二次創作小説(紙ほか)

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ポケットモンスター 星と旋風の使徒
日時: 2017/01/28 12:25
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=22078

どうも、初めましての人は初めまして、そうでない人はこんにちは。パーセンターです。
えー、また始まってしまいました。四作目ですね。
今作は前作の完全続編となっております。
参照をクリックすれば、前作に飛びます。
レオの新しい冒険が、始まります。

※注意
・例によって例のごとくノープランです。
・パーセンターは大学生でございます。現在数々の課題に追われて更新頻度が非常に低いですがご了承ください。
・登場するポケモンが色々とややこしいです。詳しくは近々やるオリキャラ募集のときに説明しますが、簡単に言うと『プラチナのシンオウ図鑑に載っているポケモン+ベガでのみ登場するポケモン』となります。

これくらいですね。
内容としては、前作と同様、オリジナルの地方でのゲームのような冒険ものとなります。

それでは、よろしくお願いします。

登場人物
味方side >>25
N・E団side(ネタバレ注意)>>153
用語(ネタバレ注意)>>342

プロローグ >>1

シラハタウン&メガキタウン編
>>6 >>20 >>22
ハスバナシティ編
>>27 >>31 >>32 >>34 >>36
デンエイシティ編
>>39 >>40 >>41 >>42 >>45 >>46 >>50 >>53
アカノハシティ編
>>55 >>57 >>58 >>62 >>63 >>64 >>65 >>68 >>70 >>72 >>74 >>75 >>79 >>80
コウホクシティ編
>>81 >>82 >>83 >>84 >>87 >>88 >>89 >>93 >>94 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>106 >>107 >>108 >>111 >>112 >>115 >>116 >>117 >>118
ツクモシティ&スティラタウン編
>>121 >>122 >>123 >>126 >>127 >>128 >>129 >>130 >>133 >>138 >>145 >>152 >>157 >>158 >>159 >>162 >>163 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>171 >>172 >>173 >>175 >>176 >>177
シヌマシティ編
>>178 >>179 >>180 >>185 >>186 >>188 >>189 >>190 >>193 >>194 >>195 >>199 >>200 >>206 >>207 >>210 >>211 >>214 >>215 >>216 >>217 >>218 >>221 >>222 >>223 >>224 >>227 >>229 >>230 >>233
ヨザクラタウン編
>>234 >>235 >>236 >>242 >>243 >>246 >>247 >>248 >>251 >>254 >>255 >>256 >>257 >>258 >>259 >>260 >>261 >>264 >>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>273 >>274 >>275 >>276 >>277 >>280 >>281 >>283 >>284 >>285 >>288 >>289 >>290 >>291 >>294 >>295 >>296 >>297 >>298 >>299 >>300 >>301 >>303 >>304 >>305
テンモンシティ編
>>306 >>309 >>310 >>311 >>312 >>313 >>314 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>322 >>324 >>325 >>326 >>327 >>328 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>340 >>341
四天王&チャンピオン編
>>343 >>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>352 >>355 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>363 >>364 >>365 >>366 >>367 >>368 >>369 >>370 >>371 >>372 >>373 >>378 >>379 >>380
N・E団編
>>383 >>384 >>385 >>386 >>387 >>388 >>389 >>390

決戦編
零節 都市
>>391 >>392
一節 碧天
>>393 >>400
二節 緋天
>>394 >>401
三節 蒼天
>>395 >>404
四節 破天
>>396
五節 夜天
>>397
六節 輝天
>>398
七節 聖天
>>399


非公式(ベガ)ポケモン図鑑 >>5

Re: 第百二十六話 狂笑 ( No.260 )
日時: 2014/07/12 00:30
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

そもそも、笑う、笑むという行動は——



爆発と共に砂煙が巻き起こるが、ケケ、コタロウの両者は全く気に留めない。
「アルデッパ、ハイドロポンプ!」
アルデッパの放つ水柱が、霧を払うように、砂煙を貫き吹き飛ばし、さらにその奥にいるプラネムを狙う。
「プラネム、サイコバーン!」
プラネムは念力を集中させて爆発を起こし、衝撃波を飛ばしてハイドロポンプを相殺する。
「アルデッパ、噛み砕く!」
しかしすぐそこに、気配を殺したアルデッパが迫っている。
体長の半分を軽く超えるほどの大口が、プラネムの岩肌を突き刺し、ガリガリと削っていく。
「プラネム、吹き飛ばせ! ダイヤブラスト!」
「そうは行かぬぞ。アルデッパ、パワーウィップ!」
プラネムが周囲に爆発を起こそうとするが、それよりも早くアルデッパの腕から伸びた無数の蔓がプラネムを叩き飛ばす。
「プラネム、大地の怒り!」
プラネムが自らの目の前の地面を破壊し、土砂を巻き上げる。
「熱風!」
直後、プラネムが回転して灼熱の風を起こす。
「アルデッパ、ハイドロポンプ!」
アルデッパが大量の水を発射するが、通常の熱風に土砂や瓦礫も上乗せされ、水柱は逆に打ち破られ、土砂の混ざった熱風を喰らう。
「プラネム、ダイヤブラスト!」
プラネムが周囲を爆発させる。
体勢を崩すアルデッパへ、煌めく爆風が襲い掛かる。
「アルデッパ、吹雪!」
それでもアルデッパは雪を乗せた暴風を起こし、どうにか爆風を食い止める。
「そろそろ決めたいところだがな。アルデッパ、パワーウィップ!」
アルデッパが両腕の蔓を伸ばし、無数の蔓を一斉にプラネムへと叩きつける。
「まだ終わらせないぜ。プラネム、サイコバーン!」
対してプラネムは念力を体内に溜め込み、一気に周囲に放出して爆発させ、衝撃波を飛ばす。
両者の力はほぼ互角。やがて蔓が押し戻されると共に、衝撃波も消滅する。
しかし、
「プラネム、ダイヤブラスト!」
その後の動きはプラネムの方が早かった。
蔓が弾き飛ばされ、アルデッパが僅かに仰け反った隙を逃さず、プラネムが放つ、青白く煌めく爆風がアルデッパを吹き飛ばす。
「クリーンヒット! そろそろ終わらせるぞ、プラネム、サイコバーン!」
地面に落ちたアルデッパへと確実に狙いを定め、一点に集中させた念力を爆発させ、衝撃波を放つ。
だが。

「アルデッパ、噛み砕く!」

渾身の力を込めて、アルデッパは起き上がり、その大口を開く。
念力の衝撃波が、容易く噛み砕かれた。
そのままプラネムは一気にプラネムとの距離を詰め、岩盤のようなプラネムの体表に無数の牙を食い込ませる。
「ッ、マジかよ……! プラネム、吹き飛ばせ! ダイヤ——」
「終わりだ! アルデッパ、ハイドロポンプ!」
アルデッパの口から、滝の如き大量の水が噴射される。
ゼロ距離からの一撃を躱せるはずもなく、プラネムは吹っ飛ばされる。
効果抜群の攻撃を立て続けに喰らい、プラネムはついに戦闘不能となった。



「コモラゴン、火炎放射!」
コモラゴンが大きく息を吸い、灼熱の業火を放つ。
「プラネム、怒りの炎!」
プラネムも荒れ狂う炎を放ち、火炎放射を相殺させる。
「ぶち壊す!」
その炎に紛れ、プラネムのすぐそこまでコモラゴンが接近している。
渾身の力を込めて右腕を振るい、プラネムを殴り飛ばす。
「まずいっ! プラネム、身代わり!」
慌ててプラネムは自らの身代わりを作り上げる。
コモラゴンが殴り飛ばしたプラネムは、風船のように弾けて消えてしまうが、
「コモラゴン、ドラゴンクロー!」
空いた左手に青く輝く光を纏わせ、すぐさま振り向き、後ろに現れたプラネムを切り裂く。
「さっきは油断してたけど、もう私に身代わりは効かないわよ。何せ父上からあらゆる戦法を散々教え込まれたからね。特に敵が視界から消えた時の対処方法は詳しく教えられたわ」
「たかが身代わりを攻略しただけの癖に、腹の立つ小娘ね。プラネム、ストーンエッジ!」
プラネムの周囲に無数の岩が浮かぶ。
その尖った岩を、コモラゴン目掛けて一斉に撃ち出す。
「コモラゴン、ダストシュート!」
コモラゴンは大きなヘドロの塊を投げ飛ばし、ストーンエッジを纏めて相殺する。
「サイコバレット!」
「ぶち壊す!」
プラネムが念力を実体化させ、無数の念の銃弾を撃つ。
対してコモラゴンは大きく吼える。
力を込めて尻尾を思い切り振り抜き、念弾の弾幕を一撃で全て弾き飛ばす。
自らが放ったはずの銃弾が、撃ち手を貫く。
「コモラゴン、火炎放射!」
さらにコモラゴンは灼熱の業火を放つ。
体勢を崩すプラネムの岩肌を、ジリジリと焼いていく。
「くっ、こうなったら! プラネム、怒りの炎!」
キキの怒りに呼応し、プラネムの感情も高ぶる。
その怒りを原動力とし、より激しく暴れる炎が放たれる。
「コモラゴン、火炎放射!」
コモラゴンが灼熱の業火を放つが、威力の上がった怒りの炎を防ぎ切れない。
怒りの炎がコモラゴンを燃やす。さらに周囲にも炎が燃え移り、コモラゴンを火の海の中に孤立させる。
「これでもうコモラゴンはまともに動けない。プラネム、決めるわよ! サイコバレット!」
プラネムが念力を実体化させ、無数の銃弾を浮かべる。
コモラゴンに狙いを定め、マシンガンの如く一斉射撃を放つ。
よりも早く。

コモラゴンの鉄拳が、プラネムを殴り飛ばしていた。

予想もしていなかった一撃を受け、プラネムが大きく吹っ飛ばされる。
「てゆーかさ。どんな状況でも確実に任務を遂行しないといけない忍びを相手に、どうしてこんな火の海程度で動けなくなると思ったわけ?」
普通のポケモンなら、周りを取り囲み、自らの体を焼く炎に体力を奪われ、動くことも出来なくなるだろう。
しかし、あらゆる困難を想定する忍びには、火の海ですら通用しない。
「くっ……こんな、バカな! プラネム、起き上がりなさい! ストーンエッジ!」
「もう終わりだよ。コモラゴン、ドラゴンクロー!」
何とか宙に浮かび上がるプラネムに、コモラゴンは確実にとどめを刺す。
青く輝く大きな爪が、プラネムを切り裂く。
龍の爪痕をその身に刻み込まれ、プラネムは戦闘不能となって地に落ちた。



通常よりはるかに強固となった氷柱が、無数に降り注ぐ。
それはまるで弾幕。躱せる死角すら与えず、確実に敵を仕留めるものだ。
しかし。
「ドクロッグ、マグナムパンチ!」
絶対に避けられないはずの無数の氷柱を、ドクロッグは軽やかな動きで躱していく。
しかもそれだけではない。
氷柱を躱しつつ、オニゴーリとの距離を詰めているのだ。
氷柱と氷柱の僅かな隙間をくぐり抜け、ドクロッグがオニゴーリへと迫る。
「……チッ、弾幕まで避けてくるかよ! 第3プランなんて用意してねえぞちくしょうが!」
目を見開いてメジストは叫ぶ。
同時に、ドクロッグがほぼ水平に跳んだ。
一瞬で一気に距離を詰め、ミサイルの如き拳の一撃を浴びせる。
しかしそこで、メジストが勝ち誇ったように笑う。
「第3プランはねえ、第2プランは通用しねえ。だったらよお! オニゴーリ、絶対零度!」
オニゴーリの口が開く。その口に、全てを凍りつかせる絶対零度のエネルギーが溜まっていく。
「第2プランを使ったからって、最初の計画がダメになったわけじゃねえ。やっぱ最後はこれだよなあ! さあ喰らいな! 極寒地獄に連れてってやるぜぇ! ギャヒャヒャヒャヒャ!」
ドクロッグの拳の一撃はギリギリ届かない。
しかも予期していなければ、この一撃は絶対に躱せない。
だが。
「ドクロッグ!」
ミヤビの声が響いた直後、ドクロッグも分かっていたかのように地面に拳を叩き込んだ。
同時に、オニゴーリが絶対零度の氷エネルギーを発射する。
絶対零度は。
ドクロッグの地面への一撃によってわずかに浮かび上がったドクロッグを、ギリギリ捉えられなかった。
「……ッ!? なにぃっ!?」
流石のメジストも、表情に浮かぶのは驚愕のみ。
そして。
返しの一撃で、ドクロッグの全力の拳が放たれる。
渾身の拳の一撃がオニゴーリの顔面にめり込み、盛大に吹っ飛ばした。
オニゴーリが岩に激突し、その勢いで岩が砕け散る。
言うまでもなく、オニゴーリは戦闘不能だった。
「……く、はは。オニゴーリ、休んでろ」
オニゴーリを戻し、メジストは次のボールを取り出すが、
「……やべえ」
ゆっくりとそのボールを戻し、別のボールに持ち替える。
刹那。
メジストの顔が、狂気に歪む。
「ギャヒャヒャヒャヒャ! やべえ、やべえよ! 強まってる、超強まってる! あーちくしょう、もう我慢出来ねえ!」
メジストの感情に篭るものは、怒りではない。
それは喜び。
例えるならば、子供がずっと欲しがっていたものをようやく手に入れられるような。
「聞こえる、聞こえるぜ! こいつの中から、戦いを求める相棒の雄叫びがよお!」
メジストが勢い良く取り出したのは、別のモンスターボール。
ボールに描かれた二重の鎖の模様が、黒い光を放っている。
「本当は四対四のはずだが、そんなこたぁどうでもいい! こいつを使いたくてしょうがねえんだ! 俺は、俺はぁ! やっとお前の力を使えるんだ!」
まるで子供のように、メジストは叫ぶ。
龍の顔面を浮かべたその顔に、狂ったような笑みを浮かべ。

「破天を喰らえ、ティラノス!」

メジストが繰り出した巨大なポケモンが、周囲の木々をなぎ倒す。
濃い茶褐色の体は、所々黄色に染まっている。
古代の恐ろしい恐竜、それも凶暴な肉食恐竜のような風貌。
捻じ曲がった鋭い鉤爪、悪魔のように鋭く恐ろしい眼光。
7メートルはあろうかという巨体が、森の真ん中に立ち上がった。
ティラノス、暴君ポケモン。岩・悪タイプ。
「ギャヒャヒャヒャヒャ! 来た、来たぜ! 最ッ高だ! こっちに入ってから色々やって来たがよお、お前のその姿を見るのをどんだけ待ち望んだことか! やっぱり、お前がいなきゃ、始まんねえって! なあティラノス!」
笑いに笑いながら、メジストはティラノスに語りかける。
応えるように、ティラノスは大きく息を吸い、吼える。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァ!!!」
森全体が、振動した。
辺りを覆う氷が、次々と砕け散る。
(これは……まずいな……。今まで多くの者と戦って来たが、こいつは私が今まで見た中で、一番強い)
目の前の敵のかつてないほどの強大さに、思わず戦慄を覚えるミヤビ。
そんなミヤビを気にも留めず、ただメジストは笑う。
「さあティラノス、久々のバトルだ! 遠慮なんていらねえ、目の前に立つものをぶっ飛ばせ! ギャヒャヒャヒャヒャヒャ!」

Re: 第百二十七話 誇笑 ( No.261 )
日時: 2014/07/13 14:41
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

破壊光線が、ヘラクロスを直撃した。
恐ろしい勢いで吹き飛ばされ、壁に激突するヘラクロス。
壁にめり込み、その壁にも何本ものひびが入る。
まだ戦えるかなど、確認するまでもなかった。
「ッ……ヘラクロス、よく頑張ったな」
ヘラクロスをボールに戻し、レオはマツリの方へと向き直る。
「こういうことです。ね、分かったでしょう。貴方は、私のポリゴンZには勝てません」
マツリがそこまで断言する、ポリゴンZの実力は、確かに本物だった。
「だから、もう一度いいます。ここでこのバトルを終わらせませんか。そうすれば、お互いのポケモンはこれ以上傷つかずに済む。どっちにしろ、あっちの赤髪の人がトパズ様に負けなければ、まだ宝玉の行方は分かりませんし」
レオは知る由もないが、基本的にふざけた態度が多いマツリが、ここまで真面目に語るのはかなり珍しい。
そして、マツリの言葉はほぼ間違っていない。
確かに、ここでレオが負けても、宝玉が奪われるかはまだ分からない。
しかし。
一つだけ、レオは言える。
マツリが、確実に間違っているという点を。
「……お前が、ポケモンを大事にしたい、そう本気で思っている。それはよく分かったよ。確かに、それは正しいよ」
でも、とレオは続け、

「だったら、何でお前はN・E団なんかに入ってるんだよ」

「……っ」
マツリの表情が、僅かに変化する。
「大切なポケモンを傷つけたくない、そう本気で思っているなら、どうしてお前はそっちの道に進んだんだ! 他に道はなかったのかよ!」
「私にだって、事情の一つ二つはあるんですよ。ええ、自分って馬鹿だなーって事なんてしょっちゅうですよ。小さい頃から、幸せなんでて用意されていなかったって」
「だったら、なおさらだろ」
吐き捨てるように、レオは言う。
「お前の過去に何があったかを僕は知らない。でもさ、不幸であることの辛さをよく知っているお前が、どうして人に不幸を与える側にいるんだよ。不幸を知る人間は、それを食い止めなけりゃいけないんじゃねえのかよ!」
しかも、とレオはさらに続ける。
「ここまでのバトルで分かった。お前は強い力を持ってるじゃないか。それを使って、上司の一人に反論することくらい出来るだろ。直属の上司は無理でも、他の天将に訴えかけることくらい出来たんじゃねえのかよ! 俺は自信を持ってお前に言える。お前の生き方は間違ってんだよ! それを教えるために、僕は最後まで戦い抜くぞ」
自分の思いを全て、はっきりと告げ。
レオは最後のボールを取り出す。
「頼むぞ、パンプッチ!」
レオの最後のポケモンはパンプッチ。
破壊光線を無効に出来、さらに雷を抑えられる。相性は悪くない。
「ここまで来たら、今さら引き返せませんよ。最後まで戦って、勝ってやりますよ」
刹那。
「パンプッチ、エナジーボール!」
「ポリゴンZ、サイコキネシス!」
両者は同時に動いた。
パンプッチが木の葉の杖を振り、自然の力を込めた弾を放つ。
ポリゴンZは念力を操作し、強い念力の波を飛ばす。
お互いの技が激突する。威力は、ほぼ互角。
「ポリゴンZ、冷凍ビーム!」
ポリゴンZが冷気を凝縮した光線を放つ。
「パンプッチ、躱してハイドロポンプ!」
冷凍ビームを躱すと、パンプッチは杖を振る。
その杖の先から、大量の水を噴射する。
「ポリゴンZ、雷!」
対してポリゴンZは雷に匹敵するほどの高電圧の電撃を撃ち出す。
雷撃はハイドロポンプを食い止め、さらに水から杖を伝ってパンプッチに電気を浴びせる。
「サイコキネシス!」
その隙を逃さず、ポリゴンZは念力の波を放ち、パンプッチを吹っ飛ばす。
「破壊光線くらい無くても構いませんよ。ポリゴンZ、冷凍ビーム!」
体勢を大きく崩しているパンプッチを狙い、ポリゴンZが冷気の光線を放つ。
「パンプッチ、シャドーボール!」
パンプッチが杖を振る。
中途半端な体勢だったため、相殺は出来ないが、光線の軌道を逸らし、冷凍ビームを回避する。
「エナジーボール!」
体勢を戻して杖をもう一振りし、パンプッチは自然に宿る命の力を集め、それを撃ち出す。
「ポリゴンZ、躱してサイコキネシス!」
「そうはいかねえ! パンプッチ、ハイドロポンプ!」
ポリゴンZがエナジーボールを躱したところを狙い、パンプッチも攻撃の手を緩めず、大量の水を噴射する。
念力を放つよりも早く水柱がポリゴンZを捉え、吹っ飛ばす。
「パンプッチ、エナジーボール!」
杖を振り、パンプッチが自然の力を集めた命の弾を放つ。
「ポリゴンZ、雷!」
胴体と離れた首をぐるりと回し、強引に体勢を戻し、ポリゴンZは超高電圧の電撃を撃ち出す。
双方が激突し、爆発を起こす。
「ディザソル、ヘラクロスからの三連戦だ。そろそろスタミナ切れなんじゃねえのか?」
「まさか。寧ろ貴方の方が先にスタミナ切れしないか心配なくらいですよ」
両者共に余裕を浮かべ、激しい戦いを繰り広げる。



「チリーン、よく頑張った。戻って休め」
チリーンをボールに戻し、トパズはアスカの方に向き直る。
「未覚醒とは言え、たった二体で我の三体を倒したその実力、賞賛に値する」
素直に、トパズは賞賛の言葉を告げる。
「何をカッコつけてんの? さあ、さっさと最後のポケモンを出しなさいよ」
対するアスカの口調には、一切の容赦がない。たとえどれほど有利な展開でも、絶対に油断はしない。
「……会話をする気は無しか。まあよいだろう」
そう呟き、トパズはゆっくりと最後のボールを取り出す。
「さて、我もようやく『覚醒』を使う時が来たようだ。今こそ、軍神たる我が力を解き放とう」
低く力強い声で、トパズがそう告げた直後。
ボールに描かれた鎖の模様、そしてトパズの瞳が、金色の輝きを放つ。
同時に、トパズの首元に、逆さに生えた鋭い一枚の龍の鱗のような模様か浮かび上がる。
「輝天の名を冠する我に与えられた刻印は、龍が首元に持つ逆鱗。何者かが逆鱗に触れし時、龍は激昂し、その者を即座に殺してしまうという」
すなわち、とトパズは続ける。
「我の逆鱗が表すその意味は、確実で絶対の勝利。輝く龍の逆鱗に触れた者に、敗北という名の死を与えん」
低く、力強く、トパズは言葉を紡ぐ。
手にしたボールを、大きく掲げる。

「輝天の明光を受けよ、マカドゥス!」

現れたのは、蒼い獣の姿をしたポケモン。
体を結晶のように細く鋭い岩が覆っており、黄色い腹や尾からはバチバチと電流が走る音が響く。
目を引くのは、白く輝く、細長く鋭い牙と爪。
サーベルポケモンのマカドゥス。岩・電気タイプ。
しかし、このマカドゥスは明らかに普通の個体と違うところがあった。
トパズの繰り出したマカドゥスは、右目が潰れていた。
「このマカドゥスは、私が軍人になる前から我と共に生活してきた、我がパートナーだ。戦争で右目を失った。だが、視界が欠けたことでより研ぎ澄まされた感覚を身につけることが出来た」
トパズの言葉に呼応するように、マカドゥスは低く唸り、全身から火花を散らす。
そして、とトパズは続ける。

「覚醒した時の我は、N・E団七天将序列二位だ」

アスカの思考が、一瞬停止した。
(嘘……でしょ……? 五位ですらレオがほぼ相打ちだって話なのに、二位なんて……!)
得体の知れない恐怖が、アスカを襲う。
(っ……やってみなきゃ分かんないわ。こっちにはまだ三体もポケモンが残ってる。そうよ、いくら二位でも、この私が育ててきたポケモンたち三体には勝てやしない!)
「いいわ、かかってきなさいよ。いくら覚醒したって、所詮は残り一体。逆転なんて出来っこないわよ」
「なるほど。では、遠慮なく」
トパズの口元が、僅かに緩む。

「マカドゥス、ダイヤブラスト!」

刹那、マカドゥスが消えた。
一瞬でチルタリスとの距離を詰め、青白く煌めく爆発を起こし、爆心地にチルタリスを巻き込み、吹っ飛ばす。
壁に叩きつけられ、チルタリスは一撃で戦闘不能となった。
「……!」
一瞬の早業。
相手に回避を指示する隙すらも与えず、確実に仕留める。
「チルタリス、ありがとう。戻って休んでて」
チルタリスを戻し、次のボールを取り出すアスカだが、
(やばい……絶対やばい……!)
想像をはるかに超える力の前に、焦燥と恐怖がアスカの心を満たしていく。
「どうした。先ほどまでの威勢の良さは、もう終わりか」
常に表情を変えず、確実に任務をこなすトパズが、勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
獣が獲物を仕留める時のような、獰猛で野生的な笑みを。




——獲物を見据えた猛獣が牙を剥くことを原点とした、攻撃的な行動でもある。

Re: ポケットモンスター 星と旋風の使徒 ( No.262 )
日時: 2014/07/13 16:01
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)

 ちょくちょく読んではいたのですが、そういえば感想は久々でした。白黒です。

 さて最後にコメントしたのはいつだったかなと記憶を遡ってみると……たぶん、ミヤビ戦後、くらいですかね? 自信ないですが。
 いろんなところでいろんな人がバトルをしていますが、やはり個人的に注目なのはミヤビとメジストのバトル、そしてトパズの覚醒ですね。天将二人の覚醒が見れて、白黒は満足です。

 特に凄まじいのが、ミヤビとメジストのバトルですね。というかミヤビさんすげぇ……あのメジスト相手に、互角以上のバトルを展開するとは。
 途中でメジストがキレても冷静に対応し、地形を生かしつつ相手の裏もかいて三体のポケモンを下すとは。
 ちなみにどうでもいいですが、氷柱落としの弾幕が外れた時の「第3プランなんて用意してねえぞちくしょうが!」というメジストの叫びがなんとなく面白かったです。そこから最初のプランに回帰するという展開も、上手いと思いました。
 そしてメジストが遂に覚醒。そのポケモンは……ティラノスでしたか。確かに暴君恐竜は、メジストの凶悪さにはおあつらえ向きかもしれませんね。ミヤビもこのティラノスには戦慄せずにはいられないようですし、どんなとんでもポケモンなのかが気になるところです。

 そしてトパズの方は意外にも、アスカに三体のポケモンがやられてしまいましたが、こちらも覚醒しましたね。
 こっちはマカドゥスですか。ティラノス共々、化石ポケモンですね。だから一緒に来た……なんてことはないですか。一見接点のなさそうなメジストとトパズの馬が合うとかいう設定があったら、それはそれで面白そうですが。
 というか、トパズって覚醒すれば二位なんですか……えーっと、確かセドニーが最下位で、ガーネットが六位、ソライトが五位、ラピスが三位、でしたっけ。それでトパズが二位なら……メジストは四位? なんか微妙……
 メジストが一位という可能性もありそうですが、ここまでであと一人天将を隠しているわけですし、ここまでもったいぶって四位なんて微妙な位置ということはなさそうなので、白黒の序列予想はこんな感じですかね。
 なんだか、最初の頃は散々ヤバいキャラ扱いされていたメジストの評価が、だんだんと下がっているような……いやでも、それを言ったらガーネットとかはもっと……
 それに今回のメジストで、個人的にメジストは好きになりました。戦闘狂っぽいところがいいですね。強敵と合い見えることがなく、力を使い切れなかったけれど、ここに来て全力を出せる相手を見つけられた、という流れが、ありがちながらもいいと思いました。しかもポケモンがパートナーのような働きをしますからね。より一層そう感じます

 そういえば、百二十六話に「そもそも、笑う、笑むという行動は——
」とあって、いきなりなんだこれ? とか思っていましたが、これって次話の最後にある「——獲物を見据えた猛獣が牙を剥くことを原点とした、攻撃的な行動でもある。」に繋がっているんですね。
 メジストは猛獣らしさがあからさまに剥き出しになっていますが、トパズもそれらしい描写があって、なんだかんだでこの二人の共通性みたいなものが見えてきますね。この演出は凄いと思いますし、個人的には大好きです。凄い上手いです。

 と、いつものように長々と書き連ねましたが、メジストとトパズのことばっかりですね。
 何気にレオもマツリとややシリアスな展開になりつつありますし、思ったよりも今回の攻防は個人間では重要な話になりそうですね。

Re: ポケットモンスター 星と旋風の使徒 ( No.263 )
日時: 2014/07/15 11:31
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: GEZjoiD8)

>>白黒さん
メジストとトパズがようやく覚醒です。これでまだ出ていない最後の天将以外は全員覚醒を見せましたね。

そうですね、非常に攻撃性の強いメジストですが、やはりあらゆる可能性を瞬時に想定する百戦錬磨のミヤビと比べて戦闘経験が明らかに違います。
加えてバトルフィールドはミヤビが大得意とする密林ですから、覚醒の力を持ってしてもミヤビには追いつけません。もしこれが平地だと戦況が真逆になっています。
メジストとトパズのエースポケモンは、天将の中でもすぐに決まりました。メジストの凶暴性に一番合うポケモンは、暴君ティラノスしかいませんよね。

トパズは覚醒していませんでしたからね。未覚醒では四位と、そんなに上位なわけでもありませんから、軍神のイメージの割にはそこまで強くなかったりします。
しかし覚醒すれば話は別です。序列二位だけあって、戦闘のプロ、軍神の名に恥じない、圧倒的な強さを手に入れます。
覚醒序列ですが、メジストの序列決定にはちょっとした小話があったり。もしかしたら次回かどこかで明かすかもしれませんが大した話でもないのでカットするかもしれません。
確かにそうですね。モミジ、セイラ、そしてミヤビと、メジストの能力に耐性を持つ人たちがたくさん出て来てしまっていますし、今回はティラノスが出たとは言えここまでは不利な展開が多いので、どうしても評価が下がって見えてしまいます。メジストの能力が効かない時点で確実に強者なので、仕方ないといえば仕方ないのですが。
本来彼は戦闘狂ですからね。能力のせいでまともに戦える相手があまりいませんから、確かに今回のミヤビとの戦いはメジストにとって久々の全力での戦いになりますね。

基本私はノープランなので、多数の話に渡る演出は苦手なのですが、今回はちょっと思い切ってやってみました。
メジストはともかく、トパズが笑みを見せるのは本気で戦闘を楽しんでいる場合だけですから、そういう意味でもトパズの意味は攻撃的な意味を備えています。
正直この演出はちょっと不安だったのでよかったです。ありがとうございます。

今回のメインはほぼ天将二人ですからね。
ストーリー的に見ても個人間で見ても、確かにこの戦いは重みがありますね。

Re: 第百二十八話 遂行 ( No.264 )
日時: 2014/07/22 23:18
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

破天将直属護衛二人のバトルが終わったのは、ほぼ同時だった。
アヤメとコタロウが辺りを見渡すと、既に他の破天隊は全員撤収していた。
「さて、これで俺たちの勝ちだ」
「とっ捕まって父上から拷問でも受けるといいわ。観念しなさい」
二人が詰め寄るが、キキとケケは特に何の焦りも見せない。
「残念だが、俺たちはこんなところで捕まらねえぜ。出て来な、スカタンク」
ケケがモンスターボールを取り出し、スカタンクを出す。
「でも私たちの今回の任務は、トパズ様の宝玉回収のサポート。このままだと貴方たちがトパズ様の元へ行ってしまう可能性があるし、最低限の仕事はさせていただくわ。それよりケケ、さっさとプラネムを戻してあげなさいよ」
「っと、そうだった。プラネム、戻って休んでな」
キキに促され、ケケがプラネムのボールを取り出す。
次の瞬間。

「プラネム、大地の怒り!」

ほぼ戦闘不能にまで追い込まれていたケケのプラネムが、地面に落ちたまま最後の力を振り絞り、大地から瓦礫を吹き上げる。
「ッ!?」
咄嗟に飛び退くコタロウとアヤメだが、プラネムが狙ったのはそこではない。
狙いは、屋敷の真ん前。
瓦礫や土砂が吹き出し、積み重なって、屋敷の入り口を完全に塞いでしまった。
「そんじゃ退散! スカタンク、煙幕だ!」
ケケの声を聞いた二人が振り返るが、黒い煙幕が晴れたとき、そこには誰もいなかった。



邪魔な木々をなぎ倒し、巨大な怪物、ティラノスが地を踏みしめる。
大きく咆哮しただけで、一帯を覆う氷が砕け散った。
「ギャヒャヒャ! さぁーて、まずはお前の力を見せつけてやろうじゃねえか!」
口元を歪め、メジストはティラノスに技を指示する。

「ティラノス、グランボールダ!」

刹那。
周囲の木々が、まとめて吹き飛んだ。
「……ッ!」
間一髪、ミヤビは木から飛び降りる。
直後にその木も天高く吹き飛ばされた。
そして間髪入れずに、大地から大量の大きな岩が出現。
躱そうにも、範囲が広すぎる。
半ば押し潰すような形で、大量の岩がドクロッグを完全に覆い尽くす。
「ぶっ飛ばせ! ティラノス、ぶち壊す!」
その巨体からは想像もつかないようなスピードで、ティラノスが突撃する。
ドクロッグを覆う岩など容易く粉砕し、ドクロッグを恐ろしいほどの勢いで吹き飛ばした。
ドクロッグは数メートル吹っ飛ばされ、木の幹に激突し、戦闘不能となる。
「……ドクロッグ、よくやった。休んでおれ」
先ほどのグランボールダで、周囲の木々が全て吹き飛び、平地と化してしまった。
ドクロッグをボールに戻し、ミヤビはメジストを見据える。
対するメジストはティラノスを見つめ、どうにも不満そうに呟く。
「……ちっくしょー、やっぱり納得いかねえ。どうしてこの俺様が四位止まりなんだって話だよな」
その口調は独り言にも、話しかけているようにも聞こえる。
「序列決定戦でラピスのブラッキーさえいなけりゃ、俺様の圧倒勝利で序列三位確定だったってのに。あの野郎、ねちっこい変化技で散々ティラノスを痛めつけて来やがって。寧ろその状態でブラッキーを倒し、ネクロシアをギリギリまで追い詰めた俺様の方がよっぽど三位に相応しいだろ。お前もそう思うだろ? なあティラノス? ……つっても、どうせトパズにはどう頑張っても勝てねえから、結局は三位止まりか」
メジストの言葉に応えるようにティラノスは低く唸る。
しかしこの台詞は、ミヤビにとっては知る由もないが、このティラノスが天将三位のラピスのネクロシアよりも強いことを意味している。
「今更そんなこと語っても意味ねえか。それより」
再び凶悪な笑みを浮かべ、メジストはミヤビの方に向き直る。
「ギャヒャヒャ! 忍びの長ミヤビさんよぉ、なんだぁその怖気付いたみてえな表情は? 百戦錬磨の凄腕忍者でも、ここまでの強敵に会ったことはねえって顔してるな」
メジストの言葉で無意識のうちに表情に出ていたことに気づき、小さくミヤビは舌打ちする。
「つーか、それが普通だろうけどな。あのトパズですら、こいつを見たときは相当警戒したっつってたからな。ま、結局トパズには勝てなかった訳だが」
メジストの言葉はとりあえず無視し、ミヤビは次のポケモンを繰り出す。
「例え何が敵であれ、私がやることは変わらぬ。私が今やることは、貴様を倒すことだ。出でよ、ゲンガー!」
ミヤビの三番手はゲンガー。相性が悪いが、先にゲンガーを出すしかない。
「なんだぁ? ティラノスに相性の悪いゴーストタイプか。ギャヒャヒャ、それなら速攻で消し飛ばしてやるぜ」
メジストが目を見開く。
「ティラノス、ぶち壊す!」
ティラノスが大きく咆哮し、渾身の力を込めて突撃する。
「ゲンガー、躱して鬼火だ!」
対するゲンガーは地面をすり抜け、地下へと姿を消す。
標的を見失って動きを止めたティラノスの背後に現れ、不規則に揺らめく青い火の玉を放つ。
「火傷を狙うつもりか? だがそうはいかねえ! ティラノス、フレアドライブ!」
ティラノスを中心に、激しい炎が迸る。
鬼火を打ち消し、さらにその炎を身に纏って突進する。
「ゲンガー、ヘドロ爆弾!」
対してゲンガーはヘドロ爆弾を足元に投げつけ、煙幕を起こす。
ティラノスの炎の突進が煙幕を晴らすが、そこにゲンガーはいない。
「逃げ足だけは一流だな。さあどこに逃げた? どっから来たって構わねえぜ」
「それではお言葉にあまえるとしよう。ゲンガー、ヘドロ爆弾!」
ティラノスの斜め後ろ、倒れた大きな木の中からゲンガーが現れ、何発ものヘドロの塊を放つ。
ヘドロがティラノスに命中すると、その場て破裂して煙を起こし、ティラノスの視界を塞いでしまう。
「シャドーボール!」
そこにゲンガーは影の弾を連続して放つ。
効果は今一つだが、連続した攻撃によって確実にダメージは蓄積されていく。
しかし、
「調子に乗んなよ! ティラノス、グランボールダ!」
ティラノスが思い切り地面を踏み付ける。
大地が大きく揺れると共に、無数の岩が飛び出し、ゲンガーに襲い掛かる。
「ゲンガー、躱してヘドロ爆弾!」
ゲンガーは再び地中へ潜むが、
「その手はもう通用しねえぞ! ティラノス、グランボールダ!」
再びティラノスが大きく大地を揺るがす。
地面が割れ、大量の岩が飛び出すと共に、その衝撃でゲンガーが地下から引きずり出される。
「ギャヒャヒャヒャ! そこだティラノス、ぶち壊す!」
ティラノスが地を蹴り、渾身の力を込めてゲンガーへ突撃する。
「ッ、ゲンガー、サイコキネシス!」
咄嗟にゲンガーは倒れている木を操り、横からティラノスにぶつける。
攻撃は避けられないが、ティラノスの軌道を僅かに空し、直撃は避ける。
それでも効果抜群、大ダメージに変わりは無い。次にもう一発喰らえば、耐えられないだろう。
そこで、唐突にメジストの黒服の中から電子音が響く。
「何だ、バトル中だぞ? ……ああ、メッセージか。キキから?」
メジストはモニターが付いた無線のようなものを取り出す。
さっと目を通すと、ミヤビに向き直る。
「おい、喜べよ。俺の隊員が、お前の部下に全て撃破されたらしい」
「その割には、随分と余裕な表情をしているな」
「まーな。今回の俺たち破天隊の任務は、あくまでトパズのサポートだ。あいつらは負けちまったみたいだが、ちゃんと任務は遂行してくれたみてえだから問題ないってことさ」
つーわけで、とメジストは続け、
「お前をあっちに戻す訳にはいかねえんだよ。分かるかなぁ? だからもうちょっと頑張ってくれよ。このままじゃ、ティラノスに圧倒されてバトルが終わっちまうぜ? ギャヒャヒャヒャヒャ!」
メジストが瞳に獣のような光を浮かべて笑う。
対して、
「そう上手く行くかね」
いつの間にか、ミヤビの口調に落ち着きが戻っている。
「あ?」
「お主らからの予告状を受け取り、レオとアスカからお主らが如何に危険な集団かを聞いた。その上で、お主らが与えてくれた四日間を、私が何の対策も練らずに過ごしたとでも思っていたのか?」
その時。
地に黒い影が浮かび、クロバットがゆっくりと降りてくる。
怪訝な表情を浮かべるメジストを尻目に、ミヤビはクロバットをボールに戻し、再びメジストに向けて告げる。
「私の考えもお主の主張と同じだ。本命はあくまで向こうであり、さらに私としてもお主を向こうに行かす訳にはいかぬ。加えて私が抜けた分の戦力も考え、既に確保しておいた」
いくらメジストが裏社会や戦闘に慣れていようとも、やはり所詮は犯罪グループ止まり。
数々の戦闘をこなし、あらゆる作戦を想定する百戦錬磨のミヤビが相手では、ポケモンバトルで勝つことは出来ても、戦闘の根本的なところでは到底敵うはずもない。
「すぐに分かる。お主らのような若造には、我々の誇りとする宝を奪うことなど出来ぬということがな。さあ、バトルを続けようではないか」
ミヤビの言葉を聞いたメジストの表情に、明確な苛立ちが浮かぶ。
「……作戦変更だ。てめえを速攻ぶっ潰してから、俺もあっちに加わる」
「ならば私も作戦変更だ。レオや私の部下たちがお主らの仲間を倒すまで、徹底的に時間をかせぐことにしよう。それで私が負けようと、お主らの大将が負ければ、大将をサポートする兵士であるお主は引かざるを得ないだろうからな」
双方の表情に浮かぶものは、憤怒と超然。
平地と化した森の一角に、二者が対峙する。


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