二次創作小説(紙ほか)

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ポケットモンスター 星と旋風の使徒
日時: 2017/01/28 12:25
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=22078

どうも、初めましての人は初めまして、そうでない人はこんにちは。パーセンターです。
えー、また始まってしまいました。四作目ですね。
今作は前作の完全続編となっております。
参照をクリックすれば、前作に飛びます。
レオの新しい冒険が、始まります。

※注意
・例によって例のごとくノープランです。
・パーセンターは大学生でございます。現在数々の課題に追われて更新頻度が非常に低いですがご了承ください。
・登場するポケモンが色々とややこしいです。詳しくは近々やるオリキャラ募集のときに説明しますが、簡単に言うと『プラチナのシンオウ図鑑に載っているポケモン+ベガでのみ登場するポケモン』となります。

これくらいですね。
内容としては、前作と同様、オリジナルの地方でのゲームのような冒険ものとなります。

それでは、よろしくお願いします。

登場人物
味方side >>25
N・E団side(ネタバレ注意)>>153
用語(ネタバレ注意)>>342

プロローグ >>1

シラハタウン&メガキタウン編
>>6 >>20 >>22
ハスバナシティ編
>>27 >>31 >>32 >>34 >>36
デンエイシティ編
>>39 >>40 >>41 >>42 >>45 >>46 >>50 >>53
アカノハシティ編
>>55 >>57 >>58 >>62 >>63 >>64 >>65 >>68 >>70 >>72 >>74 >>75 >>79 >>80
コウホクシティ編
>>81 >>82 >>83 >>84 >>87 >>88 >>89 >>93 >>94 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>106 >>107 >>108 >>111 >>112 >>115 >>116 >>117 >>118
ツクモシティ&スティラタウン編
>>121 >>122 >>123 >>126 >>127 >>128 >>129 >>130 >>133 >>138 >>145 >>152 >>157 >>158 >>159 >>162 >>163 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>171 >>172 >>173 >>175 >>176 >>177
シヌマシティ編
>>178 >>179 >>180 >>185 >>186 >>188 >>189 >>190 >>193 >>194 >>195 >>199 >>200 >>206 >>207 >>210 >>211 >>214 >>215 >>216 >>217 >>218 >>221 >>222 >>223 >>224 >>227 >>229 >>230 >>233
ヨザクラタウン編
>>234 >>235 >>236 >>242 >>243 >>246 >>247 >>248 >>251 >>254 >>255 >>256 >>257 >>258 >>259 >>260 >>261 >>264 >>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>273 >>274 >>275 >>276 >>277 >>280 >>281 >>283 >>284 >>285 >>288 >>289 >>290 >>291 >>294 >>295 >>296 >>297 >>298 >>299 >>300 >>301 >>303 >>304 >>305
テンモンシティ編
>>306 >>309 >>310 >>311 >>312 >>313 >>314 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>322 >>324 >>325 >>326 >>327 >>328 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>340 >>341
四天王&チャンピオン編
>>343 >>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>352 >>355 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>363 >>364 >>365 >>366 >>367 >>368 >>369 >>370 >>371 >>372 >>373 >>378 >>379 >>380
N・E団編
>>383 >>384 >>385 >>386 >>387 >>388 >>389 >>390

決戦編
零節 都市
>>391 >>392
一節 碧天
>>393 >>400
二節 緋天
>>394 >>401
三節 蒼天
>>395 >>404
四節 破天
>>396
五節 夜天
>>397
六節 輝天
>>398
七節 聖天
>>399


非公式(ベガ)ポケモン図鑑 >>5

Re: 第百八十三話 昔話 ( No.335 )
日時: 2016/07/18 17:30
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

テンモンシティ上空を不気味に旋回する、戦艦『ホエール』。
その内部では、蒼天将ソライトが戦況を見守っていた。
「ソライト様! 破天将直属護衛の二人に続き、ブレイズさんも撃破されました! セキュリティシャッターを起動させ、足止めします!」
傍から、部下のシーアスが状況を報告して来る。
「よろしくお願いします。さて、これで建物内部の残りはラピスとトパズ。もっとも、トパズ一人さえ勝てば我々の勝ちですが」
そんな時、部屋のモニターにある男の顔が映る。
『ソライト、そっちはどんなもんだ。そろそろ決着が着く頃かと思うんだがよ』
連絡を取ってきたのは、碧天将セドニーだ。
「出撃した直属護衛は全員撃破されました。ラピスとトパズも、お互いに最後の一体です。もうすぐで決着が着くかと。そちらはどうです?」
『最低限の土台は完成、だけどそこからが難航してる。ただのアジト作りとはわけが違うからな、流石にこんだけ大掛かりなものを作るとなると、うちの隊だけじゃきつい。このペースで進んでも、後二ヶ月で仕上がるかどうかってとこだな。お前がいないと出来ないことが多くて辛いよ』
「そうですか。どの道こちらの戦いが終われば、後はそちらの作業を残すのみ。こちらが終わり次第、お手伝いしましょう」
『よろしく頼んだぜ。お前のその言い方だと、そっちも勝ち濃厚みたいだしな』
「ま、そうですね。それでは、また後ほど」
『おう』
セドニーとの通信は切れ、モニターは建物内部のものに切り替わる。
「セドニー様って、部下に優しすぎますよね。決めた作業時間以上の仕事は絶対させないみたいですし。私はガーネット様とかメジスト様みたいな悪のカリスマみたいな人の方が好みなんだけどなぁ」
「碧天隊の下っ端の待遇は七天隊の中でもトップクラスですからね。セドニーもロフトも下っ端に優しいですし、夜通し仕事をさせることもない。私や貴女と違って身分の低い下っ端たちなら、セドニーの隊で働きたいと思うのも納得だと思いますよ」
「そんなものなんですかねぇ」
「そんなものです。さて、今はこっちに集中しますよ」
そう言ってソライトはモニターに向き直る。
モニターに映るのは、


「貴様、家族に何か良からぬ縁があるらしいな」
唐突に、セイラがそんな話を始める。
「なによ突然。あたしの家族の話なんて、関係ないでしょう」
「昔話は嫌いか? 私は好きだぞ。昔の思い出に身を浸るのも、たまにはいいことだと思うがな」
「……死にたいのかしら」
明確に。
ラピスの口調が、変化する。
「その程度でビビるとでも?」
そしてそれを感じ取った上で、セイラの態度は変わらない。
「ふふ、そんなに怒るなよ。別に家族の話をしたいわけじゃない。そもそも私に家族などいないからな。私が話したいのは、過去についての話だ」
ただならぬ殺気を放つラピスを前にして、それでもセイラは続ける。
「貴様が自身の過去、そして今の立場をどう思っているかは分からん。だがもし闇の最深部を抜け出したい、少しでもそう思っているなら、一つアドバイスをやろうか」
そう語るセイラの瞳には、ラピスには無いものがあった。
灰色にくすんだ瞳だが、その中には確かに、明るい光が宿っていた。

「抜け出したければ、過去から目を背けるな。過去の自分、現在の自分を、全て受け入れろ。その上でなお自分を認めてくれる人がいるなら、その手を掴め。そいつの力を借りて、闇から這い上がれ。私は、そうやってここに戻って来た」

ふぅ、とラピスが息を吐く。
ラピスを纏う殺気が消えたのを、セイラは感じ取った。
「ありがた迷惑なお話、わざわざどうも」
「ふふ。所詮はお節介な先輩からのつまらんアドバイスだ。興味がなければ聞き流せ」
セイラが微笑を浮かべた。
かつてのシャウラであれば、絶対に浮かべないような優しい笑みを。
「そんなことより、バトルの途中よ」
「ふふ、そうだったな。続けるか」
静止していたお互いのポケモンが、再び動き出す。
「ネクロシア、シャドークロー」
「ヒョウカク、吹雪!」
ネクロシアが両手に黒い影を纏わせる。
両手を構え、音もなくヒョウカクへ忍び寄るが、対するヒョウカクは雪を乗せた暴風を起こしてまとめて周囲を吹き飛ばし、ネクロシアの接近を許さない。
「遠くからでも構わないわ。ネクロシア、サイコバレット」
ネクロシアの両手から影が消え、変わりに念力を纏う。
ネクロシアの操る念力は実体化して無数の念の弾となり、マシンガンのように一斉掃射される。
「ヒョウカク、守る!」
守りの結界がヒョウカクの周りを覆う。
直後に無数の銃弾がヒョウカクを襲うが、結界によって全て弾かれ、
「ハイドロポンプ!」
結界が消えた瞬間に、ヒョウカクは大量の水を噴き出して反撃。
「ネクロシア、スプラッシュ」
下半身の鎌を振り、ネクロシアは水柱のなかへ突っ込む。
水を纏った鋭い鎌でハイドロポンプを切り裂きながら突き進み、水飛沫を散らしながらの一振りでヒョウカクを吹き飛ばす。
「シャドークローよ」
「迎え撃つ。ドリルライナー!」
再び影の爪を携えて距離を詰めてくるネクロシアに対し、ヒョウカクはドリルの如く高速回転しながら突っ込んでいく。
「ネクロシア、受け止めなさい」
両手の影の爪でヒョウカクを挟み込み、ネクロシアは高速回転するヒョウカクを強引に受け止める。
「スプラッシュ」
「同じ手は通用しない。吹雪!」
ネクロシアの下半身の鎌が水を纏うが、先程と同じ手は受けない。
ヒョウカクが雪を乗せた暴風を起こし、ネクロシアを巻き込み、風に巻き上げて吹き飛ばしてしまった。
「ハイドロポンプ!」
上空へ打ち上げられたネクロシアに対してヒョウカクは太い水柱を噴き出し、ネクロシアに水柱を叩きつけて床へと叩き落とす。
「ふふ、先程より動きが鈍っているぞ。私の話で動揺でもしているのか?」
「……まさか。ネクロシア、ギガスパーク」
撃墜されたネクロシアはすぐに立ち上がり、両手に作り上げた電撃の砲弾を投げ付ける。
「ヒョウカク、ドリルライナー!」
角を伸ばしてドリルの如く高速回転し、ヒョウカクは尾ビレで床を蹴って跳ぶ。
「来るわね。ネクロシア、スプラッシュ」
電撃の砲弾は容易く貫通されてしまうが、そのすぐ後ろからネクロシアが水を纏った鋭い鎌を振り下ろす。
ドリルのような角の一撃と、振り下ろされる水の鎌が激突し、激しく競り合う。
「シャドークロー」
「守る!」
両手に影の爪を切る纏い、死神の鎌のように爪を振るネクロシアだが、ヒョウカクの生み出した守りの結界に突き刺さる。
さらに力を込めるネクロシアだが、結界に阻まれ、届かず、弾き返される。
「ッ……ネクロシア、サイコバレット!」
ラピスの声に力がこもる。
攻撃を弾かれたネクロシアの周囲に、無数の念力の弾が浮かび上がる。
「ヒョウカク、悪いが少々無理させるぞ。いけるか?」
ネクロシアに目線を向けたまま、ヒョウカクはセイラの言葉に頷く。
「よし。ヒョウカク、突っ込め! ドリルライナー!」
角を伸ばし、ドリルのように高速で回転しながら、ヒョウカクは突撃する。
無数の念力の銃弾が次々とヒョウカクに突き刺さるが、構わずヒョウカクはただネクロシア目掛けて突貫。
鋭い角の先端がネクロシアを捉え、吹き飛ばした。
「吹雪!」
間髪入れずに、ヒョウカクは雪を乗せた暴風を巻き起こす。
吹き飛ばされたネクロシアが風に飲まれ、風に巻き上げられ、さらにその体を氷漬けにされる。
「っ! ネクロシア……!」
風の檻から解放されたネクロシアが床に落ちる。
体の半分を凍らされたネクロシアは、既に戦闘不能となっていた。

Re: 第百八十四話 圧倒 ( No.336 )
日時: 2016/07/20 11:01
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

「ネクロシア、ありがとう。戻っていなさい」
ラピスがネクロシアをボールに戻す。
同時にラピスの瞳と、ボールの鎖の模様の紫の光が消える。
「ここまでか。トパズは……まだみたいね」
ふう、とラピスは息を吐く。
「さて、負けてしまったわね。途中から覚醒率もブレブレだったし。あぁ、言い訳と考えてもらって構わないわよ」
で、とラピスは続け、
「どうするの。ここであたしを捕まえるのかしら」
「さあ、どうしようか。副統率を補助するか、それとも貴様を捕らえるか、どちらかだな」
「ですって。ソライト、お願い」
何の気なしにラピスが呟く。
直後。
ラピスとセイラを分断する形で、セキュリティシャッターが降りてくる。
「さ、これでこの道は使えない。トパズを止めたかったら、迂回することね」
シャッターの向こう側から聞こえるのは、ラピスの声、そして車椅子のタイヤの音。
「ちっ、既にシステムが掌握されているか。覗き見とは感心しないぞ、蒼天将」
頭上の監視カメラを見上げて一言言い放ち、セイラは別の道を探す。


残る最後の試合。
展望台の、トパズとリョーマだ。
「マカドゥス、ダイヤブラスト!」
「ブレイオー、メタルブラスト!」
剣を突き刺されたマカドゥスがすぐさま煌めく爆発とともに爆風を起こし、対するブレイオーは鋼エネルギーの砲撃を放って爆風を食い止める。
「悪の波動!」
だがさらにマカドゥスが悪意に満ちた衝撃波を周囲に放ち、ブレイオーごと周囲のものを纏めて吹き飛ばした。
「っ、ブレイオー、リーフブレード!」
「マカドゥス、磁力線!」
着地したブレイオーの剣が自然の力を帯びる。
再びブレイオーは踏み出し、マカドゥスを狙うが、マカドゥスの放つ磁力の嵐に阻まれる。
「雷だ!」
マカドゥスの体中から、バチバチと音を立てて電気が生み出される。
全ての電気を一点に集め、マカドゥスは槍のような雷撃を放つ。
「ブレイオー、聖なる剣!」
黄金の剣を振り抜き、ブレイオーはマカドゥスの放つ雷撃の槍を食い止める。
「ストーンエッジ!」
「悪の波動!」
尖った無数の岩がマカドゥスへと撃ち出されるが、マカドゥスの悪意に満ちた衝撃波により全て粉砕される。
「踏み込め! リーフブレード!」
剣を携えたブレイオーが一気にマカドゥスの懐へと潜り込む。
自然の力を込めて淡く光る剣を振るい、剣を一度、二度、横薙ぎに振るう。
初めてマカドゥスが明確なダメージの反応を見せた。顔をしかめ、少し後ずさりする。
「畳み掛けろ! リーフブレードだ!」
「させぬ。ダイヤブラスト!」
さらに剣をもう一振りするブレイオー。しかしその剣は青白く煌めく爆発に阻まれ、惜しくもマカドゥスには届かない。
「聖なる剣!」
「雷だ!」
ブレイオーの剣が黄金に輝く。
対して、マカドゥスの体から夥しい電気が放出される。
黄金の剣と、雷撃の槍が、再び衝突する。
「磁力線!」
マカドゥスが周囲の磁場を荒らし、磁力の嵐を起こす。
「っ、ブレイオー、来るぞ!」
電撃を何とか破り、さらに磁力の波に剣を向けるブレイオー。
しかし流石のブレイオーでもこの二連撃を捌き切ることは出来ず、磁力の嵐に飲み込まれてブレイオーは吹き飛ばされる。
(くそっ、規格外すぎる! どれだけ攻撃を撃ち込めば倒れるんだ、この化け物。つーか、倒れるどころかほとんど怯みすらしねえ。さっきのリーフブレードでようやく手応えを感じたが、あのペースじゃ先にこっちがスタミナ切れする……!)
そろそろブレイオーの底が見えてくる頃だ。それはリョーマだけでなく、トパズも気付いているだろう。
だが対するマカドゥスは、底が見えない。
まだ何かを隠し持っている。まだ余裕を持って戦っている。
戦闘経験溢れるリョーマだからこそ、分かる。分かってしまう。
(ダメだ。それ以上考えるな、戦え! 俺は勝つ。勝つんだ!)
「ブレイオー、気合い入れ直すぞ! 聖なる剣!」
立ち上がったブレイオーの携える剣が、黄金に光り輝く。
対して。
トパズが。
明確な。
勝ち誇った笑みを浮かべた。

「マカドゥス、雷!」

マカドゥスの岩のような体毛が、ぴんと逆立ち、全身から電気を生み出していく。
ブレイオーの黄金の剣がマカドゥスを切り裂いた。
マカドゥスの動きは、止まらなかった。
刹那。
マカドゥスの体全体から、八本の雷撃の槍が放出された。
「……ん、なぁ!?」
八本の雷撃の槍は、回避の指示を出す隙すら与えず、ブレイオーを貫いた。
「っ! ブレイオー!」
雷撃の槍に貫かれ、ブレイオーがその場に崩れ落ちる。
だが、
「……ほう。今の一撃、耐え抜いたか」
まだ倒れてはいない。
ブレイオーの瞳には依然として燃える炎が宿り、剣で体を支え、何とか立ち上がった。
「我がマカドゥスの八本の雷の槍を耐えたのは、マター殿と聖天将オパールのポケモン以外では初めてだ。流石は『ブロック』副統率の切り札だ」
だからこそ、とトパズは続け、
「最後まで絶対に諦めない、その気持ちに敬意を込めて、貴様にとどめを刺そう」
「……まだ勝負は終わってねえ。負けるまでは、終わりじゃねえ! それが戦うってことだろ!」
この体が動く限り。
リョーマとブレイオーは、絶対に諦めない。
「最後の最後まで、抗え! ブレイオー、聖なる剣!」
残る力を振り絞って、ブレイオーは跳んだ。
全ての力を込めて、黄金の剣の渾身の一撃を放つ。
「マカドゥス、雷!」
対して、再びマカドゥスの全身の体毛が逆立つ。
全てを打ち崩す最強の八本の雷撃の槍が、再び放出された。
黄金の剣が、八本の雷撃の槍と激突する。
だが。
抗いも虚しく。
少しずつ、ブレイオーが押されていく。
そして、遂に。
ブレイオーの剣が、弾かれた。
直後。
無数の雷撃の槍が、再びブレイオーを貫いた。

「……ブレイオー!」

リョーマの叫びが響く。
床に崩れ落ちたブレイオーは、動かなかった。


「……俺の、負けだ」
ブレイオーをボールに戻し、リョーマはトパズの方に向き直った。
「いい潔さだ。『ブロック』をまとめていることはあるな」
「勘違いするな。俺が負けたのは、あくまでお前とのポケモンバトルに関してだけだ」
ポケモンバトルでは、敗れた。
しかし、まだ万策尽きたわけではない。
「俺を倒しても、鍵がなけりゃ、そこの金庫は開かねえ。そんでもって、俺は鍵を持っていない。俺が負けた時のことを何も考えていないとでも思ったか」
これが、万が一リョーマが敗れた時の策。
自身がトパズと戦っている間に、他の者に鍵を持たせ、逃がす。
「……! なるほど、あの時か。統括補佐の、あの小娘か」
「そういうことだ。テレジアはもう別のところに鍵を隠しているはずだ。今からテレジアを捕縛したって無駄だぜ。そもそもそんなことは絶対にさせねえけどな」
リョーマが敗れても、チームで勝つ。
『ブロック』の、勝ちだ。
だが。

「トパズ様、任務完了致しました」

階段の下から、そんな声が聞こえた。
リョーマが振り向けば、階段から現れたのは赤髪に黒い執事服の男。
ブレイズだ。
「お探しの物は、これでよろしかったでしょうか」
トパズに近寄り、そう言いながら、ブレイズが取り出したものは。

テレジアが持っていたはずの、金庫の鍵だった。

「ば……バカな! なんで、それを持ってる!」
今度こそ、リョーマを本物の絶望が飲み込んだ。
「忘れていませんか。ここのセキュリティは、ソライト様が全て掌握している。もちろん監視カメラもです。貴方がたの作戦など、初めから全て筒抜けだったのですよ。あぁ、鍵を持っていたあの少女には、私のミロカロスの催眠術で少々眠っていただいています」
「そういう事だ。残念ながら、我らが一枚上手だったようだな」
「っ……ぐ……まだ、まだだ。リュードウ先生を始め、まだ沢山の戦力が残ってる。足止めされていたとしても、そろそろ着いてもおかしくない頃だ!」
「あぁ、その事ですが」
リョーマの抵抗を嘲笑うかのように、ブレイズが口を挟んだ。
「助太刀は来ないと思いますよ。少なくとも、正面玄関で戦っていた方々はね」
「は?」
「どうやら、メジスト様が盛大に暴れてくれたようです」
リョーマの思考が、追いつかない。
今、この建物はどうなっているのか。
一体、この建物では、何が起こっているのか。

Re: 第百八十五話 吉凶 ( No.337 )
日時: 2016/07/22 00:30
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

「あ……がっ……!?」
胸が、苦しい。
足が震える。立っていられない。
アスカの体から力が失われ、膝から地面に崩れ落ちていく。
「あーあー、メジストの力がここまで広まってるとはね。『覚醒』を使うと力が強くなるって聞いたけど、本当だったのね」
ガーネットの言葉が、アスカの耳に入る。
だがガーネットを見上げられない。顔を上げる力も残されていない。
目線を移すのが、アスカが出来る精一杯の事だった。。
後ろの方を見れば、既に倒れて動かなくなっているライロウの姿。
そして、前方を見れば。

膝をつきつつも、必死にメジストに抗う、リュードウの姿。

「ギャヒャヒャヒャヒャ! あっれェ、もしかして言ってなかったかなぁ! 俺様のこの能力は、『覚醒』を使うとより強くなる事が最近分かったんだわ。だからさぁ、お前が俺の能力が効かないかもしれないってのは、あくまで昔の俺の話。今のこの状態の俺様の能力が効かないのは、それこそマターくらいだろ。ギャヒャヒャヒャヒャ、残念だったなぁ! かつての宿敵に身も心も削り取られる気分はどうだ?ギャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」
薄れ行くアスカの耳に、最後に入ったのは。
ただひたすらに笑い続ける、メジストの声だった。


「リョーマ!」
「リョーマさん!」
レオたちが展望台に駆けつけた時には、既に遅かった。
リョーマがただ呆然と立ち尽くし、その向かい側には、トパズと、本物の三つの宝石を手にしたブレイズの姿。
そして、トパズのすぐ後ろに立つ、マカドゥス。
「っ! トパズ!」
レオがそう叫び、モンスターボールに手を掛けるが、
「動くなよ」
トパズがそう言い放つと、一瞬でマカドゥスがレオの後ろに回り、牙をレオの首元に、爪をエフィシとホロの首元に押し当てる。
「くっ……」
「安心しろ。抵抗しなければ危害は加えない。間もなく、ソライトが迎えに来る」
その時。
開けられた壁の穴から、飛行ユニットを取り付けたソライトのジバコイルが現れる。
「それでは、さらばだ」
トパズとブレイズはジバコイルに乗り、マカドゥスを戻すと、悠々と飛び去っていった。


「テレジア!」
通路の奥、階段の隅で眠らされていたテレジアに、リョーマが駆け寄る。
「テレジア、大丈夫か! おい! テレジア!」
テレジアを抱え、体を揺さぶる。
「ん……リョーマ……さん……?」
ゆっくりと目を開き、テレジアが目を覚ます。
「ごめん……なさい。守れ……ませんでした」
「俺こそ、済まなかった。大事な部下一人守る事ができないで、何が副統率だ……!」
リョーマがここまで思い悩む様子を見たのは、テレジアでも初めてだった。
「リョーマ。とりあえず、現状の報告を」
「……ああ。そうだな」
エフィシがリョーマに呼び掛ける。
リョーマの口調に、いつもの覇気は無かった。


会議室の空気は、とても重かった。
「アスカさんとリュードウ先生は、病院へ送られました。幸い、二人とも命に別状はないようです。リュードウ先生はまだ目を覚まさないようですが、アスカさんは既に意識を取り戻しています」
エフィシが、屋外で戦っていた二人について報告する。
「……ちょっと待て。ライロウはどうした」
「ライロウさんなんですが」
リョーマの質問に、エフィシが答える。
「まず最初にアスカさんに異変が生じたらしく、その正体にいち早く気付いたライロウさんは戦闘の意思を捨て、自ら倒れるふりをしたそうです。そのおかげで、メジストの能力の餌食にならずに済んだと。ライロウさんはメジストとガーネットの会話を全て聞き取ったそうです。奴らの話によると、次にネオイビルが動くのは、早くて一ヶ月は先だと。そして、次の作戦が最終段階だと」
「……なるほど。ライロウ、よくやってくれた。さて、次は俺の番か」
覇気をなくしたリョーマが、口を開く。
「お前たちが見ていた通りだ。俺はトパズに負けた。俺の作戦も見切られ、宝玉は奴らに奪われた。本当に済まねえ。俺のせいだ。俺がもう少し強ければ、俺が、もう少ししっかりしていれば……」
「そこまでだ」
リョーマの言葉を中断させたのは、セイラだった。
「起こってしまったことを責めても、何の解決にもならないぞ。悔やむ気持ちは分かるが、ここから何をすべきかが重要なんじゃないのか。幸い、吉報が一つもないわけじゃない。奴らが次に動くのは早くとも一ヶ月なんだろう? つまり、最低一ヶ月間は時間があるということだ。まだ、私たちにはやれることが残ってるはずだ」
「っ……ああ、そうだな。済まなかった」
その時。
「会議中失礼します。リョーマさんたちに、お客様です」
『ブロック』構成員の一人が、会議室に現れた。
「お客様?」
「はい。外で待ってもらっていますが、どうしますか」
「分かった。ここに入れてくれ」
「了解です。それでは、お入りください」
構成員に促され、一人の人物が部屋の中に入ってくる。
長い緑髪を後ろで括った、かなりがたいのいい男性だ。
赤いマントを羽織っており、着ている緑の服はまるで海賊のようにも見える。
さらに、本物かどうかは分からないが剣を差しており、首には蛇のネックレス、耳には派手なピアス。右手の人差し指には獅子の紋章の入った指輪を付けている。
そして。
誰もがこの人物を知っていた。
直接見た者はいないが、テレビで何度も見たことがあるほどの有名人だ。
「あ、あんたは……」
皆が驚きを隠せない中、リョーマが口を開く。

「ホクリク地方チャンピオン、リカルド!」

リカルドと呼ばれた男は、小さく頷く。
「全員、俺のことを知っているようだな。ならば話は早い」
その男、リカルドは皆の方を向き、話し出す。
「改めて自己紹介をしよう。俺はこの地方のチャンピオンを任されている、リカルドだ。今日は、『ブロック』のメンバーたちに伝えたいことがあって来た」
奇抜な外見と違って、リカルドの口調は雄弁だ。
「ネオイビルの脅威、暴力性を、我々ポケモンリーグ本部としても、そろそろ黙って見ていることは出来なくなってきた。そこで」
リカルドは、そこで一旦言葉を切る。

「只今を持って、ホクリク地方全てのジムを、一時的に閉鎖する」

そして。さらに。

「ホクリク地方ジムリーダー、四天王、及びチャンピオンはこれより、『ブロック』と正式に手を組む。ネオイビル壊滅のために、我らが力を貸そう」

「……! 本当ですか!」
ガタン! と音を立て、リョーマが立ち上がった。
「ああ。俺たちとしても、これ以上奴らを野放しにするわけにはいかない。奴らに勝てる可能性があるのは、我らリーグ本部の人間、そして『ブロック』だけだ。俺たちポケモンリーグの人間、及びジムリーダーが、お前たちの特訓に協力しよう」
「ありがとうございます。ジムリーダーに四天王、チャンピオンが協力してくださるとなれば、とても心強い。よろしくお願いします!」
リカルドとリョーマがそれぞれ進み出て、硬い握手を交わす。
これを持って。
ポケモンリーグ本部と『ブロック』が、公式的に手を組むこととなった。


その後のリョーマとリカルドの提案によって、ネオイビルが動き出すまでの一ヶ月間、レオたちはネオイビルに関しての情報収集もしつつ、ジムリーダーやチャンピオンと共にポケモンを鍛えることとなった。
しかし、
「トゲキッス、そろそろ着くよ。高度を下げてくれ」
レオには、特訓に当たって、どうしても会いたい人物がいた。
レオを乗せて空を飛ぶトゲキッスに指示を出し、着地の準備をさせる。
そして、その人物とは。

「レオ、おかえり。元気そうだな」

目を引くのは、獅子の鬣のような橙の髪。
ホクリク地方のポケモン博士にして、元々は凄腕のトレーナー。
レオの父親、ライオだった。

Re: ポケットモンスター 星と旋風の使徒 ( No.338 )
日時: 2016/07/21 23:08
名前: プツ男 (ID: TzDM8OLf)

声楽、ピアノとなれない事が立て続けにドカドカやってきて新鮮さと共に先の不安と夏バテでダウナーになっています。プツ男です。

おぉう・・・・なんやかんや反ネオイビル勢が優勢かと思いきや、最後の最後でリョーマがトパズに敗北してしまいましたか・・・・リョーマの仕込んだ策も見抜かれてしまい宝玉も奪われ、大ピンチ・・・といったところでしょうか
以前ラピスにリョーマが勝利してからはもうメジストもラピスも怖くなくて残る問題はトパズ、オパールかなと思いきや、ここでメジストが覚醒の効果(?)でさらに凶悪になってますし、もはやメジストの方がラピスよりも質悪く見えてきましたね。

トパズに勝てる希望がリョーマだっただけに、悔しさ倍増でしょうね、これ・・・
宝石の使い道も気になりますし、セドニー率いる部隊が作っているものと関係があるのでしょうかね?いったい何ができるのか、楽しみに待ってます。

ソライトとシーアスの会話からネオイビルの上司部下の関係っていうか、内情が少し覗けて「おっ?」ってなりました。こういう小ネタ(?)が大好きなんでこういうの見るといつもテンションあがっていろんな想像巡らせてしまいます。確かに、セドニーは部下にやさしそうっていうか、逆にナメてる部下もいそうな気がしますね・・・ガーネットの部隊はガーネットに恐怖している人が多そうですし、逆にメジストの部隊は構成員が構成員だけに緋天隊とはちょっと違った雰囲気でしょうし。部隊によって特色が濃いのが面白いです。

おっと、ここでとうとうチャンピオン登場・・・ということは、ネオイビルの一連の行動の最終段階の前に四天王、チャンピオンへの挑戦があるのでしょうかね?
打倒ネオイビルのため着々と戦力をあつめて、特訓をして、さてはてどうなるのか、楽しみに待ってます。

Re: ポケットモンスター 星と旋風の使徒 ( No.339 )
日時: 2016/07/22 11:38
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: zz9QDTIv)

>>プツ男さん
コメントありがとうございます。
プツ男さんピアノ弾けるんですか……すごいですね……。

やはり七天将の中でもトパズはそれより下の連中とは飛び抜けています。
今回のような本気のメジストや、暴走したラピスでも、トパズには敵いません。
メジストとラピスは、ラピスがメジストに対して相性が良かったから三位になれたようなものですからね、他の人間であれば普通にメジストの方に苦戦します……というか、普通の人ならそもそもメジストとは戦えないですね。
……まぁ、オパールはそのトパズのさらに上位に君臨しているわけですが。

リョーマが負けたのは『ブロック』にとっては相当大きいですね……なんせ『ブロック』サイド最強の戦力が敗れてしまいましたからね。
セドニー隊が着手しているものは今の所詳細は秘密です、楽しみにしててください。大掛かりなものが出てきますよ。

私もその辺の小話は好きなので、特にネオイビルが出てくるときは隊員の会話をちょくちょく挟んだりしています。
セドニー隊は隊の中では一番ホワイトな隊ですね。ロフトもセドニーも優しいので。
ガーネットの恐怖政治っぷりはデンエイシティの初登場シーンを見返していただければ分かるかと。
そうですね、メジストの隊だけは他の隊と雰囲気が違いますね。本編でもちらっと触れた気はしますが、メジストの隊は全員ネオイビル結成以前の仲です。

ようやくチャンピオンが登場です。前作と比べるとかなり遅めですね。
それだけ只ならぬ事態になっていますからね……ここからネオイビルとの決戦までどうなるのか、楽しみにしててください。


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