コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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臆病な人たちの幸福論【第五部完結】
日時: 2016/03/05 21:35
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: AO7OXeJ5)

臆病な幽霊少女は、思い出す。
人を疑いながらも、好きだったわたしを。

泣き虫な文学少年は、後悔する。
せめて、言葉にして伝えたかった。

怠惰な女性司書は、紛らわす。
子供に甘えるなんて、どうなのよ。

憂鬱な平凡少女は、自身を罵る。
どうしようもないなあ、あたし。

——愛。
それは彼らに共通したもの。
カタチは違うけど、彼らを繋ぐ。
繋がりの中で彼らは……何を見つけるのだろうか?





 黒雪様の【あなたの小説の宣伝文、作ります!】に頼み込んで、作ってもらった素敵な紹介文です!! ありがとうございました、黒雪様!!





お知らせ!!>>485
ご報告!!>>198
5000いけました!!!>>390

【皆おいで! オリキャラ投稿だよ!! ついでにアンケートもだよ!】>>165(本気と書いてマジと読む。どうかよろしくお願いします!)



 はい、全然完結させてない八重です。
 …今回は、ちゃんと完結させるつもりでございます。…多分。
 約束守れない人って、情けない…。



 注意
・低クオリティ。何かありきたり。
・幽霊が出てきます。
・最初はとんでもなく暗いです。
・中傷など、常識やルールを守れない方はすぐにお帰りくだされ。
・恋物語です。でも、糖分は低めです。
・瀬戸君の佐賀弁が似非っぽい。
・宮沢賢治のお話がちょろちょろでます。
・批評大好物なので、バッチコイ! あ、でもあまり過激なモノは…(汗
・宣伝は常軌に外さなければおkです。ただ、宣伝だけはおやめください。お友達申請? カモンです!!w
・誤字脱字あったらすぐにコメを!!

 では、よろしくお願いします!!


この小説に欠かせない大切な方々の名前一覧!>>430



目次

登場人物>>54(ネタバレあり。本作読むのが面倒な人はここを読んで置くのがオススメ。大体の話の筋はわかるから)

〜第一部〜
臆病な幽霊少女…>>01(挿絵>>231>>02>>03>>08(挿絵>>431)(長いこと関わらなかった幽霊少女が恋慕を抱く話)
泣き虫な文学少年…>>14>>15>>16(挿絵>>549>>19(一人を望んだ文学少年が『独り』になることに恐怖を抱く話)
怠惰な女性司書…>>30>>31>>32>>33(怠惰に過ごす女性司書が一人の少年を見て我が身を振り返る話)
憂鬱な平凡少女……>>39>>40>>41>>42(日常を憂鬱に過ごしている平凡少女が弱さを知る話)

【自戒予告〜字が違うよ次回予告だよ〜】>>50(ふざけすぎた次回予告です)



〜第二部〜
間章または序章>>55>>56(幽霊少女と、『声』の話)
第一章 春を迎えた文学青年>>60>>61>>62>>63(文学青年と平凡少女が、非日常に巻き込まれる話)
第二章 困惑した文学青年>>64>>67>>68>>69(幽霊少女の真実と奇跡が、垣間見えた話)
第三章 前進する文学青年>>73>>74>>75>>76(幽霊少女の周りの環境が、だんだんと変わっていく話)

間章 >>87(閉じこもってしまった幽霊少女が、やがて狂っていく話)

第四章 平凡少女の行動>>95>>96>>97>>98(諦めかけた文学青年と、行動を起こした平凡少女の話)
第五章 揺らぐ文学青年>>105>>106>>107>>108(平凡少女と、文学青年と、臆病少女は)
第六章 踏み出す文学青年>>118>>119>>120>>121(イレギュラーが入り込む話)

間章 >>128>>129(混乱する臆病少女の前に、文学青年は)

第七章 どうすればいいのか、判らないことだらけだけど>>132>>133>>134>>135>>136(泣き虫な青年の答えに、臆病少女は)
最終章 やっと、春を迎えました>>141>>142>>143>>144(さあさあ、春と修羅が始まります)

後書き>>149(とりあえず読んで欲しい)

【次回予告〜今度はまじめにやってみた〜】>>157(第三部の次回予告)




〜第三部〜
「モテたいんだ」「「「……はあ?」」」>>161>>162>>163>>164(とある男子高校生の会話)
「えっと、『おぶなが』と『たかだ神殿』が『長しその戦い』で戦って……?」「『織田信長』と『武田信玄』が『長篠の戦い』で戦った、だ」>>175>>176>>177>>178>>179(とあるリア充の話)
「あ、ダメナコ先生じゃなかー!」「ダメナコじゃない。私の名前は光田芽衣子よ」>>187>>188>>191>>192 (とある元引きこもりと不登校少女の話)

間章>>196>>197(とある不登校少女は逃走する)

「何時もより早く登校したら、校門の前にパトカーがあった」「誰に話しているの? 三也沢君」>>214>>215>>216>>217(とある文学青年が、踏み入る)
「——そこに居るのは、誰ですか?」「だあれ、君……?」>>223>>224>>225>>226(不登校少女と、やさしい想い出と苦い想い出と)
「……玲ちゃんの家は、一度離婚してるったい」>>239>>240>>241>>242(第三者が語る、不登校少女の姿)
「どうして、ないてるの?」>>252>>253>>254>>255(無表情少年と不登校少女)

間章>>258>>259(不登校少女と、不登校少女の父)

「何でこんなあつー日に走らんといけんと!?」「全くだ!」>>265>>266>>269>>270(少年少女の試行錯誤)
「い、行かせて平気なんですか!?」「平気よ」>>271>>272>>273>>274(怠惰な司書と平凡少女と臆病少女の他人事と共感と)
『この世界は、嫌なことだらけだ。悲しい事だらけだ。でもだからこそ、お前なら、小さな幸せを見つけることが、出来るはずだろう?』>>281>>282>>283>>286(結局のところは)
「……で、結局どうなったんだ?」>>287>>288>>289>>290(大団円を迎えたよ)
「きっと、何とかなるよ」>>291>>292>>293>>294(第三者だった、文学青年と臆病少女の考察)



小話>>366(第三部の後日談)

後書き>>305(とりあえず読んで欲しい)
【自戒予告〜反省なんて言葉は無いんだよ〜】>>311(シリアスばっかだったから〜…)


〜第四部〜
蛍火の川、銀河に向かって【前編】>>312>>313>>314>>315
蛍火の川、銀河に向かって【中編】>>316>>317>>318>>319
蛍火の川、銀河に向かって【後編】>>323>>324>>325>>326>>327

【あの日を誇れるように ぱーとわん】>>335>>336>>337>>338
【あの日を誇れるように ぱーとつー】>>339>>340>>341>>342
【あの日を誇れるように ぱーとすりー】>>353>>354>>355>>356
【あの日を誇れるように ぱーとふぉー】>>358>>359>>360>>361>>362

「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその一」>>367>>368>>369>>370
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその二」>>384>>385>>386>>387
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその三」>>393>>394>>395>>396
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその四」>>402>>403>>404>>405
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその五」>>407>>408>>409>>410>>411

『思い出と後悔のこの町は、また今日も』>>415>>416>>417>>418>>419


【低気圧&高気圧注意報】(方言監修:ルゥ様)>>510>>513>>514>>515>>516(Battle of youth)

〜第五部〜

序章>>426(口裂け女と労働青年の邂逅)
第一章 健全なる高校男子の昼食事情>>433>>434>>435>>436(口裂け女の噂と高校生の話)
第二章 労働少年の秘事>>440>>441>>442>>443(労働少年の家と隣の口裂け女)
記憶喪失の口裂け女の話 一>>447>>448>>449
記憶喪失の口裂け女の話 二>>454>>455>>456
第三章 文学少女と文学青年>>460>>461>>466>>469(女子トイレと橘と後輩と)
口裂け女と労働青年の日々 一>>471>>474>>479>>480
第四章 それは全てを変えるような>>483>>484>>486>>493(ぐらつく足元)
口裂け少女のたまに見る夢>>496>>497


【第五部後半 予告編】>>503(こういうの結構楽しく書ける)


口裂け女の終焉の始まり>>521>>523>>524
口裂け女 ムカシバナシ 1>>525>>526
口裂け女 ムカシバナシ 2>>527>>528>>529

第五章 瀬戸少年の意外な面について>>530>>531>>532>>536(キレる瀬戸君、笑うフウちゃん)


口裂け女のひとつの過ち>>545>>546>>547>>548
口裂け女のひとつの過ち その2>>551>>552>>553>>554


第六章 少しずつ忍び寄る>>559>>560>>561>>562(怪異と妖怪と幽霊と)
第七章 元幽霊少女と現怪異少女>>563>>564>>565>>566(諷子と千代)
口裂け女ノ邯鄲ノ夢>>567>>568>>569
第八章 間違っていること、正しいこと>>570>>571>>572
口裂け女の初めてのデート>>573>>574>>577>>578>>581
第九章 それは何も変わらず>>584>>585>>586>>591
よだかの星になった少女>>592>>593>>594

終章 泣き虫な文学少年と、憂鬱な平凡少女、臆病な元幽霊少女の>>598>>594>>604



番外編・企画・もらい物>>470(これまた多くなったので引っ越し!)


履歴>>332(多すぎてスクロールするのがめんどくなったので引越し!)
その2>>539(その2まで出来ちゃった……本当にありがとうございます!!)

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Re: 臆病な幽霊少女【第二部の次回予告!】 ( No.54 )
日時: 2013/12/10 20:43
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: MuUNITQw)
参照: 今さらですが。

登場人物紹介です。ネタバレ注意。



宮川諷子(ミヤガワフウコ)

『臆病な幽霊少女』の語り部。本作のヒロイン。

十六歳……プラス半世紀以上。つまりババ(ry 通称フウ。
結核で亡くなったと思ったが、兄の嫁ぎ先である神社の桜の木下で冬眠して生きていた。埋められて半世紀以上、自分の家が建っていた場所に高校が建てられ、生霊として高校に住んでいた。本人には生きている自覚がなく、半世紀以上人の目に触れられず、しかし何故か七不思議として語られていて、本人は不満げだったが、中々いい時間を過ごす。だが、同時に孤独も募っていた。
自殺しようとする健治を止めたことで、健治だけには姿を捉えられ、触ることも出来るようになる。しかし、それと同時に生きている頃のことを思い出してしまい、さまざまな想いがバクハツしてしまい、健治の前から消える。
その後一年ほど経って、諷子の身体が掘り出され、冬眠生活からこん睡状態へ変わる。こん睡状態の場合、彼女の意識は夢想の世界にあるものの、肉体とリンクしており、会話も聞こえていた。その時、自身が生きていることを知る。
人格が歪んでしまい、生きることを拒絶するが、健治の必死の想いが通じ、こん睡状態から抜け出した。

その時足が腐っていて切断することになるが、本人は気にしていない。
光田の所に養子入りし、かねてから憧れた学校生活を送ることとなる。

大和なでしこのようだが、口は達者。

実の兄は小説家で、本人も宮沢作品を好む読書家。

外見は腰まである黒い髪に赤いリボンをつけ、制服を身に纏っている。>>49



三也沢健治(ミヤザワケンジ)

『泣き虫な文学少年』の語り部。全体的に、この作品の主人公。

初登場は高一。現在は高三である。渾名はケンちゃんだが、本人は嫌がっている。

父親は離縁して飛び出し、その父親似ということで、母親に嫌われて育った。人間不信な自分と、生きていることに嫌気が差して自殺を行おうとしたところ、屋上に居合わせていた諷子に止められる。その後、諷子のお陰でじょじょに成長し、明るくなっていったが、ある日諷子の正体が幽霊だと気付いた直後、諷子が姿を消し、また暗い性格に戻ってしまった。だが、諷子の言った事を忘れず、その後死のうとは思わないようになる。
諷子がこん睡状態だと知った後は、初登場の時とは比べ物にならないほど精神面が強くなる。諷子をこん睡状態から覚ましたが、足をなくしてしまったことを悔い、もっと早く助けに行けば良かったと思っている。

ヘタレツンデレだが、恋愛面としては男前かもしれない。鈍感だが。
そしてフラグメーカー。

壊滅的に絵が下手だが、恐らく虐待のことが関わっているかもしれない。けれど、ギャグ面として活躍しそうである。今後。

父親が宮沢作品のファンだった為、このような名前を付けられた。自身も宮沢ファンである。家は旧家で金持ち。


外見は艶がある黒い短髪に、整っている顔立ちで、誰がどう見てもイケメン。特に、瞳が印象的。



光田芽衣子(ミツダメイコ)

『怠惰な女性司書』の語り部。出番はぶっちゃけ主人公並にある美味しい人物。でも第二部では全然出てこなかった。クスン。

年齢は二五を越えてるぜ。ちょ、オバサンって言ったら本の角で殴るわよ。コーヒーもお見舞いするわ。何時もサボってるせいでついたあだ名が「ダメナコ」。諷子は「コーヒー先生」と呼んでいる。

結婚しており、息子も居た。子供は出来難い体質らしく、待望の子供だったが、ある日、一緒に横断歩道を渡っている最中に事故に遭い、息子を亡くす。ショックで引きこもりになりかけていたところ、旦那に司書の仕事を薦められて引きこもりから脱出した。が、まともに仕事なんてせずにコーヒーを飲んでいる。
健治には自身の息子と重ねており、気にかけている。だが、その気遣いが裏目に出てしまい、KYとなってしまうこともしばしば。

上記の理由で、息子の墓参りすら行かなかったが、健治の頑張る姿を見て、何かを思ったらしく、意識を取り戻した諷子を養子に迎える。

まだ息子との死から立ち直ったわけではないが、第三部以降少したくましくなる。

やっぱり宮沢作品が好き。後コーヒー。カフェインがないと頭が働かない。

外見はショートの髪型に、スカートの下に紺色のジャージズボンを履いている。化粧っ気はまるでない。



杉原雪(スギハラユキ)

『怠惰な女性司書』で初登場、『憂鬱な平凡少女』の語り部。もう一人のヒロイン。

初登場は高ニ。現在は高三。クラスの女子や司書には、名前で呼ばれている。

母親が浮気で離縁し、家庭崩壊してしまった青春を送る苦学生。絵が好きで、美術の道を選ぼうとしたが、父親の様子に耐えかねて安く近い高校を選ぶ。その学校では女子と上手くいくよう努力しているが、友人といえるほどの関係ではなかったが、第二部の事件をきっかけに、友好関係を築く事となる。
高一の時、事故に遭いそうになったところを、健治に助けられる。その事件と話してみて優しい人間だと判ったのがきっかけで健治に恋心を抱くが、ある日健治が暗くなり、距離を置く。だが高ニの時、彼の姿を見かけて再び恋心を抱いた。

事件当初は本当に無関係だったが、健治が諷子の為に頑張ろうとする姿に、自身も触発され、諷子の為に桜の絵を描こうとする。それをきっかけに、学校を巻き込んでまでのプロジェクトが始動することとなる。

健治や司書の勧めで、宮沢作品を読むようになる。学力は平均だが思慮深く、健治の独り言から諷子の存在も薄々気付き、諷子の生還後付き合っていると直感している。健治と一緒になりたいのは山々だけど、諷子が良い子で二人が幸せになってほしいと願っている自分も居る。

そして、彼女は健治と異母兄弟だということが判明してしまった。


外見は、茶色の髪をポニーテールにしており、足が細い。諷子はそれを羨んでいる。彼女は諷子の髪を羨んでいる。


瀬戸要(セトカナメ)
「あ、ダメナコ先生じゃなかー!」で初登場。ルゥ様が生み親。
 黒髪、黒い瞳、たれ目。痩せ型で身長は172cmくらい。基本は制服で、私服はフード付きのものが多い。結構寒がり。
 ちょっと似非っぽい佐賀弁を話す青年。五歳の頃事故で両親と死別し、その後施設で育つ。今じゃ明るくてお人よし、悩みがなさそうな明るい性格だが、中二まで不登校だったことが判明。意外と苦学生である。ヘビィな過去を明るくいっちゃうので、あまり知らない人には衝撃を与え、あまりにもな衝撃に聞いた本人も佐賀弁になっちゃうという、「瀬戸ショック」を生み出した張本人。
 スポーツはすげえが頭はバカ。でも観察眼は鋭い。動物が大好きである。

第五部の主人公である。



第二部の重要人物>>427
第三部の重要人物>>487
第四部の重要人物>>509

Re: 臆病な幽霊少女【登場人物更新!】 ( No.55 )
日時: 2012/10/29 20:32
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: FIlfPBYO)

間章、または序章



 わたしは、生きている間、何人ものの人を傷つけました。

 それは、直接傷つけたことも、間接的に傷つけたこともあります。

 わたしの存在のせいで、何人ものの人が傷つきました。


 それから、わたしは死にました。でも、天国にも地獄にもいけませんでした。

 生きている人間のような姿を保っていても、誰にも気づかれることはない。

 寂しかったけれど、幸せでした。

 誰とも関らないからこそ、傷つけることもありませんでした。



 けれど、弱いわたしは、ある日とうとう関ってしまいました。

 その人は、優しい人でした。

 そんな人を、わたしは騙しました。傷つけました。



 わたしはどうして、ここに存在しているのでしょう。

 生きていないのに、生きているようにこの世界に存在する。

 善人じゃないから天国に召されることが出来なかったでしょうけど、ならばわたしは、地獄にでも落ちてしまえばいい。

 地獄にも落ちれないわたしは、どうすればいいのでしょう。



 このまま、消えたい。消えてしまいたい。




 ……そこからわたしは、意識が途切れました。



                 ◆


 あれから、何年経ったでしょう。

 わたしは、暗闇の中に居ました。



 暗い、暗い。

 寒い、寒い。

 けれど、何だか、安心できる闇でした。

 何もない、不思議な空間でした。







「……何をしているの?」


 真っ暗な暗闇の中、声が聞こえました。

 何もないはずなのに、声が聞こえました。


「こんなところで、何をしているの?」


 鈴を転がしたような声とは、まさしくこんな声でしょうか。

 柔らかく、それでいて凛としている声は、とても聞き取りやすい声でした。恐らく、少女の声だと思います。

 けれど、その声は、長い年月を見守ってきたような、威厳ある声でした。


「……判りません」


 わたしは素直に返します。


「どうして、自分がここにいるのか。どうして、死んだくせにこの世に留まっているのか。

 ……どうすれば、消えることが出来るのか、わたしには判らないんです」

「消えたいの?」


 その問いにわたしは、はい、と返しました。


「それなのに、消えないの?」


 また問いがきました。わたしは、はい、はい、と答えました。

 この問答が無意味と感じるわたしは、機械のように頷いていました。


 声は、うーんと唸ったようにして、


「……どうして、消えないのかしらね。貴女は、あの少年に嫌われたくないから、消えたはずなのに」

「……知っているのですか?」


 大して驚きはしませんでした。

 この声の持ち主なら、わたしのすべてのことを知っていてもおかしくないと思ったからです。

「ええ、知っているわ」案の定の台詞が返ってきました。


「あの日、貴女はあの少年の前から消えた。そして、現世から逃げる想いで、この空間にたどり着いた」

「……ごめんなさい」

「どうしたの?」

「わたし、あの後、何が起こったか判らないんです」


 正確には、覚えていない。


「あの日、彼に幽霊だとバレたあの日。

 真っ先にわたしを襲ったのは、『嫌われるかもしれない』という、恐怖でした。

 頭の芯がしびれて、手足の、指の先までしびれて、ワケ判らなくなって。

 意識が遠くなって、ケンちゃんの必死にわたしを呼んでいる声が、うっすらと聞こえて。


 ああわたし、消えるんだな、と思って聞いていました。

 ……気付いたら、この闇の中に居たのです」


 わたしの説明に、ふうん、と声は返しました。


「どうして、嫌われるかもしれないと思ったの?」

「……嘘をついていたから、騙していたから」


 気まずいわたしは、か細い声でいいました。


「ケンちゃんは、わたしを人間だと思って接してくれました。わたしは嬉しかった。けれど、怖かった。……彼にまで、無視されたらどうしようって。そしたらわたし、これから一人で耐え切れるの? って」

「それが、幽霊だということと、嫌われるかもしれないっていうこととは関係ないんじゃ——」

「わたしは、死んでいる人間です!!」



 綺麗な声を、ガサガサになったわたしの声が掻き消しました。



「わたしは、本来ここに居ちゃならない存在なんです!! だから、本当はあの時、求めちゃならなかった!! わたしが求めたいものは、生きているものしか赦されないんです!!」

 今まで閉まっていたものが、あふれ出しました。

 どうして、自分は幽霊だという自覚を忘れてしまっていたのだろう。

 どうして、自分はあの時、彼と話したいと思ってしまったのだろう。


「本当は、関るべきじゃなかったんです! 死者なら死者らしく、傍観しておけば良かった!」


 ……そもそも、止めたのがいけなかったんだ。

 あの時、自殺を止める権利なんて、わたしにはなかった。

 彼の痛みを全く知らないわたしに、止める権利なんてなかった。


「自殺を止めたのも、ただのワガママだったんです!! わたしの、押し付けがましい偽善だったんです!!」



 ……これから、彼は沢山辛い目にあうでしょう。

 悲しい目になるでしょう。寂しい目にあうでしょう。

 あの時まで沢山辛い目にあっている彼を、誰が、どの口で責めることが出来ますか?

Re: 臆病な幽霊少女【登場人物更新!】 ( No.56 )
日時: 2012/10/29 20:36
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: FIlfPBYO)


 何が、『世界は優しい』だ。

 何が、『死に方を選んじゃいけない』だ。

 何が、『生き方は選べる』だ!!



 世界は優しくとも何ともなかった。優しいのは、きっとわたしの周りの世界だけだったんだ。

 死に方を選んじゃいけない、なんて、なんて無神経な言葉だろう。今わたしは、消えたい気分じゃないか。わたしは死者だからもう死ねなくて、生きていたら死を選ぶに決まっている。

 生き方は選べる? ……なら、なら、彼は死にたいほど苦しまなくても良かったんだ!!



「勝手に生きてる人の人生を散々振り回して、挙句の果てに騙していたんですよ!? それだけなら良かった!! それで、責められるならまだマシってもんでした!! 一番嫌だったのはッ……!!」



 嫌われるかもしれない。


 そう思って、保身に走って、逃げた自分が一番嫌だった。





 ……嘘は、罪です。

 罪を犯せば、罰を受けなくてはなりません。

 それから逃げた自分が、一番赦せませんでした。



 沢山赦せなかった自分のことはあったけれど、これは、一番赦せませんでした。




 ……いいえ、そうではないのです。



 ……嫌われたらどうしよう、という恐怖と、

 その後、自分はどうやって過ごしていけばいいのだろうという不安と、

 それを想った時の寂しさが、混じり混じって。





 沢山のことに、後悔した。

 赦せないとか、怖いとか、そんなもの全てに後悔した。



 ……一度だけ、謝りたいと思ったことがありました。

 けれど、謝ったって赦されないでしょう。

 謝罪は、赦してくれるまで続けなければなりません。どれだけの時間が費やされるでしょう。

 その長い間に、またわたしは、人を傷つけてしまうのではないでしょうか。


 ……それは、あまりにも嫌で嫌で。

 臆病なわたしには、それを踏まえて勇気をだすことは出来なくて。

 そんな自分にも、嫌気が差したりして。

 ならいっそのこと、このまま消えてしまおうと思った。

 憎まれるまま、自分を責め続けて消えてしまおうと思った。







「……貴女は、優しい人ね」


 声がいいました。

 わたしを慰めるように、声が、わたしを抱きしめてくれました。


 何処がでしょう。

 こんな間抜けで醜い幽霊の、何処が優しいのでしょう。


「……知っているかしら?」

「何をですか?」


 わたしが聞くと、声は更にわたしを抱きしめました。


「幽霊っていうのはね、時が止まっているの。

 だから、死後の後は、生前の時に悩んでいたことしか悩めないの。生前のまま、時が止まっているから。

 でもね、貴女は違う。時が、進んでいるの」


 声が、何をいっているか判りません。

 何がいいたいのでしょう。この声は、何を伝えようとしているのでしょう。

 わたしの心を読んだように、声はいいました。

「……ああ、ごめんなさいね。わたし、仄めかすのは得意だけど、直球でいうのは立場上ダメなのよ」


 そうですか、とわたしは呟く。


「でもね、これだけはいえるわ」


 声は、いいました。



「貴女は、そこまで責めなくていいの。そんなに、苦しまなくていいの。だからね、もっと前を向きなさい。もっと、周りを見なさい」


 ……何ででしょう。この声に抱きしめられた途端、激しい後悔が、穏やかになったんです。

 真摯に満ちたこの声を受け止めることが出来て、わたしははい、と答えることが出来ました。


「……時間が止まらないならね、未来は進むの。悪いほうにじゃなくて、きっと良いほうに進むの。

 私の知人もね、ああ今はもう亡くなったのだけど……彼女もそう信じて、ひたすら頑張って、誰に信じてもらえなくても、例え殺されそうになっても、自分の道を信じて、沢山の人を救ったわ。

 そして、自分のことを信じてくれなかった人たちにさえ、信じた。そうすることによって、彼女は沢山の味方をつけてきた。

 だから、貴女も信じなさい。世界は優しいのだと想った自分を信じなさい。生き方は選べると、証明して御覧なさい」



 はい、はい、と、よく判らないままに、でも素直に頷きました。


「……それじゃあ、後で迎えに行くわ。その時まで、ちゃんと気持ちを切り替えておきなさい」


 そういって、声がわたしの身体から離れました。


「……あ、あの」

「なあに?」

「……あなたの、名前は?」


 そういえば、名前聞かなかった。


 そう聞くと、暗闇で見えもしないのに、わたしには少女が笑う姿がみえた。




「佐保姫。佐保姫っていうの」






           やがて、春は訪れた


(そして物語は、一つの終わりを迎え、)
(新たな物語が、始まった)

Re: 臆病な幽霊少女【第二部スタート!!】 ( No.57 )
日時: 2012/10/30 21:35
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: FIlfPBYO)


『参照五〇〇突破記念 【もしも】』



 何時もの部屋で、フウがこんなことを聞いてきた。



「ねえ、ケンちゃん」

「ケンちゃんいうな。どうした?」



 恒例のやりとりを(無駄だと思いつつも)行い、俺は尋ねる。

 フウは、珍しく本を読んだまま、こういった。


「もしもですよ、明後日地球が滅亡したら、明日、何をします?」


 何処からか、聴いたことのない鳥の声が、聞こえたような気がした。


                  ◆


「……また、随分突拍子な質問だな」


 本を降ろした俺は、フウの方へ向いた。

 何時もは逆だ。フウが俺の方を向いて、俺が本を読んでいる。


「その本は、地球滅亡について書いてあるのか?」

「いいえ」



 フウは首を振った。


「何となく、思っただけです」

「そうですか」

「で、だとしたらどうしますか?」


 ペラ、とページをめくって聞くフウ。

 ……何だか、今日は可笑しい。

 何時もだったら、表情をコロコロと変える癖に、今日は無表情。ってか、声もいつもより静かだ。

 何かあったんだろうか? 聞いてみようと思ったが、やめた。

 多分、コイツは、この質問に答えた後じゃなきゃ、話さないだろうから。


「……俺だったら」


 背もたれに重心をかける。集中しやすいように、目を閉じた。

 もしも俺が、明後日地球が滅びると知って、明日何をしようと思うか……。


 ……多分、そのまま一日を過ごすだろうなあ、と思った。

 あの日、フウに自殺を止められたが、やっぱり心の何処かで自殺志望を抱いている。

 だから、そのまま過ごすだろう。滅亡という運命を、そのまま受け入れ、飲み込むだろう。




 ……ほんの少しだけ、脳裏に浮んだ。

「……そうだな」

 フ、と笑う。


「せめて、最後の日は」


 可笑しいなあ。


 一瞬だけ、コイツの笑顔が浮ぶなんて。


 そして、それしか思いつかないなんて、可笑しな話だ。





「二人で、全力で笑おう」



 そういうと、フウは驚いた顔をして、本から目を離した。

 そして、すぐに、何時もの穏やかな顔でいった。




         それは、最後の日じゃなくても、できることだよ



(遠い過去の思い出、)

(そんな俺とアイツの最後の日に、俺はアイツを笑わせることは出来なかった)

Re: 臆病な幽霊少女【参照五〇〇突破記念更新!!】 ( No.58 )
日時: 2012/10/30 23:54
名前: さくら (ID: 4s1mbdao)

八重ちゃん、参照500おめでとんこつ〜
さすがですね))そんけーします泣
なんといっても話が面白い))八重ちゃんの才能だと思います。
二部も頑張って下さい☆
そして、線香花火書き終わったので暇な時にちょろっと読んで下さいましぃw
さくら


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