コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 臆病な人たちの幸福論【第五部完結】
- 日時: 2016/03/05 21:35
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: AO7OXeJ5)
臆病な幽霊少女は、思い出す。
人を疑いながらも、好きだったわたしを。
泣き虫な文学少年は、後悔する。
せめて、言葉にして伝えたかった。
怠惰な女性司書は、紛らわす。
子供に甘えるなんて、どうなのよ。
憂鬱な平凡少女は、自身を罵る。
どうしようもないなあ、あたし。
——愛。
それは彼らに共通したもの。
カタチは違うけど、彼らを繋ぐ。
繋がりの中で彼らは……何を見つけるのだろうか?
黒雪様の【あなたの小説の宣伝文、作ります!】に頼み込んで、作ってもらった素敵な紹介文です!! ありがとうございました、黒雪様!!
お知らせ!!>>485
ご報告!!>>198
5000いけました!!!>>390
【皆おいで! オリキャラ投稿だよ!! ついでにアンケートもだよ!】>>165(本気と書いてマジと読む。どうかよろしくお願いします!)
はい、全然完結させてない八重です。
…今回は、ちゃんと完結させるつもりでございます。…多分。
約束守れない人って、情けない…。
注意
・低クオリティ。何かありきたり。
・幽霊が出てきます。
・最初はとんでもなく暗いです。
・中傷など、常識やルールを守れない方はすぐにお帰りくだされ。
・恋物語です。でも、糖分は低めです。
・瀬戸君の佐賀弁が似非っぽい。
・宮沢賢治のお話がちょろちょろでます。
・批評大好物なので、バッチコイ! あ、でもあまり過激なモノは…(汗
・宣伝は常軌に外さなければおkです。ただ、宣伝だけはおやめください。お友達申請? カモンです!!w
・誤字脱字あったらすぐにコメを!!
では、よろしくお願いします!!
この小説に欠かせない大切な方々の名前一覧!>>430
目次
登場人物>>54(ネタバレあり。本作読むのが面倒な人はここを読んで置くのがオススメ。大体の話の筋はわかるから)
〜第一部〜
臆病な幽霊少女…>>01(挿絵>>231)>>02>>03>>08(挿絵>>431)(長いこと関わらなかった幽霊少女が恋慕を抱く話)
泣き虫な文学少年…>>14>>15>>16(挿絵>>549)>>19(一人を望んだ文学少年が『独り』になることに恐怖を抱く話)
怠惰な女性司書…>>30>>31>>32>>33(怠惰に過ごす女性司書が一人の少年を見て我が身を振り返る話)
憂鬱な平凡少女……>>39>>40>>41>>42(日常を憂鬱に過ごしている平凡少女が弱さを知る話)
【自戒予告〜字が違うよ次回予告だよ〜】>>50(ふざけすぎた次回予告です)
〜第二部〜
間章または序章>>55>>56(幽霊少女と、『声』の話)
第一章 春を迎えた文学青年>>60>>61>>62>>63(文学青年と平凡少女が、非日常に巻き込まれる話)
第二章 困惑した文学青年>>64>>67>>68>>69(幽霊少女の真実と奇跡が、垣間見えた話)
第三章 前進する文学青年>>73>>74>>75>>76(幽霊少女の周りの環境が、だんだんと変わっていく話)
間章 >>87(閉じこもってしまった幽霊少女が、やがて狂っていく話)
第四章 平凡少女の行動>>95>>96>>97>>98(諦めかけた文学青年と、行動を起こした平凡少女の話)
第五章 揺らぐ文学青年>>105>>106>>107>>108(平凡少女と、文学青年と、臆病少女は)
第六章 踏み出す文学青年>>118>>119>>120>>121(イレギュラーが入り込む話)
間章 >>128>>129(混乱する臆病少女の前に、文学青年は)
第七章 どうすればいいのか、判らないことだらけだけど>>132>>133>>134>>135>>136(泣き虫な青年の答えに、臆病少女は)
最終章 やっと、春を迎えました>>141>>142>>143>>144(さあさあ、春と修羅が始まります)
後書き>>149(とりあえず読んで欲しい)
【次回予告〜今度はまじめにやってみた〜】>>157(第三部の次回予告)
〜第三部〜
「モテたいんだ」「「「……はあ?」」」>>161>>162>>163>>164(とある男子高校生の会話)
「えっと、『おぶなが』と『たかだ神殿』が『長しその戦い』で戦って……?」「『織田信長』と『武田信玄』が『長篠の戦い』で戦った、だ」>>175>>176>>177>>178>>179(とあるリア充の話)
「あ、ダメナコ先生じゃなかー!」「ダメナコじゃない。私の名前は光田芽衣子よ」>>187>>188>>191>>192 (とある元引きこもりと不登校少女の話)
間章>>196>>197(とある不登校少女は逃走する)
「何時もより早く登校したら、校門の前にパトカーがあった」「誰に話しているの? 三也沢君」>>214>>215>>216>>217(とある文学青年が、踏み入る)
「——そこに居るのは、誰ですか?」「だあれ、君……?」>>223>>224>>225>>226(不登校少女と、やさしい想い出と苦い想い出と)
「……玲ちゃんの家は、一度離婚してるったい」>>239>>240>>241>>242(第三者が語る、不登校少女の姿)
「どうして、ないてるの?」>>252>>253>>254>>255(無表情少年と不登校少女)
間章>>258>>259(不登校少女と、不登校少女の父)
「何でこんなあつー日に走らんといけんと!?」「全くだ!」>>265>>266>>269>>270(少年少女の試行錯誤)
「い、行かせて平気なんですか!?」「平気よ」>>271>>272>>273>>274(怠惰な司書と平凡少女と臆病少女の他人事と共感と)
『この世界は、嫌なことだらけだ。悲しい事だらけだ。でもだからこそ、お前なら、小さな幸せを見つけることが、出来るはずだろう?』>>281>>282>>283>>286(結局のところは)
「……で、結局どうなったんだ?」>>287>>288>>289>>290(大団円を迎えたよ)
「きっと、何とかなるよ」>>291>>292>>293>>294(第三者だった、文学青年と臆病少女の考察)
小話>>366(第三部の後日談)
後書き>>305(とりあえず読んで欲しい)
【自戒予告〜反省なんて言葉は無いんだよ〜】>>311(シリアスばっかだったから〜…)
〜第四部〜
蛍火の川、銀河に向かって【前編】>>312>>313>>314>>315
蛍火の川、銀河に向かって【中編】>>316>>317>>318>>319
蛍火の川、銀河に向かって【後編】>>323>>324>>325>>326>>327
【あの日を誇れるように ぱーとわん】>>335>>336>>337>>338
【あの日を誇れるように ぱーとつー】>>339>>340>>341>>342
【あの日を誇れるように ぱーとすりー】>>353>>354>>355>>356
【あの日を誇れるように ぱーとふぉー】>>358>>359>>360>>361>>362
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその一」>>367>>368>>369>>370
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその二」>>384>>385>>386>>387
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその三」>>393>>394>>395>>396
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその四」>>402>>403>>404>>405
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその五」>>407>>408>>409>>410>>411
『思い出と後悔のこの町は、また今日も』>>415>>416>>417>>418>>419
【低気圧&高気圧注意報】(方言監修:ルゥ様)>>510>>513>>514>>515>>516(Battle of youth)
〜第五部〜
序章>>426(口裂け女と労働青年の邂逅)
第一章 健全なる高校男子の昼食事情>>433>>434>>435>>436(口裂け女の噂と高校生の話)
第二章 労働少年の秘事>>440>>441>>442>>443(労働少年の家と隣の口裂け女)
記憶喪失の口裂け女の話 一>>447>>448>>449
記憶喪失の口裂け女の話 二>>454>>455>>456
第三章 文学少女と文学青年>>460>>461>>466>>469(女子トイレと橘と後輩と)
口裂け女と労働青年の日々 一>>471>>474>>479>>480
第四章 それは全てを変えるような>>483>>484>>486>>493(ぐらつく足元)
口裂け少女のたまに見る夢>>496>>497
【第五部後半 予告編】>>503(こういうの結構楽しく書ける)
口裂け女の終焉の始まり>>521>>523>>524
口裂け女 ムカシバナシ 1>>525>>526
口裂け女 ムカシバナシ 2>>527>>528>>529
第五章 瀬戸少年の意外な面について>>530>>531>>532>>536(キレる瀬戸君、笑うフウちゃん)
口裂け女のひとつの過ち>>545>>546>>547>>548
口裂け女のひとつの過ち その2>>551>>552>>553>>554
第六章 少しずつ忍び寄る>>559>>560>>561>>562(怪異と妖怪と幽霊と)
第七章 元幽霊少女と現怪異少女>>563>>564>>565>>566(諷子と千代)
口裂け女ノ邯鄲ノ夢>>567>>568>>569
第八章 間違っていること、正しいこと>>570>>571>>572
口裂け女の初めてのデート>>573>>574>>577>>578>>581
第九章 それは何も変わらず>>584>>585>>586>>591
よだかの星になった少女>>592>>593>>594
終章 泣き虫な文学少年と、憂鬱な平凡少女、臆病な元幽霊少女の>>598>>594>>604
番外編・企画・もらい物>>470(これまた多くなったので引っ越し!)
履歴>>332(多すぎてスクロールするのがめんどくなったので引越し!)
その2>>539(その2まで出来ちゃった……本当にありがとうございます!!)
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122
- Re: 臆病な人たちの幸福論【『静雄のダメな夏休み』更新スタート!】 ( No.384 )
- 日時: 2013/05/16 17:44
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)
前回までのあらすじ!
チャッチャーチャチャチャチャチャー(OP風に)。
この物語の主人公、武田静雄はとある普通の少年だった。
「え何!? 後の風景!? ドラ●エか!? それともF●ですか!? というか作者どちらもやったことな」
ある日やる気のない女性司書に『こんなのいらないだろ』的にボロボロな本を与えられる。
「無視かよナレーションッッ!! というかいらねえよ!!」
「あげるわよー」
「『あげるわよー』じゃなくて、ただ捨てるのが面倒だっただけですよねダメナコ先生!? 何この感じ! ドラ●エの『ぬののふく』一枚で放り出されるのも大概だと思ったけどこれはそれを上回りますよ!?」
それをあけてみると、栞代わりに聖剣が挟まってあった。
「何でッッ!?」
しかも血で濡れていた。
「怖い!!!! んなもん栞にすんじゃねぇぇぇぇ!! というかもう既に僕のテンションとキャラが崩か」
彼はその聖剣を持って悪の団元剣道部を倒す為に旅に出る。
そのリーダーであるシスコン魔王はかなりの強敵で、その聖剣がなければ倒せない。シスコン魔王を倒して姫を救え!!
「またか!! また無視か僕の存在何空気!? ミスディレクション!? いっとくけど僕は現剣道部だしそもそも姫って魔王の実の妹でしょう助けなくていいじゃないですか!!?」
これは、武田静雄の、冒険紀行である……。
「だからさっさと本編へ進んでください!!! こういう話じゃないだろうが!!!!」
はい、嘘あらすじです。いっぺんやってみたかったんです、こういうの。
「おい!!」
それでは、本編へどうぞ。
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその二」
前回のあらすじ。図書室の天井から、忍者が落ちてきました。
「……忍者、ですね」
「改めてみても、やっぱりそうだね」
弁当を下敷きにした忍者を、改めて確認。程よい量の黒髪の青年は、マッチョではないが体格は良かった。身長は……一八〇センチはあるでしょう。
そして、茶色のしのび装束の下には、オレンジ色のジャージを着ていた。正直いいましょう。見てて暑苦しい。
「な、何で忍者が……?」
呆然と呟く彼女。その時、う……、と、忍者の青年はうめき声を上げ、ゆっくりと目を開けた。
「……」
「……」
僕たちはばっちりと目を合わせ、その中に沈黙が流れる。
忍者は、まず僕たちをまじまじと見て、次に彼の下敷きになって食べれなくなった弁当の残骸を見た。
- Re: 臆病な人たちの幸福論【『静雄のダメな夏休み』更新スタート!】 ( No.385 )
- 日時: 2013/05/16 17:48
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)
そしてとっても気まずい顔をして、なにやら思考を巡らせてから、棒読みでこういった。
「……ココハドコ? ワタシハダレ?」
「なめてんのかテメェェェェェェ!!」
「んなもんこっちが聞きたいわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
状況を判っていながら無理やりボケたので、ぶち切れる寸前だった僕らは構わず忍者にけりを入れた。
「折角ぅぅぅぅ!! 折角母さんがわざわざ早起きまでして作った弁当をぉぉおぉぉ!!」
「頑張った!! 私だって頑張ったんですよ!? 沢山沢山勉強した!!! なのに、どうしてぇ!! どうして弁当台無しにしてくれたんですかぁぁぁぁ!!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!! 止めて!! ケツに蹴りは止めて!! 痔になる!! ウ●コ出来なくなるから止めてェェェェェ!!」
「食事にんな不衛生な言葉呟くんじゃねえよバッカヤロォォォォォ!!」
「や、止めて本当に!! 弁当を台無しにしたことは謝りますから!! ちょ、掘らないでお嫁にいけなくな——」
◆
とあるコンビニにて。
特に予定の無い男子高校生三人組は、コンビニの前でアイスを食べていた。
「……」
「……おい、上田? アイス零してるぞ? おーい」
「……」
「……何『クワッ!』と目を開けているのだよ、上田」
「……妹が」
「妹が?」
「……」
「上田?」
「妹が……天使の妹(マイエンジェルシスター)が……悪の道に走って堕天しようとしてるッ……!!」
そういって、彼はアイスを放り投げ(というかぶん投げて)、一目散に走った。
『……————後に、男子高校生Tはこう答える。
目に留まらぬ、足の踏み出しと腕の振り方。
低く構える、上半身。
機関車の如く走り出す彼の顔は、笑って……いた。
「ええ、それはもう、極上の笑みでしたよ……。ノーマルな僕らには到底理解も出来ない、笑い顔でした」
「あれは人間ではありません」友人と思えないセリフをぼやくTは、こういった。
「あの笑みは……まさしく、魔王でした」』
……と、頭の中にインタビュー形式の妄想が流れたが、橘はすぐさまハッと我にかえった。
「……ってボーっとしてないで追いかけないと!! 森永、追いかけるぞ!!」
「え、ちょ待つのだよ!! まだ限定のアイスが食べ終わってない——って早ッ!! 少し落ち着くのだよ——」
落ち着くのだよ、といいつつ、実は一番テンパっている彼に、ねえ、と後ろから、肩に手が置かれた。
彼は振り向いた。そこには、頭のてっぺんにアイスをつけた女性が、恐ろしい笑みで佇んでいた。
「これ飛ばしたの、君でしょ?」
どうやら、上田が放り投げたアイスが、女性の頭に乗っかったようだ。
なので、彼は必死に弁明しようとする。が。
「え、いや、それは友人が——」
「御託は結構。で……」
にこやかに笑みを浮かべる女性は、更にいう。
森永伸太郎は、いやな予感しかしなかった。
真夏日の昼なのに、背中には冷や汗しか流れない。
すう、と女性は息を吸い込んで、般若の形相に変わった。
「どーしてくれるんじゃこのボケがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「いやああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
——この後、森永がどうなったのか、知る人はいない。
ただ、この後この暑さを冷やそうとする人たちの視聴率を取ろうとする、怪談の企画を持った番組が放送される。
その怪談の中の一つに、こんな話がある。
『あるコンビニの前でアイスを食べると、アイスを憎む鬼女が、アイスを食べる人たちを襲う』、と——。
- Re: 臆病な人たちの幸福論【『静雄のダメな夏休み』更新スタート!】 ( No.386 )
- 日時: 2013/05/16 18:12
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)
◆
蝉の声が鳴り響く。
その声を聴いているだけで、日があまり差さない図書室も、温度が上がるんじゃないかと錯覚した。
……満足がいくまで蹴った後、僕たちは忍者——のような青年に、身元を尋ねた。
ボロボロの顔になった青年は、まるでゲ●ゲの鬼太郎のように目を腫らしていた。……そのような顔にしたのは僕らですが。
彼は切れた唇を必死に動かして答えた。
「えー……烏間佐介、十八歳です。高校三年。好きな食べ物は鶏肉と野菜生活で——」
「好みを聞いてるんじゃないんですよ」
「ヒィ!! スイマセン、スイマセン!!」
これ以上ボケをかまされたら話が進まないので、睨みをきかせると、忍者のような青年——烏間は額が床に着くぐらいに頭を下げた。
歳は二つほど上らしいですが……ヘタレ過ぎる。目つきは釣りあがっている癖に、今は情けなく垂れ下がっている。
「……なんで図書室の天井裏に潜んでたのですか、と聞きたいところですが、とりあえずそれは置いといて」
「え、ソレ結構重要なんじゃない?」
「その前に……貴方、この学校の生徒じゃないですよね。他校の人が何でお盆休みに来たんですか?」
僕が聞くと、うぐ、と烏間は怯んだ。
「(ここまで判りやすい忍者っているんだろうか)」
彼を見て呆れながら、しかしこの突飛な状況を整理してみる。
他校の生徒が学校へ来るのは珍しくは無い。他校にも友人はいるだろうから。
しかし、本来なら誰も居ない学校に、わざわざ来るのはおかしい。
しかも、天井裏から降ってきたとなると。
「……忍者っていうか、どっちかというと泥棒っぽいですよね」
忍び装束も、下手したら典型的な泥棒装束にも見える。
僕がそういうと、烏間は血相変えて否定した。
「ち、違う!! 僕は物を盗むためにここに居るんじゃない!!」
「僕は取り返しに——」そこまでまくし立ててから、ハ、と口を塞ぐ。
「取り返しに?」
時既に遅しという奴で、僕も彼女も、その言葉を聞き逃さなかった。
言葉を返した彼女は、彼の目を見る。彼は、視線を逸らした。答えるつもりはないのだと、一目で判った。
僕はその態度にイラついたけど、それにめげずに、彼女は聞く。
「ねえ、何か盗られちゃったの? 事情があるなら、あたしたち手伝ってもいいよ?」
「勝手に僕も含まないでくださいよ」
お人よしの彼女が、優しく彼にいった。ついでに僕も巻き込んで。
だが、彼は「……断る」と、重々しくいった。
「いきなり現れて驚かせたり、弁当をダメにしたりしたことは謝罪を述べないといけないし、その気持ちには感謝しかいえないけれど、——ダメなんだ。忍者は死んでも、自分が持っている情報を漏らしちゃならない。それこそ、恥を晒すことなんだ。だから——」
「図書室の天井裏から抜け落ちてくる時点で、忍者としても人としても終わってると思いますよ、貴方」
言い募る姿がうざかったので、バッサリとわざとキツメに僕はいった。
彼はそれこそ漫画のように、縦線を頭の斜め上に引いて、膝と手を床につけて落ち込んだ。
「ちょ、静雄君!! 落ち込んじゃったじゃん!!」
「なんかもー、面倒になったので。というかそもそも、こんなカッコで図書室の天井裏に潜むことから非常識すぎて恥ずかしいですよ。オチが見えまくりです。三流ドラマですかこれ」
「ま、まああたしも思ったけど……でもなんか事情あるみたいだし! ね、烏間さん、事情を話してくださいよ!」
何故か慌てながらも、それでも親身に接する彼女。しかし、彼は落ち込みながらも、やはり口を固く結んでいる。
彼女の一歩前に出た僕は、彼にいった。
「……何も知らない僕たちは、貴方を不法侵入者及び器物破損で警察に突き出すことしかすることがありませんが。——勿論、見逃すこともしません」
「……!」
彼は驚いた顔をする。
当たり前だ。天井が大きく抜けた上に貴重な本が数冊やられているのだから。
「さあ、どうしますか? やることを果たす前に、警察のお世話になるか。それとも、僕らに事情を話し、協力を仰ぐか。もっとも、協力するのは玲だけですが」
「え、ちょっとぉ!?」
口を三の字にして尖らせる彼女に、「いったのは玲でしょう」と返す。それが気に入らなかったのか、彼女は少し頬を膨らませて反論した。それに皮肉をいれてまた反論する。
- Re: 臆病な人たちの幸福論【『静雄のダメな夏休み』更新スタート!】 ( No.387 )
- 日時: 2013/05/16 17:57
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)
そこから彼女とは少し論争になった。
日常茶飯事なのだが、その様子を見ていた彼は、少し呆けてみていた。が——顔色を取り戻し、固く結んでいた口元を緩めて、笑った。
「……何だか君たち、兄妹みたいだな」
「いきなり何いうんですか。というかそんな恐ろしいこといわないでください」
ついに手出しも黙認、というような喧嘩も始まって、僕は玲の手首を掴んで必死に否定した。
彼女が「こんな妹は五月蝿いっていいたいの!?」と怒っていたが、違う。怖いのは君の鬼いさんナンダヨー。
「……こうしてみると、少し昔のことを思い出すよ」
そういって、彼は一拍置いた。
グ、という音が聞こえたと思うと、伏せていた目を、力強く僕らに向けた。
「やっぱり忍者失格で、父上に怒られるだろうけど。今警察のお世話になったら、もう誰も止める人も居なくなるだろうし——そうなったらまずいから。しかたがない。話すよ」
でもその前に、と彼は続ける。
なんだろう、と僕と玲が思った刹那、
グゥゥゥゥゥ。
「あ」
三つのお腹から、大きな音がした。
……そういえばご飯、まだだった。
◆
一方、その頃。
「うおおおおおおお!! はやまらないでくれ、我が妹よぉぉぉぉ!!」
「はやまりそうなのはオメーだよ上田ァァァァァ!!」
ダダダダダダ、と田舎の道を爆走する男子高校生二人。
通りすがったモノたちは、真夏日なのにこんなに走って死なないだろうか、と思う反面、若いっていいねえ、とも思っていた。(つまり、大して心配もしていなかった)。
田んぼのあぜ道を通っているのに、空間を支配しているのは、肌を突き刺すような日差しと、高温を伴った湿気に、途切れることが無い蝉の声。それすらも無視してしまうほど、二人は走った。
やがて、二人がたどり着いたのは、通っている高校だった。
「……って、学校じゃん。お盆は誰もいないだろ」
立ち止まった途端、疲れを認知した橘は、かがんでゼーゼー、と死に掛けの呼吸を繰り返していた。
「いや……確か、玲はあの武田とかいうたわけ者と一緒に図書室にいるハズだ」
「あー……そういや、そう、いってたな」
礼儀正しいが無表情の後輩の顔を思い出しながら、橘は相槌を打った。
何か、上田は思考を巡らしている。その間に、橘は呼吸を正常に戻した。
息苦しさが大体抜けた頃に、上田はある答えを出していた。
「……は! まさか、襲われたのか!?」
「何でその一択しかねーんだよお前は! 思考が極端すぎる!! 怪我をしたとかそういうのも考えられるだろうし、というかお前暑さでやられてるんじゃねえの。何、シスコンの次は電波さんですかー?」
しかし、頭の隅々まで妹のことしか考えれない上田は、更に暴走して、妄想を繰り広げる。
先生もいない、二人っきりの場所。
そして場所は、音を吸収して、声は響かない図書室。
広々とした場所で、玲と奴は……!!
「……今日の殺試合で、息の根を止めればよかった」
「あれ? 今わたくし橘は『コロシアイ』って聴こえちゃったような気がしますんですが……やーっはっはは、暑さにやられて幻聴が聴こえてしまうとはぁー」
「いや……今でも遅くはないな」
物騒なことを、わざと明るく聞き流そうとした橘だが、暴走する上田はそんな橘の気遣いすら聞こえていない。
そしてどこからもなく、上田は金属バッドを取り出した。
「……コロスッッッ……!!」
「いい加減にしろよおまえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!! 人の話は聞けよ!!」
我慢の限界でぶち切れ、叫ぶ橘。しかし上田は何も聞いてくれない。
も、ダメだ——そう思った時。
「……あれは、なんだ?」
(その頃、橘先輩は、図書室のベランダに、不審な影を見たという)
(忍者が落ちてくるとき、物語は始まる)
(……かもしれない)
- Re: 臆病な人たちの幸福論【『ボケる忍者とシスコンな魔王』更新!】 ( No.388 )
- 日時: 2013/05/17 22:30
- 名前: バーバー父 ◆kHS/rHtDQ6 (ID: Ar0Lat0c)
- 参照: うがあああああああああああああああ
お久しぶりです、覚えてますかね?
実は久しぶりすぎて、どこまで読んだか記憶があいまいなのです・・・。
さぁぁぁぁぁぁあああせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇんっ!!
来週辺りに丁度、時間があるのでその時にまたじっくり見させてください!!
これからもがんばってください!!
では
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122
この掲示板は過去ログ化されています。