コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 臆病な人たちの幸福論【第五部完結】
- 日時: 2016/03/05 21:35
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: AO7OXeJ5)
臆病な幽霊少女は、思い出す。
人を疑いながらも、好きだったわたしを。
泣き虫な文学少年は、後悔する。
せめて、言葉にして伝えたかった。
怠惰な女性司書は、紛らわす。
子供に甘えるなんて、どうなのよ。
憂鬱な平凡少女は、自身を罵る。
どうしようもないなあ、あたし。
——愛。
それは彼らに共通したもの。
カタチは違うけど、彼らを繋ぐ。
繋がりの中で彼らは……何を見つけるのだろうか?
黒雪様の【あなたの小説の宣伝文、作ります!】に頼み込んで、作ってもらった素敵な紹介文です!! ありがとうございました、黒雪様!!
お知らせ!!>>485
ご報告!!>>198
5000いけました!!!>>390
【皆おいで! オリキャラ投稿だよ!! ついでにアンケートもだよ!】>>165(本気と書いてマジと読む。どうかよろしくお願いします!)
はい、全然完結させてない八重です。
…今回は、ちゃんと完結させるつもりでございます。…多分。
約束守れない人って、情けない…。
注意
・低クオリティ。何かありきたり。
・幽霊が出てきます。
・最初はとんでもなく暗いです。
・中傷など、常識やルールを守れない方はすぐにお帰りくだされ。
・恋物語です。でも、糖分は低めです。
・瀬戸君の佐賀弁が似非っぽい。
・宮沢賢治のお話がちょろちょろでます。
・批評大好物なので、バッチコイ! あ、でもあまり過激なモノは…(汗
・宣伝は常軌に外さなければおkです。ただ、宣伝だけはおやめください。お友達申請? カモンです!!w
・誤字脱字あったらすぐにコメを!!
では、よろしくお願いします!!
この小説に欠かせない大切な方々の名前一覧!>>430
目次
登場人物>>54(ネタバレあり。本作読むのが面倒な人はここを読んで置くのがオススメ。大体の話の筋はわかるから)
〜第一部〜
臆病な幽霊少女…>>01(挿絵>>231)>>02>>03>>08(挿絵>>431)(長いこと関わらなかった幽霊少女が恋慕を抱く話)
泣き虫な文学少年…>>14>>15>>16(挿絵>>549)>>19(一人を望んだ文学少年が『独り』になることに恐怖を抱く話)
怠惰な女性司書…>>30>>31>>32>>33(怠惰に過ごす女性司書が一人の少年を見て我が身を振り返る話)
憂鬱な平凡少女……>>39>>40>>41>>42(日常を憂鬱に過ごしている平凡少女が弱さを知る話)
【自戒予告〜字が違うよ次回予告だよ〜】>>50(ふざけすぎた次回予告です)
〜第二部〜
間章または序章>>55>>56(幽霊少女と、『声』の話)
第一章 春を迎えた文学青年>>60>>61>>62>>63(文学青年と平凡少女が、非日常に巻き込まれる話)
第二章 困惑した文学青年>>64>>67>>68>>69(幽霊少女の真実と奇跡が、垣間見えた話)
第三章 前進する文学青年>>73>>74>>75>>76(幽霊少女の周りの環境が、だんだんと変わっていく話)
間章 >>87(閉じこもってしまった幽霊少女が、やがて狂っていく話)
第四章 平凡少女の行動>>95>>96>>97>>98(諦めかけた文学青年と、行動を起こした平凡少女の話)
第五章 揺らぐ文学青年>>105>>106>>107>>108(平凡少女と、文学青年と、臆病少女は)
第六章 踏み出す文学青年>>118>>119>>120>>121(イレギュラーが入り込む話)
間章 >>128>>129(混乱する臆病少女の前に、文学青年は)
第七章 どうすればいいのか、判らないことだらけだけど>>132>>133>>134>>135>>136(泣き虫な青年の答えに、臆病少女は)
最終章 やっと、春を迎えました>>141>>142>>143>>144(さあさあ、春と修羅が始まります)
後書き>>149(とりあえず読んで欲しい)
【次回予告〜今度はまじめにやってみた〜】>>157(第三部の次回予告)
〜第三部〜
「モテたいんだ」「「「……はあ?」」」>>161>>162>>163>>164(とある男子高校生の会話)
「えっと、『おぶなが』と『たかだ神殿』が『長しその戦い』で戦って……?」「『織田信長』と『武田信玄』が『長篠の戦い』で戦った、だ」>>175>>176>>177>>178>>179(とあるリア充の話)
「あ、ダメナコ先生じゃなかー!」「ダメナコじゃない。私の名前は光田芽衣子よ」>>187>>188>>191>>192 (とある元引きこもりと不登校少女の話)
間章>>196>>197(とある不登校少女は逃走する)
「何時もより早く登校したら、校門の前にパトカーがあった」「誰に話しているの? 三也沢君」>>214>>215>>216>>217(とある文学青年が、踏み入る)
「——そこに居るのは、誰ですか?」「だあれ、君……?」>>223>>224>>225>>226(不登校少女と、やさしい想い出と苦い想い出と)
「……玲ちゃんの家は、一度離婚してるったい」>>239>>240>>241>>242(第三者が語る、不登校少女の姿)
「どうして、ないてるの?」>>252>>253>>254>>255(無表情少年と不登校少女)
間章>>258>>259(不登校少女と、不登校少女の父)
「何でこんなあつー日に走らんといけんと!?」「全くだ!」>>265>>266>>269>>270(少年少女の試行錯誤)
「い、行かせて平気なんですか!?」「平気よ」>>271>>272>>273>>274(怠惰な司書と平凡少女と臆病少女の他人事と共感と)
『この世界は、嫌なことだらけだ。悲しい事だらけだ。でもだからこそ、お前なら、小さな幸せを見つけることが、出来るはずだろう?』>>281>>282>>283>>286(結局のところは)
「……で、結局どうなったんだ?」>>287>>288>>289>>290(大団円を迎えたよ)
「きっと、何とかなるよ」>>291>>292>>293>>294(第三者だった、文学青年と臆病少女の考察)
小話>>366(第三部の後日談)
後書き>>305(とりあえず読んで欲しい)
【自戒予告〜反省なんて言葉は無いんだよ〜】>>311(シリアスばっかだったから〜…)
〜第四部〜
蛍火の川、銀河に向かって【前編】>>312>>313>>314>>315
蛍火の川、銀河に向かって【中編】>>316>>317>>318>>319
蛍火の川、銀河に向かって【後編】>>323>>324>>325>>326>>327
【あの日を誇れるように ぱーとわん】>>335>>336>>337>>338
【あの日を誇れるように ぱーとつー】>>339>>340>>341>>342
【あの日を誇れるように ぱーとすりー】>>353>>354>>355>>356
【あの日を誇れるように ぱーとふぉー】>>358>>359>>360>>361>>362
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその一」>>367>>368>>369>>370
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその二」>>384>>385>>386>>387
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその三」>>393>>394>>395>>396
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその四」>>402>>403>>404>>405
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその五」>>407>>408>>409>>410>>411
『思い出と後悔のこの町は、また今日も』>>415>>416>>417>>418>>419
【低気圧&高気圧注意報】(方言監修:ルゥ様)>>510>>513>>514>>515>>516(Battle of youth)
〜第五部〜
序章>>426(口裂け女と労働青年の邂逅)
第一章 健全なる高校男子の昼食事情>>433>>434>>435>>436(口裂け女の噂と高校生の話)
第二章 労働少年の秘事>>440>>441>>442>>443(労働少年の家と隣の口裂け女)
記憶喪失の口裂け女の話 一>>447>>448>>449
記憶喪失の口裂け女の話 二>>454>>455>>456
第三章 文学少女と文学青年>>460>>461>>466>>469(女子トイレと橘と後輩と)
口裂け女と労働青年の日々 一>>471>>474>>479>>480
第四章 それは全てを変えるような>>483>>484>>486>>493(ぐらつく足元)
口裂け少女のたまに見る夢>>496>>497
【第五部後半 予告編】>>503(こういうの結構楽しく書ける)
口裂け女の終焉の始まり>>521>>523>>524
口裂け女 ムカシバナシ 1>>525>>526
口裂け女 ムカシバナシ 2>>527>>528>>529
第五章 瀬戸少年の意外な面について>>530>>531>>532>>536(キレる瀬戸君、笑うフウちゃん)
口裂け女のひとつの過ち>>545>>546>>547>>548
口裂け女のひとつの過ち その2>>551>>552>>553>>554
第六章 少しずつ忍び寄る>>559>>560>>561>>562(怪異と妖怪と幽霊と)
第七章 元幽霊少女と現怪異少女>>563>>564>>565>>566(諷子と千代)
口裂け女ノ邯鄲ノ夢>>567>>568>>569
第八章 間違っていること、正しいこと>>570>>571>>572
口裂け女の初めてのデート>>573>>574>>577>>578>>581
第九章 それは何も変わらず>>584>>585>>586>>591
よだかの星になった少女>>592>>593>>594
終章 泣き虫な文学少年と、憂鬱な平凡少女、臆病な元幽霊少女の>>598>>594>>604
番外編・企画・もらい物>>470(これまた多くなったので引っ越し!)
履歴>>332(多すぎてスクロールするのがめんどくなったので引越し!)
その2>>539(その2まで出来ちゃった……本当にありがとうございます!!)
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- Re: 臆病な幽霊少女【『参照三〇〇突破記念』更新!】 ( No.38 )
- 日時: 2012/10/20 18:51
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: FIlfPBYO)
- 参照: どうしよう……ありがたいコメによって泣きそうだ(感涙
金木犀さん!!
うわあああああああああああああん!!
天才はあなたですぜェェェェ!! わたしを泣かせる!!((
いいえ…読んでくださるだけでも、私は嬉しいです……!!w
更新頑張ります!!
陽!!
いやっほぉぉぉい!!
まさか来てくれるなんて……!!
しかも、ずざあああああああああああっと読んでくれてこのコメ……。
わたし、明日で死ぬのかな……www←冗談です。129歳まで生きますww
アルデバランンンン!! 楽しみにしとるけん!!w
更新頑張ります!!
- Re: 臆病な幽霊少女【『参照三〇〇突破記念』更新!】 ( No.39 )
- 日時: 2012/10/22 21:48
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: FIlfPBYO)
憂鬱な平凡少女
あたしには判らない。
あたしは知らない。
それらは経験したこともないし、教えてもらったこともないから。
恋って、愛って。
一体、なんだろう。
◆
彼を初めて知ったのは、一年生の秋。
その日は、とても寒い日だった。冬が近いうえ朝から豪雨という、学生にとっては凄く辛い状況真っ只中。それでも車を使わず、自分の足で登校した私を褒めて欲しい。
本当に辛かった。手袋をつけると、傘が持ちにくいし。手はかじかんで、歯はガチガチに震えていた。
だからその時……気をとられていたんだと思う。
雨音の隙間を縫うように、激しいエンジン音が響く。チカチカと発光するランプが、暗いせいかやけに眩しく見える。
車が迫っていると、気付いたときには——。
あたしは、道の端に居たのだ。
「えっ……」
ドサ、と冷たい土が背中に触れる。上から重いものがのしかかってか起き上がれない。
車はあたしが目の前に居たことに気付かなかったようで、そのまま通りすがった。
「っててて……オイ、大丈夫か!?」
男の子の声。
あたしの上にのしかかっているのは、あたしと同じくらいの男の子だった。
それが、彼だった。
「あ、う、うん……」
困惑しながらも、とりあえず返事をする。
少しずつ、頭が冴えてきた。
あたしは、車に轢かれそうになったところを、寸の字で彼に助けられたのだ。
……状況が判った途端、ゾッとした。
あのまま、あそこに居たら。彼が駆けつけてくれなかったら。
あたしは、死んでいた——。
恐怖と、寒さが一気に襲ってくる。
恐怖で興奮したのだろうか、心臓がバクバクといい始めた。
皮膚は寒いのに、血は熱い。
ガクン、と力が抜けた。
「お、おい!?」
既にあたしの上からのいた彼が、あたしの身体を支えてくれた。
そこで、あたしの意識は途切れた。
◆
目が覚めると、ベッドの上に居た。
清潔なイメージを強く持つ真っ白い布団は、ふんわりと暖かい場所だった。耳を澄ますと、コツコツと、雨がノックしている音が、心地よい。
ここは……保健室だ。
「あら? 目が覚めたみたいね」
柔らかな、女性の声がした。
机に向き合って書き込んでいるのは、保健室の先生……ではなく、司書の光田芽衣子先生(通称ダメナコせんせー)であった。
「え……? 何でここにダメナコせんせーが……?」
「はった押したろーか。私の名前は光田芽衣子よ」
鋭いツッコミと、恒例のセリフが返ってくる。
ダメナコせんせーというあだ名は、せんせーが何時もサボってばかりでいるからそんな名前がついた。
「キミ、登校中に意識を失ったのよ。その場に居た三也沢君が居たから、ここまで運べたけど……」
「三也沢君……」
あたしの命を助けてくれた、あの男の子の名前だろう。
……そういえばあたし、あの子に礼すらもいえなかった。
「しかも今日、保険の先生は出張で居ないし……だから私が居るってワケ。おわかり?」
「何かフンワリしてますけど、判りました」
頷くと、ダメナコせんせーはあたしのおでこにふれた。
ひんやりしているけれど、……気持ちいい。
この人は面倒くさがりだけど、優しい雰囲気を持っているから、あたしは好きだった。
「うん、熱はないみたいね。授業にはいけそう?」
あたしはコクリ、と頷いて即答した。
「いけます」
◆
- Re: 臆病な幽霊少女【『参照三〇〇突破記念』更新!】 ( No.40 )
- 日時: 2012/10/22 21:52
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: FIlfPBYO)
教室に入ると、女子たちが一気にむろがって来た。
「大丈夫!?」「身体、重くない?」「一体何があったの!?」
知り合い以上友人未満の女子たちは、心配している……というより、好奇心で集まっている感じだった。
作り笑いで適当にあしらい、あたしはさっさと席に着く。
丁度その時、二時限のチャイムが鳴った。好奇心を満たされず不満だった女子たちは、渋々席に着く。
助かった。女子は、いろんな意味で怖いモンね。
授業を聞き流しながら、あたしはぼんやりと耽っていた。
あたしがすぐに大丈夫、と応えたのは、体調が良かったこともあるけれど、もう一つあった。
家に帰りたくなかったからだ。
あたしの家は、父子家庭だ。
ちっちゃかった頃は、勿論母親が居た。結構、仲のいい家族だったと思う。
小学校に上がり始めて、母は急に、仕事が忙しくなった。
だから何時も父と二人で、家に居た。
その時から、母との溝ができていたのかもしれない。
でも、幼いあたしには、そんなものは感じず、ただひたすら母が好きだった。
母が心地よく帰れるように、玄関の掃除をした。
母がのんびりとできるように、リビングを掃除した。
母が喜ぶように、一生懸命料理を習った。
母が一日の疲れを癒せるように、お風呂場の掃除をした。
……けれど、家に帰ってくるのは、殆どなくて。
そして、小学校六年生の時に、とうとう。
両親は、離婚した。
……母の、一方的な離婚届だった。
もう既に相手が居るようで、戻ってくるつもりはないらしい。
優しく、母を慕っていた父は、あっという間に壊れてしまった。
それから、父とも溝ができた。
仕方が無いことだった。あたしの顔は、母に良く似ていたから。父は、辛い想いを押し込めるのに、精一杯だった。だから顔すらも合わせなくなったのは、仕方が無かった。
父は、あたしを傷つけないように、必死に頑張っているのだから。
……でもやっぱり、家に居るのは辛くて、寂しくて。
反対に、学校は面倒くさいけれど、辛さと寂しさを紛らしてくれる。学校は、あたしの唯一の居場所だった。
だから、たった一つの居場所を失わないように、周りと合わしてきた。
人間って(特に女子は)、つまらないことを責めて、大勢でいじめる。そんなくだらないことにならないように、何時だって自分を誤魔化してきた。
嘘をつく人間って、誠実じゃないかもしれない。でも、仕方が無いんだ。
自分を守りたいから。
傷つきたくないから。
……人間って、やっぱり、自分が一番可愛いんだと思う。
憂鬱な気分を抱きながら、授業が終わるまで、窓の外を見つめていた。
憂鬱な気分に合わせて、雨はザアザアと降っていた。
◆
で、授業が終わった瞬間。
——またむろがってきたよ、女子軍団!!
「ねえねえ、一体どうしたのよ〜」
特にチャラチャラした女子が、迫ってくる。
良くコイツはあたしに絡んでくる。あたし何もしてないのに。目立たないようにして生きてたのに。
コイツが大きな派閥のリーダーじゃなきゃ、さっさと逃げているところだ。
「別に、どうってことじゃ……」
「嘘ぉ。だってユキ、三也沢の野朗に背負われていたじゃん〜」
チャラ女の言葉に、あたしはハッとした。
「三也沢君……?」
「あれぇ、ユキしんないの? ひょっとして、無理やり抱かれた後だったとか? キャーッ!」
ケラケラと笑うチャラ女。
チャラ女よ。おぬしは何故そう下品な話に向うんだい。ってか、どうやったらその発想にたどり着くんだい。
「違うよ。今日、事故りそうになったところを、間一髪で助けてもらったの。何か事故のこと、結構ショックみたいで、ぶっ倒れたところを背負われたみたい」
「ふぅ〜ん? ってか、こんな雨の中歩くなんて、ユキ真面目ぇ。親に車出してもらえばいいじゃん」
むっかつくなあ。そんなことができるほど、うちの家庭は余裕がないの。
何も知らないのに、勝手なこといわないでよ。
……とはいわない。いったら絶対喧嘩になる。面倒ごとはゴメンだ。
それに、判ってもらおう何て思っちゃいない。
あたしは、誰も信用しないから。
友だちなんていらない。寂しさが紛れればそれでいいの。
「でっもぉー、意外だなァ〜。三也沢の野朗が、人助けするなんてぇ」
チャラ女が続ける。
「アイツ、金持ちだからってお高く気取ってやんの? 俺とお前じゃ違うんだァ〜オーラが出ていてぇ、何かムカツク。いっつも根暗に図書館に居るし」
……そっから先は、聞かないことにした。だから、あんまり覚えていない。
どうしてだろうね。何時もだったら、悪口なんて日常茶判事だって思ってたのに。
ふと、思い出すは、彼の穏やかな瞳。
……うろ覚えしかないのに、目だけはやけにはっきりと覚えている。
あの目を思い出すと、悪口なんて聞いていられなかったんだ。
何だか判らないけど、強く想ったんだ。
◆
- Re: 臆病な幽霊少女【『参照三〇〇突破記念』更新!】 ( No.41 )
- 日時: 2012/10/22 21:59
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: FIlfPBYO)
昼休み。あたしは、図書室に行ってみた。
チャラ女の話だと、暇があれば何時も図書室に居るらしい。
ちゃんとお礼がいいたくて、あたしは足を運んだ。
——何で、暇さえあれば図書室に行くのだろう、と思った。
静かな場所で読みたいからなのかな? って思ったんだけど。
「ほれほれ、仕事が溜まっているわよ」
「明らかにアンタの仕事だよな俺の仕事じゃないよな図書委員の仕事じゃないよなァァァァ!!」
——あ、うん。理由、すっごく判った。
「あら、雪ちゃん」
無理に図書委員君に仕事を押し付けていたダメナコせんせーが、あたしの存在に気付いた。
シャウトしていた図書委員君は、我に返ったようで、顔を真っ赤にして背けている。
——ううん、貴方は悪くないよ。悪いのは何をいってもサボリを止めないダメナコせんせーだから。
心の中で、そっと慰めた。
「……ってか、アンタ……」
「あ……」
図書委員君の目に、見覚えがある。
あたしよりも向こうが、先に気付いた。
「今朝の、事故りそうになった……?」
「あ、う、うん!!」
思わず、飛び上がりそうになる。
……あの時はまともに顔を見られなかったけれど、今マジマジと見ると。
——ヤダ……超カッコイイ……。
つり目で、澄んだ雰囲気。濡羽色の髪はストレートで艶がある。
これで何故、チャラ女が悪口をいっていたのか、良くわからない。イケメン好きのアイツなら、食いつきそうなのに。
は!! そんなこと考えている場合じゃない。
目的を思い出したあたしは、ガバッ!! と頭を下げた。
「け、今朝のあの時はどうもでした!! あ、あたしの名前は杉原雪です!! ろくに礼もいわず……しかも、気を失ったあたしを保健室にゃで……」
あ、あわばばば。何をいっているのか判らないし、微妙なところで自己紹介入れちゃったし、しかも噛んじゃったよ!
「い、いや。気にすんな」
図書委員君改めて三也沢君は、そんなあたしを笑って赦してくれた。
「い、いや、でも……」
「いいって、気にしないでくれ」
でも何かしないと、あたしの気が済まないんです。
そういおうとしたとき、大量の書類が三也沢君の手元にあることに気付いた。
「それ……」
「あ、うん。ダメナコの仕事」
「ダメナコじゃない。私の名前は光田芽衣子よ」
無駄にキリッ、とした顔でいうダメナコせんせーに、三也沢君はため息をつく。
「ダメな人間なことは変わんないじゃねーか……これを生徒に押し付けるなんてよ」
——そりゃため息をつきたくもなるわ。
話を聞くと、どうやら図書委員は彼一人らしい。その理由が、大方ダメナコせんせーのサボリのせいで、図書委員の仕事があまりにも多く、辞めた人間が続出したとか何とか……。
自業自得といいますか、無限地獄といいますか。
だけど、その書類を片付けることが出来れば、三也沢君を助けることにもなるだろう。
「あ、あの……良かったらその書類の処理、手伝わせてくれませんか?」
恐る恐る、あたしはいってみると、彼はちょっと驚いた顔をして。
でも笑って、「じゃあ、お言葉に甘えて」といった。
◆
それが、出会い。
それ以降あたしと三也沢君は、ぎこちなくも挨拶を交わすような関係になっていた。
そして、短いながらも、彼と居る時間が、あたしの幸福な時間だった。
彼は、チャラ女がいっていた噂とは、かけ離れている人だった。
寧ろ、あたしには英雄さんに見えるほど。
……臭いセリフだって思われそうだけど、でも良く考えてみて?
見知らぬ誰かが事故に遭いそうになったところを助けるなんて、普通の人が出来ると思う? ……あたしには出来ない。そんな人が、実は世界を救う英雄でしたーっていわれても、あたし信じる。
強くて、かっこよくて、優しくて。
- Re: 臆病な幽霊少女【『参照三〇〇突破記念』更新!】 ( No.42 )
- 日時: 2012/10/22 22:04
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: FIlfPBYO)
……恋なんて、あたしには無縁のモノだと思っていた。
チャラ女たちも、母も、コロコロと好きな人を変えるからだ。
それは、恋なんだろうか? コロコロと変えるほどなら、そんなに恋に必死にならなくてもいいんじゃ?
少女なら憧れている恋も、あたしにはうそ臭く感じた。
……恋している少女の皆さん、馬鹿にしてごめんなさい。
ただいまあたし、恋しちゃってます。
何時の間に落ちていたのかは知らない。でも、自覚すればするほど、恥ずかしかった。
でも、もっと居たい。もっと居たいって想い始めて。
その気持ちは、どんどん膨れ上がってきた。
あたしは次の委員会決めの時、図書委員になることを決めた。
また、彼も図書委員になるだろう。何となくそう思ったあたしは、疑うことなく選んだのだ。
……でも、彼は、図書委員にはならなかった。
ダメナコせんせー曰く、「彼は委員会じゃなくても図書室に居たのに、最近パタリと来なくなった」といっていた。
あたしも、たまに彼とすれ違った。けれど、やっぱり違った。
……優しく微笑んでいた彼は、悲しみに沈んでいるような表情だった。
何かあったんだろうか? 心配になった。
でも会いに行くほど、あたしは強くはなかった。
三也沢君は、浮いている。
何もなく隣に居るところをみられたら、あたしまでういてしまうんじゃないか。……そんな心配が、あたしの頭を過ぎった。
なんて、臆病なんだろう。でも、こうするしかあたしは自分を保てなかった。
きっと、この気持ちも薄れる。会わなければ、きっと消える。
そう思って、自らも彼を避けだした。
それから、彼とは会わなくなった。
それから淡々と、一年が過ぎた。
相変わらず、あたしは図書委員で、ダメナコせんせーの仕事を手伝っている。たまにダメナコせんせーに薦められて、宮沢賢治の本とか読んだり。最近、ちょっとはまりだした。
そんなこんなで、結構目まぐるしい生活を送っている時に、
あたしは、彼の姿を見た。
あたしが出張に行っているダメナコせんせーの代わりに、古本の整理をしていたのだ(いつもの事だけどさ)。
図書室には奥の部屋というのがあって、いつもは鍵が閉まっている。ところが、今日は開いていた。気になってみたところ、そこに居たのは彼だった。
一年ぶりに見た彼は、身長が高くなっていた。
でも。
あの、優しい瞳は、変わってはいなかった。
「ごめん……」
え?
「ごめんな、フウ……」
あたしから見て、三也沢君は背中を向けている。
けれど、判った。
「ごめん、ごめん……」
——彼は、泣いていたのだ。
「お前のこと、何にも判ってやれなかった……本当にゴメン」
どうして、彼は泣いているんだろう。
フウって、誰のことなんだろう?
……何だか、怖かった。
でも、聞かずにはいられなかった。
息を潜めて、あたしは彼の様子を静かに観察する。
「……せめて、お前にさ」
やめて。
何となく予想できた言葉に、思わず静止の念を唱える。
そんなに聞きたくなかったら聞かなければよかったのに。
「『好きだよ』……って、伝えたかった」
聞いてしまった。
……ゆっくりと、後ろに下がって。
気配を感じ取られないように、あたしは図書室を後にした。
◆
……次の日。あたしは、ダメナコせんせーに彼の話を少しだけ聞いた。
あたしは、彼のことを何にも知らなくて。
「(お母さんと、上手くいってない、かあ……)」
ホウ、と、白い息が出てきた。
フワフワと、雪が舞う。……あたしと同じ名前の、雪。
あたしはね。良く、判らないんだ。
彼のことを何にも知らない。
知りたくても、臆病ですぐ引っ込んじゃう。でもね。
やっぱり、好きなんだよ。
気持ちが、抑えきれないほどあたしの頭を満たしているんだよ。
薄れてなんかいなかった。ましてや、消えてもいなかった。あふれ出しちゃうほど、好きで好きで。
そして、苦しい想いが広がるんだよ。
悲しい? 辛い? 寂しい?
いいえ。
「切ないなあ」
これは、『切なさ』なんだ。
憂鬱な平凡少女は、自身を罵る
(あたしの独り言は、)
(灰色の空に響くことなく、消えていった)
(どうしようもないなあ、あたし)
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