二次創作小説(紙ほか)
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- ポケットモンスター 星と旋風の使徒
- 日時: 2017/01/28 12:25
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
- プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=22078
どうも、初めましての人は初めまして、そうでない人はこんにちは。パーセンターです。
えー、また始まってしまいました。四作目ですね。
今作は前作の完全続編となっております。
参照をクリックすれば、前作に飛びます。
レオの新しい冒険が、始まります。
※注意
・例によって例のごとくノープランです。
・パーセンターは大学生でございます。現在数々の課題に追われて更新頻度が非常に低いですがご了承ください。
・登場するポケモンが色々とややこしいです。詳しくは近々やるオリキャラ募集のときに説明しますが、簡単に言うと『プラチナのシンオウ図鑑に載っているポケモン+ベガでのみ登場するポケモン』となります。
これくらいですね。
内容としては、前作と同様、オリジナルの地方でのゲームのような冒険ものとなります。
それでは、よろしくお願いします。
登場人物
味方side >>25
N・E団side(ネタバレ注意)>>153
用語(ネタバレ注意)>>342
プロローグ >>1
シラハタウン&メガキタウン編
>>6 >>20 >>22
ハスバナシティ編
>>27 >>31 >>32 >>34 >>36
デンエイシティ編
>>39 >>40 >>41 >>42 >>45 >>46 >>50 >>53
アカノハシティ編
>>55 >>57 >>58 >>62 >>63 >>64 >>65 >>68 >>70 >>72 >>74 >>75 >>79 >>80
コウホクシティ編
>>81 >>82 >>83 >>84 >>87 >>88 >>89 >>93 >>94 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>106 >>107 >>108 >>111 >>112 >>115 >>116 >>117 >>118
ツクモシティ&スティラタウン編
>>121 >>122 >>123 >>126 >>127 >>128 >>129 >>130 >>133 >>138 >>145 >>152 >>157 >>158 >>159 >>162 >>163 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>171 >>172 >>173 >>175 >>176 >>177
シヌマシティ編
>>178 >>179 >>180 >>185 >>186 >>188 >>189 >>190 >>193 >>194 >>195 >>199 >>200 >>206 >>207 >>210 >>211 >>214 >>215 >>216 >>217 >>218 >>221 >>222 >>223 >>224 >>227 >>229 >>230 >>233
ヨザクラタウン編
>>234 >>235 >>236 >>242 >>243 >>246 >>247 >>248 >>251 >>254 >>255 >>256 >>257 >>258 >>259 >>260 >>261 >>264 >>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>273 >>274 >>275 >>276 >>277 >>280 >>281 >>283 >>284 >>285 >>288 >>289 >>290 >>291 >>294 >>295 >>296 >>297 >>298 >>299 >>300 >>301 >>303 >>304 >>305
テンモンシティ編
>>306 >>309 >>310 >>311 >>312 >>313 >>314 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>322 >>324 >>325 >>326 >>327 >>328 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>340 >>341
四天王&チャンピオン編
>>343 >>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>352 >>355 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>363 >>364 >>365 >>366 >>367 >>368 >>369 >>370 >>371 >>372 >>373 >>378 >>379 >>380
N・E団編
>>383 >>384 >>385 >>386 >>387 >>388 >>389 >>390
決戦編
零節 都市
>>391 >>392
一節 碧天
>>393 >>400
二節 緋天
>>394 >>401
三節 蒼天
>>395 >>404
四節 破天
>>396
五節 夜天
>>397
六節 輝天
>>398
七節 聖天
>>399
非公式(ベガ)ポケモン図鑑 >>5
- Re: 第百八十六話 意志 ( No.340 )
- 日時: 2016/07/23 09:16
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: vvxYtBmq)
シラハタウンに戻ったレオ。
父親は一旦研究所に戻り、レオは母親と二人で紅茶を飲んでいた。
特訓をするために帰って来たのだが、折角帰って来たんだから少しくらい休みなさい、というシイナからの配慮である。
テレビをつければ、ジム閉鎖のニュースで持ちきりだ。
「それにしても、大変なことになったわね。まさかジムが閉鎖されちゃうなんてねえ。よっぽどの事態なのね」
普通、全てのポケモンジムが閉鎖されるなどという事態は、滅多なことがない限り起こらない。
それだけ只ならぬ事態なのだということを、改めてレオは思い知らされた。
そして。
自分自身が、これからその事態の中心部に足を踏み込もうとしていることも。
「ねえ、レオ」
そんな息子に、不安そうに母親が声を掛ける。
「確かに、レオは今までネオイビルとの戦いに参加してきた。だけど、だからといってこれからも関わり続ける必要はないのよ。引き下がったって、誰も怒らないわ。命を失ったら、それこそ元も子もないんだから」
シイナの言うことは、決して間違っていない。
親として、危険地帯に足を踏み込む子供を止めたがるのは当然だろう。
しかし。
「ううん、母さん」
レオは引き下がらない。
確固たる自分の意志を持って、母親に言葉を返す。
「僕はネオイビルのボスと一年前にも戦った。僕はあいつが許せない、絶対に許せないんだ。僕はあいつを、ネオイビルを止めたい。僕の手で、決着をつけたいんだ」
「……随分と、たくましくなったわね」
レオの言葉を聞き、シイナは微笑む。
「けれど、これだけは約束よ。全部終わったら、必ず無事に帰って来ること。分かったわね」
「うん。勿論さ。全部終わらせて、笑顔で帰って来るよ」
息子の言葉を聞くと、シイナは微笑み、レオの頭を優しく撫でた。
次の日。
朝早くから、レオとライオはモンスターボールを携え、庭に立っていた。
「特訓を始める前にさ、父さん。一つ、聞きたいことがあるんだ」
「何だ?」
ライオが聞くと、レオは手にしたモンスターボールからエンペルトを繰り出す。
「父さんがくれたポッチャマ、今ではエンペルトにまで進化した。だけど、進化が明らかに普通とは違ったんだ」
「ほう。どうやって進化したんだ?」
「普通はポッチャマからポッタイシ、そしてエンペルトへと進化するはずだ。だけど僕のポッチャマは違った」
レオが思い出すのは、聖天のオパールとの戦い。
「あの時、僕のポッチャマは普通よりも遥かに莫大な進化のエネルギーを纏ってた。そしてポッタイシを飛び越え、一気にエンペルトまで進化した。こんな事ってあるの? 父さんなら、何か分かるんじゃないかと思ってさ」
「なるほどな」
レオの話を聞いて、ライオは頷く。
そして。
「それは、私のせいだよ」
そう、言った。
「……え?」
何を言っているのか分からず、レオは聞き返す。
「どうやら、種明しする必要があるようだな。レオが旅立つ前の日の夜、レオが寝た後に、私はポッチャマにある道具を持たせた」
「ある、道具?」
「変わらずの石。持っている間、ポケモンが進化しなくなるというものだ。私は、ポッチャマにそれを隠し持たせておいた」
「変わらずの石……。でも、なんで」
「お前に、ポケモンの力を上手く引き出させるためだ」
ライオは真っ直ぐな瞳でレオをじっと見る。
「私は、息子には自分の意志で自分が決めた道を進んでもらいたい、そう思っている。N・E団のニュースをお前が見た時、一年前もそうだったように、レオ、お前は必ずN・E団と戦うことになる。直感でそう感じた。だが、あの手の組織が強大な力を得た場合、並のトレーナーでは太刀打ち出来なくなる可能性も大いにあり得る。一年前にイビルを倒したとはいえ、レオ、お前も言ってしまえば一人の普通のポケモントレーナーに過ぎないからな」
レオがホクリク地方に来た時、既にライオはそこまで予測していたのだ。
「だから、お前が選んだポッチャマに変わらずの石を隠し持たせた。ポケモンは進化すれば飛躍的に強くなるが、敢えて進化させないままにすることで、レオ、お前にポケモンの力を引き出させる力をつけさせるためにな」
「……ちょっと待ってよ。じゃあ、何で今ポッチャマは進化しているの……?」
「おそらく、何らかの形で変わらずの石がポッチャマの手元から離れてしまったのだろう。例えば、相手の技で強い衝撃を受けた拍子に、とかな。石が手元から離れたその時点で、ポッチャマはエンペルトにまで進化する十分な力を身につけていたのだろう」
そう言われてレオは思い出す。
ポッチャマが進化する直前、ポッチャマはフーディンの使う念力によって操られ、思い切り壁に叩きつけられていた。
「今だから言うが、世間が今のような事態になった場合、私はお前を呼び戻すつもりだった。その場でポッチャマの石を戻し、エンペルトまで進化しなければ、力不足と判断し、お前をネオイビルとは戦わせないつもりだった」
だが、とライオは続け、
「今の話を聞いて安心した。変わらずの石が離れた段階でエンペルトまで進化したということは、レオ、お前はポッチャマの力を上手く引き出せていたということだ。加えてエンペルトのその眼を見れば分かる。お前とエンペルトの信頼関係も十分だ」
そう言って、ライオはニヤリと笑う。
「さあ、それでは私もポケモンを出そう。勝負は一対一。レオ、私にお前とエンペルトとの絆を見せてくれ!」
ライオが、手にしたボールを掲げる。
「行くぞ、コマレオン!」
ライオの繰り出すポケモンは、百獣の王、ライオンのようなポケモンだ。
首から体の半分以上を覆う立派な鬣を生やし、口からは長く立派な二本の牙が伸びる。
鬣ポケモンのコマレオン。タイプは炎・地面。
「それじゃあ父さん、行くよ」
「ああ。どこからでもかかって来い!」
「よっし! エンペルト、ハイドロポンプ!」
エンペルトが口を大きく開き、極太の水柱を放出する。
「コマレオン、ぶち壊す!」
対して、コマレオンが鋭い爪を持つ右の前脚を上げる。
前脚の渾身の突きによって、水柱は防がれてしまった。
「さあ今度はこちらからだ。コマレオン、地震!」
コマレオンが前脚を地面に叩きつけて大地を揺らす。
「エンペルト、躱してドリル嘴!」
エンペルトが跳躍し、地面の揺れと衝撃波を躱す。
空中で嘴を伸ばすと、ドリルのように高速回転しながらコマレオンへと突撃する。
「コマレオン、迎撃だ! ぶち壊す!」
突っ込んでくるエンペルトに向けて、コマレオンは思い切り前脚を突き出す。
「来るぞ! エンペルト、躱せ!」
激突する直前、エンペルトが軌道を逸らす。
コマレオンの前脚の一撃を躱し、横からコマレオンにドリルの如き鋭い嘴を食い込ませる。
「やるな! ならばコマレオン、フレアドライブ!」
コマレオンの鬣が燃え上がる。
激しく燃え盛る炎がコマレオンの体を覆い、エンペルトを引き離し、
「突っ込め!」
巨大な炎弾のように、コマレオンが地を駆ける。
エンペルトに激突し、大きく吹き飛ばした。
「エンペルト! 大丈夫か!?」
エンペルトが地面に落ちるが、それでも何とか立ち上がる。
「コマレオン、ぶち壊す!」
「エンペルト、ジオインパクト!」
コマレオンが地を蹴り、エンペルト目掛けて一気に跳ぶ。
鋭い爪を突き出し、エンペルトを一気に打ち崩そうとする。
対して、エンペルトの鋼の翼を銀色の光が覆う。
翼を振るってコマレオンの前脚の一撃を防ぐと同時に銀色の鋼の衝撃波を放ち、コマレオンを逆に吹き飛ばしてしまう。
「いい火力だ! コマレオン、フレアドライブ!」
吹き飛ばされたコマレオンが起き上がると、再び鬣を燃え上がらせる。
そのまま地面を蹴り、巨大な炎弾のように突き進む。
「来るぞ、迎え撃て! エンペルト、ハイドロポンプ!」
エンペルトが大きく口を開き、大量の水を太い水柱として放射する。
炎弾の如きコマレオンと、エンペルトの放つ大量の水が激突。
水飛沫と火花が、激しく飛び散る。
- Re: 第百八十七話 父子 ( No.341 )
- 日時: 2016/07/26 08:37
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
炎を纏って突き進むコマレオンに対し、エンペルトも一歩も引かずに水流を放ち続ける。
コマレオンの炎によって水は蒸発されていくが、次第にコマレオンの炎も小さくなっていく。
「今だエンペルト! ジオインパクト!」
コマレオンの炎が衰え出したその刹那。
エンペルトが両翼に銀色の光を纏い、その翼を地面に叩きつける。
銀色の衝撃波が地を裂いて突き進み、コマレオンを吹き飛ばす。
「流石、やるな! コマレオン、地震だ!」
「エンペルト、もう一度ジオインパクト!」
コマレオンが大地を揺らし、エンペルトが銀色の両翼を地面に叩きつける。
双方の放った衝撃波が激突、大地を割るとともに大爆発を起こす。
「エンペルト、ハイドロポンプ!」
爆煙の中へ、エンペルトが大量の水ありませを放出。
水柱は煙の中を突っ切ってコマレオンに襲い掛かるが、
「コマレオン、ぶち壊す!」
鋭い爪を構えた前脚を突き出し、水柱を打ち消す。
「そこだエンペルト! ドリル嘴!」
ハイドロポンプのすぐ後を追うように、エンペルトは嘴を伸ばしてドリルのように高速回転しながら突撃。
コマレオンが水を打ち消し、前脚を引っ込めたその瞬間を狙う。
だが、
「コマレオン、受け止めろ!」
コマレオンが大きく口を開く。
鋭い牙でエンペルトの伸ばした嘴に噛みつき、その動きを封じ、
「ぶち壊す!」
首を下に振ってエンペルトを地面に叩きつけ、すぐさま前脚を突き出し、エンペルトを叩き飛ばした。
「私のコマレオンの顎の力を甘く見るなよ。コマレオン、フレアドライブ!」
吹き飛ぶエンペルトを見据えたコマレオンの鬣が激しく燃え上がる。
地を蹴って大きな炎弾のように飛び、エンペルトとの距離を一気に詰めていく。
「これを食らったらまずい……やるしかないな! エンペルト、ハイドロカノン!」
エンペルトの口元に、身体中の水の力が集中していく。
一気に凝縮された水の力は巨大な水の砲弾を作り出し、エンペルトの口を砲台として巨大な砲弾が撃ち出される。
炎弾となって迫るコマレオンに着弾すると同時に大爆発を起こし、逆にコマレオンを吹き飛ばし、地面に叩きつけた。
「なにっ!? コマレオン、まだ行けるか!」
体を纏う炎で少しは相殺したのか、足を震わせながらも、コマレオンは何とか起き上がった。
「なるほど。水タイプ最強の技、ハイドロカノンを覚えるまでに成長していたか。ではこちらも、本気の本気を見せなければいけないな」
ライオの言葉と同時に。
コマレオンの鬣が燃え上がり、天高く火柱を上げる。
「コマレオン、ブラストバーン!」
コマレオンの長い牙が熱を帯び、見る見るうちに真紅に染まっていく。
その牙を、コマレオンは大地に突き刺す。
刹那。
囲い込むように、コマレオンの周囲の地面から灼熱の炎の壁が噴き出した。
「これ、は……! エンペルト、突き破れ! ハイドロカノンだ!」
エンペルトの口元に、再び水の力が集まり、巨大な水の砲弾を形作っていく。
水の砲弾がエンペルトの口元から撃ち出されると同時に、コマレオンを覆う炎の壁が、その形のまま炎の衝撃波となって周囲に放たれる。
水の砲弾と爆炎の衝撃波が激突する。
しかし。
水の砲弾が着弾し、爆発を起こすも、炎の壁は全く勢い衰えることなく突き進んでいく。
「……っ! エンペルト——」
レオが指示を出すよりも早く。
炎の衝撃波が、エンペルトを飲み込んだ。
「エンペルト!」
炎が過ぎ去った時には、エンペルトはその力を使い果たし、力尽きていた。
「……まだまだ父さんには及ばないか。流石は父さんだね」
「ははは、そりゃそうだ。息子に負ければ、それこそ父の威厳と言うものが無くなってしまうからな」
コマレオンを戻し、ライオはレオの方に向き直る。
「今のバトルで色々なことが分かった。レオ、お前がこの旅でどれだけの力を付けてきたかもな。今のバトル、なかなかいい戦い方だったぞ」
だが、とライオは続け、
「まだまだ足りない点、気になる点も多い。今から一ヶ月、私が直接バトルの指導をしよう。そうだな、四天王くらいには勝てるように徹底的に鍛えてやろう。流石にチャンピオンを超えるレベルにまで到達するには一ヶ月では足りないが、それでも今よりもっと強くなれるぞ。もっとも、ついて来られるならの話だがな」
「任せてよ。どんな厳しい特訓だって、ついて行くさ」
「よく言った。かつては私もいろいろな地方を旅したものだ。競い合った友人もたくさんいる。その中には、現役のジムリーダーをやっている奴もいる。明日以降であれば、私の友人たちもお前に力を貸してくれるだろう。最後の一週間までに、私が出来る全てを使って、お前をとことん鍛えてやる」
さらにライオは言葉を続ける。
「それが終わったら、最後の一週間でホクリクの四天王と戦うといい。私の特訓を全てこなしていれば、四天王くらいには負けないはずだ。ここのチャンピオン、リカルドは四天王と比べても飛び抜けて強いが、それでも互角に渡り合えるくらいにはなれるぞ。あわよくば、勝てる可能性も出て来る。裏を返せば
、それだけ厳しい特訓になるぞ。覚悟は出来ているか?」
そう語るライオの眼差しを、レオはまっすぐに見つめる。
「勿論。覚悟なんて、ここでマターを見た時からとっくに出来てる。僕はこの手であいつを倒し、ネオイビルの野望を阻止する。そして、マリアを助け出す!」
強く拳を握りしめ、レオは父親の目をまっすぐ見つめて言い返した。
「よし。じゃあまずはエンペルトを回復してやろう。それが終われば、早速始めるぞ。私が今まで身に付けた経験、その出来る限りの全てをお前に教えよう」
そして、父親と息子は共にシラハタウンを去っていく。
二人の向かう、その行方は——
- Re: ポケットモンスター 星と旋風の使徒 ( No.342 )
- 日時: 2016/07/27 21:52
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
【用語】
・『覚醒』
ネオイビル七天将が使用する能力。封じていた龍の力を解き放ち、ポケモンバトルにおける戦闘力を跳ね上げる事が出来る。また、龍の力を得る代償として切り札となるポケモンが封印され、覚醒した状態の時のみ切り札を使用できるようになる。なお、龍の力により、身体に影響を及ぼす者もいる。
・覚醒率
アスフィアの力をどれくらい引き出せるかの割合。ブレが大きく、『覚醒』するたびにその割合が変わり、意識的に制御することやフルパワーを出すことは出来ないが、輝天将トパズのみ覚醒率を制御することが出来る。また、例外はあるが、天将の覚悟が大きい時や、感情が大きく高ぶった時ほど、100%に近い、もしくは100%の龍の力を引き出すことが出来るようだ。
・オルディナ
スティラタウンの少女・マリアがポケモンに改造されてしまった姿で、体内に氷鷲石、雷獣石、龍琴石を埋め込まれている。三つの石によって、どんな機械でも制御出来ないアスフィアの力を制御する事が出来る。
・『P.o.G』
『プラン・オブ・ガタノア』。一年前に失敗し、破綻した、マターの世界征服計画。
・『P.o.A』
『プラン・オブ・アスフィア』。一年以上前からP.o.Gと並行して進められていた、アスフィアの力を使って世界を支配するマターの計画。
【道具】
・氷鷲石
アスフィアの力の源となる石の一つ。アスフィアを鷲座の力を得る氷帝の姿に変えさせる事が出来る宝石。
・雷獣石
アスフィアの力の源となる石の一つ。アスフィアを大犬座の力を得る雷帝の姿に変えさせる事が出来る宝石。
・龍琴石
アスフィアの力の源となる石の一つ。アスフィアを琴座の力を得る龍帝の姿に変えさせる事が出来る宝石。
・フライングボード
ネオイビルの隊員に与えられた、飛行用の小型の乗り物。基本一人乗り。
・ネオイビル空中輸送ドッグ
ソライトが所有する大型飛行機。据え付けられたコンテナにより、大きな物や二百人ほどの人間を乗せて移動させる事が出来る。
・『ホエール』
トパズが所有する、ネオイビル最大の軍艦。巨大な鯨を模しており、これほど大きな姿でありながら飛行が可能。口を模した部分は内部への出入り口の他、巨大な砲口の役割も果たす。
【組織等】
・『ブロック』
六年前に創られた犯罪団体壊滅組織で、創立者はテンモンシティジムリーダー・リュードウ。現在の統率は行方不明なため、組織を仕切るのは副統率のリョーマ。犯罪者の逮捕権限はないが実質特に関係ないらしい。ホクリクの様々な町に支部があり、支部の無い町の隣の町には必ず支部があるようになっている。支部統括やその補佐は力も相当で、覚醒した天将相手に互角以上に戦う者や、ジムリーダーに匹敵すると言われるものもいる。
・アカノハ支部
規模はテンモン支部に劣るものの、『ブロック』の中心となる支部。リョーマが副統率とアカノハ支部統括を掛け持ち、統括補佐はテレジアが務める。ただしリョーマは副統率としての仕事を優先するため、実質的な統括はテレジア。
・スティラ支部
統括はエフィシ。支部の中では一番小さく、町自体も小さく特に何もないので、仕事は比較的少ない。時にテンションが高すぎて煙たがられることの多いエフィシだが、町の老人や子供たちからは好かれている様子。
・シヌマ支部
自由奔放で非常に気まぐれなサクラが統括。サクラはデスクワークをやりたがらないので問題が特に多い支部である。
・テンモン支部
『ブロック』最大の支部で、ライロウが統括。統率力が高く、戦力としても非常に強大。
・ネオイビル
N・E団として知られていた、マターの率いる組織。元は一括りで『イビル』だったが、一年前のウチセトでの敗北を経て、組織名を改めた。アスフィアの力を使い、全ての人類への裁きを目論む。名前の由来は、この世の全てが罪人・悪人であるというマターの思想から。
・七天将
所謂七人の幹部で、他の隊員は勿論、かつてのイビル七将軍と比べても一線を画す強さを備える。各天将はそれぞれ宝石を模した名前を与えられており、覚醒すると体のどこかに模様が浮かび上がる。それぞれが特色のある部隊を有している。
・天将直属護衛軍
天将を支える為の直属の部下。基本は一隊に一人で、破天隊のみ二人。聖天隊にはいない。部下に据えられている理由は天将毎に違うが、昔からの仲間、いると便利、放っておけない、など。
・聖天隊
聖天将オパールが率いる部隊。主な役割は組織のリーダーであるマターの護衛。オパール自身がマターの直属護衛のような存在であるため、隊員は少なく、直属護衛もいない。
・輝天隊
輝天将トパズが率いる部隊。軍人であるトパズによって恐ろしいほどに統率が取れており、隊員も最も多い。主な役割は戦闘における本隊であり、的確なトパズの指示により、地形や場所に応じた最善の戦いが出来る。なお、トパズは必要であれば他の隊を指揮することが認められている。
・夜天隊
夜天将ラピスが率いる部隊。隊長のラピスが足が不自由であるため、最前線に出る事は滅多になく、ラピスも指揮は他の隊の天将に任せる事が多く、自ら指示を出すことは少ない。主な役割は他の隊の戦力が足りない時の補強。特に輝天隊の補強に着くことが多い。
・破天隊
破天将メジストが率いる部隊。隊員は全て犯罪グループ時代のメジストの仲間で、その隊員数はメジストを含めて十四人と非常に少なく、全員が何かしらで顔を隠している。主な役割は工作、破壊活動などだが、局地活動も行える優れた隊。全員がイビル結成以前からの仲なので、隊員の結び付きは強く、隊員の仲も良い。
・蒼天隊
蒼天将ソライトが率いる部隊。主な役割は実験、研究、開発。覚醒した時のソライト自身は五位だが、隊全体の戦力は最弱で、直属護衛を除く構成員の全員が科学者。研究者が喉から手が出るほど欲しがる珍しい機械や薬品などが揃っているため、実験や研究を好む者には最高の場所である。
・緋天隊
緋天将ガーネットが率いる部隊。隊長ガーネットと直属護衛ブレイズが非常に厳しいため、輝天隊に次いで統率力は高い。本来の主な役割は局地的な任務だが、局地活動の仕事は破天隊に喰われ気味で、最近は他の隊の補佐が多い。
・碧天隊
碧天将セドニーが率いる部隊。緋天隊と違って隊長セドニーも直属護衛ロフトも比較的部下に優しいので、隊員からの評判は良い。主な任務は目的物捜索やアジト建設など、蒼天隊とはまた別の裏方の仕事。
- Re: 第百八十八話 韋駄天 ( No.343 )
- 日時: 2016/08/01 00:03
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
テンモンシティの巨大な門から、一人の少年が街にやって来た。
少年の名はレオ。彼はつい昨日まで、父親やその友人たちと共に三週間以上、ホクリク地方やその別の地方でひたすら特訓を重ね、今こうしてまさにホクリクに帰って来たのだ。
レオが帰って来た理由は二つ。まず一つは、ライオの言葉通りに、『ブロック』と手を組む四天王やチャンピオンとバトルをするため。
そして二つ目は、レオが特訓をしてきた理由、ネオイビルとの決戦が近づいて来ているからだ。
ネオイビルは少なくとも一ヶ月程で動き出す。そのため、残り一週間で四天王やチャンピオンと戦い、さらにポケモンの調整も行う必要がある。
「おお、レオじゃねえか。ようやく帰って来たな」
『ブロック』テンモン統括、ライロウが、レオを出迎える。
「ライロウさん、お久し振りです。他の皆はどうしてますか?」
「今も特訓の最中だ。各地のジムリーダーと戦ったり、一人で修業に行ったりな。カンタロウなんかは、ホウエン地方の師匠に直接鍛えてもらうためにホウエンに帰ってる」
さて、とライロウは一拍起き、
「ライオのおっさんから話は聞いてるぜ。四天王と戦うそうだな。うちのヘリで直接連れて行ってやろう。四天王は強いぜ。レオが帰ってくるまでに他の皆も戦っていたが、四天王全員に勝てたのはリョーマだけだった。そのリョーマでも、チャンピオンには勝ててない。だがその分、得るものも多いぜ。頑張れよ」
「はい。今までの特訓の成果を、見せてやりますよ」
レオはライロウのヘリコプターに乗り込む。
大きなプロペラの音を立て、ヘリコプターは飛び立つ。
ポケモンリーグ本部。
四天王の四人とチャンピオンが待ち受ける、ポケモンバトルの総本山だ。
ゆっくりと、レオは巨大なその建物に足を踏み入れる。
まず最初のバトルフィールドは、周囲を数多の木々に囲まれた森のフィールド。フィールド自体にも草が生い茂っている。
そして、そのフィールドを挟んで向かい側に立っている男が一人。
「よく来たな! ライオ博士から話は聞いているぞ! 俺はホクリク地方ポケモンリーグ四天王の一人、草タイプ使いのイダ!」
「よろしくお願いします! ライオの息子、ポケモントレーナーのレオです」
四天王イダ。
筋肉質かつ長身の男性だ。緑の髪は立たせており、服装はまるでギャングが着るような派手な服。龍を模したような緑色の模様付けが施されている。
「お前が噂のレオだな! リカルドに話を聞いてからこの三週間、お前と戦うのをずっと楽しみにしていたぞ!」
「僕もバトルが楽しみですよ。特訓のためとはいえ、四天王の人たちと戦えるなんて」
「ガハハハ! バトルにそんなお堅い理由はいらん。俺とのバトルは、そんな堅苦しい理由は忘れて、力の限り存分に戦え! バトルは五対五だ。準備はいいな!」
「ええ。それじゃ行きますよ、イダさん!」
その言葉を引き金に、二人はモンスターボールを取り出す。
「頼むぜ、ヘラクロス!」
「ぶちかませぃ、モジャンボ!」
レオの一番手は、草タイプに有利を取れる虫タイプのヘラクロス。
対してイダのポケモンは、全身を青い蔓に覆われたポケモン。手と思われる二本の蔓は特に長く、指先も赤い。
奇妙な見た目をしているが、その全長はヘラクロスよりも大きい。
蔓状ポケモンのモジャンボ。タイプは草のみ。
「行くぞヘラクロス! マグナムパンチ!」
ヘラクロスが翅を広げて、突撃を仕掛ける。
一気にモジャンボの懐まで飛び込み、ミサイルのように重い拳の一撃をモジャンボに叩き込む。
「モジャンボ、パワーウィップ!」
拳をまともに受けたモジャンボは吹っ飛ばなかった。
顔をしかめ、少し後退りし、すぐに蔓の腕を思い切り振り下ろしてヘラクロスに叩きつけ、吹き飛ばす。
「俺のモジャンボが一番に優れているのは攻撃面じゃない、防御だ! 物理で戦おうってんなら、こいつの強さを存分に味わうことになるぜ!」
「上等ですよ。ヘラクロス、ストーンエッジ!」
ヘラクロスの周囲を白い光が覆い、無数の尖った岩を形作る。
その岩を一斉にモジャンボ目掛けて放つが、
「もう一度パワーウィップ!」
しなる鞭のように両腕を振り回し、モジャンボは飛来する岩を全て弾き飛ばす。
「気合玉だぁ!」
「マグナムパンチ!」
モジャンボが長い両腕を構え、ありったけの気合を込めた光の弾を放出する。
対して翅を広げたヘラクロスは再び前方へと飛び出す。
ミサイルの如き拳を繰り出して気合玉を弾き返し、
「ヘラクロス、メガホーン!」
硬い角を思い切り突き出し、モジャンボの腹部へと激突。モジャンボを大きく押し戻す。
「マグナムパンチ!」
ヘラクロスのミサイルの如き拳がさらに突き出される。
しかし、
「モジャンボ、ダイヤブラスト!」
モジャンボの周囲の空気が突如として爆発し、青白く煌めく爆風が飛び散る。
爆風を諸に浴びて、ヘラクロスは逆に吹き飛ばされてしまう。
「いいぜぇ! モジャンボ、パワーウィップ!」
モジャンボが腕を振り回し、勢いをつけて鞭のように腕を思い切り振り抜く。
横薙ぎに振り払われた蔓の腕の一撃が、ヘラクロスを叩き飛ばす。
「調子付いてきたぞぉ! モジャンボ、パワーウィップ!」
振り払った腕を、その勢いのままさらにモジャンボはヘラクロスへと叩きつける。
「そこまでですよ! ヘラクロス、マグナムパンチ!」
ヘラクロスもやられっぱなしではない。
重い力を掌に込め、ヘラクロスはモジャンボの腕を掴み、受け止めた。
「ストーンエッジ!」
モジャンボの腕を掴んだまま、ヘラクロスは無数の尖った岩を一斉に撃ち出す。
無数の岩がモジャンボに突き刺さり、モジャンボがよろめいて後退りする。
「シャドークロー!」
モジャンボの腕を離すと、ヘラクロスは翅を広げて突撃。
両腕に鋭い影の黒爪を纏い、体勢を崩すモジャンボへと一気に迫る。
だが。
「モジャンボ、リーフストーム!」
モジャンボの周囲で空気が渦を巻く。
腕を突き出し、モジャンボは尖った葉の刃を乗せた風の渦を放つ。
数多の葉の刃によって影の爪は刈り取られ、ヘラクロスは風に巻き込まれ、逆に吹き飛ばされてしまう。
「っ、ヘラクロス!?」
ヘラクロスが床に落ちる。まだ何とか起き上がるが、ダメージは相当なものだ。
草技が効果抜群のポケモンなら、今のでやられていただろう。
「ほぉ、俺のモジャンボのリーフストームを耐えたか! それならば!」
心底楽しそうにイダは笑みを浮かべ、
「もう一度食らうがいい! リーフストーム!」
再び、モジャンボの周囲を空気が渦巻く。
「来るぞ! ヘラクロス、躱してメガホーン!」
翅を広げ、ヘラクロスが飛翔する。
尖った葉の刃の嵐を掻い潜り、角を突き出して突撃、モジャンボの足元の地面へと硬い角を突き刺した。
「今だ! ヘラクロス、投げ飛ばせ!」
渾身の力を込めて、ヘラクロスが角を真上に振り上げる。
モジャンボが立っている場所ごとフィールドを抉り取り、モジャンボを真上に投げ飛ばした。
「なにぃっ!? モジャンボ、パワーウィップ!」
「突撃だ! ヘラクロス、メガホーン!」
吹き飛ばされながらも、モジャンボが両腕を構える。
それよりも早く、ヘラクロスが角を構えて真上に突撃する。
ヘラクロスの渾身の角の一撃が、モジャンボの腹部に直撃した。
だが。
「パワーウィップ!」
一時は止まったモジャンボの腕が再び動き、密着していたヘラクロスを捕らえた。
「しまった……! ヘラクロス、抜け出せ! シャドークロー!」
「モジャンボ、そのままだ! リーフストーム!」
ヘラクロスの爪が黒い影を纏うと同時に、モジャンボの周囲を葉の刃を乗せた空気が渦巻く。
葉の嵐に覆われ、モジャンボとヘラクロスはもつれ合ったまま地面へと落下する。
- Re: 第百八十九話 苔 ( No.344 )
- 日時: 2016/07/30 09:10
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
モジャンボとヘラクロスが地面に墜落し、砂煙が上がる。
その中に、うっすらとポケモンの影が映る。
煙が晴れた時にレオの目に映ったのは、無数の傷を負いながらも立ち上がっているモジャンボと、力尽きて倒れたヘラクロス。
「くっ、ダメだったか……。ヘラクロス、よく頑張った。休んでてくれ」
レオはヘラクロスを労い、ボールに戻す。
「俺には見えていたぞ! 地面に激突した直前、モジャンボの方が上を取って、ヘラクロスが下敷きになったようだな!」
「なるほど……流石の強さですね。抜群の耐久力に加えて、攻撃力も侮れない。流石は四天王のポケモンです」
ヘラクロスのメガホーンを二発、さらに他の攻撃を何発も受けたにも関わらず、モジャンボはまだふらつくこともなく立っている。
「ガハハハ! そうだろう! 俺のモジャンボの防御力はピカイチだ! さあ、次はどんなポケモンを出してくる! 早く二番手を出してくれよ!」
「望むところです。それじゃあ、次はこいつの出番かな」
そう言いながら、レオは次のボールに手を掛ける。
「頼んだぜ、トゲキッス!」
レオの二番手はトゲキッス。草タイプには有利な飛行タイプで、さらに特殊技主体で戦える。
「やはり特殊技を持つポケモンで来たか! だが、俺のモジャンボも有効打はあるぞぉ! モジャンボ、パワーウィップ!」
モジャンボが蔓の両腕を振り回し、トゲキッスに向けて放つ。
傷だらけでも、その勢いは全く衰えない。
「トゲキッス、躱して大文字!」
回転しながらモジャンボの頭上を飛び回り、トゲキッスはモジャンボの両腕を躱すと、激しく燃え盛る大の字型の炎を撃ち出す。
「モジャンボ、ダイヤブラスト!」
モジャンボを囲むように爆発が起き、青白く煌めく爆風が炎を防ぐ。
「トゲキッス、波動弾!」
体の奥から波動の力を生み出し、トゲキッスが波動弾を放つ。
爆風の中に吸い込まれるように起動を描き、煙に姿を隠すモジャンボを捉える。
「ぐっ、モジャンボ、リーフストーム!」
「させるか! トゲキッス、エアスラッシュ!」
モジャンボの周囲で空気が渦を巻く。
だがトゲキッスは素早く旋回してモジャンボの後ろを取り、大きく羽ばたいて空気の刃を放つ。
葉の嵐が起こる寸前、空気の刃がモジャンボを切り裂く。
背後からの一撃をまともに受け、モジャンボの体が大きくよろめく。
モジャンボの周囲の空気の渦が乱れ、
「もう一度エアスラッシュ!」
そこにもう一撃空気の刃が襲い掛かる。
再び空気の刃に蔓状の体を切り裂かれ、ついにモジャンボは二、三歩ふらついた後その場に倒れ、戦闘不能となった。
「ぐぬぬ、やはり苦手タイプの特殊型ポケモン相手では分が悪いか。モジャンボ、よくやった! 戻って休んでいてくれ!」
モジャンボをボールに戻し、イダは次のボールを取り出す。
「飛行タイプが相手であれば、次はこいつだ! ぶちかませぃ、ヒカリゴケ!」
イダの繰り出す二番手は、これまた奇妙な姿のポケモン。
全長の半分を占めるような長い尻尾と、尖った顔は露出しているが、その他の部位は苔に覆われている。
苔ポケモンのヒカリゴケ。草・電気タイプ。
「なるほど、電気タイプのヒカリゴケか。トゲキッス、油断するなよ。落ち着いて行くぞ」
レオの元まで戻り、トゲキッスは体勢を整え直す。
「それじゃあ行くぞ! ヒカリゴケ、まずはヘドロ爆弾!」
ヒカリゴケの長い尻尾がヘドロの塊を掴み、尻尾を振るってヘドロをトゲキッスへと投げつける。
「トゲキッス、躱して大文字!」
ヘドロを躱して、トゲキッスは激しく燃え盛る大の字型の炎を放つ。
「ヒカリゴケ、十万ボルト!」
対するヒカリゴケの、体を覆う苔から高電圧の強力な電撃が放出される。
大の字型の炎の中心を貫き、大文字の核を破壊して炎の勢いを止め、さらに炎の奥にいるトゲキッスを捉えた。
「ギガドレイン!」
ヒカリゴケが跳躍し、その尻尾が触手のようにトゲキッスへと襲い掛かる。
「くっ、トゲキッス、サイコバーン!」
体勢を崩しながらも何とかトゲキッスは念力を爆発させて衝撃波を起こし、ヒカリゴケの尻尾を弾く。
(危ない……でもトゲキッスだとやっぱり相性が悪いな……)
やはり電気タイプが入っていると、トゲキッスでは相手がし辛い。
加えて、このヒカリゴケの特攻も桁違いだ。このままトゲキッスで戦っても、電気技で落とされるのが目に見える。
「よし、トゲキッス、ここはいったん戻ってくれ」
そう考え、レオはトゲキッスをボールへと戻す。
「なるほど、いい判断だな! ならば次はどのポケモンで来る?」
「次は、こいつです! 頼んだぜ、パンプッチ!」
レオが出したのはパンプッチ。主力の草技は通りにくいものの特防が高く、電気と草の両技を半減出来る。
ヒカリゴケにはヘドロ爆弾があるが、ゴーストタイプを併せ持つパンプッチは抜群ではない。
「なるほど、パンプッチを選んだか! ならば俺のヒカリゴケの圧倒的な特殊攻撃で、タイプ相性もろとも突き破ってやろう!」
「そうは行きませんよ、勝つのは僕です! パンプッチ、エナジーボール!」
「ヒカリゴケ、ヘドロ爆弾!」
パンプッチが葉の杖を振るって自然の力を込めた光の弾を放ち、ヒカリゴケは長い尻尾でヘドロの塊を投げつける。
双方の放った弾は、正面からぶつかって爆発する。
「パンプッチ、シャドーボール!」
煙に紛れ、気配を消して接近し、パンプッチがヒカリゴケのすぐ横から影を固めた黒い弾を撃ち出す。
影の弾が直撃、ヒカリゴケが吹き飛ばされる。
「さっきのモジャンボほどの耐久力は無いな。パンプッチ、押していけ! ハイドロポンプ!」
指揮棒のように杖を振り、パンプッチが大量の水を放出。
「そうはさせんぞ! ヒカリゴケ、ハイドロポンプ!」
吹き飛ばされながらも、ヒカリゴケが尻尾を伸ばす。
尻尾の先から大量の水が放たれ、パンプッチの放つ水流と激突。
互いに激しく競り合い、やがて消滅する。
「パンプッチ、エナジーボール!」
パンプッチの持つ杖が淡く光る。
その杖を振り、自然の力を込めた光の弾を放つが、
「ヒカリゴケ、十万ボルト!」
ヒカリゴケが体を激しく振動させ、苔から高電圧の強力な電撃を放出する。
光の弾を粉砕し、さらに突き進む電撃がパンプッチを貫く。
「よぉし今だ! ヘドロ爆弾!」
すぐさまヒカリゴケが尻尾でヘドロの塊を掴み、投げつける。
パンプッチに直撃するとヘドロが炸裂し、吹き飛ばす。
「パンプッチ! 大丈夫か!?」
地面へ落ちたパンプッチだがすぐに起き上がり、レオの声に頷く。
(特防の高いパンプッチを選んで正解だった。最後の技もハイドロポンプだし、まともに通る技はヘドロ爆弾しかない。あとは十万ボルトさえ気を付ければ……)
ヒカリゴケの一番厄介な技は、十万ボルトだ。
この技だけは威力が桁違いだ。タイプ相性など嘲笑うかのように大ダメージを与えてくる。
「ガハハハ! どうだ、こいつの電撃は! 俺のヒカリゴケの電撃はそんじょそこらのポケモンの電気とはわけが違う! タイプ相性など関係無いぞ!」
余裕の表情を見せるイダが豪快に笑う。
「流石ですね、痺れさせられますよ。だけどさっきのモジャンボよりはやりやすい。モジャンボと違って、攻撃を入れれば手応えを感じますからね」
「ほう、言うではないか! ならばヒカリゴケ、もう一度十万ボルト!」
再びヒカリゴケの苔から電気が発生し、高電圧の強力な電撃が飛び出す。
「パンプッチ、躱してシャドーボール!」
ふわりと飛んで電撃を躱し、パンプッチは杖を振る。
その先に影の力が集まり、黒い影の弾となって杖から撃ち出される。
「効かんぞ! ヒカリゴケ、ヘドロ爆弾!」
尻尾でヘドロの塊をつかみ、ヒカリゴケはそれを影の弾に向けて投げる。
ヘドロが炸裂し、シャドーボールを打ち消すが、
「そこだ! パンプッチ、ハイドロポンプ!」
ヒカリゴケの頭上からパンプッチが杖を振り下ろし、滝のような水柱を落とす。
激流を浴び、ヒカリゴケが押し流される。
「っ、上からか! ヒカリゴケ、こっちもハイドロポンプ!」
「遅いです! パンプッチ、シャドーボール!」
ヒカリゴケが水の流れから脱出し、長い尻尾を構える。
だが既にパンプッチは杖を振り下ろし、黒い影の弾を撃ち出していた。
シャドーボールがヒカリゴケに直撃し、爆発が起こる。
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