コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 臆病な人たちの幸福論【第五部完結】
- 日時: 2016/03/05 21:35
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: AO7OXeJ5)
臆病な幽霊少女は、思い出す。
人を疑いながらも、好きだったわたしを。
泣き虫な文学少年は、後悔する。
せめて、言葉にして伝えたかった。
怠惰な女性司書は、紛らわす。
子供に甘えるなんて、どうなのよ。
憂鬱な平凡少女は、自身を罵る。
どうしようもないなあ、あたし。
——愛。
それは彼らに共通したもの。
カタチは違うけど、彼らを繋ぐ。
繋がりの中で彼らは……何を見つけるのだろうか?
黒雪様の【あなたの小説の宣伝文、作ります!】に頼み込んで、作ってもらった素敵な紹介文です!! ありがとうございました、黒雪様!!
お知らせ!!>>485
ご報告!!>>198
5000いけました!!!>>390
【皆おいで! オリキャラ投稿だよ!! ついでにアンケートもだよ!】>>165(本気と書いてマジと読む。どうかよろしくお願いします!)
はい、全然完結させてない八重です。
…今回は、ちゃんと完結させるつもりでございます。…多分。
約束守れない人って、情けない…。
注意
・低クオリティ。何かありきたり。
・幽霊が出てきます。
・最初はとんでもなく暗いです。
・中傷など、常識やルールを守れない方はすぐにお帰りくだされ。
・恋物語です。でも、糖分は低めです。
・瀬戸君の佐賀弁が似非っぽい。
・宮沢賢治のお話がちょろちょろでます。
・批評大好物なので、バッチコイ! あ、でもあまり過激なモノは…(汗
・宣伝は常軌に外さなければおkです。ただ、宣伝だけはおやめください。お友達申請? カモンです!!w
・誤字脱字あったらすぐにコメを!!
では、よろしくお願いします!!
この小説に欠かせない大切な方々の名前一覧!>>430
目次
登場人物>>54(ネタバレあり。本作読むのが面倒な人はここを読んで置くのがオススメ。大体の話の筋はわかるから)
〜第一部〜
臆病な幽霊少女…>>01(挿絵>>231)>>02>>03>>08(挿絵>>431)(長いこと関わらなかった幽霊少女が恋慕を抱く話)
泣き虫な文学少年…>>14>>15>>16(挿絵>>549)>>19(一人を望んだ文学少年が『独り』になることに恐怖を抱く話)
怠惰な女性司書…>>30>>31>>32>>33(怠惰に過ごす女性司書が一人の少年を見て我が身を振り返る話)
憂鬱な平凡少女……>>39>>40>>41>>42(日常を憂鬱に過ごしている平凡少女が弱さを知る話)
【自戒予告〜字が違うよ次回予告だよ〜】>>50(ふざけすぎた次回予告です)
〜第二部〜
間章または序章>>55>>56(幽霊少女と、『声』の話)
第一章 春を迎えた文学青年>>60>>61>>62>>63(文学青年と平凡少女が、非日常に巻き込まれる話)
第二章 困惑した文学青年>>64>>67>>68>>69(幽霊少女の真実と奇跡が、垣間見えた話)
第三章 前進する文学青年>>73>>74>>75>>76(幽霊少女の周りの環境が、だんだんと変わっていく話)
間章 >>87(閉じこもってしまった幽霊少女が、やがて狂っていく話)
第四章 平凡少女の行動>>95>>96>>97>>98(諦めかけた文学青年と、行動を起こした平凡少女の話)
第五章 揺らぐ文学青年>>105>>106>>107>>108(平凡少女と、文学青年と、臆病少女は)
第六章 踏み出す文学青年>>118>>119>>120>>121(イレギュラーが入り込む話)
間章 >>128>>129(混乱する臆病少女の前に、文学青年は)
第七章 どうすればいいのか、判らないことだらけだけど>>132>>133>>134>>135>>136(泣き虫な青年の答えに、臆病少女は)
最終章 やっと、春を迎えました>>141>>142>>143>>144(さあさあ、春と修羅が始まります)
後書き>>149(とりあえず読んで欲しい)
【次回予告〜今度はまじめにやってみた〜】>>157(第三部の次回予告)
〜第三部〜
「モテたいんだ」「「「……はあ?」」」>>161>>162>>163>>164(とある男子高校生の会話)
「えっと、『おぶなが』と『たかだ神殿』が『長しその戦い』で戦って……?」「『織田信長』と『武田信玄』が『長篠の戦い』で戦った、だ」>>175>>176>>177>>178>>179(とあるリア充の話)
「あ、ダメナコ先生じゃなかー!」「ダメナコじゃない。私の名前は光田芽衣子よ」>>187>>188>>191>>192 (とある元引きこもりと不登校少女の話)
間章>>196>>197(とある不登校少女は逃走する)
「何時もより早く登校したら、校門の前にパトカーがあった」「誰に話しているの? 三也沢君」>>214>>215>>216>>217(とある文学青年が、踏み入る)
「——そこに居るのは、誰ですか?」「だあれ、君……?」>>223>>224>>225>>226(不登校少女と、やさしい想い出と苦い想い出と)
「……玲ちゃんの家は、一度離婚してるったい」>>239>>240>>241>>242(第三者が語る、不登校少女の姿)
「どうして、ないてるの?」>>252>>253>>254>>255(無表情少年と不登校少女)
間章>>258>>259(不登校少女と、不登校少女の父)
「何でこんなあつー日に走らんといけんと!?」「全くだ!」>>265>>266>>269>>270(少年少女の試行錯誤)
「い、行かせて平気なんですか!?」「平気よ」>>271>>272>>273>>274(怠惰な司書と平凡少女と臆病少女の他人事と共感と)
『この世界は、嫌なことだらけだ。悲しい事だらけだ。でもだからこそ、お前なら、小さな幸せを見つけることが、出来るはずだろう?』>>281>>282>>283>>286(結局のところは)
「……で、結局どうなったんだ?」>>287>>288>>289>>290(大団円を迎えたよ)
「きっと、何とかなるよ」>>291>>292>>293>>294(第三者だった、文学青年と臆病少女の考察)
小話>>366(第三部の後日談)
後書き>>305(とりあえず読んで欲しい)
【自戒予告〜反省なんて言葉は無いんだよ〜】>>311(シリアスばっかだったから〜…)
〜第四部〜
蛍火の川、銀河に向かって【前編】>>312>>313>>314>>315
蛍火の川、銀河に向かって【中編】>>316>>317>>318>>319
蛍火の川、銀河に向かって【後編】>>323>>324>>325>>326>>327
【あの日を誇れるように ぱーとわん】>>335>>336>>337>>338
【あの日を誇れるように ぱーとつー】>>339>>340>>341>>342
【あの日を誇れるように ぱーとすりー】>>353>>354>>355>>356
【あの日を誇れるように ぱーとふぉー】>>358>>359>>360>>361>>362
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその一」>>367>>368>>369>>370
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその二」>>384>>385>>386>>387
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその三」>>393>>394>>395>>396
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその四」>>402>>403>>404>>405
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその五」>>407>>408>>409>>410>>411
『思い出と後悔のこの町は、また今日も』>>415>>416>>417>>418>>419
【低気圧&高気圧注意報】(方言監修:ルゥ様)>>510>>513>>514>>515>>516(Battle of youth)
〜第五部〜
序章>>426(口裂け女と労働青年の邂逅)
第一章 健全なる高校男子の昼食事情>>433>>434>>435>>436(口裂け女の噂と高校生の話)
第二章 労働少年の秘事>>440>>441>>442>>443(労働少年の家と隣の口裂け女)
記憶喪失の口裂け女の話 一>>447>>448>>449
記憶喪失の口裂け女の話 二>>454>>455>>456
第三章 文学少女と文学青年>>460>>461>>466>>469(女子トイレと橘と後輩と)
口裂け女と労働青年の日々 一>>471>>474>>479>>480
第四章 それは全てを変えるような>>483>>484>>486>>493(ぐらつく足元)
口裂け少女のたまに見る夢>>496>>497
【第五部後半 予告編】>>503(こういうの結構楽しく書ける)
口裂け女の終焉の始まり>>521>>523>>524
口裂け女 ムカシバナシ 1>>525>>526
口裂け女 ムカシバナシ 2>>527>>528>>529
第五章 瀬戸少年の意外な面について>>530>>531>>532>>536(キレる瀬戸君、笑うフウちゃん)
口裂け女のひとつの過ち>>545>>546>>547>>548
口裂け女のひとつの過ち その2>>551>>552>>553>>554
第六章 少しずつ忍び寄る>>559>>560>>561>>562(怪異と妖怪と幽霊と)
第七章 元幽霊少女と現怪異少女>>563>>564>>565>>566(諷子と千代)
口裂け女ノ邯鄲ノ夢>>567>>568>>569
第八章 間違っていること、正しいこと>>570>>571>>572
口裂け女の初めてのデート>>573>>574>>577>>578>>581
第九章 それは何も変わらず>>584>>585>>586>>591
よだかの星になった少女>>592>>593>>594
終章 泣き虫な文学少年と、憂鬱な平凡少女、臆病な元幽霊少女の>>598>>594>>604
番外編・企画・もらい物>>470(これまた多くなったので引っ越し!)
履歴>>332(多すぎてスクロールするのがめんどくなったので引越し!)
その2>>539(その2まで出来ちゃった……本当にありがとうございます!!)
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- Re: 臆病な人たちの幸福論【参照2200突破感謝祭更新!!】 ( No.214 )
- 日時: 2013/01/21 19:38
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2/index.cgi?mode
ひぐらしが、鳴く。
蒸し暑い早朝。田舎とはいえアスファルトで整備されている道を、俺はただひたすら歩く。
今日、早く起きて早く登校したのは、あまり意味はない。ただ、目が覚めた後、テレビを見たりゆっくり食事したりする時間に割かなかっただけで、いうならば気まぐれだ。だから、今日一日を特別な日にしようとか、そんなことは思わなかった。何時もどおりの日常が始まるのだと思った。
……思った、のに。
「何時もより早く登校したら、校門の前にパトカーがあった」「誰に話しているの? 三也沢君」
「……さあ、何かいいたかった気分なんだよ」
俺が返すと、「何ソレ」と杉原に怪訝な顔をされた。……まあ、当たり前といえば当たり前なのかもしれない。
学校に来てみると、パトカーが三台ほど止まっていて、そこに突っ立ってたダメナコに聞いてみると、どうやら一年生の女子が行方不明になっていたのだ。
「行方不明……神隠しかなあ。時期も夏だし」なんてことを杉原が呟いた。思わず俺は、うぐ、という奇妙な音を出してしまう。
「うんな非科学的なことあるかい!」
「……つい最近まで、非科学的なことありまくったのに?」
俺がツッコミを入れると、杉原は更にツッコミを入れた。俺は言葉を詰まらせる。
……確かにそうだ。フウが生霊のままこの学校をさ迷ったとか、何故か俺だけその姿が見えたとか、半世紀以上仮死状態だったとかそして生き返ったとか。
——最近、常識が通用しない日常を送っているような気がする。
……ここ数年で、自分の頭の中にある常識やらルールやら理屈は、あまりにもちっぽけであるということを、とことん理解させられた。嫌というほど。これでもかというほど。
だから、杉原がいった「神隠し」がない、なんていいきれない。
だが。
「確かに世の中は不思議なことだらけだろうけど、だからといってそんなことが毎日あってたまるかっ」
俺の言葉に、ポカン、とする杉原は、その後神妙な表情でうなずいた。
「……まあ、それもそうだね」
「だろっ」
第一、行方不明者がうちの学校の生徒とはいえ、俺は名前も顔も知らない相手だ。関係ないといえば冷たいだろうが、友達でもない俺らが心配しても邪魔になるだけである。俺たちが出来ることは、無事見つかることを祈ること、見つかるまで何時もどおりに過ごすことを務めることだ。
そうと決まれば、もう俺たちには職員室の前で突っ立っている必要はない。
「ほら、杉原行くぞ。ダメナコも何時までも突っ立ってないで……」
俺は言葉を続けるのを止めた。
何故なら、俺は見て驚いたのだ。
ダメナコが、見たことのない程青ざめた顔色で居たことに。
「……ダメナコ?」
「……ひょっとしたら、私のせいかも知れない……」
ボソボソと、呟くダメナコ。
その声は本当にか弱く震えて、頼りないほどに消えてしまいそうな声だった。
両手で身体を抱いて、必死に強く保とうとしたが、だんだんと身体は震え上がっていく。
一瞬、騒がしく、木霊していた廊下の空気が、静まったような気がした。
その中で、バタン、と倒れた音は、何処か不吉で、鈍くも良く通る音だった。
- Re: 臆病な人たちの幸福論【参照2200突破感謝祭更新!!】 ( No.215 )
- 日時: 2013/01/21 19:43
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2/index.cgi?mode
「……一応、脈は安定している。命に別状はない」
養護教諭の美作は、少ししわを眉間に寄せていった。
……ダメナコの容態について、美作は嘘をついていないだろう。ただ、それは身体の話で、精神はかなり参っているようだった。
「……どうしたんだろう、せんせー。いきなり倒れるなんて」杉原も、顔色が少し悪い。
「……杉原。俺たちはダメナコについてやろうぜ」
「三也沢君?」
「美作は、行方不明の生徒を探してやんなきゃならねえだろ。授業が出来る感じじゃないし、ここは俺たちに任せて、いってくれ」
警察は、事件性が薄いと動いてくれない。浚われたのか自分から行方不明になったのかは判らないが、後者ならば積極的に介入することはないだろう。となると、人手が足りないハズだ。それに、行方不明ということは、生徒の容態がどうなのかも判らない。養護教諭は緊急事態にすぐ動けるよう、備えたほうがいい。
「……一応、生徒たちは自習ってことになっているが、まあいいか。お前たちは成績が良いほうだからな」
美作は「昼まで帰らなかったら、恐らく生徒は強制下校だ。それまでよろしく頼む」といって、出て行った。
視線を窓のほうへ向ける。町中探して見つからないのなら、恐らく行方不明者は別の町か山のほうにいるだろう。
……近くに立っている山は、樹海が傍にある。歩道が作られているし、入れば帰れなくなる事はないが、来た道に戻れなくなることは多々ある(それでも樹海を抜ける道は幾らでもある)。
——だが、その樹海は青木ヶ原も真っ青な自殺の名所だ。
「……今日は、ひぐらしがやけに鳴くな」
そのひぐらしの声が、これから不吉な出来事が起きると、報せているようだった。
◆
君には、一体何があるのだろう。
勉強が出来るだろうか。いいや、君は勉強が大嫌いだった。
不登校になると、嫌悪は拍車を掛けていく。
なら、運動は? 運動は出来るだろうか。いいや、君は身体を動かすのは好きだったが、疲れるのは嫌いだった。
不登校になると、引きこもって、身体が硬くなっていく。
なら、優しさは? 優しさはあるだろう?
……いいや、君は君のことしか考えられない。
だって、優しささえあれば、君は約束を破ることも裏切ることも、人を傷つけることもなかったのだから。
そう、君は臆病だ。何もない、ただそこに置かれているガラクタだ。
臆病じゃなければ、こんな風に、何もかも逃げ出すことはない。
役に立たない、ただの置物だ。
けれど、君は生きている。
生きて、そして苦しんでいる。役に立たない君が、周りを巻き込んで他人をも苦しませている。
なら、こっちにおいでよ。
楽になれる方法を、教えてあげるよ——……。
——誰かが、あたしに囁いた。
その声は優しそうで、とても残忍な声だった。
何だというのだろう、あたしは一体ナニをしたのだろう。
判らない。判らない。
判らないから、怖い。
怖いから、逃げるのだ。
- Re: 臆病な人たちの幸福論【参照2200突破感謝祭更新!!】 ( No.216 )
- 日時: 2013/01/21 19:49
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2/index.cgi?mode
◆
一時限目終了のチャイムが鳴って少しした後、トタトタと走る音が聴こえた。
「(……この足音は、フウだな)」
俺が足音の正体を確信したその時。
「ケンちゃん、雪ちゃんっ」
「見つけたったい、みやっち、すぎっち!」
息切れしたフウと、さっき倒れる前のダメナコと同じ顔色をした男が入ってきた。
俺より少し低い背丈、痩せ型だが身体は俺よりもしっかりしている。黒髪に黒い瞳、俺と違ってたれた愛嬌ある目は、何処か……そう、今はしょげた犬を連想させた。
彼の名は瀬戸要。つい最近仲良くなった(というか一方的に話しかけられて友達にさせられたとでもいうだろうか。不満はないが)。
「フウ、瀬戸も来たの」
「芽衣子さん、倒れたって本当!?」
俺の言葉を遮り、すぐさまダメナコの容態を聞くフウ。声は比較的抑えているが、口調はかなり乱れていた。
「あ、ああ。今、そこで寝ている」
「どうして倒れたったい!?」今度は瀬戸がたずねてきた。
「どうしてって……こっちが聞きたいわ。行方不明になった生徒の話をしている最中にぶっ倒れて……」
そこまで聞いて、俺は気がついた。
二人の元々悪かった顔色が、更に悪化しているということに。
行方不明者の話をした後、ダメナコは自分を責めるようなことを呟き、ぶっ倒れた。
それを聞いたフウたちが、これまでの経緯を聞くと、まるであらかじめ予想していたような様子を見せる。
——どうやら、ダメナコもフウも瀬戸も、今回の行方不明事件に関わっているらしい。
「……取り合えず、座れ」
このまま興奮させれば、ダメナコのようにぶっ倒れてしまうだろう。
促すと、二人は素直にソファに座った。
……が、この後のことを考えていない。
「(ど、どうすりゃいいんだ……!?)」
俺は焦った。コミュ障の俺は、こういう時の対応がわからない。座らせたところで、二人の顔色が良くならなければ意味がないではないか。
どうしよう、と悩んでいる間に、杉原が「ちょっと待って」といって、数分後二人分のハーブティを持ってきた。
——ハーブティは、眠れなくなったときとか、興奮状態を抑える作用があるのよ。
ダメナコの、くらだないと思っていた知識が、ここで活用されていた。確かに、ハーブティを飲んだ二人の顔色は、少し良くなった。
流石だ、杉原。そう感心している反面、俺なんか役立たずだなという重い気持ちが広がった。が、感傷に浸る前に、聞かなければならないことがあった。
「……何があった?」
俺が聞くと、二人はゆっくり、代わり代わりに説明した。
「行方不明の生徒が上田の妹で、話題の不登校!?」
俺は驚いて、寝ている人が居るのに上ずった声を出してしまった。
「通りで、一年生に対しての聞き込み調査がないのね……」
杉原は一人納得する。俺も納得した。本来、行方不明者が出れば友好関係を知るために、まず一年生の奴らが調べられる。けれど、不登校なら少なくとも高校で友好関係など築けるハズがない。
……中々、探すのには骨が折れそうだ。
- Re: 臆病な人たちの幸福論【参照2200突破感謝祭更新!!】 ( No.217 )
- 日時: 2013/01/21 20:23
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2/index.cgi?mode
「……で、それとダメナコがぶっ倒れたことと何の関係があるんだ?」
俺が話を切り込むと、今度は瀬戸が説明した。
「実は昨日、俺がバイトしとる喫茶店に、ひーたれた玲ちゃんが来とって」
「泣きながら?」
俺が聞くと、瀬戸はコクン、と頷いた。
「どーしたっとかなー、と思っている最中に、コーヒー買いにきたダメナコ先生が来て、ダメナコ先生にどがんしたのか聞いて欲しいってゆったら、良いってゆーて……。ところがどっこい、聞き出そうとした途端、邪魔が入って、肝心のとこば聞けんかったばい。その後玲ちゃん逃げたけん」
「その話を、わたしは芽衣子さんから直接聞きました。多分、その子が失踪したと聞いて、自分のせいだと責めてしまったんでしょう」
瀬戸に続き、フウが口を挟んだ。
俺は、そうか、と頷くことしか出来ない。
ここで、今まで何も聞かなかった杉原が質問した。
「……ねえ、瀬戸君。その口ぶりだと、玲ちゃんのこと知っているように聞こえるけど……」
「あー。俺、一度玲ちゃんと顔ば合わせた事あるけん。中学校の頃、剣道部の助っ人の時に、うえっちに紹介されて」
「そうなんだ」
「……でも、その時から、玲ちゃんは不登校やった」
瀬戸の一言に、杉原は口をつぐんだ。
杉原の様子に、瀬戸は手を振って焦った様子を見せる。
「あ、でもでもでも! そん時は少し、嬉しそうやったばい!? やっぱりあれやと思う、お兄さんが家に来たから……」
「……お兄さんが?」
「家に来た?」
最後の言葉を、杉原とフウは聞き逃さなかった。
……反対に瀬戸は、「あ、いっちゃった」という顔をしている。
「……ねえ、それってどういうこと?」
「包み隠さず丁寧に、説明してくれますよね?」
グイ、と女子二人は「女の顔」をして瀬戸に聞く。
追い詰められた瀬戸は、俺に「助けろ」と視線で訴えてきたが、俺は見事ムシした。助けてくれる見込みを見つけられなかったのだろう。意外とあっさり降参して、瀬戸はこれまでのことを話した。
◆
——ねえ、ママ。どうして玲には、パパが居ないの……?
——皆、一人ずつパパが居るのに。ねえ、どうして?
小さい頃あたしが聞くと、ママは何時も困った笑みしかしなかった。
ただ、あの時だけは。
——ねえ、玲弟か妹欲しいなあ。お兄ちゃんやお姉ちゃんはムリだろうから。
——一人でお留守番は、寂しいもの。
……あの時だけは、ママはとても、とても傷ついた顔をした。
その時あたしは、我がままをいってはいけないと、思ったのだ。
一人は、怖い。一人は、寂しい。
だから、誰にでも好かれようと。誰にでも嫌われないようにと。
——ずっとずっと、痛いものから目をそらし続けた。
でも、それも長続きしないで、疲れ果てて、一人になった。
人と接するのが怖くて、でもやっぱり一人は寂しくて、怖くて。
そうだ、あの時も。
あの時も、凄く暑い夏のお昼間で。本当に気まぐれで、外に出歩いていたんだ。
暑くて、財布も帽子も忘れてしまったドジなあたしは、広場に大きな木下で休んでいた。外の空気も、自分の体温も下がらなくて、息が上がって苦しくなって。だんだんと、視界が歪んできた。その時に——……。
『……そこに居るのは、誰ですか?』
——あの子に、会ったんだ。
昔話をしましょうか
(一人の青年は、第三者として語り)
(一人の少女は、当事者として一人で思い出す)
- Re: 臆病な人たちの幸福論【『行方不明…?』更新!!】 ( No.218 )
- 日時: 2013/01/22 00:12
- 名前: ライアー ◆4gulet/d9g (ID: j553wc0m)
玲ちゃんの過去がこれから明らかになるのですね。
そしてダメナコ先生、大丈夫だろうか・・・。早く元気になってもらいたいですね。
こんばんは!! また来ました、ライアーですw
玲ちゃんの不登校の真実や逃走の意味が明らかになるのですね。
不登校・・・ですか。心配ですね。
関係ない話ですが、今の現状、不登校やいじめ関連の事件やニュースが目立ってきています。
そんな話を耳にするたびに、少し心がズキッと痛みます。そして自分に無力さを感じてしまうものです。
たとえ赤の他人と言えど、何か出来ないのか、助けられないのか、と。
ですが実際は、難しいですよね。闇の中にいる人を助け出すというのは・・・。
・・・・・・何を語っているのでしょうね、私はw 失礼しました。
雑談が長くなってしまって申し訳ありません。アンケートの方書かせていただきます!!
〜調子に乗ってアンケート!〜
Q1 貴方が好きな、この作品のキャラクターは誰ですか? ベスト3をお答えください。
1(森永伸太郎)2(三也沢健治)3(光田芽衣子)
理由、森永君、君は私そっくりだ!!w だから一位!!ww
【必須】Q2貴方が嫌いな、この作品のキャラクターは誰ですか? ベスト3をお答えください。
1(フウの父) ←生まれなきゃよかったなんて言うんじゃありません。
2(第三部、「モテたいんだ」「「「……はあ?」」」、で主人公達に静かにしろと注意した女子)
←許してあげて!! 男子の青春の会話なんだから!!w
Q3貴方が好きな、この作品のお話は何ですか?
(第二部、第七章 どうすればいいのか、判らないことだらけだけど)
←号泣。火矢八重様のファンになった瞬間w
【必須】Q4貴方が嫌いな、この作品のお話は何ですか? ベスト3をお答えください。
1()2()3()
←・・・・・・申し訳ありません。嫌いなお話が見当たらなかったので書けませんでしたw どうかお許しください。
【必須】Q5貴方が好きな、この作品のコンビは誰と誰ですか? コンビ名を名づけてお答えください。【(橘徹)と(森永伸太郎)】コンビ名(スケベーズ)
←そもそも彼らはコンビなのかww 変態キャラが好きなのでw
Q6この作品を、どうやって知りましたか
(たまたま一番上に更新されていたので、読んでいる内に気付けばファンになっていた・・・w)
Q7作者をどう思いますか
(笑いもアリ、涙もアリ、という素晴らしい小説を書き上げる、凄い作者様だと思います。
私もいずれは作者様の様な方になれればなぁ、と思いますw)
Q8何か一言
(いつも執筆お疲れ様です。これからも楽しく読ませていただきます。
よければこれからもよろしくお願いします。長文失礼しました。)
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