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ハイキューBL!
日時: 2015/06/13 22:43
名前: くるる (ID: rd7NbV2E)

初めまして。くるると申します。このスレを見て頂きありがとうございます。
最近、ハイキューにはまってしまい、
「月菅やっほい!」と思ったのがキッカケです。
どうでもいいですね。書けるのが、これです。

・月菅
・影月
・月影
・月山
・木赤
・黒大
・菅大
・及影
・及岩
・黒月
・及月

うん...誰も見ないな。お付き合い頂けたら幸いです。それでは宜しくお願い致します。

Re: ハイキューBL!リク受け付けてます ( No.380 )
日時: 2015/05/17 22:16
名前: くるる (ID: sCSrO6lk)


及岩

何てことのない日常。ただ毎日が少し物足りないように過ぎていくだけ。それは彼が隣にいないからなのだろうか。それなら今自分は何てつまらない人生を送っているのかと、溜息が出た。
成人した俺たちは大学が別になった。いずれ自分の道を歩く俺たち。これで区切りをつけようと、そうなった。
自分からそんな提案をしたクセに、やはり物足りなくて、連絡は取り合っているけど予定が合うことがないから、会えない。

「岩ちゃん...会いたいなぁ」

そんな呟きが、彼に届くことは無くて。
今日もつまらなかった。大学でのチームも、やる気の無い先輩がいて、思うような練習が出来ない。このままで、いいのだろうか。

「でも、先輩に刃向かえば後がなあ...。はあ...」

らしくない自分がいる。こんなにも弱かっただろうか。
夢に向かって突っ走っても結局はあの烏にそれを託して。自分がした判断が良かったのかと、耳の奥で声がする。
ふと、電話が鳴った。見ると愛しい彼からで、胸が高鳴る。

「も、もしもし」
『おう。及川、今から会えねえ?』
「え?なんかあったの?」
『ちょっと相談。お前もなんかあんだろ。声元気ない』

どうして、そんなに分かるのだろう。悟られないようにとしていたのに、結局は全部彼に分かってしまう。彼の前で、隠し事なんてそれこそ自殺行為だ。

「ん...。ありがと岩ちゃん」
『お前は何でもかんでも一人で背負いすぎだ。それじゃ、スタバな。俺らがよく行ったとこ』

懐かしい。あの頃が思い出されて、微笑んだ。そして、少し哀しくなった。


身支度を済ませて、家を出た。夏だということもあって、何ともぬるい風が吹く。
イヤホンを耳に入れて、話しかけられないようにする。こういう夜はいつも誰かに話しかけられて、面倒だ。そう言うと彼は不機嫌な顔をして、自慢かよ、と言われたものだ。今はそんな相手もいない。いても何も言われないで苦笑でもするのだろう。
また嫌なことを想像する。悪い癖だ。こうやって自分で自分を苦して、追い詰めて、狂ってしまいそうになる。けれど、そうなる前に彼はいつも来てくれた。だからきっと、自分がおかしくなってしまうなんてこと、無かったはずなんだ。

「あ、及川」

店内へ入ると彼はもうあの頃のいつもの定位置にいて、もう何かを頼んでいたようだ。こんな所も、変わっていない。

「ごめん。遅れちゃったね」
「別に待ってねぇよ。それより、お前のもう頼んどいたから。いつもの」

見ると、もうドリンクは運び込まれていた。懐かしいそれと、いつもの彼につい表情が緩んだ。

「...なに笑ってんだよ。気持ち悪」
「相変わらずだねー...。岩ちゃんは」
「早々変わるわけ無いだろ。俺もお前も、変わってない」

彼はコーヒーを飲み、一息ついた。そうして、ぽつりと。

「表面上は」

抑揚の無い声に驚いて、彼の方を見る。いつも通りじゃない。俺も、彼も。何があったのだろう。聞きたかったけど彼の雰囲気がそうさせてくれなくて、俺は黙り込むだけだった。

「それで...、何かあったんじゃねえの?」
「あ、ははは...。岩ちゃんはさすがだなぁ」

苦笑しつつ、俺も甘ったるいコーヒーを飲む。本当は苦手な甘いコーヒー。けれど彼が格好つけて、ブラックコーヒーを飲むから、愛しくて調子を合わせていたら、こうなった。本当は逆なのにね。

そんな懐かしくて、ちっぽけな思い出をコーヒーと一緒に飲み込んだ。

「岩ちゃん、あのね...」
「おう」

全部話した。彼は頷きながら顔が段々と険しくなっていって、最後には溜息をつけられた。
それの意味が分からなくて、問うと、

「お前、そんなウジウジした奴じゃねえだろ。昔のお前は年上に対してもあれこれ言って、刃向かって何言われても平気だったろ」
「ああ...そうかもね。ありがと、岩ちゃん」

こんな性格は合わない。それならば俺のやり方があるはずだ。ヘラヘラとして、最後に落とすだけ落とす。叩くなら、折れるまで。

「元気、出たか?」
「うん...。本当にありがとう岩ちゃん。それで岩ちゃんの相談って?」
「んなもんねぇよ.,.。お前に、会い...たかっ、た、から...」

途切れ途切れになるその言葉。どんどん小さくなっていく語彙や、赤くなっていく顔が理性を狂わせる。
彼の腕をこちらに引き、そのまま唇を寄せた。ふに、と柔らかいものが当たる。

「バッ...!おまえっ!」
「ご、ごめん。けど!岩ちゃんが可愛いから!」
「うっせえよ!もう帰る!」
「えぇー!あ、じゃあ、俺の家きてよ!ね!?」

家ですることと言えば、一つしか無いのだけれど。
それでも彼は渋々了承して、ぬるま風の吹く街へと足を踏み出す。

見上げれば、それは初めての夜と同じ空で。

end


Re: ハイキューBL!リク受け付けてます ( No.381 )
日時: 2015/05/23 08:25
名前: くるる (ID: KVMT5Kt8)


及岩花

しばらくして出て来たのは彼の母親だった。見慣れたその顔に少し安心して、いつもの笑顔を貼り付けた。

「こんばんは、おばちゃん。岩ちゃんいる?」
「今眠ってるけど...。あら、そっちの子は?」
「同じバレー部の花巻です。こんばんは」
「ああ!花巻くん!一が話してたわよ〜!」

彼とは全く違う性格の母親に面食らったそいつを横目で見ながら、用件を言い渡す。すぐに家に上がり、彼の部屋に真っ先に向かった。
小気味よいノックをして、彼の返事を待つがそれは無く、静寂が包んだ。

「....寝てんの?」
「さあねぇ...。ま、いつか起きるでしょ。それまで待とう」

俺は、彼のドアの前で座り込む。隣にいるそいつも同じことをして、携帯を取り出した。大方彼にメールでもしているんだろう。俺はと言えば、そんな必要はない。ドアに頭を預ける。そうすると少し、安心した。彼は今ここにいると、そう感じた。

「...及川に、花巻、かよ...」
「あ、岩ちゃん。おはよ。入っていい?」

キィ、とドアが開く音がした。俺は頭をぶつけたけれど、こんな状況で何も言えない。少しだけ開いた隙間から除く彼の顔。俺は焦った。なるべく短く用件を伝える。そうでもしないと彼に考える隙を与えてしまうから。もしかしたら、先程まで繋がっていたと感じられる木板一枚が開かない様な気がするから。

「入れ」

彼も必要最低限の言葉を使う。何でも分かっている彼が彼のことなら何でも分かっている俺が、この時少し分からなくなった。
ねえ、岩ちゃん。なんで言わなかったの?まだ俺は、信用されてないのかな。そんな考えを打ち払うように、彼は怯えた様子で俺の隣にいるそいつを見た。

「岩泉、俺...及川に全部話していいか?」
「っ...、おれ、が及川に全部、話す...から...」
「そうだよな。うん、分かった」

彼は小さくありがとう、と礼を告げると、再び俺たちに入れと促した。変わらない彼の部屋。ただ、少し、そこは酷く冷たく感じた。

「それじゃあ...、話す、ぞ」

少しだけ震える彼の手を、精一杯握り締める。彼は不安そうに俺を見てくるもんだから、安心させるために微笑む。彼にだけ見せる笑顔。彼にしか見せない笑顔。
彼はいくらか安心した様で、頷くと口を開けた。

つづく

Re: ハイキューBL!リク受け付けてます ( No.382 )
日時: 2015/06/06 20:35
名前: くるる (ID: gfjj6X5m)


及岩花

誰も、有能な人間になれる訳では無い。凡人だっているし、天才もいる。俺も凡人の一人だ。エース、なんて言われているけど背は低いし俺よりもパワーのある奴はいる。それが苦痛で、段々と、ゆっくり、確実に自分の居場所を奪われていくかの様な感覚に襲われた。

「岩ちゃん、どうしたの?最近元気なくない?」
「...何でもねぇよ。春高まであんま時間ねぇんだし、悩みなんか持ってらんねぇ」

俺の腐れ縁の及川は、納得していない様子だったが、そうだねと頷きコートに戻っていた。ああ、嫌だ。行かないで。俺をどんどん抜いていかないで。そのトスを上げる手も、笑顔も、全部俺が欲しいのに。

「....岩泉?」
「っ、あ、花巻か。どうした?」
「いや、そっちこそどうしたの。大丈夫か?」
「ああ。大丈夫だ。だからあんま、心配すんな」
「大丈夫なんかじゃ、ないだろ」

いつもより低い声。ぞわっと全身が震える。
彼の顔は俺の顔の前まで迫ってきて、後ずさりをしても追いかけてくる。

「しつけぇ...よ...!」
「ふっ、顔真っ赤じゃん。」

ダメだ。嫌だ。やめて、及川の前で、そんなこと。俺にはあいつしかいないのに。

「...、及川ー。岩泉気分悪いみたいだから保健室連れてく」
「そーなの?うん、分かったー」

否定をしようとしても、ずるずると彼に腕を引かれ、誰もいない静かで、空っぽな場所へ行き着く。

「ここ、保健室じゃねーだろ」
「なになに、保健室でヤリたかった?」
「っ...!?おま、何言ってっ...んん!」

簡単に唇を奪われ、舌を捻じ込まれる。何度も及川としてきた。けれど、俺は彼を望んでいた訳では無いのに。俺が求めているのは、欲しているのは、及川一人なのに。

「っ...あ、やぁ....っ」
「ねえ、岩泉。気持ちいい?」
「っやめろ...!もっ、や...!」

それからはされるがままで、行為こそは優しかったけれど彼の理性を失った目が、声が、怖くて。その度に及川の顔を思い出していた。
助けてくれ。やめてくれ。お願いだから、あいつに会わせて。あいつの笑顔が見たい。あいつのトスを打ちたい。あいつと一緒にいたい。なのに、
なんで今、俺の目の前には彼がいる?
どう考えても分からなくて、いつのまにか快楽に変わっていったそれは俺を底に落とすのは充分だった。

「も、中...や...,」
「岩泉さー、そういう顔ほんとやめろって。もっとしたくなる」
「っあ...なに...!?また、おっきく、なっ...ぁ」

何度も何度も、中に白濁としたものが出されて、きっとそこに繋がりも何も無いのに。彼は、何を、求めているのだろう。
そんな考えも虚しく、意識は飛んでいった。



「...で、起きたら、保健室いた。何回体洗っても、花巻の取れた気ぃしなくて。血が出るまで洗った」

淡々と話す俺。驚いた様子の及川。花巻は、目を伏せ何を思っているのか分からない。分からない。分からないことだらけだ。何でこんなことを淡々と話せるのかとか、及川はどう思っているのかとか、花巻は何できたんだろうとか。何も分からない。

「マッキー...、お前...ッ!」
「悪かったと思ってるよ。本当に。岩泉にあそこまで怖い思いさせるつもり無かったのに...。岩泉の顔が、声が、理性を利かなくさせて...」
「やっていいことと悪いことの判断くらいつかない!?」
「おい、待て。及川、俺はもういいから」

彼らのこんな姿が、見たかったんじゃない。こんな怖い顔をしてほしかったんじゃない。お願いだから、やめてくれ。

「よくないよ!どうして、どうしてこんな大事なこと言ってくれなかった!?」
「言ったらお前、花巻殴るだろ...」

彼は言葉を詰まらせた。図星だろう。俺も彼も、お互いのことなら何でも分かっているから。だから、俺のこともすぐにバレた。彼に隠し事なんて出来ないだろうに。

「でも、相談くらい、」
「出来ねぇだろ。言ったら俺殴りに来るんだろ?」
「....ハァ。分かってんならしないでよね」
「分かってるよ。.....岩泉、ごめん」

深く深く頭を下げる彼。頭は床に付きそうで、肩は少し震えていた。

「顔、上げろよ。土下座までして欲しかったんじゃ無いし」
「でも...」
「岩ちゃんがいいって言うんならいいんじゃない。」

俺の言葉と、及川の不器用すぎる言葉に恐る恐る頭を上げる花巻に思わず笑った。笑うべきではないのは分かっているのだけれど。

「っふ、ははっ...。くくく...」
「岩ちゃん、笑いすぎだから」
「本当、ごめん。ありがとう」

三人とも笑っていた。先程のことなんか忘れようとするように、そのまま部活の話に移る。明日の練習メニューだとか、フォーメーションだとか、とりあえず話は尽きなかった。
帰ったのは九時前で、三人で夕飯を食べた。

「岩ちゃん。このまま泊まっていい?」
「ん、いいけど。どうした?」
「消毒しよっかなー?」
「消毒...?」

途端、視界が反転する。目の前には天井と、及川の顔。これからされることに安易に想像できた俺は、ジタバタと暴れた。

「おいっ...!ふざけんな!」
「抵抗が弱いよー、岩ちゃん。恥ずかしいの?」
「恥ずいに決まってんだろ!」

にこーっと笑うそいつに、抵抗しようとも出来なくて。それに、俺も欲しかった。彼の体温が、声が、体が、その手で俺をめちゃくちゃにしてほしい。そうして、彼の愛を自分の中に注がれたい。それに、

「拒否権無しね」

選択肢なんて、元々無いのだし。


愛して、愛されて。
そうして誰かを、犠牲にして。
皆幸せに、なんて出来ないのだ。彼なんて多くを犠牲にしてきた。それなのに、俺を選んで、愛してくれた。
そんな優越感に浸されながら、俺は彼と唇を重ねた。


end
更新不定期です。ごめんなさい。

Re: ハイキューBL!リク受け付けてます ( No.383 )
日時: 2015/06/08 19:29
名前: くるる (ID: xbduus1y)


まつはな

ぐちゃぐちゃに、めちゃくちゃに掻き乱して、どろどろとしたそれはきっと君と俺に似ていて。




静かな空間に、ペンを走らせる音と書物のページを捲る音が聞こえる。寒さが厳しくなってくるこの頃、もう大分雪は降り積もった様に見える。これから我が家に帰るのも少し億劫になるが、それでもこんな中働き続ける人々に感謝というか労いというか、どちらも似たような意味だったことに気付いて、思考を止めた。ふと、隣にいる気配に目を向けると、君はこれまた見たことの無いような顔をしていたので少し驚く。何を悩んでいるのか聞いてみれば、何だか凄くどうでもいいことで、やっぱり花は花だなぁ、とか思ってみたり。
そろそろ帰ろうか、と周りに配慮した小さな声で呟く。けれど静まり返ったこの場所では小さな声さえも響く。君もそこら辺は分かっているのか、頷きを返してかたりと席を立った。こうして館内全体を見渡すと、自分たちと似たような人が多いように感じる。制服に身を包み、必死になって参考書を引っ掻き読み、ペンを走らせ、中には合格、と書かれた鉢巻を巻いている者まで見かけた。あそこまでなる気は無いけれど、だけど、同じ大学に行けたら。そんな夢みたいなものを持って、今日もまた俺はいそいそと、辞書やらなんやらを目で追った。

「...まーつ。行こ」

あぁ、もう。
そんな声で呼ばれたらどうにかなってしまいそうだ。
今度は此方が頷きを返し、館内を出た。先程までの暖かな温度とは変わって外は酷く寒々しい。指先からその奥まで風は体温を奪っていく。刺されるようなその寒さに目を細め、横にいる君に声をかける。君ははにかんだ様な笑みを浮かべて、ゆっくりと歩き始めた。君一人でこの白く、酷く冷たいアスファルトの上を歩くのは、どこか孤独さを感じさせた。本当に、一輪のはな、みたいで。そんな詩人めいたことを君に言うつもりは無いけれど。

「疲れたなー。今日も」
「まあ、今日は図書館静かだったし、集中できたでしょ」
「俺まじで図書館むり。静かすぎるわ」
「花ー、我侭言わない」

はは、と君は笑ってそれから少し何かを物語るような表情を見せた。それが少し恐ろしくて、笑えていたのか分からないけれど、どうした?と問い掛けると頭を振られるだけでそれからは何も喋らなかった。



意外だった。
君が俺の家に行きたいと言うなんて。いや、俺も自分から行くタイプでは無いからいつも何も言わないけど、俺よりも君はもっとそんなことを言わない男だった。俺も君もそれを知っていたから、手を繋ぐのもキスをするのも性行為も、全部俺からだった。だから、そうやって君が言うのも、頑として譲らないその態度も、意外だった。

「、迷惑だった?」
「いや?ただちょっとびっくりしただけ」

言うと君は胸を撫で下ろし、安堵と取れる溜め息をついた。こうして見ると、なかなかに人間らしい。いや、人間なのだけど。それでも感情をいつも押し殺しているように見える君がこんな風に感情を露にするなんて思わなかった。
玄関を開けて、すぐにある階段を上る。ネコ型ロボットとメガネ君が暮らしている家があるが、あんな構造とそっくりだ。
いやはやほんと、分かり易い家で良かった。俺の部屋は二階なので、少しばかり急な階段を上る。ドアを開けると殺風景とも呼ばれるその部屋は自分でも思うくらいだ。必要なものしか無いので、つまらないと誰かに言われた気もするけどあれは誰で、いつだったかな。

「いつ来ても、変わんねーよな。お前んち」
「そう?花は趣味コロコロ変わるからなー」
「好きな奴は一途だけど?」

悪戯な笑顔で、こちらを見上げる君のその顔にいよいよ我慢がきかなくなる。ベットに押し倒そうと、肩を掴むが、君は何故だかそうさせなかった。
不思議に思い見ると、珍しく真剣な顔でこちらをじっと見る。あの目だ。目を離すことを許さない目。瞬きすら許されない澄んで、吸い込まれそうな目。その目が好きで、好きで、俺はただそれを見つめ返している。

「ね、松。俺がさ、」

何処かに消えてしまったなら。

「松はその時、どうする?」
「まずどっかに消えたりすんの?」

少し棘のある言い方になっただろうか。それでも、仕方ない。だって君が、そんな意味のないことを聞いてくるから。本当に消えてしまうのなら、そう。俺なら。

「きえたり、は、しないけど」
「だろうね。まぁ、俺なら。
....どうするかなぁ。実際にそうならないと分からない」

虚言を吐いた。
もし、もし君が消えてしまったなら、それの原因となるものを一つずつ潰していって、そうして必ず見つけ出す。後は、...あぁ、そうだ。もう二度と消えてしまわないように鎖にでも縛って、俺か君が死ぬまで、檻にでも入れて置くんだろうな。泣き喚いても、それは自分がしたことなんだから。

「花は、どうするの?」
「俺は...、そうだな。俺だったら、待ち続けるよ。憎しみも悲しみも全部心ん中に押し込めてさー。そうして、糸がプツンって切れたら、多分、泣くんだ。それで、待つ。帰ってくるまで。帰ってこなくてもさ、俺は待ってるよ。笑いながら、泣きながら、松より先に死んでも、無理矢理にでも松の守護霊にでもなって、それで、気づいてくれるまで、待つんだ」

随分と、信じ難い話。けれどそれは何処か現実じみていた。
やはり俺たちは、どこか似ていて、似ていなくて。何をそんなに必死になる話なのか、良く分からないけれど。実際にそうならないと分からないのに。それでも確証が欲しかったのだろう。君も俺も。絶対に離れない、離さないという確証が。ねぇ、花。愛しているよ。

「もういい?花、シて」
「んー。やっぱ止めた。これ聞くつもり来たし」
「あ、だから。あんな頑固だったの」
「まぁな。...もしかして、嫌だった?」

少し不安そうな表情で俺の顔を覗きこむ。ほら、そういうのがいけないんだよ。どんどん沼に嵌っていって、抜けられない。本人は無自覚だろうけど。

「これ以上近付いたら襲いそうだわ」
「へぇー。面白そう。もちょっと近付こうかなー?」
「花。ダメ...あ、そういや」

思い出した。つまらないと言われたのはうちの主将だった。その日は初めて家に来て、入って早々言われたのだ。何とも失礼な奴である。それで少しムカついたのでベットに押し倒したんだったけ。俺も大概子どもっぽい。そう言えば、確か君はそれを見て拗ねて帰っていった。あぁ、その日だ、俺と君が初めて性行為をしたのは。
そのことを君に話すと、君は顔を真っ赤にさせて、それを腕で隠そうとしていた。そんなことされても、逆効果なのに。可愛らしい君の言動に、俺はいちいち悶えるのだ。だから、これくらいの思いをしてもらわなきゃ困る。

「はな、こっち向いて?」
「...うっさい。見んな、恥ずかしい」
「いいじゃんヤキモチ。嬉しかったよ?」
「高三にもなってそれはねーべ....」

無い無い、と相変わらず否定する君に触れるだけのキスをする。いや、だって今のは花が悪いから。可愛らしい君のその表情を、二人きりで、密室で見せる君が悪い。まあ、俺以外に見せたりなんてさせないけど。

「っ、ま、つ」
「うん」
「俺、帰るから...」

依然として赤い顔はそのまま。君は鞄を持つと、慌ただしい様子で階段を駆け降りた。ちゃんと俺の親への挨拶も忘れない。嫁に欲しいと思った。言ったら怒るから言わないけど。

「ちょっ、花っ」
「ばーか。いきなりするお前が悪い。じゃーな」

あっさりとした別れ。また明日も会えるのだから、こんなもんでいいのかもしれない。だけど今日は、先程あの話をしたばかりだ。不安になる。腕を掴み、明日も会えるのかとか、明日はキスできるのかとか、色々聞きたかったけど。
口から出たものはあまりにも簡単で、突拍子もない言葉。

「また明日」

と。




消えてしまわないように。いつも俺の隣にいるように。
消えないで、なんて言えないくせに。消えたら嫉妬と憎悪でいっぱいになるくせに。



(哀情表現)




end

Re: ハイキューBL!リク受け付けてます ( No.384 )
日時: 2015/06/13 20:04
名前: くるる (ID: aR6TWlBF)


くろつき

あの頃の思い出も、全部捨ててしまえばきっとどこか、胸の内のどこかが軽くなるのに。全部捨ててしまえば、笑えるのに。泣かないで済むのに。
それなのに、ねぇ、やめて。近付かないで、待って。そんな、そんな触れられ方は知らない。そんな笑顔も知らない。そんな甘ったるい声で好き、と言われた時の反応も、分からないから。

_____これ以上、こちらへ来ないで。

「ツッキー?」

そんな風に甘い声で、僕を心配しなくていいから。僕は一人で大丈夫なんです。そんな風に、たくさんの愛を貰っても返せるのは一つなのに。僕自身は一人なのに。どうして、貴方は、僕に、

「優しくしないで」
「...ツッキー?」
「理解、できないんです。貴方が僕を気にかけるのも、貴方に好きと言われるのも」

僕にそんなのは分からない。貴方みたいにたくさんの愛をあげられる自信が無いんです。こんなに尽くしてもらっているのにこんなに好きだと言われてるのに。分からないんだ。

「っ、あ...!痛いっ」

強く締め付けられる腕が、とても痛くて。こんな痛みも知らない。知りたくなかった。
そんな乱暴にしないで下さい。口に出して言って。痛い。痛いです。

「なあ、ツッキー。どうしたらいいんだ、俺。分かんねぇから、ツッキーの気持ちも。まだちょっとしか知らないから。教えて」

ずるい。貴方はそうやって、いつも僕を放さない。放してくれない。それに何度救われただろう。こんなに涙をボロボロ流して、泣き喚く僕は貴方ぐらいにしか見せない。

「っ、ぁ...っ、くろ、お、さ」
「うん」
「分からないっ、です。貴方の、愛がうまく返せる自信、ない....。
知らないから...、こんな、愛され方。どうしたら、いいのかっ」
「....ツッキー。俺は、ツッキーに尽くしたいと思ってるよ。だけど、俺のその愛を返して欲しいとは思わない。ゆっくりでいいんだ」

だから、と貴方は続けた。視線だけで続きを促すと珍しく焦っている様子の貴方が愛しくて。この気持ちが恋、なら。僕は貴方に少し近づけただろうか。

「おれと、付き合って、ください」

深々と頭を下げられて、体は少し震えていた。ああ、本当に。こんなに愛らしい彼の表情を僕は知らない。

答えなんて決まっている。
大きく息を吐いて、今、一粒の愛を。

end

オゥフ...


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