも?」
彼は哀しそうな目をこちらに向けた。逸らすことを許さない目。
戸惑い、それを隠して無理矢理に笑顔を作って、どうした?と聞けば、彼は形のいい唇を開けた。
「抱いて、いいよ」
「っ、はーな?」
「ずっと悲しかった。何度も泣いた。だけど、松が傍にいないと、泣いた感じしなくて、悲しいのも取れない。ね、松。俺ね松のこと好きみたい」
変わらないと思っていた。あの笑顔も、態度も。けれど彼は誰よりも楽しそうに笑って、義足をつけた足は思うように動けないのか、這いながら此方に来た。そうして、唇が重なった。
「っ!?ん、はなっ」
「ははッ。想像よりもずっと柔らかくて甘いな。ね、松。抱いて」
欲しい。君が欲しい。
彼を、強く抱き締め、貪るようなキスをした。服に手を掛けて、脱がしていく。
「っ、すき、だよ。松っ、好き...!松といれば悲しくないよ」
彼は多分、俺のことを好きじゃない。俺がいるから安心する。ただ、それだけのものに意味を見出した。花巻貴大は松川一静が好きなのだと。こんなにも哀しくて、儚い告白。
手放すことは出来ないから、その告白を呑み込んで俺も好き、と告げた。本当に好きだから、気持ちを言えなかった俺。
安心するというものに意味を見出し虚言を吐いた彼。
間違いすきだ遠回りの愛は、何よりも強い。
そこに愛なんて、無いのだろうけど。
end
ダブルデートの話はNo.376で終わりにさせてもらいます。
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