コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 臆病な人たちの幸福論【第五部完結】
- 日時: 2016/03/05 21:35
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: AO7OXeJ5)
臆病な幽霊少女は、思い出す。
人を疑いながらも、好きだったわたしを。
泣き虫な文学少年は、後悔する。
せめて、言葉にして伝えたかった。
怠惰な女性司書は、紛らわす。
子供に甘えるなんて、どうなのよ。
憂鬱な平凡少女は、自身を罵る。
どうしようもないなあ、あたし。
——愛。
それは彼らに共通したもの。
カタチは違うけど、彼らを繋ぐ。
繋がりの中で彼らは……何を見つけるのだろうか?
黒雪様の【あなたの小説の宣伝文、作ります!】に頼み込んで、作ってもらった素敵な紹介文です!! ありがとうございました、黒雪様!!
お知らせ!!>>485
ご報告!!>>198
5000いけました!!!>>390
【皆おいで! オリキャラ投稿だよ!! ついでにアンケートもだよ!】>>165(本気と書いてマジと読む。どうかよろしくお願いします!)
はい、全然完結させてない八重です。
…今回は、ちゃんと完結させるつもりでございます。…多分。
約束守れない人って、情けない…。
注意
・低クオリティ。何かありきたり。
・幽霊が出てきます。
・最初はとんでもなく暗いです。
・中傷など、常識やルールを守れない方はすぐにお帰りくだされ。
・恋物語です。でも、糖分は低めです。
・瀬戸君の佐賀弁が似非っぽい。
・宮沢賢治のお話がちょろちょろでます。
・批評大好物なので、バッチコイ! あ、でもあまり過激なモノは…(汗
・宣伝は常軌に外さなければおkです。ただ、宣伝だけはおやめください。お友達申請? カモンです!!w
・誤字脱字あったらすぐにコメを!!
では、よろしくお願いします!!
この小説に欠かせない大切な方々の名前一覧!>>430
目次
登場人物>>54(ネタバレあり。本作読むのが面倒な人はここを読んで置くのがオススメ。大体の話の筋はわかるから)
〜第一部〜
臆病な幽霊少女…>>01(挿絵>>231)>>02>>03>>08(挿絵>>431)(長いこと関わらなかった幽霊少女が恋慕を抱く話)
泣き虫な文学少年…>>14>>15>>16(挿絵>>549)>>19(一人を望んだ文学少年が『独り』になることに恐怖を抱く話)
怠惰な女性司書…>>30>>31>>32>>33(怠惰に過ごす女性司書が一人の少年を見て我が身を振り返る話)
憂鬱な平凡少女……>>39>>40>>41>>42(日常を憂鬱に過ごしている平凡少女が弱さを知る話)
【自戒予告〜字が違うよ次回予告だよ〜】>>50(ふざけすぎた次回予告です)
〜第二部〜
間章または序章>>55>>56(幽霊少女と、『声』の話)
第一章 春を迎えた文学青年>>60>>61>>62>>63(文学青年と平凡少女が、非日常に巻き込まれる話)
第二章 困惑した文学青年>>64>>67>>68>>69(幽霊少女の真実と奇跡が、垣間見えた話)
第三章 前進する文学青年>>73>>74>>75>>76(幽霊少女の周りの環境が、だんだんと変わっていく話)
間章 >>87(閉じこもってしまった幽霊少女が、やがて狂っていく話)
第四章 平凡少女の行動>>95>>96>>97>>98(諦めかけた文学青年と、行動を起こした平凡少女の話)
第五章 揺らぐ文学青年>>105>>106>>107>>108(平凡少女と、文学青年と、臆病少女は)
第六章 踏み出す文学青年>>118>>119>>120>>121(イレギュラーが入り込む話)
間章 >>128>>129(混乱する臆病少女の前に、文学青年は)
第七章 どうすればいいのか、判らないことだらけだけど>>132>>133>>134>>135>>136(泣き虫な青年の答えに、臆病少女は)
最終章 やっと、春を迎えました>>141>>142>>143>>144(さあさあ、春と修羅が始まります)
後書き>>149(とりあえず読んで欲しい)
【次回予告〜今度はまじめにやってみた〜】>>157(第三部の次回予告)
〜第三部〜
「モテたいんだ」「「「……はあ?」」」>>161>>162>>163>>164(とある男子高校生の会話)
「えっと、『おぶなが』と『たかだ神殿』が『長しその戦い』で戦って……?」「『織田信長』と『武田信玄』が『長篠の戦い』で戦った、だ」>>175>>176>>177>>178>>179(とあるリア充の話)
「あ、ダメナコ先生じゃなかー!」「ダメナコじゃない。私の名前は光田芽衣子よ」>>187>>188>>191>>192 (とある元引きこもりと不登校少女の話)
間章>>196>>197(とある不登校少女は逃走する)
「何時もより早く登校したら、校門の前にパトカーがあった」「誰に話しているの? 三也沢君」>>214>>215>>216>>217(とある文学青年が、踏み入る)
「——そこに居るのは、誰ですか?」「だあれ、君……?」>>223>>224>>225>>226(不登校少女と、やさしい想い出と苦い想い出と)
「……玲ちゃんの家は、一度離婚してるったい」>>239>>240>>241>>242(第三者が語る、不登校少女の姿)
「どうして、ないてるの?」>>252>>253>>254>>255(無表情少年と不登校少女)
間章>>258>>259(不登校少女と、不登校少女の父)
「何でこんなあつー日に走らんといけんと!?」「全くだ!」>>265>>266>>269>>270(少年少女の試行錯誤)
「い、行かせて平気なんですか!?」「平気よ」>>271>>272>>273>>274(怠惰な司書と平凡少女と臆病少女の他人事と共感と)
『この世界は、嫌なことだらけだ。悲しい事だらけだ。でもだからこそ、お前なら、小さな幸せを見つけることが、出来るはずだろう?』>>281>>282>>283>>286(結局のところは)
「……で、結局どうなったんだ?」>>287>>288>>289>>290(大団円を迎えたよ)
「きっと、何とかなるよ」>>291>>292>>293>>294(第三者だった、文学青年と臆病少女の考察)
小話>>366(第三部の後日談)
後書き>>305(とりあえず読んで欲しい)
【自戒予告〜反省なんて言葉は無いんだよ〜】>>311(シリアスばっかだったから〜…)
〜第四部〜
蛍火の川、銀河に向かって【前編】>>312>>313>>314>>315
蛍火の川、銀河に向かって【中編】>>316>>317>>318>>319
蛍火の川、銀河に向かって【後編】>>323>>324>>325>>326>>327
【あの日を誇れるように ぱーとわん】>>335>>336>>337>>338
【あの日を誇れるように ぱーとつー】>>339>>340>>341>>342
【あの日を誇れるように ぱーとすりー】>>353>>354>>355>>356
【あの日を誇れるように ぱーとふぉー】>>358>>359>>360>>361>>362
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその一」>>367>>368>>369>>370
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその二」>>384>>385>>386>>387
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその三」>>393>>394>>395>>396
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその四」>>402>>403>>404>>405
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその五」>>407>>408>>409>>410>>411
『思い出と後悔のこの町は、また今日も』>>415>>416>>417>>418>>419
【低気圧&高気圧注意報】(方言監修:ルゥ様)>>510>>513>>514>>515>>516(Battle of youth)
〜第五部〜
序章>>426(口裂け女と労働青年の邂逅)
第一章 健全なる高校男子の昼食事情>>433>>434>>435>>436(口裂け女の噂と高校生の話)
第二章 労働少年の秘事>>440>>441>>442>>443(労働少年の家と隣の口裂け女)
記憶喪失の口裂け女の話 一>>447>>448>>449
記憶喪失の口裂け女の話 二>>454>>455>>456
第三章 文学少女と文学青年>>460>>461>>466>>469(女子トイレと橘と後輩と)
口裂け女と労働青年の日々 一>>471>>474>>479>>480
第四章 それは全てを変えるような>>483>>484>>486>>493(ぐらつく足元)
口裂け少女のたまに見る夢>>496>>497
【第五部後半 予告編】>>503(こういうの結構楽しく書ける)
口裂け女の終焉の始まり>>521>>523>>524
口裂け女 ムカシバナシ 1>>525>>526
口裂け女 ムカシバナシ 2>>527>>528>>529
第五章 瀬戸少年の意外な面について>>530>>531>>532>>536(キレる瀬戸君、笑うフウちゃん)
口裂け女のひとつの過ち>>545>>546>>547>>548
口裂け女のひとつの過ち その2>>551>>552>>553>>554
第六章 少しずつ忍び寄る>>559>>560>>561>>562(怪異と妖怪と幽霊と)
第七章 元幽霊少女と現怪異少女>>563>>564>>565>>566(諷子と千代)
口裂け女ノ邯鄲ノ夢>>567>>568>>569
第八章 間違っていること、正しいこと>>570>>571>>572
口裂け女の初めてのデート>>573>>574>>577>>578>>581
第九章 それは何も変わらず>>584>>585>>586>>591
よだかの星になった少女>>592>>593>>594
終章 泣き虫な文学少年と、憂鬱な平凡少女、臆病な元幽霊少女の>>598>>594>>604
番外編・企画・もらい物>>470(これまた多くなったので引っ越し!)
履歴>>332(多すぎてスクロールするのがめんどくなったので引越し!)
その2>>539(その2まで出来ちゃった……本当にありがとうございます!!)
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- Re: 臆病な人たちの幸福論【口裂け女のムカシバナシ】 ( No.529 )
- 日時: 2014/02/20 19:02
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: T5S7Ieb7)
……多分、ワタシはハツみたいに、子供や赤ちゃんが好きではないと思う。
ハツは「弟が可愛いかもしれないけれど」と言ったけれど、ワタシは特にそうは思っていなかった。
あまり弟に関心はなかった。嫌いではなかったけれど、ハツみたいに顔を緩めることは出来なかった。だから接している時も、マニュアル通りにしているだけで。勿論、弟はマニュアル通りには事を進めてはくれなくて、面倒くさくはなったが、それでも弟の世話を止めようとはしなかった。
お父さんとお母さんが頑張っている。だからワタシには見向きもしないのだと。
ここで弟の世話を頑張ったら。……ワタシのこと、見てくれるかもしれないと。
そう、思っただけなのだ。
◆
走る、走る、走る。
ただひたすら、走って走って走る。
なのに、あいつは何時までも追いかけてくる。
——巷で噂された口裂け女のワタシの方が速いハズなのに、要は、とうとうワタシの手首をつかんだ。
ドッと、汗が全身から出ていく。
もう、流石に残暑は通り過ぎて、涼しいどころかうすら寒くなってきたのに。
「千代っち!」
名前を呼ばれたが、ワタシは振り向くことはしない。
何となく予想していた。コイツがワタシを追いかけて、ワタシより速く走って、ワタシの手首をつかむことは。
「なんばしとるの、千代っち。千歳さんの何が気に食わんのじゃ?」
要は、優しく声を掛ける。
こいつは、ワタシが欲しい言葉を、欲しい態度をくみ取ってくれる。そこが好きになった理由だけど。今は、それが嫌だった。
「あなたに……何が判るっていうの」
やっと出た言葉が、それだった。
判ってる。こんなこと言ったって、要を傷つけるだけだ。突き放すことが出来るぐらいだったら、既にやっている。
だけど、何時もワタシの気持ちを見通したかのような態度で喋るこいつに、無性に腹が立って、感情を抑えることが出来なかった。
「判らなかったら、放っておいてよ。お願いだから」
「千代っち!」
「——いい加減、しらばくれるのをやめて!」
自分でも信じられないような金切声に、要がビクリ、と肩を震わせた。
けれどワタシは、それに構わないで責めたてた。
「知ってるでしょ、もう既に! ワタシ、口裂け女なの。バケモノなの。通り魔なの。沢山沢山人殺してるの!」
気づかないわけがない。
要の学校の文化祭の時に、ヒソヒソと陰口で言われた言葉。
『あれって、噂の口裂け女じゃない?』
マスクをしていたのに、何故ワタシの口が裂けているなんて判ったんだろう。
その時は判らなかった。何の噂だったのかも知らなかったし、そもそも噂を立てた記憶もない。
判らないから余計記憶の中で突っかかって来る。気になったワタシは、ネットで調べることにした。
調べてしまった。
夏から起こった、通り魔殺人。
その数、死者負傷者入れて十単位の人たちが被害に遭っている。
負傷者の人たちは、口を揃えてこう言った。——「口裂け女にやられた」と。
被害は、お盆が終わった後に途切れている。
それはちょうど、ワタシが記憶を失くした直前。
証拠は何もない。けれど、ワタシと噂の口裂け女を結びつけないほうがおかしい。
いくら要がテレビも新聞も持たない主義だったとしても、学校や仕事で噂を聞いていたはずだ。
「……思い出したと?」
要の声が、遠くから聞こえるのは、ワタシが現実逃避したいと願っている心のせいか。
だけど、ワタシは、それには答えず、思いっきり要の手を振り払って、走り出した。
できれば飛べたらな、と思った。
(鳥みたいに飛べたら、要に追いつけられることもない)
(このままだと、絶対に要に嫌われる)
(……心の片隅で、またさっきみたいに手首をつかんでくれたらな、と思った自分に自嘲して、今度はもっと速く走った)
- Re: 臆病な人たちの幸福論【傍から見れば男女のもつれ】 ( No.530 )
- 日時: 2014/03/05 18:46
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: T5S7Ieb7)
俺が初めて瀬戸に会った時、第一印象として大きい奴だな、と思った。
最初のそれはがっしりした体格のことを指していたんだが、上田兄妹と武田との件で、一生懸命動く姿を見て、精神も強いんだな、と感じた。
だんだんと瀬戸のヘビーな過去を聞いてくるうちに、それは徐々に確信を帯びていったんだが。
……まあなんにせよ、三也沢健治にとって、瀬戸要というのは、友人であり、恥ずかしいのであまりいわないが、男として、人間として憧れの存在なんだ。
——そいつが、朝っぱらから死んだ目をしていたら、誰だって驚くだろ?
第五章 瀬戸少年の意外な面について
「おかしいぞ今日の瀬戸はッ!」
「落ち着け、三也沢」
勢いのまま叫んだら上田に突っ込まれた。何時もは逆だが、これが慌てずにいられるでか。
「だっておかしいだろ!? 何だ今日の瀬戸の目! 一切光射さずってか死んだサバの目というか瀬戸の趣味渋いから何か四十代手前のオッサンから漂う哀愁があるっていうか!!」
「何後半の例え」
「というか今日のお前は珍しくブレているのだよ」
まさかのボケ担当橘と森永にさえ突っ込まれる。というかお前らは何故冷静なんだよ!!
だってあれぞ!? ヘビーな過去をあっさりと明るくゆって聞く人ぞ瀬戸ショックを受けさせる奴ぞ!? そんな奴が落ち込んでいる(という域を超えている)んだぞ!? 何か今自分が何いってんだか判らなくなってるけど、それぐらい瀬戸があんな落ち込み方をするとは想像もつかなかった。
「結構みなさん平然としていますけれど……ひょっとして、瀬戸君って結構落ち込んだりするんですか?」
混乱の渦の中心に立っている気分で心中のまま突っ込むことなんてできない俺の代わりに、フウが尋ねると、二人はちょっと驚いた顔をした。
「……良く気が付いたね、フウちゃん。その通りだよ」
「不登校を脱出した後も、一人で空ばかり見ていた時期があったのだよ。理由を聞いても何もいわないし、何もしなくなる時もある。多分奴は落ち込むだけ落ち込むタイプだな」
中学時代から付き合いのある、橘と森永から伝わる情報からは、中学生瀬戸像を想像することは出来なかった。代わりに、少しだけ気分が落ち着いたような気がする。
「意外と瀬戸って凄い奴だって勘違いされるんだけど、そうでもないんだよ。まあ、最近じゃ落ち込む姿なんて他人に見せなくなったから、ちょっと俺も驚いたけど……」
「ああ、やっぱり……。あの落ち込みって、今まで上手く行っていたのに急に精神が退化したように落ち込んだ自分に落ち込んでいますよね……。これぐらいじゃもうへこたれないぞー! って思っていたのに、落ち込んじゃってあれ、全然成長していないぞ? と思う自分に自己嫌悪、みたいな」
見事な観察眼を披露するフウに、上田が「良く判っているね、宮川さん……」と感心したようにいった。するとフウは、「わたしの二番目の兄もそんな性格でしたから」という。それにちょっと俺は驚いた。
フウに兄が二人居たことは聞いたことはあったが、どんな人だったかは知らなかった。フウにとって、自分の血の繋がりのある家族の話は、大切な宝物のようなものであると同時に、触れたくない古傷のようなものでもあった。そんなフウが、あっさりと自分の兄のことについて話したということは、フウはフウで、昔よりも成長したのだろう。
それが何時も出来る瀬戸は、今日に限って凄く落ち込んでいるのである。
- Re: 臆病な人たちの幸福論【傍から見れば男女のもつれ】 ( No.531 )
- 日時: 2014/02/25 23:29
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: T5S7Ieb7)
「……奴が人並みに落ち込むことだってあるということは判った」
けどなんで、今日はあんまりにも落ち込んでいるんだ?
そういうと、何故か空気がシンとした。
「……あれ?」
「……鈍い鈍い鈍いとは思っとうたけど、まさかそんなに鈍いとは思ってへんでしたよ、先輩」
星永から呆れた視線を受ける。フウも、流石にそれは……といった。
どうやら既に、この場に集まっている人間は察したらしい。というか、判っていないのは確実に俺だけだった。
「良く考えてください、ケンちゃん。瀬戸君が、今更バイトのことで悩んだり落ち込んだりすると思います?」
「……思わないな」
いや、仕事上のトラブルってベテランだろうが新人だろうか何時だって付きまとうものだとは思うけれど。基本的に働くこと、というか体を動かすことが好きな瀬戸が、バイトの悩みであそこまで落ち込むわけがない。
じゃあ、学校でのトラブルか、と思ったが、それも違うなと考え直す。先週はおかしい様子は見せなかったし、何せ昨日は休日だ。だとすると……。
「あ、千代か」
ポン、と口が裂けた性格がキツイ少女の顔を思い出した。
なるほど、千代か。なら判る。
他人の恋路に首を突っ込むと馬に蹴られるという言葉もあるぐらいだから、他人の俺らが深入りするのもヤボではないだろうか。ここは関わらないほうが……と思いつつ、あれだけ落ち込む瀬戸を見ると、気になって仕方がない。
「……なにがあったんだろうな?」
「フラれたとか……はナイデスヨネー」
橘が軽くいって、すぐに訂正する。女子陣が睨んだからだ。
まあそれは、絶対にないだろうな。千代が瀬戸に向ける好意は、あきらかさまだ。本人は隠しているつもりらしいが、瀬戸と話す時のツンとデレのスイッチが、俺たちと話す時とは全く違う。幾らなんでもニブイといわれる俺だって判った。
じゃあ、千代がツンツンしすぎて傷ついたとか? それもないだろう。何故ならあの瀬戸だ。千代とファーストコンタクトを取った時、千代を叱った時の瀬戸は中々威圧的だった。怒る時はちゃんと怒るし、その前に彼は許容範囲が十八歳とは思えないぐらい広く、思考も達観している。というか渋い。
じゃあなんだ? と考えるが、中々思いつかない。
「……聞いてみるか?」
瀬戸に直接事情を聞く。それしか方法はない。
「あの今の瀬戸に聞くの?」
「でもそれしかないようですよ」
散々話し合った結果、ジャンケンで負けた奴が聞きに行くことになった。
あの瀬戸に話しかける勇気など、誰一人持ってはいなかったからな。
そして、長い長い引き分けの末、役目を担ったのは橘だった。
「何で俺ッ!?」
「お前がジャンケンに負けたからだろ」
「ファイトー!」
頑張れ勇者橘。未来は君にかかってる! と、どこぞの冒険ゲームの煽り文句みたいなナレーションを心中に留まらせ、俺たちは遠くから橘と瀬戸を見守ることにした。
- Re: 臆病な人たちの幸福論【傍から見れば男女のもつれ】 ( No.532 )
- 日時: 2014/02/27 19:32
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: T5S7Ieb7)
◆
「いや無理だってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
とうとう橘が音を上げた。いや、最初から音は上げていた。どちらかというと、橘の心が折れた。
「使えねえな……」
「全く」
「いやお前らやってみろよ! 今日の瀬戸は落ち込んでるだけじゃなくてめっさ不機嫌なんだよ!! あんな怖い瀬戸おらあには無理だって!!」
「……まあ確かに」
今さっきまでは普通に、……いや、あの時点で普通ではないが、それでも落ち込んでいただけだったと思う。それが、時間をかけて、周りの空気がどす黒くなったというか。要は、瀬戸が急に不機嫌になったようなのである。
「橘がモタモタしてたからじゃないのか?」
「橘がうざかったから」
「橘の存在が鬱陶しかったから」
「さり気に俺の存在そのものを否定するのやめてくれますッ!?」
とまあ、橘をいじるのはこの辺にして。
ある方法を思いついた俺は、やっと何時もの自分に戻ったような気がした。
……まあ、今だけだろうけど。
「……橘に無理を言わせるつもりはねえよ。俺たちにできないことを、無理に押し付けることはしねえ」
「……三也沢」
「というわけで、お前邪魔。帰っていいぞ」
シッシ、と追い払う仕草をする。
「さっきの俺の感動返せぇぇぇぇぇ!! ちょっと感動したのにぃぃい!! というかお前がいうか!? 血相変えて俺ら集めてその上ジャンケンで負けたのが瀬戸に事情聴取するとか提案したお前がいうか!?」
「あー、はいはい俺が悪うございましたー。じゃ、上田、先に教室戻ってくれ。んで、森永は橘を戻しといてくれ」
「え、俺らも帰っていいの?」
「待て。何故俺がゴ……橘を回収せねばならぬのだよ」
「ゴミって言いかけた!? 今ゴミって言いかけたよね!?」
「いーいーかーら、とっとと戻れ。あ、星永も杉原もいいぞ、戻って」
問答無用で追い払う。しかし、杉原は、「あたし、何であんなに瀬戸君が落ち込んでるんだか気になる!」といいだした。
マズイ。ここでフウ以外の人間が残ったらかなりマズイ。何が何でも杉原にはクラスに戻って貰わねば。
だが、真向な善意を否定するのは些か気が引ける。どうしたものかと思った時。
「大丈夫ですよ。たった今、瀬戸君に話しかけるいい方法思いついたし。ただ、もうそろそろ授業が始まるでしょう?」
「フウちゃんだって授業はあるよ?」
「うん。だけど、あのままだと瀬戸君、今日一日は授業を受けられそうではないですし。ここは一時間さぼって、気持ちを入れ替えさせた方がいいと思うの。そーゆーのは、わたし兄で慣れてるから」
「……」
「大丈夫。後で教えるよ」
空気を呼んでくれたフウが杉原にやんわりといった。フウに弱い杉原は、「……判った」と渋々引き下がる。
フウの表情を見る限り、フウには俺が考えていることが判っていたようだ。
皆が引き下がった後、フウは少し苦いものを笑顔と混じらせていった。
「トイレの花子さんと瀬戸君を会わせて、千代ちゃんのことを全部話させるつもりですね?」
「ああ」
旧校舎の女子トイレに住んでいる、トイレの花子さんはフウがこの学校の怪談として生活していた時からの友人だ。様々な学校に居ついているトイレの花子さんと情報を交換できる為、知りたいことは何でも知れる。そろそろ、千代についてのことも彼女は掴んでいるハズだ。
「……女装、するんですね?」
「……ああ」
花子さんは男嫌いだ。
その為前回、俺は、女装した。まあ、正体は結構すぐバレたらしいが、流石に男の恰好のまま女子トイレに入るとなれば、わいせつ罪で捕まると思う。幾ら花子さんの噂と、古すぎて不気味な為あまり使われなくなってしまったとはいえ、それでも未だに使用者はちゃんと居るのである。というわけで、今回も女装必須だ。
ちなみに橘を下がらせたのは、女装した姿でバッタリ橘と会ってしまい、女装した俺とは知らず、俺に告白してきたからだ。ニブイニブイと言われている俺でも判る。
……彼の目は、本気と書いてマジだった。
後のメンバーはまあ。……女装趣味とは思われたくないからだ。いや、女装趣味の人間悪くいってるわけじゃないぞ? 決して、……じぶんはそうじゃないというだけで。
今日の俺は本気でブレていたが、橘たちのノリで、何とか通常に戻った。けれど……女子トイレに入る為に女装するのは、正気なのか。……答えは明白である。
ああ、さらば通常の俺よ。
- Re: 臆病な人たちの幸福論【傍から見れば男女のもつれ】 ( No.533 )
- 日時: 2014/02/27 22:39
- 名前: ルゥ (ID: DjQ11j/o)
こっちでは結構お久しぶりですね!ルゥです!
ケンちゃんにとって要が憧れというとんでもダイナミック爆弾をさっらと迎撃投下されたようで私は現在進行形で吐血中←
えー…ゴホンゴホン
どうやらケンちゃんがまたもや女装とのことで、(第一次)ケンちゃん女装事件の要因………というかもはや原因である私参上www
そして話の流れから、要に花子さんを対面ということはつまり要もじょs((殴
…ゲフンゲフン
はい何でもないですよww←
気にしないでくださいw
そしていつになく通常運転の森永のしんちゃんと橘の兄さんww
もはや橘くんは兄さん付けですわw
楽しいですね〜♪
このお話の人たちや学校なんかがリアルにあったらいいのに…ww
そして今日は久々、もはや忘れてもしょうがないシーカーからの伝言をば預かってまっせw↓
『えー八重さんお久しぶりです、シーカーです。直接顔出せんと伝言なんは堪忍してください。今回無事高校卒業、大学進出を果たし、少しずつネットが解禁され始めとりますので、ルゥちゃんに伝言を頼みました。
長い溜め込みを読ませてもらいましたが、安定の丁寧さとキチッとなっとる方言わけ素晴らしいです。キャラ個々の楽しさや面白さがひしひしと伝わってきます。
でもまだまだ詰めが甘いことや発展途上な部位もありるようです。キャラの言い回しが遠くなりすぎて内容の全体が伝わりにくく感じたことや、単純な誤字。
しかしそれが一層引き立てを果たしとる。なんで、こーゆうんを言われても落ち込むことはありません。反省して評価して向上させる、これは基礎ですが、後悔なんぞせんでええのです!せやからこれからも自信持って前向いてがんばってください!
ルゥちゃんに聞きましたところ、八重さんも受験無事合格したようで、おめでとうございます!でも油断は禁物!受験よかむしろ入った後の学力維持がめっちゃ難しいんやで!せやからそれもまたがんばってw
では長くなりましたが、シーカーからはここまでにさせて頂きます。
追伸
トドちゃんことトッドーからも八重さんによろしくと預かってきたので、これもルゥちゃんに託しますw
ルゥちゃん堪忍な!ww』
はい。
いいように二人にパシられましたww
では、もう夜遅くなるので私も長く(?)なりましたがこれにてw
伝言、確かに届けましたよー!!(=゜ω゜)ノ
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