コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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臆病な人たちの幸福論【第五部完結】
日時: 2016/03/05 21:35
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: AO7OXeJ5)

臆病な幽霊少女は、思い出す。
人を疑いながらも、好きだったわたしを。

泣き虫な文学少年は、後悔する。
せめて、言葉にして伝えたかった。

怠惰な女性司書は、紛らわす。
子供に甘えるなんて、どうなのよ。

憂鬱な平凡少女は、自身を罵る。
どうしようもないなあ、あたし。

——愛。
それは彼らに共通したもの。
カタチは違うけど、彼らを繋ぐ。
繋がりの中で彼らは……何を見つけるのだろうか?





 黒雪様の【あなたの小説の宣伝文、作ります!】に頼み込んで、作ってもらった素敵な紹介文です!! ありがとうございました、黒雪様!!





お知らせ!!>>485
ご報告!!>>198
5000いけました!!!>>390

【皆おいで! オリキャラ投稿だよ!! ついでにアンケートもだよ!】>>165(本気と書いてマジと読む。どうかよろしくお願いします!)



 はい、全然完結させてない八重です。
 …今回は、ちゃんと完結させるつもりでございます。…多分。
 約束守れない人って、情けない…。



 注意
・低クオリティ。何かありきたり。
・幽霊が出てきます。
・最初はとんでもなく暗いです。
・中傷など、常識やルールを守れない方はすぐにお帰りくだされ。
・恋物語です。でも、糖分は低めです。
・瀬戸君の佐賀弁が似非っぽい。
・宮沢賢治のお話がちょろちょろでます。
・批評大好物なので、バッチコイ! あ、でもあまり過激なモノは…(汗
・宣伝は常軌に外さなければおkです。ただ、宣伝だけはおやめください。お友達申請? カモンです!!w
・誤字脱字あったらすぐにコメを!!

 では、よろしくお願いします!!


この小説に欠かせない大切な方々の名前一覧!>>430



目次

登場人物>>54(ネタバレあり。本作読むのが面倒な人はここを読んで置くのがオススメ。大体の話の筋はわかるから)

〜第一部〜
臆病な幽霊少女…>>01(挿絵>>231>>02>>03>>08(挿絵>>431)(長いこと関わらなかった幽霊少女が恋慕を抱く話)
泣き虫な文学少年…>>14>>15>>16(挿絵>>549>>19(一人を望んだ文学少年が『独り』になることに恐怖を抱く話)
怠惰な女性司書…>>30>>31>>32>>33(怠惰に過ごす女性司書が一人の少年を見て我が身を振り返る話)
憂鬱な平凡少女……>>39>>40>>41>>42(日常を憂鬱に過ごしている平凡少女が弱さを知る話)

【自戒予告〜字が違うよ次回予告だよ〜】>>50(ふざけすぎた次回予告です)



〜第二部〜
間章または序章>>55>>56(幽霊少女と、『声』の話)
第一章 春を迎えた文学青年>>60>>61>>62>>63(文学青年と平凡少女が、非日常に巻き込まれる話)
第二章 困惑した文学青年>>64>>67>>68>>69(幽霊少女の真実と奇跡が、垣間見えた話)
第三章 前進する文学青年>>73>>74>>75>>76(幽霊少女の周りの環境が、だんだんと変わっていく話)

間章 >>87(閉じこもってしまった幽霊少女が、やがて狂っていく話)

第四章 平凡少女の行動>>95>>96>>97>>98(諦めかけた文学青年と、行動を起こした平凡少女の話)
第五章 揺らぐ文学青年>>105>>106>>107>>108(平凡少女と、文学青年と、臆病少女は)
第六章 踏み出す文学青年>>118>>119>>120>>121(イレギュラーが入り込む話)

間章 >>128>>129(混乱する臆病少女の前に、文学青年は)

第七章 どうすればいいのか、判らないことだらけだけど>>132>>133>>134>>135>>136(泣き虫な青年の答えに、臆病少女は)
最終章 やっと、春を迎えました>>141>>142>>143>>144(さあさあ、春と修羅が始まります)

後書き>>149(とりあえず読んで欲しい)

【次回予告〜今度はまじめにやってみた〜】>>157(第三部の次回予告)




〜第三部〜
「モテたいんだ」「「「……はあ?」」」>>161>>162>>163>>164(とある男子高校生の会話)
「えっと、『おぶなが』と『たかだ神殿』が『長しその戦い』で戦って……?」「『織田信長』と『武田信玄』が『長篠の戦い』で戦った、だ」>>175>>176>>177>>178>>179(とあるリア充の話)
「あ、ダメナコ先生じゃなかー!」「ダメナコじゃない。私の名前は光田芽衣子よ」>>187>>188>>191>>192 (とある元引きこもりと不登校少女の話)

間章>>196>>197(とある不登校少女は逃走する)

「何時もより早く登校したら、校門の前にパトカーがあった」「誰に話しているの? 三也沢君」>>214>>215>>216>>217(とある文学青年が、踏み入る)
「——そこに居るのは、誰ですか?」「だあれ、君……?」>>223>>224>>225>>226(不登校少女と、やさしい想い出と苦い想い出と)
「……玲ちゃんの家は、一度離婚してるったい」>>239>>240>>241>>242(第三者が語る、不登校少女の姿)
「どうして、ないてるの?」>>252>>253>>254>>255(無表情少年と不登校少女)

間章>>258>>259(不登校少女と、不登校少女の父)

「何でこんなあつー日に走らんといけんと!?」「全くだ!」>>265>>266>>269>>270(少年少女の試行錯誤)
「い、行かせて平気なんですか!?」「平気よ」>>271>>272>>273>>274(怠惰な司書と平凡少女と臆病少女の他人事と共感と)
『この世界は、嫌なことだらけだ。悲しい事だらけだ。でもだからこそ、お前なら、小さな幸せを見つけることが、出来るはずだろう?』>>281>>282>>283>>286(結局のところは)
「……で、結局どうなったんだ?」>>287>>288>>289>>290(大団円を迎えたよ)
「きっと、何とかなるよ」>>291>>292>>293>>294(第三者だった、文学青年と臆病少女の考察)



小話>>366(第三部の後日談)

後書き>>305(とりあえず読んで欲しい)
【自戒予告〜反省なんて言葉は無いんだよ〜】>>311(シリアスばっかだったから〜…)


〜第四部〜
蛍火の川、銀河に向かって【前編】>>312>>313>>314>>315
蛍火の川、銀河に向かって【中編】>>316>>317>>318>>319
蛍火の川、銀河に向かって【後編】>>323>>324>>325>>326>>327

【あの日を誇れるように ぱーとわん】>>335>>336>>337>>338
【あの日を誇れるように ぱーとつー】>>339>>340>>341>>342
【あの日を誇れるように ぱーとすりー】>>353>>354>>355>>356
【あの日を誇れるように ぱーとふぉー】>>358>>359>>360>>361>>362

「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその一」>>367>>368>>369>>370
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその二」>>384>>385>>386>>387
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその三」>>393>>394>>395>>396
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその四」>>402>>403>>404>>405
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその五」>>407>>408>>409>>410>>411

『思い出と後悔のこの町は、また今日も』>>415>>416>>417>>418>>419


【低気圧&高気圧注意報】(方言監修:ルゥ様)>>510>>513>>514>>515>>516(Battle of youth)

〜第五部〜

序章>>426(口裂け女と労働青年の邂逅)
第一章 健全なる高校男子の昼食事情>>433>>434>>435>>436(口裂け女の噂と高校生の話)
第二章 労働少年の秘事>>440>>441>>442>>443(労働少年の家と隣の口裂け女)
記憶喪失の口裂け女の話 一>>447>>448>>449
記憶喪失の口裂け女の話 二>>454>>455>>456
第三章 文学少女と文学青年>>460>>461>>466>>469(女子トイレと橘と後輩と)
口裂け女と労働青年の日々 一>>471>>474>>479>>480
第四章 それは全てを変えるような>>483>>484>>486>>493(ぐらつく足元)
口裂け少女のたまに見る夢>>496>>497


【第五部後半 予告編】>>503(こういうの結構楽しく書ける)


口裂け女の終焉の始まり>>521>>523>>524
口裂け女 ムカシバナシ 1>>525>>526
口裂け女 ムカシバナシ 2>>527>>528>>529

第五章 瀬戸少年の意外な面について>>530>>531>>532>>536(キレる瀬戸君、笑うフウちゃん)


口裂け女のひとつの過ち>>545>>546>>547>>548
口裂け女のひとつの過ち その2>>551>>552>>553>>554


第六章 少しずつ忍び寄る>>559>>560>>561>>562(怪異と妖怪と幽霊と)
第七章 元幽霊少女と現怪異少女>>563>>564>>565>>566(諷子と千代)
口裂け女ノ邯鄲ノ夢>>567>>568>>569
第八章 間違っていること、正しいこと>>570>>571>>572
口裂け女の初めてのデート>>573>>574>>577>>578>>581
第九章 それは何も変わらず>>584>>585>>586>>591
よだかの星になった少女>>592>>593>>594

終章 泣き虫な文学少年と、憂鬱な平凡少女、臆病な元幽霊少女の>>598>>594>>604



番外編・企画・もらい物>>470(これまた多くなったので引っ越し!)


履歴>>332(多すぎてスクロールするのがめんどくなったので引越し!)
その2>>539(その2まで出来ちゃった……本当にありがとうございます!!)

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Re: 臆病な人たちの幸福論【『超展開になった話』更新!】 ( No.404 )
日時: 2013/06/14 17:28
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)













「……ふっざけんな!!」



 怒声が響いた。
 でもそれは、ヤのつく職業の方でも、橘先輩でも上田先輩でも向日葵でもなくて。
 一番大人しかった——……いや、一番臆病だった彼の、劈くような怒鳴り声だった。



「どいつもこいつも、自分の都合ばっか!! お前なんて、忍びの才能あるくせに『料理人になる』っていいやがって!! 俺にだって、なりたいものがあったっていいのにそれすらもない!! 何にも無い!! 忍びの才能だって全然ない!! だけど、頭首になる以外のことも、想像つかない!! だから従えっていうのか!? 俺の意見なんて関係なく、鳥間家の為に生きて死ねと!? ふざけんな!! もう……うんざりだよ」




 彼は、どんな顔をしていたのだろう。
 僕には判らなかった。だって、彼は俯いていたから。



 それでも、激しい怒りだということは、判った。
 そして、



「勝手に、俺なんかに期待してるんじゃねぇ!!」




 ——葛藤と、戦っているんだということも、痛いぐらいに判ってしまった。



 彼は、走り出した。
 それも、凄い勢いで。目では追いつけないぐらいに、速かった。

 嵐が通りすがった、静けさが校庭にのしかかる。
「え? 何? いつの間になにがあったの?」と、つい先ほどまで闘っていた人たちは、目を丸くした(ヤのつくお仕事の方々はサングラスをかけていたけれど)。
 だんだんとざわつく校庭。それでも、静けさはまだ残っていて。

 ドサリ、という音が、静けさを消した。



「向日葵さん!!」



 彼女が叫んだことによって、僕たちはやっと、身体を動かすことが出来た。


                ◆



 いやだったんだ、なにもかも。
 何も出来ない自分も、何の才能を持たない自分も、何の夢も持っていない自分も。
 頭首になれという周りの人間も、勝手に出て行った、自分より才能がある妹も、あの時厳しく叱った父も。
 全部、いなくなればいいと思った。
 全部、全部、だいきらいだった。

 でも、本当にきらいなものは——————。



                ◆


「……なんで」


 ポタポタ。ポタポタ。
 乾いた土が、水の玉を吸い込んでいく。
 それは汗なのか、それとも、涙なのか。
 倒れそうになった向日葵を彼女が必死に受け止めた。向日葵は意識を失っては居なかった。ただ、かすれた声で、詰まった声で、必死に言葉を捜した。



「私はただ、兄貴が好きだったのに」



 ポタポタ、ポタポタと。



「何にも出来なくても、何の才能を持たなくても、いつも優しくて、真面目で、誠実だった……私はすぐサボる癖があった。好きな料理も、サボり癖が出て叱られたことは何度もあったのに、それでも中々直せなかった」



 ポタポタ、ポタポタと。



「でも、兄貴は違った。結果が出なくても、誰に褒められなくても、いつも誠実だった。私は自分のことしか見えてなかったのに、兄貴は人への気遣いを忘れなかった。
 私は興味が無いことにはトコトン不真面目だったのに、兄貴はちゃんと、しなければならないことを果たしていた。私は理不尽だと思ったことはすぐに口に出してしまった。でも兄貴は、それすらも受け容れて、いつも頑張ってた。私は兄貴を尊敬していた。幸せになって欲しいって思った。……なのに」

Re: 臆病な人たちの幸福論【『超展開になった話』更新!】 ( No.405 )
日時: 2013/06/14 18:06
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)


 ずるり、と向日葵の豊かで艶やかな髪が雪崩落ちる。
 髪で顔は見えなくなってしまったが、それでも、彼女の表情は安易に想像できた。


「兄貴は、あんなこといわなかった。人の手柄を自分の手柄にしてしまう人じゃなかった。烏間家の奴らに嘘をつくような人間じゃなかった」

 ポタポタ、ポタポタ。
 蝉時雨は、鳴り響く。

 それでも、向日葵の声は、ちゃんと聴こえた。





「あんな目を、する人じゃなかった…………!」



 どうして、と語調を強める。


「何が変わってしまったの? それとも、私のせい? 父のせい? 周りの人間のせい? ——どうして……」


「(……誰も、悪くないんだ)」


 僕は、知っている。
 この兄妹はどうして、互いに怒りを覚えたのか。
 どうして彼が走って去ったのか。どうして向日葵は倒れてしまったのか。

 彼らは、互いを尊敬していたんだ。
 自分には持っていないものを、相手が持っている。それを認め合っていた。
 けれど同時に、それをコンプレックスに思っていた。
 そして相手もそれを感じてると知っていたから、自然と言葉が少なくなってしまった。

 判っているつもりで、判っていなかった。
 判ってもらっているつもりで、何一つ伝わっていなかった。
 それは、言葉が少なかったから。

 それを僕は見た。
 そして、自分も当事者だった。
 でも、なんていえばいいんだろう? 言葉が少ないのが自分の短所だと自覚している。
 下手なことをいって、話をややこしくしてしまったらどうしよう? ——臆病な自分が、手前に来る。
 そうしたら、なにもいえない。迂闊な言葉も、慰めも、何にも————。






「向日葵さん!!」



 ——ガツ!! と、彼女が、向日葵の腕を掴んだ。


「……玲?」


 様子を見ていた上田先輩が、驚いた顔で彼女の名前を呼ぶ。
 向日葵も、びっくりして顔を上げた。前髪がずれて明るくなった目元は、赤く腫れていた。



「今あなたがやることは、泣くことですか? 違うでしょう?」


 彼女が強い口調で、かといって責めているわけもなく、それでもしっかりとした目で、向日葵の目を見る。
 グイ、と彼女は向日葵の身体を起こした。


「ちょ!」
「あなたのその想いを、烏間さんに伝えないで、どうするんですか?」
「で、でも私は……」


 怖いの、とかすれた声でいう向日葵に、
 彼女は、玲は、こういった。



「幸せになる為に、想いはあるんでしょう? 想いを伝える為に、言葉があるんでしょう!?」



 そういった、玲の表情は凛としていた。
 夏の強い日差しが、表情をより輝かせた。

 そうしてその顔と言葉が、向日葵を立ち上がらせた。
 手を繋いで、玲と向日葵は、僕らには何もいわず、ただ一生懸命、走っていった。



 まだ最近の話なのに、あの日樹海で逃げて、怯えて、泣いていた顔は、とてもとても遠かった。







「……玲があんな顔をするようになったなんて」


 走り出した玲たちを見送った後、上田先輩が、口を開けた。


「俺は今まで、あの子の苦しい顔しか見てこなかった。……でも、あんなにもカッコイイ顔をするようになったんだな」


 そういって、僕に向かって、ニカ、と笑った。



「お前のお陰だ。ありがとな」




 ——……正直、この人にお礼をいわれる日が来るとは思わなかった(毎日命狙われていたし)。
 それに、僕は玲に何かをしてやった記憶はあまりないのだ。
 けれど、この人の笑った顔は、何て爽やかで、男らしくて、優しいんだろう。

 僕は少しだけ感動した。
 だから、その気持ちも、少しだけ受けいれようと思った。



「ま、でも玲とは友達以上の関係は認めてないから★」


 ……少しだけ。
 シスコン魔王の黒い笑みを見たときには、僕は今さっきの少しの感動を何処かへやってしまった。


「……ってか俺たち、良く判らないままこの人たちと闘ってたんだけど」


 橘先輩が、険悪の空気に割り込んできたお陰で、何とか僕は平常心を保つことができた。
 ……というか、事情も知らずに喧嘩してたんですか。


「実は……」
「それは私が説明しよう」


 僕が説明しようとすると、突然、知らない男の人に言葉を遮られた。
 ……最近こういうの多いな。
 というかこのおじさん、一体ドコから現れたのですか? そして何者?


「図書室のベランダから、君たちの様子を見ていたものだ」
「いや、名前を名乗ってくださいよ」



 僕たちの事情を知ってるってことは、通行人Aというわけではないでしょう。
 まあ、おおよその今までの流れで考えると、烏間家に関わる人なんでしょうけど……。


「……ああ、名前か」
「はい、名前です」
「それはだな……」


 ごっほん、と咳払いをしたおじさんは、もったいぶった間を置いて、こういった。




            「次回で公開されます」


(「……はああああああ!?」と声をあげる武田たち)
(いきなり現れたこのおじさんは一体何者なのか!?)
(そして、烏間兄妹の行方は? いよいよ最終回へ!!)

Re: 臆病な人たちの幸福論【『兄妹の喧嘩』更新!】 ( No.406 )
日時: 2013/07/04 10:35
名前: 哀歌 ◆dcuKuYSfmk (ID: IfRkr8gZ)

お久しぶりですーーと言っても、この名前では私のことは分からないと思います。
元、「杏里」です。名前、変えました。
只今、不登校中です(笑)

相変わらず、面白いです。
更新楽しみにしています。
では、お体に気をつけて。

Re: 臆病な人たちの幸福論【『兄妹の喧嘩』更新!】 ( No.407 )
日時: 2013/07/04 15:34
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)


 前回までのあらすじ!

 校庭のいざこざから、兄弟喧嘩に変わってしまったお家騒動。
 音速の速さ(※比喩です)で校庭を飛び出した烏間(兄)を追いかけて、向日葵と玲は共に何処かへと向かった。
 それを止めるまでもなく見送った武田たちの前に、図書室のベランダから、謎のおじさんが現れた!!


                  ◆


 コオオオオ、と、風が渦巻く。
 砂も舞って、雰囲気は一昔のドラマの決闘シーンだが、あまりふざけてもいられない。何故なら彼と彼女たちがドコへいったのか知らないから。
 見失う前に追いかけたいのだが、このままこの人を放置したら、何だか凄く面倒くさくなるようだったので止めた。



「あなたは……何者ですか?」


 とりあえず正体だけ聞いて、彼と彼女の後を追いかけようと僕は思った。
 僕がその謎のおじさんに聴くと、彼はこういった。










「次回で公開されます」
「もう最終回ですよこれッッッッ!!」



             「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその五」



 ——何故、あんなことをいったのか、あたし自身も判らなかった。



「……向日葵さん」
「何?」


 同じスピードで並んで走るあたしたちは、傍から見れば少し奇妙に見えるだろう。何でこんな真夏の真っ昼間から、動きやすい服でもないのに一生懸命走ってるんだろう、って。
 実際、あたしだってそう思ってた。
 何でこんな日に、走っているんだろうって。そもそも、どうしてこの人たちに関わったんだろうって。
 今更ながら後悔している。でもだからこそ、この兄妹を放っておけなかったのかもしれない。


「……確かに、鳥間さんは、本当にダメな人だったよ。食事中に図書室の天井裏から抜け落ちてくるし」
「抜け落ちてきた!?」


 初耳だった向日葵さんは、目をくりぬく勢いで驚く。しょんぼりしていた顔が、すぐに呆れ顔に変わった。


「……あんのバカ兄貴、一体何してたの……」
「……でも、優しい人だっていうことは、一目でわかったよ……多分だけど、烏間さんは変わっていません。向日葵さん、いってたじゃないですか。誠実で真面目で優しかったって」
「……いったっけ」
「いったよ」


 あたしがいうと、向日葵さんが俯く。


「……変わってなんか居ないよ、お兄さんは。きっと、変わってない。今さっきのはきっと、不甲斐ない自分が変わってないって自覚していたから、焦ってあんなことをいったんだと思う」
「……そうだとしても」
「向日葵さんが、変わってないって信じなきゃ、お兄さんは帰りにくいよ?」


 そういって、あたしは笑う。
 俯いていた向日葵さんは、あたしの方に顔を向けた後、少しだけ笑った。


「(あ、可愛い)」


 不意に胸がときめいた。あたし女なのに。
 元々、向日葵さんは綺麗な顔をしていたけど、ずっと顔が強張っていたから、凄みを感じた。けれど今は違う。柔らかくて、優しい顔だ。

Re: 臆病な人たちの幸福論【『兄妹の喧嘩』更新!】 ( No.408 )
日時: 2013/07/04 15:35
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)





「……ってかここ何処よ」
「……アレ?」



 ——けど、それはすぐに終わった。気がつくと、あたしは何処に居るのかも判らなかった。目の前にあるのは二股に分かれる住宅街の中心の道。
 スピードを落とし立ち止まるあたしに、迷子になったと察した向日葵さんは、またもや呆れ顔を見せる。
 う、うう……。


「こ、ここらへんで曲がったのか、真っ直ぐ行ったのか……」
「ここに来る前にも分かれ道沢山あったじゃない……」
「あ、そ、そうでしたっけ?」


 気まずさを拭うためにエヘヘヘヘ……と笑っても、ジト目で見られる。気まずさは三,五倍ぐらい増えた。
 言葉よりも、この人は表情で相手に伝えることが出来るのだ。……器用だとは思うけど、こういう人間って何か怖い。威圧的な意味で。



「……とりあえず戻るか」
「そ、そうですね! ではヨロシクお願いします!」
「……アンタここの地元人でしょ。何であたしに頼るわけ?」
「…………スンマセン」
「……ま、いいわ」


 ため息をついてから、向日葵さんは自分のバックからスマホを取り出した。成程、地図アプリで検索するのか。忍者もそこまでハイテクになったんだなあ……。
 ……いきなり立ち止まったから、どっと汗が出ちゃった。検索も少し時間がかかりそうだったから——といってもすぐだろうけど、殆ど引きこもりであるあたしは少しの間でも休みたかった。電柱の影で涼もうと、足を進めたとき。



「カ〜ノジョ、今暇〜?」



 ——凄く頭の悪そうなナンパと出会いました。
 ……人数は三人。服装はその……それぞれ形容したがたい。しいていうなら皆裾とか引きずったり無理に大きな服を着ている。
 こんな人たち、まだいたんだこのご時世に。


「残念ながら、全然暇じゃないので」


 冷たい返事を返す向日葵さん。目は据わってるけど、スマホ画面から視線を外してないからいろんな意味で誤解されそう。


「あ、ひょっとして怖がってる〜? 大丈夫、俺ら怪しいもんじゃないから〜」


 やっぱり勘違いした。男は下品そうな笑みを浮かべて、向日葵さんの顔に近づける。
 ……当たり前だけど、あたしは眼中にないのね、コイツラ。ホッとしたようなムカつくような。
 逆に向日葵さんは、あたしより随分身長が高くて、腰が細くて、胸が大きくて、スッキリとした顔立ちで、肌が白くて、腕と足が細くて、髪の色が綺麗で……まるでモデルさんだ。この田んぼのど真ん中のような場所(本当は住宅地の真ん中だけど)で向日葵さんがナンパされる理屈は納得。
 まあ顔立ちが整っている人ほど、怒ると怖いわけで……向日葵さんのコメカミには、うっすらと青筋がたっていた。

 今はナンパより向日葵さんが怖いよ。



「なー、一緒に遊びにいこーぜー。名前なんて」


 スパ。
 愉快なまでに響いた音は、向日葵さんの手刀が男の鬱陶しいボサボサの髪を刈る音だった。
 バサバサと、茶色に染めた髪が落ちる。頭のてっぺんはヤカンのごとくツルッツルである。


「……へッ?」


 サアア、と三人の男の顔が真っ青になった。
 刈られた男は恐怖で佇んでおり、刈られなかった後の二人はその場を離れようとした。けれど、向日葵さんはそれを逃さない。
 あろうことか、固まっている男の胸倉を掴んだ。


「……うっさいって……」


 グイ! と、男の身体を持ち上げる。片手で。あの細い腕で、どうやって大体七十キロ前後の男の身体を持ち上げているのだろうか。忍者ってスゴイ。くノ一ぱねぇ。
 般若の顔をした向日葵さんは、そのまま男の身体を花火のように上へ飛ばす。あたしは思わず男の体の行方を視線で追っていた。


「いって……」


 すぐに男の身体は落下する。が、地面に落ちる前に、男は再び持ち上げられた。


「るで……しょうがぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 ……グィィィィィン!! という轟音とともに加速する足によって。
 バキィ!! という何かが折れた音が鳴ったが、気にしないことにしようっと。
 ちなみに、持ち上げられた男は既に気絶しているようで、空中に浮いている際泡を吹いていることが判明されました。
 そしてそのまま、男はグゥの音もいわず、地面と平行に吹き飛び、男二人にぶつかります。



「ひ、ひ……! グハァ!!」
「や、ヤメゲッホォォオォオ!!」



 ついでにぶつかった男二人も平行にとび、突き当たりの塀にぶつかって止まりました。


 シィィィィン……と、あれだけすごい音が盛大に鳴っていたのに、彼らが塀に寄りかかった時には、蝉の鳴き声すらも聴こえていなかった。


「……フゥ。五月蝿いったらありゃしない」


 足を下げて一息つく向日葵さんは、流石といおうか。
 向日葵さんは気を取り直して、スマホ画面に視線を戻した。


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