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- ハイキューBL!
- 日時: 2015/06/13 22:43
- 名前: くるる (ID: rd7NbV2E)
初めまして。くるると申します。このスレを見て頂きありがとうございます。
最近、ハイキューにはまってしまい、
「月菅やっほい!」と思ったのがキッカケです。
どうでもいいですね。書けるのが、これです。
・月菅
・影月
・月影
・月山
・木赤
・黒大
・菅大
・及影
・及岩
・黒月
・及月
うん...誰も見ないな。お付き合い頂けたら幸いです。それでは宜しくお願い致します。
- Re: ハイキューBL!リク受け付けてます ( No.324 )
- 日時: 2015/02/26 19:32
- 名前: くるる (ID: 16H8oI1w)
どこで間違えただろう。いつも通りのはずだった。相変わらずの彼奴の笑顔や、仕草。苛つく程の女子の人気や、それを軽くかわしていく彼奴。全部、全部がいつも通りだったんじゃないのか。
「ねえ。どこで間違えたと思う?」
「......」
恐ろしくて言葉が出ない俺なんか関係なしに、そいつは喋り始めた。
「それはね、最初っから間違えてたんだよ。俺は、ずーっと好きだったのにさ」
「......え」
「気づかなかったの?さすがだね。そうやって、君は俺の心を削っていくんだよ」
違う。止めて。
「俺には君を捕まえることなんて、出来ない?ねえ、答えてよ。黙ってばっかりじゃあ...ねえ?」
「ちが...おいかわ......」
何が違うの?と、彼奴はそう言った。不気味な笑みで、いつも通りの...いや、違う。彼奴じゃない。いつもうざったらしいくらいの笑顔じゃない。いつもの彼奴じゃない。お前は、誰だ。
「おいかわ.....?」
「ん?なに?」
違和感の正体が分かった。名前を、呼ばれていない。岩ちゃん岩ちゃん、といつもは何回も言われるのに、今日はそれがない。こんなにも違うのか。こんなにも、こいつに名前を呼ばれないことは、こんなにも、辛く、重いのか。
「なまえ...を...」
「名前?」
「名前、よんでくれ...おいかわ......っ」
「涙目になっちゃって、可愛い。いいよ、呼んであげる。は、じ、め」
ぴくっ、と体が揺れた。奥から何か熱いものが込み上げてくる。その熱が、顔の中心に集まっていくのが分かった。
「あれ?顔、赤いけど」
「.....っるさい...!」
可愛いなあ、と、愉快そうに言われた。その顔は、少しいつもの彼奴に戻っていた。
「岩ちゃんってさ、嬉しいとすぐ顔に出るよね。犬みたい」
「は?」
「犬は犬でも.....駄犬?」
違った。いつもの彼奴じゃなかった。戻ってなんかいなかったんだ、違ったんだ。
「駄犬、返事は?」
「ふざけんなッ!何でお前じゃないんだよ!いつもの、いつものお前は!」
「いつもの俺?これだよ。岩ちゃんは知らないんだろうけど、これがいつもの俺」
...俺は、こいつをしっかりと見ていなかったのか。いつも一緒にいたのに?こいつは、俺に本当の自分を見せてくれなかったのか。なんで?俺は、俺は、こいつがいなかったら、俺は。
俺の隣には誰がいた?
考えれば考えるほど吐き気がした。
俺の隣に及川がいないなんて有り得ない、と。
そしてそんな事を考えている自分も、こいつと同じじゃないかと。だったら、だったら俺たちは。
「と、とおる...。好き、だ」
似た者同士の俺たちは、きっと愛し合える。
誰よりも、強く、強く。
愛せば愛すほど嵌まっていく自分たちが、恐ろしくもあり、誇りでもあった。
____俺の隣に、君はもういない。
end
- Re: ハイキューBL!リク受け付けてます ( No.325 )
- 日時: 2015/02/28 09:12
- 名前: くるる (ID: wf9BiJaf)
喉が渇く。ヒリヒリと焼けるように痛い。目の前がぼやけてきて、その場に崩れ落ちた。
ハッ、ハッ、と荒い呼吸を何度か繰り返す。けれど、この喉の渇きは一向に収まる気配はない。むしろ酷くなっていった。
「あ...血...血が、ほしい...」
そう言った途端に、心臓が脈打って、動悸も喉の渇きも激しくなった。自分の中の細胞が、求めろ、とでも言うように。
「....王様...?」
よりによって、何でこいつに...。
そう思っても体は正直だ。見た瞬間に体が止まらなかった。そいつの腕を掴み、歯を立てる。そうして、自分の行動に気付いた。歯が当たるか当たらないかの間隔で腕を放した。震えが止まらない。俺は今、何をした。こいつの血を吸おうとしたのか。嫌だ、違う。俺は吸血鬼なんかじゃない。
「ねえ、今の、なに」
「...別に、なんでも」
「意味わかんないんだけど?答えろよ」
少し低くなった声で凄むそいつに動揺を隠せない。目線を逸らしながらも、喉が渇きながらも、答えた。
「吸血鬼なんだよ...俺は」
「それで、僕の血を?」
「のど、かわいた...か、ら...」
「は?ちょ、大丈夫なの!?」
どうして。何で心配してくれるんだ。人間から忌み嫌われる種族にどうして手を差し伸べてくれる。
「ねえ、僕の血、飲む?」
「じょーだん...。お前が大丈夫じゃねぇよ...ッ...」
「そんな状態で心配されてもね。ほら、いいよ」
白く、美しい腕を乱暴に差し出してきた。
ドクン、脈が一つ。
その腕を強く掴み、歯を立てた。ああ、美味しい。喉が潤されていく。自分の理性が戻っていく。何度も血を吸ってはきたけれど、こんなに美味しいのは初めてだ。
「ん...っ、は...ぁ......おいしい...?」
苦しそうな顔をして問いかけるそいつに頷きを返す。今の俺には、言葉など、まるで返す気が無かった。
そいつは、へぇ、とまるで興味の無さそうに呟いた。
そろそろ腹が膨れてきた。吸いすぎたか、と思いそいつを見ると、何でもない顔で歯形を見つめていた。
「.....うん。まあ、これくらいならバレないかな」
「.........おう」
「お礼はないんですか〜?」
「あっ、あ、あ、り、あり.....あざっす...」
「ほんと、王様...」
呆れながら微笑むそいつに、少し、ほんの少し、胸が高鳴った。
「なに?」
その微笑みはすぐに消えたけど。代わりに眉間に皺を寄せた顔が帰ってくる。黄金色、というのだろうか。その色を持つ目がこれまでにないくらいに細められていた。端的に言うと、なに見つめてんのオーラが凄かった。
「なんでもねぇよ...」
「ふーん?まあいいけど。っていうか、吸血鬼ってあな喉渇くものなの?」
「や、俺はあんまり血は吸いたくねぇから」
「どうして?生きてけないじゃん」
その問いにうっ、と詰まる。確かに生きてはいけないが、自分の勝手な理由で人を傷つけるわけにはいかないだろう。そう言うと、今度は興味深そうにへぇ、と口元を少し緩めていた。
「おい、顔、怖い。何に興味もってんだ」
「ん?いや、王様も優しいんだな〜って」
失礼すぎる。
「で、また喉渇いたらどーすんの?」
「そんときはまた誰かの血を...。あ、だけど限界って時だけだからな。ちょっとやそっとじゃ、」
「僕にしときなよ」
「...は?」
いや、いやいやいや。何をいっている。確かに特定の相手が見つかるのは好都合だが、それでは相手の方が持たないだろう。
それに、いまいちこいつの考えていることが分からない。
「僕にしときなよ。どっかの知らない奴のを吸うより、大嫌いな僕のを吸った方が、良心も痛まないでしょ?」
ああ、なるほど。こいつはそれを言いたかったのか。けれど、だからといって。
「それは理由にはなんねぇよ。大嫌いだからといって傷つけていい理由にはなんねぇ」
「ずいぶん、優しいんだね?」
「元々な」
「それはないケド」
笑い声、一つ。
俺とこいつが一緒に笑ったのは初めてだ。こんなにも心地いいものか。こいつといると、何かが違うのは分かる。けれど、それが何なのかはっきりとは思い出せない。
オレンジ頭といるときと違う。トスが綺麗に決まったときとは違う。もっと、もっと簡単に言えるのだけれど、それができずにいるからもどかしい。
「で、どーする?僕の血にしない?」
「お前が、自分を傷つけてもいい理由じゃなかったら」
「強情だね。もうそんな馬鹿な理由にはしないよ」
じゃあどんな理由だよ、と聞いてみると、そいつは嫌そうに顔をしかめ、目線を逸らした。
「言えよ」
「やだ。無理。無理」
「そうじゃなきゃ俺、血ぃ吸えない」
「......はあ。分かったよ、分かった」
そいつは再度溜め息をすると、俺の目をしっかりと見て、恥ずかしそうに呟いた。
「お前が、誰かの血を吸うことがイヤ」
思考が一瞬止まった。
何かを考えることを止めた脳。本能のままに動く体。
「ちょ...ッ!?」
きっと最初から分かっていたのだ。
俺はこいつに惹かれていると。こいつの血がやけに美味く感じられるのはそのせいだと。
全部飽きたら捨ててきた。美味しくなかったから。人間の血はその性格を表すから。けれど、君は。
「捨てないでよね...」
「どうだろうな」
まあ、決して捨てることは無いのだけれど。
愛されなかった吸血鬼と愛されることを拒んだ少年。
きっと二人は何度も何度も繰り返すのだ、と
誰かが笑った。
end
- Re: ハイキューBL!リク受け付けてます ( No.326 )
- 日時: 2015/03/01 22:42
- 名前: くるる (ID: B4StDirx)
大菅
「な、スガ」
「なにー?」
「キス、しよう」
真夏日。
溶けかけていたアイスを食べるのに夢中だった俺は、大地の一言でアイスを落とした。
買ったばかりの服に冷たいアイスが布越しから刺激する。
「つめて....ッ!!」
「ス、スガ!大丈夫か!?」
誰のせいだろうか。
こういう事はあまり思いたくないのだがこればかりは大地が悪い。不意打ちダメ。絶対。
ああ、うん。大丈夫。と軽く流してみるが大地はオロオロと謝罪の言葉を述べていた。それじゃあ、旭と変わんないな、と笑ってみると、
「それは、嫌だな」
と、相手も笑い、冷静になっていた。旭パワーが凄かったので今後使おうと思う。
「あー、で、大地。話を戻すけど...」
「お、おお。俺はなスガ、その、キス...したいんだ」
「いや、わかった。それはわかるけど、何でこんな公衆の面前で?せめて人気の無いところとかさー...」
大地は今更というように気付き、あ、そうか、と呟いていた。
「うん。じゃ、人気の無いところ行ってキスしよ」
「外はやだ!」
冗談じゃない。俺が反論すると、大地は更に考え込み、頭を抱え、唸っていた。短い髪をガシガシと一頻り掻くと、それじゃあ、と口を開いた。
色素の薄い唇が、微かに動く。キス、という単語を聞いてから、相手の唇や、自分の唇までも意識した。もし、もしキスするのなら。
...俺の唇カサカサだな。せめて何かしてくれば良かった。いや、だけど唐突に大地が言ってきたし。大地の唇ってどんな感じだろう。俺よりカサカサしてそうだな。大地、色々抜けてるし。
「スガ?」
「あっ、悪い。なに?」
「あー...、あのな。やっぱり、キスはやめよう。スガの気持ち優先させなきゃな」
大地は、笑った。少し残念そうな笑みで。
ああ、もう。これだから俺は彼に甘いんだ。
「いい、よ。キス、しよ?」
大地の少し歪んだ笑みなんか、俺は知らずに。
「いいのか?」
「け、けど!人気の無いところだから!」
はいはい、と嬉しそうな顔をする大地に、こちらまで嬉しくなってくる。この顔が、やっぱり好きだなあ、なんて。
彼の全てが好きでも
この顔は特別なものだ、と。
初めてのキス、はどんな味?
end
あれ、なんか、グダグダ。
- Re: ハイキューBL!リク受け付けてます ( No.327 )
- 日時: 2015/03/01 22:46
- 名前: NeBa2 (ID: Mg3hHTO1)

はぁ…はぁ…ぐへへぇ…やばい可愛すぎる…!!
…スイマセン変態化してスイマセン…
- Re: ハイキューBL!リク受け付けてます ( No.328 )
- 日時: 2015/03/02 22:30
- 名前: くるる (ID: jwkKFSfg)
落ちた。
緊張した空気の中で、タンッ、と単純な音だけが響いた。チームの顔を見れなかった。自分のせいで落としたボールは誰かに回収されている。振り向けなかった。ただ、ボールが落ちた方を見るだけで、主将らしくなんて振る舞えない。
「さっさと並ぶぞ」
こんな時、幼馴染みという存在が、どれだけ有り難かった事だろう。頷くだけしかできず、フラフラとコートに戻っていった。
相手側には知っている奴らしかいなかった。ムカつく後輩もいた。その顔は、浮かれているのでは無く、引き締まった、いい表情だった。ああ、それに比べて、俺はどんな酷い顔をしているだろうか。諦めきった表情でみっともないのだろう。けれど、それでも、どんな顔でもいい。笑われてもいい。
まだ続けさせてくれないか。
「ありがとうございました!!」
その声で、我に返った。小さく礼をして、監督の所へと向かった。
監督もコーチも、何も言わなかった。とにかく、よくやったなと笑ってくれただけだった。
続くんだと、思っていた。今から学校へ戻ってミーティングして、土日に思いっきり、試合でやり残したことが出来るんだと。そう、思っていたのに。
「ほら、行くぞ。及川」
「い、わちゃ...俺、ごめ」
「謝んな!!」
肩が揺れた。彼は、今にも泣きそうだった。ギリッと歯軋りを立て、それを我慢していた。
どうして。どうして泣かない。何で我慢している。どうせなら、思いっきり泣いて、俺を罵倒してくれ。責めてほしかった。俺のせいなのに。俺が終わらせたのに。落ちれば終わり、のバレーで、俺はそれをした。
いい思い出になったな、とかそんな生易しいものでは無くて、何なら、殴ってくれたって良かった。
なのにどうして、何もしない。どうして、抱き締めてくれる。
「謝ったら、今までのこと全部無駄になるみたいだろうが!ふざけてんのか!お前に不足なんか一個も無かった!満足だよ!皆が、満足して打てたんだよ!」
お前は!最っ高のセッターなんだ!
と、まるで無理矢理にでも言い聞かせる様に。彼は涙を拭わず、みっともない顔で、そう言った。
俺は、泣き崩れた。場所なんか関係なしに。ボロボロと大粒の涙が零れて、それが鼻水と混ざりあった。それは彼も同じで、変な顔、と笑えばお前もだ、と微笑み返した。強く、強く抱き締められた腕は、今にも壊れてしまいそうだった。だから、抱き締め返した。脆く、壊れそうなその心を、掬う様に。俺にしてくれた様に。
「おい...かわ」
「なに?」
「ありがとう」
直球に。ストレートに。曇りない真っ直ぐな瞳で、彼は俺に感謝の言葉を述べた。
意味がよく分からず、首を傾げると、彼はあー、とかえー、とか目線をあちらへこちらへ飛ばしながら、言う言葉を決めかねている様だった。
「あ、あのな...」
「及川!挨拶!もう、皆待ってる」
「あっ、松つん。ごめーん!岩ちゃん、いこ」
彼は何かを言いかけていたが、頭を振り、ああ、と頷いた。見てくれたギャラリーに挨拶をすると、お疲れさま、という声や拍手が飛んできた。もう一度、挨拶をして、片付けを始めた。
結局、彼にあの言葉の続きは聞けなかったけれど。
監督は俺達の状態を察してか、それぞれで帰らせた。帰る相手は決まっていた。
「岩ちゃん」
「ああ。あ、花巻と松川もいいか?」
見れば、彼の後ろには3年間見慣れたチームメイト。胸の前に手を振り、「いいか?」と、少し遠慮がちだった。そんなこと聞かれなくてもそのつもりではあったから、驚きも、感動も別にない。ただ、本当に、最後なんだな、と。そう思うと、また泣きそうだったから、必死に笑顔を取り繕って、「いいよ」と、許可をした。
帰り道は酷く静かだった。たまに吹く風が、熱かった体には十分だった。落ち葉がカサカサと揺れる音さえも、今の自分たちには痛いくらいだった。
何となく。本当に何となく。終わったね、と呟いた。
言えば、そうだな、とか終わったなー、とか言ってはくれたけど、続くことは無かった。けれど、それでいいのだと思った。今の自分達には言葉なんていらない。ただ、静かに、涙を零せば良かったのだと。
「くそッ...まだ、やりてぇな...」
「まだ、やれることが、あったよな」
「お前らに落ち度は無かっただろ。皆、無かった」
「そーだね...まだ、やりたいなあ...」
できる、とは言えなかった。事実なのだから。明日からは、もうできない。コートにボールが打ち付けられる音も、お気に入りのシューズで走り回ることも。もう、できないんだ。そう考えると余計に涙を誘った。塩っぽさが頬を濡らし、これほどまでかと言っていいほど泣いた。どれだけ泣いても、あのコートには戻れないのだけれど。
落ち着いてきた頃、時刻はとっくに夕方を差していた。
「じゃ、俺らこっちだから」
と言うチームメイト二人に別れを告げて、そのまま帰路へつく。会話は、無かった。何か喋ればいつも通りになる。それでいいのかも知れない。だけど、そしたら、戻ってしまう気がするから。手に入れた気がしてしまうから。だから、何も、言わない。
「あ、岩ちゃん。じゃーね」
「....ん」
「岩ちゃん?」
キュッ、と服の裾を掴まれた。俺より背の低い彼は自然と上目遣いになる。今こんなことを思うのはいけないことだろうが、何だか物凄く、可愛かった。
なに?と自分にとっては優しく聞いたつもりなのだが、オドオドとした様子で口を開いたり閉じたりを繰り返していた。
「なに?どうしたの?」
もう一度聞くと、彼はやっと覚悟を決めた様に、震える唇を開いた。
「今日の夜、一緒に...いよう...」
途切れ途切れになるその言葉は今の俺にとっては理性を壊す材料でしか無かった。ゆっくりと、平静を保つ。
「おいかわ...?」
「う、うん?」
「だめ、か...」
「いや、ストップ。こっちとしては全然いいんだけど。むしろ今からgo to bedしたいんだけど。岩ちゃんさ」
そこで言葉を句切りと、不安そうな顔をして、首を傾げた。確かに彼の気持ちはこの上なく嬉しいものである。今崩れかけている心を「岩泉 一」という人物で直せるのなら本望である。けれど、
「岩ちゃんさ、無理してる?」
そう言うと、彼の顔は強張った。やはりそうか。俺にとっては興奮材料にしかならない言葉は彼にとっては不安材料にしかならない。それを、どれだけの勇気で言ったのだろうか。
考えれば考えるほど彼が愛しくなっていった。大丈夫なの?と聞くと、服を掴んでいた手が強くなる。
「岩ちゃん、俺は嬉しいけど...岩ちゃんは」
「俺ばっかりだから...」
「え?」
「俺ばっかり、貰って...。俺、なんもあげられてないから。だから.....ぅ...あ...」
俺を貰って、と。
細く小さな声で。
キスをした。貪るように、噛みつくように。汗ばんでいる肌をまさぐり、胸の突起につついてみると、ダメ、と既に泣きそうな顔で拒否された。
「えー、何で」
「外だろーが...ッ!」
「公衆プレイでも、俺は気にしないよ?」
「俺が気にする!」
彼にはハードルが高すぎたらしい。手を絡め、行こっか、と笑うと、緊張した顔で頷いた。出迎えたのは母親だった。様子を見て、何も言わなかったが、きっと敗戦したことを知っていた。そして、たぶん。俺達の関係も。
部屋に向かうと、彼はだんだんと顔が険しくなっていくのが分かった。座って、と促すと、大人しい様子でベットに座った。柔らかい感触に安心したのか、そのまま寝てしまいそうだったけれど。
「寝かせないよ?」
「ぅわっ...!」
覆い被さると、いつもは殴られるのに、今日はそれがない。疲れているのか、早く抱かれたいのか。分からなかったけど、此方としてはとても好都合だった。
もう、あの頃には戻れないのだけれど、それでも
あの瞬間だけは本物だと。そう信じた。
もう、一緒にあのチームで揃うことは無いけれど、あのチームで揃ったのは奇跡だと。そう信じた。
何かに縋らないと生きていけない俺達には、きっと完璧という言葉は似合わない。
誰かが誰かを補い、溝を埋めていく。
そうして、俺達なのだと。そう信じた。
ただ、もう、いれないから。
だから、今は、俺と君とで半分こ。
そうできると、今はただ願うばかりだった。
続くんです
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