二次創作小説(紙ほか)

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

ポケットモンスター 星と旋風の使徒
日時: 2017/01/28 12:25
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=22078

どうも、初めましての人は初めまして、そうでない人はこんにちは。パーセンターです。
えー、また始まってしまいました。四作目ですね。
今作は前作の完全続編となっております。
参照をクリックすれば、前作に飛びます。
レオの新しい冒険が、始まります。

※注意
・例によって例のごとくノープランです。
・パーセンターは大学生でございます。現在数々の課題に追われて更新頻度が非常に低いですがご了承ください。
・登場するポケモンが色々とややこしいです。詳しくは近々やるオリキャラ募集のときに説明しますが、簡単に言うと『プラチナのシンオウ図鑑に載っているポケモン+ベガでのみ登場するポケモン』となります。

これくらいですね。
内容としては、前作と同様、オリジナルの地方でのゲームのような冒険ものとなります。

それでは、よろしくお願いします。

登場人物
味方side >>25
N・E団side(ネタバレ注意)>>153
用語(ネタバレ注意)>>342

プロローグ >>1

シラハタウン&メガキタウン編
>>6 >>20 >>22
ハスバナシティ編
>>27 >>31 >>32 >>34 >>36
デンエイシティ編
>>39 >>40 >>41 >>42 >>45 >>46 >>50 >>53
アカノハシティ編
>>55 >>57 >>58 >>62 >>63 >>64 >>65 >>68 >>70 >>72 >>74 >>75 >>79 >>80
コウホクシティ編
>>81 >>82 >>83 >>84 >>87 >>88 >>89 >>93 >>94 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>106 >>107 >>108 >>111 >>112 >>115 >>116 >>117 >>118
ツクモシティ&スティラタウン編
>>121 >>122 >>123 >>126 >>127 >>128 >>129 >>130 >>133 >>138 >>145 >>152 >>157 >>158 >>159 >>162 >>163 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>171 >>172 >>173 >>175 >>176 >>177
シヌマシティ編
>>178 >>179 >>180 >>185 >>186 >>188 >>189 >>190 >>193 >>194 >>195 >>199 >>200 >>206 >>207 >>210 >>211 >>214 >>215 >>216 >>217 >>218 >>221 >>222 >>223 >>224 >>227 >>229 >>230 >>233
ヨザクラタウン編
>>234 >>235 >>236 >>242 >>243 >>246 >>247 >>248 >>251 >>254 >>255 >>256 >>257 >>258 >>259 >>260 >>261 >>264 >>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>273 >>274 >>275 >>276 >>277 >>280 >>281 >>283 >>284 >>285 >>288 >>289 >>290 >>291 >>294 >>295 >>296 >>297 >>298 >>299 >>300 >>301 >>303 >>304 >>305
テンモンシティ編
>>306 >>309 >>310 >>311 >>312 >>313 >>314 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>322 >>324 >>325 >>326 >>327 >>328 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>340 >>341
四天王&チャンピオン編
>>343 >>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>352 >>355 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>363 >>364 >>365 >>366 >>367 >>368 >>369 >>370 >>371 >>372 >>373 >>378 >>379 >>380
N・E団編
>>383 >>384 >>385 >>386 >>387 >>388 >>389 >>390

決戦編
零節 都市
>>391 >>392
一節 碧天
>>393 >>400
二節 緋天
>>394 >>401
三節 蒼天
>>395 >>404
四節 破天
>>396
五節 夜天
>>397
六節 輝天
>>398
七節 聖天
>>399


非公式(ベガ)ポケモン図鑑 >>5

Re: ポケットモンスター 星と旋風の使徒 ( No.265 )
日時: 2014/07/23 21:03
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

「油断するな、あらゆる可能性を想定し、常に警戒せよ」

ミヤビ(男)50歳
容姿:髪は白く、少し長めで、目は細く鋭い。紋の入った紫色の着物を着ており、腰には短い刀を差している。体格は良く、背も高い。
性格:冷静で真面目、高いカリスマ性を持つ。ヨザクラタウンに住む忍びの者たちをまとめるリーダーとしての厳しさや寛容さを持ち合わせているが、外敵に対しては容赦しない。軍神トパズに匹敵するほどの戦闘知識を持っており、非常に用心深い。
戦術:変幻自在の怪しの技、忍術のような数々の戦術を使いこなす。攻撃と搦め手の絶妙な組み合わせによって、相手を確実に追い込んでいく。
ジムリーダー肩書き:『背中刺す毒牙』

手持ちポケモン

ゲンガー(♂)
特性:浮遊
技:鬼火 サイコキネシス シャドーボール ヘドロ爆弾

カミギリー(♂)
特性:免疫
技:影分身 穴を掘る 辻斬り 毒突き

ドクロッグ(♂)
特性:危険予知
技:身代わり マグナムパンチ 毒突き 悪の波動

クロバット(♂)
特性:精神力
技:黒い霧 シザークロス エアスラッシュ クロスポイズン

Re: 第百二十九話 渾身 ( No.266 )
日時: 2014/07/28 21:14
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

「ポリゴンZ、雷!」
ポリゴンZが体を激しく振動させ、雷に匹敵するほどの高電圧の電撃を放つ。
「パンプッチ、エナジーボール!」
パンプッチは杖を振り、凝縮した自然の力を撃ち出し、電撃を相殺、さらに、
「放電だ!」
パンプッチが新しく覚えた技、放電。
パンプッチの周囲全体に、激しく電撃を撒き散らす。
「これは躱せませんね……だったらポリゴンZ、冷凍ビーム!」
放電の電撃は範囲が非常に広い反面、雷や十万ボルトほどの威力は無い。
放電を一発耐え、冷凍ビームで反撃を狙うポリゴンZだが、
「遅いぜ! パンプッチ、ハイドロポンプ!」
パンプッチが翳した杖から、大量の水が噴射される。
放電を喰らった直後のポリゴンZに直撃し、大きく吹っ飛ばす。
「エナジーボール!」
さらにパンプッチは追撃をかける。
手にした葉の杖を振り、自然の力を集めた弾を撃ち出す。
「あまり調子に乗らないでくださいよ! ポリゴンZ、サイコキネシス!」
ポリゴンZは自身に念力をかけて強引に体勢を戻し、さらに念力の波を放ってエナジーボールを防ぎ、体勢を立て直す。
「パンプッチ、ハイドロポンプ!」
「ポリゴンZ、冷凍ビーム!」
パンプッチが大量の水を噴射し、ポリゴンZが冷気を込めた光線を放つ。
水がポリゴンZに命中するが、その水の中を貫き、冷気の光線がパンプッチを捉える。
「やっと当たりましたか! ポリゴンZ、サイコキネシス!」
どちらも攻撃を喰らったが、パンプッチの方は効果抜群を受けている。
立て直しが早かったポリゴンZが、強い念力を操り、念力の波を飛ばす。
「くっ、パンプッチ、シャドーボール!」
何とかパンプッチは影の弾を放つが、威力が十分ではない。
勢いは削いだものの、念力を受けてしまう。
「パンプッチ、立て直せ! エナジーボール!」
体勢を戻し、パンプッチは杖を振る。
指揮棒のように杖を操り、連続で凝縮した自然の力を撃ち出す。
「ポリゴンZ、冷凍ビーム! 全て撃ち落としますよ!」
ポリゴンZの放つ冷気の光線が、鞭のようにしなる。
襲い来るエナジーボールを、次々と破壊していくが、
「そこだ! パンプッチ、もう一度エナジーボール!」
ポリゴンZの真上まで来ていたパンプッチが杖を突き出し、エナジーボールを放ってポリゴンZを吹っ飛ばす。
「そろそろ底が見えてきたぜ。パンプッチ、ハイドロポンプ!」
パンプッチの杖の先から、大量の水が噴き出す。
「そのポリゴンZの戦法は、典型的なゴリ押しだ。能力の高さも加わって最初は苦戦するけど、細かい戦術を使わない分、次の動きを予測しやすくなっていく。三体も相手にしている時間があったし、もうそいつの動きは殆ど把握してるぜ」
大量の水が、ポリゴンZを襲う。
「ッ、ポリゴンZ、サイコキネシス!」
体勢を崩しながらも、何とかポリゴンZは強い念力を放つ。
威力は削いだものの、水を全身に浴びる。
「畳み掛けろ! パンプッチ、放電!」
パンプッチが周囲に電撃を撃ち出す。
「放電くらいなら! ポリゴンZ、一発耐えて冷凍ビーム!」
放電は威力はそこまで高くない。
無理に躱そうとせず、一発受けて体勢を立て直そうとするが、
「残念だったな。これで僕の勝ちだぜ」
刹那、マツリの耳に入ってきたのは、レオの勝ち誇ったような声。
「貴方の勝ち? 一体何をどうしたら、そんな結論が——」
「自分のポケモンを見てみろよ」
レオに促され、マツリはポリゴンZに目線を移す。

マツリが見たものは、目を瞑り、痺れて小刻みに痙攣するポリゴンZだった。

「ポリゴンZはただでさえ機械製で、しかも全身に水を浴びている。その状態で電撃を喰らえば、どうなるかくらい分かるだろ」
単純に言えば、一時的にポリゴンZの体がショートしているのだ。
「ッ……それを狙っていたんですか……!」
ポリゴンZはまだ痙攣しており、動けない。
そして、パンプッチは既に杖を振り上げている。
「パンプッチ、エナジーボール!」
振り下ろした杖の先から、自然の生み出す命の力を凝縮した念弾が撃ち出される。
ようやくポリゴンが顔を上げた時には、もう遅かった。
既に目の前に、翠色に輝く自然の波動が迫っていた。



「行って来なさい、ルカリオ!」
アスカのポケモンは、リオルの進化系、ルカリオ。
「ほう、よく鍛えられているポケモンだな。だが、我のマカドゥスには到底及ばんようだな」
「うっさいわね! ルカリオ、ラスターカノン!」
ルカリオが右手を突き出すが、
「遅い」
既にマカドゥスはルカリオの目の前に迫っている。
「マカドゥス、ダイヤブラストだ」
「ッ!? ルカリオ、神速!」
ルカリオが咄嗟に超スピードで離れた直後、先ほどまでルカリオがいたところを煌めく爆風が吹き飛ばした。
「ルカリオ、インファイト!」
神速を使って壁まで下がったルカリオが、壁を蹴って跳び出す。
だが。
「躱せ」
ルカリオの怒涛の連続攻撃を、マカドゥスは左眼のみで全て見切る。
ルカリオの突き出す拳、爪、蹴り。それら全ては恐ろしいほどの勢いを誇り、しかし、マカドゥスには届かない。
「悪の波動!」
「ダイヤブラスト!」
ルカリオの悪意に満ちた波動がマカドゥスを捉えるが、全く怯む様子もなく、マカドゥスは煌めく爆風を飛ばす。
爆風をまともに受けたルカリオが吹っ飛ばされる。
効果今一つであることが信じられないくらいの、大ダメージだった。
「一撃で大ダメージを与えるパワー、相手を圧倒するスピード。どんな攻撃を撃ち込まれようとも決して倒れない精神力。我のマカドゥスは、戦場において必要なものを全て兼ね備えている。数多の戦闘を勝ち抜いて来た我らに、貴様のような小娘如きが勝てるはずがないだろう」
輝天のトパズの口元が僅かに緩む。
「……っ、まだ分かんないでしょ! ルカリオ、神速!」
ルカリオは起き上がると、地を蹴って一瞬でマカドゥスの後ろへと周り、
「ラスターカノン!」
右腕を突き出し、鋼の力を一点に集め、光線に変えて放出するが、
「マカドゥス、磁力線!」
マカドゥスの周囲を磁力の波が覆う。
強烈な磁力によって、鋼の光線は容易く打ち消される。
さらに、
「もう一度磁力線だ!」
マカドゥスを覆う磁力の波が、一斉に周囲に放射される。
強い磁力がルカリオを襲い、吹っ飛ばす。
「……無駄だな」
小さくトパズが呟く。
「そのルカリオの力を見せてもらっていたが、その程度の実力では到底我がマカドゥスには敵うまい。次でとどめを刺す」
アスカが言葉を返す前に、トパズは次の技を指示する。

「マカドゥス、雷だ!」

マカドゥスの岩のような体毛がぴんと逆立ち、全身に電気を纏う。
次の瞬間、マカドゥスの体から、八本の雷撃の槍が放出された。
それら全てが凄まじいスピードで、かつ確実にルカリオに襲い掛かる。
躱せる隙も無く、八本の雷撃をまともに浴びたルカリオが吹っ飛ばされる。
地面に落ちた時には、既にルカリオは戦闘不能になっていた。
「……ルカリオ、ありがとう。戻って休んでて」
ルカリオをボールに戻し、震える手でアスカは最後のボールを掴む。
「戦意だけは相変わらずか。その姿勢は評価するが、勇気と無謀は全くの別物だぞ」
トパズの声に対し。
「うっさいわね……まだ終わったわけでもないのに、よくもそんな大口を叩けるわね!」
怒りに震え。
アスカが、激昂する。
「何の関係もない忍者の人たちの村を傷つけておいて、よくもそんな口が叩けるわね! あんたらみたいなクズに、私は絶対に負けないから!」
アスカの怒声に、トパズは何も答えなかった。
瞬き一つせず、じっとアスカの目を見据える。
そして、アスカが最後のボールを取り出す。
「行って来なさい、ゴウカザル!」
アスカの最後のポケモンは、橙色の体に白い体毛を持つ大きな猿のようなポケモン。
頭部には激しい炎が燃え盛り、腕や足、胴には、金色の輪のような硬い模様が目立つ。
ヒコザルの最終進化系、火炎ポケモンのゴウカザル。炎・格闘タイプ。
「行きなさいゴウカザル! マッハパンチ!」
拳を構え、ゴウカザルは動く。
ルカリオの神速をも上回るスピードで瞬時にマカドゥスとの距離を詰め、潰れた右眼のすぐ下に拳をめり込ませ、殴り飛ばした。
トパズの表情が僅かに変化する。
「ゴウカザル、ストーンエッジ!」
ゴウカザルの周囲に、無数の尖った岩が浮かぶ。
両腕を大きく振り下ろし、岩を一斉に撃ち出す。
「マカドゥス、磁力線!」
マカドゥスが磁気を操り、磁力の波を起こす。
襲い来る岩は、全て磁力の波に破壊される。
「マカドゥス、ダイヤブラスト!」
一瞬でマカドゥスがゴウカザルとの距離を詰める。
周囲に青白く煌めく爆風を起こし、ゴウカザルを吹き飛ばそうとするが、
「ゴウカザル、フレアドライブ!」
ゴウカザルは怯まなかった。
紅の色を超えてさらに勢いを増す青白い灼熱の炎を纏い、ゴウカザルはダイヤブラストに真っ向から挑む。
爆風の中を突っ切り、渾身の力を込めてマカドゥスに激突、マカドゥスを吹き飛ばした。
「気合玉!」
そしてゴウカザルは両手を構える。
自らに宿るありったけの気を一点に凝縮させ、巨大なエネルギーの波動を放出した。
渾身の気合玉がマカドゥスを捉え、大爆発を起こす。

Re: 第百三十話 風雲 ( No.267 )
日時: 2014/08/08 19:25
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: p3cEqORI)

「くっ、最後の最後で一本取られましたね……」
「瓦礫だけでなく、地中の岩が隆起したようだな……お前のコモラゴンのパワーでも砕けぬとは」
アヤメとコタロウは、ケケの置き土産に苦戦していた。
トパズは極めて強引に侵入したが、本来この屋敷は正面からしか入れない。
窓は極めて硬く、割ることが出来ないのだ。
コモラゴンが拳を、アルデッパが蔓を撃ち込むが、一向に壊れる気配がない。
その時。

「どいてな」

突然、野太い男の声が響いた。
アヤメとコタロウが振り返ると、そこには一つの大柄な人影が。
傍らには、オレンジ色の大きなネズミのようなポケモンが控えている。
「貴方は……!」
「どうしてここに!?」
驚くコタロウとアヤメを気に留めず、その男は進み出る。
「アイアンテール!」
男がそう叫んだ直後、そのポケモンが跳び上がり、思い切り尻尾を振り下ろす。
刹那。
屋敷の入り口を塞ぐ岩が、粉々に砕け散った。



「捻り潰せ、ぶっ殺せ! ティラノス、ぶち壊す!」
怒り狂ったような雄叫びを上げ、ティラノスは突撃する。
「ゲンガー、躱せ」
ゲンガーは地中に潜り、ティラノスの一撃を躱す。
「引きずり出せ! グランボールダだ!」
「同じ手は通用せんぞ。ゲンガー、鬼火だ!」
ティラノスが地面を踏み鳴らすが、それよりも早くゲンガーが地面から飛び出し、青白く揺らめく火を放つ。
しかし、
「効かねえ! ティラノス、ぶち壊す!」
放った鬼火は無数の岩に吹き飛ばされ、さらにティラノスが渾身の力を込めて突撃する。
慌ててゲンガーは地中に潜ろうとするが、少し遅かった。
ティラノスの必殺の一撃を受けたゲンガーが吹き飛ばされる。
当然耐えられるはずもなく、ゲンガーは戦闘不能になってしまった。
「ゲンガー、よくやった。戻って休め」
ゲンガーを戻し、ミヤビは最後のボールを取り出す。
「ギャヒャヒャヒャヒャ! さあさあ、これで後一体! そいつをぶっ飛ばして、ゲームセットだ!」
凶悪な笑みを浮かべるメジストだが、
「そう上手くは行かせんがな」
余裕を込めてミヤビは言い返す。
「私の最後の一体は、先ほどのクロバットだ。これから私は、戦場をこの森全体に広げ、森中を飛び回っての戦いを展開する」
「ギャハハ! そりゃあ好都合だ、お前がどこかへ行った隙に、俺はあっちに戻れば——」
「ちなみに」
メジストの言葉を遮って、ミヤビは続ける。
「この森の中を私は完璧に把握している。ほんの一瞬でもお前の私に対する戦意が消えたのを感じれば、すぐに私はお前の元に立ち塞がる」
ミヤビの言葉を聞き、メジストの表情には明確な不快感が現れる。
「っ、ふざけんじゃねえぞてめえは! バトルを続けるなら、そっちから真面目にぶつかって来やがれ!」
「ふっ、生憎これが忍びの戦い方でな」
メジストの怒声も、ミヤビは軽く受け流す。
「さあ、終わりのない勝負を始めようではないか。なあに、向こうでの勝負が終わるまでの間だけだ。楽しむとしようぞ」



「ポリゴンZ、よく頑張りました。戻って休んでてください」
エナジーボールの直撃を受け、戦闘不能となったポリゴンZを労い、マツリはポリゴンZをボールに戻す。
「負けてしまいましたか……流石は天将の方々が要注意人物とする人物ですね」
しかし、とマツリは続け、
「今戦っている貴方のお友達は、トパズ様には絶対に勝てない。あの人はあらゆる戦闘のプロです。いくらトレーナーをやっていようと、私や貴方は所詮は素人。戦闘経験の差が違いすぎます」
「そんなの、やってみなきゃ分からないだろ。僕だって、未覚醒とはいえ一度トパズに勝ってるし、ギリギリだけど覚醒したソライトに勝ったこともある」
レオが反論するが、
「いいえ、絶対に無理です」
マツリははっきりと言い切った。
「何と言っても、あの人は覚醒状態では天将第二位。第一位のお方には少々事情があるため、あの人が実質的な天将のリーダーなんです」
しかも、と、さらにマツリは言葉を続ける。

「天将の中で唯一、あの人だけは、覚醒率を自力で制御出来るんですから」

レオの思考が、一瞬停止した。
ソライトやラピスですら完全に引き出すことが出来ない覚醒を、トパズは意のままに操ることが出来る。
その事実だけで、トパズの実力が如何に高いかかが分かってしまう。
「現在私たちが把握している敵対戦力の中では『ブロック』副統率くらいじゃないですか? トパズ様とまともにやり合える可能性があるのは」
マツリがそう言うが、最早レオの耳には入っていなかった。
レオの目に映るものは、隣で輝天将を相手に戦う、幼馴染の姿のみ。
(アスカ……!)
心の内で、レオは祈る。



気合玉がマカドゥスに直撃し、大爆発を起こす。
(これで、やったでしょ……! 流石にまだ倒せてはいないだろうけど、今の攻撃で受けたダメージは相当大きいはずよ……!)
爆発の中心を、アスカはじっと見据える。
だが。

「まあまあ、と言ったところだな」

今度こそ、本物の絶望がアスカに襲い掛かった。
砂煙が晴れたその場所に、マカドゥスは立っていたのだ。
多少の傷は受けているものの、先ほどまでと変わらない威圧感を放ち。
(う……嘘でしょ……?)
アスカの思考が。
(こんな化け物に……まともに、相対出来るわけが……!)
恐怖という名の怪物に、呑み込まれる。
同時に、アスカは理解した。理解してしまった。
勝てない。
この目の前の化け物には、絶対に勝てない。
目の前に立つ敵と、自分との間に、絶望的なまでの差があるということに、アスカは気付いてしまった。
気付けば、足がガクガクと震えている。
「まあ、最初思っていたよりはやるようだな」
そんなアスカの状態を見た上で、トパズが口を開く。
「そのゴウカザルはスピードには相当磨きがかかっているし、物理技、特殊技の威力も申し分ない。それくらいの実力があれば、我々N・E団を相手にしても十分やっていけるだろうな」
だが、とトパズは続け、
「貴様は我を甘く見過ぎたのだよ。最初のエーフィをあっさり失っても我が何も気に留めなかった時点で、我が何か隠していることに気付くべきだった。未覚醒で第四位と低位置にいるのにも関わらず、軍隊の統率を任されている、その本当の意味にも気付くべきだったのだ」
トパズが手を翳すと、マカドゥスが電気を溜め始める。
「とどめを刺せ。マカドゥス、雷!」
マカドゥスの体から、バチバチと激しく音を立てて超高電圧の電撃が放出される。
その電撃は八つの雷撃の槍に分かれ、凄まじい勢いでゴウカザルに襲い掛かる。
青白い輝きを放つ八本の槍が、ゴウカザルを貫く。
まさにその直前。

「ライチュウ、光の壁!」

マカドゥスとゴウカザルの間に、何者かが割り込んだ。
光り輝く壁を瞬時に作り上げ、八本の雷撃の槍を受け止めている。
「ライチュウ、瓦割りだ!」
マカドゥスの雷を食い止めると、そのポケモンは地を蹴って跳び、一気にマカドゥスとの距離を詰め、手刀を振り下ろす。
「マカドゥス、躱せ」
しかしマカドゥスは瞬時に離れ、瓦割を躱す。
「何者だ」
乱入者に対して、トパズが低い声で言い放つ。
その乱入者が物陰から姿を現した。
短めの金髪を立たせ、黒いコートを着た、長身の黒づくめの男。
サングラスを掛けており、その風貌はヤクザと間違えられてもおかしくない。
そして、その傍にいる、稲妻型の長い尻尾を持つオレンジ色の大きなネズミのようなこのポケモン。
このポケモンの名はライチュウ、電気タイプ。
「本来ならば貴様らに俺の名を名乗る義理はないが、今回は特別だ」
そう言って黒づくめの男はサングラスを外す。
黒い瞳をしており、眼つきは非常に鋭い。
そしてこの時、レオは気付いた。
男の耳に付けられたピアスの一つが、『ブロック』の紋章の形をしていたのだ。

「『ブロック』テンモンシティ支部統括、ライロウ。その胸によく刻んでおくんだな」

Re: 第百三十一話 秘策 ( No.268 )
日時: 2014/08/13 17:54
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: GEZjoiD8)

「何者かと思ったが、ただの『ブロック』の一統率か。貴様一人が来たところで、我の敵ではない」
トパズが無表情で言うのに対し、
「それはどうかな」
ライロウは不敵な笑みを浮かべる。
「見たところ、てめえの手持ちはあとそいつ一体。対して、俺はライチュウ以外にもあと三体のポケモンがいる。言っとくが、俺は『ブロック』三位の腕前だぞ」
「……」
一瞬訪れる静寂。
ライロウを見据えるトパズの目が細くなる。
刹那。
「マカドゥス、雷!」
「ライチュウ、ボルテッカー!」
マカドゥスの八本の雷撃の槍と、ライチュウの激しい電撃を纏った突撃が激突する。
激しい競り合いが続くが、やがてライチュウが押し戻され、吹っ飛ばされる。
「っ、流石のパワーだな。光の壁があってもここまで押されるか」
そう言ったライロウだが、口調に焦りはない。
「だが、幸いてめえのポケモンはあと一体だから、突破口は無いわけじゃねえ。三体でそのマカドゥスの動きを完全に見極め、残りでその隙を突く。残念だったな輝天将、てめえの負けだ」
ライロウの言葉を、無表情のまま聞いていたトパズが、
「そうだな」
静かに口を開く。
「我のマカドゥスでもこの展開は厳しいだろうな。メジストを呼び戻してもいいが、恐らくあの忍びの長が逃がさないだろう。なるほど、確かにここで貴様を突破するのは無理そうだ」
だが、とトパズは続ける。

「忘れたか? 今回の我々の目的は、宝玉の回収だぞ」

直後。
「トパズ様、宝玉の回収、完了致しました」
全員がトパズとライロウに気を取られていた隙に、マツリが三つの宝玉を確保してしまっていた。
「よくやった。マツリ、先に戻っていろ。マカドゥス、行け」
「了解です」
素早い動きでマツリはマカドゥスに飛び乗る。
マカドゥスは大きく跳躍し、壊れた屋根から外に出て行ってしまった。
「っ、待て! トゲキッス、頼む!」
咄嗟にレオがトゲキッスを出す。
「マカドゥスを追ってくれ!」
レオの指示を受け、トゲキッスは屋敷の外へと飛び上がろうとする。
だが。
直後、上空からマカドゥスのものとはまた別の電撃が撃ち出される。
予想外の攻撃にトゲキッスは反応出来ず、電撃を浴びてしまう。
「ちっ、誰だ!」
レオが上を見上げると、いつの間に来たのか、屋敷上空にはN・E空中輸送ドックが。
そしてその電撃の主は、乗用のユニットのようなものを付けたジバコイル。ソライトのものだろう。
ジバコイルはトパズの元まで降り、トパズはそのユニットに飛び乗る。
「それでは、我々はこれで撤収する。さらばだ」
そう言うが早いか、ジバコイルは上昇し、ドッグの中へ乗り込む。
次の瞬間には、空中輸送ドックはエンジン音と共に飛び去っていった。
「ッ……くそっ!」
レオが声を荒げ、床に拳を叩きつける。
「大事な宝を守れなかった……ミヤビさんに、何て言えば……!」
力なくして座り込むレオだが、そこで気付く。
横にいるライロウが、小さく笑みを浮かべていることに。
「ん?」
レオの視線に気付いたのか、ライロウが振り向く。
「何だ、そんな変な顔して。何をそんなに悔しがってる?」
「何って……貴方こそ何言ってるんです!? 宝玉が奪われたの、見てましたよね!?」
レオが声を荒げると、ライロウは少し驚くが、すぐに笑みを浮かべる。
「あーそっかそっか。お前らはミヤビから今回の作戦を聞いてねえのか」
「?」
怪訝な表情を浮かべるレオに、さらにライロウは続ける。
「時期に分かるぜ。この勝負は、俺たちの勝ちだ。おや、噂をすれば、もう来たみたいだぜ」



ピピピッ……と。
メジストの服の中から、小さな電子音が鳴る。
「おや」
ミヤビとクロバットを追っていたメジストが立ち止まった。
「ティラノス、止まれ。決着がついたらしいぜ」
メジストの指示を受けてティラノスは止まる。
戦い足りないとでも言うかのようにメジストの方を見、低い唸り声を上げる。
「すまんな。次やる時は、また暴れようぜ」
やや不満そうだったが、ティラノスは頷き、ボールに戻る。
それと同時に、メジストの顔に浮かぶ龍の顔のような黒い光が消える。
「向こうの決着が付いたか」
メジストの様子を見て、ミヤビが木の上から飛び降りて来る。
「ああ、終わったみたいだぜ。ソライトからの着信が来てる。宝玉は無事回収出来たってよ」
メジストの言葉を聞き、ミヤビの表情が僅かに変化する。
「そうか……。成せるだけの策は成したつもりだったが、敵わなかったか……」
「お前らは頑張った方だと思うぜ。俺とトパズでもここまで手こずらせたのは、お前らが初めてだ」
じゃーな、とメジストはフードを被り直し、ミヤビに背を向けるが、
「……追ってこねえんだな」
少し歩いたところでふと立ち止まり、ミヤビの方を振り返る。
「決着の付いた勝負には立ち入らない。勝利しても深追いはせず、敗北すれば潔く退く。私たちの町の掟だ」
「そーかい。ま、俺たちの作戦が完了したら、その時は返してやらないこともねえぜ」
メジストは再び踵を返し、森の奥へと消えていった。
「……さて」
メジストの気配が完全に消えたのを確認し、ミヤビは小さく呟く。
「では、町に戻るとするか」



ミヤビが戻って来て、まず最初に目に入ったのは、天井がずたずたに破壊された屋敷だった。
「ミヤビ様!」
「父上!」
ミヤビの姿を見るなり、コタロウとアヤメが駆け付ける。
「ミヤビ様、今し方、テンモンシティのライロウ殿が屋敷の中へ入って行きましたが」
「あの方は、父上が呼んだのでしょうか」
質問を重ねるコタロウとアヤメを、ミヤビは手で制する。
「その話は後だ。決着が付いた。後で全て話すから、今は黙って私に着いて来い」
それだけ言って、ミヤビは屋敷へと向かっていく。
コタロウとアヤメも、慌てて後に続く。
屋敷の奥へと踏み入れたミヤビが見たのは、力を無くして座り込むアスカ、こちらの方を振り返るレオ、そして満足そうな表情を浮かべるライロウ。
「ミヤビの旦那、流石ですな。奴らは何の躊躇いもなくそこの宝玉を持って行きましたぜ」
ミヤビの姿を見て、ライロウはニヤリと笑う。
「そうか。ではこの勝負は、我々の勝利のようだな」
ライロウの言葉を聞き、ミヤビも微かに笑みを浮かべる。
「……勝利?」
「ミヤビ様、俺には全く理解出来ませぬ」
「父上、どういうことですか!?」
レオとコタロウ、アヤメが次々と疑問の声を上げる。
「実はな」
ミヤビが道着の懐に手をかけ、緑色の袋を取り出し、それを開ける。
そこにあったものは。

それぞれ蒼、翠、紅の光を放つ、美しい宝玉だった。

「……!?」
言葉が出ず、ただ呆然とするレオ達。
それもそのはずだ。先ほど奪われたはずの宝玉が、ミヤビの懐から出て来たのだから。
「お前達にも秘密で、宝玉を偽物にすり替えておいたのだ。奴らが持って行ったものは、精巧に作った偽物。これこそが、本物の宝玉だ」
敵を騙すには、まず味方から。
全てを見通した、ミヤビの完璧な作戦だったのだ。
「ミヤビさん、それならそれで、僕たちに教えてくれたってよかったじゃないですか」
「バカだな、お前」
レオの言葉に反応したのは、ライロウだった。
「その事を知ったら、宝玉を取られた時にあんな悔しそうなリアクションは出来ねえだろ。俺たちが全く悔しそうな素振りを見せなければ、奴らにこの作戦がばれてしまう可能性もあったからな」
「そういうことだ。アヤメにコタロウ、そしてレオ、アスカ。よくやってくれた」
滅多に表情を変えないミヤビが珍しく、満足そうに笑う。
「さて、ライロウ。この宝玉はお前たち『ブロック』に預ける。我々のこの策も、流石に二度は通用せん。頼んだぞ」
「任せてください。『ブロック』全ての力を捧げ、命を懸けてもお守り致しますぜ」
袋に入れられた三つの宝玉を、ライロウが受け取る。
そして、ミヤビは笑みを浮かべ、
「さて、アヤメにコタロウ。町の者を集めよ。屋敷はこの有様だが、今は気にするな。我らが宝を守り抜いた記念じゃ、今宵は盛大に祝杯を上げようぞ!」
大層嬉しそうに、大声を上げる。
「御意!」
「了解です!」
コタロウとアスカも笑みを浮かべてそう返し、一瞬で屋敷の外へと向かって消えた。
「さて、レオにアスカ、ライロウ。お前たちにも勿論参加してもらうぞ」
「勿論ですよ!」
「ミヤビの旦那の申し出、断る理由がありません。喜んで参加させていただきやす」
この時、誰も気が付くものはいなかった。
アスカだけが、俯き、静かに涙を浮かべていたことに。



「そう言えば、どうしてライロウさんはこの町の存在を知ってるんですか?」
祝杯の席で、偶然隣になったライロウにレオが尋ねる。
「ミヤビの旦那は、俺の命の恩人なんだ。その昔俺は見た目の通り暴力団の一員だったが、故意では無いものの、団を裏切る行為をしてしまった。俺はこの森の中に逃げ込んだが、次第に追い詰められていった。そんな時に、アヤメちゃんが俺を見つけ、ここに連れて来てくれた。ミヤビの旦那は、俺のことを匿ってくれた。それ以来、俺は暴力団から完全に足を洗い、努力の末に『ブロック』に加入したんだ」
「そうだったんですか……随分と大変な人生なんですね」
「まあな。だけど俺は、昔の自分のおかげで今の俺があると思ってる。俺が今でもこんな姿をしてるのは、昔の俺を忘れないためさ」
そんなことより、とライロウは続け、
「せっかくの席だ。お前も一杯飲むか?」
「え!? あ、いや、僕はまだ未成年なんで……」
「ガハハハハ! 冗談だよ、冗談! ほれ、お前はコーラでも飲みな!」
たじろぐレオを見て、ライロウは大笑いする。
「ライロウさーん、あんまり虐めないであげてくださいよー。レオ君はこういうのに全く慣れてないみたいですし」
少し離れた席からアヤメが口を挟む。
「ガハハハハ! 分かってるよ。アヤメちゃんは一杯どうだ?」
「ふふふ、私も遠慮させていただきます。ま、未成年なのに隣でガンガン飲んでる人もいますけど」
レオがアヤメの横を見ると、コタロウが顔を真っ赤にして何杯もの酒を飲んでいた。
ははは……とレオが苦笑いしていると、
「……レオ、ちょっと来て」
ふと後ろから、アスカに声をかけられる。
その表情は、酷く暗い。
「どうしたんだよアスカ。そんな調子悪そうに」
「……いいから。ちょっと外に来て」
言われるままに、レオはアスカに連れ出される。



「アスカ、いきなりどうしたんだよ。顔も暗いし、体調でも悪いのか?」
アスカの様子は、見るからに普通ではない。
表情からいつもの明るさは消え失せ、普段の覇気も全く感じられない。
アスカはしばらくじっと黙り込んだままだったが、
「……私は、許せないの」
やがて、ゆっくりと低い声で言葉を絞り出す。
「N・E団相手に、私は何も出来なかった。あれだけ自信満々で挑んだ勝負、あれだけ大口を叩いておいて、いざ相手が本気を出せば何にも出来なかった自分を、私は許せないの」
「元気出せって、アスカ。ミヤビさんの完璧な作戦もあったし、僕たちは結果的に勝てたじゃないか。確かに負けたのが悔しいのは分かるけど、お前はそんなことで落ち込む奴じゃなかっただろ」
「……そんな分かったような口を利かないで」
アスカが低く言葉を紡ぐ。
「もしミヤビさんの策がなかったら、あの宝石はあっさりと奪われていたわ。私があいつの実力を見誤って、考えなしで自分勝手にバトルを吹っ掛けたせいで。もしそうなっていたら、私はミヤビさんにどう顔向けしたらいいのよ。どう責任を取ればいいのよ!」
涙を流し、アスカは叫ぶ。
こんなに激しく取り乱すアスカを、レオは初めて見た。
「アスカ……」
「私は、もっと強くなりたいの。守るべきものを守れるようになる力が欲しいの」
頬を滴る涙を拭い、アスカはモンスターボールを取り出す。
彼女のエース、ゴウカザルが入っているモンスターボールを。
「お願い、レオ。私とバトルして。一対一の、エース対決で」

Re: 第百三十二話 苦悩 ( No.269 )
日時: 2014/08/24 20:01
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: p3cEqORI)

「頼んだ、ポッチャマ!」
「行きなさい、ゴウカザル!」
レオのポケモンはポッチャマ、アスカのポケモンはゴウカザル。
アスカが言ったとおり、エース同士での対決だ。
「ゴウカザル、マッハパンチ!」
まずはゴウカザルが先手を取る。
地を蹴って跳び出し、拳を構え、一瞬でポッチャマとの距離を詰める。
「ポッチャマ、躱してスプラッシュ!」
対してポッチャマはゴウカザルの拳をジャンプして躱し、水を纏う。
スピードもあるゴウカザルは回避してくるだろう、とレオは考えたが、
「ゴウカザル、来るわよ! もう一度マッハパンチ!」
ゴウカザルは地面に突き刺さった拳を引き抜き、目の前のポッチャマを殴り飛ばそうとする。
しかしこの距離では流石に間に合わない。
水飛沫を飛ばしながらのポッチャマの突撃をまともに受け、ゴウカザルが吹っ飛ばされる。
「ゴウカザル、立ちなさい! ストーンエッジ!」
吹っ飛ばされたゴウカザルはすぐに起き上がり、周囲に尖った岩を浮かべ、一斉に撃ち出す。
「ポッチャマ、ドリル嘴!」
ポッチャマが嘴を伸ばし、高速回転する。
岩を躱し、躱し切れない岩は弾き、ゴウカザルへ突撃する。
「ゴウカザル、フレアドライブ!」
対して、ゴウカザルが激しく燃え盛る炎を纏う。
まるで炎の弾丸のように跳び出し、ポッチャマを迎え撃つ。
「まずいな。ポッチャマ、躱して水の波動!」
押し負けると判断し、レオは回避を指示する。
地面を蹴ってポッチャマは上に大きく跳び上がり、ゴウカザルの速攻の一撃を躱すと、振り返って水の力を溜め込んだ波動の弾を撃ち出す。
「ゴウカザル、気合玉!」
ゴウカザルは炎を解き、手に気合を凝縮しつつ振り返るが、フレアドライブの勢いを抑え切れず、少し反応が遅れる。
最大の力で気合玉を撃ち出せず、水の波動と相殺される。
(……何で躱さないんだ? 今のフレアドライブの勢いを見れば、気合玉が間に合わないことくらいアスカならすぐに分かるはずなのに)
「ゴウカザル、マッハパンチ!」
レオが思考を巡らすが、アスカはその暇を与えない。
音速のミサイルのような拳が、次の瞬間には目の前に迫る。
「っ! ポッチャマ、ドリル嘴!」
ポッチャマが拳を弾こうとするが間に合わず、拳の一撃がポッチャマを直撃した。
「攻め続けるわよゴウカザル! フレアドライブ!」
再びゴウカザルが炎を纏う。
ゴウカザルの闘志に呼応するようにその炎が燃え上がり、弾丸のようにポッチャマ目掛けて飛び出す。
「ポッチャマ、ここは迎え撃つぞ! スプラッシュ!」
ポッチャマも水を纏い、水飛沫を飛ばしながら突っ込み、ゴウカザルを迎え撃つ。
威力はゴウカザルに部があるが、技の相性ではポッチャマが勝る。二者が激突し、威力は互角。
「ポッチャマ、水の波動!」
しかしフレアドライブは反動が大きい。その隙を突き、ポッチャマが水の力を凝縮した波動を放つ。
だが、
「ゴウカザル、マッハパンチ!」
ゴウカザルは躱さなかった。
神速の拳を振りかざし、水の波動を何とか食い止める。
(……やっぱりおかしい。アスカにしては、ゴウカザルのスピードを活かしたバトルを全く展開出来て——いや)
ここでレオは違和感の正体に気付いた。
(展開出来ていないんじゃない、展開してないんだ。アスカは、あえてゴウカザルに回避を指示していない。でも何でだ? ゴウカザルのスタイルには、全く似合っていないのに……)
そこまで考えて。
「……まさか」
レオは、アスカの考えている核心を突き止める。
「……気付いたみたいね」
光を無くしたアスカの暗い瞳が、レオを見据える。
「私はもう二度と負けたくない、二度とこんな思いをしたくない。だから、圧倒的な力が欲しいのよ。それを目指すのなら、相手の技を全て潰した上で勝たなきゃいけないの」
「っ……」
アスカの状態を知り、歯噛みするレオ。
正直な話、この状態のアスカなら、レオは勝つことは出来る。
しかしそれでは駄目なのだ。真面目で気が強く、やり始めたことは最後まで貫く性格のアスカだが、今回ばかりはこれが裏目に出てしまっている。
ただ勝つだけではいけない。アスカの心の闇を、どうにかして打ち砕かなければならない。
「ゴウカザル、ストーンエッジ!」
ゴウカザルの周囲に、無数の尖った岩が浮かび上がる。
その無数の岩を、ポッチャマへと一斉に撃ち出す。
「ポッチャマ、冷凍ビーム!」
ポッチャマは冷気の光線を鞭のように振るい、無数の岩を次々と撃墜する。
「マッハパンチ!」
しかしすぐさまゴウカザルが襲い掛かる。
一瞬の隙をついて神速の拳が繰り出され、ポッチャマを殴り飛ばす。
「ゴウカザル、気合玉!」
「ッ、ポッチャマ、ドリル嘴!」
ゴウカザルが気を増幅させ、一点に集中させる。
気合の波動を作り上げ、それを投げ飛ばす。
対してポッチャマは体勢を崩しながらも、嘴を伸ばして逆方向に高速回転し、強引に立て直して気合玉を迎え撃つ。
威力はほぼ互角。気合玉は消滅したが、ドリル嘴も解けてしまう。
「水の波動!」
その後の動きはポッチャマの方が早かった。
ポッチャマが水の力を込めた波動を素早く作り上げ、ゴウカザルへ放つ。
水の波動が直撃し、ゴウカザルが吹っ飛ばされる。
「ゴウカザル、まだよ! 立ちなさい!」
瞳に闘志を燃やし、ゴウカザルはゆっくりと立ち上がる。
しかし、強引な戦法の連続で相当披露しているのだろうか、その足がふらつく。
「ッ、もうやめよう」
今のアスカでは、ゴウカザルに大変な無理をさせかねない。
「もうやめようアスカ! 一旦落ち着け!」
そう叫ぶレオだが、
「そういうことは、私に勝ってから言いなさいよ! ゴウカザル、マッハパンチ!」
立ち上がったゴウカザルが跳ぶ。
一瞬でポッチャマとの距離を詰め、神速の拳を突き出す。
「ポッチャマ、躱してスプラッシュ!」
ゴウカザルの拳を、ポッチャマは大きく首を振ってギリギリで躱し、体に水を纏う。
ゴウカザルが一旦拳を引き、再度狙いを定めるが、先にポッチャマが水飛沫を散らしながら突撃する。
効果抜群の一撃を受け、再びゴウカザルが吹っ飛ばされる。
「……ゴウカザル、まだよ。こんなところで負けてちゃ、到底届きはしないわ」
アスカの言葉に応えようと、ボロボロのゴウカザルが拳を握り締める。
両手を地につけ、ゆっくりと立ち上がろうとする。
だが、ようやく立ち上がったその瞬間、ゴウカザルの体がぐらつく。
ゴウカザルが膝をついてしまう。いくらアスカのエースポケモンといえど、流石に無理をし続け、体力は限界に迫っていた。
「ゴウカザル、どうしたの!? 貴方は、こんなところでやられるようのポケモンじゃないでしょう!?」
再びゴウカザルは立ち上がるが、体が異常にふらついている。
それでも、アスカの期待に応えようと前を向き、ポッチャマを見据える。
「そうよ、貴方の力、見せつけてやるのよ! ゴウカザル、フレア——」

「いい加減にしろ!」

思わず、レオは怒鳴っていた。
レオの突然の大声に、アスカも驚いて言葉を止める。
「確かに負けて悔しいのはよく分かる。アスカの言い分ももっともだ。だけど自分のポケモンのことをもっとよく考えろよ!」
自分でも何故怒鳴ったのか分からなかった。
気がついたら、次々と言葉が飛び出していた。
「アスカ、逆の立場になって考えてみろよ。もし僕が指示される側だとして、こんなに無茶な指示を出されてたらどう思う? やる気なんかなくなるし、従う気も無くすよ。でも、お前のゴウカザルはその無茶な指示に応えて、お前にいいところを見せようと頑張ってたんだよ。それは、お前がゴウカザルに信頼されているからじゃねえのか? 自分勝手な考えでゴウカザルに無理をさせて、申し訳ないとは思わねえのかよ! いい加減に目を覚ませよ!」
「自分勝手……?」
アスカがゆっくりと口を開く。
「そんな分かったような口を利かないでって、さっきも言ったでしょ! あんたに私の何が分かるのよ!」
「お前のことなんか知らねえよ!」
アスカの叫びにも、レオは動じなかった。
「何……ですって……!?」
「お前が負けて悔しいとか、力が欲しいとか、そう思うのは自由だ。僕が言いたいのは、そこに自分のポケモンを自分勝手に巻き込むなってことだよ! 本当にもっと強くなりたいって思ってるんなら、まずは自分のポケモンの事をよく考えろ! それを忘れて強くなるなんて、絶対に出来っこねえぞ!」
あらん限りの大声でレオは怒鳴った。
呼吸が激しいまま、しばしアスカは沈黙し、やがて。
「……言ってくれるじゃないの。そこまで言われると、流石に腹が立つわね」
静かに顔を上げる。
でも、と続け、
「そのおかげで目が覚めたわよ。感謝するわ」
アスカの瞳には、熱く燃えるような光が灯っていた。
「さて、最後の締めくくりよ。勝つにしても負けるにしても、ここで終わったら消化不良だし、最後の一撃だけは付き合ってもらうわよ」
「……おう、望むところだぜ」
そして。
「ゴウカザル、フレアドライブ!」
「ポッチャマ、スプラッシュ!」
ゴウカザルが激しく燃え上がり火花を散らす灼熱の業火を、ポッチャマが水飛沫を散らし荒れ狂う大波のような水を纏う。
両者が同時に飛び出す。最大火力で、正面から激突した。
大爆発を起こし、砂煙が巻き上がる。
やがて煙が晴れると、膝をつきながらもポッチャマが立っていた。
そのすぐ前で、全ての力を出し切ったゴウカザルが、戦闘不能となって倒れていた。



「レオ、本当にありがとう。おかげで吹っ切れたわ。後で回復させてあげたら、ゴウカザルにも謝らないとね」
「分かればいいんだよ。アスカは強い。ゴウカザルたちとちゃんと向き合って特訓していけば、もっと強くなれるさ」
「ふふ、あんたに負けるのは、これで最後だからね」
ニヤリと笑うアスカは、完全に立ち直っていた。
「さ、宴会に戻るわよ。さっきまで私は全然楽しめてなかったし」
「そうだな。ミヤビさんたちも心配してるかもしれないし」
晴れやかな顔で、幼馴染二人は宴会の席へ戻る。



勝利の宴会は、日の出まで夜通し続いた。


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