二次創作小説(紙ほか)
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- ポケットモンスター 星と旋風の使徒
- 日時: 2017/01/28 12:25
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
- プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=22078
どうも、初めましての人は初めまして、そうでない人はこんにちは。パーセンターです。
えー、また始まってしまいました。四作目ですね。
今作は前作の完全続編となっております。
参照をクリックすれば、前作に飛びます。
レオの新しい冒険が、始まります。
※注意
・例によって例のごとくノープランです。
・パーセンターは大学生でございます。現在数々の課題に追われて更新頻度が非常に低いですがご了承ください。
・登場するポケモンが色々とややこしいです。詳しくは近々やるオリキャラ募集のときに説明しますが、簡単に言うと『プラチナのシンオウ図鑑に載っているポケモン+ベガでのみ登場するポケモン』となります。
これくらいですね。
内容としては、前作と同様、オリジナルの地方でのゲームのような冒険ものとなります。
それでは、よろしくお願いします。
登場人物
味方side >>25
N・E団side(ネタバレ注意)>>153
用語(ネタバレ注意)>>342
プロローグ >>1
シラハタウン&メガキタウン編
>>6 >>20 >>22
ハスバナシティ編
>>27 >>31 >>32 >>34 >>36
デンエイシティ編
>>39 >>40 >>41 >>42 >>45 >>46 >>50 >>53
アカノハシティ編
>>55 >>57 >>58 >>62 >>63 >>64 >>65 >>68 >>70 >>72 >>74 >>75 >>79 >>80
コウホクシティ編
>>81 >>82 >>83 >>84 >>87 >>88 >>89 >>93 >>94 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>106 >>107 >>108 >>111 >>112 >>115 >>116 >>117 >>118
ツクモシティ&スティラタウン編
>>121 >>122 >>123 >>126 >>127 >>128 >>129 >>130 >>133 >>138 >>145 >>152 >>157 >>158 >>159 >>162 >>163 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>171 >>172 >>173 >>175 >>176 >>177
シヌマシティ編
>>178 >>179 >>180 >>185 >>186 >>188 >>189 >>190 >>193 >>194 >>195 >>199 >>200 >>206 >>207 >>210 >>211 >>214 >>215 >>216 >>217 >>218 >>221 >>222 >>223 >>224 >>227 >>229 >>230 >>233
ヨザクラタウン編
>>234 >>235 >>236 >>242 >>243 >>246 >>247 >>248 >>251 >>254 >>255 >>256 >>257 >>258 >>259 >>260 >>261 >>264 >>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>273 >>274 >>275 >>276 >>277 >>280 >>281 >>283 >>284 >>285 >>288 >>289 >>290 >>291 >>294 >>295 >>296 >>297 >>298 >>299 >>300 >>301 >>303 >>304 >>305
テンモンシティ編
>>306 >>309 >>310 >>311 >>312 >>313 >>314 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>322 >>324 >>325 >>326 >>327 >>328 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>340 >>341
四天王&チャンピオン編
>>343 >>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>352 >>355 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>363 >>364 >>365 >>366 >>367 >>368 >>369 >>370 >>371 >>372 >>373 >>378 >>379 >>380
N・E団編
>>383 >>384 >>385 >>386 >>387 >>388 >>389 >>390
決戦編
零節 都市
>>391 >>392
一節 碧天
>>393 >>400
二節 緋天
>>394 >>401
三節 蒼天
>>395 >>404
四節 破天
>>396
五節 夜天
>>397
六節 輝天
>>398
七節 聖天
>>399
非公式(ベガ)ポケモン図鑑 >>5
- Re: 第百三十三話 発見 ( No.270 )
- 日時: 2014/08/25 10:50
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: p3cEqORI)
トパズとメジストを退けた宴会の次の日。
三つの宝玉は、『ブロック』支部最大であるらしいテンモン支部で厳重に守ることになった。
そして、レオとアスカは今、『ブロック』アカノハ支部にいた。
話は少し前に遡る。
長い宴を終え、ミヤビに別れを告げ、レオとアスカはポケモンセンターの宿を借りていた。
ちなみにライロウはすぐにテンモンシティへと戻った。
疲れ切ったレオとアスカは、すぐに眠ってしまったが、正午になって目を覚ました頃、レオのライブキャスターが着信音を鳴らす。
「ん……誰からだ……リョーマさん?」
眠い目を擦り、通信を繋げる。
「もしもし、おはようございます、リョーマさん」
『おう、レオか。残念ながらもう昼だ。ライロウから聞いたぜ、昨日はご苦労だったな』
「正直危なかったですけどね。ミヤビさんがいなかったら負けてました」
『らしいな。あのトパズ、覚醒すると2位になるバケモノなんだってか? こりゃ次に奴が来る時は俺が出るしかなさそうだな』
ところで、とリョーマは続け、
『疲れているところ悪いんだが、急ぎの用があってな。アスカと一緒にアカノハまで来てくんねえか? アカノハまで来る手段はこっちで手配するからよ。まあ疲れてるだろうし、無理にとは言わねえ。何なら明日でも構わねえが』
「いえ、大丈夫ですよ。六時間寝ましたから、行けます」
丁度、向かいのベッドから目を覚ましたアスカが起き上がった。
『よっしゃ。じゃあ今から一時間後に、サクラの小型飛行機が向かう。それに乗って、アカノハまで来てくれ。じゃ、後でな』
「了解です」
そして、通話は切れた。
「どうしたの?」
眠そうな目でアスカが尋ねる。
「リョーマさんからだ。一時間後に迎えが来るから、アカノハに来てくれって」
「……『ブロック』って、大変ね」
そして話は元に戻る。
『ブロック』アカノハ支部の会議室に、リョーマが招集をかけた者たちが集まっていた。
現在いるのは、リョーマ、テレジア、レオ、アスカ、サクラ、カンタロウ、テレジア。
「スティラのエフィシとテンモンのライロウにも声を掛けた。エフィシはホロも連れてくるらしい。相当人が集まるぜ。今回はなるべく人が多い方がいいからな」
そこで、ふとレオが声を上げる。
「じゃあ、僕も一人呼びましょうか? 力になってくれそうな奴を一人知ってます」
「お、やるじゃねえか。じゃあ頼むぜ、出来れば今日か明日までに来るように言ってくれ」
「分かりました。ちょっと失礼します」
レオは一旦席を外し、通話を掛ける。
「あ、もしもし? レオだけど、ちょっと頼みがあるんだ」
エフィシ、ホロ、そしてライロウも到着し、残るはあと一人。
「そういえば、レオさん、テレジアさん」
声を上げたのはエフィシだ。
「以前、輝天将がスティラタウンに襲って来たことがありましたよね」
あの時は、レオはガーネットと戦った。直属護衛を初めて知ったのもあの時だ。
「あの事件から相当日が経っていますが、マリアさんが行方不明になってしまったんですよ」
「えっ!?」
思わず声を上げるレオ。
「森の中はちゃんと探したんですの?」
「はい。『ブロック』の者たち総出で探しましたが、神隠しにでもあったかのように忽然と姿を消してしまいました」
テレジアの疑問にエフィシが答える。
「全く消息が掴めないので、捜査も打ち切りになってしまいましたが、私としては心配です」
「手掛かりのねえもんをいくら当てずっぽうに探したって出てこねえよ。今回の件が解決した後に暇だったら手伝ってやるぜ。バイト代は貰うがな」
それより、とリョーマは続け、
「レオ、そのお前の友達は、すぐに来れるっつってたんだよな?」
「ええ。もうすぐ来ると思いますけど」
と、そこで会議室のドアがノックされる。
「噂をすれば来たみたいですね。入っていいよ」
ドアが開く。
入って来たのは、黄色いセミロングの髪に、派手な色合いの服を着た少女。派手な見た目に反して、瞳は暗い。
「セイラだ、よろしく頼む」
元イビル所属、現在は更生した少女、セイラが簡単に自己紹介し、レオの隣に座る。
「おう。先に俺だけ自己紹介しとくぜ。俺の名はリョーマ、『ブロック』の副統率だ。よろしくな。じゃあ、本題に入るか」
全員の視線が、一斉にリョーマに向けられる。
「蒼天将の研究所を潰した後、俺とカンタロウ、テレジアは何日も掛けて奴らのアジトを探していた。そして、ようやく奴らのアジトを突き止めた!」
歓声が上がると同時に、リョーマが壁に映った地図をドンと叩く。
「ツクモシティから結構進んだところに、ヨービエル山っていう雪山がある。ユキカブリやフロンを初めとする氷ポケモンの住処で、奴らの特性、雪降らしによって年中雪が降ってる町だ。そこから気流が流れてるから、ツクモシティはいつも曇ってるらしいな」
それでだ、とリョーマは続け、
「ヨービエル山をレーダーで探ってみた。ああいう人が滅多に来ない山の奥は、隠れて何かをやるのに最適だからな。結果、ビンゴだ。奴らのアジトは、ヨービエル山の地下に作られている」
「上手いとこに作ったモンだべ。雪さ常に降ってっから、飛行ポケモンも探しづれェんだべさ」
「そんな訳で、明日、ヨービエル山に向かい、奴らのアジトを叩く。さっきも言ったとおり雪山だ。かなり寒いから、暖かい服装で来な。遠くから来てて持ってないって奴はコートやらなんやら貸してやるぜ」
その後、こちらの作戦会議やスケジュールなどを話し合い、この場は解散となった。
「父さん、明日までにアカノハシティに冬服を届けてほしいんだけど、いいかな?」
『リョーマから聞いたぞ。明日、N・E団のアジトに乗り込むそうじゃないか』
「うん。危険な戦いになると思うけど、安心して。絶対勝つよ」
『十分に気をつけるんだぞ。冬服の方は、後で送っておこう』
「ありがと、父さん。じゃあね」
レオが今いる場所はポケモンセンター。
ライオとの通話を切ると同時、セイラが入って来た。
「お、セイラ。防寒対策は大丈夫か?」
「後でコウホクシティまで行ってタイツでも買ってくるつもりだ。ある程度の寒さには慣れている」
ところで、とセイラは続け、
「N・E団について、貴様に言っておきたいことがある」
そう言って、レオの隣に座る。
「何だ?」
「私が以前イビルに所属していたことは今さら言うまでもないが、どこの地にもそういう輩はいる。例えばホウエン地方にはアクア団やマグマ団という組織が争っていたことがあったし、ロケット団という組織はカントー地方やジョウト地方の大都市を占拠し、地方全体を征服しようとさせたこともある」
そこでだ、とセイラはさらに続ける。
「この手の組織は、いくつかのタイプに分けられる。まずは、自分のしていることが正しいと思っているタイプ。さっきのアクア団やマグマ団などがそうだったが、この場合は更生の可能性が高い。実際、この二つの組織の長は自らの間違いに気づき、既に服役を終えているそうだ。かつて短い間ではあるものの世界を完全に支配した、B・S団もその一つだな」
何故セイラはこんな事を知っているのだろう、と思ったが口には出さない。
「次に、ボスの圧倒的なカリスマ性で成り立つタイプだ。構成員はボスに惹かれてついて行くが、その真の考えを理解している者は少ない。シンオウ地方のギンガ団やイッシュ地方のプラズマ団だな。考えが理解されないというのも、リーダーとしては苦しいのかもな」
だが、とセイラは一旦切って、さらに言葉を続ける。
「もう一つパターンがある。私が所属していたイビルのように、自分たちの事を悪だと思っている連中だ。正直、この手の連中が一番厄介だ」
「どういうことだ?」
「そもそも自分たちの事を悪だと分かっているから、自分の行動の間違いに気づいて改心することがない。私たちの組織の名を考えてみろ。『イビル』だぞ? 『邪悪』だぞ? かつてのイビルのボス、マターは、この世の全てが悪であるという奴の思想から組織の名を付けたそうだ。マターは最期の瞬間まで自らの信念を突き通したそうじゃないか。自分の組織を潰されてなお、改心の欠片も見せないような奴なんだよ」
レオはその場面に立ち会っていたため、鮮明に覚えている。
最期の瞬間、マターは天を仰ぎ、勝ち誇った笑みを浮かべて崖から身を投げたのだった。
「ここからが本題だ。あくまでも私の勘だが、今回のN・E団は、イビルと同じ匂いがする」
「……なに?」
「さっき、リョーマ……だっけか? あの男にN・E団が起こした事件を聞いたが、どうもそんな気がする。以前貴様と共に地下に落ちた時にも感じたが、どうも奴らは自分たちのやっていることを悪だと分かっている様子が伺える」
つまり、N・E団はイビルと同様、もしくはそれ以上に危険である存在が高いということだ。
「……でも、それが分かったところでどうしようもなくないか? どのみち戦う必要があるわけだし」
「ふふ、まあ警戒してかかれってことさ。相手は考えの全く読めない謎の組織、用心してかかるに越したことはない。明日は敵のアジトを潰すんだろう? 今日はちゃんと調整しておくんだな」
「ああ、セイラもな。特に『覚醒』を使った天将は、七位でも相当な強さを持ってる。油断するなよ」
「ふふ、分かっているさ」
今日は休憩や調整をし、明日は朝一番でN・E団のアジトへ突入だ。
- Re: 第百三十四話 本拠地 ( No.271 )
- 日時: 2016/08/22 11:35
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: qPVFeoJe)
「よし、全員揃ったな」
次の日の朝。
アカノハ支部の外に、11人が集まった。ほぼ全員が冬服だ。
カンタロウは服の色こそ同じだが、黒い長ズボンは分厚くなっており、羽毛のフードのついた白いコートを着ている。マゼンタは浴衣以外持っていないようで、リョーマから丈の長い黒のコートを借りている。
ホロやレオ、リョーマにエフィシも分厚い服に着替えており、アスカはマフラーを持って来ていた。
セイラやテレジアもタイツを履き込んで来ているが、ライロウとサクラだけは変わっていない。
黒づくめのライロウはともかく、
「サクラ、お前馬鹿か?」
「失礼ねえ、大丈夫よお。あたしは寒いのには慣れっこなんだからあ。この格好で雪の中を走り回った事もあったしい」
「……やっぱお前馬鹿だな」
はぁ、とリョーマはため息を吐くが、すぐに全員の方を向く。
「準備は整った。サクラの小型飛行機でヨービエル山まで移動する。サクラ、この飛行機は上空の気流に耐えられるんだろうな」
「大丈夫よお。結構頑丈に作ってあるからねえ」
「よし。てめえら! 行くぞ! N・E団のアジトを、叩き潰してやろうぜ!」
リョーマが叫び、飛行機に飛び乗る。
他の者たちも続き、全員が乗り込むと、二対のプロペラが動き出す。
『ブロック』の戦士たちは、ヨービエル山に向けて飛び立つ。
雪が降ってきた。
「こいつがヨービエル山だ。この地で一番の標高を持つ山だぜ。窓を見てみな」
リョーマに促され、レオたちは窓の外を見る。
山は白く覆われ、木々は雪の結晶で美しく飾られていた。
「いやー、とてもこんなとこに敵の本拠地があるとは思えねえな」
「全くだ。確かにここなら早々バレんだろうな」
後ろで喋っているのはホロとライロウ。
「ところでリョーマはん、どこに入り口があるとかは分かっとるん?」
マゼンタが疑問の声を上げるが、
「それについては問題ねェだ」
答えたのはカンタロウだった。
「レーダー調査で大体の作りさ把握しただ。どの辺から入るかの目星もついてるべ」
「そういうこった。そろそろ着くぜ、高度を下げろ」
飛行機が下降し始める。
純白の大地の上に、機体を下ろす。
「くそッ、ちくしょう!」
N・Eアジト内部の一室で、メジストが椅子を蹴り飛ばす。
「あの忍者にまんまと嵌められた! おいソライト、もう一回行かせろ! 今度は直接、あの屋敷ごと破壊してやる!」
「無駄だと思いますがねえ」
荒れるメジストにソライトが冷静に答える。
「奴らが例の宝玉をいつまでも持っていると思いますか? どうせとっくに別の場所に隠しているでしょう。トパズがいない今、戦力にも不安がある。ここは大人しく、宝玉の隠し場所が分かるのを待ちましょう」
それにしても、とソライトは続け、
「本当によく出来た偽物だ。貴方たちが見破られなかったのも頷けますよ。私でも最初は本物だと思っていましたし」
「お前が気付けねえんじゃ、トパズが気付くはずもねえな。てか、あいつ今どこにいるんだ?」
「さあ。今は私以外は特に仕事はありませんし、どこかで気を休めているのでは? 他の面子は皆ここにいるようですが」
と、その時。
ビー! ビー! ビー! ビー!
アジト全体に、警告音が鳴り響く。
「何者かが、この山に着地したようですね。この山の地面のすぐ下にはセンサーが埋め込まれており、誰かが来ればすぐに警告音と共にモニターに映像を映してくれます」
ソライトがそう言った直後。
部屋のモニターが起動し、外の様子を映す。
「……やはり『ブロック』ですか。ですが見たところ、メジスト、貴方が抑えられそうですね。あのシヌマ支部の女が未知数ですが、『覚醒』した貴方の前には——」
「いや、そうもいかねえみてえだぞ」
メジストが注目したのは、黄色い髪に、紫とピンクを基調とした派手な服装の少女。
「確かあいつ、俺様の能力が効かねえ。俺が出たところで、あいつと一騎打ちになるだけだ」
「……総力戦は避けられませんね。トパズがいないのが痛いですが、呼び戻す時間はありません」
仕方ないですね、とソライトは小型マイクを取り出す。
「こちらソライトです。只今『ブロック』の連中がアジトのすぐ上にいることを確認しました。アジトにいる方々は、すぐに戦いに備えてください」
アジト内へ報告し、ソライトはモニターを切り、立ち上がる。
「では、私は研究室を守ります。あそこはやはり私がいなければ」
「てか今回はあいつもいるんだろ? お前が行く必要ないんじゃねえのか」
「念のためですよ。あの方が突破される可能性も無くはない訳ですし」
「ま、そうだな。じゃあ俺も行くぜ。最悪一人は再起不能にしてやる」
部屋の電気を消し、二人の天将はそれぞれの持ち場につく。
「ここだ」
山を少し降り、木々に覆われた道の行き止まりにある大岩の前でリョーマは立ち止まる。
「この岩の下に、入り口があると見て間違いない。恐らく団員ならこの岩を開いて中に入るんだろうが、その手段が無い以上強行突破だ。ぶち破るぞ」
そして、リョーマはブレイオーを出す。
後ろにいる者たちに下がれと指示し、
「ブレイオー、メタルブラスト!」
ブレイオーが鋼エネルギーを溜め込み、狙いを定めて砲撃を放つ。
アジトを塞ぐ大岩に直撃、大きな音を立て、大岩が粉砕されて吹き飛んだ。
現れたのは地下への階段。
それを少し進むと、より地下へと続くエレベーター。
「よし、こっからは敵の本拠地だ。ここまで来た以上、既に敵に気付かれているかもしれねえ。十分に気をつけろよ」
それと、とリョーマは続け、
「カンタロウ、悪いがお前は入り口に残って、敵の援軍が来ないか見ておいてほしい。今回はそれも十分にあり得るからな」
「そりゃ構わねェが、オラを連れて行かなかったことさ後悔すンじゃねェだぞ?」
「へへっ、お前の強さを見込んだ上での頼みだ。引き受けてくれるな」
「分かっとるだ。こっちはオラに任せて、存分に戦って来い」
ニヤリと笑い、カンタロウはモンスターボールを出し、階段を登っていった。
「さて行くか。なあに、在り来たりないつもの戦闘だ。ぶっ飛ばしてくぞ!」
一同がエレベーターに乗り込む。
エレベーターが止まり、扉が開くと、そこは既に分かれ道。
最後に全員で顔を見合わせ、頷くと、『ブロック』の戦士たちは一斉に侵攻を開始する。
エフィシと共に行動し、途中で分かれたライロウは、まっすぐに通路を突き進んで行く。
途中の部屋には目もくれない。彼が目指すのは最奥のみ。
しかし、
「む」
階段を見つけ、降りたところで、遂に敵と鉢合わせした。
「早速いやがったか、『ブロック』。えーっと、誰だっけお前は。ああそうだ、テンモン支部の統括か」
碧天将セドニー。
序列は七位だが、実力自体はガーネットに僅かに劣る程度。
独特の戦術を使い、初めて戦う相手には滅法強い。
「現れたなN・E団。残念ながら、貴様のサーナイトについては既に聞いている。フェアリーとかいう新しいタイプを持っているそうじゃねえか」
「何だ、知ってんのか。そりゃ流石に知られてるか。まあどっちでも構わねえが、わざわざ侵入者を逃す義理はねえ」
「そりゃあな。俺だって、のこのこ出て来てくれたN・E団を逃がす義理はねえぜ」
両者がモンスターボールを構え、同時にポケモンを取り出す。
「出て来い、フワライド!」
「さあ行くぜ、ボンバット!」
セドニーのフワライドに対し、リョーマのポケモンは骨の鎧を身につけた土竜のようなポケモン。
自分よりも大きな、白く太い骨を担いでいる。
ボンバット、骨バットポケモン。地面・ゴーストタイプ。
「ほう、同じゴーストタイプか。だが、俺のフワライドは飛行タイプ。お得意の地面技は効かねえぜ」
「分かってるさ。それを含めて、そいつに勝てると考えてこいつを出したんだからな。それに、ゴースト技なら通る」
「それはフワライドも同じだぜ。ま、そこまで言うなら見せてもらおうじゃねえか」
N・E団アジト戦、最初の対戦カードは、セドニー対ライロウ。
- Re: 第百三十五話 幕開け ( No.272 )
- 日時: 2014/08/26 16:59
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: G1aoRKsm)
- プロフ: 初期の威圧感がどんどん薄れていくガーネットさん。
「あ、ソライト様! お疲れ様ですっ」
広い研究室に戻ったソライトを、直属護衛シーアスが出迎える。
「おやシーアス、ご苦労様。例の任務は順調ですか?」
「はいっ、いい感じです! でも、あの宝玉、偽物だったんですよね? 大丈夫なんですか?」
「その点については心配ご無用です。それよりシーアス、先ほど私が伝えたように、現在『ブロック』の連中が侵入しています。この場は私に任せて、貴方も排除に向かってください。私はここでちょっとやっておきたいことがあるので」
「了解です! このシーアスにお任せください!」
シーアスは敬礼し、部屋から飛び出していった。
「さて、シーアスが頑張ってくれたおかげで、完成までもう少し。誰かが来る前に、仕上げておきたいところですね」
残されたソライトは、先ほどまでシーアスが操作していた機械に手を掛ける。
鼻歌を歌いながら通路を進んでいくサクラは、そこで丁度いい獲物を見つけた。
豪華な花や鳥の模様などで装飾された赤い扉があり、アルファベットの筆記体で『Garnet』と書かれている。
それを見た瞬間に、サクラの目が輝く。
舌舐めずりして、気持ち悪い笑みを浮かべ、バタン! と、サクラは一気に扉を開く。
「誰だ! ……っ、お前は……!?」
「ガーネットちゃあーん☆」
猛獣が獲物に飛び掛かるような勢いで、サクラはガーネットに飛びついた。
驚いたガーネットが身を捻ってサクラ渾身のダイブを避ける。
「やばいガーネットちゃん超可愛い突然の敵の来襲にちょっとビクつきながらも強がってるガーネットちゃん超可愛いそして私を見て露骨に焦ってるガーネットちゃん超可愛い抱きしめたいほっぺすりすりしたいちゅーしたいそういうわけで今すぐ抱きつかせブゴゥーッ!?」
部屋の本棚の影から何者かが飛び出し、発狂しているサクラを殴り飛ばした。
緋天将直属護衛、ブレイズだ。
「ガーネット様、この下賤な女は私が排除致します。ここは私に任せて、お逃げください」
「私を甘く見ないで……って言いたいところだけど、今回ばかりはそうさせてもらうわ。ブレイズ、頼んだわよ。この女を、絶対に私の元に向かわせないで。分かったわね」
「仰せのままに」
突然来襲した猛獣が目を覚ます前に、急いでその場を去るガーネット。
「痛つつ……女に暴力なんか振るっちゃだめよお?」
やがて頬をさすりながら、サクラが起き上がる。
「これは失礼。私も女性へ手を出すことは好みではありませんが、我が主に危険が及ぶと判断した場合は容赦は致しませんので。貴方は我が主にとって害となる存在だと判断しました。故にここで、徹底的に叩きのめして差し上げましょう」
「あら残念。あたしは男には興味ないのよねえ。さっさと終わらせて、ガーネットちゃんを探しに行こうかしらあ?」
冷徹なブレイズの圧力にも一切動じず、サクラは笑みを浮かべてモンスターボールを取り出す。
部下の助けもあって何とか貞操を守ったガーネットは、すぐに自分の部屋から離れる。
ラピスの部屋にでも転がり込んで、別の敵が来るのを来るのを待っていようかと考えたガーネットだが、途中の通路でその別の敵に遭遇した。
同時に、向こうもガーネットに気付く。
「あら? 坊やは確か」
「お前、スティラタウンで見たぞ。確かあの時はレオにーちゃんが戦ってたよな」
ガーネットが見つけたのはホロ。
スティラタウンでは、一瞬だけだが対面している。
「ソライトのとこの部下から聞いてるわよ。年齢の割に強力なポケモンを使うそうじゃない」
「まーな。自分で言うのも何だけど、俺のポケモンはみんな強いぜ」
「まあ強いと言っても、所詮は直属護衛に勝った程度でしょ? 逃げるなら今のうちよ」
「何言ってんだ。俺は最初からお前を倒すつもりだし、お前としてもわざわざ見つけた敵を逃がす理由なんて無いんじゃねえのか?」
「そりゃあね。そんなに乗り気なら丁度いいわね、サクッと倒してあげる」
「やれるもんならな!」
それを引き金に、二人は同時にボールを取り出す。
「頼んだぜ、ムクホーク!」
「我が血筋にかけて、グレイシア!」
ホロのポケモンは、カンタロウも使っていたムクホーク。
対するガーネットのポケモンはグレイシア。
実力者同士が対峙し、睨み合う。
ソライトの指令を受けたシーアスは、敵を探すべく通路を歩き回っている途中で、N・E団にとって一番の要注意人物に遭遇してしまった。
「おいおい、こんなに早く敵と遭遇かよ、ついてねえ」
「出来るだけ奥まで進みたかったところですが、この人を倒さないと進めないようですわね」
リョーマとテレジアだ。
特に警戒すべきがリョーマ。詳細は知らないが、ソライトの研究所で夜天将を撃破したと聞いている。
(まさか敵のリーダー格と遭遇してしまうなんて。ここは出来るだけ粘って少しでも敵のポケモンの体力を消耗させ、他の天将様たちに後を任せるしかないよね)
覚悟を決め、シーアスはボールを取り出す。
「あたしの名はシーアス、ソライト様の部下! あたしを倒さなけりゃ、この先には進めないわよ!」
「ちっこいくせに度胸あるじゃねえか。よーし、俺が相手になってやるぜ。少しは楽しませろよ?」
不敵な笑みを浮かべ、リョーマもボールを取り出すが、
「待ってください」
テレジアがそれを止める。
「どうした?」
「今回は敵のアジトです。下手をしたら輝天将や第一位がいるかもしれないここでは、リョーマさんの力が必要となるかもしれませんわ。リョーマさんは温存しておくべきです。直属護衛程度が相手なら、私で十分ですわ」
「……なるほどな。しょうがねえ、戦いたかったとこだが、ここはお前に任せる。一応言っとくが、勝てよ?」
「勿論ですわ」
リョーマは取り出したボールを仕舞い、代わりにテレジアが一歩進み出る。
(……これはチャンスね)
その様子を見て、シーアスは心の内で笑う。
(相手が副統率でなければ、勝てるチャンスも十分にある。あたしがこの子を倒して、さらに副統率を消耗させれば、これで十分な仕事をしたことになるわ。ソライト様から褒めてもらえるかもだし、これはやるしかないわね!)
企みを考えつつも一切表情には見せず、シーアスは目の前のテレジアを見据える。
「おっと、忘れてた。『覚醒』しなきゃ、流石に厳しいからな」
セドニーが呟くと同時に、彼の瞳が翠の光を放ち、手の甲に翠の龍の爪のような模様が浮かび上がる。
「それじゃあ始めるぜ! フワライド、まずはサイコキネシス!」
フワライドが強い念力を操り、念力の波を飛ばす。
「ボンバット、ボーンラッシュ!」
ボンバットは長い骨を杖のように振り回す。
盾のように骨を展開し、念力を防ぐと、
「シャドークロー!」
骨を左手に持ち替え、右手から鋭い爪のような影を伸ばし、フワライドに切りかかる。
「フワライド、ゴーストダイブ!」
対して、フワライドの姿が一瞬の内に消える。
「ボンバット、気をつけろ。どこから来るか分からんぞ」
影の爪を躱されたボンバットは床に着地し、じっと周囲の様子を伺う。
「後ろだ! ボンバット、ぶち壊す!」
空間が少し動いたように見えたその一瞬。
気のせいだと見逃すことも出来たが、ライロウは即決した。
そしてビンゴ。ボンバットが思い切り骨バットを振り抜いたその瞬間、虚空からフワライドが現れ、四本の腕をボンバットに叩きつける。
しかしボンバットの骨バットに力負けし、フワライドは逆に押し戻される。
「攻撃力はかなり高いみたいだな。流石にその太い骨バットを振り回すだけの力はあるぜ」
「当たり前だ。特に攻撃力に重点を置いて育てたからな」
「だが、そこさえ警戒すればどうということはねえ。見た感じ素早さは少し速いといった感じか。加えてボンバットというポケモンはそこまで耐久が高いわけでもない」
「だからその点を俺の立ち回りでカバーしていくんだろうが。ポケモンの力だけを見てると、てめえ、痛い目見るぞ」
「それくらい分かってら。少し前は敵対勢力なんざ気に留めてなかったが、最近はそうもいかねえからな。特にお前ら『ブロック』が相手の場合はな」
負ける気はしねえけどな、とライロウを見据え、セドニーは不敵な笑みを浮かべる。
- Re: 第百三十六話 因縁 ( No.273 )
- 日時: 2014/08/29 15:48
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: KG6j5ysh)
レオ、アスカ、セイラは、最初三人で行動していたが、途中の分かれ道でアスカと分かれ、その後はレオとセイラの二人で行動している。
さらなる地下への階段を見つけ、下っていった先も、まだ分かれ道はない。
「しかし、ここまでずっと一本道だよな」
「扉もあるにはあるが、ほぼ全て鍵がかかっている。中に敵がいるなら倒していくが、わざわざこじ開ける必要もないしな」
常に周囲を警戒しながら、広い通路を進む二人。
しかし、そこで遂に敵と遭遇する。
「ギャヒャヒャ! ようやく見つけたぜ侵入者。俺は今ちょっと機嫌が悪いし、見つけた敵を逃がすつもりは無い。俺様の餌食となってもらおうじゃねえか」
N・E団の紋章が描かれた、真っ黒なフードを被った男。
N・E団で最も危険な男、破天将メジスト。
「っ、よりにもよってメジスト、お前が相手かよ……!」
想定していた中で最悪の相手。
僅かに後ずさりするレオだが、
「何だお前か。ふふ、それなら私が相手になってやる」
引き裂くような笑みを浮かべ、セイラが進み出た。
「おい、待てよ! 昨日説明しただろ、こいつは戦った相手の精神力を奪う力を持ってる。こいつに会ったら即逃げろって言われたじゃねえか!」
「ふふ、知ってる。知ってるし、その点なら心配いらない」
「は?」
「以前お前と一緒に地下へ落ちたことがあっただろう。あの時、私はこいつと戦っている。その能力がきかないことも証明済みだ」
だから任せておけ、とセイラはさらに進み出て、ボールを取り出す。
「レオ、貴様は先に行け。どうせこいつの相手は私しか出来ないんだろう? だったら、ここは私がやる」
「……すまんな、じゃあ頼んだぜ。気をつけろよ!」
セイラに例を言い、レオはメジストのすぐ横を一気に走り抜ける。
「逃がさねえぞ! グライオン、行って来い!」
メジストがすかさずグライオンを出し、レオの行く手を塞ごうとするが、
「そうはいかない。ホムロソク!」
セイラが繰り出した、青い火の蝋燭のようなゴーストポケモンがグライオンの目の前に現れ、グライオンに立ち塞がる。
「ふふ、残念だったな。しかしこの道を通っていて正解だったよ。お前とやり合えるのは、今回の面子の中では私しかいなかったからな。あの猫撫で声の気色悪い女ももしかしたら戦えるかもしれないが」
「クソが、またお前かよ。これじゃあ俺様の能力が何のためにあるのか分かんねえじゃねえかよ」
口調に明確な怒りを含め、メジストは言葉を続ける。
「こうなりゃ実力行使だ。お前を叩きのめし、お前一人だけでも再起不能にしてやる。覚悟しろや!」
メジストが叫んで、フードを捲り上げる。
同時に瞳から黒い光を放ち、さらに顔には龍の顔面のような模様が浮かび上がる。
「さあグライオン行って来い! 目の前の相手を完膚無きまでに叩きのめすぞ!」
「ホムロソク、このままお前が行け。目の前のこの男が無様に負ける姿を拝ませてもらおうじゃないか」
闇の最深部に生きる男と、闇から抜け出した少女が対峙する。
道中で襲い来る下っ端たちを次々と蹴散らし、マゼンタはアジトの奥の方まで来ていた。
さらに奥へ進もうとするマゼンタだが、そこで一風変わった扉を見つける。
濃い紫色に塗られ、無数の星のような煌めきが散りばめられており、上の方には三日月のような模様が大きく描かれている。
「……」
少し警戒しながらも、マゼンタはその扉を開く。
部屋には壁に沿って本棚が置かれており、天井からは地球や月など、いくつもの星の模型が吊り下げられている。
そして。
部屋の最奥には、紫色のツインテールに、黒いゴスロリを着た車椅子の少女。
部屋の主、夜天のラピス。
誰かが部屋に入って来たことに気づき、ラピスは振り返る。
「……また貴女なのね」
冷たい光を湛えた瞳をこちらに向け、小さくラピスは呟く。
マゼンタにとっては、相性のいい相手ではない。
以前戦った時は、ブラッキーにギリギリまで追い詰められた。
とはいえ、ここで引くわけにもいかない。
車椅子の向きを変え、ラピスはボールを取り出す。
「さあ、始めるわよ。特に貴女に話すこともないし」
発せられる声は、感情のこもらない冷たい声。
ゴスロリの袖を捲り上げ露出した腕に、龍の腕のような模様が浮かび上がる。
同時に、ラピスの瞳が濃い紫色の光を放つが、
「……くぅっ」
ラピスの右腕の皮膚が見えない何かに切られたように裂け、血が滲み出る。
「っ……、どうしたの。早くモンスターボールを出しなさいよ。まさかとは思うけど、敵の心配なんてしてないわよね」
『覚醒』の代償に少し表情を歪めるが、その声は冷たいまま。
「……まさか。ほな、始めよか。さっさと終わらせるでー」
マゼンタも表情を変えず、袖口からボールを取り出す。
「頼んだわよお、ガーメイル!」
「守護せよ、ハッサム!」
サクラのポケモンは、黒い体を貴重とし、オレンジ色の模様のついた蛾のようなポケモン。
ガーメイル、ミノガポケモン。虫、飛行タイプ。
対するブレイズのポケモンは、同じ虫タイプを持ったハッサム。
「さあ、行くわよお! ガーメイル、まずは蝶の舞!」
ガーメイルはまず蝶のように美しく飛び回り、特攻、特防、そして素早さを一気に上げる。
「ではこちらも。ハッサム、剣の舞」
対するハッサムは鋏の付いた腕を激しく振り回し、攻撃力を底上げする。
「ハッサム、バレットパンチ」
「ガーメイル、目覚めるパワー!」
ハッサムが地を蹴って飛び上がり、弾丸のような連続パンチを繰り出す。
同時に、ガーメイルも無数の赤いエネルギー弾を撃ち出す。
「ッ! ハッサム、回避です!」
すんでのところでハッサムはエネルギーの球体を躱す。
「あらあ? ばれちゃったみたいねえ」
「危ないところでしたよ。その目覚めるパワー、炎タイプですね」
「大正解。鋼ポケモン用に仕込んでおいたんだけど、失敗しちゃったわねえ。使うタイミングがまずかったかしらあ?」
「さあ、どうでしょうかね。ハッサム、襲撃」
ハッサムが一瞬でガーメイルとの距離を詰める。
そのまま鋏を振り上げ、叩きつけようとするが、
「ガーメイル、虫のさざめき!」
ガーメイルが翅を激しく振動させて衝撃波を放ち、ハッサムの鋏を食い止める。
さらに、
「ガーメイル、エアスラッシュ!」
翅を大きく羽ばたかせ、ガーメイルは鋭い空気の刃を飛ばし、衝撃波に押し戻されたハッサムを切り裂く。
「ハッサム、立て直しなさい。バレットパンチ」
立ち上がり、鋏を構えると、ハッサムは一瞬でガーメイルの目の前まで迫る。
そのまま弾丸のような連続パンチを放ち、ガーメイルを吹っ飛ばす。
「馬鹿力です」
吹っ飛ぶガーメイルをさらに追い、ハッサムは渾身の力を込めて鋏を叩きつける。
「ガーメイル、回避よお!」
ガーメイルが大きく羽ばたき、ギリギリでハッサムの鋏を躱す。
馬鹿力の勢いのままハッサムは落下し、床に激突、大きく凹ませる。
「あらあ? 上司の部屋の床にヒビ入れちゃって大丈夫う?」
「どの道このアジトはもう使えませんからね。破壊してしまっても特に問題はありません」
床に大きく穴を作ったハッサムが立ち上がる。
「ハッサム、バレットパンチ!」
「ガーメイル、虫のさざめき!」
ハッサムが拳を構え、ガーメイルが翅を大きく振動させる。
弾丸の如き拳と衝撃波が、激しくせめぎ合う。
「ムクホーク、インファイト!」
ムクホークがいきなり捨て身の突貫を仕掛ける。
翼をグレイシアに叩きつけると、怒涛の連続攻撃を浴びせ、最後に強靭な脚で蹴り飛ばす。
「よっし! ムクホーク、蜻蛉返り!」
グレイシアの体勢が整わない内に、ムクホークが猛スピードでグレイシアに突撃する。
そのままの勢いを残し、ムクホークはホロの元へと戻り、そのままボールに戻る。
「よくやった。行って来い、テペトラー!」
代わりにホロが繰り出したのは、グレイシアには有利なテペトラー。
「ダメージをあたえつつ、有利なポケモンの後出し。随分と姑息な戦術を使うじゃないの」
「これも勝つためだぜ。もしかして、この戦術を使われると勝てないってか?」
「生意気な口利けるのも今のうちよ。その顔がいつ絶望に染まるか見ものだわ」
「残念だけどそうはいかないぜ! テペトラー、波動弾!」
テペトラーが力を溜め込み、波動を凝縮した念弾を撃ち出す。
「グレイシア、シャドーボール!」
対するグレイシアは影の弾を作り上げ、波動弾と相殺させる。
さらに、
「アイアンテール!」
尻尾を硬化させて大きく跳び、上空から尻尾を振り下ろす。
「テペトラー、サイコパンチ!」
テペトラーは拳に念力を纏わせ、突き出した拳から念力を飛ばしてアイアンテールを防ぐが、
「グレイシア、冷凍ビーム!」
続けて撃ち出されたグレイシアの冷気の光線を喰らい、体の一部が凍りつく。
「ちっ、テペトラー、ビルドアップ!」
テペトラーは自らの筋肉を増強させ、内側から強引に氷を砕くと同時に、攻撃力と防御力を上げる。
「積ませないわよ! グレイシア、シャドーボール!」
「遅いぜ! テペトラー、サイコパンチ!」
グレイシアが黒い影の弾を放つが、ビルドアップが間に合い、念力の拳によって打ち消される。
「アクアジェット!」
今度はテペトラーが先に動く。
瞬時に水を纏い、弾丸のように飛び出し、グレイシアに突撃する。
「グレイシア、止めなさい! 冷凍ビーム!」
突っ込んでくるテペトラーへ、グレイシアが冷気の光線を放つ。
テペトラーが纏う水を、瞬時に 凍りつかせていくが、
「残念だったな! テペトラー、そのまま突っ込め!」
テペトラーの勢いは全く止まらない。
レオと戦った時と全く同じ。氷のアクアジェットがグレイシアを吹っ飛ばした。
「ッ! グレイシア、立て直すわよ!」
「そんな暇やらないぞ! テペトラー、波動弾!」
床へと叩きつけられたグレイシアが起き上がるが、それよりも早くテペトラーが両手を構え、波動弾を撃ち出す。
- Re: 第百三十七話 雨天 ( No.274 )
- 日時: 2014/09/02 16:23
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: J/brDdUE)
ライロウと別れた後、エフィシは下っ端を退けながら地下へと進んでいくが、途中でセンサーか何かに引っかかったのか、突然大量の下っ端の襲撃を受ける。
さらに、下っ端の数を大方減らしたところで、
「やっと見つけたぞ、侵入者め」
碧天将セドニーの直属護衛、ロフトが姿を現す。
「丁度いいですね。雑魚の処理も面倒になってきたところですし」
ロフトと対峙した瞬間、エフィシの雰囲気が変わる。
「平和を乱すN・E団、私がここで打ち負かしてやりますよ」
ロフトとエフィシは、同時にボールを取り出す。
「行け、ネクロシア!」
「頼みます、ゲンガー!」
ロフトのポケモンはネクロシア、エフィシのポケモンはゲンガー。
「行くぞ! ネクロシア、シャドークロー!」
まずはネクロシアが先手を取る。
鋭い爪から黒い影を伸ばし、静かにゲンガーへ忍び寄る。
「ゲンガー、躱してダークリゾルブ!」
ネクロシアの爪の一撃を躱すと、ゲンガーは黒い闇のオーラに包まれる。
直後、そのオーラをネクロシアに向けて放出する。
「躱しきれないか……ネクロシア、シャドークロー!」
ネクロシアが両手に影を纏わせ、闇のオーラを迎え撃つ。
完全に防ぐことは出来ないが、影の爪がダークリゾルブの威力を軽減する。
「よし。ならば、ネクロシア、金縛り!」
「甘い! ゲンガー、気合玉!」
ネクロシアが金縛りをかける寸前で、ゲンガーが気合を溜め込んだ波動の弾を放つ。
気合玉は格闘タイプの技なので、ネクロシアには効かない。
しかし、
「そのネクロシアが金縛りを使うことは前持って聞いていましたからね。金縛りは二つ以上の技を封じることは出来ない。ダークリゾルブを封じられるわけには行きませんからね」
エフィシが笑みを浮かべる。
金縛りの直前に気合玉を放ったため、ゲンガーが封じられた技はネクロシア相手には何の意味もない気合玉になったのだ。
しかし、
「やるではないか、『ブロック』スティラ支部統括。しかし貴様が有利になったわけではない。金縛りが使えずとも、真っ向から貴様を倒してやる」
その程度ではロフトの勢いは削がれない。
寧ろさらに闘志を高め、エフィシに相対する。
アスカは薄暗い通路を進んでいた。
階段を下りたのだが、その先の通路は電灯が切れているか光が弱いものが多く、非常に薄暗くなっていた。
いつどこから敵に襲われるか分からないため、アスカは慎重に通路を進んでいくが、
「……誰かいるわね」
少し後ろに気配を感じ、モンスターボールを取り出す。
「……おや、気付かれたか」
闇の奥から低い男の声。
ゆっくりと姿を表したのは、黒服に身を包んだ、身長2メートルもある大男。
夜天将直属護衛、ジン。
傍らには、銅鐸ポケモンのドータクンが控えている。
「ストーカーとは感心しないわね。大方後ろから暗闇に隠れて私を襲撃しようとしたんでしょうけど、そうはいかないわよ」
「……お前は確か、名前は知らんが、最近輝天将に圧倒された女だな」
「だから何? その輝天将の足元にも及ばない直属護衛如き、恐れる相手じゃないわ。さあ、ルカリオ、行って来なさい!」
アスカの構えたボールから、ルカリオが現れる。
「ドータクン、行け」
対して、ジンの後ろに控えていたドータクンが進み出る。
「では、お前の実力がどの程度か、見せてもらおうではないか」
「望むところよ! ルカリオ、インファイト!」
ルカリオが拳を構えて特攻する。
渾身のパンチをドータクンの顔面に叩き込むと、目にも留まらぬ高速の連続攻撃を浴びせ、最後に波動の力を溜め込んだパンチでドータクンを吹っ飛ばす。
「ドータクン、雨乞いだ」
しかし耐久に優れるドータクンはそれくらいではびくともしない。
天井に黒い雨雲を呼び寄せ、雨を降らせる。
(炎技を持たないルカリオに雨は関係ない。となるとこの雨は炎の弱点の軽減のためじゃなさそうね。後続のサポートと見るのが正解かしら)
「ルカリオ、悪の波動!」
ルカリオが両手を突き出し、悪意に満ちた波動を撃ち出す。
「ドータクン、ジャイロボール」
対して、ドータクンは高速回転しながら突撃する。
回転によって悪の波動を弾き飛ばし、そのままルカリオを吹っ飛ばした。
「ドータクン、サイコキネシス」
さらにドータクンが強い念力を操作する。
体勢を崩したルカリオに、念力の波を放って追い打ちをかける。
「ルカリオ、神速!」
起き上がったルカリオが、一瞬で姿を消す。
サイコキネシスを躱しつつ、一気にドータクンとの距離を詰め、
「悪の波動!」
ドータクンに掌を押し付け、ゼロ距離から悪意に満ちた波動をぶつける。
直に衝撃を受け、ドータクンが吹っ飛ばされる。
「まだまだね。それくらいの実力じゃ、やっぱり私には勝てないわよ」
「たったドータクン一体でそんな甘い結論が出せるとは。相変わらず、『ブロック』の奴らは甘い奴らばかりだな」
互いに相手へ挑発し、二者とも余裕を見せる。
「お願いしますわ、ミロカロス!」
「行くわよ、ドラピオン!」
テレジアのポケモンはミロカロス、シーアスのポケモンはドラピオン。
「ミロカロス、雨乞い!」
ミロカロスが雨雲を呼び、雨を降らせる。
「それなら、ドラピオン、剣の舞!」
対してドラピオンは両腕の鋏を激しく振るい、攻撃を高める。
まずは互いに準備を整え、
「ミロカロス、ハイドロポンプ!」
「ドラピオン、ぶち壊す!」
ミロカロスが雨で強化された太い水柱を撃ち出すが、ドラピオンは体勢を屈めて頑丈な尻尾を伸ばし、ハイドロポンプを打ち破ると、
「クロスポイズン!」
すぐさま体勢を取り戻し、鋏を交差させて振り抜き、毒を帯びた十字の衝撃波を飛ばす。
衝撃波がミロカロスを切り裂くが、幸い毒状態にはならない。
「ミロカロス、吹雪!」
すぐに体勢を立て直し、荒れ狂う吹雪を放って反撃する。
ドラピオンは最初は踏み止まるが、やがて風に耐え切れず、吹き飛ばされる。
「おーおーすげえな。お前のミロカロス、前からこんなに強かったか?」
「すいませんが、よほどのことが無い限りバトルの途中は口を挟まないでください。集中が切れるので」
後ろから野次を飛ばすリョーマを黙らせ、すぐにテレジアは相手に向き直る。
「ドラピオン、ぶち壊す!」
吹っ飛ばされたドラピオンが起き上がり、体勢を屈めて尻尾を振り回し、勢いをつけてミロカロスへと叩きつける。
「ミロカロス、ハイドロポンプ!」
ミロカロスは大量の水を噴射し、尻尾の勢いを相殺するが、
「もう一回ぶち壊す!」
ドラピオンは尻尾を振り上げ、再び思い切り叩きつける。
今度は直撃。ミロカロスが大きく仰け反る。
「クロスポイズン!」
さらに鋏に毒を纏わせ、交差させて振り抜き、毒を帯びた十字の衝撃波を飛ばす。
「っ、ミロカロス、吹雪!」
ミロカロスは雪を風に乗せた吹雪を放つが、攻撃の上がったドラピオンのクロスポイズンを防ぎ切れず、衝撃波を受けてしまう。
「ぶち壊す!」
ドラピオンが畳み掛ける。
尻尾を振り回し、ミロカロスに向けて思い切り叩きつける。
「よーし、いいわよ! ドラピオン、一気に決めるわよ! クロスポイズン!」
勢いに乗って来たシーアスがさらなる追撃を指示する。
しかし。
肝心のドラピオンが動かない。
両腕をだらりと下げ、ぼーっとした様子でミロカロスを見据えるのみ。
「ど、どうしたの!? ドラピオン、一気に決めるわよ!」
「無駄ですわよ」
対して。
少しほっとしたような様子で、テレジアが口を開く。
「このままだと危ないところでしたが、上手く特性が発動してくれましたわね。このミロカロスの特性はメロメロボディ。触れた相手を一定の確率で、メロメロ状態にしてしまいます」
ドラピオンが動かない隙に、ミロカロスは体勢を立て直す。
「雨が止まないうちに、一気に決めてしまいましょうか。ミロカロス、ハイドロポンプ!」
ミロカロスの口から、雨によって強化された太い水柱が撃ち出される。
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