二次創作小説(紙ほか)

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ポケットモンスター 星と旋風の使徒
日時: 2017/01/28 12:25
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=22078

どうも、初めましての人は初めまして、そうでない人はこんにちは。パーセンターです。
えー、また始まってしまいました。四作目ですね。
今作は前作の完全続編となっております。
参照をクリックすれば、前作に飛びます。
レオの新しい冒険が、始まります。

※注意
・例によって例のごとくノープランです。
・パーセンターは大学生でございます。現在数々の課題に追われて更新頻度が非常に低いですがご了承ください。
・登場するポケモンが色々とややこしいです。詳しくは近々やるオリキャラ募集のときに説明しますが、簡単に言うと『プラチナのシンオウ図鑑に載っているポケモン+ベガでのみ登場するポケモン』となります。

これくらいですね。
内容としては、前作と同様、オリジナルの地方でのゲームのような冒険ものとなります。

それでは、よろしくお願いします。

登場人物
味方side >>25
N・E団side(ネタバレ注意)>>153
用語(ネタバレ注意)>>342

プロローグ >>1

シラハタウン&メガキタウン編
>>6 >>20 >>22
ハスバナシティ編
>>27 >>31 >>32 >>34 >>36
デンエイシティ編
>>39 >>40 >>41 >>42 >>45 >>46 >>50 >>53
アカノハシティ編
>>55 >>57 >>58 >>62 >>63 >>64 >>65 >>68 >>70 >>72 >>74 >>75 >>79 >>80
コウホクシティ編
>>81 >>82 >>83 >>84 >>87 >>88 >>89 >>93 >>94 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>106 >>107 >>108 >>111 >>112 >>115 >>116 >>117 >>118
ツクモシティ&スティラタウン編
>>121 >>122 >>123 >>126 >>127 >>128 >>129 >>130 >>133 >>138 >>145 >>152 >>157 >>158 >>159 >>162 >>163 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>171 >>172 >>173 >>175 >>176 >>177
シヌマシティ編
>>178 >>179 >>180 >>185 >>186 >>188 >>189 >>190 >>193 >>194 >>195 >>199 >>200 >>206 >>207 >>210 >>211 >>214 >>215 >>216 >>217 >>218 >>221 >>222 >>223 >>224 >>227 >>229 >>230 >>233
ヨザクラタウン編
>>234 >>235 >>236 >>242 >>243 >>246 >>247 >>248 >>251 >>254 >>255 >>256 >>257 >>258 >>259 >>260 >>261 >>264 >>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>273 >>274 >>275 >>276 >>277 >>280 >>281 >>283 >>284 >>285 >>288 >>289 >>290 >>291 >>294 >>295 >>296 >>297 >>298 >>299 >>300 >>301 >>303 >>304 >>305
テンモンシティ編
>>306 >>309 >>310 >>311 >>312 >>313 >>314 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>322 >>324 >>325 >>326 >>327 >>328 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>340 >>341
四天王&チャンピオン編
>>343 >>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>352 >>355 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>363 >>364 >>365 >>366 >>367 >>368 >>369 >>370 >>371 >>372 >>373 >>378 >>379 >>380
N・E団編
>>383 >>384 >>385 >>386 >>387 >>388 >>389 >>390

決戦編
零節 都市
>>391 >>392
一節 碧天
>>393 >>400
二節 緋天
>>394 >>401
三節 蒼天
>>395 >>404
四節 破天
>>396
五節 夜天
>>397
六節 輝天
>>398
七節 聖天
>>399


非公式(ベガ)ポケモン図鑑 >>5

Re: 第二百二十九話 蒼天 ( No.395 )
日時: 2016/10/01 08:45
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

下っ端の大群を突き抜けた後、ホロとエフィシは同じ方向へと進んでいた。
二人が辿り着いたのは、古代の雰囲気の漂うこの巨大都市の中で、唯一近代的なデザインの建物。
ガラス扉も自動ドアで、内装は機械的。奥に進んでいくにつれ無数のコードが地を這い、機械の音が大きくなる。
どんどん奥へと進み、恐らく最深部と思われる場所に、二人は到達した。
そこでホロとエフィシを待ち受けていたのは。
「ようこそ、私のラボへ」
こちらに背を向けた大きな椅子が回転し、座っていた男がゆっくりと立ち上がった。
青色の髪に外国人のようにも見える顔立ち、黒いスーツの上から真っ白な白衣を着た男。白衣の下のスーツの胸元に、小さくネオイビルの紋章がある。
蒼天隊統率、序列五位——蒼天将ソライト。
「さて、誰かが来るだろうとは思っていましたが、まさか二人もいらっしゃるとは。さて、どちらが私の相手をなさいますか?」
ホロとエフィシ、二人は顔を見合わせるが、
「ホロ君。私に戦わせてください」
ボールを取り出し、エフィシが一歩進み出る。
「恐らく、君も同じことを思ってるんだと思います。ですがここは私に戦わせていただきたい。マリアさんの敵討ちを、させていただきますよ」
「……分かった。じゃあ、あの天将はエフィシにーちゃんに任せるぜ」
エフィシの気迫に少し押されたのもあり、ホロは一歩下がってエフィシに後を任せる。
「敵討ちなど物騒な。私は彼女の願いを叶えただけです。ポケモンになりたいという願いをね。言っておきますが、私があの子と接触した時、私は嘘は一言も吐いていませんよ」
「生意気な口を聞けるのも今のうちだ、蒼天将ソライト。あの子の苦しみを直接味わせることは出来ないが、出来るならそうしてやりたい気分だよ。だからせめて、本気でお前を倒してやる」
「いいでしょう。そうでなければ、意味がありませんからね」
(意味……?)
怒りを燃やすエフィシが気付いているか分からないが、一歩引いてやりとりを見ているホロは、何か違和感のようなものを感じ取った。
思い違いかもしれないが、ホロには、ソライトがわざとエフィシを挑発し、本気を引き出したように見えたのだ。
そして、当然だが二人はそんなホロの思惑には気づかず、話を進めていく。
「バトルは四対四です。この時のために、この場所を準備しましたからね」
ソライトがそう呟いた、その直後。
彼の瞳が蒼色に輝き、さらに服の下からびっしりと揃った龍の鱗のような蒼の光が漏れ出す。
「それでは、始めましょう」
「望むところだ」
二人が、同時にボールを取り出す。
「行きなさい、ジバコイル!」
「お願いします、コーシャン!」
ソライトのポケモンは地場ポケモンのジバコイル。三体のコイルが完全に連結し、磁石のユニットを三つ取り付けたUFOのようなポケモン。
対するエフィシのポケモンは、紫色の体毛に二股に分かれた尻尾を持つ大型の猫のようなポケモン、吉凶ポケモンのコーシャン。
「炎タイプだろうと問題はありません。ジバコイル、ハイドロポンプ!」
ジバコイルの左右のユニットが高速回転し、大量の水が噴き出す。
「コーシャン、躱して悪の波動!」
身軽に跳躍してコーシャンは水柱を躱すと、悪の力を溜め込み、悪意に満ちた波動を撃ち出す。
「ジバコイル、磁力線!」
さらにジバコイルはユニットの回転を続ける。
ジバコイルを中心として磁力の波が発生し、悪の波動が打ち消される。
「ならばコーシャン、ギガスパーク!」
「甘いのですがねえ! ジバコイル、雷!」
コーシャンが電撃を一点に溜め込んで巨大な電撃の砲弾を放つと同時、ジバコイルも槍のような雷撃を放出する。
お互いの放つ電撃が激突するが、やがてジバコイルの雷撃の槍が砲弾を突き破り、コーシャンを捉えた。
「私のジバコイルは電撃のプロフェッショナル。威力は問わずですが、扱える電気の量だけで言えばトパズのマカドゥスにも匹敵します。電気タイプでもないポケモンの電撃では、ジバコイルを破ることなど出来ませんよ」
「くっ、ならばコーシャン、火炎放射!」
雷撃の槍を受けたコーシャンだが、威力は削いでいた。
すぐに立ち上がると、灼熱の業火を噴き出して反撃する。
「打ち消して差し上げましょう。ジバコイル、ハイドロポンプ!」
対するジバコイルは再びユニットを回転させると、大量の水を放出させる。
コーシャンの放つ炎は、水柱に阻まれ、ジバコイルには届かない。
(やはり、攻撃性能では負けているか……)
薄々気付いていたことではあるが、コーシャンの火力はジバコイルの火力よりも低い。
ギガスパークに関してはともかく、悪の波動も火炎放射も打ち破られている。
しかし、
(だからと言ってコーシャンがジバコイルより弱いわけではない。私のコーシャンにはスピードという武器がある。それを生かして戦いますか!)
「よし、コーシャン、サイコバレット!」
コーシャンが念力を操作し、生み出した念力を実体化させて周囲に無数の念力の弾を浮かべる。
「ジバコイル、シグナルビーム!」
三つの目を妖しく光らせ、ジバコイルは激しい光を放つ三本の光線を撃ち出す。
「コーシャン、躱して一斉射撃!」
だがコーシャンは念力の弾を浮かべたまま、身軽な動きで光線を掻い潜り、ジバコイルの後ろを取る。
ジバコイルがそれに反応するより先に一斉に念力の弾を撃ち出し、無数の念弾をジバコイルへ叩きつけた。
「今です! コーシャン、火炎放射!」
続けざまにコーシャンは大きく息を吸い込み、灼熱の業火を放つ。
炎がジバコイルを飲み込み、その鋼の体を燃やしていく。
しかし、
「それくらいでどうにかなるとでも? ジバコイル、磁力線!」
ジバコイルを覆う炎が、一瞬にして薙ぎ払われた。
鋼のボディを所々黒く焦がしながら、ジバコイルがユニットを激しく回転させ、大規模な磁力の波を巻き起こす。
「スピードで負けている、だから何だと言うのです? まさかとは思いますが、スピードで撹乱すればそれで勝てる、などと甘い考えを持っていたわけではありませんよねえ?」
磁力の波がコーシャンを巻き込み、大きく吹き飛ばす。
「レオ君から聞いていませんか、私の思想を。結局、最後に勝ち残るのは力を持つものです。だから私は他の科学者と違い、力を求める。所詮一人の科学者に過ぎない私が天将の位に就き、『覚醒』を得たのも、力を求めた所以です。だから——」

「話が長い。そろそろ黙ってもらおうか」

刹那。
ジバコイルが、再び炎に飲み込まれる。
「っ……! ジバコイル!」
完全に不意を突いた一撃。予想もしない効果抜群の一撃に、今度こそジバコイルは大ダメージを受ける。
「話している最中も常に気を配っていたのですが。どうやってそこまで気配を隠しました?」
「あまり『ブロック』を甘く見るなよ。この一ヶ月、徹底的に鍛えてきたのだ。お前たちを必ず潰す、その思いを込めてな」
「……答えになっていない気がしますが、まあいいでしょう。少なくとも、貴方たちの覚悟が今までとは違う、それだけは伝わってきました」
ソライトの言葉に続き。
黒焦げになりながら、それでもジバコイルはまだ浮上する。
「それならば、尚更全力を持って戦う必要がありそうですね。ジバコイル、ハイドロポンプ!」
ジバコイルがユニットを激しく回転させ、大量の水を放出する。
「コーシャン、サイコバレット!」
対するコーシャンは念力を実体化させて無数の念弾を作り出し、一斉に射撃する。
水流と念弾がぶつかり合うが、
(ジバコイルの火力が、落ちている……?)
ハイドロポンプの威力が、互角になるまで落ちている。
耐え切ったとはいえ、火炎放射の二発は相当重かったのだろう。
ダメージが重なり、ジバコイルが本来の火力を出せなくなっているのだ。
「ジバコイル、雷!」
「ならばコーシャン、火炎放射!」
身体中から電撃を放出し、ジバコイルは槍のような激しい雷撃を放つ。
コーシャンは大きく息を吸い込み、激しく燃え盛る灼熱の業火を吹き出す。
雷撃の槍と灼熱の炎が、正面から激突する。

Re: 第二百三十話 破天 ( No.396 )
日時: 2016/10/01 21:06
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

下っ端の大群を突破し、セイラはただ一人、塔の中を突き進んでいた。
果てしなく長く続く螺旋階段を、セイラは登り続ける。
ずっと上へ上へと進んで行き、どれくらい登ったかわからなくなってきた頃、セイラは遂に頂上へと辿り着いた。
壁のような柵で周りを囲まれてはいるが、頂上はそこまで広くはない。空中都市の塔の一番上なので、風も吹き荒れている。
そして。
風に揺らめく一つの人影が、こちらを見据えて立っていた。
真っ黒な装束に身を包み、顔も同じく真っ黒なフードで覆った男。腕は傷だらけで、フードには大きくネオイビルの紋章が描かれている。
破天隊統率、序列四位——破天将メジスト。
「セイラ、だったな。お前が来ると思ってたぜ」
「ふふ。突き刺さるような貴様の気配を、この塔から感じてな。貴様の相手ができるのは恐らく私だけだ。あと——」
「そろそろ決着をつけたい。違うか?」
喉まで来ていたセイラの次の言葉は、先にメジストに言われた。
「……いいや。その通りだよ」
あっさりと、セイラはそう認めた。
その上で、
「貴様の口からそんな言葉が出てくるとは意外だな。個々の戦績には拘らず、ひたすらに戦いを求める戦闘狂だと思っていたんだが」
「その通りさ。リュードウに復讐を果たすって目的はあったが、基本的に俺様はやりたいことをやりたい時にやる人間だ」
だがよ、とメジストは続け、
「テンモンでリュードウをぶっ倒した時、ネオイビルに入ってまで果たしたかった俺の目的は忽然と無くなっちまった。この一ヶ月、ずっと考えてたよ。あっさりと目的を達成しちまった今、俺は何がしたいんだろうなってな。周りの奴らからは抜け殻みたいだとか言われてたようだが」
らしくもなく、メジストは真剣な口調で言葉を続ける。
「『ブロック』に大敗を与えた。復讐対象のリュードウも倒した。じゃあ、今の俺がやることは何だ。それを考え続けた結果、頭に出てきたのは、お前だった」
「私?」
「ああ。どうせこれで最後なんだ、正直に話すぜ」
メジストはそこで一拍置き、

「俺はお前に影響を受けてる。だからここで今度こそお前を倒して、俺が正しかったことを証明する」

メジストの顔を覆うフードが吹き飛び、猛獣のような鋭い眼が黒い光を放つ。
同時に、その額に竜の顔のような黒い模様が浮かび上がる。
「……私が貴様にどんな影響を与えたのか、正直なところ、私には分からない。だが、今やることは分かった」
そんなメジストの様子を見て、セイラはそっとモンスターボールを取り出す。
「決着をつけよう、破天将。今、ここでだ」
「いいぜ。完膚無きまでに叩きのめす。覚悟はいいな」
両者が、ポケモンを繰り出す。
「ひねり潰せ、リーフィア!」
「出て来い、シルドール!」
メジストのポケモンは、新緑ポケモンのリーフィア。すらりとした体型の四足歩行のポケモンで、体の所々に葉のような植物的な特徴が見られる。
対するセイラのポケモンは、両手に金色の盾を持ち、背中も長い髪のような巨大な盾で覆った白い人型の人形のようなポケモン。ドールポケモンのシルドール。
「耐久に厚いシルドールか。だが関係ねえ、全て蹴散らす! リーフィア、剣の舞!」
手始めにリーフィアは激しい戦の舞によって攻撃力を飛躍的に上昇させる。
「リーフブレード!」
そしてすぐさまリーフィアは前足に小さく生えた葉を大きな刃のように伸ばし、一気にシルドールとの距離を詰め、淡く緑色に光るその刃を振り抜いてシルドールを切り裂く。
「シルドール、毒々!」
対するシルドールは怯まなかった。
両手の盾で刃を受けきり、その瞬間に見るからに毒々しい液体を放ち、リーフィアに猛毒を浴びせる。
「っ、やっぱ硬えな。おまけに毒々と来たか。少しずつ体力を削り取る考えだろうが、そうはいかねえ! リーフィア、剣の舞!」
刃の効き目が薄いと見ると、再びリーフィアは戦の舞によって攻撃力をさらに高めていく。
「シザークロス!」
リーフィアの両前足の葉が伸び、リーフィアが地を蹴って飛び出す。
鋏のように二つの刃を交差させ、シルドールを切り裂く。
盾で受け止めるシルドールだが、その顔が痛みで僅かに歪む。
「ようやく効いたか。リーフィア、ポイズンリーフ!」
リーフィアが毒を含んだ紫の無数の葉の刃を飛ばす。
飛来する無数の毒の葉を、シルドールはまたも両手の盾で受け止める。
「シルドールは致命的に遅い。だから相手からの攻撃は躱せず、盾で防御するしかねえ。だが、相手は剣の舞をひたすらに積んだリーフィア。さあ、どこまで耐えられるかねえ? リーフィア、リーフブレード!」
口元を吊り上げてメジストが笑い、リーフィアは淡く光る葉の刃を振るい、立て続けにシルドールに斬撃を与えていく。
しかし、
「ふふ、それはどうかな。シルドール、自己再生!」
シルドールの体が白い光に包まれる。
リーフィアの連続攻撃によって受けた傷が、みるみるうちに癒えていく。
「……チッ、自己再生か! 厄介な回復技……! リーフィア、剣の舞!」
それを見たメジストが小さく舌打ちする。
リーフィアはさらに戦の舞を舞い、遂に攻撃力は最大まで上昇した。
「斬り裂け! リーフィア、シザークロス!」
リーフィアの両前足の葉が、リーフィアの全長よりも大きく伸びる。
一瞬でシルドールとの距離を詰め、巨大な刃を交差させて振り抜き、シルドールを切り裂いた。
「攻撃を止めるな、畳み掛けろ! リーフィア、リーフブレード!」
前足の刃が、淡い緑の光を帯びる。
シルドールの周囲を飛び回りながら、リーフィアは連続でシルドールを切り裂いていく。
いくら耐久の高いシルドールと言えど、この連続攻撃は痛いはず。
「シザークロス!」
リーフィアがシルドールの目の前に立ち、前足の刃を交差させる。
そのまま巨大な二対の刃で、シルドールを両断する。
しかし、
「シルドール、サイコバーン!」
その直前。
リーフィアの連続攻撃が一瞬止まった、その瞬間を狙い、シルドールが念力の爆発を起こして衝撃波を飛ばし、リーフィアを吹き飛ばした。
「ふふ、危なかったよ。気づいていたかどうか知らないが、シルドールに念力を溜め込ませてひたすらタイミングを待っていた。最後の一撃を放ってくる、その瞬間をな。シルドール、自己再生だ」
リーフィアを吹き飛ばし、シルドールは傷を癒して体力を再び回復する。
先ほどまでリーフィアが猛攻を仕掛けていたはずなのに、体力の消耗はリーフィアの方が激しい。
なぜなら、
「さあ、毒のダメージが少しずつ大きくなっているだろう。シルドールには回復技があるが、そのリーフィアはいつまで持つかな」
普通の毒と違い、猛毒は時間を重ねるに連れて少しずつダメージが増えていくからだ。
「だったら少しでもダメージを与えろ! リーフィア、シザークロス!」
「シルドール、サイコバーン!」
リーフィアが前足の葉を伸ばし、シルドールは溜め込んだ念力を爆発させて衝撃波を起こす。
当然攻撃力ではリーフィアのほうが圧倒的に高く、念力の衝撃波は二つの刃に破られる。
しかしその刃は盾に阻まれ、シルドールへ深い傷は負わせられない。
「リーフィア、もう一度だ! 連続でシザークロス!」
先ほどと同じ連続攻撃、しかし、今度は効果抜群のシザークロス。
シルドールの受けるダメージも、先ほどよりも大きい。
しかし、
「……!」
目に見えてリーフィアの攻撃の速度が落ち出した。
毒のダメージがかなり響いているのだろう、そろそろリーフィアの体力も限界のようだ。
「最後に一撃、ぶちかませ! リーフィア、シザークロス!」
前足を交差させ、刃を思い切り振り抜き、渾身の力を込めてシルドールを切り裂く。
強固な防御力を誇るシルドールの体が、遂にぐらりと揺れる。
しかし、その直後。
限界を超えたリーフィアの体が傾き、ゆっくりと崩れ落ちた。

Re: 第二百三十一話 夜天 ( No.397 )
日時: 2016/10/03 10:16
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: MHTXF2/b)

下っ端の大群を突破した後、マゼンタは一番の目印になる城へと突入した。
そのまま上へ進んで行こうとしたマゼンタだが、そこで地下から冷たい気配を感じ、マゼンタは逆に地下へと向かった。
下へと進んでいったマゼンタが辿り着いたのは、薄暗い部屋だった。
そこまで広くなく、装飾も何もない。ただ、灰色の壁と床があるのみ。
そしてその奥には、一人の少女が車椅子に腰掛けていた。
感情を感じさせない冷たい光を湛えた瞳、黒いツインテールの髪。ゴシックなドレスに身を包み、髪留めはネオイビルの紋章の形をしている。
夜天隊統率、序列三位——夜天将ラピス。
「……貴女にだけは、来てほしくなかったのに」
冷たい声で、ラピスは呟く。
かつてはこの突き刺さるようなラピスの言葉に押されていたマゼンタ。しかし、
「あんたの気配、よう感じたわ。まるで氷みたいな冷たさやったで」
もうマゼンタは臆さない。ラピスの放つ気を弾くかのように、一歩進み出る。
「うちはあんたに事実上負けとる。最初の一回も完勝とは言えへん。せやから、今度こそちゃんと勝たせてもらうで。そう、お姉さんとも約束したんやからね」
「……ブレイズに聞かなかったのかしら。命を大切にしたいなら、その話はするなって」
ラピスの口調に、恐ろしい何かが篭る。
そして、
「だとしてもや」
もうマゼンタは引かない。放たれる恐怖も、今のマゼンタには効かない。
「正直、うちはネオイビルなんてけったいな連中のことなんかどうでもよかった。でも、こんなけ踏み込んだら話は別や。お姉さんと約束したからだけやない。うちは、うちの意思で、あんたを助ける」
「……そういうことは、あたしに勝ってから言いなさい」
ラピスの瞳が、紫色の光を放つ。
袖を捲って腕を露出させると、龍の腕のような紫の模様が浮かび上がっている。
そして。
ラピスの右目から、血の涙が溢れる。
「……流石に痛いわね。何回も覚醒してきたけど、目をやられたのは初めてよ。それだけ覚醒率が高いってことかしら」
口ではそう言うが、ラピスの表情はとても痛みを感じているとは思えないほど変化がない。
「あたしを助けるなんて綺麗事を吐くくらいなら、それ相応のバトルは出来るんでしょうね」
目を擦って血を拭い、ラピスは冷たい瞳をマゼンタに向ける。
「勿論やで。ほな、うちも本気で行かせてもらうわ」
衣服の袖から、二人はボールを取り出す。
「プラネム、神秘のひと時を」
「頑張りぃや、バフォット!」
ラピスのポケモンは惑星ポケモンのプラネム。荒廃した惑星のような球体の体に、真っ赤な目を持っている。
対するマゼンタのポケモンは、漆黒の山羊のような体に二本の黒い渦巻き角、そして真紅の一本の赤い角に同じく真っ赤な鋭い爪を持つ、悪魔ポケモンのバフォット。
「それじゃプラネム、スターフリーズ」
プラネムがふわりと浮かび上がり、冷気を発し、巨大な冷気の氷塊を撃ち出す。
「バフォット、怒りの炎!」
対して、バフォットは憤怒の感情の如く荒れ狂う灼熱の炎を吹き出す。
燃え盛る爆炎が巨大な氷塊を溶かし、
「ぶち壊す!」
さらにバフォットは地面を蹴って、上空のプラネムとの距離を一気に詰める。
「プラネム、熱風」
だがプラネムが灼熱の風を起こし、バフォットの渾身の突撃は食い止められ、逆に押し返されてしまう。
「ストーンエッジ」
さらにプラネムの周囲に白い光が迸る。
光は無数の尖った岩を形作り、バフォットへと一斉に撃ち出される。
「バフォット、メタルブラスト!」
押し戻されたバフォットが顔を上げ、強大な鋼エネルギーの砲撃を放つ。
薙ぎ払うように放たれた鋼エネルギーが、無数の岩を纏めて粉砕し、さらにプラネム本体を吹き飛ばす。
「っ、火力で負けている……プラネム、スターフリーズ」
すぐさま体勢を立て直し、プラネムは巨大な星型の氷塊を発射する。
それも一発ではない。冷気を連続で操り、氷塊が次々と飛来する。
「バフォット、怒りの炎!」
対してバフォットは足元へと怒りの如く荒れ狂う爆炎を放ち、炎の壁を作り上げる。
爆炎の壁によって、何とか氷塊は防ぎ切ったが、
「これで終わるわけないでしょ。ストーンエッジよ」
直後、バフォットの体に無数の尖った岩が次々と突き刺さる。
鋼の体を持つバフォットに岩技の効き目は薄いはずだが、それでもダメージは大きい。
「流石は第三位のポケモンやね……バフォット、怒りの炎!」
低く唸ってプラネムを睨むと、バフォットは憤怒の感情の如く荒れ狂う爆炎を放つ。
「プラネム、熱風」
対するプラネムの背後から灼熱の風が吹き荒れる。
燃え盛る爆炎は、灼熱の風によって止められてしまうが、
「今やでバフォット、メタルブラスト!」
吹き荒れる熱風がおさまったその瞬間、バフォットの真紅の角から強大な鋼エネルギーの砲撃が撃ち出される。
鋼の砲撃がプラネムの顔面を捉え、そのまま後方の壁まで大きく吹き飛ばす。
「……ふうん。ならプラネム、黒い霧」
突如。
ただでさえ薄暗い部屋全体が、漆黒の霧に覆われる。
直前にラピスの後方までプラネムが飛んでいったこともあり、マゼンタとバフォットはプラネムの姿を完全に見失ってしまう。
「バフォット、気いつけや。どっから来るか分からへんよ」
全神経を集中させ、部屋全体に気を配る。
しかし、
「無駄よ。プラネム、熱風」
バフォットの頭上の霧が、妖しく赤色に光る。
それがプラネムの瞳だと気付いた次の瞬間、一瞬にして霧が薙ぎ払われ、灼熱の風がプラネムを中心として周囲に吹き荒ぶ。
「ぐぅっ……!」
あまりに激しい風に浴衣の袖で顔を覆うマゼンタ。バフォットも何とか踏ん張るが、少しずつ押されていく。
「プラネム、ストーンエッジ」
さらに、プラネムの周りに無数の尖った岩が浮上する。
バフォットに狙いを定め、一斉に岩を撃ち出すが、
「バフォット、メガホーン!」
その寸前、熱風を何とか耐え切ったバフォットが地を蹴って大きく飛び出す。
放たれる岩を弾き飛ばし、バフォットの渾身の角の一撃がプラネムに直撃、再びプラネムを大きく吹き飛ばした。
「うちのバフォットは優秀な攻撃力と耐久力を兼ね備えとる。効果抜群の攻撃食らってもそんな簡単にはやられへんし、すぐ反撃出来るように鍛えとるんやで」
決して受けたダメージは小さくないが、マゼンタの言葉に続けて、バフォットも太い声で雄叫びを上げる。
そして、
「……だから何? そういう勝ち誇った言葉は、あたしのポケモンを倒した後にしなさいよ」
効果抜群の攻撃を立て続けに受けて、それでもなおプラネムは浮上する。
しかし、一定だったプラネムの回転の速度にズレが生じている。恐らく体力をだいぶ消耗しているのだろう。
「せやね。ほなこれで決めるで。バフォット、ぶち壊す!」
「氷の星に沈めてやるわ。プラネム、スターフリーズ」
高く上昇し、プラネムは冷気を溜め込み、星型の巨大な氷塊を連続で放つ。
対するバフォットは思い切り地面を蹴って高く跳躍し、上空のプラネムへと渾身の突撃を繰り出す。
血塗られたような真紅の角を携えた悪魔が、氷の星の中を突き進む。

Re: 第二百三十二話 輝天 ( No.398 )
日時: 2016/10/04 16:02
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

真っ先に下っ端の大群を突き抜けたリョーマは、後から付いてきたテレジアと共に、いち早く城へと突入した。
城を登り、直感で分かれ道も迷わず突き進み、最終的にリョーマが辿り着いたのはホールのような大広間。
それ以上先に進む通路はなく、どうやらここは最深部ではないらしい。
しかし、リョーマにとって、この進路は決して間違いではなかった。
なぜなら。

リョーマにとっての宿敵が待ち受けていたからだ。

「やはり貴様が来たか、『ブロック』副統率」
無造作に跳ねた橙色の髪、頑強な体を軍服と赤いマントに包んだ男。軍服の胸元には、ネオイビルの紋章。
輝天隊統率、序列二位——輝天将トパズ。
「貴様が来ると思っていたぞ。我を倒せる可能性があるとすれば、貴様くらいだろうからな。それに、貴様は一度我に敗北しているしな」
一度一ヶ月前に相見えた宿敵。
軍神トパズを前にして、リョーマは進み出る。
「テレジア、下がってろ」
テレジアの方を振り返らず、リョーマはただそう告げる。
「こいつは俺の敵だ。俺がこの手でこいつを倒す」
初めて見た、これほどのリョーマの気迫。
「……分かりましたわ。お任せします」
それに押され、テレジアは静かに後ろへと下がる。
「さて、戦いの準備は整ったか」
「ああ」
短く言葉を交わした後、お互いにボールを取り出すが、
「俺は、許せねえ」
唐突に、リョーマが口を開いた。
「絶対に許せねえ。今度こそ、俺がお前を倒す」
それを聞いたトパズは何も言わなかった。
表情を変えることなく、ポケモンを繰り出す。
「撃墜せよ、ガルラーダ!」
「飛翔せよ、トロピウス!」
トパズのポケモンはガルダポケモンのガルラーダ。神鳥に似た姿をし、背中には卵の殻のようなものが付いている。
対するリョーマのポケモンはヤシの木の葉に似た翼を持ち、顎の下にフルーツを生やした首の長い恐竜のようなポケモン、フルーツポケモンのトロピウス。
「テンモン戦で言ったはずなのだがな。我がガルラーダは空中戦では無類の強さを誇ると」
「だからこそのトロピウスだよ」
トパズの言葉に対して、すぐさまリョーマはそう返した。
「空中戦最強の軍神の飛行ポケモンを、空中戦でぶっ潰す。こちとらこの一ヶ月、お前を倒すためにずっと鍛えてきたんだ。テンモンで言われたことをそのまま返すぜ。その翼をへし折り、叩き落としてくれる! 始めるぜ、トロピウス、リーフストーム!」
自信を鼓舞するようにトロピウスが大きく咆哮し、巨大なヤシの葉の翼を広げて飛翔する。
激しく翼を羽ばたかせて暴風を起こし、その風に尖った葉の刃を乗せ、葉の竜巻をガルラーダへと叩きつける。
「ガルラーダ、ブレイブバード!」
だがガルラーダは翼を折りたたむと全身に燃えるようなオーラを纏わせ、逃げも隠れもせず竜巻の中に突っ込んでいく。
竜巻を貫き、疾風の弾丸のようなガルラーダの一撃がトロピウスを捉えた。
だが、
「効かねえ! トロピウス、ドラゴンダイブ!」
ガルラーダの突撃を受けたトロピウスは怯まなかった。
龍の力と殺気を全て首の一点に纏わせ、突撃してきたガルラーダの背中、つまり弱点の殻へと硬い首を叩きつける。
完璧に決まったカウンターの一撃。凄まじい勢いで、ガルラーダが床へと叩きつけられた。
トパズの表情が、僅かに変化する。
「トロピウス、ハイドロポンプ!」
地面に激突したガルラーダに向けて、トロピウスは上空から滝のような水流を落とす。
「ガルラーダ、もう一度ブレイブバード!」
倒れたままのガルラーダの体が、激しいオーラに包まれる。
翼を地面に叩きつけて飛翔し、ガルラーダは垂直に上昇、水流の中を突き進み、そのまま今度こそトロピウスを貫いた。
「トロピウス! っ、やっぱ痛えな……!」
空中でぐらりと巨体が傾くが、すぐにトロピウスは体勢を立て直す。
「ガルラーダ、襲撃!」
構えを取ったガルラーダが、一瞬でトロピウスとの距離を詰める。
トロピウスの背後へと回りこみ、翼を叩きつける。
「させねえ! ハリケーンだ!」
しかしその直前、トロピウスを中心に嵐のような暴風が吹き荒れ、ガルラーダは逆に風に巻き込まれて吹き飛ばされる。
「……風だけでガルラーダの体勢を崩すか。我のガルラーダはいかなる嵐の中でも通常通り飛べる飛行能力を備えている。なるほど、確かに一ヶ月前とは違うようだな」
それならば、とトパズは続け、
「ガルラーダ、一旦離れろ! 熱風だ!」
大きく翼を羽ばたかせ、ガルラーダはトロピウスとの距離を取る。
さらにそこから激しく羽ばたき、灼熱の風を巻き起こす。
「風の扱いはこっちが上だ! トロピウス、もう一度ハリケーン!」
トロピウスも再び嵐のような暴風を起こす。
風の塊が激突し、部屋全体に爆風のような激しい風が吹き荒ぶ。
その風を直に受けても、二人と二匹は顔色一つ変えない。
「ガルラーダ、ブレイブバード!」
「トロピウス、ドラゴンダイブ!」
ガルラーダは燃えるようなオーラを、トロピウスは龍の力と凄まじい殺気を身に纏い、一直線に突撃する。
互いの渾身の一撃が正面から激突。双方一歩も引かずに、激しい競り合いが続く。
しかし、
「ガルラーダ、ダイヤブラスト!」
突如、ガルラーダの周囲の空気が爆発した。青白く煌めく爆風が迸り、トロピウスが吹き飛ばされる。
「貫け。ガルラーダ、もう一度ブレイブバード!」
翼を折りたたみ、ガルラーダがその身に激しく燃え上がるオーラを纏う。
吹き飛ぶトロピウスを見据え、渾身の突撃を繰り出す。
だが、
「舐めんな! トロピウス、リーフストーム!」
トロピウスが咆哮し、思い切り翼を羽ばたかせる。
風が竜巻を形作り、尖った無数の葉の刃がその中を舞う。
尖った葉の竜巻が、背中の殻を狙い、ガルラーダの上から叩きつけられる。
「俺のトロピウスのこの馬力、甘く見てくれんなよ! トロピウス、ハリケーン!」
動きの止まったガルラーダが、嵐のような暴風に巻き込まれた。
そのまま風によって吹き飛ばされ、壁へと叩きつけられる。
「ドラゴンダイブ!」
そのガルラーダに対し、龍の力と凄まじい殺気を纏ったトロピウスが一直線に突っ込む。
「それならばダイヤブラスト!」
トロピウスの突撃が命中する直前、壁に叩きつけられたガルラーダの周囲が爆発し、青白く煌めく爆風が巻き起こる。
ダメージこそないものの、トロピウスが纏う龍の力は爆風によって纏めて削がれてしまい、
「ガルラーダ、襲撃!」
壁から抜け出したガルラーダがトロピウスの背後に回り込み、翼を横薙ぎに振るい、トロピウスを叩き飛ばす。
「畳み掛けろ。ガルラーダ、熱風!」
「させるかよ! トロピウス、ハイドロポンプ!」
さらにガルラーダが羽ばたき、灼熱の風を吹かせる。
対してトロピウスは体勢を崩しながらも大量の水を噴射し、熱風を防ぎ切る。
「まだ終わらんぞ。ガルラーダ、ブレイブバード!」
翼を折り畳んだガルラーダの体が燃えるオーラに包まれ、超高速の突撃が繰り出される。
「こいつぁ躱せねえ……トロピウス! 一発耐え切れ!」
リョーマが叫んだ、その直後。
ガルラーダの渾身の突撃がトロピウスを捉え、その巨体を壁まで吹き飛ばし、叩きつけた。

Re: 第二百三十三話 聖天 ( No.399 )
日時: 2016/10/05 08:28
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

マゼンタが城に突入した後、そこから少し遅れて、レオも城の中へやって来た。
レオはそのまま城の中を上へと進んでいく。
奇しくもリョーマとは別方向へと進み、レオはただひたすら上を目指し、途中で敵とは一切遭遇せず、城の最上階へと辿り着いた。
そこには、如何にも重厚そうな扉。間違いなく、ここが最深部なのだろう。
そして、この奥にマターがいると決定付けるもう一つの理由。
それは、
「また貴方なのですね。私が相見えることになるのは」
この女の存在だ。
腰くらいまで伸びた長く美しい髪。多様な色の宝石が填め込まれた派手なドレスを着て、両耳にも宝石のピアス、首に掛けられているネックレスも虹色の宝石。そしてそのドレスの中央、腹部に、ネオイビルの紋章が描かれている。
聖天隊統率、その実力は未だ未知数——聖天将オパール。
「あんたがここにいるってことは、やっぱり、この奥の部屋にマターがいるのか」
「ええ。そして私は、我らが王を守護する者。これより先に進むには、私を倒す必要があります」
全てを滑らかに語る聖天将オパール。この女には、嘘という概念が存在しないのだろう。
しかしそれよりも問題なのはこの女の実力だ。
覚醒を見せていないどころか、そもそもオパールと戦ったことがあるのは、今までレオただ一人。
「確か、覚醒すると……セドニーが七位、ガーネットが六位、ソライトが五位。メジストが四位、ラピスが三位、トパズが二位。ということは」
目の前に立つ、聖天将オパール。この女が、序列一位ということになる。
「やっぱり、覚醒してもあんたが天将最強なのか」
「当然のことです。組織にとって一番大切な者は、組織の主。その主を守護するのは、一番強い者の役目」
流れるように滑らかな口調でオパールは話す。
「さて、勇気ある者よ。貴方はこの先に進み、我らが主を止めることを望んでいるのですね」
「ああ、そうだよ。それを邪魔するなら、お前も倒す。僕はマターを絶対に許さない」
「分かりました。それならば、今度こそ、私も全力を持って、ここで貴方を抹殺させていただきます」
オパールの口調が、明らかに変化したのをレオは感じ取った。
「それでは、お見せしましょう。聖天を司る者、オパールの覚醒を。私の覚醒を見せるのは、組織外の者では貴方が初めてです。光栄に思いなさい」
直後。
オパールの細い目がカッと大きく見開かれ、同時に虹色の光が瞳から溢れ出す。
さらに。

オパールの背中から、虹色に輝く巨大な光の翼が飛び出した。

長い眠りから目覚めた龍が飛び立つように、光の翼がゆっくりと羽ばたく。
光の大きさも、眩しさも、今まで見てきたどの天将の覚醒よりも大きい。
「これ、は……なんだ……!?」
思わず、レオは後ずさりしていた。
恐怖を覚えたのは事実だ。しかし、オパールの威圧感とか、オーラとか、そういったものに対して、ではない。
「聖天の名を持つ私に与えられた刻印は、龍の翼です」
人間の形をしているはずなのに、自分と同じ人間という生き物に見えないのだ。
人間の姿をした生物が人間の言葉を話す、たったそれだけの事実に、これほどの違和感を感じるのは初めてだった。
「これが私、聖天将オパールの覚醒です。他の天将の方々と違って、私の覚醒率は常に一定。覚醒すれば、必ず100%の覚醒率となります」
瞬きもせずに爛々と虹色に光る瞳をレオに向け、オパールは静かにそう告げる。
「どうしました? ここまで来て、怖気付いたという訳ではあり mg せんよね?」
唐突に。
オパールの言葉が、ブレた。
「……?」
怪訝な表情になるレオだが、オパールは特に気にしていない様子で、
「あぁ、失 raq しました。私が扱う龍の力は、他の天将の方々と比べ tkl も非常に強大なものでして、このような影響が出てし muz のですよ」
ブレたという言葉が適切なのか分からないが、ノイズが走ったようにオパールの声が所々おかしな音になるのだ。
しかし、
「……何かもう意味不明すぎてよく分からないけど、やることは一つ。戦って勝てばいいんだろ。そっちの方が、よっぽど分かりやすいぜ」
得体の知れない恐怖を振り払い、レオはボールを手にして再び一歩進み出る。
「それ dh は始めましょう。勝負は四対四、今度 k そ、全力で勝負いたします」
「上等だぜ。こっちもあんたにさえ勝てりゃ、もう他の天将なんて怖くねえ!」
そして、二人はそれぞれ、初手のポケモンを繰り出す。
「行きなさい、サンダース」
「頼んだぜ、ディザソル!」
オパールのポケモンは雷ポケモンのサンダース。鋭い針のような、帯電した黄色の体毛を持つ。
対するレオのポケモンは白い体に黒の体毛を持ち、額に死神の鎌のような二対の刃を持つ災害ポケモンのディザソル。
「なるほど、サンダースの動きについてこ rle るディザソルで来ましたか。ですがそう簡 tjn に勝てるとは思わないことです。それではサンダース、ミサイル針」
サンダースの全身の体毛が逆立ち、弾幕のように無数の尖った針が撃ち出される。
「なんて量だ……! だけど、ディザソル、火炎放射!」
前回戦った時よりも針の数が倍以上に膨れ上がっているが、まだまだ想定の範囲内。
大きく息を吸い込み、ディザソルは振り抜くように灼熱の業火を吹き出し、無数の針を纏めて薙ぎ払う。
「それでは、次は磁力線です」
サンダースの周囲に強い電気が発生し、磁場が歪み、サンダースを中心として部屋全体に磁力の波が吹き荒れ、
「十万ボルト」
磁力の波を受けて動きが止まったディザソルへ、サンダースが高電圧の強力な電撃を放つ。
「甘い! ディザソル、神速!」
電撃が眼前に迫った刹那、ディザソルが消えた。
次の瞬間にはディザソルはサンダースのすぐ近くまで距離を詰めており、そのままサンダースを跳ね飛ばす。
しかし、
「サンダース、ミサイル針」
宙を舞うサンダースの体毛が一斉に逆立ち、膨大な量のミサイルのような針が発射される。
返す刀で放たれた無数の針が、ディザソルへと突き刺さる。
「シャドーボールです」
さらにサンダースが狙いを定めて漆黒の影の弾を撃ち出す。
「っ、ディザソル、サイコカッター!」
対するディザソルは額の鎌に念力を纏わせ、その鎌を振り抜いて影の弾を両断する。
「さあ、行 ckm す。サンダース、ミサイル針」
サンダースの動きが一瞬止まる。
次の瞬間、風を切る音と共にサンダースの姿が消えた。
「来たか! ディザソル、引きつけてから躱せ!」
オパールのサンダースの得意技。
相手の周囲を超高速で駆け回り、全方位から弾幕のように無数の針を放つ。
だがディザソルは針をギリギリまで引き付け、直撃の寸前に光速で真上に跳躍し、弾幕を回避する。
「悪いけど、一度見た技は僕のディザソルには——」
得意げにそう言ったところで、レオは気付く。
空気を切る音だけが響き、サンダースの姿が見えない。
つまり。
「……まずった! ディザソル、第二波が来る!」
気づいた時には既に遅い。
弾幕のような無数の針が再び空中のディザソルへと一斉に飛来し、今度こそディザソルに突き刺さった。
「くっ……ディザソル、大丈夫か?」
針の弾幕を受けて床に叩き落とされるも、すぐにディザソルは起き上がり、レオの言葉に頷く。
「やるな……流石は第一位、前回と同じようにはいかないってか」
そう言いながら、レオは覚醒したオパールを見据える。
背中から虹色の翼を伸ばし、光り輝く瞳を瞬き一つさせないその姿は、無慈悲なる天使のようだった——


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