二次創作小説(紙ほか)
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- ポケットモンスター 星と旋風の使徒
- 日時: 2017/01/28 12:25
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
- プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=22078
どうも、初めましての人は初めまして、そうでない人はこんにちは。パーセンターです。
えー、また始まってしまいました。四作目ですね。
今作は前作の完全続編となっております。
参照をクリックすれば、前作に飛びます。
レオの新しい冒険が、始まります。
※注意
・例によって例のごとくノープランです。
・パーセンターは大学生でございます。現在数々の課題に追われて更新頻度が非常に低いですがご了承ください。
・登場するポケモンが色々とややこしいです。詳しくは近々やるオリキャラ募集のときに説明しますが、簡単に言うと『プラチナのシンオウ図鑑に載っているポケモン+ベガでのみ登場するポケモン』となります。
これくらいですね。
内容としては、前作と同様、オリジナルの地方でのゲームのような冒険ものとなります。
それでは、よろしくお願いします。
登場人物
味方side >>25
N・E団side(ネタバレ注意)>>153
用語(ネタバレ注意)>>342
プロローグ >>1
シラハタウン&メガキタウン編
>>6 >>20 >>22
ハスバナシティ編
>>27 >>31 >>32 >>34 >>36
デンエイシティ編
>>39 >>40 >>41 >>42 >>45 >>46 >>50 >>53
アカノハシティ編
>>55 >>57 >>58 >>62 >>63 >>64 >>65 >>68 >>70 >>72 >>74 >>75 >>79 >>80
コウホクシティ編
>>81 >>82 >>83 >>84 >>87 >>88 >>89 >>93 >>94 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>106 >>107 >>108 >>111 >>112 >>115 >>116 >>117 >>118
ツクモシティ&スティラタウン編
>>121 >>122 >>123 >>126 >>127 >>128 >>129 >>130 >>133 >>138 >>145 >>152 >>157 >>158 >>159 >>162 >>163 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>171 >>172 >>173 >>175 >>176 >>177
シヌマシティ編
>>178 >>179 >>180 >>185 >>186 >>188 >>189 >>190 >>193 >>194 >>195 >>199 >>200 >>206 >>207 >>210 >>211 >>214 >>215 >>216 >>217 >>218 >>221 >>222 >>223 >>224 >>227 >>229 >>230 >>233
ヨザクラタウン編
>>234 >>235 >>236 >>242 >>243 >>246 >>247 >>248 >>251 >>254 >>255 >>256 >>257 >>258 >>259 >>260 >>261 >>264 >>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>273 >>274 >>275 >>276 >>277 >>280 >>281 >>283 >>284 >>285 >>288 >>289 >>290 >>291 >>294 >>295 >>296 >>297 >>298 >>299 >>300 >>301 >>303 >>304 >>305
テンモンシティ編
>>306 >>309 >>310 >>311 >>312 >>313 >>314 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>322 >>324 >>325 >>326 >>327 >>328 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>340 >>341
四天王&チャンピオン編
>>343 >>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>352 >>355 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>363 >>364 >>365 >>366 >>367 >>368 >>369 >>370 >>371 >>372 >>373 >>378 >>379 >>380
N・E団編
>>383 >>384 >>385 >>386 >>387 >>388 >>389 >>390
決戦編
零節 都市
>>391 >>392
一節 碧天
>>393 >>400
二節 緋天
>>394 >>401
三節 蒼天
>>395 >>404
四節 破天
>>396
五節 夜天
>>397
六節 輝天
>>398
七節 聖天
>>399
非公式(ベガ)ポケモン図鑑 >>5
- Re: 第百九十八話 神道 ( No.355 )
- 日時: 2016/08/07 18:52
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
レオの最後のポケモンは、エスパータイプに有利な悪タイプのディザソル。
対するヤグモのエースは、首の長い四足歩行のポケモン。白い二本の長い髭を生やし、首は体毛に覆われている。
そしてひときわ目を引くのは黒い尻尾。尻尾の先には、紅の瞳に鋭い牙を持つ丸い顔がある。
未来予知ポケモンのフォリキー。ノーマル・エスパータイプだ。
「最後はフォリキーか……厄介なポケモンだけど、ディザソルなら勝てる」
「ディザソルの実力に自信があるみたいね。その力、私に見せてちょうだい!」
「上等です! ディザソル、ぶち壊す!」
ディザソルが床を蹴って一気に飛び出し、一瞬のうちにフォリキーの懐まで飛び込み、額の鎌を叩きつける。
「随分と速いわね……! フォリキー、シグナルビーム!」
押し戻されたフォリキーの両眼が激しい光を放つ。
ビビッドンのような光線ではなく、残光を引きながら光を放つエネルギー弾がフォリキーの眼から撃ち出された。
「ディザソル、サイコカッター!」
額の二枚の鎌に念力を纏わせ、鎌を振り抜いてディザソルは二発のエネルギー弾を破壊、さらに、
「神速だ!」
ディザソルの姿が消える。風を切るような音が、フォリキーの周りで響く。
「ぶち壊す!」
「そうはいかないわ。ハイパーボイス!」
フォリキーの背後から攻撃を仕掛けようとするディザソルに対し、フォリキーは上を向いて大きく吼える。
空気の振動がフォリキーを中心として周囲に衝撃波を起こし、ディザソルを逆に吹き飛ばした。
「フォリキー、噛み砕く!」
フォリキーの黒い尻尾が伸びる。
吹き飛ぶディザソルに狙いを定めて、黒い尻尾が牙を剥く。
「ディザソル、神速で躱せ!」
宙を舞うディザソルの姿が消えた。
黒い尻尾は何もない空間を噛み砕き、ディザソルはレオの元まで一瞬で戻って来る。
「さあ、どうやって隙を作ろうかしら。フォリキー、連続でシグナルビーム!」
フォリキーの両眼が激しく光り、点滅するエネルギー弾が立て続けに撃ち出される。
「ディザソル、掻い潜って近づけ! ぶち壊す!」
エネルギー弾の弾幕の中にディザソルは突っ込んでいく。
襲い来るエネルギー弾を飛び越え、掻い潜り、ディザソルは少しずつフォリキーとの距離を詰めていく。
「フォリキー、ハイパーボイス!」
「ディザソル、躱して火炎放射!」
フォリキーが吼え、空気を振動させて衝撃波を飛ばすが、ディザソルは大きく跳躍してそれを躱すと、頭上から灼熱の炎を噴き出す。
しかし、
「フォリキー、噛み砕く!」
フォリキーの尻尾が伸び、尻尾の先の顔が口を開く。
上空から降ってくる炎に喰らいつくと、たちまちその炎を食べてしまった。
「っ!?」
「隙が出来たわね。シグナルビーム!」
尻尾の顔の瞳から、エネルギー弾が放出される。
空中にいるディザソルを吹き飛ばし、地面へと叩き落とした。
「フォリキーの尻尾は、命あるものは食べられない代わりに、闇や空間を削り取って食べてしまうのよ。飛び道具を食べるくらい、造作もないわ」
ヤグモの言葉に呼応し、フォリキーの尻尾が悍ましい雄叫びを上げる。
「さあ、勝負はここからよ。フォリキー、噛み砕く!」
再び尻尾が伸び、黒い顔が鋭い牙を剥いてディザソルに迫る。
「っ、ディザソル、ぶち壊す!」
咄嗟にディザソルは鋭い爪を構えた前脚を突き出し、尻尾を弾き返すと、
「サイコカッター!」
二枚の鎌に念力を纏わせ、鎌を振り抜いて二枚の念力の刃を飛ばす。
「フォリキー、サイコキネシス!」
対してフォリキーは強い念力を放つ。
二枚の刃に念力を掛け、その念力を操って刃を捻じ曲げ、破壊する。
「ディザソル、火炎放射!」
その隙にフォリキーの横へと回り、ディザソルは灼熱の炎を噴き出すが、
「噛み砕く!」
フォリキーの黒い尻尾が伸び、またしても炎を食べてしまう。
「そこだディザソル、ぶち壊す!」
尻尾の顔が炎に噛み付いた瞬間に、ディザソルが飛び出す。
フォリキーとの距離を一気に詰め、前脚を突き出してフォリキーを吹き飛ばした。
「フォリキー本体は尻尾で身を守っている。なら尻尾が動いた瞬間に攻撃すれば、身を守るものはありませんよね!」
「なるほど、上手く考えたわね。だったら、次からはそれも対策させてもらうわよ。フォリキー、ハイパーボイス!」
立ち上がったフォリキーが天高く咆哮し、空気を振動させて衝撃波を周囲へと放つ。
「ディザソル、神速で回避!」
一瞬でディザソルはフォリキーの頭上へと飛び、衝撃波を回避。
「サイコカッター!」
「シグナルビーム!」
ディザソルが念力を纏わせた鎌を振って二枚の念力の刃を飛ばし、対してフォリキーは両眼から激しい光を放つエネルギー弾を飛ばす。
お互いの技が激突し、爆発を起こす。
「噛み砕く!」
フォリキーが尻尾を伸ばし、さらにその尻尾を大きく振る。
黒い顔が一振り目で爆煙を喰らい尽くし、二振り目でディザソルの脚へと噛み付き、さらに、
「叩きつけなさい!」
尻尾を床へと振り下ろし、捕らえたディザソルを床へと叩きつけた。
「煙を使ってもフォリキーからは逃れられないわよ。邪魔するものは全て食べ尽くし、確実に標的を狙う、それが私のフォリキーよ」
地面に叩きつけられたディザソルは、まだ何とか起き上がる。
(流石は四天王のエースだ、まるで隙がない。尻尾で火炎放射とサイコカッターは防がれるし、ハイパーボイスがある以上神速での奇襲も効かない。どうする……技を躱して、その隙を突いていくしかないか……?)
頭の中で策を巡らすレオだが、ヤグモはその時間を与えてはくれない。
「フォリキー、シグナルビーム!」
「っ、ディザソル、躱してぶち壊す!」
フォリキーが両眼を光らせ、激しい光を放つエネルギー弾を撃ち出す。
ディザソルは横に飛んで弾を躱すと、額の鎌を構えてフォリキーへと突っ込んで行くが、
「ハイパーボイス!」
フォリキーの咆哮と共に放たれる衝撃波によって、ディザソルの一撃はフォリキーには届かない。
「ディザソル、神速!」
ハイパーボイスを撃ち終わった直後を狙って、ディザソルは神がかった速度でフォリキーへと激突する。
「逃さないで。フォリキー、シグナルビーム乱射!」
フォリキーの両眼と尻尾の顔の両眼が光り、四方八方へとエネルギー弾を発射する。
「っ、ディザソル、神速で回避!」
フィールドを飛び回ってシグナルビームを躱すディザソルだが、ろくに狙いも定めず放たれた無数のエネルギー弾は逆に回避が難しく、回避し続けていたディザソルもやがて弾を浴びてしまう。
「そこね。フォリキー、噛み砕く!」
ディザソルの動きが止まった瞬間を狙って、フォリキーは黒い尻尾を伸ばす。
鋭い牙を剥いた黒い顔が、ディザソルの脚を狙う。
だが、
(……そうだ! その手があった!)
ここでレオは気づいた。フォリキーへ、確実に攻撃を当てる方法がある。
ディザソルの前脚に、鋭い牙が食い込んだ。
その刹那。
「今だ! ディザソル、火炎放射!」
ディザソルが、灼熱の炎を噴き出した。
「無駄よ。フォリキー、噛み——」
ここまで言ってヤグモは気付く。
尻尾の顔は、ディザソルの脚に食らいついている。
つまり。
防御が間に合わない。
「しまった……! しょうがない、フォリキー! 一発耐えて、ディザソルを放り投げなさい!」
灼熱の業火が、フォリキーを飲み込む。
身体中を焼かれていくが、それもフォリキーは耐えた。
しかし、
「遅いですよ! ぶち壊す!」
額の鎌を、思い切りディザソルは振り下ろす。
狙い目は、尻尾の黒い顔。その額へと、ディザソルは二枚の鎌を力一杯叩きつけた。
黒い顔は悍ましい悲鳴をあげ、そのまま動かなくなった。
「これで噛み砕くは使えませんね。後は本体を叩くだけ!」
「っ、一本取られたわ。だけど、ディザソルも体力は残り少ないわよね。そこまで追い込めば、後はシグナルビームとハイパーボイスだけで充分よ」
どちらの言い分も、間違ってはいない。
次に攻撃を当てた方が、勝つ。
「ディザソル、神速だ!」
ディザソルの姿が消える。
神がかった速度でフィールドを縦横無尽に飛び回り、フォリキーを撹乱する。
「無駄よ! フォリキー、吹き飛ばしなさい! ハイパーボイス!」
フォリキーが天高く咆哮し、空気を揺らして、周囲に衝撃波を起こすが、
「ディザソル、飛べ!」
大きく跳躍し、ディザソルは衝撃波の届かないところまで飛び上がった。
「行けディザソル! 最大パワーでぶち壊す!」
「撃墜しなさい! フォリキー、連続でシグナルビーム!」
前脚と額の鎌を構え、落下の勢いもつけてディザソルはフォリキーへと襲い掛かる。
対するフォリキーはただディザソル一点を見据えて、これでもかと言わんばかりに激しい光を放つエネルギー弾を撃ち出す。
しかし、落下してくるディザソルの方が一撃が重かった。
飛来する無数のエネルギー弾を前脚の鋭い爪で全て打ち破り、ディザソルの額の鎌がフォリキーを切り裂いた。
効果抜群の一撃を耐えるだけの体力は、もうフォリキーにはない。
フォリキーの体がふらつき、静かに床へと崩れ落ちた。
「レオ君、君は本当に相手の隙を見つけるのが上手ね。悔しいけど、私の負けよ」
いかにも悔しそうに、しかし力を出し切ってどこかすっきりしたような口調で、ヤグモは話す。
「ヤグモさんは四天王ですからね。上手く隙を見つけないと、ただ正面からぶつかるだけでは勝てませんから」
「私、君みたいなトレーナー、嫌いじゃないわよ。レオ君、気に入ったわ。君の力がどこまで通じるか、もっと見てみたいわね。さ、次の部屋にお進みなさい」
「ありがとうございます。次の相手にも、勝ってみせますよ!」
四天王二番手、ヤグモに勝ったレオは、次なるフロアへと進んでいく。
- Re: 第百九十九話 雪ん子 ( No.356 )
- 日時: 2016/08/09 06:46
- 名前: パーセンター (ID: VYLquixn)
「ああそうだ、レオ君」
次の部屋に進もうとするレオを、ヤグモが呼び止める。
「どうしたんですか?」
「言い忘れてた。次の部屋に入る前に、これを着ていくといいわ」
そう言ってヤグモはレオに厚いセーターを手渡す。
「?」
「まぁあまり詳しくは言わないけど、これを着てから次のフロアに行くといいわ。この先も、頑張ってね」
「は、はい! ありがとうございます」
何だかよく分からないが、とりあえずセーターを受け取り、レオは次のフロアへと進む。
「寒っ!」
三番目の部屋に入るなり、レオは開幕一番そう叫ぶ。
フィールドは雪に包まれ、特に周囲は積もり積もった雪の壁に覆われている。
さらに、少しずつではあるが天井からは雪が降っている。
ヤグモから受け取ったセーターを着ているが、それでも寒い。
そして。
雪で覆われたフィールドの向こう側には、例によって人が立つ。
「アハハ! よく来たね、レオおにーさん! ここに入ってきたときから、ずっと待ってたよ!」
フィールドの向こう側に立つのは、レオよりも幼い少女だった。
「……!?」
「あれ? あたしみたいなちっちゃい子どもが四天王だからって、驚いたって顔してるね!」
その少女は無邪気にキャッキャと笑う。
「自己紹介しなくっちゃね! あたしは氷ポケモン大好き、四天王のミトリ! ちっちゃいからって油断しないでよね。イダおじさんよりも、ヤグモおばさんよりも、あたしは強いんだからね!」
四天王ミトリ。
水色のボブカットの髪に赤い花の髪飾りを付け、この寒いフィールドだというのに雪の描かれた水色の浴衣を着ている少女だ。
ホクリク地方では言うまでもなく、おそらく他の全ての地方を見ても最年少の四天王だろう。
「正直驚いたよ。ジムリーダーならともかく、自分よりも年下の子がまさか四天王をやってるなんて」
「でしょでしょ? それじゃあ次は、ポケモンバトルで、あたしの強さに驚いてもらうんだから!」
「負けないぜ。僕のポケモンの力で、逆に君をあっと言わせてやる!」
その言葉を引き金に、二人は同時にポケモンを繰り出す。
「頼んだぜ、レントラー!」
「やっちゃえ、オニゴーリ!」
レオの一番手は、氷タイプに複数の有効打を持つレントラー。
対するミトリのポケモンは、氷で覆われた岩で出来た鬼の顔面のようなポケモン、オニゴーリだ。
「それじゃあ行くぜ! レントラー、ギガスパーク!」
最初に動いたのはレントラー。
大きく吼え、電撃を一点に集めて巨大な電撃の砲弾を作り上げ、それをオニゴーリへと放つ。
「オニゴーリ、アイアンヘッド!」
対して、オニゴーリは全身を鋼のように硬化させて、砲弾へ突っ込んでいく。
鋼の頭突きをぶちかまし、砲弾を強引に破壊してしまった。
「なんてパワーだ……だけどパワーなら負けないぜ。レントラー、馬鹿力!」
力のリミッターを外し、レントラーは全力で突撃していく。
「オニゴーリ、アイアンヘッド!」
再びオニゴーリは全身を硬化させ、突撃してくるレントラーに立ち向かっていく。
双方の一撃が激突する。威力は互角。
「レントラー、氷の牙!」
お互いに一旦退いた直後、レントラーは牙に細く鋭い氷を纏う。
寒いフィールドが味方し、氷の牙がいつもより大きい。雪の地面を蹴って飛び出し、オニゴーリに牙を剥くが、
「オニゴーリ、アクアボルト!」
対するオニゴーリは電流の流れる水を噴射する。
水は牙によって凍らされるが、やはり威力は互角のようで、レントラーの氷の牙もそこで途絶えてしまう。
「それじゃあこっちから行くよ! オニゴーリ、凍える風!」
オニゴーリが口を開き、冷気を乗せた風を放つ。
ダメージは少ない。しかしレントラーを急速に冷やし、足元から徐々に凍えさせる。
「っ、レントラー、ギガスパーク!」
レントラーが全身から電気を生み出し、それを一点に集めて巨大な電撃の砲弾を作る。
「オニゴーリ、躱して氷柱落とし!」
砲弾が撃ち出されるが、オニゴーリは素早く宙に浮かび上がってそれを躱すと、レントラーの頭上に冷気を放つ。
冷気は空気中で急速に大きな氷柱を作り上げ、無数の氷柱がレントラーへと降り注ぐ。
「っ、レントラー、頭上にギガスパーク!」
上を向いて再び電撃の砲弾を放ち、レントラーは無数の氷柱を防ぎ切る。
しかし、
「隙ありぃ! オニゴーリ、アイアンヘッド!」
その隙を狙って、全身を鋼のように硬化させたオニゴーリが突っ込んでくる。
「回避は間に合わないか……レントラー、馬鹿力!」
オニゴーリの激突を相殺すべく、レントラーは力のリミッターを外して全力の突撃を仕掛ける。
だが。
「……えっ?」
レントラーの突進に勢いがつかない。
走るスピードが最初の馬鹿力の時よりも遅くなっているのだ。
当然威力も弱まり、オニゴーリとレントラーが正面から激突するが、オニゴーリの頭突きに押し負け、レントラーは吹き飛ばされてしまう。
「凍える風は相手のポケモンを冷やして、スピードを奪うのよ。これを受けちゃったら、突っ込んでくる時も技を避ける時も遅くなっちゃうんだから! さ、どうする?」
楽しそうにミトリは笑い、
「ま、考える時間なんてあげないけどね! オニゴーリ、アクアボルト!」
レントラーに向けて、オニゴーリは電流を含んだ水を噴射する。
「躱……せないのか。だったらレントラー、氷の牙!」
レントラーは牙に長く鋭い氷を纏わせ、放たれる水に牙をぶつけ、水を凍らせてしまう。
「どんどん行くわよー! オニゴーリ、凍える風!」
再びオニゴーリが冷気を込めた風を放ってくる。
再びレントラーの体を凍えさせ、レントラーのスピードを落としていく。
「さあ、どうやって避ける? オニゴーリ、アイアンヘッド!」
全身を鋼のように硬化させ、オニゴーリが突っ込んで来る。
対して。
「考えるまでもないぜ。策なんて簡単に言う思い浮かぶぞ」
レオが浮かべたのは、余裕の笑み。
「レントラー、怒りの炎!」
レントラーが憤怒の感情のような荒れ狂う業火を放つ。
フィールドの雪を容易く溶かしていき、鋼鉄の硬さとなって突撃してきたオニゴーリを逆に炎に飲み込んだ。
さらにレントラーの周囲で燃える炎がレントラーの体を暖め、足元にまとわり付いた氷を溶かし、スピードを元に戻した。
「こういう時のために炎技を隠しておいて正解だったぜ。普通に撃ってもアクアボルトで消されてしまうし、警戒もされるだろうしな」
「うぐぅ、おにーさんなかなかやるねえ。だけど」
ミトリがそう言った直後。
周りを覆う炎を吹き飛ばし、オニゴーリが再び浮上する。
「炎技一発でやられるほど、私のオニゴーリは弱くないよ。これくらいへっちゃらなんだから!」
流石にへっちゃらではないだろうが、それでも確かにオニゴーリはまだまだやる気のようだ。
「行くよオニゴーリ! 反撃の氷柱落とし!」
オニゴーリがレントラーの頭上へと冷気を放つ。
冷気は空気中で急速に固まり、無数の大きな氷柱となって降り注ぐ。
しかも、氷柱は先ほどよりも大きい。
「さっきは攻撃を誘うための氷柱落としだったけど、今回のは本気よ! オニゴーリ、アイアンヘッド!」
さらにオニゴーリは氷柱がレントラーに命中しないうちから、体を鋼のように硬化させて突撃を仕掛ける。
「片方を防げばもう片方の攻撃の餌食か! だったらレントラー、馬鹿力!」
対してレントラーは突っ込んで来るオニゴーリにフルパワーで向かっていく。
前方へと飛び出して氷柱を躱し、オニゴーリの鋼の頭突きと渾身の力を込めて激突する。
やはり威力は互角で、お互いに激しくせめぎ合うが、
「オニゴーリ、アクアボルト!」
不意にオニゴーリが体を引き、レントラーは勢い余って体勢を崩す。
そのレントラーに対して、オニゴーリは電気を含んだ水を噴射する。
水をまともに浴びたレントラーは、痺れて動きを止めてしまう。
「今よ! オニゴーリ、氷柱落とし!」
その隙を狙って、オニゴーリは冷気を打ち上げる。
冷気は急速に固まって無数の氷柱となり、雨のようにレントラーに降り注ぐ。
「っ、僕のレントラーを甘く見るなよ! 馬鹿力!」
レントラーがカッと目を見開き、渾身の力を込めてすぐ近くにいたオニゴーリにタックルをぶちかまし、吹き飛ばした。
だがその直後、無数の氷柱がレントラーへと突き刺さる。
「オニゴーリ、やっぱり動きを止めよう! 凍える風!」
吹き飛ばされて頭から雪の壁に突っ込んだオニゴーリが雪から抜け出し、冷気を込めた凍える風を放つ。
「いただき! レントラー、地面に氷の牙!」
ここでレントラーは長く鋭い氷の牙を地面へと突き刺す。
レントラーの十八番、氷の衝撃波だ。
しかも、今回はただの衝撃波ではない。凍える風によって力を増した氷の衝撃波がオニゴーリを捉え、吹き飛ばした。
「そんな攻撃の仕方があるなんて!? すっごぉい!」
驚き、しかしそれを楽しむように、ミトリが声を上げる。
「決めるぞ! レントラー、馬鹿力!」
「こっちもよ! オニゴーリ、アイアンヘッド!」
レントラーが力のリミッターを外して突撃し、オニゴーリも全身を鋼の如く硬化させて突貫する。
お互いの渾身の一撃が正面から激突。
競り合った末に爆発し、吹き飛ばされて、雪の中に突っ込み、双方共に戦闘不能となった。
「レントラー、よくやった。戻って休んでてくれ」
「オニゴーリ、おつかれさま! いいバトルだったね」
レオとミトリ、お互いにそれぞれのポケモンを戻し、次のボールを取り出す。
- Re: 第二百話 雪霊 ( No.357 )
- 日時: 2016/08/10 09:22
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: w4lZuq26)
「頼んだぜ、トゲキッス!」
「やっちゃえ、ユキメノコ!」
レオの次なるポケモンはトゲキッス。氷タイプには弱いが、一方で氷タイプへの打点を二つも持っている。
対してミトリのポケモンは、振袖を纏った雪女のようなゴーストポケモン、ユキメノコ。先ほどのオニゴーリとは対を成すポケモンだ。
「ユキメノコか。波動弾は通らないけど、大文字はそのまま入るな。向こうからもゴースト技は入らないし」
トゲキッスかパンプッチかでレオは迷っていたが、ユキメノコ相手となればトゲキッスで正解だっただろう。
「あれれー、飛行タイプのトゲキッス? 氷タイプには不利だけど、策でも?」
「勿論。何の策もなしに、飛行タイプは出さないぜ」
「そりゃそうよねー。じゃあ行くわよ! ユキメノコ、冷凍ビーム!」
ユキメノコが先手を取り、冷気を込めた光線を撃ち出す。
「トゲキッス、躱して大文字!」
華麗に飛び回ってトゲキッスは冷気の光線を躱すと、激しく燃え盛る大の字型の炎を放つ。
「やっぱり炎技があるんだね。でも、ユキメノコ、水の波動!」
ユキメノコの翳した手に水の力が溜め込まれ、掌から水の弾が放出される。
大文字の核に水の波動が命中し、炎は掻き消されてしまう。
「こんなのはどう? 十万ボルト!」
大文字を防いだユキメノコは、さらに身体中から高電圧の強力な電撃を放つ。
「っ、電気技か! トゲキッス、サイコバーン!」
対してトゲキッスは念力を体内に溜め込み、それを爆発させて衝撃波を起こし、電撃を防ぐと、
「エアスラッシュ!」
ユキメノコの頭上を飛び回り、四方八方から空気の刃を飛ばす。
「ユキメノコ、もう一度十万ボルト!」
しかしユキメノコは周囲に高電圧の電撃を放ち、空気の刃を全て防ぎ切ってしまう。
「ユキメノコ、水の波動!」
「トゲキッス、波動弾で相殺だ!」
ユキメノコが掌から水の弾を放ち、トゲキッスは体の奥から波動の力を生み出し、それを一点に集めて念弾を放つ。
二つの波動の弾がぶつかり合い、白い爆煙を巻き起こす。
「チャンスよユキメノコ! 冷凍ビーム!」
煙に姿を消し、ユキメノコはゴーストタイプらしく気配を消してトゲキッスへと接近、凍える冷気の光線を放ってトゲキッスを吹き飛ばす。
「っ、いつの間に……! トゲキッス、大文字!」
「させないわよぉ! ユキメノコ、水の波動!」
トゲキッスが大の字型の炎を吹き出すが、ユキメノコは水を凝縮した弾を放ち、炎をかき消す。
「十万ボルト!」
「躱してサイコバーン!」
そのままユキメノコは高電圧の電撃を放つが、それを躱してトゲキッスは体に念力を溜め込み、爆発させて念力の衝撃波を起こし、ユキメノコを吹き飛ばす。
「よし! トゲキッス、続けて大文字だ!」
「ユキメノコ、来るよ! 水の波動!」
吹き飛ぶユキメノコを狙って、トゲキッスが大の字型の燃え盛る炎を放つが、ユキメノコは飛ばされながらも水の弾を投げ飛ばす。
大文字の中央に炸裂して炎を止めるが、体勢が中途半端だった分威力が弱く、ユキメノコは残った炎を浴びてしまう。
「畳み掛けろ! トゲキッス、エアスラッシュ!」
「これくらいの火の粉なら問題ないわよ! ユキメノコ、躱して十万ボルト!」
トゲキッスが飛び回って無数の空気の刃を放つが、ユキメノコは空中を滑るように動き回って刃を躱すと、両掌から高電圧の強い電撃を撃ち出す。
「くっ、トゲキッス、これは躱せ!」
咄嗟にトゲキッスは横へ逸れるが、電撃が翼を掠めた。
「逃しちゃダメ! ユキメノコ、水の波動!」
さらに空中を滑ってユキメノコはトゲキッスの背後に回り、掌から水の弾を放ってトゲキッスを雪の床へと叩き落とす。
「よぉーし! ユキメノコ、冷凍ビーム!」
地面へと落ちていくトゲキッスへ、ユキメノコは口を開いて冷気の光線を撃ち出す。
「まずい、トゲキッス、立て直せ! 急上昇だ!」
凍える光線がトゲキッスへと迫る。
直撃するその寸前、トゲキッスは強引に体勢を整え、間一髪で冷気の光線を躱し、
「サイコバーン!」
念力を溜め込みながら一気に上昇、飛び上がって来たところを狙おうとしていたユキメノコへと念力の衝撃波を放ち、逆に吹き飛ばす。
「危なかった……隙あらば容赦なく狙ってくるな。トゲキッス、落ち着いて行くぞ。ここから仕切り直しだぜ」
「おにーさん、なかなかやるねぇ。今のタイミングで攻撃を指示してくるなんてさすがだよ」
吹き飛ばされたユキメノコが、再びミトリの元へ戻って来る。
「いっくよー、ユキメノコ、水の波動!」
「トゲキッス、波動弾で相殺!」
ユキメノコが手にした水の弾を投げ飛ばし、トゲキッスは波動の力を凝縮した念弾を撃つ。
二者の波動が激突し、再び白い爆煙が上がる。
「焼き払えトゲキッス! 大文字!」
煙全体を巻き込むように、トゲキッスは大の字型に燃え盛る炎を放つ。
「なるほどー、さっきのを警戒してるね? だけど」
炎が煙を突き抜けるが、ユキメノコに命中した気配はなく、
「こっちだよ! ユキメノコ、十万ボルト!」
今度は積もる雪に隠れたユキメノコがトゲキッスのすぐ横に現れ、高電圧の強い電撃を放つ。
激しい電撃を浴び、トゲキッスは撃墜されて雪の積もる床へと落ちる。
「ユキメノコ、冷凍ビーム!」
雪の上に落ちたトゲキッスへ、ユキメノコは接近しながら凍える冷気の光線を放つ。
「させるか! トゲキッス、地面に大文字だ!」
床に伏したまま、トゲキッスは真下へ炎を放つ。
炎は雪を溶かしながら広がり、トゲキッスを中心として大の字型の火柱が上がった。
「やばいっ! ユキメノコ、避けて!」
慌てて冷気の光線を中断するユキメノコだが、突然の反撃に反応しきれずに、火柱を受けて宙に打ち上げられる。
その間にトゲキッスは体勢を立て直し、再び浮上し、
「エアスラッシュ!」
力強く羽ばたき、大きな空気の刃を飛ばす。
「ユキメノコ、水の波動!」
吹き飛ばされながらも、ユキメノコは掌から凝縮した水の弾を放つ。
空気の刃がユキメノコを切り裂くと同時、水の弾がトゲキッスに直撃した。
「トゲキッス、大文字!」
無理やり体勢を立て直して、トゲキッスは激しく燃え盛る大の字型の業火を吹き出す。
「ユキメノコ、避けてからトゲキッスに近づいて!」
不規則な動きでユキメノコは大の字型の炎を躱すと、雪の中へ姿を消し、気配を完全に殺して密かにトゲキッスへと忍び寄る。
「気配が掴めない……ならトゲキッス、炙り出せ! サイコバーン!」
体内に念力を溜め込み、それを爆発させてトゲキッスは周囲に衝撃波を起こす。
しかし、
「今だよユキメノコ! トゲキッスを掴んで!」
雪の壁の中からユキメノコが現れ、念力の衝撃波を躱すと、トゲキッスの翼を掴んだ。
「冷凍ビーム!」
間髪入れずに、翼を掴んだユキメノコの手から凍える冷気の光線が撃ち出される。
抗えるはずもなく、トゲキッスは氷の光線を受け、床へと叩き落とされた。
「トゲキッス!?」
翼と胴体を凍り付かせ、トゲキッスは戦闘不能となって床に倒れていた。
「トゲキッス、お疲れ様。相性の悪いポケモン相手に、よく頑張ってくれた」
レオはトゲキッスをボールに戻すと、ミトリの方に視線を戻す。
「タイプ相性だけでバトルは決まらないっていうけど、やっぱりタイプ相性って大事だよね。そのトゲキッスも強かったけど、ユキメノコとの相性は悪かったかな?」
「あんまり認めたくはないけど、その通りだった。トゲキッスはよく頑張ってくれたよ」
それなら、とレオは続け、
「次はこいつしかいないな。頼んだぜ、ディザソル!」
レオの次なるポケモンは、悪タイプのディザソル。
今度はセオリー通りのチョイスだ。タイプ相性で有利、さらにユキメノコにもスピードで負けていない。
「さあ、あたしのユキメノコに勝てるかな?」
「勝つさ」
レオとミトリ、まだまだ余裕の表情を浮かべて、バトルを進めていく。
- Re: 第二百一話 雪玉 ( No.358 )
- 日時: 2016/08/11 12:34
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
「ディザソル、火炎放射!」
まずはディザソルが動く。
大きく息を吸い込んで、灼熱の業火を吹き出す。
「ユキメノコ、水の波動!」
対してユキメノコは手にした水の弾を投げつけ、業火を打ち消す。
「冷凍ビーム!」
さらにユキメノコは凍える冷気と共に氷の光線を放つが、
「ディザソル、躱してサイコカッター!」
瞬時にディザソルは冷気の光線を躱し、一気にユキメノコとの距離を詰め、念力を纏った額の鎌でユキメノコを切り裂く。
「っ、速い! ユキメノコ、十万ボルト!」
「ディザソル、神速!」
ユキメノコが周囲へと高電圧の電撃を撃ち出すが、対するディザソルは神がかった速度でユキメノコの周りを縦横無尽に飛び回り、電撃を躱し、
「ぶち壊す!」
ユキメノコの背後に回るが早いか、一瞬で額の鎌を振り下ろす。
だが。
「ユキメノコ、道連れ!」
ディザソルが鎌を振り下ろすほんの一瞬前、ユキメノコの瞳が妖しく光る。
その瞬間にディザソルの二対の鎌がユキメノコを捉えた。
トゲキッス戦でのダメージも重なり、ユキメノコは戦闘不能となって倒れてしまう。
だが。
構えを解いたディザソルが、その直後、雪の積もる床に崩れ落ちた。
「っ……道連れを持っていたのか……!」
道連れはその技を撃った直後に相手に倒されると、その相手を戦闘不能にする極めて厄介な技だ。
「ユキメノコ、おつかれさま! すごい活躍ぶりだったよ!」
「ディザソル、ありがとう。くっ、油断したな……」
お互いにそれぞれのポケモンをボールへと戻す。
ここでディザソルを失ったのはレオとしてはかなり大きい。勿論、悪い意味でだ。
手持ちのナンバー2が何も出来ずにやられたのも大きいが、それだけではない。レオのポケモンは残り二体なのに対し、ミトリにはまだポケモンが三体残っているのだ。それも、無傷で。
(完全に油断してた。最後の技はトゲキッスに効かないゴースト技だと勝手に決めつけてたけど、そうか、道連れか……ユキメノコなら充分あり得る選択肢だったな……)
だがやってしまったものは仕方がない。ここから切り替えて、戦っていくしかないのだ。
「……大丈夫だ。僕にはまだ二体のポケモンが残ってる。この二体でも充分すぎるほど強い。やってやるさ!」
「そうこなくっちゃ! ここからどんなバトルをするのか、あたしに見せてよ!」
レオとミトリが、同時に次のポケモンを繰り出す。
「頼んだぜ、ヘラクロス!」
「やっちゃえ、アスイーツ!」
レオのポケモンは、氷タイプに有利な格闘タイプを持つヘラクロス。
対するミトリの三番手は、ソフトクリームのアイスの部分に小さい足と手、顔をつけたようなポケモン。コーンのような尻尾があり、チェリーに似た触覚も付いている。
氷菓ポケモンのアスイーツ。見た目通りに氷タイプだ。
「行くぞヘラクロス! マグナムパンチ!」
ヘラクロスが翅を広げて飛翔する。
拳を握り締めて突貫し、ミサイルのように勢いを込めて拳を突き出す。
「アスイーツ、躱してアイスボール!」
だがアスイーツは身軽な動きでヘラクロスの拳を躱すと、手足と顔を引っ込め、ヘラクロスとは逆の方向に転がっていく。
「……?」
不可解な動きに思考が止まるレオだったが、その狙いはすぐに分かった。
転がっていったアスイーツが、そのままUターンしてヘラクロスの元へと戻って来たのだ。
床に積もった雪を纏い、大きな雪玉となって。
「なるほど、それが狙いか! だけど、ヘラクロス、メガホーン!」
ヘラクロスが硬い角を突き出し、アスイーツへと突っ込んでいく。
大きな雪玉と化したアスイーツに激突し、持ち前のパワーでアスイーツを覆う雪を砕いた。
「シャドークロー!」
続けざまにヘラクロスは手に黒く鋭い影の爪を纏わせ、両腕を振り抜いてアスイーツを切り裂く。
「やるねー! アスイーツ、サイコキネシス!」
アスイーツが起き上がり、瞳を光らせて強い念力を発生させる。
念力をヘラクロスに掛けて動きを操り、投げ飛ばして雪の壁に叩きつけた。
「アイスボール!」
そしてヘラクロスとは逆の方向に転がっていく。
雪を纏ってどんどん大きくなっていき、Uターンして大きな雪玉となってヘラクロスに襲い掛かる。
「ヘラクロス、メガホーン!」
再びヘラクロスは翅を広げ、硬い角を構えて突っ込んでいく。
しかし、
「アスイーツ、避けて!」
突如、雪玉の軌道がずれた。
ヘラクロスとの正面衝突を避けてその横を猛スピードで通り過ぎ、より多くの雪を纏ってさらに大きくなっていく。
そしてまたUターンし、今度こそヘラクロスを狙う。
「っ、でかい! ヘラクロス、マグナムパンチ!」
拳を握り締め、ヘラクロスは翅を広げて突撃しながら、ミサイルの如き勢いで両拳をアスイーツへと叩き込む。
だが巨大な雪玉となったアスイーツの勢いの前に押し負け、逆にヘラクロスは弾き飛ばされてしまう。
「今だよアスイーツ! 熱湯!」
巨大な雪玉が砕け、中からアスイーツが飛び出し、煮え滾る高温の湯をヘラクロスへと浴びせる。
「続けてシグナルビーム!」
さらにアスイーツは激しい光を放つ光線を放つが、
「させるか! ヘラクロス、シャドークロー!」
ヘラクロスが手に影の爪を纏い、それを振るって光線を切り裂き、追撃を防いだ。
しかし、体勢を立て直した直後、ヘラクロスが急に膝をついてしまう。
「どうした、ヘラクロス!?」
再び立ち上がるが、その腹部には火傷の跡。
どうやら、先ほどの熱湯で火傷状態になってしまったようだ。
「熱湯の追加効果で火傷したみたいね! チャンスよアスイーツ、サイコキネシス!」
アスイーツが強い念力を生み出し、ヘラクロスに念力を掛ける。
念力を操作し、ヘラクロスの動きを操って真上に投げ飛ばし、
「シグナルビーム!」
体勢が整わないうちに、ヘラクロスへ激しい光を放つ光線を撃ち出す。
「っ、ヘラクロス、ストーンエッジ!」
ヘラクロスの周囲に白い光が迸る。
光は無数の尖った岩を形作り、一斉にアスイーツへと撃ち出される。
シグナルビームを打ち破り、残った岩がアスイーツへ襲い掛かるが、
「アイスボール!」
手足と顔を引っ込め、高速回転し、アスイーツは岩を弾いてしまう。
そしてまた回転しながら、雪を纏って突き進む。
ヘラクロスには目もくれず、雪原の上を駆け抜け、果てにはフィールドを飛び出し、雪の壁の上を走り、アスイーツが纏う雪はどんどん大きくなっていく。
「そろそろだね! アスイーツ、やっちゃえ!」
さらに巨大な雪玉と化したアスイーツが、ようやくヘラクロスへと向かってくる。
先ほどマグナムパンチを弾き返した時よりも、さらに大きな雪玉だ。もはやヘラクロスにこの雪玉を破る手段はない。
しかし。
それはあくまでも、ミトリの考えでしかない。
「ヘラクロス、地面にメガホーン!」
アスイーツを前にして、ヘラクロスは雪の積もる床へ自慢の硬い角を突き刺した。
「何をする気かわかんないけど、火傷したヘラクロスじゃ、今のアスイーツは——」
「そのままぶん投げろ!」
ヘラクロスの角に、途轍もない力がこもる。
床に積もる雪ごと、最大級の雪玉と化したアスイーツを、宙へ投げ飛ばしてしまった。
アスイーツを纏う雪玉が崩れ、アスイーツは天高く吹き飛ばされる。
「ヘラクロス、マグナムパンチ!」
翅を広げ、アスイーツを追ってヘラクロスは急上昇する。
吹っ飛ぶアスイーツのその上を取り、両拳をミサイルの如き勢いで突き出し、アスイーツを床へと叩き落とした。
流星のようにアスイーツは落下し、床へと激突。
「普通のポケモンなら、火傷状態になると攻撃力は下がる。だけど、僕のヘラクロスの特性は根性。状態異常になれば、逆に攻撃力が上がるんだ」
床に叩きつけられたアスイーツは、目を回して戦闘不能になっていた。
「アスイーツ、おつかれさま! 休んでてね」
アスイーツをボールに戻すと、ミトリは楽しそうな表情を浮かべてレオの方に向き直る。
「さすがだね! ポケモンの特性や特徴までちゃんと考えて戦ってる。そのヘラクロスの特性が根性なのもちょっとつらいかな」
だけど、とミトリは続け、
「火傷状態になったことに変わりはないってことだから、火傷はヘラクロスの体力を削り続けるよ。攻撃は上がってるけど、その状態であたしの次のポケモンに勝てるかな?」
「勿論。こいつなら、やってくれるさ」
レオのその言葉を聞き、ミトリはにんまり笑うと、
「それじゃあ、次はこの子かな」
浴衣の袖から、次なるモンスターボールを取り出す。
- Re: 第二百二話 雪牙 ( No.359 )
- 日時: 2016/08/12 11:55
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: UwoqfYs/)
- プロフ: 気づけば既に200話を超えていました。
「やっちゃえ、マンムー!」
ミトリの四番手は、巨大な獣のようなポケモン。
目の周りには青い隈取りのような模様があり、大きな鼻は猪のようにも見える。
ただ一際目を引く二本の立派な牙は、猪というよりも象に近い印象を受ける。
マンムー、二本牙ポケモン。古代から生き続けているポケモンで、タイプは氷・地面。
「見るからにパワータイプみたいなのが出て来たな……」
足を踏み鳴らし、雪を撒き散らしているその様は、明らかに力自慢のポケモンだ。
間違いなく、根性で攻撃力を底上げしたヘラクロスへの対抗策だと分かる。
「それじゃ行くよ! マンムー、スターフリーズ!」
マンムーが鼻から冷気を噴き出し、巨大な星型の氷塊を作り上げ、撃ち出す。
「ヘラクロス、マグナムパンチ!」
対するヘラクロスは拳を握りしめ、ミサイルのように思い拳の一撃を放って氷塊を粉砕し、
「ストーンエッジ!」
周囲に無数の尖った岩を浮かび上がらせ、マンムーへ一斉に放つ。
「マンムー、こっちもストーンエッジ!」
同じくマンムーの周りにも無数の尖った岩が浮かび上がる。
岩を撃ち出し、ヘラクロスが放った岩を全て防ぎ切った。
「っ、根性を発動したヘラクロスと互角に渡り合えるのか……!」
「当然よ! なんてったって私のマンムーはパワーだけならあたしの手持ちの中じゃぶっちぎり。アスイーツの一番大きなアイスボールを正面から突き破れるんだから!」
ミトリは得意げにそう言い、
「それじゃあそのパワー、見せてあげる! マンムー、スプラッシュ!」
二本の牙に水を纏い、マンムーは水飛沫を散らしながら突撃する。
重い体だが、頑強な四肢によって雪を物ともせずに突き進む。
「ヘラクロス、メガホーン!」
ヘラクロスが翅を広げ、硬い角を構えて突貫する。
水を纏ったマンムーと正面から激突、やはり威力は互角。
「マンムー、ストーンエッジ!」
「ヘラクロス、躱してシャドークロー!」
お互いに一旦退き、マンムーは周囲に無数の尖った岩を浮かべ、ヘラクロスへと一斉に放つ。
対してヘラクロスは無数の岩の中へと飛び込んでいく。
襲い来る岩を飛び越え、潜り抜け、両手に纏った黒く鋭い影の爪でマンムーを切り裂いた。
「やるねぇ! マンムー、地震!」
影の爪に切り裂かれてマンムーは数歩後退りするが、すぐに立て直す。
ヘラクロスが着地した瞬間を狙って足を踏み鳴らし、揺れを起こしてヘラクロスの動きを止め、衝撃波で吹き飛ばす。
「やっぱり地震は持ってるか。ヘラクロス、飛べ! 空中戦主体で戦うぞ」
ヘラクロスは起き上がると、翅を広げて飛翔する。
「マンムー、スターフリーズ!」
「ヘラクロス、マグナムパンチ!」
上空のヘラクロスに向けてマンムーは巨大な星型の氷塊を放ち、対してヘラクロスはミサイルの如き勢いで拳を繰り出して氷塊を破壊、さらに、
「もう一度マグナムパンチ!」
再び拳を構えて一気にマンムーとの距離を詰め、マンムーの額にミサイルの如く重い拳の一撃を叩き込んだ。
だが、
「マンムー、スプラッシュ!」
額に拳を食らい、よろめくマンムーが目を見開く。
強引に体勢を整え、二本の立派な牙に水を纏わせ、大きく顔を振って牙をヘラクロスに叩きつけ、吹き飛ばした。
「今だよマンムー、地震!」
吹き飛ばされ地面に落ちるヘラクロスを狙い、マンムーは足を踏み鳴らすが、
「ヘラクロス、飛べ!」
宙を舞いながらもヘラクロスは翅を広げる。
地面に落ちる寸前、何とかバランスを立て直してヘラクロスは飛び上がり、地震を回避した。
(ヘラクロスは火傷してる。早めに決めないと先に力尽きるのは間違いなくこっちだ。幸い、マンムーと違ってヘラクロスには効果抜群を取れる技がある。上手く立ち回れば、ヘラクロスが戦況を互角にまで戻してくれる!)
「よし、ヘラクロス、ストーンエッジ!」
ヘラクロスの周囲に白い光が迸る。
光は無数の尖った岩を形作り、マンムーへと一斉に発射される。
「マンムー、スターフリーズ!」
対するマンムーは巨大な星型の氷塊を放ち、無数の岩を全て受け止める。
「マグナムパンチ!」
その氷塊を粉砕し、ヘラクロスは両拳を構えて正面からマンムーへと突っ込んでいく。
「マンムー、スプラッシュ!」
マンムーは牙に水を纏わせ、ヘラクロスを迎え撃つ。
ヘラクロスの両拳と、マンムーの二本牙が激突し、一歩も引かずに激しく競り合う。
「マンムー、ストーンエッジ!」
「ヘラクロス、シャドークロー!」
マンムーが一旦退き、周囲に無数の岩を浮かべるが、それよりも早く、影の爪を携えたヘラクロスが腕を振り抜き、マンムーを切り裂いた。
「まだだよ! ストーンエッジ!」
シャドークローを受けたマンムーは怯まなかった。
無数の尖った岩を放ち、攻撃を終えたヘラクロスを狙う。
「ヘラクロス、こっちもストーンエッジ!」
襲い来る岩に対し、ヘラクロスも無数の尖った岩を撃ち出した。
お互いの放つ無数の岩は次々とぶつかり、相殺される。
「スターフリーズ!」
マンムーが鼻から冷気を噴き出し、巨大な星型の氷塊を飛ばす。
「ヘラクロス、マグナムパンチ!」
ヘラクロスはミサイルの如き勢いで拳を繰り出して氷塊を粉砕し、
「シャドークロー!」
両手に影の爪を纏わせ、マンムーへ向かっていく。
「マンムー、ストーンエッジ!」
対するマンムーの周囲に無数の尖った岩が浮かび上がり、一斉に発射される。
岩の刃がヘラクロスの翅や腕を貫くが、気にせずヘラクロスは突っ込み、両手の影の爪でマンムーを切り裂く。
「マグナムパンチ!」
「それ以上はさせないよ! スプラッシュ!」
さらにヘラクロスがミサイルの如き拳を突き出すが、その拳はマンムーの水を纏った長い牙に弾かれてしまう。
「マンムー、ストーンエッジ!」
「ヘラクロス、躱してストーンエッジ!」
マンムーが無数の岩の刃を発射するが、ヘラクロスは飛翔してそれを躱し、同じく無数の尖った岩を一斉に撃ち出す。
「マンムー、スプラッシュ!」
マンムーが長い牙に水を纏わせ、水飛沫を散らしながら牙を振るい、無数の岩を粉砕する。
「今だヘラクロス! メガホーン!」
硬い角を突き出し、ヘラクロスは突貫する。
上空から一気にマンムーとの距離を詰めるが、
「マンムー、避けて! ヘラクロスの動きを止めるよ!」
マンムーが前足で地面を叩いて勢いをつけ、後ろ足だけで立ち上がった。
ヘラクロスの狙いは僅かに逸れ、角は雪の積もる地面に突き刺さった。
直後、マンムーの体が上から迫ってくる。巨体とパワーを生かして、ヘラクロスを押し潰そうというのだ。
しかし、
「ヘラクロス、投げ飛ばせ! メガホーンだ!」
マンムーの腹下に角をねじ込み、角に思い切り力を込める。
渾身の力で自慢の角を振り上げ、ヘラクロスは逆にマンムーを投げ飛ばしてしまった。
「!? そ、そんなぁ!?」
ミトリが驚愕の声を上げる。
マンムーの巨体が宙を舞っているのだ、無理もない。
「ヘラクロス、マグナムパンチ!」
「っ! マンムー、スプラッシュ!」
ヘラクロスが両拳を突き出し、ミサイルのように突撃する。
少し反応が遅れるが、咄嗟にマンムーは牙に水を纏わせてヘラクロスに立ち向かう。
ヘラクロスの両拳がマンムーの額に直撃し、一瞬遅れてマンムーの水を纏った牙がヘラクロスを貫いた。
ヘラクロスとマンムーが、同時に雪の積もる床へと墜落する。
地面に倒れた二体は、両者とも戦闘不能になっていた。
「ヘラクロス、よくやった! いい活躍ぶりだったぜ。後は戻って休んでてくれ」
「マンムー、おつかれさま! よく頑張ってくれたね」
お互いのポケモンをボールに戻し、レオとミトリは向かい合う。
「言ったろ。僕のヘラクロスならやってくれるって。これで五分に戻ったぜ」
「やるねえ。ユキメノコが頑張ってくれた分を取り戻されちゃったよ」
だけど、とミトリは続け、
「最後に出て来るのはもちろん、私の一番のポケモンだよ。レオおにーさん、勝てるかなー?」
「勝つさ。僕だって最後のポケモンはエースポケモンだ。絶対に負けないぜ」
両者が、最後のモンスターボールを手に取る。
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