二次創作小説(紙ほか)
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- ポケットモンスター 星と旋風の使徒
- 日時: 2017/01/28 12:25
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
- プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=22078
どうも、初めましての人は初めまして、そうでない人はこんにちは。パーセンターです。
えー、また始まってしまいました。四作目ですね。
今作は前作の完全続編となっております。
参照をクリックすれば、前作に飛びます。
レオの新しい冒険が、始まります。
※注意
・例によって例のごとくノープランです。
・パーセンターは大学生でございます。現在数々の課題に追われて更新頻度が非常に低いですがご了承ください。
・登場するポケモンが色々とややこしいです。詳しくは近々やるオリキャラ募集のときに説明しますが、簡単に言うと『プラチナのシンオウ図鑑に載っているポケモン+ベガでのみ登場するポケモン』となります。
これくらいですね。
内容としては、前作と同様、オリジナルの地方でのゲームのような冒険ものとなります。
それでは、よろしくお願いします。
登場人物
味方side >>25
N・E団side(ネタバレ注意)>>153
用語(ネタバレ注意)>>342
プロローグ >>1
シラハタウン&メガキタウン編
>>6 >>20 >>22
ハスバナシティ編
>>27 >>31 >>32 >>34 >>36
デンエイシティ編
>>39 >>40 >>41 >>42 >>45 >>46 >>50 >>53
アカノハシティ編
>>55 >>57 >>58 >>62 >>63 >>64 >>65 >>68 >>70 >>72 >>74 >>75 >>79 >>80
コウホクシティ編
>>81 >>82 >>83 >>84 >>87 >>88 >>89 >>93 >>94 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>106 >>107 >>108 >>111 >>112 >>115 >>116 >>117 >>118
ツクモシティ&スティラタウン編
>>121 >>122 >>123 >>126 >>127 >>128 >>129 >>130 >>133 >>138 >>145 >>152 >>157 >>158 >>159 >>162 >>163 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>171 >>172 >>173 >>175 >>176 >>177
シヌマシティ編
>>178 >>179 >>180 >>185 >>186 >>188 >>189 >>190 >>193 >>194 >>195 >>199 >>200 >>206 >>207 >>210 >>211 >>214 >>215 >>216 >>217 >>218 >>221 >>222 >>223 >>224 >>227 >>229 >>230 >>233
ヨザクラタウン編
>>234 >>235 >>236 >>242 >>243 >>246 >>247 >>248 >>251 >>254 >>255 >>256 >>257 >>258 >>259 >>260 >>261 >>264 >>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>273 >>274 >>275 >>276 >>277 >>280 >>281 >>283 >>284 >>285 >>288 >>289 >>290 >>291 >>294 >>295 >>296 >>297 >>298 >>299 >>300 >>301 >>303 >>304 >>305
テンモンシティ編
>>306 >>309 >>310 >>311 >>312 >>313 >>314 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>322 >>324 >>325 >>326 >>327 >>328 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>340 >>341
四天王&チャンピオン編
>>343 >>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>352 >>355 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>363 >>364 >>365 >>366 >>367 >>368 >>369 >>370 >>371 >>372 >>373 >>378 >>379 >>380
N・E団編
>>383 >>384 >>385 >>386 >>387 >>388 >>389 >>390
決戦編
零節 都市
>>391 >>392
一節 碧天
>>393 >>400
二節 緋天
>>394 >>401
三節 蒼天
>>395 >>404
四節 破天
>>396
五節 夜天
>>397
六節 輝天
>>398
七節 聖天
>>399
非公式(ベガ)ポケモン図鑑 >>5
- Re: ポケットモンスター 星と旋風の使徒 ( No.125 )
- 日時: 2013/05/26 22:42
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: .7kGAeeY)
>>白黒さん
僕もそろそろ部活は大詰めです。
今作では更生して、レギュラーキャラとして頑張ってもらいます。
格好はあれですね、身元引き受け人の趣味ですね。今までの路頭生活には逆に便利だったのもありますが。
性格も多少丸くなっていますが、確かに根本的なところは変わってませんね。
当たり前ですが、彼ら(彼女ら)の四体目はいずれも司る天に関係しています。
トパズやラピスは天とポケモンが一致していますが、セドニーやソライトは全く関係ありませんでしたからね。
セドニーは残念ながら最弱です。他の奴らはネタバレになるので言いませんが、戦略が変わる奴やら、そもそも性格が変わる奴やら、結構影響が出る者もいます。
アブソルが何だったのかは、後々明らかになります。
- Re: 第五十七話 抗体 ( No.126 )
- 日時: 2013/08/15 14:28
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: Q1X0ZXes)
「んじゃ次だ! ひねり潰せ、リーフィア!」
「遊んでやろう。出て来い、チェキッド!」
メジストのポケモンは、クリーム色の体毛を持ち、耳や尻尾が葉と同化し、体から所々草の生えた、四足歩行のポケモン。
深緑ポケモンのリーフィア、草タイプ。
対するセイラのポケモンは、紫色の大きなリスのようなポケモン。人型にも見えるが、妖精のような印象を受ける。
チェキッド、妖精ポケモン。チェキラスと同じ進化元を持つポケモンで、こちらはノーマル・悪タイプ。
「リーフィア? 本来は、貴様のような奴には合わない、イーブイの進化系の中でも極めて温厚な性格のポケモンだと思うが」
「そいつぁどうかねえ。俺様が使うポケモンだから、随分と好戦的で狡猾かもしれねえぞ? ギャハハ!」
メジストの言葉に、セイラは呆れたように息を吐くと、
「まあ、それでも私のやる事は変わらない。チェキッド、スピンテール!」
先に動いたのはチェキッド。
地を蹴って飛び上がり、空中で華麗にスピンしながら、リーフィアへと尻尾を叩きつける。
「リーフィア、リーフブレード!」
対してリーフィアは右前足に小さく生えた草を刃のように伸ばし、その刃を振るってスピンテールを相殺する。
「シザークロス!」
「影分身だ!」
さらにリーフィアは左前足の草も刃のように伸ばし、双刃を交差させて切りかかる。
しかし、チェキッドは瞬時に影を利用した無数の分身を作り上げる。
リーフィアの刃は、チェキッドの分身を切り裂くだけに終わった。
「だが無意味だぜ! リーフィア、燕返し!」
リーフィアの攻撃はそこで止まらない。
全神経を研ぎ澄ませ、本体を見極め、刃を構えて本来へと突撃する。
「ほう。チェキッド、スピンテール!」
直後、分身が一斉に消える。
そして本体のチェキッドは、華麗に体を回しながら、その勢いで尻尾を振るう。
刃と尻尾の一撃が交錯し、勢いが相殺される。
「リーフブレード!」
「躱して辻斬り!」
返す刀で、リーフィアが右前足の葉の刃を振りかざす。
チェキッドは体勢を屈めて、ギリギリのところでその刃を躱すと、すかさず爪を振り抜き、リーフィアを切り裂く。
「ちっ、一発目はお前に入れられたか。だったらリーフィア、潜る!」
リーフィアは素早く地面に穴を開け、その中に潜ってしまう。
「む、チェキッド、気を切らすなよ。どこから来るか分からんぞ」
神経を集中させ、チェキッドは地中のリーフィアの気配を探る。
しかし、この行動に意味はなかった。
リーフィアが飛び出してきたのは、右の壁からだったからだ。
「ッ!?」
予想外の方向からの攻撃に、咄嗟の反応が出来なかった。
死角からの突撃を喰らい、チェキッドは吹っ飛ばされる。
「ここは洞窟だ。この壁は地面と繋がってんだぜ? もうちょっと深ければ、天井から奇襲する事も出来たはずなんだが、ここは地上に近いからなあ。天井までは行けなかったみてえだが」
メジストは高笑いを浮かべ、
「さあ、次だ次! リーフィア、潜る!」
再びリーフィアは地面に潜ってしまう。
「チェキッド、影分身!」
チェキッドは影を利用し、再び無数の分身を作り上げる。
(しかし、無駄かもな)
セイラは心の中で呟く。
(奴が気配を察して攻撃するのならば、奴は本体を攻撃してくる。分身は影で作っただけ、気配なんてしないからな)
そして、実際。
リーフィアは、今度は地面から的確に本体を目掛けて襲ってきた。
「チェキッド、下だ!」
今度はセイラも反応が追い付いた。
チェキッドは何とか飛び退き、リーフィアの強襲を避ける。
メジストが言っていた通り、このリーフィア、通常の性格と違い、かなり攻撃的なようだ。
「チェキッド、反撃だ! スピンテール!」
チェキッドは高く跳び上がり、体をスピンさせながら尻尾を叩きつける。
「リーフィア、潜る!」
しかしまたしてもリーフィアは地面へと潜ってしまう。
だが、
「それはもう効かん。チェキッド、怒りの炎!」
激しい怒りの如く燃え盛る炎を、穴の中へと放つチェキッド。
一拍置いて、炎をまともに浴びたリーフィアが地面から飛び出して来た。
「スピンテール!」
そこにチェキッドの尻尾が叩き込まれ、リーフィアは吹っ飛ばされる。
しかし、効果抜群の一撃の直撃を受けたのにも関わらず、リーフィアはまだ倒れない。
「このリーフィアは確かに攻撃特化だが、本来リーフィアが優れるのは防御だ。物理攻撃なら、そう簡単に倒れねえぜ」
確かに、リーフィアの体は所々が焦げているが、まだまだやれる、という構えを見せている。
「なるほど。こいつは物理技しか無いから、ちょっと面倒かもな。……?」
ふとセイラの言葉が止まった。
メジストの口が、不気味な笑みから、珍しい物を見る時のような驚きのようなものに変わっていたからだ。
「おい」
メジストの口調が変わった。
何かに驚かされたかのような声で、さらにメジストは続ける。
「お前、何故俺の能力が効いていない?」
そう。
メジストの危険なあの能力が、セイラには効いていないのだ。
「俺は、敵の精神力や戦意を奪い取るという天性の能力を持っている。ヨザクラのジムリーダーのような規格外の精神力を持つものや、アカノハのジムリーダーのように決してペースが崩れない者に効かない事は知っているが、見たところただの小娘にしか見えんお前は何者だ?」
怪訝な表情で(フードで顔は見えないが)メジストは尋ねる。
対して、セイラは薄笑いを浮かべた。
「ふふ。貴様と同業者だよ」
ただし、と続け、
「私の場合は『元』だがな。昔の私はもっと暗かったし、人への感情は捨てていたから、精神力とか鍛えられたのかもな。自覚はしてなかったが、抗体でもあるのかもしれない」
「なるほど」
謎が解け、満足そうに口元を歪めるメジスト。
「ギャハハ! 面白え、久々にまともに戦えそうだよ! リーフィア、リーフブレード!」
リーフィアは右前足の草を伸ばし、チェキッドに切りかかる。
「チェキッド、スピンテール!」
軽やかなステップでチェキッドはリーフィアの刃を躱すと、回転しながら尻尾を叩きつける。
「怯むな! シザークロスだ!」
尻尾はリーフィアの脳天に直撃したが、リーフィアの動きは止まらない。
左前足の草も伸ばし、刃を交差させてチェキッドを切り裂いた。
「チャンス! リーフィア、もう一発シザークロス!」
「ふふ、あまり舐めるなよ。チェキッド、影分身!」
リーフィアがさらに切りかかるが、チェキッドは瞬時に影を利用した分身を作り、リーフィアの刃は偽物を切り裂く。
「意味ねぇっつってんだろうがよ! 燕返し!」
リーフィアは全神経を集中させ、瞬時に本体を見極める。
だが。
「それはどうかな。チェキッド、怒りの炎!」
刹那、無数のチェキッドが一斉に炎を噴き出した。
勿論本物は一つだけだが、これでは避けようがなく、リーフィアは炎を全身に浴びてしまう。
それでもまだリーフィアは倒れず、何とか立ち上がろうと足を動かすが、
「諦めな。チェキッド、辻斬り!」
チェキッドが一瞬でリーフィアとの距離を詰め、リーフィアを切り裂き、確実に止めを刺す。
「ちっ、リーフィア、戻っときな」
メジストは小さく舌打ちし、リーフィアをボールに戻すが、
「ギャヒャヒャ! いいねえ、久々にまともな戦いが出来てるぜ! 滅多にない機会だし、最後まで俺を楽しませてくれよぉ!」
再び狂ったような高笑いを上げ、メジストは最後のボールを取り出す。
- Re: 第五十八話 黒鎌 ( No.127 )
- 日時: 2013/08/15 14:29
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: Q1X0ZXes)
セドニーのバジリールは、非常に強かった。
そもそも、レオのポケモンはバジリールと戦うには相性が悪すぎる。
ヘラクレスの次のルクシオは、主力の電気技がろくに通らず、何発かは攻撃を当てたものの、すぐに倒され、次のトゲチックは電気技をまともに浴び、一蹴された。
今出しているポッチャマに至っては、草・電気共に弱点である。
最早今のレオの戦術は、回避に専念し、僅かな隙を何とか見つけて攻撃しているだけだが、それもいつまで続くか分かったものではない。
「随分と頑張るな。何としても勝とうとするその努力だけは認めてやるよ」
だが、とセドニーは言葉を続け、
「そろそろ諦めな。仮にお前がこのバジリールを倒したとして、俺にはまだ二体ポケモンが残ってる。もちろん覚醒によって強化されている。お前にはもう勝ち目は無いぞ」
「それがどうした」
対するレオの気持ちは変わらない。
残り一体であろうと、どんなに力の差があろうと、絶対に諦めない。
それが、彼の性格であり、彼の信念であるからだ。
そして、そんなレオを見て、セドニーはため息を吐くと、
「そーかい」
呆れたように呟き、直後、カッと翠の目を見開く。
「だったら、一思いに決めてやるよ!」
刹那、ポッチャマを囲い込むように、無数の蔦が地面から飛び出した。
大成長の蔦が、ポッチャマを包囲し、動きを止めてしまう。
「終わりだ! バジリール、大成長!」
ポッチャマを囲む蔦がポッチャマに狙いを定める。
「まずい……ポッチャマ、ドリル嘴!」
ポッチャマが嘴を伸ばし、ドリル状に回転して蔦を迎え撃つ。
しかし。
突如、ポッチャマの足元が割れ、一本の蔦がポッチャマを突き上げる。
「しまッ……!」
下からの奇襲を喰らい、体勢を崩して打ち上げられたポッチャマ。
そこに、周りの蔦が容赦無く襲いかかる。
はずだったのだが。
物陰から黒い影が跳び出し、全ての蔦を一瞬で切り裂いた。
「!?」
突然の事に驚きを表すレオとセドニーの前で、その黒い影は動きを止めず、さらに高速で二、三度バジリールを切り裂く。
そして、その黒い影は動きを止め、ようやくその正体を現した。
それは、
「アブソル!」
そう。
先程レオとセイラを導いた、あのアブソルだったのだ。
「ああ? おいおい、何だそのアブソルは? 伏兵でも潜ませておいたのかよ」
「いいや。このアブソルは僕のポケモンじゃない」
「だったら何でお前を助け、俺のバジリールを攻撃した」
「さあね。お前たちが悪い奴だ、って分かってるんじゃないか?」
レオの言葉を聞き、セドニーの表情に明確な不快感が表れる。
セドニーは小さく舌打ちすると、
「ムカついた。いいぜ、この際二体纏めて相手してやる。バジリール、大成長!」
バジリールは地面に力を送り込む。
地面から大量の蔦が飛び出し、二手に分かれ、それぞれポッチャマとアブソルに襲いかかる。
「この量なら破れる! ポッチャマ、ドリル嘴!」
二手に分かれた分、ポッチャマに襲い来る蔦の量は少ない。
ポッチャマは嘴を伸ばし、ドリルのように高速回転しながら突撃、蔦を強引に突き破る。
アブソルは俊敏な動きで蔦を躱し、鎌を妖しく光らせてバジリールへと突っ込む。
「サイコカッターか。バジリール、迎え撃て! 十万ボルト!」
バジリールの尻尾が光る。
アブソルを迎撃すべく、その尻尾から強烈な電撃が打ち出されるが、
「こっちにもいるぞ! ポッチャマ、ドリル嘴!」
バジリールがアブソルへと電撃を放った瞬間、ポッチャマは再びドリルのように回転しながらバジリールへと突撃する。
バジリールは当然避けられず、嘴の直撃を喰らう。
「それくらいどうってことねえよ。バジリール、薙ぎ払え! サイコバーン!」
バジリールは一瞬で体勢を戻す。
念動力を爆発させ、周囲にその衝撃波を飛ばす。
と、そこでアブソルが動いた。
横から思い切りポッチャマにぶつかり、ポッチャマを弾き飛ばす。
サイコバーンの衝撃波を突っ切り、アブソルはすれ違いざまにバジリールを切り裂く。
仲間割れにしか見えないが、そうではない。
ポッチャマがサイコバーンの直撃を喰らうのを避けるため、アブソルはわざとポッチャマに体当たりし、ポッチャマを衝撃波の圏内から避けた。
エスパー技のサイコバーンは、悪タイプのアブソルには効かない。
「少しはやるじゃねえか。バジリール、まずはあのアブソルからだ! 十万ボルト!」
「やらせるかよ! ポッチャマ、冷凍ビーム!」
バジリールがアブソル目掛けて高電圧の強烈な電撃を放つが、後ろからポッチャマが冷気を込めた光線を撃ち出す。
冷気の光線がバジリールを捕らえた。バジリールに、初めて効果抜群の大きなダメージが通る。
「バジリール、シグナルビーム!」
しかしバジリールは、効果抜群の一撃を浴びたにも関わらず、すぐに反撃を仕掛ける。
尻尾から放たれた妖しく光る光線が、ポッチャマを吹っ飛ばす。
「バジリール、後ろからも来るぞ! シグナルビーム!」
さらにバジリールはすかさず後方にも光線を放ち、アブソルを牽制する。
咄嗟に跳び上がって回避しようとするアブソルだが、光線が足元を掠めた。
「まだ来るぞ! 弾き飛ばせ!」
鎌を光らせて攻撃を仕掛けようとするアブソルを、バジリールは尻尾を振るって薙ぎ払う。
技ではないのて威力は弱いが、それでもアブソルは壁に叩きつけられる。
(やっぱり相当強え……だけど、勝てない相手じゃない)
二対一になったことにより、バジリールが隙を表す頻度が高くなってきた。
その隙を的確に突いていけば、勝てないことはない。
「やっぱり二対一は少々手こずるな。だが、こちらが勝つのは明確だ! バジリール、大成長!」
アブソルの足元から、無数の蔦が飛び出す。
アブソルを打ち上げ、さらにその鈍器のような蔦がアブソルを殴り飛ばす。
「もう少し張り合いがあると思ったがな。バジリール、決めろ! シグナルビーム!」
アブソル目掛けて、バジリールは尻尾から妖しく光る光線を放つ。
ポッチャマが動くが、間に合わない。
アブソルに炸裂し、煙が上がる。
「まずは一体。あとはポッチャマだけか」
アブソルの方には目もくれず、バジリールはポッチャマに向き直る。
「バジリール、十万ボルト!」
バジリールの尻尾から火花が飛び散り、強烈な電撃が放たれる。
よりも早く、燃え盛る業火がバジリールに襲い掛かり、バジリールは炎に包まれてしまう。
「何だ!?」
慌てて炎が飛んできた方を振り向くセドニー。
そこには、何事もなかったように立っているアブソルが。
「ッ、何故だ! 今の一撃で仕留めたはずだぞ」
対して、素早くレオは図鑑を取り出す。
(さっきのは……なるほど、身代わりか)
身代わりは、自身の体力を少し削り、文字通り身代わりを出現させる技である。
「ケッ、どうせ守るか身代わりかでも使ったんだろう。種が分かればどうってことねえぜ。バジリール、十万ボルト!」
炎に包まれながらも、何とかバジリールは強烈な電撃を発射する。
アブソルは炎を噴き出して応戦するが、十万ボルトの方が強く、炎は破られてしまう。
「こっちだ! ポッチャマ、ドリル嘴!」
「邪魔だ! サイコバーン!」
ポッチャマがドリルのように高速回転しながら突撃するが、バジリールは周囲に念動力の爆発を起こし、ポッチャマを吹っ飛ばす。
さらにアブソルにも電撃が命中する。
「さあ今度こそこれで終わりだ! まずはお前からだ、バジリール、大成長!」
バジリールは蔦を伸ばし、アブソルに絡みつかせて動きを止めてしまう。
「バジリール、十万ボルト!」
だが。
「させるかぁ!」
レオの叫びと共に、荒れ狂う波のような水を纏ったポッチャマが全力で突っ込んでくる。
アクアジェットは先制技。バジリールは反応が一瞬遅れ、脳天に直撃する。
その衝撃で、蔦が緩む。
「アブソル、今だぞ! ポッチャマ、冷凍ビーム!」
その隙を逃さず、ポッチャマが冷気の光線を、反対側からアブソルが灼熱の業火を放つ。
今度こそ、バジリールは両面からの効果抜群の攻撃をまともに受け、地面に倒れる。
それでもバジリールは力尽きていなかった。
体を震わせ、立ち上がろうとする。
しかし、そこにアブソルが鎌で最後の一撃を加えた。
碧天の切り札バジリールは、遂に体力を使い果たし、戦闘不能となった。
- Re: 第五十九話 九死一生 ( No.128 )
- 日時: 2013/06/15 22:54
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: d1Bequrp)
- プロフ: 文字数の関係で後書きはありません。
「叩き潰せ、オニゴーリ!」
メジストの最後のポケモンは、鬼の顔のようなポケモン。岩の体を氷の鎧で固めた姿をしている。
オニゴーリ、顔面ポケモン。氷タイプ。
通常サイズよりも一回り大きく、人が頭に座って移動出来そうだ。
「氷タイプなら、チェキッド、怒りの炎!」
チェキッドは憤怒の如く燃え盛る炎を放つが、
「オニゴーリ、吹雪!」
オニゴーリは雪を暴風に乗せて吹雪を起こし、炎を打ち消してしまう。
「アイアンヘッド!」
間髪いれずに、頭を鋼のように硬化させたオニゴーリの頭突きがチェキッドを捉える。
チェキッドは吹っ飛ばされ、リーフィア戦でのダメージも重なり、戦闘不能となってしまう。
「チェキッド、よくやってくれた。休んでな」
無表情でセイラはチェキッドをボールに戻し、最後のボールを取り出す。
「期待してるぞ、私の新エース。さあ、こいつに勝てるか? 出て来い、ミカルゲ!」
セイラの最後のポケモンは、紫色の霊魂の集合体のようなポケモン。周囲に緑色の無数の人魂のようなものが浮かんでおり、その体は石に繋ぎとめられているように見える。
ミカルゲ、封印ポケモン。ゴースト・悪タイプ。
と、不意にメジストが小型の機械を取り出した。
機械を見ると、メジストは舌打ちし、
「ちっ、セドニーの野郎、覚醒したのに切り札やられてんじゃねえかよ」
忌々しそうに呟くと、機械を仕舞い、セイラに向き直る。
「せっかくまともに戦える相手に会えたってのに、残念だがタイムリミットが近いみてえだ」
「む、それは残念だな。撤退して試合放棄にでもしとくか? 私は特に構わんが」
「いいや」
セイラの言葉に対し、メジストは不気味な笑みを浮かべる。
「そういうのは俺の性に合わねえ。試合放棄って響きも何か腹立つしな」
つーことで、とメジストは続け、
「速攻で潰す! オニゴーリ、絶対零度!」
ミカルゲの周囲の大気が、みるみるうちに温度を失っていく。
ガチガチと音をたて、ミカルゲの周囲が凍りついていく。
絶対零度も、ハサミギロチンと同じ一撃必殺。
決まればどんな相手であろうと、一瞬で戦闘不能にしてしまう。
しかし。
よりにもよって、セイラはその性質を再び逆手に取る。
「ミカルゲ、道連れ」
直後、ミカルゲは絶対零度の氷に閉じ込められる。
全方面からの極寒の冷気が、一瞬でミカルゲの体力を奪い取る。
当然ミカルゲは戦闘不能。
だが、ミカルゲが地面に倒れる寸前、緑の人魂が妖しい光を放つ。
刹那、オニゴーリが呻き声をあげ、その場に崩れ落ちた。
「……ケッ、またしても道連れかよ。ギャハハ、こりゃ一本取られたかねえ」
少し悔しそうに、破天のメジストは笑い、オニゴーリをボールに戻す。
「さて、俺様はまだ本気を出す気はねえから、これで撤退だ。お前、久々にまともにバトル出来て、なかなか楽しかったぞ。折角だ、名前を教えろよ」
「ふふ、いいだろう。私の名はセイラ。脳内によく刻んでおきな」
「セイラか。それじゃ、次に会う時は俺の本気を見せてやるよ。ギャヒャヒャヒャ!」
狂ったような高笑いをあげながら、破天のメジストは洞窟の闇の奥へと消えて行った。
「ふー、なかなか強かったな、あいつ」
そしてセイラは、一息吐くと、二人を分断した壁の破壊に取り掛かる。
「俺のバジリールを倒すとは、なかなかやるじゃねえか」
バジリールを倒され、エースを失ったセドニーの表情に焦りはない。
「だが、ここまでだ。お前たちが二体で来るなら、ここからは俺も二体で戦う。バジリールは倒されたが、覚醒の力は他のポケモンにも勿論影響する。この時点でお前たちに勝ち目はねえんだよ。あとサーナイトを傷つけたら絶対に許さねえ」
セドニーが言葉を言い終えると同時、セドニーの後ろにいたサーナイトが進み出る。
そしてモンスターボールからは、気球ポケモンのフワライドが繰り出される。
「くっ……」
悔しいが、セドニーのいう通り、ここでレオが戦っても勝ち目は薄い。
確かにアブソルはこの二体に有利だが、ポッチャマもアブソルも体力は残り少し。
覚醒で強化された二体を相手にするのは、かなり辛い。
「だけど、やるしかないか……!」
覚悟を決めるレオ。
しかし、
「……? 何だ?」
唐突に、セドニーのライブキャスターから着信音が鳴る。
「こちらセドニー。どうした?」
『セドニーか。今し方、俺の戦力が全部やられた。ここのアジト計画は捨てるぞ。先に俺は撤退する。お前も急げ』
セドニーの通話の声は、レオの聞き覚えのあるような声だった。しかし、洞窟内ということもあって繋がりが悪いのか、雑音が入り、誰の声だったかははっきりと分からない。
「何!? お前が負けただと? 何があった?」
『久々にまともに戦えたんだよ。とにかく急げ。もうここに用はない』
「お前、まさか覚醒使わなかったのか!?」
『当たり前だ。折角まともにやりあえる奴と会ったのに、覚醒なんざ使わねえよ馬鹿』
そして通話は切れた。
セドニーはしばし硬直していたが、
「どうやら撤退命令が出たらしい。俺はここで撤退する。命拾いしたことを喜ぶんだな」
苛立ちを込めた口調でレオにそう吐き捨てると、サーナイトを抱きかかえ、フワライドに乗る。
「フワライド、シャドーボール!」
フワライドは天井に影の弾を撃ち込み、天井を破壊。
もはやレオには目もくれず、セドニーを乗せたフワライドは空へと飛び去っていった。
(覚醒、か……)
危険は去ったが、レオの心は晴れなかった。
アブソルがいなければ、確実にバジリールにやられていた。
いや、アブソルがいた今の状況でも、サーナイトとフワライドには負けていただろう。
(N・E団、やっぱり侮れないな……)
N・E団の恐ろしさを、レオは改めて感じたのだった。
二人を分断した壁は、双方からの攻撃を受け続け、30分ほどで崩れた。
「む、さっきの緑の奴はどうした?」
「途中で撤退した。正直危なかった。そっちは?」
「こっちもこっちで戦ってたよ。どうにか相打ちだったが、向こうは本気を出してなかったようだったな」
そして、セイラは天井を見上げる。
「これくらいの穴があれば、ここから出られる。出て来い、ぺガーン!」
セイラが出したのは、白い美しい体に紫の模様を持ち、大きな翼を持った馬のようなポケモン。
ぺガーン、羽馬ポケモン。エスパー・飛行タイプ。
セイラはぺガーンに飛び乗ると、
「さあ、乗れ」
レオに促し、レオもぺガーンに乗る。ついでにアブソルも飛び乗った。
ぺガーンは一声嘶き、翼を大きく羽ばたかせて、ゆっくりと飛び上がった。
優雅に翼を羽ばたき、ぺガーンは天井の穴を抜け、レオとセイラはようやく地上に戻ってくる。
「はあ、疲れた。とりあえずN・E団は退散したみたいだな」
二人と一匹はぺガーンから飛び降り、レオはそう呟くと、
「じゃ、セイラ、シラハタウンに行ってこいよ。父さんに僕のことを話せば」
「待て」
レオの言葉を、セイラは遮って言う。
「そのアブソル、貴様に言いたいことがあるようだぞ」
レオの後ろにいるアブソルをセイラは指差す。
レオが振り向くと、そこにいたのはアブソルだけではなかった。
先程レオが手当したパンプリーが、アブソルの後ろにいる。
「どうやら、そのパンプリーは貴様が気に入ったらしい。是非ついて行きたいようだぞ」
「本当か!? そうなのか、パンプリー?」
レオがそう訊くと、パンプリーは前に進み出て、笑顔で頷く。
「それと」
さらにセイラは続ける。
「そのアブソルも貴様と共に行きたいようだ。どうやらそのアブソル、この森の野生ポケモンのリーダーだったらしい」
悪タイプの言葉が分かるセイラは、アブソルの言葉を通訳しているのだ。
「このパンプリーはアブソルによく懐いてるらしい。そんなパンプリーを一人にすると不安だから、アブソルもついて行く、だそうだ」
これはレオにとっては非常に嬉しいことだ。
仲間が二体も増えるのだ、こんなに心強いことはない。
「つまり、二人とも、一緒に来てくれるのか?」
改めてレオが訊くと、パンプリーは笑顔で、対照的にアブソルは微かに笑い、小さく頷いた。
「それじゃ、これからよろしくな!」
レオは二つのボールを取り出す。
パンプリーとアブソルは自らボールに触れ、ボールの点滅はすぐに止まった。
「じゃ、私はシラハタウンに行く。レオ、貴様には借りを作ってしまったな」
「気にすんなって。これからは正式なポケモントレーナーとして、お互い頑張ろうぜ」
「……ああ」
そして、セイラはぺガーンに乗り、飛び去って行った。
レオはそれを見送ると、新しい仲間が加わった喜びと共に、次の街へ向かう。
ツクモシティは、もうすぐだ。
- Re: 第六十話 姉 ( No.129 )
- 日時: 2013/08/15 14:29
- 名前: パーセンター ◆EAxDppvQCQ (ID: Q1X0ZXes)
新しい仲間が一度に二匹も加わったレオだが、喜んでばかりはいられない。
N・E団七天将の持つ能力、『覚醒』。
最弱のセドニーでさえ、恐るべき力を持っていた。常時100%を出せるわけではないらしいが、それでも十分な脅威に変わりはない。
リョーマたちは、この事を知らないはずだ。『ブロック』に加わった身として、これは確実に報告しなければならない。
ライブキャスターを起動させ、レオはリョーマへ連絡を取る。
すぐに通話が繋がった。しかし、
『はい、こちらはテレジアですが』
通話に出た人物は、リョーマではなかった。アカノハ統括補佐のテレジアだ。
『あら、レオさん。お久しぶりですわね。どうしたのですか?』
「……あれ? 確かにリョーマさんに掛けたはずなのに」
怪訝な表情でレオが呟くと、
『リョーマさんは現在、N・E団のアジトを探すために一人でホクリク中を操作しています。連絡等もしないようにする、帰ってから纏めて話すと仰ってましたから、現在リョーマさんへの発信は全てこちらに届くようにしていますわ』
とのことらしい。
とはいえ、テレジアに話しても問題無いだろう。
「N・E団のことで、分かったことがあります」
そう言って、レオは話し出す。
天将の持つ『覚醒』の能力、それを使うとポケモンが強化され、さらに使えるポケモンが増えること、そのポケモンは司る天に関係していること……など、セドニーの話などから分かったことを、レオは全て話した。
レオの話を聞き終えると、テレジアの表情が厳しいものになる。
『そうですか……実はこの間、シヌマ統括から序列三位の緋天将部隊を撃破したと報告があって、N・E団も恐れるものではないのかと考えていたところでしたが……少々、考えが甘かったようですわね』
ですが、とテレジアは続け、
『使えるようになるポケモンのタイプは、大体想像できますわね。蒼天将なら水、緋天将なら炎は明らかでしょう。他は分かりづらいですが、夜天将はゴーストか悪、輝天将はエスパーか電気。破天将は……格闘か悪あたりでしょうか?』
天将の最後の一人及びボスは未だ正体不明らしい。
『とにかく、N・E団についての報告ありがとうございます。そちらも気をつけてくださいね』
そして、通話は切れた。
次の目的地は、もう目の前である。
ツクモシティ。
空は薄暗い雲に覆われており、静かな町だ。
この町の近くの土地は何故か雲が非常に多いらしく、晴れることは殆どないという。
しかし、極稀に空が晴れ渡ることもあり、それを見ることが出来るとその年は縁起のいい一年になるという逸話があるらしい。
家や建物は少なくはないが、木造が多く、そのようなところからもこの町の穏やかさを感じることが出来るだろう。
「ジム戦は明日だな。N・E団の一件もあって疲れたし」
とはいえまだそんなに遅くもない。
とりあえずはポケモンセンターでポケモンを回復させる。
「あとは……他のトレーナー達との情報交換とかかな。あ、パンプリーとアブソルの能力とか技とかも把握しておかないとな」
意外とやることはたくさんある。
ポケモンの回復が終わるまでは、他のトレーナー達と雑談でもすることにした。
夜。
ポケモンセンターの部屋を借り、そろそろ寝ようかといった時、唐突にライブキャスターの着信音が鳴る。
父親からだ。
「もしもし、父さん? どうしたの?」
通話に出ると、画面の向こうにはライオンの鬣のような金髪の父。
正直まだレオは父のこの髪型に慣れていない。
『セイラちゃんから聞いたよ。お前からここに来て私に相談するようにって』
「ああ、そのことね。セイラに図鑑とかトレーナーカードとかあげてくれた?」
『勿論だ。殆ど表情や態度には出してなかったが、私には分かった。あの子は本当に喜んでいたよ』
「そう。そりゃよかった」
どうやら、セイラもこれからは普通のトレーナーとして正しい道を歩んでいけそうだ。
(それにしても、セイラちゃん、か。あいつをセイラちゃんなんて呼んだら、どんな顔するだろうな)
『ところでレオ。お前は今どこにいるんだ?』
「今日ツクモシティに着いたとこだよ。明日ジム戦」
『そうか。一つ言っておくと、ツクモシティのジムリーダーはゴーストポケモン使いだぞ』
「知ってるよ。他のトレーナーから聞いたよ」
『おお、流石は私の息子だ。それじゃ、明日のジム戦、頑張れよ』
「うん。母さんによろしく伝えといてね。お休みなさい」
そして、通話は切れた。
明日は、いよいよジム戦である。
ツクモジムは、古びた洋館のような外観だ。
屋根や壁に蔓延る植物が、いかにも不気味な雰囲気を醸し出している。
しかし、勿論そんなことくらいで怖気づくレオではない。
「お願いします!」
ドアを開け、そう叫んで中へと入る。
やはりというか何というか、ジムの中も薄暗い。
だがそれ以外はほぼ普通だ。バトルフィールドにも変わった仕掛けは特に見られない。
そしてフィールドの向こうには、ジムリーダーが。
女性だ。丸い縁の眼鏡を掛けており、背はそこまで高くない。年齢は顔立ちからして二十歳くらいだろうか。
緑色の頭巾を被っており、紫色の服に、丈の長いスカートを履いている。
だがその顔に、レオは見覚えがあった。
正確に言えばどこかで彼女を見たというわけではない。この女性とそっくりな顔をした女を見たことがある、と言った方が正しい。
思わず、レオは呟いていた。
「夜天の……ラピス?」
そう。
この女性、夜天将に顔がそっくりなのである。
そして、その呟きを聞いた女性がバッと顔を上げた。
「貴方、今ラピスと仰いました?」
「え? あ、はい」
レオが答えると、女性は驚愕の表情を浮かべ、
「どうして、私の妹のその名を……?」
そう言ったのだ。
(やっぱり)
そう思いつつ、レオは女性の質問に答える。
「僕はN・E団と何度か戦ったことがあります。その時に夜天将と会ったことがあって、それで貴方と夜天将の顔がそっくりだったので……」
「ああ、そうでしたか。実は少し前に来た浴衣の赤髪の女の子も、貴方と同じことを仰いました。それで私、非常に驚いてしまいまして」
聞くまでもなく分かった。マゼンタだ。
おそらく彼女も気付いたのだろう。
「あの子は、生まれつき足が悪かったのです。その事で色々とあって……二、三年ほど前に、私の妹は車椅子にも関わらず家を出て行ってしまいました」
震える声で女性は話す。
「車椅子だし、一人での生活は出来ない。すぐに帰って来るだろうと思ってました。だけど、あの子は帰って来なかった。どこを探しても全く見つからなかった」
ですが、と女性は続ける。
「先日ついに、N・E団の一員として生活していると分かったんです。それが私、本当に嬉しくて……」
「嬉しかった……?」
レオにはその考えが分からなかった。悪の組織に加入しているのに、何故そのような感情が湧いて来るのか。
「だって、二、三年間、まったく消息が掴めなかったんですよ? 元気に生活してるってことが分かっただけで、私は本当に……」
とうとう女性は蹲って泣き出してしまった。
「あ、あの子は、優しい、私の妹です。きっと、帰って、来るって、私は、信じているんです」
女性にかける言葉が思い浮かばず、止まってしまうレオ。
夜天のラピスにも、そのような過去があったらしい。
「……申し訳ありません。ジム戦に来たというのに、お見苦しいところをお見せしてしまいました」
やがて涙を拭き、女性は再び立ち上がる。
「申し遅れました。私の名はシズカ。ツクモジムのジムリーダーで、霊能者とも言われてます」
まだ目は赤いが、シズカの表情はすでに変わっている。
「先ほどの話はありましたが、バトルは別です。私の得意分野はゴーストタイプ。ノーマル・格闘技は効きませんよ」
「そうこなくっちゃ。さっきのテンションでバトルなんじゃないかって、少々焦ってたところですよ」
「うふふ、それなら心配ありません。こう見えてポケモンバトルは大好きですから。全力で勝負しましょう」
「望むところです!」
ツクモシティでの、ジム戦が始まる。
『ツクモシティジム ジムリーダー シズカ 宵闇に祈る霊能者』
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