コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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臆病な人たちの幸福論【第五部完結】
日時: 2016/03/05 21:35
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: AO7OXeJ5)

臆病な幽霊少女は、思い出す。
人を疑いながらも、好きだったわたしを。

泣き虫な文学少年は、後悔する。
せめて、言葉にして伝えたかった。

怠惰な女性司書は、紛らわす。
子供に甘えるなんて、どうなのよ。

憂鬱な平凡少女は、自身を罵る。
どうしようもないなあ、あたし。

——愛。
それは彼らに共通したもの。
カタチは違うけど、彼らを繋ぐ。
繋がりの中で彼らは……何を見つけるのだろうか?





 黒雪様の【あなたの小説の宣伝文、作ります!】に頼み込んで、作ってもらった素敵な紹介文です!! ありがとうございました、黒雪様!!





お知らせ!!>>485
ご報告!!>>198
5000いけました!!!>>390

【皆おいで! オリキャラ投稿だよ!! ついでにアンケートもだよ!】>>165(本気と書いてマジと読む。どうかよろしくお願いします!)



 はい、全然完結させてない八重です。
 …今回は、ちゃんと完結させるつもりでございます。…多分。
 約束守れない人って、情けない…。



 注意
・低クオリティ。何かありきたり。
・幽霊が出てきます。
・最初はとんでもなく暗いです。
・中傷など、常識やルールを守れない方はすぐにお帰りくだされ。
・恋物語です。でも、糖分は低めです。
・瀬戸君の佐賀弁が似非っぽい。
・宮沢賢治のお話がちょろちょろでます。
・批評大好物なので、バッチコイ! あ、でもあまり過激なモノは…(汗
・宣伝は常軌に外さなければおkです。ただ、宣伝だけはおやめください。お友達申請? カモンです!!w
・誤字脱字あったらすぐにコメを!!

 では、よろしくお願いします!!


この小説に欠かせない大切な方々の名前一覧!>>430



目次

登場人物>>54(ネタバレあり。本作読むのが面倒な人はここを読んで置くのがオススメ。大体の話の筋はわかるから)

〜第一部〜
臆病な幽霊少女…>>01(挿絵>>231>>02>>03>>08(挿絵>>431)(長いこと関わらなかった幽霊少女が恋慕を抱く話)
泣き虫な文学少年…>>14>>15>>16(挿絵>>549>>19(一人を望んだ文学少年が『独り』になることに恐怖を抱く話)
怠惰な女性司書…>>30>>31>>32>>33(怠惰に過ごす女性司書が一人の少年を見て我が身を振り返る話)
憂鬱な平凡少女……>>39>>40>>41>>42(日常を憂鬱に過ごしている平凡少女が弱さを知る話)

【自戒予告〜字が違うよ次回予告だよ〜】>>50(ふざけすぎた次回予告です)



〜第二部〜
間章または序章>>55>>56(幽霊少女と、『声』の話)
第一章 春を迎えた文学青年>>60>>61>>62>>63(文学青年と平凡少女が、非日常に巻き込まれる話)
第二章 困惑した文学青年>>64>>67>>68>>69(幽霊少女の真実と奇跡が、垣間見えた話)
第三章 前進する文学青年>>73>>74>>75>>76(幽霊少女の周りの環境が、だんだんと変わっていく話)

間章 >>87(閉じこもってしまった幽霊少女が、やがて狂っていく話)

第四章 平凡少女の行動>>95>>96>>97>>98(諦めかけた文学青年と、行動を起こした平凡少女の話)
第五章 揺らぐ文学青年>>105>>106>>107>>108(平凡少女と、文学青年と、臆病少女は)
第六章 踏み出す文学青年>>118>>119>>120>>121(イレギュラーが入り込む話)

間章 >>128>>129(混乱する臆病少女の前に、文学青年は)

第七章 どうすればいいのか、判らないことだらけだけど>>132>>133>>134>>135>>136(泣き虫な青年の答えに、臆病少女は)
最終章 やっと、春を迎えました>>141>>142>>143>>144(さあさあ、春と修羅が始まります)

後書き>>149(とりあえず読んで欲しい)

【次回予告〜今度はまじめにやってみた〜】>>157(第三部の次回予告)




〜第三部〜
「モテたいんだ」「「「……はあ?」」」>>161>>162>>163>>164(とある男子高校生の会話)
「えっと、『おぶなが』と『たかだ神殿』が『長しその戦い』で戦って……?」「『織田信長』と『武田信玄』が『長篠の戦い』で戦った、だ」>>175>>176>>177>>178>>179(とあるリア充の話)
「あ、ダメナコ先生じゃなかー!」「ダメナコじゃない。私の名前は光田芽衣子よ」>>187>>188>>191>>192 (とある元引きこもりと不登校少女の話)

間章>>196>>197(とある不登校少女は逃走する)

「何時もより早く登校したら、校門の前にパトカーがあった」「誰に話しているの? 三也沢君」>>214>>215>>216>>217(とある文学青年が、踏み入る)
「——そこに居るのは、誰ですか?」「だあれ、君……?」>>223>>224>>225>>226(不登校少女と、やさしい想い出と苦い想い出と)
「……玲ちゃんの家は、一度離婚してるったい」>>239>>240>>241>>242(第三者が語る、不登校少女の姿)
「どうして、ないてるの?」>>252>>253>>254>>255(無表情少年と不登校少女)

間章>>258>>259(不登校少女と、不登校少女の父)

「何でこんなあつー日に走らんといけんと!?」「全くだ!」>>265>>266>>269>>270(少年少女の試行錯誤)
「い、行かせて平気なんですか!?」「平気よ」>>271>>272>>273>>274(怠惰な司書と平凡少女と臆病少女の他人事と共感と)
『この世界は、嫌なことだらけだ。悲しい事だらけだ。でもだからこそ、お前なら、小さな幸せを見つけることが、出来るはずだろう?』>>281>>282>>283>>286(結局のところは)
「……で、結局どうなったんだ?」>>287>>288>>289>>290(大団円を迎えたよ)
「きっと、何とかなるよ」>>291>>292>>293>>294(第三者だった、文学青年と臆病少女の考察)



小話>>366(第三部の後日談)

後書き>>305(とりあえず読んで欲しい)
【自戒予告〜反省なんて言葉は無いんだよ〜】>>311(シリアスばっかだったから〜…)


〜第四部〜
蛍火の川、銀河に向かって【前編】>>312>>313>>314>>315
蛍火の川、銀河に向かって【中編】>>316>>317>>318>>319
蛍火の川、銀河に向かって【後編】>>323>>324>>325>>326>>327

【あの日を誇れるように ぱーとわん】>>335>>336>>337>>338
【あの日を誇れるように ぱーとつー】>>339>>340>>341>>342
【あの日を誇れるように ぱーとすりー】>>353>>354>>355>>356
【あの日を誇れるように ぱーとふぉー】>>358>>359>>360>>361>>362

「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその一」>>367>>368>>369>>370
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその二」>>384>>385>>386>>387
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその三」>>393>>394>>395>>396
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその四」>>402>>403>>404>>405
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその五」>>407>>408>>409>>410>>411

『思い出と後悔のこの町は、また今日も』>>415>>416>>417>>418>>419


【低気圧&高気圧注意報】(方言監修:ルゥ様)>>510>>513>>514>>515>>516(Battle of youth)

〜第五部〜

序章>>426(口裂け女と労働青年の邂逅)
第一章 健全なる高校男子の昼食事情>>433>>434>>435>>436(口裂け女の噂と高校生の話)
第二章 労働少年の秘事>>440>>441>>442>>443(労働少年の家と隣の口裂け女)
記憶喪失の口裂け女の話 一>>447>>448>>449
記憶喪失の口裂け女の話 二>>454>>455>>456
第三章 文学少女と文学青年>>460>>461>>466>>469(女子トイレと橘と後輩と)
口裂け女と労働青年の日々 一>>471>>474>>479>>480
第四章 それは全てを変えるような>>483>>484>>486>>493(ぐらつく足元)
口裂け少女のたまに見る夢>>496>>497


【第五部後半 予告編】>>503(こういうの結構楽しく書ける)


口裂け女の終焉の始まり>>521>>523>>524
口裂け女 ムカシバナシ 1>>525>>526
口裂け女 ムカシバナシ 2>>527>>528>>529

第五章 瀬戸少年の意外な面について>>530>>531>>532>>536(キレる瀬戸君、笑うフウちゃん)


口裂け女のひとつの過ち>>545>>546>>547>>548
口裂け女のひとつの過ち その2>>551>>552>>553>>554


第六章 少しずつ忍び寄る>>559>>560>>561>>562(怪異と妖怪と幽霊と)
第七章 元幽霊少女と現怪異少女>>563>>564>>565>>566(諷子と千代)
口裂け女ノ邯鄲ノ夢>>567>>568>>569
第八章 間違っていること、正しいこと>>570>>571>>572
口裂け女の初めてのデート>>573>>574>>577>>578>>581
第九章 それは何も変わらず>>584>>585>>586>>591
よだかの星になった少女>>592>>593>>594

終章 泣き虫な文学少年と、憂鬱な平凡少女、臆病な元幽霊少女の>>598>>594>>604



番外編・企画・もらい物>>470(これまた多くなったので引っ越し!)


履歴>>332(多すぎてスクロールするのがめんどくなったので引越し!)
その2>>539(その2まで出来ちゃった……本当にありがとうございます!!)

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Re: 臆病な人たちの幸福論【ダメナコルート完結!】 ( No.334 )
日時: 2013/03/11 18:01
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)
参照: ちょっと>

ルゥ様!!

褒めすぎですよw でもありがとうございます!w

おkkk!! というかあの話は一章だったのですね…。次はどんな話なんでしょうか?

はい、楽しみにしといてくださいなw 恐らく今週中には更新できると思いますw

更新頑張ります!w

Re: 臆病な人たちの幸福論【ダメナコルート完結!】 ( No.335 )
日時: 2013/03/20 22:49
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)
参照: ちょっと>

              【あの日を誇れるように ぱーとわん】


 あたし杉原雪は、お盆とはいえ里帰りすることも墓参りすることもなく、けれど折角の休みなので、何時ものメンバーである今井萌と佐藤佐奈と一緒に、街を歩いていた。
 別に何処かへ行く予定もなく、ただブラブラと歩いていただけなんだけどね。お盆とはいえ、ショッピングセンターは結構込んでいた。クーラーついていたのに暑かったよ。


「美味しかったねー、パフェ」


 のほほんとした、佐藤がのほほんと答える。それに今井が、「アンタは味覚の批評甘すぎ。食えないわけじゃないけど、フルーツと生クリームの味がちぐはぐだったよ」と、呆れたようにいった。
 この会話を聞けば判ると思うけど、佐藤と今井の性格は全く持って正反対だ。佐藤はふんわりとしたイメージだが、今井は棘がある雰囲気を持つ。評価も佐藤は甘口で、今井は辛口も辛口だ。後今井の方が変態度が高い。佐藤はどちらかというと優等生だけど、今井は元ヤンだったりする。こんなに正反対なのに、小学校からの付き合いというのだから驚く。
 驚いたというのは、今井とは最近までうわべでしか付き合ってないから、あたしは佐藤のことを知らなかったのだ。



 フウちゃんが目覚めて、まだ一年も経っていないというのに、こんな時間が、もう随分経っているのだと錯覚させられる。
 フウちゃんのことがきっかけで、あたしは今井や佐藤と買い物に行く仲までにはなったんだけれど、いまいち信じられない。
 いや、本人たちに疑心を抱いてるわけじゃなくて、このシュチュエーション自体が信じられない。

 あたしは、友達なんて存在、信じなかった。ついでに、恋という存在も。
 そのはずなのに、流れに流され、予想外の現在に至っている。


「(本当に、何がどうなってこうなった……)」


 凄く不思議でたまらないのだが、それに居心地の悪さは感じなかった。
 寧ろ、ガラにもなく、この時間が続けばいいのにとも思う。
 なんて二人にいったら、「キモ!」「……せめてポーカーフェイスを崩そうか、雪ちゃん」と突っ込まれた。
 いや本当に、心の底から願っているのよ、これでも。
 昔は非凡に憧れながらも、今はこの平凡が大好きで。この平凡を手に入れられたのは……まさしく、三也沢君のお陰だった。
 ああもう、やっと忘れられたと思ったのに。


「(……三也沢君、そういえばフウちゃんと一緒にお盆を過ごすことになったんだっけ)」


 何気なく、恐らくあたしが三也沢君に向けている恋心なんて気付いていないだろうフウちゃん(だってあの子、本当に鈍いもの)が、無邪気に笑いながらそういったことを思い出す。
 ……実は、今回ショッピングセンターに遊びにいったのは、それを聞いて意外とショックを受けているあたしを励ます為に、二人が提案したのだ。
 二人の誘いに乗らなかったら、あたしは今井に絵を破られたみたいに、ショックでお盆中部屋でへたれこんでいたかもしれない。
 未だに痛みとだるさが残っているが、それでも二人のお陰で、幾分か薄れたと思う。

Re: 臆病な人たちの幸福論【ダメナコルート完結!】 ( No.336 )
日時: 2013/03/20 23:02
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)



 ——想うってことは、そんなに虚しいこと?
 今日で何回、心の中で問うただろうか。


 人を心の底から、初めて好きになれた。その初めてを手に入れて、あたしは幸せを手に入れることが出来た。

 ……叶わない、恋だと知ってしまっても。

 この二人は、あたしの想い人を知っている。そしてその想い人に恋人が居ると知っていても、二人は反対しなかった。
「フウちゃんも応援してるけど、アンタも応援してる」「だから正々堂々と挑めばいいよ!」二人の嬉しい励ましが、何度も頭に響く。

 あたしは、三也沢君が好きだ。でも、フウちゃんも好きなんだ。
 そんな二人の幸せを壊していいのか、あたしは怖かった。元々、自分の気持ちを告げる気なんてなかったけれど、でもそうする分、あたしの中で爆発しそうな想いが膨れ上がってくる。
 想うだけで幸せなんだ。想い返されなくても、あたしの中に三也沢君が居るというだけで、胸が熱くなる。でもそれは、フウちゃんの笑顔で、罪悪感へと変わる。

 あの人には、あの子が居て。あの子には、あの人が居る。
 互いに想いあって、救われて、救いあって、そんな羨ましい関係。あたしは確かに二人に救われたけど、あたしは二人を救っていない。助けられてない。
 その中に、あたしが勝手に割り込んでいいのだろうか?

 あたしは、確かにこのままで十分。だからこそ、この想いは、自分勝手すぎると思うんだ。自分勝手だから、二人を傷つけてしまうんじゃないかって……ネガティブ思考が止まらない。

 だから、この二人が居てくれて、本当に良かった。
 口ではかなり恥ずかしくていえないけれど、本当に良かったって思えるんだ。

 ……でも、あの励ましの言葉は、嬉しい反面、とても辛く、重くのしかかった。



 あたしは、知ってしまっているんだ。
 この恋が、本当の意味で叶わないということ。叶えないということ。叶えてはいけないということ。
 誰がいったかよりも、あたしがこの想いを断ち切らなきゃ、皆が不幸になってしまうかもしれないということ。


「(ああもうなんで、こんなに余計に考えてしまうの?)」


 二年前もそうだ。三也沢君の優しさに甘えて、しかも三也沢君が暗くなり始めたら、人目を気にして、見捨てるように避けた。自分の気持ちに嘘をついた。思い出すだけで、羞恥と後悔に駆られる。

 臆病なくせに、諦めれない。
 自分勝手なくせに、わが道を突き進むこともしない。
 小さなことで舞い上がったり、感傷的になったり、そんなことの繰り返しは、捨てたくなる。捨てたくなるくせに、手放すことは出来ないのだ。
 なんてバカなんだろう。

 あたしの想いなんてちっぽけなことぐらい、自分自身が痛いほど判っているのに。
 人工的に作られた建物よりも高いところにある青空は、あたしを見下すように、佇んでいるようだった。
















 ……って、シリアスに締めくくったのはいいんだけど。


「次どこいくー?」
「そうだな……」
「え、まだ行くつもりなの」
「当たり前」


 マジですか。
 今は感傷に浸る前に、疲れた身体を叱咤して動かさなければ、と思った。
 それに、あまり暗いこと、今は考えない方がいいかもしれない。考えても、どうせ良い案も気晴らしも出来ないのだから。
 少しため息をついて、そしてうっすらと笑う。
 こんな気持ちを抱えていても、二人は判らない様で気付いているのかもしれない。

Re: 臆病な人たちの幸福論【ダメナコルート完結!】 ( No.337 )
日時: 2013/03/20 23:09
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)


 というわけで、ネガティブになるのは後にすることになったあたしは、ふと店と店の間にある、路地裏を見た。というか、見てしまった。



「……ね、アレ」
「どうした、すぎは」
「……? どうしたの、二人と」




 あたしが声を掛けると、二人はいいかけて、固まる。
 暗くても、真夏日の日差しでは見通せれる。ここから見える様子は、明らかにおかしい。——一人の女の子を、三人ぐらいの男の子、それに二人ぐらいの女の子が囲んでいる。

 この道は昔賑わった商店街だが、ショッピングセンターに人気を取られ、廃れてしまい、今じゃ人も三、四人しか通らない。

 ということは——。



「こんな街中でかごめかごめをしてるなんて、中々健全ですね」




 真顔で佐藤がボケたので、あたしと今井はずっこけかかった。
 この表情、明らかに本気でいってる。佐藤は手のかからない良い子と評判だが、たまに天然ボケが凄まじすぎる。


「アンタの目は節穴か!」


 バシ! と、佐藤の頭を今井がチョップした。「え、違うの!?」と佐藤が少し傷ついた顔で驚く。


「かごめかごめでも、後に『リンチ』がつくタイプのかごめだと思うよ。しかも凄く健全じゃない方ね」
「え、ミンチ!? バラバラ殺人!?」
「リンチだよ! あとバラバラ殺人ってナニ!?」


 佐藤のボケに、再び今井が突っ込む。


「え……ミンチ=ひき肉=殺人=処理=バラバラ=人肉缶詰、が常識じゃないんですか!?」
「あ。アンタ昨日ひ●らしやったね。目明し編を」
「っていうかナニその公式は」
「あ、ひぐ●しじゃないですよ。じゅ●べえ●えすとです」
「ファミコン!?」
「……ゴメン話についていけない」


 所詮マリカしかやってないDS初心者には、全然わかんない。後佐藤、そんな顔をしてなんでそんなグロイものいえるの。


「……というか、あれどうするの。普通に見ても穏やかじゃないけれど」
「うーん……3Pでヤるつもりなのかしら」
「だからアンタは何で下ネタの方へ走るの?」


 今井よ。想像するのはカツアゲまでにしておこうよ。



「とりあえず、いってみよう!」
「え、あへ!?」


 あたしが反応する前に、佐藤は既にあの輪に割り込む勢いであった。


「そうね、止めないとマズそうだわアレ」
「いや、そうなんだけどね!? 相手には男が三人居るし、腕力じゃ勝てないだろうし、ここは一つ冷静になって通報したほうが……てちょっとー! お二人さーん!?」


 何であの二人は、自分から首を突っ込んでいくのかな!?
 そう心の中で叫びつつ、結局あたしも二人の後についてしまっているのだから、同罪である。




「……今更、なんや。いちゃもんつけんでくれる?」
「『今更』? おいおい、自分がやったことなかったことにすんのかよ」
「あれはアンタらが悪いやろ!! うちは当たり前のことをしただけや!!」
「今聞いた!? 『アンタらが悪いやろ』って!!」
「ウケるー!! 他人のせいにして、良い子ぶってるー!!」

 アハハハハハ、と汚く笑う五人。
 囲まれてしまった、ショートが良く似合う、楕円形な赤メガネをかけた女の子は、毅然とした態度でありつつも、徐々に身体が震えていた。
 無理をしているんだ、とすぐに判った。

Re: 臆病な人たちの幸福論【ダメナコルート完結!】 ( No.338 )
日時: 2013/03/20 23:08
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)



「なんていうか……随分古典的な……」

 物陰からこっそりと見ていたあたしは、ボツリ、と思わず零す。
 こんなバカなこと、まだする奴がいたんだ。しかも文章もいってることも無茶苦茶だし。聞いてるだけだが、すごく頭悪そう。奴らの腐った根性に怒りとか女の子に向けての同情とか、それよりもまず呆れる。
 ……なんて思うのは、第三者の立場だからで。あの集団は、明らかに女の子に対して敵意……というか悪意? いずれにせよ、向けられたら快い気分は絶対にしない。
 現に彼女の身体は、震えているんだから。

「……ちょっと、アンタら」
「何してるのかな、キミたち」

 …………。




「(あああああああああああああああああああああああああ——!?)」

 気づいた時は、時すでに遅し。
 あたしがあれこれ考えて見ているうちに、確かに一緒に物陰で様子を見ていた今井と佐藤が、かごめかごめの中に入っていってしまったのだ。

「ああぃf●y×k◇!?」

 いきなり声を掛けられたからビックリしたのだろう。男どもは、飛び上がって言葉にもならない声を出す。女の子たちの方も、男どもよりかは落ち着いていたが、肩がビクン、と上がった。
 気配絶っていたわ、あの二人。あたしも気づかなかったし。ホント何者!?

「ああ!? 何だよテメェら!」

 男どもの一人が、脅すように声を荒げていったが、見事に裏返っていたのでみっともなかった。
 すると二人は、妙なコントを開いた。

「いやいや、話を聞いてるだけでも、物騒な感じでしたので、正義の味方が飛び込んできたことですのよ。ねえ、奥さん」
「いやですわねえ。陳腐なことばかりいって、頭悪そうにしか見えませんわ。服装もダサいし、顔もダサいし、あれでカッコイイとか思ってるんでしょうねえ」
「本当、ハズかしいですわねえ奥さん」
「ええ、ほんっと。目障りだし耳障りだし、ナニをやってもダメダメなんでしょうねぇ。これじゃ、植物の方が役に立ちますわ」
「動かないけれど光合成をして、温暖化が進んでいる地球を救ってくださりますからねえ」
「(あのアホぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!)」

あんな挑発的なこといってどうすんのよもぉぉぉぉぉぉぉ!!
 ——と、叫びたい。でも叫べないのは、決して臆病だからではなく、慎重だからなんだ、うん。
 ああもうほら、あの男ども怒っちゃってるよ!!

「ッ……テ、テメェらには関係ねぇだろうがババア!!」

 いきり立った男どもの一人が、荒々しくそういったのと同時に。

——空気が、凍った。

「……」

 ピュウウウウウウウ、と、炎天下のはずなのに、寒風が路地裏を通ったのは、気のせいだろうか。でも少なくとも、今井と佐藤の表情が、笑顔のまま固まった。

「……そうだね。私達には、関係がないかもしれない」
「でも、あたしたちの行動とテメェらにババアといわれることは——」

 この笑顔を見た時、あたしは確信した。
 二人は、絶対に何かやらかすと。ファンファンという警報どころかバンバンと頭の中で爆音のような本能が、必死にあたしの理性に響かせてくる。あの笑顔は危険だ、と。
 けれど、あたしはあの二人を止める度胸もないし、器もない。あたしが出来ることといえば——あのモノたちの冥福を祈るのみである。



「全く持って関係ねーだろ●●野郎がぁぁぁぁぁぁ!!!」


 バッコーン! と、気持ちよい音と叫び声が、路地裏で何度も響き渡った。

                      ◆

『ねえ、そこのアナタ。三也沢健治君っていう人、知らないかな?』

 若い人にしてはとても質素な、それでも上品さを匂わせる見知らぬ女の人の、突然の質問だった。
 最初に感じたのは、衝撃。その次は、彼女らに対しての疑い。

その次は、思い出したくない、想い。

 名前を聞くだけで、胸が高鳴ってしまう。
 名前を聞けば、顔を思い浮かべてしまう。そうすれば、身体が全身熱くなって、胸だけじゃなく、頬、目、手首や足首、首、頭、指の先まで、血管が通っている場所が、激しく、激しく叩きつけるように鳴る。
 そんな風になった時、次に来るのは、苦く、苦しく、辛い想い。

 あたしは、好きな人すら見捨ててしまうような人間だったのだと、思い出す。
 図書委員を辞めた三也沢君が、何かあって落ち込んでしまったのは明らかだった。図書室じゃなくても、普通に会えたハズだった。なのにあたしは、知ろうともせず、巻き込まれたくないからと、わざと避けた。
 すれ違う時も、これは錯覚、あたしはあの人のことを好きでもなんでもないのだと、そう嘘をついて。何度も何度も嘘を重ねて、誤魔化した。

 その嘘のたがが半分壊れたのは、初めて三也沢君がフウちゃんの名を口にして泣いた時。
 そして残った半分は、見知らぬ女の人に向けて咄嗟に「そんな人知りません」と返していた時。

 あの人は、現れた。

『久しぶりだな』

 そういって、ぎこちなく笑って。
 たがが壊れた時、あたしは、自分がついてきた嘘に、後悔と羞恥で、苦しくなった。
 それは、甘い感情を混ぜても、収まらない苦味。

 寧ろ、甘い感情が強くなるにつれて、苦味はどんどん比例して増えていった。

                    ◆

 数分後だったんじゃないかな。ついさっきまで女の子をいじめていた男どもが冥土に召されたのは。
 まさか、佐藤が雪崩式フライケンシュタイナー使えるなんて思わなかった。今井はグーと脚だけだったね。元ヤンだからだろうけど、攻撃力がパなかった。

「な、ナニよアンタたち……!」

 無様にやられた男どもと、鬼女の気迫に負けたのだろう。ガタガタブルブルと、いじめていた女の子たちは震えている。

「……安心しな。何もせず何もいわずに大人しく引き下がれば」
「命だけは保障するよ」

 命っていったあ!? 命っていったあぁ!?
 え、じゃひょっとして本当に男ども死んじゃってるの!?
 女の子たちは震えながら、それでも今井たちを睨んでいた。

「(——あれ?)」

 その時、何かが、陽炎のように揺らめいた。

「ほら、とっとといきな」

 女の子たちにたいして、今井は倍以上の睨みを効かせる。眼力に負けた女の子たちは、赤いメガネの女の子を一瞥してから、舌打ちして去っていった。


 頭が、フラフラとする。


「あ、あの……ありがとう、ございます」

 メガネの女の子が、恐る恐る今井のほうに駆け寄った。
 その姿が、だんだんと曇っていく。

「ああ、いいよ。怪我なくて」

 今井が答えた。けれど、今井の姿も曇っていく。

「……だよ。余計……しちゃったかも……」
「…え。…かり……した」

 声も、聴きづらくなってきた。
 その時初めて、あたしは気を失う寸前だということに気付く。

「(そういや、今日……お水飲むの忘れていたかもしれない)」

 ……いや、昨日から?
本当にショックだったんだ、フウちゃんと三也沢君が一緒にお泊りに行くことに。
 そういえば、お冷もパフェも殆ど食べなかった……っけ。


          気温35℃の炎天下

(バタン、とアスファルトの上に倒れた時、)
(ようやく、ビッショリとした汗に気付いた)


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