二次創作小説(紙ほか)

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ポケットモンスター 星と旋風の使徒
日時: 2017/01/28 12:25
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=22078

どうも、初めましての人は初めまして、そうでない人はこんにちは。パーセンターです。
えー、また始まってしまいました。四作目ですね。
今作は前作の完全続編となっております。
参照をクリックすれば、前作に飛びます。
レオの新しい冒険が、始まります。

※注意
・例によって例のごとくノープランです。
・パーセンターは大学生でございます。現在数々の課題に追われて更新頻度が非常に低いですがご了承ください。
・登場するポケモンが色々とややこしいです。詳しくは近々やるオリキャラ募集のときに説明しますが、簡単に言うと『プラチナのシンオウ図鑑に載っているポケモン+ベガでのみ登場するポケモン』となります。

これくらいですね。
内容としては、前作と同様、オリジナルの地方でのゲームのような冒険ものとなります。

それでは、よろしくお願いします。

登場人物
味方side >>25
N・E団side(ネタバレ注意)>>153
用語(ネタバレ注意)>>342

プロローグ >>1

シラハタウン&メガキタウン編
>>6 >>20 >>22
ハスバナシティ編
>>27 >>31 >>32 >>34 >>36
デンエイシティ編
>>39 >>40 >>41 >>42 >>45 >>46 >>50 >>53
アカノハシティ編
>>55 >>57 >>58 >>62 >>63 >>64 >>65 >>68 >>70 >>72 >>74 >>75 >>79 >>80
コウホクシティ編
>>81 >>82 >>83 >>84 >>87 >>88 >>89 >>93 >>94 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>106 >>107 >>108 >>111 >>112 >>115 >>116 >>117 >>118
ツクモシティ&スティラタウン編
>>121 >>122 >>123 >>126 >>127 >>128 >>129 >>130 >>133 >>138 >>145 >>152 >>157 >>158 >>159 >>162 >>163 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>171 >>172 >>173 >>175 >>176 >>177
シヌマシティ編
>>178 >>179 >>180 >>185 >>186 >>188 >>189 >>190 >>193 >>194 >>195 >>199 >>200 >>206 >>207 >>210 >>211 >>214 >>215 >>216 >>217 >>218 >>221 >>222 >>223 >>224 >>227 >>229 >>230 >>233
ヨザクラタウン編
>>234 >>235 >>236 >>242 >>243 >>246 >>247 >>248 >>251 >>254 >>255 >>256 >>257 >>258 >>259 >>260 >>261 >>264 >>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>273 >>274 >>275 >>276 >>277 >>280 >>281 >>283 >>284 >>285 >>288 >>289 >>290 >>291 >>294 >>295 >>296 >>297 >>298 >>299 >>300 >>301 >>303 >>304 >>305
テンモンシティ編
>>306 >>309 >>310 >>311 >>312 >>313 >>314 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>322 >>324 >>325 >>326 >>327 >>328 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>340 >>341
四天王&チャンピオン編
>>343 >>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>352 >>355 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>363 >>364 >>365 >>366 >>367 >>368 >>369 >>370 >>371 >>372 >>373 >>378 >>379 >>380
N・E団編
>>383 >>384 >>385 >>386 >>387 >>388 >>389 >>390

決戦編
零節 都市
>>391 >>392
一節 碧天
>>393 >>400
二節 緋天
>>394 >>401
三節 蒼天
>>395 >>404
四節 破天
>>396
五節 夜天
>>397
六節 輝天
>>398
七節 聖天
>>399


非公式(ベガ)ポケモン図鑑 >>5

Re: ポケットモンスター 星と旋風の使徒 ( No.120 )
日時: 2013/05/19 18:38
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: .7kGAeeY)

>>白黒さん
僕も波動だけのルカリオを作ったことがありますよ。まだ努力値など全く知らない頃ですが。

どうしてもエースの戦いばかりが盛り上がる事が多くなってしまうので、たまにはこんな展開にしてみました。
チルットの戦い方はなんか偶然思い浮かんだ感じでしたが、意外に上手く行けましたね。
チルタリスが冷凍ビームを覚えるのは知ってたんですが、僕もチルットが覚えるとは思いませんでした。
リオルは僕も全く知りませんでしたね。

『懐かしのあの人』は今作ではまだ登場してませんから、難しいと思いますよ。
特に、こいつが出て来るとは誰も思わないはず……!

Re: 第五十四話 再会(弐) ( No.121 )
日時: 2013/08/15 14:25
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: Q1X0ZXes)

空が曇ってきた。
アスカと戦った次の日、レオはコウホクシティに別れを告げ、ツクモシティを目指して山道を歩いている。
「雨とか降らないといいけどなー」
独り言を呟きながら歩き続けていると、
「ん? ありゃ何だ?」
山道の端の方に、何かが蹲っている。目を凝らしてみると、ポケモンのようだ。
カボチャを被り、黒いマントのついた、緑色の小動物のようなポケモン。
カボチャポケモンの、パンプリーという名前らしい。
「おい、どうしたんだよこんなところで」
レオがパンプリーに近づくと、何故か怯えた様子を見せるパンプリー。
だが、
「ちょっと待て。お前、怪我してるじゃねえか!」
パンプリーの腹に、切り裂かれたような傷跡があった。
「くそ、ここは中腹辺りだから、ポケモンセンターも遠いし……そうだ」
レオは自分のバッグから、あるものを取り出す。
「確か、これには怪我とかを癒す効果もあるって言ってたよな……」
取り出したのは、以前リョーマから貰った金のハチミツ。
「ほら。これやるよ」
レオはハチミツをその瓶ごとパンプリーに渡す。パンプリーはレオを安全だと認識したのか、瓶を受け取り、中のハチミツを吸い始める。
「トゲチック、出て来てくれ」
さらにレオはトゲチックを出す。
トゲチックは幸せを分け与える力を持つ。その力を応用すれば、パンプリーに元気を与えることも難しくない。
トゲチックがパンプリーに触れる。完全にとはいかないまでも、傷が癒えていく。
「ま、これで大丈夫だろう。パンプリー、そのハチミツは全部お前にやるよ。トゲチック、ありがとう」
レオはパンプリーへと手を振り、再び歩き出す。
そのレオの後ろ姿を、パンプリーはじっと見つめていた。


「地図上だと、もう少し歩けば着くな」
一人だと寂しいので、レオはトゲチックをボールに戻していない。
トゲチックもレオと同じように地図を覗き込む。
それにしても、空が随分暗くなって来た。雨が降っていないのが不思議なくらいだ。
「これは急いだ方がいいな。トゲチック、ペースを上げるぞ」
そして、レオが再び歩き出そうとしたその時。

「ふふ。久しいな、ウチセトを救ったヒーロー」

後ろから、聞き覚えのある女の声が聞こえた。
しかも、この声は。
「!?」
咄嗟にレオは振り返る。
そこにいたのは、レオと同年代くらいの少女。
黄色い鮮やかなセミロングの髪。なかなか派手な紫とピンクの服と、同じ色使いのスカート。
綺麗な容貌の少女だが、その瞳だけは死んだような灰色をしている。
「……?」
レオは、この少女が誰だか分からなかった。
レオの記憶の中に、こんな奴はいない。しかし、この声は間違いなく奴の声だ。
レオが戸惑っていると、その少女はさらに言葉を続ける。
「まさかこの私のことを忘れたのか? 貴様に忘れられるとは、余計に腹が立つ」
そして、その少女は笑みを浮かべる。
綺麗な顔に似つかない、引き裂くような不気味な笑みを。
「……あ」
これで確信した。間違いない。容姿が変わり果てているが、奴だ。

「やっぱりお前……シャウラか!?」

レオの驚愕の混じった声を聞くと、シャウラと呼ばれた少女は満足そうに頷く。
「ふふ、やっと思い出したか。そうだ。私のかつての名は、シャウラ」
シャウラは、ウチセトでレオたちが戦った組織『イビル』の幹部的立ち位置だった少女だ。
しかし、その時のシャウラは、継ぎ接ぎだらけのドレスにぼさぼさの紫の髪。
目の前の少女には、かつての名残は全くない。
「ふふ、そう身構えるなよ。私はああいう世界からは身を引いたんだ。貴様を敵とも思ってない」
確かに、シャウラからは全く敵意を感じない。
なのでレオも、なるべく穏やかな声で質問する。
「どうして、お前がここにいるんだ?」
「知りたいか?」
「ああ」
「だったら、教えてやる」
シャウラは相変わらず不気味な笑みを浮かべ、語り出す。



お前がイビルを壊滅させ、マターが消えた後、私たち七将軍は一匹残してポケモンを没収され、全員国際警察に捕まった。
でも、私だけは牢獄に放り込まれることはなかった。
何故かって? 私はまだ、14だったからさ。
だから、私だけは代わりに少年院に放り込まれた。
あそこでの生活は地獄だったよ。私の推測だが、少年院も牢獄とほぼ変わらん。
社会復帰のためだとか言って、やった事もない仕事や労働をさせられた。
だから、珍しく私は頑張った。
早くここから出たい、その一心で私は働いた。多分、他の誰よりも真剣に、他の誰よりもたくさんの事をしてた。
その甲斐あってか、私は六ヶ月で出られた。私みたいな大きな犯罪を犯した身としては、非常に珍しい事例らしい。


シャウラの話を、レオは黙って聞いていた。
感情を捨てた、と自称していたシャウラは、熱を込めて語り続ける。


私には既に家族はいなかった。
だから名前も知らない爺が私の身元引受人になった。
だが、この爺を私は全く信頼出来なかった。
まずもってこの服は何だ? どうして私がこんな派手な服を着なければならない?
その爺は言った。君には素質があると。その見た目さえあれば、僕がいろいろ教えてあげれば、有名人になれると。
冗談じゃない。貴様のような変態爺の言う事なんてやってられない。
だけど反抗は出来ない。口での反抗なんて聞きやしない。
手を上げれば、少年院に逆戻りなのは火を見るより明らか。
私はその爺の言葉を無視し続けた。
そして三ヶ月前、遂に耐えられなくなって家出した。
それから、私は路頭を彷徨い続けた。
私にはチェキラスが残ってた。夜の町で、私に声をかけて来る変態共を叩き潰し、身包みはがした。
奴らは通報出来ない。何せ、夜の町でか弱い女の子を襲おうとした、何て言えないから。
その奪った金で、私は生活を続けた。
同じ町には長くはいられない。度々町を、地方を移動した。新しいポケモンも手に入れた。
そして、今この道を歩いていたところ、貴様に出会った訳だ。



語り終えると、シャウラは息を吐く。
「ま、そんなところだ」
だけど、とシャウラはレオの方を向く。
「……その、何だ。あのー、これでも、私たちはお前たちには、か、感謝してるんだぞ?」
非常に珍しい事に、シャウラが顔を赤らめる。
(?)
シャウラの口調が突然変わったので、レオは疑問符を浮かべる。
「その、あれだ。えー、あのままイビルがガタノアの支配に成功していれば、私たちは処分されていたらしいし、そう考えれば、私たちはお前たちに助けられたってことだ。……くそ、それくらい察しろ!」
最後の言葉は、レオには聞き取れなかった。
シャウラのそのようすを見て、レオは笑うと、
「お前、意外と面白いな」
「何……ッ!?」
「その服も似合ってるぜ。前のよりは遥かに」
「おい貴様、私を舐めるなよ! 私は元イビル七将軍だぞ!」
「知ってるよ。でも今は、普通のトレーナーだろ?」
「むう……。だが、私はトレーナーじゃない。トレーナーカードも持っていないし」
「だったら」
レオは得意げな笑みを浮かべる。
「僕の父さん、ポケモン博士なんだ。シラハタウンってとこにいるから、行くといいよ」
「だが……」
「大丈夫大丈夫。僕からも言っておくし、レオから聞いたって言えば手続きしてくれるよ」
シャウラは少し黙り込み、顔を上げる。
「……ありがとう」
レオに聞こえるか聞こえないかくらいの声で呟く。
「お、ライブキャスター持ってんじゃん。登録しようぜ」
「待て」
ふとシャウラが、いつになく真面目な声を上げる。
「貴様が私の連絡先を欲しいのなら、私をその名で呼ぶな」
シャウラは真面目な表情で言う。

「シャウラは、イビル内での名前だ。私の本当の名は、セイラ」

「おっけー。じゃ、これからよろしくな、セイラ」
そして、二人はライブキャスターの連絡先を交換し合う。セイラも特に嫌な顔もしなかった。
「父さんにも連絡しとくから、シラハタウンに行って来いよ。それでお前も、路上生活なんかせずに済むぜ」
「……助かる」
しかし、セイラがボールからポケモンを繰り出す、その直前。

地面に、亀裂が入った。

「!?」
驚く二人を尻目に、亀裂はどんどん大きくなって行き、ついに地面が割れる。
「うわああああ!」
レオとセイラは、地面の割れ目へと落ちて行ってしまう。

Re: 第五十五話 洞窟 ( No.122 )
日時: 2013/08/15 14:26
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: Q1X0ZXes)

「ッ……痛え、くそ……」
レオとセイラが落ちた穴の中は、大きな洞窟が広がっていた。
天井の亀裂から光が入ってくるので、洞窟の中がある程度ははっきり見える。
「むー、随分と大規模な洞窟だな。ハガネールの群れでも住んでるのかもな」
「おいおい、そうだとしたらまずいぞ。ハガネールの群れになんか襲われたら一巻の終わりだぞ」
「ふふ、心配するな。こりゃ天然の洞窟じゃない。掘ったのはポケモンだろうが、人工的な匂いを感じる」
「人工的な匂い、ねえ……」
レオには全く分からないが、裏社会を生き続けて来たセイラには分かるのだろう。
しかし、
「昔の私たちと同じ匂い、とも言う」
この言葉だけは聞き逃せなかった。
「……おい。それって、まさか」
「ふふ、間違いない。N・E団、だったか? そいつらがいるぞ」
「ちっ、マジかよ……」
N・E団がいるかもしれないとなると、ゆっくり探索している訳にもいかない。
「セイラ、人を乗せて飛べるポケモンは?」
「いると言えばいるが、あの亀裂を通り抜けられるほど小さくない」
となると、やはり出られそうなところを探すしかなさそうだ。
「ポッチャマ、出て来てくれ」
「出て来い、チェキラス」
レオはポッチャマを、セイラは紫と黒を基調とした猫型の獣人のようなポケモン、デビルポケモンのチェキラスを繰り出す。
N・E団にいつ出くわしてもいいようにポケモンを出しておき、出口の捜索を開始する。
と、その時。

バッ! と。
天井の亀裂から、何かが飛び降りて来た。

「何だ!?」
それはポケモンだった。
美しい白の体毛に、悪魔の翼のような尻尾、漆黒の鎌を額に持つ、四足歩行のポケモン。
災いポケモンの、アブソルと言うらしい。
そのアブソルは、二人をじっと見据えると、短く声を上げ、尻尾で奥の道を指す。
「ついて来い、ってよ」
突然、セイラが言った。
「!? お前、ポケモンの言葉分かるのか?」
「ふふ、自分のポケモンならな。あと、悪タイプのポケモンの言葉も分かる。とにかく、ついて来いだと。出口に案内してくれるらしいぞ」
「本当か!? アブソル、助かる。ありがとう」
何故このアブソルが道を教えてくれるのかは不明だが、とにかく今頼れるのはこのアブソルだけだ。
とりあえず、二人はこのアブソルに続き、歩き出す。


アブソルは振り向くこともなく、歩き続ける。
「セイラ、人の気配はするか?」
「いや、しないな。つっても、私だって気配が完全に分かるわけじゃない。あまり当てにしないほうがいいぞ」
確かに、慎重に進むのに越したことはない。
アブソルに連れられ、歩き続けていると、
「?」
唐突に、アブソルが止まった。
二人に向けて小さく吼えると、次の瞬間には、素早い動きで岩陰の隙間に飛び込んでしまう。
「どうした?」
「む、誰かいる。来るぞ!」
セイラがそう言った、次の瞬間。

「ケッ、何で二匹もネズミが迷い込んでんだよ、面倒くせえな」

正面から、見たことのある顔が現れた。
長身の、立たせた緑の髪の男。前とは違って赤いチェック柄の服を来ているが、やはり胸にはN・E団の紋章。
碧天のセドニー。傍らには彼のポケモンであるサーナイトを、後ろには下っ端を引き連れている。
「N・E団、どうしてお前たちがここにいるんだ!」
「そりゃこっちの台詞だ。どうしてお前らはここにいるんだよ」
面倒臭そうに頭を掻きながらセドニーは言葉を続ける。
「せっかく地下にN・E団のアジトを造り上げようと工事をしてたってとこなのによ、お前らに見られちまったら秘密に造ってた意味がねえじゃねえかよ」
最後に小さく舌打ちし、セドニーは無線のようなものを取り出す。
「おい、聞こえるか。例のレオってのと変な小娘が入り込んでやがった。もうここにアジトを造る意味はねえ。撤退すっぞ」
しかし、無線の相手の声を聞くと、セドニーの表情が変わる。
「何? ああ、そういやそうだったな。あれの許可はもう出てたんだったな、すっかり忘れてたよ。それじゃ、別のとこ見つけるのも苦労するし、そうすっか」
じゃあそっちは頼むぜ、とセドニーは言い残し、無線の通話を切る。
レオたちの方へと向き直り、
「計画変更。新しいアジトを造るのも大変だし、しかも何より、突然邪魔が入ったわけだし」
セドニーがそこで言葉を切り、不敵な笑みを浮かべる。
「ムカついた。お前らぶっ潰して、その口を封じて任務完了だ」
その笑みと共に、セドニーはポケットへと手を突っ込み、
「さあどっちからだ? 俺としてはどっちが来ても構わねえけどな」
「へっ、以前カンタロウに押されてた程度のお前が何言ってんだ。僕一人で十分だ」
「そーかい。だったらまずは、お前からだ」
セドニーはレオを指差す。
「セイラ、下がっててくれ。こいつは僕が片付ける」
「ふふ。じゃ、貴様の戦いを見せてもらおう」
セイラがそう言って一歩下がり、レオが前に出たところで、
「下っ端!」
不意にセドニーが叫ぶ。
「はい! 今だ、イワーク!」
そのセドニーの声に応じ、下っ端が何か指令を出す。

刹那、天井と壁が崩れ、この空間を分断してしまう。

具体的に言うと、崩れた天井の壁が瓦礫となり、土砂の壁を造ってしまった。
レオとセイラを、別々に分ける形で。
「……ッ!」
レオは咄嗟にライブキャスターを起動させ、セイラの番号に繋げる。
「セイラ、大丈夫か!?」
『……何とかな。ちょっと反応が遅れていたらまずかったが、まあこっちは無事だ。貴様はさっきの奴を倒せ。この程度の壁なら、一時間もあれば私のポケモンで壊せる』
「分かった。なるべく早く終わらせてこっちも手伝うぜ」
セイラが無事なら、一安心だ。
レオはすぐに気持ちを切り替え、セドニーの方へと向き直る。
「待たせたな、さあバトル開始だ。序列5位のお前くらい、速攻で終わらせてやるぜ」
「おいおい、寝言は寝てから言うもんだぜ、クソガキが」
対峙する二人は、互いに余裕を浮かべつつ、それぞれのボールを取り出す。

Re: 第五十六話 『覚醒』 ( No.123 )
日時: 2013/08/15 14:28
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: Q1X0ZXes)

レオとセドニーのいる空間の向こう側で、セイラは壁を破壊しようとしていた。
「ふふ。これくらいの壁なら、一時間もかかるまい」
そう呟き、セイラはボールを取り出す。
「出て来い、ド——」
しかし。

「ギャヒャヒャ! 見つけたぜ、侵入者」

セイラの後ろから聞こえた、下品な笑い声。
振り返ると、そこにいたのはN・E団の紋章が描かれている真っ黒なフードを被った男。
セイラは、一番出会ってはいけない男と遭遇してしまった。
「む、誰だ貴様」
「破天のメジスト。セドニーと同じく、N・E団の七天将だ」
名を名乗ると、メジストはゆっくりとボールを取り出す。
「セドニーも言ってただろうが、ここで口封じさせてもらうぜ。恨むなら自分の運命を恨むんだな。ギャハハ!」
「ふふ、笑わせるな。私が勝つってのに、どうやって口を封じるつもりだ?」
「ギャヒャヒャヒャ! いいねぇ、それくらいの相手じゃねえとつまんねえよなあ! 頼むから、後で泣いて謝るような真似だけはしないでくれよぉ!?」
「ふふ。今の台詞、そっくりそのまま貴様に返してやろう」
そして、二人は同時にポケモンを繰り出す。
「出て来い、キルギシア!」
「叩きのめせ、グライオン!」
メジストのグライオンに対し、セイラは人形のような出で立ちの、長い金髪に、左右に大きな橙色の盾を持ったポケモンを繰り出す。
ドールポケモンのキルギシア、エスパータイプだ。
「グライオン、まずは砂地獄!」
グライオンはキルギシアの足元から砂の渦を起こし、キルギシアを渦の中に閉じ込めてしまう。
「ギャヒャヒャ! 残念だったなぁ、動けなくなった時点で、こいつの勝ちは決まったんだわ!」
狂ったような高笑いをあげるメジスト。そして、
「グライオン、ハサミギロチン!」
グライオンの鋏をが、断頭台の刃のように伸びる。
その鋏を構えて、グライオンは渦の中のキルギシアへと突っ込む。
一撃必殺の刃が、キルギシアを貫き、確実に戦闘不能にする。
しかし、その直前。

「キルギシア、道連れ」

キルギシアが何かを呟く。
次の瞬間、キルギシアは一撃必殺の刃に切り裂かれ、一撃で戦闘不能となる。
だが。
同時に、グライオンが地面に落ちた。
「あぁ!? グライオン、どうした!」
表情は見えないが、口調に苛立ちを込め、メジストは怒鳴る。
「ふふ。道連れだよ」
対照的に、セイラの口元には笑みが浮かんでいる。
道連れは、この技の後に戦闘不能になると、相手も戦闘不能になってしまう技。
だがメジストも、謎が解けるとすぐにいつもの調子に戻る。
「ギャヒャヒャ! そう言うことか、やってくれるねえ! こりゃ楽しいバトルになりそうだ! ギャヒャヒャヒャ!」
お互いにポケモンを戻し、二人は次のボールを取り出す。
ただし、セイラは目の前にいる敵が、どれだけ危険な男なのかをまだ知らない。


「ヘラクロス、瓦割り!」
「ッ、シャワーズ!」
ヘラクロスが勢いよく角を振り下ろし、セドニーのシャワーズを吹っ飛ばす。
バトルが始まって少し経っているが、こちらの戦いはレオが押している。
シャワーズは重い一撃を受け、戦闘不能となってしまう。
「シャワーズ、よくやった。休んでな」
セドニーはシャワーズをボールに戻すが、次のボールを取り出す気配がない。
「どうしたんだ。まさか怖気付いたとか言うんじゃないよな」
「まさか。俺がそんな表情をしてるように見えるか?」
レオの言葉を笑い飛ばし、セドニーは続ける。
「以前、ソライトが『本気』って言葉を口走ったろう」
そう言われ、レオは記憶を辿る。
アカノハで戦った時、撤収間際、確かにソライトは言っていた。
いや、それだけではない。デンエイ炭鉱で遭遇した、緋天のガーネットもそう言っていた。
「最近、俺たちN・E団の対抗勢力が徐々に力を付けてきてやがる。この間は、別の任務でガーネットの奴が負けた」
だから、とセドニーは続け、
「遂にボスから『本気』が解禁された。この力さえ使えれば、怖いものは殆どなくなる」
不敵な笑みを浮かべ、セドニーはボールを取り出し、それをレオに突きつける。
しかし、それは普通のモンスターボールとは明らかに違った。
ボールを封印するかのように、表面に鎖の模様が二重に描かれている。
「おかしいとは思わなかったか? ラピスやトパズは兎も角、蒼天を名乗るソライトが青を司るポケモンを持っていなかったり、碧天を名乗る俺が緑を司るポケモンを持っていなかったことが」
そう言われても、とレオは思ったが口には出さない。そこまで不思議には思っていなかったが。
「俺たちは、この力を『覚醒』と呼んでいる。覚醒を使うと、このボールの使用が解禁され、さらに俺のポケモンは強化される。ま、少々俺の体に負担がかかるが、これくらいどうってことない」
セドニーがそう言い終わると同時に、ボールに描かれた鎖模様が翠色の光を放つ。
「では、俺が今からN・E団の先陣を切って覚醒を使用する。覚悟しろ」
刹那、セドニーの瞳が翠色に輝く。
同時に、手の甲に鋭い爪のような翠の模様が浮かび上がる。
(……まずい)
素直にレオはそう感じた。
セドニーの体から、言いようのない、異常なほどのオーラを感じるのだ。
「それじゃ、バトルの続きだ。いよいよ、お前の力を使うことが出来るぜ」
手の中のボールにそう呼びかけ、セドニーは、鎖の模様が描かれたボールを掲げる。

「碧天に火花を散らせ、バジリール!」

セドニーが繰り出したのは、小型の恐竜のようにも見えるポケモンだ。
側頭部には葉が生えており、足も大きな葉で覆われ、紫の腹は巨大な花弁にも見える。
しかし、一番目を引くのは、光を放つ黄色い花のような尻尾。薄暗い洞窟では、イルミネーションのようにも見える。
電気草ポケモンの、バジリール。草・電気タイプだ。
(これは……やばいかもな!)
少々焦りを感じるレオ。
このバジリールから放たれるオーラが、桁違いなのだ。
前に対峙した、ガーネットのグレイシアと比べても、それは比にならないほど。
「だけど、やるしかねえぞ。ヘラクロス、びびるなよ! 行くぞ!」
当然、とでも言うように、ヘラクロスは角を振り回す。
「っし! ヘラクロス、瓦割り!」
翅を広げ、ヘラクロスは飛ぶ。
角を振り上げ、渾身の力を込めて思い切り振り下ろす。
だが。

「バジリール、大成長!」

バジリールが地面に力を送り込む。
刹那、地面から大量の太い蔦が飛び出し、意思を持っているかのように一斉にヘラクロスに襲い掛かる。
その威力は、無数の蔦に思い切り叩きつけられた、なんて生易しいものではなかった。
もはやそれは鈍器だった。
無数の蔦の形をした鈍器にヘラクロスは思い切り殴り飛ばされた、と言った方が正しいかもしれない。
「十万ボルト!」
さらにバジリールの追撃が飛ぶ。
バジリールの尻尾から高電圧の強烈な電撃が放たれ、ヘラクロスを捕らえた。
耐えられるはずもなく、ヘラクロスは戦闘不能となって、地面に倒れてしまう。
「……ヘラクロス、ありがとう。休んでてくれ」
ヘラクロスをボールに戻し、レオはバジリールを見据える。
(まずいな……ヘラクロスがやられたとなると、タイプ的にバジリールには不利なポケモンしかいないし)
そんなレオの考えなど知らず、余裕の笑みを浮かべる。
「残念だが、覚醒使用時は、俺は序列七位。つまり最弱」
この力で最弱。
だとしたら、その上は。
「だけど今日はいい感じだ。久しぶりに覚醒を使った割には、八割以上の力が出せてる。覚醒を使った状態で常に百パーセントの力を出すのは難しいんだぜ?」
軽い口調で語るセドニーの翠色に光る眼光が、レオを見据える。

Re: ポケットモンスター 星と旋風の使徒 ( No.124 )
日時: 2013/05/25 12:40
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: FLZh3btT)

 テストが終わって部活が本格化、一難去ってまた一難の白黒です。

 懐かしのあの人はシャウラでしたか……え? シャウラ? ……流石にこれは予想外でした、キラとかが出て来ると思ってました。
 さて、シャウラ改めセイラですが、大分様変わりしましたね、恰好は。個人的には前作の格好の方が好きでしたが、性格はさほど変わっていないようなので気にしないことにします。
 それにしても、セイラたちはポケモン取り上げられているんですか……トコヤミがいないのは可哀そうですね。

 個人的になかなか好きだったセドニーが再登場して歓喜ですが、早速本気の意味——彼らの言う『覚醒』が判明しましたね。まあパワーアップするのだろうということは予想していましたが、四体目のポケモンが出て来るのは面白いです。
 セドニーが最弱なことについてはあえて何も言いませんが、こうなってくるとラピスやソライト、メジスト辺りがどうなるのか気になるところですね。

 セイラとメジスト、レオとセドニーのバトルがどう転ぶのか、楽しみです。
 ……それにしても、あのアブソルは一体なんだったのか……?


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