二次創作小説(紙ほか)

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ポケットモンスター 星と旋風の使徒
日時: 2017/01/28 12:25
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=22078

どうも、初めましての人は初めまして、そうでない人はこんにちは。パーセンターです。
えー、また始まってしまいました。四作目ですね。
今作は前作の完全続編となっております。
参照をクリックすれば、前作に飛びます。
レオの新しい冒険が、始まります。

※注意
・例によって例のごとくノープランです。
・パーセンターは大学生でございます。現在数々の課題に追われて更新頻度が非常に低いですがご了承ください。
・登場するポケモンが色々とややこしいです。詳しくは近々やるオリキャラ募集のときに説明しますが、簡単に言うと『プラチナのシンオウ図鑑に載っているポケモン+ベガでのみ登場するポケモン』となります。

これくらいですね。
内容としては、前作と同様、オリジナルの地方でのゲームのような冒険ものとなります。

それでは、よろしくお願いします。

登場人物
味方side >>25
N・E団side(ネタバレ注意)>>153
用語(ネタバレ注意)>>342

プロローグ >>1

シラハタウン&メガキタウン編
>>6 >>20 >>22
ハスバナシティ編
>>27 >>31 >>32 >>34 >>36
デンエイシティ編
>>39 >>40 >>41 >>42 >>45 >>46 >>50 >>53
アカノハシティ編
>>55 >>57 >>58 >>62 >>63 >>64 >>65 >>68 >>70 >>72 >>74 >>75 >>79 >>80
コウホクシティ編
>>81 >>82 >>83 >>84 >>87 >>88 >>89 >>93 >>94 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>106 >>107 >>108 >>111 >>112 >>115 >>116 >>117 >>118
ツクモシティ&スティラタウン編
>>121 >>122 >>123 >>126 >>127 >>128 >>129 >>130 >>133 >>138 >>145 >>152 >>157 >>158 >>159 >>162 >>163 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>171 >>172 >>173 >>175 >>176 >>177
シヌマシティ編
>>178 >>179 >>180 >>185 >>186 >>188 >>189 >>190 >>193 >>194 >>195 >>199 >>200 >>206 >>207 >>210 >>211 >>214 >>215 >>216 >>217 >>218 >>221 >>222 >>223 >>224 >>227 >>229 >>230 >>233
ヨザクラタウン編
>>234 >>235 >>236 >>242 >>243 >>246 >>247 >>248 >>251 >>254 >>255 >>256 >>257 >>258 >>259 >>260 >>261 >>264 >>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>273 >>274 >>275 >>276 >>277 >>280 >>281 >>283 >>284 >>285 >>288 >>289 >>290 >>291 >>294 >>295 >>296 >>297 >>298 >>299 >>300 >>301 >>303 >>304 >>305
テンモンシティ編
>>306 >>309 >>310 >>311 >>312 >>313 >>314 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>322 >>324 >>325 >>326 >>327 >>328 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>340 >>341
四天王&チャンピオン編
>>343 >>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>352 >>355 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>363 >>364 >>365 >>366 >>367 >>368 >>369 >>370 >>371 >>372 >>373 >>378 >>379 >>380
N・E団編
>>383 >>384 >>385 >>386 >>387 >>388 >>389 >>390

決戦編
零節 都市
>>391 >>392
一節 碧天
>>393 >>400
二節 緋天
>>394 >>401
三節 蒼天
>>395 >>404
四節 破天
>>396
五節 夜天
>>397
六節 輝天
>>398
七節 聖天
>>399


非公式(ベガ)ポケモン図鑑 >>5

Re: 第百六十八話 防城戦 ( No.315 )
日時: 2015/07/20 19:14
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: 6k7YX5tj)

その日の夕方には、ホロとセイラもリュードウとのジム戦を終えた。
セイラは何とか勝利したらしい。
曰く、
「最後の一体にヒョウカクを残しておいて正解だった。ミロカロスとドラドーンを纏めて対処してくれた」
とのこと。
一方、ホロは惜しくも負けてしまったらしい。
曰く、
「あのミロカロスのアクアリング、あれやばいだろ!? 倒すまでに時間掛けすぎて、さすがのムクホークでもドラドーンまで倒す体力残ってなかったぜ」
だそうだ。
また、レオたちがジム戦をしている間に、リョーマやエフィシ、ライロウが街の住民全員に二日後の避難勧告を終え、大体の作戦を立てたらしい。
今、一同はテンモン支部の会議室にいる。
「つーわけで、今回の配置はこうします」
リョーマが全員を見渡し、口を開く。
「まず入口ですが、当然ここは何としても防ぐ必要があります。なのでここは比較的手厚い守備を。メジストが来ると洒落にならないので、奴の能力が効かないリュードウ先生、あとアスカ、ライロウに正面の入口を守ってもらいます」
次に、とリョーマはテンモン支部の内部図を取り出す。
「レオとセイラ、エフィシにホロ。この四人には、内部の要所要所を守ってもらいつつ、内部を警備してもらう予定です。入口を突破された場合の保険も兼ねてですが、工作兵が侵入して来る可能性も普通にありますからね」
そして最後に、とリョーマは続ける。
「最上階、宝玉を保管してある金庫がある部屋。ここを、俺が守ります。ライロウからヨザクラタウンの件を、アスカからトパズの実力を聞きました。トパズが建物を直接ぶち抜いて来る可能性もゼロじゃありません。その場合、俺がトパズと一騎打ちです。万が一メジストが来た時のために、セイラは上階の方の配置にしてます。あと、トパズに誰かが付属してる場合に備えて、当日はテレジアを呼びます」
「恐らくヨザクラタウンの一件を考えれば、メジストを能力の効かないリュードウ先生を誘き出すために使って来るはずです。だから敢えてリュードウ先生を正面に置き、メジストをそこで足止めさせる作戦です。トパズの相手は、リョーマに託します」
横からエフィシが補足を付け足す。
「うむ、それで問題ないだろう。リョーマ、万が一お前がトパズに負けた場合の対抗策は、考えてあるな?」
「勿論です。ただしそれを分かった上で動いてほしくないので、後で先生にだけ話します。とりあえず、他の面子は、俺がやられても宝玉は無事だということだけ分かっておいてください」
リョーマの説明を聞いて、リュードウは無言で頷く。
「それでは、これで作戦の共有は終わりです。明日は各自調整に使って、明後日、奴らを何としても撃退、あわよくば捕らえてやりましょう。何か質問とかある人は、個別で俺に聞きに来てください。それでは、解散」



「レオ」
前日の夜。
ポケモンセンターの宿泊室で、レオのいる部屋に入って来たのは、アスカだ。
「どうしたんだ?」
「正直、私は明日が怖い。宝玉を背後にして輝天将と戦った時の感覚が、まだ脳内に染み付いて離れない。一度ああいう場での敗北を経験するとね、いざって時に弱い自分が出てくるのよ」
「そりゃ、僕だって怖くないわけじゃないよ。僕だって、イビルやネオイビルとの戦いで何度も恐怖を経験してきた」
レオの脳裏に、今までの記憶が蘇る。
トレーナーを始めて間もない頃に見たアンタレスの威圧感や、リーティンを敗北寸前まで追い詰めたトゥレイスのハサーガ、そして何より伝説と謳われるはずのポケモンを簡単に操ってしまうマター。
ポッチャマを圧倒したガーネットのフィニクスや、レントラーを相打ちにまで持ち込んだソライトのオールガ、レオのポケモンを容易く二体も撃破したマツリのポリゴンZ。
「でもさ」
それらを受け止めた上で、レオは言葉を続ける。
「それをどれだけ怖がったとしても、やって来るのは間違いないんだ。それにアスカ、戦う前から負けた時のことなんて考えてたら、それこそ本当に負けることになるぜ。心配するなよ、お前が強いのは僕もよく知ってる。いつものアスカらしくさ、自信持っていこうよ」
レオの言葉を聞いて、アスカは小さく微笑みを作り、頷く。
「そうね。あんたに相談してよかったわ。少なくともそんな思いを持ったことがあるのは私だけじゃないし、そいつはそれを乗り越えて戦ってる。しかもそいつが偉そうな幼馴染みときたら、くよくよなんかしてられないわね」
「……偉そうなは余計だけどな」
レオの言葉など聞いてもいないようで、瞳に熱い光を戻したアスカは立ち上がる。
「もう少しゴウカザルたちとトレーニングして来るわ。大丈夫、明日に悪い影響は残さないから。それじゃ、明日は頑張るわよ。おやすみ」
そう言って、アスカは部屋を出て行った。
「明日か……」
再び一人になったレオは、小さく呟く。
レオの脳内に染み付いて離れないのは、禍々しいマターの威圧感、そして、変わり果てたマリアの姿。
「マリア、待ってろよ。いずれ絶対、あのクソ野郎を叩き潰して、助け出してやるからな」
拳を握りしめ、考えていたことが思わず漏れてしまったように、レオは呟く。



そして決戦の日。
アカノハ支部からテレジアが合流し、『ブロック』の面子が全員集合した。
「リュードウ先生。街の住民は全員、ポケモンセンターとジムに避難完了しやした。『ブロック』構成員とジムトレーナーが、中を守っておりやす」
「うむ、分かった。それでは、後は時間を待つだけか」
ライロウの報告を聞き、リュードウは周囲の様子を伺う。
時間は10分前。入口前は、まだ動きはない。
「ライロウ、アスカ。モンスターボールを手に取っておけ。敵に気付いたら、すぐにポケモンを出せるようにしておけ」
横の二人に指示し、リュードウはライブキャスターを起動させる。
「リョーマ、敵の影は見えるか」
『いえ、さっきからテレジアと俺でずっと双眼鏡で見てますが、敵らしきものは見えないっすね。見えたらすぐにアラームで知らせますんで、ご安心を』
「了解した」
それだけ言って、リュードウは通話を切る。
後は周囲を警戒するのみ。
時計の長針が、12を指す。

突如、リュードウたちの前の地面が爆発した。

「来たか!」
リュードウが素早く通知のスイッチを押し、三人がボールを構える。
対して、
「ネオイビルの科学力の産物、N・E輸送ドッグ地底式」
砂煙の奥から聞こえるのは男の声と、
「まさか地下から来るとは、思ってもなかったでしょう?」
女の声。
煙が消えると、そこにいたのは派手なドレスを着た紅のロングヘアーの女と、黒ずくめの服に真っ黒なフードを被った男、そして、大量の下っ端兵士たち。
緋天将ガーネットに、破天将メジスト。
「ギャヒャヒャ! やっぱりお前がいたか、元祖『ブロック』リーダー! 久しぶりじゃねえか、ずっとお前に会いたかったぜ。あん時は世話になったなぁ!」
「確かに貴様の顔を見るのは久方ぶりだな。私は二度と貴様に会いたくなかったが」
火花を散らすメジストとリュードウ。
「ライロウ、アスカ」
メジストと睨み合ったまま、リュードウは二人の名を呼ぶ。
「ライロウ、お前は後ろの下っ端の軍勢を対処しろ。アスカ、緋天将の相手は君に任せる。二人とも、頼んだぞ」
「「了解です」」
ライロウとアスカも、それぞれの役割を遂行しにかかる。
「あら、貴女と戦うのは初めてね。でも、手持ちポケモンの情報はトパズから聞いてるわよ。トパズに手も足も出なかったこともね」
「あら奇遇じゃない。私もあんたのことはこっちの仲間からよく聞いてるわ。シヌマのサクラさんに手も足も出ないってこともね」
ガーネットの挑発を、アスカは軽くいなす。
「口だけは達者なのね。そういう子、私嫌いなのよ。全力で潰してあげる」
ガーネットの瞳から、紅の光が漏れる。
同時に、腿に龍の尾のような紅の模様が浮かび上がる。
「生憎お互い様で。私も、あんたみたいな高飛車な女大っ嫌いなのよ」
それにも臆さず、アスカはボールを構える。

Re: 第百六十九話 因縁 ( No.316 )
日時: 2016/05/13 09:18
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: MHTXF2/b)

リュードウが押したスイッチによって、建物内にいる全員にネオイビル襲来の通知が伝わる。
「おおっと、おいでなすったか!」
リョーマがニヤリと笑い、双眼鏡のある高台から飛び降りる。
その時、
「リョーマさん!」
テレジアが大声を上げる。
「どうした?」
「南の方角から、敵艦接近! 『ホエール』です!」
テレジアが叫んだ、次の瞬間。

建物全体が、大きく震撼する。

「なっ、なんだこりゃ!?」
「ま、まずいです! 『ホエール』が、砲撃を……きゃっ!」
再び揺れが起こり、テレジアがバランスを崩して高台から落ちる。
「やっべ! トロピウス、出て来い!」
咄嗟にリョーマはトロピウスを繰り出し、テレジアを何とか受け止める。
「……すいません、助かりました。いや、そんなことを言ってる場合じゃないです!」
「大体把握した。分かってたことだが奴らも容赦ねえな! こっちに砲撃して壁に穴開けて、直接攻め込もうって魂胆だろ!」
直後。

「御名答」

最上階の壁が破壊され、そこに一人の男が立つ。
無造作に跳ねた金髪。
橙色の軍服の上からでも分かる頑強な体を覆う、赤いマント。
輝天将トパズだ。
「『ブロック』副統率か。やはりお前がいるだろうと思ったよ。お前たちの中で我と戦える戦力がいるとすれば、それは副統率、お前だけだからな」
立ち振る舞いとその言葉だけで圧倒的な威圧感を相手に与えるトパズに対し、
「ハッ、名前で呼んでほしいもんだな。俺にはリョーマって名前があるんだからよ」
モンスターボールを手の中で弄ぶほどの余裕を見せながら、リョーマはそう返す。
「しっかし、メジストじゃなくてお前が来てくれて助かったわ。メジストが来た場合多少面倒くせえことになってたし」
何より、とリョーマは続け、
「お前が相手なら、久々にガチのガチで戦えるからな」
リョーマはニヤリと笑い、手にしたモンスターボールを構える。
「ふっ、『軍神』たる我にバトルを挑むか。その心意気だけは評価するが、天将で唯一覚醒率を自在に操る我に勝てるとでも思っているのか」
「お前こそ、俺を誰だと思ってんだ? 天下の『ブロック』副統率、『ブロック』で二番目に強い男だぜ?」
そしてトパズの方を見据えたまま、リョーマはテレジアの名を呼ぶ。
「テレジア、ここは俺一人で十分だ。仮に俺が負けたとして、こいつはお前が勝てる相手じゃねえ。下に行って、見回りの奴らに加勢してきな」
リョーマの指示にテレジアは頷き、階段を駆け下りて行った。
「準備は整ったようだな、では、始めるか」
刹那、トパズの瞳が金色に光り輝く。
同時に、トパズの首元に浮かび上がった龍の逆鱗のような黄金の模様が、爆発的な光を帯びる。
「『ブロック』二位が相手だ。パワーを制御する意味はないだろう」
「そうこなくっちゃな。例えお前が軍神でも、本気でかかってこねえと、俺様には勝てねえぜ?」
双方が戦闘態勢に入り、それぞれのポケモンを繰り出す。
「占領せよ、チリーン!」
「飛翔せよ、トロピウス!」


『ホエール』がテンモン支部に砲撃を仕掛けた理由は、トパズが直接最上階に侵攻するため、だけではない。
いくら強固な防衛力を持つ城であろうと、その側面に穴が空いてしまっていては、防衛力など何の役にも立たない。
つまり——
「おや、ホロ君。そちらの様子はどうでしたか?」
「今のところ、変な感じはしなかったぜ」
内部の見回りを行っている途中で、エフィシとホロが合流する。
「それにしてもよ、さっきの立て続けの揺れは何だったんだ?」
「先ほどリュードウ先生からの通知がありましたし、外で派手にやっているのかもしれません」
そこで、二人のライブキャスターがピピッと音を立てる。
「ん?」
エフィシがライブキャスターを起動させる。
内容はテレジアからのメッセージだ。
読んでいくうちに、エフィシの顔がどんどん険しくなっていく。
「……ホロ君。奴らは既に、この中に侵入している可能性があります」
「なんだって!? エフィシにーちゃん、どういうことだ!?」
「先ほどの連続の揺れ、あれはどうやら、ネオイビルがこちらに対して砲撃を仕掛けていたようです」
「ってことは、敵がそこから攻めてくるかもってことか!?」
ホロの慌てた声が響いた直後。

「「その通り」」

通路に、二人の重なった声が響く。
エフィシとホロが振り向くと、そこにいたのは一組の男女。
紙袋を被った白いドレスの女に、白黒の仮面を被った黒い燕尾服の男。
姉弟の直属護衛、キキとケケ。
「紙袋に仮面……お前たちは、破天将の直属護衛ですか」
「それにしても、いきなり敵に出くわすとは思っていなかったわね」
「まあ正面と頂上だけ固めて内部に誰もいないなんてあり得ねえだろ。遅かれ早かれ、戦うことにはなってるさ」
「それもそうね」
エフィシの言葉など聞こえていないように、姉と弟は話を進め、
「ま、そーいうわけでさ」
「私たちの相手をしてもらおうかしら」
怪しい笑いを浮かべた仮面と、無機質な紙袋がホロとエフィシを見据える。
「言われなくてもそのつもりです。ホロ君、貴方は紙袋の女の方をお願いします」
「オッケー。じゃあエフィシにーちゃんは仮面の方だな」
支部内の広い通路に、二人の『ブロック』と二人のネオイビルが対峙する。



「当時の貴様は、リーダー、そう呼ばれていたな」
唐突に、リュードウはそんな話を始める。
「あぁ?」
「あれは半年ほど前だったか。構成員の全員が何かしらで顔を隠しているのが特徴の、犯罪組織『ブラックアメジスト』。貴様はその頂点に立ち、多くのならず者たちを統制し、数々の事件を起こして社会を混乱させていた。それを潰したのは、私たち『ブロック』だ」
「ギャヒャヒャ! 何を話し出すかと思えば随分と懐かしい話を始めたなぁ? そうだ、『ブロック』のザコ共を俺様の能力でねじ伏せていく中、そこにお前が現れた。いやぁ、あれは驚かされたぜえ?」
リュードウの話を、自身の過去の聞き、メジストはいつもと変わらない高笑いを上げる。
「俺様の能力を知っていたお前は俺様に目もくれず、周りの俺の部下たちを殲滅。結果、当然と言うべきか、俺は敢え無く敗北。残っていた部下たちが決死でお前たちの前に立ち塞がり、俺を逃がしてくれたが、結果『ブラックアメジスト』は壊滅。構成員のほとんどは逮捕、俺——リーダーを含む十数名は行方不明。同時に、『ブロック』側も大打撃を受け、その責任を取って当時の総統率、リュードウは伝説のポケモン、テラキオンを手放し、辞任。ま、結果としてどっちもリーダーとしての立場を失ったわけだ」
「だが、その後は違う」
メジストの高笑いに動じることもなく、リュードウは言葉を続ける。
「私はその後、このテンモンシティのジムリーダーに任命された。この街を、多くの民を纏めるという役割を、再び持つこととなった」
だが、とさらにリュードウは話を続け、
「一方のお前は、半年間行方を眩まし、やがてネオイビルの隊の一隊長にまで落ちぶれた。貴様ほどの力があれば、組織の頂点に立つことも出来るだろうに。なあ、メジストよ。お前はなぜそんなところで燻っている。どうして更生して再び頂点を目指す道を捨て、人に従属してまで悪に染まり続ける道を選んだ。私には、それが——」

「ごちゃごちゃうるせえな、少し黙ってろよ」

メジストの口から、明確な怒りを込めた低い声が漏れる。
「俺をそこまで叩き落とした張本人が、何を偉そうに語ってんだ? 何が落ちぶれただ、何が人に従属する道を選んだだ。俺にそこまでさせる原因を作ったのは、お前だろうが!」
フードの奥に光る鋭い眼光が怒りに染まったのを、リュードウは見た。
「俺たち破天隊は十三人。その全員、かつての『ブラックアメジスト』のメンバーだ。マターの元に下ってフードに紋章を刻み込み、自らの顔に龍の顔の紋章を刻み込んでまでネオイビルに、マターに従っている理由なんざ一つしかねえ。世界を征服する? 新しい新世界を作り上げる? そんなことは俺にとっちゃ二の次だ。罪人に裁きを下すなんざ知ったことか、心底どうでもいい。俺はな、俺はなあ! 俺を犯罪グループとして生きさせるまで叩き落としたこのクソみたいな世界に、その世界で唯一自由に過ごせる場所を奪ったお前たちに、復讐を果たすためにここにいるんだよ!」
メジストのフードが吹き飛び、激怒を宿した瞳から黒い光が迸る。
同時に、メジストの顔に龍の顔のような黒い模様が浮かび上がる。
「この瞬間を待ってたぞ。お前と対峙する、この瞬間を! 絶望しろよ、クソ野郎。今度こそ、お前を、奈落の底へと叩き落としてやるぜ!」
壊れるほどに強くボールを握り締め、狂気を撒き散らし、メジストは叫ぶ。
「破天を喰らえ、ティラノス!」
次の瞬間。
メジストの切り札、暴君のティラノスが君臨する。
メジストの怒りに共鳴し、大地を揺るがす咆哮を上げ、半年前に見た宿敵を見下ろす。
「どうやら、私は何としても貴様にもう一度敗北を教えなければならないらしいな」
メジストの狂気にも臆さず、リュードウはボールを取り出す。
「今度こそ、貴様の目を覚まさせてやる。大地に臨め、コモラゴン!」
対するリュードウのポケモンはコモラゴン。
因縁の二人が、激突する。

Re: 第百七十話 対極 ( No.317 )
日時: 2015/07/27 09:52
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: hPXqbdLO)
プロフ: コメントほしぃ……

テレジアが送ったメッセージにより、レオやセイラにも内部に侵入者がいることが伝わる。
「それにしても、直接壁を破壊か……こうなるとどこから敵が来るか分かんないな……」
独り言を呟き、
「そうだ、レントラー、出てきてくれ」
レオはレントラーを繰り出す。
「レントラー、近くに敵がいないかどうか、調べてくれ」
レオの言葉にレントラーは頷き、瞳を金色に輝かせる。
透視能力を発動させて周囲を見回すが、やがて再びレオの方を向いて首を横に振る。
「そうか、近くには誰もいないんだね。分かった、じゃあ警備を続けるか。階段あたりは特に重点的に見張らないとな」
レントラーを戻さず、引き連れたまま、レオは通路を進んでいく。



一方、セイラは敵と遭遇していた。
それも、なかなかの大物と。
「車椅子の女……夜天将か」
「貴女と会うのは初めてよね。そうよ、あたしが夜天のラピス。貴女のことも知っているわよ」
感情の無い冷たい瞳を、ラピスはセイラへと向ける。
「マター様の部下として、イビル七将軍の一人、シャウラの名でウチセト地方で活動し、マター様の失踪と共に逮捕。やった事の大きさに比べて、出所が早すぎる気もするけど。それにしても、ほんの一年前まで悪の道を突っ走っていたのに、よく表の社会で生きていけるわね」
「私がどう生きようが、私の勝手だ。貴様には関係ない」
ラピスの言葉をセイラは切り捨て、
「私が今やることは、敵を排除すること。貴様の相手は、私だ」
モンスターボールを手に取り、ラピスに向けて突き出す。
対するラピスも服の腕を捲り上げ、無言でボールを取り出す。
その瞳が紫色の光を放ち、腕には龍の腕のような模様が浮かび上がる。
直後、ラピスの左腕に見えない刃物で切り裂かれたように傷口が生まれるが、ラピスは気にも留めない。
「さあ始めるわよ。敵を見つけ次第倒さないといけないのはあたしも同じ。夜天の魅せる闇に沈みなさい」
「ふふ。じゃあ私は、そっちの世界では絶対に見つけられなかった光を貴様に見せてやろう」
二人の少女が対峙し、それぞれボールを取り出す。
「行って来い、チェキッド!」
「ルナバイン、神秘のひと時を」
セイラの繰り出すチェキッドに対し、ラピスのポケモンはルナバイン。
タイプ相性的には、悪タイプを持つチェキッドが有利。
「別にタイプ相性だけでバトルを考えたくはないけど、エスパー技が通らないのは嫌ね。まあいいわ、始めるわよ」
「いいだろう。チェキッド、氷柱落とし!」
チェキッドが先手を取り、ルナバインの頭上に冷気を放つ。
冷気は大気中で急速に凝固し、氷柱となって降り注ぐ。
「ルナバイン、防ぎなさい。ウッドハンマー」
対するルナバインは手にした杵を頭上に掲げ、バトントワリングのように杵を片手で軽々と振り回し、氷柱を全て防ぎ切る。
「チェキッド、ぶち壊す!」
その隙を狙い、チェキッドが飛び出す。
一気にルナバインとの距離を詰め、軽やかなステップで飛び上がり、長い尻尾を叩きつけるが、
「ルナバイン、躱して気合玉!」
ルナバインは大きく跳躍してチェキッドの一撃を躱し、右手に自らの気を凝縮し、気合の念弾を投げつける。
「チェキッド、影分身!」
チェキッドが体勢を崩したところに効果抜群の一撃が迫るが、セイラは落ち着いていた。
咄嗟にチェキッドは自らの影に姿を映して分身を作り出す。気合玉が捉えたチェキッドの影は消滅する。
「なかなか冷静ね。状況判断力はそこそこ、といったところかしら」
「ふふ。貴様も知っている通り、私は貴様らよりもっと昔から闇の世界に浸っていた。戦闘経験だけで言えば、貴様らには到底負けない自信があるぞ?」
闇に堕ちた者と、闇から抜け出した者。
対極の位置に立つ二人の少女は、それぞれ冷静沈着に敵を見据える。



「チリーン、ハイパーボイス!」
先手を取ったのはトパズ。
チリーンが体内で音を反響させ、大音量の声と共に衝撃波を放つ。
「トロピウス、躱してドラゴンダイブ!」
トロピウスは飛翔し、衝撃波を躱すと、龍の力を纏い、凄まじい殺気と共にチリーンを狙って急降下するが、
「吹き飛ばせ。サイコバーン!」
チリーンは念力を溜め込み、爆発を起こして念力の衝撃波を発し、三倍以上の体格を持つトロピウスを逆に吹き飛ばしてしまう。
「逃がすな、追撃せよ! チリーン、もう一度サイコバーン!
「ちっこい割にやるじゃねえの! トロピウス、リーフストーム!」
チリーンが再び念力の強烈な衝撃波を放つ。
対してトロピウスは素早く体勢を立て直し、ヤシの葉のような翼を激しく羽ばたかせ、鋭く尖った葉の嵐を起こす。
今度は念力の衝撃波が打ち破られ、チリーンが無数の葉の刃に切り裂かれる。
「どんなもんよ! トロピウス、ハイドロポンプ!」
さらにトロピウスは大量の水流を発射し、さらに攻め立てるが、
「チリーン、守る!」
チリーンが周囲に守りの結界を張り、水流は結界の前に阻まれ、消滅してしまう。
「おや、守るに切り替えたのか? 聞いた話だと防御は神秘の守りに頼ってたみたいだが」
「恐らく今回の相手は貴様になると予想し、ラピスから貴様のポケモンの特徴を聞いて技を変えてきたのだよ。貴様のポケモン相手では、神秘の守りはほとんど役に立たないからな」
「なるほどねぇ。確かに、俺のポケモンで状態異常を起こせるポケモンはギャロップくらいだわ」
「これくらいは当然の策だ。チリーン、シャドーボール!」
短冊のような下半身を振り、チリーンは二発の影の弾を放つ。
「トロピウス、撃ち落とせ! ハイドロポンプ!」
再びトロピウスは大量の水流を放ち、纏めて影の弾を薙ぎ払うが、
「チリーン、ハイパーボイス!」
いつの間にかトロピウスの近くまで接近していたチリーンが大音量の音波を放ち、トロピウスを吹き飛ばす。
「おっと、いつの間に! トロピウス、ドラゴンダイブ! 奴の追撃を躱すぞ!」
追撃の回避も兼ね、トロピウスは大きく急上昇する。
上空で龍の力を
「なんつってな! トロピウス、ハリケーン!」
纏わず、トロピウスは激しい羽ばたきと共に嵐のような暴風を起こす。
迎撃の体勢を取っていたチリーンは大きく吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。
「まだ終わんねえぜ! トロピウス、リーフストーム!」
さらにトロピウスはその暴風に鋭い葉の刃を乗せ、無数の葉をチリーンへと向かわせる。
「甘く見てくれるなよ。チリーン、サイコバーン!」
だが輝天将のポケモンはそう簡単にはやられない。
体勢を崩しながらもチリーンは念力を体内に溜め込み、それを爆発させて周囲に衝撃波を撃ち出し、リーフストームを纏めて相殺するが、
「終わんねえっつったろ! ドラゴンダイブ!」
サイコバーンを撃ち終えた瞬間を狙って、トロピウスは龍の力を纏い急降下する。
しかし、
「そうはいかぬわ。チリーン、守る!」
最高のタイミングで繰り出したドラゴンダイブだが、しかし、守りの結界に阻まれ、惜しくもチリーンまで届かず、
「サイコバーン!」
ドラゴンダイブの勢いが途絶えた瞬間を、チリーンの念力の衝撃波が捉え、トロピウスを吹き飛ばした。
「ちぃっ、流石は輝天将、技の使いどころがよく分かってやがるな」
「当然だろう。守るや見切りのような所謂防御技は、積極的に使う技ではない。我は寧ろ本来この技は攻めの技だと考えている。勿論危ない時の防御にも使うが、相手のペースを崩してその隙を突くという点で、これらの技は最適だ」
「なるほどな! トロピウス、リーフストーム!」
体勢を整えたトロピウスが再び激しく羽ばたき、鋭く尖った葉の刃の嵐を起こす。
「チリーン、サイコバーン!」
チリーンは体内の念力を一点に凝縮させ、爆発を起こして衝撃波を放ち、纏めて葉の刃を薙ぎ払う。
「トロピウス、ハイドロポンプ!」
「チリーン、ハイパーボイス!」
トロピウスの噴き出す大量の水流と、チリーンの放つ大音量の衝撃波が激突。
両陣営最強の男同士の戦いは、まだ始まったばかり。

Re: 第百七十一話 紅 ( No.318 )
日時: 2016/05/13 11:01
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: lEyrJ7j9)

リョーマの指示を受けて下の階層に降り、テレジアは通路を突き進んでいく。
(まずは、奴らの砲撃で穴を開けられた場所を探しましょうか)
敵の侵入口に進めば、そこからその敵がどこへ向かったかが分かるかもしれない。
そう考えながら、テレジアは足を進めていくが、

コツッ、コツッ……と。
曲がり角の先の通路から、何者かの足音が聞こえる。

(……味方の可能性もなくはありませんわね。ですが)
敵が忍び込んでいるこの状況、例え味方だったとしても、通路の向こうにいる人物は敵と疑った方がいいだろう。
テレジアは足を止めてモンスターボールを手に取り、壁に背中を付けて息を潜める。
(わざわざ戦う必要もありませんわよね。不意打ちで一撃で仕留めますわ)
聴力に全神経を注ぎ、テレジアは敵の距離を測る。
足音が、少しずつ大きくなっていく。



透視能力を使っていたレントラーが、突然足を止めた。
「どうした、レントラー?」
小声でレオが尋ねると、レントラーは低く唸り、曲がり角の奥を睨む。
「そっちに敵がいるのか?」
レオの言葉にレントラーは頷き、瞳の光を一回点滅させる。
敵は一人、というサインだ。
「分かった。じゃあ戦うしかないな。レントラー、行くぞ」
通路の向こうの敵に聞こえないように小さく囁き、
「そこにいるのは分かってるぞ! 姿を見せろ!」
続いて、曲がり角の向こうまで聞こえるように大きく怒鳴る。
少し間をおいて、向こうにも反応があった。
「おやおや、気付かれてしまいましたか。それならば仕方ありませんね」
現れたのは赤髪の執事服の男、緋天将直属護衛ブレイズ。
「貴方の名はよく知っています。私たちの主が作った組織の一つを潰したヒーローだと。そんな方と戦えるとは、光栄です」
「お前は……確か緋天将の部下だな。となるとガーネットも来てるのか」
「ええ。ただしガーネット様は正面入り口前でメジスト様とともに戦っております。内部に入り込んでいるのは、トパズ様を除けばほとんど直属護衛の面々ですね」
小さい薄ら笑いを浮かべ、丁寧な物腰でブレイズは語る。
「ちなみに、一つ言っておきますと、私たち直属護衛軍が潜入しているのはここを占拠するためではない。宝玉回収の邪魔をさせないためです。おそらくトパズ様でも、あの副統率が相手では苦戦なさる。ましてや敵に援軍がいれば、流石のトパズ様でも敗れる可能性があります。宝玉の回収失敗だけは避けねばなりません」
そこでブレイズは一拍置き、
「そういうことですので、先程申し上げた通り、私がお相手させて頂きます」
静かにボールを取り出す。
「上等だぜ。それに、こっちだってリョーマさんの邪魔をされても困る。トパズに勝てるのは、おそらくリョーマさんしかいないからね」
レントラーを戻し、レオも別のボールを手に取る。勝負の条件は整った。
直後、お互いに手にしたボールからポケモンを繰り出す。
「魅惑せよ、ミロカロス!」
「頼んだぞ、パンプッチ!」
ブレイズのポケモンはミロカロス、レオのポケモンはパンプッチ。
「それでは、行きますよ」
ブレイズの紅の瞳が、レオとパンプッチを捉える。



「行きな、スカタンク!」
「お願いしますよ、グライオン!」
ケケのポケモンはスカタンク、エフィシのポケモンはグライオンだ。
「グライオン、剣の舞です!」
グライオンはまず戦いの激しい舞によって攻撃力を高める。
「積まれたか。まぁ一度くらいなら積ませてやるよ。スカタンク、火炎放射!」
対するスカタンクは口から灼熱の炎を放つ。
「グライオン、スカイアッパーです!」
しかしグライオンは右腕の鋏を思い切り振り上げて炎を打ち消してしまい、
「地震です!」
その振り上げた鋏を床に叩きつけ、地面を揺らして衝撃波を起こす。
「おおっと! スカタンク、躱してヘドロ爆弾!」
鋏が振り下ろされる寸前、スカタンクは跳躍して地震を避け、いくつものヘドロの塊を連射する。
「グライオン、スカイアッパー!」
両手の鋏を拳のように動かし、グライオンは次々とヘドロを破壊していくが、エフィシの予想よりヘドロ爆弾が多い。
全てを捌ききれず、ヘドロの爆弾をいくつか受けてしまう。
「グライオン、立て直しなさい。アクロバット!」
「させるかよ! スカタンク、不意打ち!」
体勢を整え、グライオンがスカタンクまで一気に近づこうとするが、その隙を突いてスカタンクが一瞬でグライオンの距離を詰め、素早く前脚の爪を振り抜きグライオンを切り裂く。
「残念、こっちには不意打ちがあるんだよ。スカタンク、火炎放射!」
さらにスカタンクは至近距離から灼熱の炎を噴き出す。
「っ、グライオン、離れなさい!」
グライオンは翼膜を広げて飛び上がり、どうにか炎を回避する。
「よく立て直しました。グライオン、地震です!」
グライオンが尻尾を床に叩きつけ、床を揺らして衝撃波を放つ。
「スカタンク、躱して火炎放射!」
「読めていますよ! グライオン、スカイアッパー!」
スカタンクが跳躍し、灼熱の炎を放とうとするが、エフィシはそれを予測していた。
グライオンが一気にスカタンクとの距離を詰め、鋏を振り上げてスカタンクの顎にアッパーを喰らわせる。
「グライオン、叩き落としなさい! アクロバット!」
宙に飛ばされたスカタンクを追い抜き、グライオンは鋏を振り下ろしてスカタンクを床に叩きつける。
「決めましょう! 地震です!」
そのまま急降下し、グライオンは両手の鋏を思い切り床へと叩きつける。



「行きなさい、ブニャット!」
「よーし行くぜ、テペトラー!」
キキのブニャットに対し、ホロのポケモンはテペトラー。
「先手必勝! ブニャット、切り裂く!」
鈍重そうな体型に似つかないスピードでブニャットは一気にテペトラーとの距離を詰め、鋭い爪でテペトラーに斬撃を喰らわせる。
「テペトラー、波動弾!」
「ブニャット、躱して十万ボルト!」
テペトラーが体の奥から波動の力を呼び出し、それを凝縮して波動の念弾を放つ。
だがブニャットは素早くテペトラーから距離を取り、高電圧の強力な電撃を放って波動弾を相殺。
「これは積んだ方がいいな。テペトラー、ビルドアップ!」
ブニャットが距離を取ったのを好機とし、テペトラーは自らの筋肉を増強させ、攻撃力と防御力を高める。
「一回くらいは積ませてあげるわ。ブニャット、十万ボルト!」
再びブニャットが高電圧の強力な電撃を撃ち出す。
「テペトラー、もう一度波動弾!」
対するテペトラーは再び波動の念弾を放って電撃を相殺、さらに、
「アクアジェット!」
水を纏い、ブニャットのスピードを上回る素早さで突撃、ブニャットを突き飛ばす。
「よっし! テペトラー、サイコパンチ!」
吹っ飛ぶブニャットに狙いを定め、テペトラーは念力を纏わせた拳を突き出し、拳の形をした念力を飛ばす。
「っ、ブニャット、切り裂く!」
体勢の整わない空中で、ブニャットは前脚の爪を振り抜き、何とか念力の拳を切り裂いた。
「アクアジェット!」
対して、水を纏ったテペトラーが再び高速で突撃を仕掛ける。
「ブニャット、十万ボルト!」
だがここはキキが落ち着いていた。
ブニャットが高電圧の電撃を撃ち出し、突撃してきたテペトラーを正面から迎え撃つ。
攻撃力に優れるテペトラーと言えど、流石に効果抜群の電撃を正面から撃ち破ることは出来ず、逆に弾き飛ばされてしまう。
「攻めなさい! ブニャット、辻斬り!」
一瞬のうちにテペトラーに急接近し、ブニャットは鋭い爪を振り抜き、体勢を崩したテペトラーの弱点を的確に狙い、切り裂く。
そして攻撃を終えると、反撃を受ける前にすぐさま距離を取る。
「くっ、テペトラー、仕切り直しだ! ビルドアップ!」
立ち上がったテペトラーが積みの体勢に入るが、
「言ったはずよ、積ませるのは一度だけ! ブニャット、ギガインパクト!」
生まれた隙は逃さない。
途轍もないエネルギーがブニャットを覆い、そのエネルギーを身に纏ったままブニャットは一直線に突撃する。
しかもそのスピードはここまでの戦いで最速。
「やばいっ! テペトラー!」
ホロが叫ぶが、間に合うかなど一目瞭然。
今の状態のテペトラーに、これを躱す術はない。

Re: 第百七十二話 嵐 ( No.319 )
日時: 2016/05/14 21:39
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

「チェキッド、もう一度影分身!」
立ち上がったチェキッドが、再び無数の影分身を作り出す。
「さらにシャドークロー!」
チェキッドの分身たちが一糸乱れぬ動きで一斉に攻撃を仕掛ける。
黒く鋭い爪を構えて、一瞬のうちにルナバインを取り囲む。
「所詮は影よ。ルナバイン、ハイドロポンプ」
術を唱え、ルナバインは掌から水柱を放つ。
鞭のように水を操り、次々と分身を薙ぎ払うが、
「行け」
ルナバインが影分身の半分を消したあたりで、背後から分身に隠れていた本物が飛び出す。
反応が遅れ、ルナバインは影の爪にその身を切り裂かれる。
「チェキッド、氷柱落とし!」
さらにチェキッドはルナバインの頭上に冷気を放射する。
冷気は急速に凝固し、無数の氷柱となって降り注ぐ。
「ルナバイン、サイコキネシス」
しかしその氷柱は全て、ルナバインが発する超念力の前に止められ、
「綺麗な氷柱をあげるわ。お受け取りなさい」
念力操作によって、無数の氷柱はチェキッドへと牙を剥く。
「ふふ、ありがたいプレゼントだが遠慮しておこう。チェキッド、ぶち壊す!」
チェキッドは悪タイプ。エスパー技を使われていることを逆に利用し、チェキッドは氷柱の中に突っ込む。
尻尾を振り抜いた一撃で氷柱を諸共粉砕し、もう一振りの一撃がルナバインを叩き飛ばした。
「頂きだ。チェキッド、シャドークロー!」
吹き飛ばされて地面に落ちたルナバインに狙いを定めて、チェキッドが地を蹴って跳ぶ。
影で作った黒い爪を携え、獲物を狙う猫のように一気にルナバインとの距離を詰める。
しかし。

「ルナバイン、ウッドハンマー」

対して、ラピスの指示はウッドハンマー。
しかし、ルナバインが動かしたのは杵を持つ手ではなく、臼を持つ尻尾。
尻尾を横薙ぎに振るい、ルナバインは臼でチェキッドを逆に吹っ飛ばしてしまう。
「なにっ?」
「甘かったわね。ルナバイン、気合玉」
間髪入れず、ルナバインが体のエネルギーを掌に集め、エネルギー弾を投げ付ける。
避ける事も出来ず、気合玉の直撃を食らったチェキッドは、一撃で戦闘不能となってしまう。
「むー、流石に四倍の格闘技は耐えられないか。チェキッド、よく頑張った。休んでいろ」
少々悔しそうにセイラはチェキッドをボールに戻す。
「やられたな。思ったよりも器用な戦い方をするじゃないか」
「正面から突っ込んでくるようなポケモンを処理するのは簡単。……まぁ例外もあるけど」
ラピスの最後の小さな一言は、セイラには聞こえなかった。
「ふふ。だがまだ一体。私の戦力は、まだまだ残ってるぞ」
先程の表情から一転、余裕を取り戻し、セイラは二つ目のボールを取り出す。
「二番目を頼んだぞ、ホムロソク!」
セイラの二体目は、炎とゴーストタイプを持つホムロソク。
「ふふ、まずはさっさとこいつを片付けて二番手を出させるか。ホムロソク、シャドーボール!」
「そう上手くいくかしら。ルナバイン、サイコキネシス」
ホムロソクが影の弾を放つが、ルナバインは強い念力の波を放ち、弾を防ぐ。
爆風と共に煙が上がる。その隙を突き、
「ホムロソク、火炎放射!」
煙に紛れ、気配を消してホムロソクはルナバインに接近し、至近距離から灼熱の炎を放つ。
「っ……ルナバイン、ハイドロポンプ」
慌ててルナバインは水柱を放とうとするが、間に合わず、業火を浴びてしまう。
「今度こそ頂きだ。シャドーボール!」
炎に包まれたルナバインに、ホムロソクは影の弾を撃ち出す。
効果抜群のシャドーボールが直撃し、今度こそルナバインは体を黒焦げにして地に倒れ、戦闘不能となっていた。


「チリーン、シャドーボール!」
「トロピウス、ドラゴンダイブ!」
チリーンが短冊のような半身を振り、影の弾を撃ち出す。
対して、トロピウスは龍の力をその身に纏って突撃。
影の弾を粉砕し、その勢いに任せてチリーンに迫る。
「サイコバーン!」
シャドーボールを破壊されたチリーンだが、怯むことなく次の行動に出る。
体内に念力を溜め込み、それを爆発させて起こした衝撃波をトロピウスにぶつける。
衝撃波の前に龍の力はかき消され、トロピウスの巨体が後ろへ吹き飛ばされる。
「逃すな。チリーン、ハイパーボイス!」
小さな体内で音を反響させ、チリーンはその身に似つかぬ大音量と共に音波を放つ。
「来るぞ! トロピウス、翔べ!」
空中で立て直し、トロピウスは床と垂直に急上昇。
音波を躱し、天井からチリーンを見下ろし、
「リーフストーム!」
ヤシの葉のような翼を羽ばたかせ、鋭く尖った葉の嵐を起こす。
「無駄だ。チリーン、サイコバーン!」
対するチリーンは再び念力を溜め込み、爆発させて衝撃波を飛ばし、葉の嵐を食い止めるが、
「まだまだぁ! もう一発ぶちかませ!」
攻撃の手を緩めないトロピウスは羽ばたき続ける。
勢い変わらず襲い来る鋭い葉の嵐の前に、チリーンの迎撃が追いつかず、遂に嵐に巻き込まれてしまう。
無数の葉の刃が、チリーンの体を片っ端から切り裂く。
「締めだ! トロピウス、ハイドロポンプ!」
最後にトロピウスは大量の水を噴射する。
葉の嵐で拘束されたチリーンを、確実に仕留めに行く。
「忘れたか! チリーン、守る!」
しかしトパズはその上を行く。
リーフストームをあえて防がず、止めの一撃を防ぐことで、相手に流れたペースを再び自分に戻す。
チリーンの張った守りの結界によって、水柱は完全に防がれてしまう。
「忘れるわけがねえ! トロピウス、ハリケーン!」
しかしリョーマがさらにその上を行った。
結界が消えた刹那、嵐のような暴風がチリーンを襲い、吞み込み、吹き飛ばす。
「先鋒取ったりぃ! トロピウス、ドラゴンダイブ!」
龍の力と殺気を纏ったトロピウスが突貫、回避する隙も与えず、チリーンを吹き飛ばす。
床に叩きつけられ、バウンドしてさらに壁に叩きつけられ、床に落ちた時にはチリーンは既に戦闘不能になっていた。
「我のチリーンがここまで早く倒れてしまうとは。仕方あるまい、休んでいろ」
チリーンを戻し、トパズは次のボールを手に取る。
「流石は『ブロック』副統率。少なくとも戦闘にはなるようで安心したぞ」
「余裕だな。一本目を取られたのはそっちだぜ」
「だからと言って臆することもない。最後に我のポケモンが一体でも残っていれば我の勝ち、この段階で焦ってどうする」
お互いに余裕を見せるトパズとリョーマ。
そして、トパズは手にしたボールを掲げる。
「我の二番手は空中戦では絶対に負けん。撃墜せよ、ガルラーダ!」
トパズの二番手はガルダポケモン、ガルラーダ。
「へえ。でも生憎、俺のトロピウスにも空中戦にはなかなか自信があってよ。そう簡単には撃墜されねえぜ」
「減らず口はそこまでだ。その翼をへし折り、叩き落としてくれる」
「上等! その翼を叩き割ってやる! トロピウス、ハリケーン!」
「ガルラーダ、ブレイブバード!」
トロピウスが思い切り翼を羽ばたかせ、嵐のような暴風を起こす。
だがそんな風を受けてもガルラーダのバランスは一切崩れない。
ダメージは受けているのだろうが、動きを全く乱さずに突貫し、トロピウスを吹き飛ばす。
「ぐうぅっ、やるなぁ! トロピウス、リーフストーム!」
空中で体勢を立て直し、トロピウスは再び大きく羽ばたく。
今度はただの風ではない。
暴風に尖った無数の葉を乗せ、葉の刃の嵐を起こす。
「無駄なこと。ガルラーダ、ブレイブバード!」
だがガルラーダの炎の如き勇気のオーラを纏った突貫は、葉の嵐ですら防げない。
「まっ、じかよ! トロピウス、ドラゴンダイブ!」
急遽リョーマは指示を変更。
トロピウスは龍の力と凄まじい殺気をその身に纏い、ガルラーダを正面から迎え撃つ。
お互いの渾身の一撃が正面から激突、これでようやく威力は互角。
(なるほど、よく鍛えられてるぜ。攻撃中の特殊技への耐性が尋常じゃねえ。くっ、こいつぁ厳しい戦いになるぜ)
一筋縄ではいかないことを改めて感じつつ、それでも一歩も引かず、リョーマは目の前の敵を見据える。


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