二次創作小説(紙ほか)

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ポケットモンスター 星と旋風の使徒
日時: 2017/01/28 12:25
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=22078

どうも、初めましての人は初めまして、そうでない人はこんにちは。パーセンターです。
えー、また始まってしまいました。四作目ですね。
今作は前作の完全続編となっております。
参照をクリックすれば、前作に飛びます。
レオの新しい冒険が、始まります。

※注意
・例によって例のごとくノープランです。
・パーセンターは大学生でございます。現在数々の課題に追われて更新頻度が非常に低いですがご了承ください。
・登場するポケモンが色々とややこしいです。詳しくは近々やるオリキャラ募集のときに説明しますが、簡単に言うと『プラチナのシンオウ図鑑に載っているポケモン+ベガでのみ登場するポケモン』となります。

これくらいですね。
内容としては、前作と同様、オリジナルの地方でのゲームのような冒険ものとなります。

それでは、よろしくお願いします。

登場人物
味方side >>25
N・E団side(ネタバレ注意)>>153
用語(ネタバレ注意)>>342

プロローグ >>1

シラハタウン&メガキタウン編
>>6 >>20 >>22
ハスバナシティ編
>>27 >>31 >>32 >>34 >>36
デンエイシティ編
>>39 >>40 >>41 >>42 >>45 >>46 >>50 >>53
アカノハシティ編
>>55 >>57 >>58 >>62 >>63 >>64 >>65 >>68 >>70 >>72 >>74 >>75 >>79 >>80
コウホクシティ編
>>81 >>82 >>83 >>84 >>87 >>88 >>89 >>93 >>94 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>106 >>107 >>108 >>111 >>112 >>115 >>116 >>117 >>118
ツクモシティ&スティラタウン編
>>121 >>122 >>123 >>126 >>127 >>128 >>129 >>130 >>133 >>138 >>145 >>152 >>157 >>158 >>159 >>162 >>163 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>171 >>172 >>173 >>175 >>176 >>177
シヌマシティ編
>>178 >>179 >>180 >>185 >>186 >>188 >>189 >>190 >>193 >>194 >>195 >>199 >>200 >>206 >>207 >>210 >>211 >>214 >>215 >>216 >>217 >>218 >>221 >>222 >>223 >>224 >>227 >>229 >>230 >>233
ヨザクラタウン編
>>234 >>235 >>236 >>242 >>243 >>246 >>247 >>248 >>251 >>254 >>255 >>256 >>257 >>258 >>259 >>260 >>261 >>264 >>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>273 >>274 >>275 >>276 >>277 >>280 >>281 >>283 >>284 >>285 >>288 >>289 >>290 >>291 >>294 >>295 >>296 >>297 >>298 >>299 >>300 >>301 >>303 >>304 >>305
テンモンシティ編
>>306 >>309 >>310 >>311 >>312 >>313 >>314 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>322 >>324 >>325 >>326 >>327 >>328 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>340 >>341
四天王&チャンピオン編
>>343 >>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>352 >>355 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>363 >>364 >>365 >>366 >>367 >>368 >>369 >>370 >>371 >>372 >>373 >>378 >>379 >>380
N・E団編
>>383 >>384 >>385 >>386 >>387 >>388 >>389 >>390

決戦編
零節 都市
>>391 >>392
一節 碧天
>>393 >>400
二節 緋天
>>394 >>401
三節 蒼天
>>395 >>404
四節 破天
>>396
五節 夜天
>>397
六節 輝天
>>398
七節 聖天
>>399


非公式(ベガ)ポケモン図鑑 >>5

Re: 行間 ( No.390 )
日時: 2016/09/25 09:19
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

そこは、大広間のような場所だった。
コンサートホールのように、何段かに分かれた観客席が中央をぐるりと取り囲むような造りの空間。
しかしコンサートホールと違うのは、それらは古びた石や柱で造られた広間ということ、そして、圧倒的に広いということ。
現在、その広間はおびただしい数の人間によって埋め尽くされている。
ほとんどの人間が黒ずくめの衣装を身にまとっている。その胸には、盾にNとEをくっつけたような模様が描かれた紋章が刻まれている。
さらに、段の一番上部には、七人の人間が立つ。彼らは、皆バラバラの服装である。
左端に立つのは、緑色の髪を立たせ、青い服の上に迷彩柄のコートを着た長身の男。物思いに耽るような表情で、じっと広間の中央を見据えている。
ネオイビルの求道神、碧天将セドニー。
右端には、非常に長い艶やかな深紅の髪に、黄色と白の花の模様が入った黒いドレスを着た高貴な雰囲気を醸し出す女。細く鋭い視線を、どこかへと向けている。
ネオイビルの豊麗神、緋天将ガーネット。
その隣には、長めの青い髪をし、黒いスーツのような服の上から白衣を着、眼鏡を掛けた男。普段浮かべる僅かな笑みも、今は表情に浮かばない。
ネオイビルの狡智神、蒼天将ソライト。
左から二番目には、紋章の刻まれたフードを被り、ローブのような真っ黒な服を着た男。フードの隙間から、猛獣のように鋭く邪悪な眼光が光る。
ネオイビルの破壊神、破天将メジスト。
その隣には、車椅子に乗り、紫のツインテールにゴスロリのような服装を着た背の低い少女。冷たい光を湛えた瞳からは、何の感情も感じられない。
ネオイビルの夜想神、夜天将ラピス。
右から三番目には、黄色い髪を無造作に跳ねさせ、橙色の軍服の上に赤いマントを羽織った頑強な男。腕を組み、険しく厳しい眼差しを中央へと向けている。
ネオイビルの戦軍神、輝天将トパズ。
そして中央には、白い長髪に、宝石のように様々な光を放つドレスを着た、清らかで美しい女。胸の前で手を組み、目を瞑るその姿は、何かに祈りを捧げているようにも見える。
ネオイビルの守護神、聖天将オパール。
彼らの後ろには、それぞれの直属護衛が控え、そしてホールの中央には、彼らの主が君臨する。
白い謎の模様が刻まれた漆黒のコートを纏い、左手の中指に灰色の指輪をはめ、右手には機械の爪を装着した男。かなり痩せ細っているが、その野心に満ちた瞳からは恐ろしいほどの狂気を放っている。
ネオイビルの頂点に立つ起源神、マター。
今、この場には全てのネオイビル団員が集まっている。
ホールの中央から、マターは同胞たちに語りかける。
「皆の者よ、来るべき時が来ました。神話の復活の準備が、ようやく整いました」
マターの言葉に下っ端たちが騒めくが、マターは気にせず演説を続ける。
「これから我々が行うことは、侵略でも攻撃でも、宣戦布告でもありません。裁きです。自身を罪人であると自覚せず、無意識に悪行に走る者たちへの断罪となるのです。罪と欲望に塗れたこの世界を、我々の手で変えなければならない」
しかし、とマターは続け、
「私が幾度となく説いてきたように、我々人間は悪です。罪人の手で罪人を裁いても意味はない。人間を裁くのは、神以外をおいて他にありません。だからこそ、我々はこれから、神話を復活させる必要があるのです。この世界を断罪するのは、人間ではなく——」
一旦言葉を切り、マターは力強く、叫ぶように告げる。

「——星と旋風の使徒、アスフィアです!」

刹那、広間に静寂が広がる。全ての者の動きが、声が、静まり返る。
「この世界に裁きを下すのは、星と旋風を司る星座神、アスフィアをおいて他にいません。神話を復活させ、我々も神となる。神の力を持ってすれば、世界など恐るるに足らず! 神に歯向かえる人間など、どこにも存在などしないのです!」
そこで言葉を切り、再び落ち着いた様子でマターは語り出す。
「さあ、それでは始めましょうか。星座神話の復活、そして新世界の始まりの幕開けです」
そう言ってマターが指を鳴らす。すると次の瞬間、マターの影からポケモンが現れる。
神話復活の鍵、オルディナだ。その体内には、アスフィアの力を司る、三つの石が埋め込まれている。
右手の機械をマターは操作し、オルディナに指示を出す。
オルディナの瞳から、淡い光が映し出される。
刹那。

世界が、振動した。

突然の揺れに団員たちはよろめき、転ぶ者もいた。
その中央で、マターだけが両手を広げ、天を仰いだ。
笑いに笑いながら、彼は大きく叫ぶ。

「新世界創造の始まりです! 目覚めよ、空中円盤都市『スフィア・ディスク』!」

Re: 第二百二十五話 円盤 ( No.391 )
日時: 2016/09/25 22:09
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

テンモンシティでネオイビルと戦ってから、丁度一ヶ月。
少年レオは、アカノハシティへとやって来ていた。
理由は単純。『ブロック』の中心支部はアカノハ支部であり、丁度この日に集まるようにとリョーマからの指示が出ているからだ。
「……久しぶりに、この街に来た気がするなぁ」
この一ヶ月の間、レオは父親やチャンピオンと共に特訓をし、そのためにホクリク地方を長く離れていた。
「よッ、久しぶりだなや、レオ」
そんな時、唐突にレオの後ろから聞き慣れた訛り声が聞こえる。
「カンタロウ! 久しぶりだな!」
「おうよ。この一ヶ月、ホウエンに帰っとっただ。ナギ師匠にひたすら鍛えてもらっただべさ」
カンタロウは地元に帰っていたと、レオは一週間前にライロウから聞いた。どうやら、ナギという名の師匠がいるらしい。
「さて、と。奴らの話が予定通りなら、今日動いてもおかしくねェだな」
「ああ。個人的には、早いとこマターと決着をつけたいところだ」
そう言いながら、二人が支部へと足を進め出した、その時。

世界が、振動した。

「地震か!?」
「すっげェ揺れ……っ! 頼む!」
近くの木に手をつき、何とかレオは身を支える。
カンタロウは近くに何もなく、咄嗟にボールからムクホークを出し、掴まって宙に浮かび上がる。
しばらく揺れが続くが、やがて地震はゆっくりと収まった。
「長い揺れだったな……大ニュースになるほどだろ、これ」
「この地方でこげな規模の地震……何か、やな予感がするだな」
木から離れてレオは顔を上げ、カンタロウもムクホークから離れて地に降りる。
その瞬間。

「……!? な、何だよ、あれ!?」

何気なく空を見上げたレオが、驚愕の声を上げる。
「あン? どォしたべ、レオ……ッ!?」
カンタロウもレオの声に反応して空を見上げ、その瞬間に顔に驚愕を浮かべる。
「な、なンだべ、ありゃ……!?」
レオとカンタロウが見たもの。それは。

はるか遠方に浮かび上がる、巨大な空を飛ぶ円盤だった。

ここからだと遠く、全貌は掴めない。
しかしそれでも、この距離でこれだけの大きさに見える円盤だ。
未確認飛行物体とでも言うべきか、とんでもない規模の円盤が、どんどん空へと上がって行く。
あまりにも非常識な光景に、二人が呆然としていると、街の電光掲示板にニュースが流れ出した。

『緊急速報です。ホクリク地方北の海を震源として、巨大な地震が発生。同時に、謎の巨大な飛行物体が出現しています。現在、各種方面の機関が調査を進めております。なお、巨大な飛行物体はなおも上昇を続……け、いる……う、……』

ニュースの途中で明らかに異変が生じる。
映像にノイズが走り出し、古いテレビの砂嵐のようにザーザーと音を立てて画面がノイズだらけになってしまう。
しかし次の瞬間。
唐突に、全く別の場面が画面に映った。

『御機嫌よう。ホクリク地方の住民、そして、全世界の住民よ』

そこに映し出されたのは。
「マター……!」
ネオイビルの頂点に立つ、全ての黒幕。レオたちの最大の敵、マター。
一年前より遥かに痩せ細っているが、それに反比例するかのように狂気は増大している。

『現在、ホクリク地方に浮かび上がっている円盤。これは我々イビル、いや、ネオイビルの科学力全てを結集させ、作り上げた古代空中円盤都市。その名も、『スフィア・ディスク』です』

「空中円盤都市……だって?」
「どォいう原理で空さ飛んでるだ、あれ……」
『ホエール』の時にも同じことを思ったが、今回は空飛ぶ軍艦など足元にも及ばないほどの光景。どうやって空を飛んでいるのかなど知る由もないが、少なくともあれほどの科学力をネオイビルが有していること。それだけは、理解出来た。

『聞いているでしょう、『ブロック』諸君。我々は今からカントーの遥か南、スフィア遺跡へと向かい、アスフィアを復活させます。そしてそれが終われば、この地方、いやこの国、いやこの世界に、裁きが下されることとなるでしょう』

しかし、とマターは続け、

『貴方たちは今まで、散々私の邪魔をしてくれました。恐らく、今回も私の邪魔をしに来るのでしょう。それは目に見えたこと。だからこそ、この舞台を用意しました』

口元を吊り上げ、狂気の笑みを浮かべて、マターは告げる。

『この私を止めるのならば、『スフィア・ディスク』へと乗り込むのです、『ブロック』の者たちよ。そこで、今回の戦いの、全ての決着を付けようではありませんか!』

直後、ブツリと映像が途絶えた。
「……ふざけんじゃねえ。言われるまでもねえよ、そんなこと」
レオが強く拳を握り締めた、その直後。
レオのライブキャスターが、着信音を鳴らす。
発信元は、リョーマだ。
『レオか! 今のニュース、見てたよな!?』
「ええ、勿論です。今アカノハシティにいるので、これからすぐにカンタロウと一緒に向かいます!」
『よし、分かった。事は一刻を争う。すぐに来てくれよ。今回招集するメンバーは流石に大規模だから、アカノハ支部のどの部屋にも入らねえ。屋上まで来てくれ』
それだけ告げ、通話は切れてしまう。
恐らく、他のメンバーにも急いで連絡を取っているのだろう。
レオとカンタロウは顔を見合わせて頷き、走り出す。


続々と人が集まって来た。
アカノハ支部屋上の中心には副統率リョーマとチャンピオンのリカルドが立っており、その周りには『ブロック』他支部の統括や多くの構成員、アスカやマゼンタなどレオの友人たち、四天王やジムリーダーなど、それこそホクリク地方のほぼ全ての戦力が集まって来ている。
テレジアの話によると、このためだけに屋上を拡張工事したそうだ。
「っし、これで全員か」
呼ばれた人間は全員集まったようで、中心にいるリョーマが口を開く。
「それじゃあ、これで役者は揃いましたね。あれを見て分かる通り、とうとうネオイビルとの最終決戦の日がやって来ました」
リョーマが言葉と共に向こうの空を指差す。その先には、巨大な円盤が宙に浮かび上がっている。
「さっきニュースで流れてたと思いますが、この国の南にスフィア遺跡って名前の遺跡があります。あそこは伝説のポケモン、アスフィアの住処と言われています」
リョーマの発言に続き、
「そして、先ほどあの円盤を確認したところ、かつてスフィア遺跡に存在した空中都市、スフィアシティとほぼ同じ構造をしていることが判明した。恐らく、奴らはその遺跡を模した巨大都市を作り上げ、アスフィアを復活させようとしているのだろう」
リカルドがリョーマからバトンを受け取り、そう話す。
「だがあの円盤、スピードはそこまで早くない。ここからスフィア遺跡の孤島まであのスピードで行くとなれば、半日以上掛かってもおかしくない」
半日。
普通に考えればかなり遅い。しかし、世界の明暗を決めると言っても過言ではないこの決戦が半日で決まる。そう考えると、この時間は早いのか、遅いのか。
「それじゃあ、ここからの動きを指示します」
再びリョーマが口を開く。
「まずジムリーダーの皆さんと四天王の皆さん、そしてライオ博士。俺たち『ブロック』が総出でこの地方を離れてしまいますから、その間街の混乱抑えてください。よろしくお願いします」
次に、とリョーマは『ブロック』構成員とリカルドの方を見る。
「俺たち『ブロック』とチャンピオンで、あそこに突入する。突入方法は一つ、空から入り込むしかない。恐らく敵の妨害もあるだろうが、強引にでも突入する」
そこでリョーマは一旦言葉を切る。
そして。
アカノハ全体に響き渡るほどの大声で、叫んだ。

「お前ら、覚悟は出来てるか! 今日この日が、ネオイビル壊滅の日だ! やるべきことは一つだけ、出会った敵は全部倒せ! あの円盤を沈めて、その地に墓標を立ててやれ! 『ネオイビル、ここに眠る』ってなぁ!」

アカノハ支部屋上から街全体にかけてが、どよめくような歓声に包まれた。
リョーマが真っ先にボールを掲げ、トロピウスを繰り出す。
それに続くように、突入組がそれぞれの飛行ポケモンを繰り出し、次々と飛び乗っていく。
「それじゃあ、行くぞぉ!」
リョーマの叫びと共に。
『ブロック』の戦士たちが、一斉に飛び立った。

Re: 第二百二十六話 突入 ( No.392 )
日時: 2016/09/26 12:00
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: MaOD8qI9)

『ブロック』の者たちが飛翔し、巨大円盤都市に向けて空を駆け抜けていく。
近づくほどに円盤都市の全貌が明らかになっていく。
物凄く大きい。それこそ、ソルナシティの巨大遺跡を上回るほどに。
都市の目前まで迫ろうとしていた、その時。
ビークインに乗り、リョーマの隣を飛んでいるテレジアが叫んだ。

「前方より敵艦接近! 『ホエール』です!」

刹那。
数多の弾幕が、一向に襲い掛かる。
「ッ……トロピウス、ハリケーン!」
「ビークイン、防御指令!」
先頭のリョーマとテレジアが、咄嗟に指示を出す。
トロピウスは荒れ狂う暴風を巻き起こし、ビークインは無数の蜂の群れを召喚して守りの壁を作り上げるが、如何せん弾幕が多すぎで全てを防ぎ切ることが出来ない。
さらに、鯨を模した『ホエール』の口が開き、巨大な砲口が姿を現わす。
よく見るとエネルギーを充填しているのが分かるが、その間も弾幕は止まない。
「まずい……! リョーマさん、砲撃が来ます!」
「分かってる! だが流石に狙えねえ……!」
砲口のエネルギーは、みるみるうちに溜まっていく。
充填完了の、まさにその直前。

「レジギガス、冷凍パンチ!」

一同のはるか上空。
バクソウオの頭部に立ち、いつの間にかそこまで上昇していたリカルドの声が響いた。
刹那。
巨大ポケモン、レジギガスが『ホエール』の頭上に飛び乗り、冷気を込めた拳を戦艦の頭部に叩きつけた。
間一髪、エネルギー砲は軌道をずらされ、明後日の方向に飛んでいった。
その隙にリカルドは素早く辺りを見回し、
「アスカ、ライロウ! 共にこの戦艦を止めるぞ!」
真っ先に目に付いた二人の名前を呼ぶ。
「っ、はい!」
「わかりやしたぜ! リョーマ、お前たちは先に行け!」
ライロウがリョーマにそう告げ、残りの『ブロック』構成員たちは目前に迫った空中円盤都市へと突入していく。
「さあ、ネオイビル討伐の前に一仕事だ」
「前座なんて面倒ね。速攻で堕としてやるわ」
それを見届け、ライロウとアスカはリカルドに続き、『ホエール』の中へと乗り込んでいく。


「なんだこれ……街……?」
街。
何とか円盤に降り立ったレオたちの第一印象は、それだった。
円盤の上部は円形の巨大な都市のように作られていたのだ。
ただひたすらに広い街。着地点は人のいなくなった古い住宅街のような場所なのだが、奥には森もあれば塔もあり、似つかわしくない機械的な建物に、巨大な城まである。こんな巨大な街が、古代には存在したということなのだろうか。
「マターがいるのは、やっぱりあの城ですかね」
「どうかしら。あの塔の頂点の可能性もあるわよお」
「もしくは、あの研究施設みたいなところか」
正直、この段階では断定は出来ない。どこにマターがいてもおかしくはないのだ。
しかし、一つだけわかることがある。
「こんなところでも、やっぱり邪魔は入るんだな」
レオがそう呟く。
風化した住宅街の中から、気配を感じる。それも、多くの家からの多くの気配だ。『ブロック』は今、かなりの大軍に囲まれているのだろう。
「出て来ないなら、こっちから引っ張り出すぞ」
レオたちがボールを取り出した、まさにその瞬間。
周囲の住宅街から、一斉に夥しい数の下っ端が飛び出してくる。
「早速お出ましか! やっぱり本拠地だけあって、数が多いねえ!」
「ちょっと待ちいな、流石にこの数はきついで!」
皆それぞれのポケモンを繰り出し、下っ端軍に応戦するが、それこそ相当数の下っ端がいる。
何しろ『ブロック』の総勢よりも余程多いのだ。これを蹴散らすのは、時間も労力もかかるだろう。
「仕方ありません。リョーマ、ここは分散した方がいいですね! この広い街を全員で回っても非効率的ですし、それなら散開して個々人で動いた方がよさそうです!」
「元よりそのつもりだ! お前ら、まずはこいつらを突っ切って、それから天将やらマターをぶっ倒すぞ! 出て来い、ブレイオー!」
全員にそう指示を出すと、リョーマはブレイオーを繰り出し、いち早く下っ端の群れの中へ飛び込んでいった。
「キリがないな! ドサイドン、纏めて薙ぎ払え! 地震だ!」
ホロがドサイドンを繰り出し、地面を揺らして周りの下っ端の動きを止める。
「そこだ! エンペルト、ハイドロポンプ!」
そこにレオのエンペルトが大量の水を噴き出し、多数の下っ端を蹴散らした。しかし、まだ至る所に黒ずくめの集団がいる。
『ブロック』とネオイビルとの決戦は、まだ始まったばかりである——



そして。
「『ブロック』とネオイビルの最終決戦が、遂に始まったみたいだね」
ホクリク地方から遠く離れたある土地の塔の頂で、とある男が目を開いた。
彼の眼の前にあるのは、巨大な龍の描かれた祭壇。
「この時のためにここまで姿を隠していたけど、ようやく僕が動く時が来たようだ。準備は整っている。後は手筈通りに行ってくれれば、全てが上手くいく」
祭壇を見据えて、男は手を翳す。
ここまで誰にも姿を見せず、ひっそりと、しかし確実に準備を進めてきた。この今のために、準備を進めてきたのだ。
「さあ、頼むよ。偉大なる神話の龍よ、僕に力を貸してくれ——!」

Re: 第二百二十七話 碧天 ( No.393 )
日時: 2016/09/28 12:47
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: XYO3rYhP)

暴風を起こして下っ端を吹き飛ばし、その隙を突いて下っ端軍の包囲をくぐり抜け、カンタロウはそのまま一直線に駆け抜ける。
カンタロウが入り込んだのは森だった。そこでも何人か下っ端と出くわすが、軽く撃退し、奥へと突き進む。
やがてカンタロウは開けた場所へ辿り着く。周りを木々に囲まれているが、木漏れ日により薄っすらと光るその空間だけ、開けているのだ。
そこから先に進む道はない。間違いなくここが最奥。その根拠は、これ以上道がないだけではない。
「……よりにもよって、お前が来るとはな」
整えられた緑色の髪、青い服の胸にはネオイビルの紋章が入っており、迷彩柄のコートを羽織った男。
碧天隊統率、序列第七位——碧天将セドニー。
「なるほど、お前が相手だか。何度倒しても分かンねェよォだから、今回こそ叩き潰してやるだ」
「ほざけ。俺は、もう負けられねえんだよ。負けちゃいけねえんだ。これじゃ、何のためにここに入ったのか分かんねえからな」
「……?」
カンタロウが不審な表情を浮かべる。
明らかに、今までのセドニーとは違う。前回戦った時にはなかったものを、今のセドニーは抱えている。
「バトルは三……いいや、四対四だ。俺はもう二度と負けねえ。持てる力の全てを使って、お前を倒し、他の奴らも倒す。覚悟は出来てんだろうな、『ブロック』の鳥使い!」
セドニーの言葉に呼応し、その若草色の瞳が膨大な翠色の光を放ち、同時に手の甲に竜の爪のような翠の模様が浮かび上がる。
今までとは明確に違う、セドニーの気迫。
それを受けてなお、カンタロウの顔色は変わらない。
「上等だべ。そろそろ教えてやンねェといけねェだな、実力の違いってヤツをよォ!」
二人がボールを取り出したのは、ほぼ同時だった。
「出て来い、フワライド!」
「羽ばたけ、ペリッパー!」
セドニーの繰り出したポケモンは気球ポケモンのフワライド。四枚の手が付いたような紫色の気球のようなポケモンだ。
それに対してカンタロウのポケモンは、青い帽子を被った白い大きなペリカンのようなポケモン、運び屋ポケモンのペリッパー。
「時間も押してるし、早速行くべ! ペリッパー、ハイドロポンプ!」
初手からペリッパーはいきなり大技を繰り出す。
大きな口を開くと、大量の水流をフワライドへと放つ。
「フワライド、ゴーストダイブ!」
対するフワライドが、忽然と姿を消す。
カンタロウが瞬きしたその一瞬のうちに、フワライドは完全に虚空へと姿を隠し、
「十万ボルト!」
突然ペリッパーの背後に現れると、高電圧の強力な電撃を放つ。
「やべッ……ペリッパー、目覚めるパワー!」
咄嗟にペリッパーは周囲に無数の黄土色のエネルギー弾を放つ。
球体は電撃を打ち消し、フワライドに命中ふるが、フワライドにダメージを与えた様子はなく、
「フワライド、サイコキネシス!」
間髪入れずに放った念力の波により、ペリッパーは吹き飛ばされてしまう。
「地面タイプの目覚めるパワーだな。電気タイプ対策はして来てるようだが、俺のフワライドには通用しねえぞ」
「電気技さ受けなかっただけで充分だべ。ペリッパー、立て直せ! 冷凍ビーム!」
吹き飛ばされたペリッパーが再び飛翔し、口を開いて冷気の光線を発射する。
「フワライド、十万ボルト!」
フワライドが高電圧の電気を生み出し、強い電撃を発射する。
両者の技が激突、威力は互角で、競り合った末に爆発を起こす。
「フワライド、ハリケーン!」
「ペリッパー、こっちもハリケーンだ!」
フワライドとペリッパーが、共に嵐のような暴風を巻き起こす。
無数の木の葉が宙を舞い、周囲の木々が軋むが、二人と二匹は全く気にも留めない。
「最弱のくせに、ちったぁやるみてェだな」
「舐めるな。いくら最弱っつっても、今の俺のこの状態は間違いなく覚醒率100%。今までで一番強えんだよ。あんまり甘く見てると、森の餌にすっぞ」
「やれるもンなら、やってみるだな! ペリッパー、ハイドロポンプ!」
ペリッパーが大きく息を吸い込み、太い水柱を放出する。
「フワライド、もう一度ハリケーン!」
フワライドが高速回転し、再び嵐のような暴風を起こす。
風の壁が水流を防ぎ、吹き飛ばし、
「十万ボルト!」
その風の壁の中から、高電圧の強力な電撃が飛び出す。
「ペリッパー、急上昇! 真上から冷凍ビーム!」
吹き荒れる風を物ともせず、ペリッパーは電撃を躱して飛び上がる。
台風の目は風が吹かないように、回転するフワライドの頭上には風がない。
そこまで飛び上がると、ペリッパーは冷気の光線を真下に撃ち出す。
脳天に冷気の光線が直撃し、フワライドは大きく体勢を崩す。
「まだ終わってねェだぞ! ペリッパー、ハイドロポンプ!」
さらにペリッパーは大量の水を放出、追撃を仕掛けるが、
「フワライド、ゴーストダイブ!」
水がフワライドを捉える寸前、フワライドの姿が虚空に消える。
ペリッパーの放った水流はフワライドを捉えられず、その直後にペリッパーの正面からフワライドが現れ、四本の手をペリッパーに叩きつけ、地面へ叩き落とした。
「逃すな。フワライド、十万ボルト!」
フワライドの体から電気が迸り、高電圧の強力な電撃が放射される。
「チッ、ペリッパー、冷凍ビーム!」
地面に倒れながら、それでもペリッパーは何とか凍える冷気の光線を放つ。
降り注ぐ電撃は何とか相殺するが、
「ハリケーン!」
フワライドが高速で回転し、荒れ狂う暴風が巻き起こる。
ペリッパーは風に巻き上げられ、天高く吹き飛ばされる。
「捉えろ! フワライド、十万ボルト!」
宙を舞うペリッパーに狙いを定め、フワライドは正確に高電圧の電撃を放つ。
しかし。
「甘く見るでねェだぞ。ペリッパー、ハイドロポンプ!」
暴風を物ともせずにペリッパーは電撃を躱すと、返す刀で大量の水を噴射。
水柱がフワライドを捉えて吹き飛ばし、木の幹に叩きつけた。
「空中に飛ばされたッけ逆にありがてェだ。オラのペリッパーは口の中に人さ入れて飛べるくれェの力持ち。こンくれェの風でへばる訳ねェだろォが。オラが鳥ポケモンさ甘く見てくれンなよ」
決してダメージは小さくないが、それでもペリッパーは力強く羽ばたいている。
この一ヶ月ホウエンに帰って、ただひたすらに鍛えてきたのだ。
「やってくれるじゃねえか。フワライド、まだ行けるな」
セドニーの言葉を受けて木の幹からゆっくりと離れ、再びフワライドが浮上する。
「フワライド、ゴーストダイブ!」
フワライドが再び虚空へと姿を消す。
(さっきの二回で時間さ測っただ。このゴーストダイブ、もォ見切ったべ。消えてから出てくるまで、その時間は……ッ!)
「今だべ! ペリッパー、ハリケーン!」
フワライドが姿を現した、まさにその瞬間。
ペリッパーが大きく、力強く羽ばたき、荒れ狂う暴風を巻き起こした。
「なにっ……!? フワライド!」
なす術もなく、フワライドは暴風に吹き飛ばされる。
「墜とせ! ペリッパー、冷凍ビーム!」
上空に吹き飛ばされたフワライドを見上げ、ペリッパーは凍える冷気の光線を打ち上げる。
「っ、フワライド、サイコキネシス!」
吹き飛ばされながら、フワライドは強い念力を操作し、何とか冷気の光線を食い止める。
「ペリッパー、ハリケーン!」
「フワライド、こっちもハリケーン!」
ペリッパーは激しく羽ばたき、フワライドは高速回転し、荒れ狂う暴風をお互いの標的へと叩きつける。
風と風がぶつかり合い、お互いを飲み込んで規模をさらに拡大させる。
空中円盤都市のその森から、天高く、竜巻が巻き起こった。

Re: 第二百二十八話 緋天 ( No.394 )
日時: 2016/09/29 18:50
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: F8Gg2X0Y)

下っ端の大群を突破した後、サクラは城に辿り着く。
しかしサクラは城に乗り込んでも上には上がらず、中庭へと足を進めていく。
開けた中庭には中央に大きな広場があり、周りは花壇と花畑に覆われている。
そこでサクラを待ち構えていたのは、一人の女性。
赤、白、黄色の派手な華の模様が描かれた黒いドレスに身を包み、長髪は真紅のストレート。ドレスの胸元には、ネオイビルの紋章。
緋天隊統率、序列六位——緋天将ガーネット。
「……何となく、あんたが来る予感はしていたわ。結局、最後まであんたと戦うのね」
「あぁーらガーネットちゃん。あたしを待っててくれたなんて、嬉しいわあ」
真剣な表情を浮かべるガーネットに対して、相変わらずのわざとらしい猫撫で声でサクラは返す。
しかし、
「……なーんて。分かってるわよ、そんなふざけていられるような状況じゃないわよねえ」
喋り方はそのままだが、明らかにサクラの口調が変わった。
理由は単純。
口では説明しづらいが、今までとは明らかに違う、ガーネットの気を感じ取ったのだ。
「……今日はね、私の家族の命日なのよ」
静かに、しかし、力強く。
ガーネットが、言葉を紡ぐ。
「私の家族は十年前に殺された。今、私がいる、この組織みたいな組織にね」
だから、とガーネットは続け、
「私は同じことをする。世界を支配して我が一族をもう一度繁栄させる。それが私の、私の家族の望み」
ガーネットのドレスがふわりと舞い上がり、露出した太腿に鋭い竜の尾のような真紅の模様が浮かび上がる。
「この戦いに勝って、私たちは世界を支配する。我が血筋にかけて、この戦いは絶対に勝たなければならない! 母さん、父さん! 見ていますか、私が今から、ガーネット家を蘇らせてみせます!」
ガーネットがボールを取り出すと同時。紅の光が、ガーネットの瞳から放たれた。
「よくもまあ今まで好き勝手してくれたわね。丁度いいわ! ガーネット家復活の手始めに、あんたを地獄送りにしてやる!」
刹那。
ガーネットの瞳が、太腿の竜の尾が、爆発的な光を放つ。
「悪いけど、そうはいかないわよお。何だか知らないうちに、あたしがガーネットちゃんの目を覚まさせないといけなくなってきたみたいねえ」
そしてそれを見ても一歩も引かず、サクラもモンスターボールを取り出す。
「あたしは今から、ガーネットちゃん、貴女を倒して、正気に戻します。その後、お説教させてもらいます。バトルは四対四。いいですね」
非常に珍しいことに。
サクラの口調が、真剣なものに変わる。
「上等よ! 我が名誉にかけて、ロズレイド!」
「絶対に勝たなきゃね。頼むわよ、ガーメイル!」
ガーネットのポケモンはブーケポケモンのロズレイド。白い薔薇のような髪をした人型の植物のポケモンで、両手には色の違う花束を持っている。
対するサクラのポケモンは黒い体に橙の大きな翅を持つ蛾のような虫ポケモン、ミノガポケモンのガーメイル。
「やってしまいなさい! ロズレイド、ギガドレイン!」
ロズレイドの両腕の花束から、棘だらけの無数の蔓が飛び出す。
淡く輝く薔薇の蔓が、一斉にガーメイルに襲い掛かる。
「ガーメイル、虫のさざめき!」
対するガーメイルは四翅を激しく振動させて衝撃波を放ち、無数の蔓の動きを止める。
「今度はこっちからよ。ガーメイル、エアスラッシュ!」
翅の振動を止めると、今度はガーメイルは翅を羽ばたかせ、無数の空気の刃を飛ばしていく。
「ロズレイド、躱してヘドロ爆弾!」
だがロズレイドはダンサーのような身軽な動きで空気の刃を躱しつつ、徐々にガーメイルとの距離を詰めて行き、花束からヘドロの塊の弾幕を撃ち出す。
「ガーメイル、躱して蝶の舞!」
ガーメイルもすばしっこい動きで舞いながら飛び回り、ヘドロの弾幕を次々と躱していく。
同時に、ガーメイルの特殊能力と素早さが上昇する。
「だったら、これでも食らえ! ロズレイド、リーフストーム!」
痺れを切らしたガーネットが叫ぶ。
それに呼応し、ロズレイドの花束の周囲で空気が渦を巻く。
刹那、ロズレイドの両手の花束から風の渦が噴き出す。
それもただのリーフストームではない。尖った葉ではなく、赤と青の花弁の二つの嵐が、ガーメイルに襲い掛かる。
「ガーメイル! 躱して!」
上昇した素早さでガーメイルは二つの花弁の渦から逃れるが、しかし、
「甘いわ! ロズレイド!」
なんとロズレイドは蔓を振るうように両手の花束を振り、風と花弁の渦を鞭のように振るった。
回避しようとするガーメイルをしつこく追いかけ、遂に花弁の嵐に閉じ込め、吹き飛ばす。
「やるわね……! ガーメイル、大丈夫?」
地面に落とされたガーメイルは、すぐさま顔を見上げて再び飛び上がる。
タイプ相性と特防が上がっていたおかげで、致命傷には至っていないが、それでもかなりのダメージ。
逆に言えば、タイプ相性が悪く、特防も上がったガーメイルにここまでのダメージを与える今のリーフストームが、恐ろしいほどに高威力だった、ということだ。
「これで終わりなんて思ってないわよねえ! ロズレイド、シャドーボール!」
ロズレイドが飛び上がり、花束から無数の影の弾を撃ち出す。
「くっ、ガーメイル、虫のさざめき!」
ガーメイルは再び四翅を振動させて衝撃波を起こし、影の弾を次々と粉砕していく。
「ギガドレイン!」
「躱して目覚めるパワー!」
ロズレイドの花束から無数の棘だらけの蔓が飛び出し、一斉にガーメイルに襲い掛かる。
しかし素早さの上がったガーメイルは蔓を掻い潜り、ロズレイドに近づき、無数の赤いエネルギーの球体を放つ。
球体がロズレイドに炸裂すると、その部位が焼け焦げたように黒く煤がつく。
「炎タイプの目覚めるパワー……ロズレイド、もう一度ギガドレイン!」
片腕を引っ込め、ロズレイドはもう片腕の花束から棘だらけの蔓を伸ばす。
「ガーメイル、虫のさざめき!」
甲高い声を上げながら翅を激しく振動させ、衝撃波を発してガーメイルは無数の蔓を全て弾き返す。
しかし、
「ヘドロ爆弾!」
ガーメイルの翅が止まったその一瞬の隙を突き、ロズレイドはもう片方の花束を突き出し、無数のヘドロを固めたような大きなヘドロの爆弾を飛ばす。
動きを止めた瞬間のガーメイルに直撃し、ヘドロが炸裂して吹き飛ばされる。
「っ……! ガーメイル、立て直して! 蝶の舞!」
「させるもんですか! ロズレイド、ギガドレイン!」
まだ何とかガーメイルは起き上がり、美しく舞うように宙に飛び上がる。
しかしそれを待たずにロズレイドの両手から棘だらけの無数の蔓が伸び、ガーメイルへと迫る。
「ガーメイル、躱してエアスラッシュ!」
四方八方から襲い掛かる薔薇の蔓を、ガーメイルは飛び越え、潜り抜け、何とか全て回避し、ロズレイドの上を取り、四枚の翅から無数の空気の刃を落とす。
「ロズレイド、シャドーボール!」
ロズレイドも花束から次々と影の弾を撃ち出していくが、特攻が上昇しているガーメイルの方がやはり強く、影の弾は打ち破られ、ロズレイドは刃の雨にその身を切り裂かれる。
「今よガーメイル! 目覚めるパワー!」
ガーメイルの周囲に、無数の赤いエネルギーの球体が浮かび上がる。
炎の力を持つその球体を、ガーメイルは一斉にロズレイドに向けて発射する。
だが。

「ロズレイド、リーフストーム!」

両手の花束に空気の渦を纏い、ロズレイドは花弁の嵐を巻き起こす。
赤と青の花弁を舞い踊らせ、鞭のように嵐を操り、炎のエネルギーの球体ごとガーメイルを花弁の嵐に飲み込んだ。
「まず……っ! ガーメイル!?」
嵐に閉じ込められ、ガーメイルは空高く吹き飛ばされる。
「ロズレイド、決めなさい! ヘドロ爆弾!」
砲台のようにブーケを構えて、ロズレイドは真上にヘドロの塊を飛ばす。
宙を舞うガーメイルに、ヘドロの爆弾が迫る。


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